プラズマ源、及びプラズマ強化化学蒸着を利用して薄膜被覆を堆積させる方法
本発明は、薄膜被覆技術に有用な新しいプラズマ源を提供し、更にプラズマ源の使用方法を提供する。より具体的には、本発明は、プラズマ強化化学蒸着に有用な線状及び二次元のプラズマをそれぞれ生成する、新しい線状及び二次元のプラズマ源を提供する。また、本発明は、薄膜被覆を形成する方法及びそのような方法による被覆効率を向上させる方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に薄膜の堆積及び表面の化学的改質のためのプラズマ源に関する。より具体的には、本発明はプラズマ強化化学蒸着(CVD)用の線状プラズマ源に関する。
【背景技術】
【0002】
ここに参照されるすべての米国特許及び米国特許出願は、その内容を全て参照によりここに援用する。不一致がある場合には、本明細書及び明細書中の定義が支配する。
【0003】
薄膜堆積は多くの技術によって達成可能であり、最も一般的なのは、化学的堆積法、物理的堆積法及びその二つを混合することである。化学的堆積法に関しては、めっき法、化学溶液堆積(CSD)法及び化学蒸着(CVD)法が周知の技術である。CVDが一般にガス状の化学的前駆体を利用するのに対して、めっき法及びCSDは一般に液体の化学的前駆体を利用する。これらの技術は、大気圧又は真空状態下で行うことができる。物理的堆積法に関しては、熱蒸着、スパッタリング、パルスレーザー堆積及び陰極アーク堆積が周知の技術である。これらの物理的堆積技術は、所望の薄膜物質を堆積させるために一般に真空状態を利用する。化学的堆積法に関しては、最も一般的な技術はCVDであり、一方で物理的堆積法においては、最も一般的な技術はスパッタリングである。
【0004】
CVDは、一般に前駆体ガスが基体表面に付着又は粘着するような状態を作るために、エネルギー源が含まれることを必要とする。そうでない場合は、表面への付着が生じないこととなる。例えば、板ガラス基板上に薄膜被覆を行う熱分解CVDプロセスにおいて、ガラス基板が加熱されるのは一般的である。加熱されたガラス基板はCVDエネルギー源として機能し、前駆体ガスが加熱されたガラス基板に接触すると、前駆体ガスは熱いガラス表面に付着する。また、加熱された表面は、前駆体ガスが化学的に反応して最終的な薄膜被覆組成物(composition)を形成するのに必要なエネルギーを提供する。
【0005】
また、プラズマは、プラズマ強化CVD又はPECVDとして知られる、CVD型プロセス用のエネルギー源となることもできる。プラズマは部分的にイオン化したガス及び自由電子を含み、各構成要素はある程度独立して動くことができる。この独立した動きがプラズマを導電化し、電磁界に対応できるようになる。 この導電率は、他の既知の化学的及び物理的堆積技術よりも数多くの利点をPECVDプロセスにもたらす。
【0006】
PECVDプロセスでは、蒸着物質は通常前駆体ガスから生じる。そのような前駆体ガスの具体例が当業者によく知られている。例えば、ケイ素系の薄膜が蒸着される場合、共通の前駆体ガスはシラン(SiH4)である。SiH4がプラズマ源に導入される際、プラズマはシラン分子のエネルギーレベルを、表面と反応し、固体層として付着する段階に上げるように機能できる。より具体的には、SiH4はイオン化され、その電子はより高いエネルギーレベルに移行する。これは、その後の水素原子の剥離と同時に起こる。イオン化分子は利用可能な露出した反応部位を有し、酸素などの反応ガスがある場合、SiO2(二酸化ケイ素)の薄膜をすぐに形成できる。イオン化分子が反応ガスの存在下にない場合、シリコンの薄膜が形成されうる。前駆体ガスが過剰な各要素のために化学的に存在するので、PECVDによって蒸着できる要素や物質を広く利用できる。PECVDによって蒸着できる各種薄膜は、透明導電性酸化薄膜被覆、太陽熱制御(solar control)と光学薄膜被覆、及び半導体薄膜被覆があるが、これらに限定されるものではない。当業者は、PECVDによって蒸着可能な他の種類の薄膜被覆を認識及び評価するであろう。
