説明

プラズマ洗浄装置

【課題】プラズマ洗浄処理の制限を緩和し、使用勝手の良いプラズマ洗浄装置を提供すること。
【解決手段】プラズマ洗浄処理のレシピ設定をする際には、パソコン15により、プラズマエッチング(PE)方式かリアクティブイオンエッチング(RIE)方式かのどちらであるかを判定し、RIE方式であればプラズマ処理制限を内部メモリから読み込む。次に、プラズマ処理パワー(W)と処理時間(秒)の積がプラズマ処理制限を超えていないか判定する。RF電源出力パワーを「500(W)」と入力して、プラズマ処理時間を「25(秒間)」と入力すると、パソコン15は500W×25秒=12500W秒と算出して、プラズマ処理制限の10000W秒を超えたと判定して、超えた旨をモニター17に表示させる。次に、RF電源出力パワーはそのままとし、10000W秒÷500W=20秒間を算出し、プラズマ処理時間を20秒間として内部メモリに保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面を発生させたプラズマにより洗浄するプラズマ洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のプラズマ洗浄は、例えば特許文献1などに開示されているが、従来はプラズマ洗浄処理の制限を処理時間のみで設けるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−123370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、RF電源出力パワーの最大出力(例えば、600W)時ではプラズマ洗浄処理を、例えば300秒間行うのがプラズマ洗浄処理の限界であった。即ち、これ以上、洗浄処理時間を延ばすと、プラズマ洗浄装置が発熱するため、プラズマ処理時間の制限を設けていた。このため、使用勝手の悪いプラズマ洗浄装置であった。
【0005】
そこで本発明は、プラズマ洗浄処理の制限を緩和し、使用勝手の良いプラズマ洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため第1の発明は、チャンバー内に一対の電極を配設して、真空状態にされたチャンバー内に基板を収納し、プラズマ反応性ガスを供給すると共に、前記一対の電極に高周波電源により高周波電圧を印加して前記反応性ガスをプラズマ化して前記基板を洗浄するプラズマ洗浄装置であって、
プラズマ処理パワーと処理時間との積であるプラズマ処理制限を格納する第1メモリと、
プラズマ洗浄処理をするためのプラズマ処理パワーと処理時間とを入力して設定するための設定装置と、
この設定装置により設定された前記プラズマ処理パワーと処理時間とを格納する第2メモリと、
この設定装置によりプラズマ処理パワーと処理時間とを入力した際に前記プラズマ処理制限を超えた場合には超えた旨を表示する表示装置と
を設けたことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、チャンバー内に一対の電極を配設して、真空状態にされたチャンバー内に基板を収納し、プラズマ反応性ガスを供給すると共に、前記一対の電極に高周波電源により高周波電圧を印加して前記反応性ガスをプラズマ化して前記基板を洗浄するプラズマ洗浄装置であって、
プラズマ処理パワーと処理時間との積であるプラズマ処理制限を格納する第1メモリと、
プラズマ洗浄処理をするためのプラズマ処理パワーと処理時間とを入力して設定するための設定装置と、
この設定装置により設定された前記プラズマ処理パワーと処理時間とを格納する第2メモリと、
この設定装置によりプラズマ処理パワーと処理時間とを入力した際に前記プラズマ処理制限を超えた場合には入力された前記プラズマ処理パワーをそのままとして前記プラズマ処理制限を超えないように前記処理時間を算出する算出装置と、
この算出装置により算出された前記処理時間を前記第2メモリに格納させるように制御する制御装置と
を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラズマ洗浄処理の制限を緩和し、使用勝手の良いプラズマ洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プラズマ洗浄装置の概略図である。
【図2】プラズマ洗浄に係るレシピ設定画面を示す図である。
【図3】RF出力、プラズマ処理時間、RF方式等の設定に係るフローチャートを示す図である。