【0007】
従って、表面に近接してプラズマを作ることは、特に塗装業においては共通の工業的実施である。多くの装置がプラズマを作成及び成形するために開発されてきている。最もよく知られる装置は円筒形状のプラズマプルーム(plasma plume)を作成し、被覆や表面処理のために非常に多くの方面で実用化されている。しかしながら、線状プラズマは、場合によってはさらに実用性があるかもしれない。線状プラズマは広い基板の表面部分に手を加えることができ、広域のガラス被覆、ウェブ被覆や複数の部分に分かれたバッチ被覆に有用である。
【0008】
今日まで、ほとんどのプラズマ源は非常に短くて狭い領域しか被覆できなかったので、最もよく知られるPECVD装置は小規模な(すなわち1m2未満)堆積用である。従って、広域被覆に適用されたPECVDは実施が困難であった。しかしながら、広域の表面を被覆するために設計されたPECVD装置は存在してきた。これらの装置は、マグネトロン源、陽極層イオン源及びMadocks源を含むが、これらに限定されるものではない。
【0009】
しかしながら、前述のPECVD装置を広域表面の被覆に使用することに付随していくつかの欠点がある。例えば、マグネトロン源は、通常幅150mm、深さ300mmというかさばる大きさであり、かつ磁石を必要とする傾向がある。また、PECVDに使用される場合、マグネトロン源の表面は堆積される物質で覆われる傾向があり、それゆえ、マグネトロンは絶縁化されて、アーク放電や他の厄介な問題を引き起こしうる。さらに、スパッタされた物質が堆積される物質を汚染する。例えば、陽極層イオン源は、被覆されることに加えて、大き過ぎて扱いにくくかつ磁石を必要とする傾向がある点で、マグネトロン源と類似の欠点に悩まされる。さらに、陽極層イオン源はPECVD物質を0.1μm/秒という低い割合で堆積させる傾向がある。例えばMadocks源は、約15%といった低い被覆効率に加えて、大き過ぎて扱いにくくかつ磁石を必要とするという欠点に悩まされる。さらに、三つの前述の源はどれも、均一したプラズマを作るために閉回路電子ドリフト(例えば、ホール効果)に依存する。
【0010】
閉回路電子ドリフト又はホール効果(Hall effect)に依存せずに均一なプラズマを作ることは可能である。これを行うためによく使われる手法は、互いに略平行に並べられた二つの電子放出面を有することであり、そこで電子放出面は、AC電源を経由して位相をずらした方法で二極式に互いに接続される。電圧差が両方の電子放出面に加えられると、プラズマが作り出される。二つの電子放出面間の極性はある所定の周波数で正極から負極に切り換えられ、プラズマが広がって均一になる。
【0011】
並列の電子放出面に基づくプラズマ源が開発されてきた。そのような源の一つが、特許文献1に説明されるような中空陰極源である。より具体的には、特許文献1に説明されるプラズマ源は、図1に示すように、バイポーラAC電源に接続される二つの中空陰極形状で構成された構造を備えている。プラズマ源は、第1及び第2の中空陰極構造1及び2を含む。二つの中空陰極構造1及び2は、ワイヤ6によってAC電源5に電気的に接続され、該AC電源5はAC電流を生成してプラズマ3の形成を促進する。中空陰極構造の一つに負電圧を与えると同時に、別の中空陰極構造に正電圧を与え、中空陰極構造間の電圧差を作って当該構造間に電流が流れるようにし、それによって電気回路を完成させる。任意で、中空陰極構造1及び2の間のプラズマ電流を高めるために、各中空陰極の開口部に近接して磁石4を配置することができる。しかしながら、特許文献1は、どのPECVDプロセスのためにも又は広域の表面被覆のためにも、開示された中空陰極の使用に取り組んでいない。
【0012】
従って、広範囲被覆の技術分野では、かなりの長さ、すなわち0.5メートルを超える長さの均一かつ安定したプラズマを作り出せるプラズマ源又はPECVD源の必要性が残っている。また、小型でありかつ高い被覆効率で被覆させることができるPECVD源の当技術分野における必要性も残っている。さらに、当技術分野においては、全体の作業コストが削減されるように、作業中のエネルギー消費が少ないPECVD源及びプロセスの必要性が残っている。
【0013】
<関連する出願への相互参照>
本出願は、2008年8月4日に出願された米国仮特許出願第61/137,839号の利益を主張すると共に、その全内容を参照により本出願に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,444,945号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様において、安定、均一かつ長いプラズマを提供する。
【0016】
本発明の一態様において、安定、均一かつ長いプラズマを形成できるプラズマ源を提供する。
【0017】
本発明の一態様において、線状プラズマ源として機能する一対の電子放出面を提供する。
【0018】
本発明の一態様において、二次元のプラズマ源として機能する一連の電子放出面を提供する。
【0019】
本発明の別の態様において、安定、均一かつ長い線状プラズマを形成する方法を提供する。
【0020】
本発明の別の態様において、安定、均一かつ長い二次元のプラズマを形成する方法を提供する。
【0021】
本発明の別の態様において、前駆体ガスのエネルギー源として機能するプラズマを提供する。
【0022】
本発明の別の態様において、前駆体ガスをプラズマ源に供給する方法を提供する。
【0023】
本発明の更に別の態様において、安定、均一かつ長いプラズマを使用して広域の被覆を形成する方法を提供する。
【0024】
本発明の更に別の態様において、磁石を用いて作られた高密度化したプラズマを提供する。
【0025】
本発明の更に別の態様において、高密度化したプラズマ源を曲げる方法を提供する。
【0026】
本発明の更に別の態様において、PECVDプロセスによって蒸着された被覆の被覆効率を向上させる方法を提供する。
【0027】
本発明の更に別の態様において、二次電子流をもたらすPECVD装置を提供する。
【0028】
これら及び他の態様は、本発明の好適な実施形態の原則に従って、AC電源を経由して互いに接続される少なくとも二つの電子放出面を設けることによって達成され、該AC電源は、可変又は交流のバイポーラ電圧を当該二つの電子放出面に供給する。より具体的には、AC電源が二つの電子放出面にバイポーラ電圧差を印加するように、当該少なくとも二つの電子放出面はAC電源を経由して互いに接続される。バイポーラ電源は、初めに第一の電子放出面を負電圧にしてプラズマの形成を可能にし、一方で第二の電子放出面は、電圧応用回路の陽極として機能するために正電圧にされる。その後、第一の電子放出面を正電圧にし、陰極と陽極の役割を反対にする。電子放出面の一つが負極になると、対応する空洞内で放電が発生する。その後、もう一つの陰極が陽極を形成し、電子をプラズマから逃れさせて陽極側に移動させ、それによって電気回路を完成させる。
【0029】
本発明による電子放出面の配置は、標準モードと熱電子モードという二つの一般的なモードで行うことができる。標準モードにおいては、電子放出面の温度は比較的低温に保たれ、水冷又は他の冷却方法によって制御される。標準モードの際、電子流は比較的低いままで、陰極は動作するのに数百から数千ボルトを必要とする。熱電子モードにおいて、電子放出面は、プラズマ加熱効果又は別の加熱装置から温度が上がってもよい。電子放出面が高温になる場合、電子放出は冷陰極の電子放出より少なくとも一桁高く増大し、比較的低電圧での高い陰極放電電流をもたらす。熱電子モードになるために必要な温度及び効率的な動作に必要な電圧は、陰極の物質の仕事関数に部分的に左右されるであろう。
【0030】