【図4】プラズマ洗浄処理のレシピ番号を選択する画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態について、図1に基づいて説明する。先ず、1は気密状態に密閉可能な真空チャンバーで、この真空チャンバー1内に一対の平行な上部電極2及び下部電極3が配設される。そして、この真空チャンバー1は、真空通路4中に設けられた開閉弁5を介して真空ポンプ6によって所定の真空状態とされる。そして、プラズマ反応性ガスを上部電極2と下部電極3との間に供給する。この下部電極3上に、洗浄すべき基板が配設される。
【0011】
10はアースに接続された高周波電源で、11は高周波電力を上部電極2又は下部電極3に供給するかを切替える出力切替器を備えた自動整合器で、この自動整合器11は熱の影響を受け難い銅板12を介して上部電極2に接続されると共に温度に弱い、即ち発熱により損傷する虞がある同軸ケーブル13を介して下部電極3に接続される。そして、前記自動整合器11の出力切替器による切替えにより、上部電極2又は下部電極3に高周波電力が供給される。
【0012】
15は高周波電源10に接続されるマイクロコンピュータ(CPU、RAM、ROMを備えている。)等を備えたパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という。)で、前記高周波電源10、その他の駆動源等を制御して、本プラズマ洗浄装置を統括制御する。このパソコン15には、表示装置としてのモニター16が接続され、このモニター16には入力手段としての種々のタッチパネルスイッチ17が設けられ、作業者がタッチパネルスイッチ17を操作することにより、種々の設定を行うことができる。
【0013】
ここで、基板の表面を発生させたプラズマにより洗浄するプラズマ洗浄処理の方法の代表的なものとしては、リアクティブイオンエッチング(RIE)方式とプラズマエッチング(PE)方式とを挙げることができる。
【0014】
RIE方式は、真空チャンバー1内にプラズマ反応ガス(Ar、O等)を供給して、上部電極2に高周波電源10から自動整合器11、銅板12を介して、高周波電力を供給する。すると、真空チャンバー1内にプラズマが発生し、プラズマ中のプラスイオンが負に帯電した上部電極2に引き寄せられるため、プラスイオンが下部電極3上に載置された基板の表面に衝突して、この基板の表面の不純物を削り取る。このような処理は、例えば、基板にワイヤボンディングを行う際の前処理等に適している。
【0015】
一方、PE方式は、真空チャンバー1内にプラズマ反応ガス(Ar、O等)を供給して、下部電極3に高周波電源10から自動整合器11、同軸ケーブル13を介して、高周波電力を供給する。すると、真空チャンバー内にプラズマが発生し、プラズマ中のプラスイオンが負に帯電した下部電極3に引き寄せられるため、基板の表面にはプラスイオンはあまり衝突せず、主としてプラズマ中のラジカルが衝突し、基板の表面が化学的に改質される。このような処理は、例えば、基板の表面に実装された部品を樹脂で封止する際の前処理等に適している。
【0016】
プラズマ処理制限は、プラズマ処理パワー(W)と処理時間(秒)の積による制限であり、本実施形態では10000W秒であり、このプラズマ処理制限はモニター16にタッチパネルスイッチ17の押圧操作により、パラメータ設定画面を表示させて入力キーとしての数字キースイッチ部を表示させて、前述したプラズマ処理制限が設定され、パソコン15の内部メモリに格納される。このようなプラズマ処理制限は、RIE方式とPE方式とで別々に設定することができるが、本実施形態ではRIE方式は10000W秒で、PE方式は9000W秒である。
【0017】
次に、図2のプラズマ洗浄処理のレシピ設定画面及び図3のRF出力(RF電源出力パワー)、プラズマ処理時間、RF方式等の設定に係るフローチャートに基づいて、以下説明する。先ず、モニター16にタッチパネルスイッチ17の押圧操作により、図2に示すようなプラズマ洗浄処理のレシピ設定画面を表示させて、入力キーとしての数字キースイッチ部を表示させて、各種データを入力してプラズマ洗浄処理のレシピを設定し、パソコン15の内部メモリに格納する。
【0018】