所望する場合、磁石及び/又は追加の電極は、本発明による電子放出面の配置と関連して使用することができる。磁石及び/又は追加の電極の使用により、本発明のPECVD源によって作られるプラズマの高密度化をもたらす。本発明によるプラズマ源は、例えば継目のない(monolithic)ガラス及び/又はガラスリボンを被覆する広域被覆などのような、安定、均一かつ長いプラズマが求められるさまざまな応用のいずれにも使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明は、従来技術のプラズマ源を超える多数の明確な利点及び設計特性を提供する。これらは、1)本発明によるプラズマ形成装置は、二つの電子放出面間の距離を約0.5mmと狭く、全長約60mm未満の非常に小型にすることができる、2)プラズマ源は線状かつ長さを例えば0.5メートル未満にすることができる、3)電子放出面は、ガス防護及び/又は熱蒸発によって清潔に保つことができる(例えば表面が被覆されないなど)、4)前駆体ガスはより高い反応性を得るために熱的及び/又は電気的にエネルギーを加えられる、5)プラズマ源は、単位長さ当たりの高いプラズマ電流を生成することができる、6)プラズマ源は、容量性又はダイオード型のシステムの密度を超えるプラズマ密度を形成できる、及び7)プラズマ源から作られるプラズマは二次元にされてもよいことを含むが、それらに限定されるものではない。
【0032】
ここでの主題の発明者は、驚いたことに上述の利点が、1)二次電子表面間の高い二次電子流、2)広域被覆の高い堆積率、3)数ミクロンの厚さが可能であるが低応力である広域被覆、4)数ミクロンの厚さが可能であるが平滑な広域被覆、及び5)数ミクロンの厚さがあるが低ヘイズを有する広域被覆を導くことを見いだしている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】先行技術の中空陰極装置を示す。
【図2】本発明による基本的な線状PECVD装置を示す。
【図3】図2の基本的な線状PECVD装置の配列を示す。
【図4】本発明によるPECVD装置における二つの中空陰極を示す。
【図5】本発明によるPECVD装置における中空陰極の配列を示す。
【図6】本発明によるPECVD装置の「インライン(in-line)」配置を示す。
【図7】本発明によるPECVD装置の別の「インライン」配置を示す。
【図8】マグネットを備える本発明によるPECVD装置を示す。
【図9】第三の電極を備える本発明によるPECVD装置を示す。
【図10】一連の多孔壁を備える本発明によるPECVD装置を示す。
【図11】本発明による「インライン」PECVD装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は多くの異なる形で具体化しても良いが、多数の例示的実施形態がここには説明されており、本発明の開示は本発明の原理の実施例を提供するとみなされていると理解されて、そのような実施例は本発明をここに説明された及び/又は例示された好適な実施形態に限定するものではない。さまざまな実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に開示されている。他の実施形態を使用してもよく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく構成的及び論理的な変更を加えても良いと理解されている。
【0035】
ここで言及されるように、「暗い空間」とは、プラズマ電流が非常に低い狭い区間又は電極の周囲部分を意味する。一般に、二つの逆帯電したプラズマ電極、又は暗い空間の距離によって相隔たる一つのプラズマ電極と接地電位導体は、実質的にそれらの間に電流は流れないことを示す。
【0036】
「中空陰極」とは、主に対向する陰極表面及び第三の隣接した陽極表面を一般に含むプラズマ形成装置を意味する。対向する陰極表面は、各表面の負の電界の間で電子が振動して閉じ込められるように間隔をあけている。
【0037】