即ち、図2に示すレシピ番号「1」として、供給するアルゴンガス(「Ar」と表示)を「5(1分間当り5ccの意)」とし、供給する酸素ガス(「O」と表示)を「0」とし、プラズマ洗浄する際の開始圧力を「20(Pa)」とし、RF電源出力パワーを「500(W)」とし、プラズマ処理時間を「20(秒間)」として、プラズマ処理制限の10000W秒を超えないように設定し、RF方式をRIE(リアクティブイオンエッチング)処理と入力する。この場合、RF電源出力パワーを「400(W)」とすると、プラズマ処理時間は「25(秒間)」まで設定することができる。
【0019】
以下同様に、レシピ番号「2」以降においても必要事項を入力するが、ここでは省略する。このようにして、レシピ番号毎に必要事項を入力した後に、タッチパネルスイッチ17のOKスイッチ部17Aを押圧操作すると、パソコン15は初めに設定入力した又は更新入力したレシピデータを内部メモリに格納させ、またキャンセルスイッチ部17Bを押圧操作すると、このレシピ設定画面を閉じるように制御する。
【0020】
ところで、前述したプラズマ洗浄処理のレシピ設定をする際には、パソコン15(内蔵するマイクロコンピュータ)により図3に示すような処理がなされる。即ち、初めに、プラズマエッチング(PE)方式かリアクティブイオンエッチング(RIE)方式かのどちらであるかを判定する(ステップS01)。
【0021】
この場合、今レシピを設定しているのがPE方式であれば、プラズマ処理制限を内部メモリから読み込み(ステップS02)、RIE方式であれば、プラズマ処理制限を内部メモリから読み込む(ステップS03)。
【0022】
次に、プラズマ処理パワー(W)と処理時間(秒)の積がプラズマ処理制限を超えていないか判定する(ステップS04)。即ち、レシピ番号「1」の設定は、RF電源出力パワーを「500(W)」、プラズマ処理時間を「20(秒間)」としたので、RIE方式のプラズマ処理制限の10000W秒を超えていないので、前述したように、OKスイッチ部17Aを押圧操作すると、レシピが確定し、パソコン15はこの入力したレシピデータを内部メモリに保存格納する(ステップS05)。
【0023】
ところが、このレシピ番号「1」の設定の際に、RF電源出力パワーを「500(W)」と入力して、プラズマ処理時間を「25(秒間)」と入力すると、パソコン15は500W×25秒=12500W秒と算出して、プラズマ処理制限を超えたと判定して、超えた旨をモニター17にメッセージ表示させる(ステップS06)。
【0024】
次に、RF電源出力パワーはそのままとし(「500(W)」)、プラズマ処理時間はプラズマ処理制限の10000W秒となるように、自動計算され、即ち10000W秒÷500W=20秒間を算出して(ステップS07)、プラズマ処理時間を20秒間としてレシピが確定し、パソコン15はこの入力したレシピデータを内部メモリに保存格納する(ステップS05)。
【0025】
なお、RF電源出力パワーを「600(W)」としてプラズマ処理制限の10000W秒を超えた場合には、プラズマ処理時間はプラズマ処理制限の10000W秒となるように、自動計算され、10000÷600Wを計算し、約16.6秒間を算出して内部メモリに保存することとなり、またRF電源出力パワーを「400(W)」としてプラズマ処理制限の10000W秒を超えた場合には、プラズマ処理時間はプラズマ処理制限の10000W秒となるように、自動計算され、10000÷400Wを計算し、25秒間を算出して内部メモリに保存することとなる。
【0026】
以下同様に、レシピ番号「2」以降の設定の際にも、この図3のフローチャートに従った処理がなされることとなる。従って、プラズマ洗浄処理の制限を緩和し、使用勝手の良いプラズマ洗浄装置を提供することができる。
【0027】
以上の構成により、以下動作について説明する。先ず、設定されたプラズマ洗浄処理のレシピを選択すべくモニター16に、図4に示す選択画面を表示させ、レシピ番号「1」(RIE方式)を選択するために、タッチパネルスイッチ17の対応するチェック・ボックススイッチ部17Cを押圧操作してチェック・マーク(「レ」)を付す。
【0028】
そして、モニター16に表示された運転開始スイッチ部(図示せず)を押圧操作して、真空ポンプを駆動させて、真空チャンバー1を所定の真空状態とし、高周波電源10からの高周波電圧を上部電極2側に出力切替器が切替わった自動整合器11、銅板12を介して上部電極2に印加するように制御する。また、開閉バルブを開いて、上部電極2と下部電極3との間にプラズマ反応性ガスであるアルゴンガスを1分間当り20cc分供給してプラズマ化する。
【0029】