「前駆体ガス」とは、凝結して固体被覆となる一つの化学元素又は複数の化学元素を含んでいる分子形態のガスを意味する。前駆体ガスから凝結される化学元素は、金属、遷移金属、ホウ素、炭素、シリコンゲルマニウム及び/又はセレンを含むことができる。一般に、前駆体分子は、エネルギー源によって活性化、部分的に分解、或いは完全に分解されるまで非反応物質であり又は表面上に付着しにくく、その結果被覆用の所望の化学元素を含む前駆体ガスのケミカルフラグメント(chemical fragment)は、表面上に固形で化学的に結合又は凝結することができるようになる。前駆体化合物の凝結した部分は、主に純元素、元素の混合物、前駆体化合物の構成成分から生じた化合物、又は化合物の混合物でもよい。
【0038】
「反応ガス」とは、酸素及び/又は窒素を意味する。前駆体ガス単体から化学的に利用可能でない表面上の化合物を堆積させるのが望ましいことが多い。多くの場合、酸素又は窒素などの反応ガスはCVDプロセスに加えられて酸化物又は窒化物を形成する。他の反応ガスは、フッ素、塩素、他のハロゲン又は水素を備えることができる。反応ガスは、活性化又は化学的に分解された場合であっても、凝縮できる分子的実体は形成されないという事実によって、前駆体ガスと区別することができる。一般に、反応ガス又は反応ガスフラグメント(fragments)自体は固体析出を促進させることはできないが、反応することはでき、前駆体ガス又は他の固体析出源から得られる固体析出に化学的に組み込まれることとなる。
【0039】
「基板」とは、本発明によって被覆される或いは化学的に改良された表面を有する、狭い領域又は広い領域の部材を意味する。ここで参照される基板は、ガラス、プラスチック、無機物、有機物、又は被覆或いは改良される表面を有する他のいかなる物質を含むことができる。
【0040】
「プラズマ」とは、自由電子と陽イオンの両方を備える導電性の気体媒体を意味する。
【0041】
「ホール電流」とは、交差した電場及び磁場よって引き起こされる電子流を意味する。多くの従来のプラズマ形成装置においては、ホール電流は電子流の密閉循環路又は「レーストラック(racetrack)」を形成する。
【0042】
「AC電力」又は「AC電源」とは交流電源からの電力を意味し、電圧が正弦波、方形波、パルス状又は他の何らかの波形で、ある周波数で変化している。電圧変動は、負電圧から正電圧が多い。バイポーラ形式の場合、二つのリードによって伝達される出力は通常約180°位相がずれている。
【0043】
「熱電子の」とは、高い表面温度によって放出が大幅に加速する表面からの電子放出を意味する。熱電子の温度は、通常約600℃以上である。
【0044】
「仕事関数」とは、電子を固体表面から固体表面のすぐ外側に移動させるのに必要である電子ボルト(eV)の最小エネルギーを意味する。
【0045】
「二次電子」又は「二次電子流」とは、微粒子による表面の衝撃及び結果的に生成された電流による固体表面からの電子放出をそれぞれ意味する。
【0046】
本明細書の主題の発明者は、PECVDプロセスにとって有益な、長くて(例えば、0.5メートルを超える)安定した均一の線状プラズマが閉回路電子ドリフト(例えばホール効果など)に依存せずに作り出されることを驚いたことに見いだした。これは、AC電源を経由して互いに接続される少なくとも2つの電子放出面を設けることによって達成でき、該AC電源は、可変又は交流のバイポーラ電圧を該2つの電子放出面に供給する。より具体的には、AC電源が二つの電子放出面にバイポーラ電圧差を印加するように、当該少なくとも2つの電子放出面はAC電源を経由して互いに接続される。バイポーラ電源は、最初に第一の電子放出面を負電圧にしてプラズマの形成を可能にし、一方で第二の電子放出面は、電圧応用回路の陽極として機能を果たすために正電圧にされる。その後、第一の電子放出面を正電圧にし、陰極と陽極の役割を反対にする。電子放出面の一つが負極になると、対応する空洞内で放電が発生する。その後、もう一つの陰極は陽極を形成し、電子をプラズマから逃れさせて陽極側に移動させ、それによって電気回路を完成させる。
【0047】
本発明による電子放出面はプラズマを生成し、二つの表面は今度はさらに電子又はイオンの衝突を受ける。電子又はイオンによる電子放出面の衝突は、各電子放出面から放出される二次電子をもたらす。二次電子流は高密度化されたプラズマの生成に役立つので、二次電子放出は重要である。二つの電子放出面の間に存在する空間は、電流が電子流及び/又はイオン流を備える空間である。この空間は、使用する被覆パラメータに応じて距離によって変化させることができる。この距離は約1mmから約0.5メートルの間で可能であり、プラズマ形成装置の構造及び電子放出面を取り囲む作動ガス圧力によって部分的に決定される。電子放出面の電子放出を増加させるために、電子放出面はトリウムタングステン(thoriated tungsten)又は他の類似の物質などの低仕事関数物質を含むことができる。代わりに、電子放出面を約600℃から約2000℃に加熱することによって、例えば熱電子放出などの電子放出を増加させることができる。好適な温度範囲は約800℃から約1200℃である。電子放出面が上昇した温度に保たれると、プラズマを形成するのに必要な電圧はより小さくなる。上昇した温度にある場合、電圧の範囲は約10ボルトから約1000ボルトでもよい。好ましい範囲は、約30ボルトから約500ボルトである。電子放出面が水又は他の冷却手段によって冷却されると、より大きな電圧がプラズマの形成に必要となる。そのような低い温度にある場合、電圧の範囲は約100ボルトから約2000ボルトでもよい。好ましい範囲は、約300ボルトから約1200ボルトである。
【0048】
また、電子放出は、中空陰極又は電子振動効果の形成によって増加させることもできる。いずれか一つの電子放出面が同じ電位で二つの対向面で構成されるように形成される際、電子は振動して、それらの二つの対向面の間に閉じ込めることができる。各電子放出面間の最適距離は、減少していく圧力に従って伸びていく。典型的な作動圧力は、およそ大気圧から約10−4ミリバールでもよい。本発明による好ましい作動圧力は、約1ミリバールから約10−3ミリバールである。それゆえ、約1ミリバールの作動ガス圧での最適距離は、約2mmから約30mmでもよい。好ましい距離は、約3mmから約10mmである。約10−3ミリバールの作動ガス圧での最適距離は約10mmから約100mmでもよい。好ましい距離は約10mmから約30mmである。本発明によるプラズマの長さは、電子放出面の長さを変化させることによって必要に応じて長く或いは短くすることができる。本発明によるプラズマは、0.5メートルを超えて非常に長くすることができる。本発明によるプラズマは、1メートルを超える長さにするのが好ましい。
【0049】
また、電子放出面は、金属、黒鉛、炭化ケイ素、ニホウ化チタンなどの多孔性の導電性物質を含むこともできる。設計が電子放出面用にこれらの多孔性の物質を取り入れる場合、反応ガスもこれらの表面を通って供給される。反応ガスのこの注入方法は、前駆体ガスが壁と接触して被覆を形成するのを防ぐ傾向がある。
【0050】
必要に応じて、図3及び図5に示した放出面のように、電子放出面の数を増加させて電子放出面の配列を形成することができる。ここでの主題の発明者は、驚いたことに、そのような電子放出面の配列が長さだけでなく、かなりの幅も有するプラズマを形成できることを見いだした。 言い換えれば、図3及び図5に示したような配列は二次元のプラズマを形成することができる。そのような配列型のPECVD源は、電子放出面が二つしかないPECVD源に対して利点がある。また、ここでの主題の発明者は、正及び負にバイアスされた電子放出面の間に存在する「暗い空間」が前駆体及び/又は反応ガスを交流の電子流空間内に供給するために利用できることも予想外に発見した。プラズマはそのような「暗い空間」内に入り込まないことが知られており、その結果、前駆体及び/又は反応ガスは、被覆されるべき基板の表面に到達する前にほとんど劣化することなく、又は反応することなく、基板に近接して供給されうる。
【0051】