そして、生成されたプラズマ中のプラスイオンが負に帯電した上部電極2に引き寄せられるため、このプラスイオンが下部電極3上の基板に衝突することにより、基板の表面などをエッチングして、汚染物質を取り除き、洗浄する。このようなアルゴンガスを供給しながら、プラズマ化して洗浄して装置外部へ排出するプラズマ洗浄処理はRF電源出力パワーが500Wで、20秒間行われることとなる。
【0030】
以上のように、一般にRIE方式ではRF電源出力パワーが高い方がよく、PE方式ではRF電源出力パワーは低くともよいが、プラズマ処理パワーと処理時間との積であるプラズマ処理制限を設けて、この制限の範囲内でプラズマ処理パワーと処理時間とを設定できて、前記プラズマ処理制限を超えた場合には超えた旨を表示装置に表示するので、使い勝手がよく、また前記プラズマ処理制限を超えた場合には入力されたプラズマ処理パワーをそのままとして、前記プラズマ処理制限を超えないように前記処理時間を算出装置が算出した処理時間を前記内部メモリに格納させるようにして設定できるから、この点でも使い勝手がよい。
【0031】
1つの自動整合器11のみを設けることで、この整合器11によりRIE方式とPE方式とを切替え、双方の方式に対応することができる。
【0032】
自動整合器11と上部電極2との間は銅板12、自動整合器11と下部電極3との間は同軸ケーブル13を使用し、夫々電力の供給経路により、銅板12と同軸ケーブル13とを使い分けることで、RIE方式のとき、銅板12を介して電力を供給するので、自動整合器11と上部電極2との間の電力供給経路が損傷することを回避でき、又は自動整合器11と下部電極3とが離れている場合(例えば、真空チャンバー1の上に配した場合)でも、同軸ケーブル13の使用により容易に配線することができる。
【0033】
なお、RF電源出力パワーが低くてもよい場合には、プラズマ洗浄処理時間を長く設定することにより、基板へのダメージを少なくして洗浄することもできる。
【0034】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0035】
1 真空チャンバー
2 上部電極
3 下部電極
10 高周波電源
11 自動整合器
15 パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に一対の電極を配設して、真空状態にされたチャンバー内に基板を収納し、プラズマ反応性ガスを供給すると共に、前記一対の電極に高周波電源により高周波電圧を印加して前記反応性ガスをプラズマ化して前記基板を洗浄するプラズマ洗浄装置であって、
プラズマ処理パワーと処理時間との積であるプラズマ処理制限を格納する第1メモリと、
プラズマ洗浄処理をするためのプラズマ処理パワーと処理時間とを入力して設定するための設定装置と、
この設定装置により設定された前記プラズマ処理パワーと処理時間とを格納する第2メモリと、
この設定装置によりプラズマ処理パワーと処理時間とを入力した際に前記プラズマ処理制限を超えた場合には超えた旨を表示する表示装置と
を設けたことを特徴とするプラズマ洗浄装置。
【請求項2】
チャンバー内に一対の電極を配設して、真空状態にされたチャンバー内に基板を収納し、プラズマ反応性ガスを供給すると共に、前記一対の電極に高周波電源により高周波電圧を印加して前記反応性ガスをプラズマ化して前記基板を洗浄するプラズマ洗浄装置であって、
プラズマ処理パワーと処理時間との積であるプラズマ処理制限を格納する第1メモリと、
プラズマ洗浄処理をするためのプラズマ処理パワーと処理時間とを入力して設定するための設定装置と、
この設定装置により設定された前記プラズマ処理パワーと処理時間とを格納する第2メモリと、
この設定装置によりプラズマ処理パワーと処理時間とを入力した際に前記プラズマ処理制限を超えた場合には入力された前記プラズマ処理パワーをそのままとして前記プラズマ処理制限を超えないように前記処理時間を算出する算出装置と、
この算出装置により算出された前記処理時間を前記第2メモリに格納させるように制御する制御装置と
を設けたことを特徴とするプラズマ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−204719(P2011−204719A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67770(P2010−67770)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】