本発明による均一で、長く安定したプラズマの形成に必須というわけではないが、磁石は、ここに説明されたプラズマ源と共に利用可能であり、1)磁石は有意義なホール電流が形成されない場合に使用されてもよい、2)高密度化したプラズマは磁力線を集めることによって形成することができる、3)高密度化したプラズマを形成するために使用される磁力線は基板の表面の最も近くを通る、或いは通り抜ける、4)磁気「ミラー」は電子放出面の間の電流路内に形成することができる、及び5)高密度化したプラズマを追加の電極と接触させることができることを含む幾つかの利点を提供するが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明による装置及びプラズマ源の前述の利点は、広域ガラス被覆などの広域被覆の分野に直接的な影響を与える。 ガラス基板は、1)誘電体薄膜、2)透明導電性薄膜、3)半導体薄膜、及び4)太陽熱制御(solar control)薄膜を含む薄膜で被覆されるが、これらに限定されるものではない。前述の被覆グループに関して、結晶性、引張り応力及び多孔性などの特性は、本発明によるプラズマ源のある堆積パラメータを調整することによって状況に合わせた性質にすることができる。
【0053】
透明導電性薄膜の広域被覆に関して、結晶化度は、透明導電性膜の伝導度に直接影響する。従来、ほとんどの透明導電性層は基板が高温の時に、スパッタリング又はCVDによって堆積される。上昇した基板の温度によって、電気伝導性にとって最適な結晶化度に再構成するのに必要なエネルギーが堆積した透明導電性物質に与えられる。ガラス基板などの基板の温度を上昇させる必要性は、多くの弊害を引き起こす。これらの弊害には、1)基板の加熱及び冷却、2)基板の加熱及び冷却を取り扱うことができる装置、3)基板の加熱及び冷却に関連する費用、及び4)基板を加熱及び冷却するのに必要な時間が長く(少なくとも一時間に)なりがちであることが含まれるが、これらに限定されるものではない。透明導電性薄膜は基板の要件なしに高温で堆積することができるので、本発明によるPECVD装置のプラズマ源はこれらの弊害を回避する。光学結晶の再配列を容易にするエネルギー源である高温の基板というよりは、エネルギーはプラズマ自体によって提供でき、前述の弊害は解消できる。
【0054】
誘電体薄膜の広域被覆に関して、PECVD式の方法では、表面積が大きい被覆を実行するのは困難である。そのような表面積が大きい被覆用のほとんどの誘電体膜は、スパッタリング式の方法によって堆積される。これらの方法は、約0.1μm以下といった比較的薄い誘電体被覆の生産に使用されてきた。従って、今まで表面積が大きい被覆用に約0.1μm以上の厚さの誘電体被覆は限られてきた。本発明によるPECVD装置のプラズマ源は、例えば少なくとも約0.2μm/秒以上といった高い堆積率の使用を可能にするので、上記制限を回避する。好ましい堆積率は約0.3μm/秒である。最も好ましい堆積率は約0.5μm/秒である。本発明によるPECVD装置を表面積の大きい被覆に適応させる場合、この高い堆積率は、同様に、より厚い誘電体被覆を可能にする。
【0055】
光起電性の応用によるガラス上の薄膜シリコンなどの半導体薄膜の広域被覆に関して、従来の半導体薄膜堆積方法は遅い物質堆積率に制限される。本発明によるPECVD装置のプラズマ源は、例えば少なくとも約0.2μm/秒以上といった高い堆積率の使用が可能なのでこの制限を回避する。本発明によるPECVD装置を表面積の大きい被覆に適応させる場合、この高い堆積率は、同様に、より厚い半導体薄膜被覆を可能にする。
【0056】
本発明によるPECVD装置及び方法によって堆積できる別の物質は、誘電体、透明導電性物質及び/又は半導体物質に特に制限されない。必要に応じて、有機物質は本発明によるPECVD装置及び方法によって堆積できる。例えば、ここに説明されたPECVD装置からのプラズマを受ける有機単量体(organic monomer)は、十分なエネルギーを与えられて重合体になる。
【0057】
本発明の以下の実施形態は、制限することを全く意図していない。当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなくここに説明された装置及び方法をいかにして適応させるかを認識及び評価するであろう。
【0058】
二つの電子放出面51及び52の配列を描く本発明の実施形態が図2に示されており、該電子放出面51及び52は交流のバイポーラ電源(不図示)に接続され、それにより該電子放出面51及び52の電圧は互いに位相がずれている。電圧は300から1200ボルトに達することができ、また、通常一方の面が負にバイアスをかけられる場合、もう一方の面は正にバイアスをかけられる。しかしながら、プラズマ形成を行うのとは異なる十分な電圧がある間は、電子放出面は両方とも正又は負のいずれかにバイアスをかけることができる。極性は、通常約10Hzから108Hzの間のある所定の周波数で切り換えることができる。本発明による好適な周波数帯域は、約103Hzから107Hzである。 図2に示された本発明の実施形態は、幅約18mm、高さ約30mmの小型化したPECVD源の性質を説明する。これらの寸法は、最も知られた従来のプラズマ源よりもはるかに小さい。図2のPECVD装置の底から基板11までの距離は、約3mmから約100mmでもよい。好ましい距離は、約6mmから約50mmである。一般に、基板11はプラズマ源の下に所定の割合で移動していくが、必要に応じて固定されてもよい。
【0059】
前駆体ガスは、吸気管55を通って前駆体マニホルド54に注入され、次に前駆体ガスが穴56の列を通ってプラズマ電流領域に入り、その後プラズマと相互作用できるようにする。高効率の被覆が広域の基板11上に堆積できるように、作られたプラズマは前駆体ガス分子を非常に高い割合で活性化、イオン化及び/又は分解するのに利用できる大量のエネルギーを提供することが有利である。図2の装置がPECVDに適応される場合、他の線状、広域堆積源の報告された堆積率を超える堆積率が実現可能である。驚いたことに、堆積率は、0.5μm/秒の高さ、或いはそれ以上の高さになりうる。絶縁層53は、電子放出面51及び52の間の領域に対するプラズマ生成を制限する。言い換えれば、絶縁層53は、プラズマが電子放出面51及び52によって画定された空間から離れて周囲環境に入らないようにする。
【0060】
驚いたことに、二つの表面51及び52の間に形成されたプラズマは、表面の長さに反って線状かつ均一に広がる。図2のPECVD装置の動作においては、プラズマは約200mmの長さに生成される。しかしながら、プラズマは数メートルの長さにすることができ、なおも安定性及び均一性を維持できる。ここでの開示を鑑みて当業者には認識及び評価されるように、本発明のPECVD装置の特定の大きさは、ここに説明された大きさに変更を加えてプラズマの長さを変えることができる。各表面間の領域内のプラズマ電流は比較的高く、長さ25mm当たり1又は2アンペアの範囲である。該装置による総電力消費量は高く、長さの単位当たり10キロワット秒(kWs)でもよい。
【0061】
図2及び残りの各図は、図示するだけの目的で変更可能なものとしてここに説明されるマニホルド及びPECVD源の他の構成材料を示す。当業者には認識及び評価されるように、各端部は一般に反応ガス、前駆体ガス及びプラズマのいずれかを含むように閉じられている。
【0062】
本発明のPECVD源の実施形態を図3に示す。図3と図2は、両方の実施形態が互いに平行に配置された電子放出面を示している点で類似している。しかしながら、図3では、電子放出面の数が2から10に増加することによって電子放出面の列を形成している。ここでの開示を鑑みて当業者には認識及び評価されるように、電子放出面の正確な数は特に制限されず、必要に応じて調整できる。一般に、4から20の電子放出面が使用可能であるが、必要に応じて20を超える放出面も使用できる。電子放出面の対の数が増加すると、PECVD装置の堆積率性能も向上する。既に高い少なくとも約0.2μm/秒の予想堆積率は、電子放出面の数が4に増加されると二倍になり、電子放出面の数が6に増加されると三倍になることができる(例えば2つの電子放出面は少なくとも約0.2μm/秒の堆積率に相当し、4つの電子放出面は少なくとも約0.4μm/秒の堆積率に相当し、6つの電子放出面は少なくとも約0.6μm/秒の堆積率に相当する)。この堆積率の増加は、より多くの電子表面の対が列に追加されるにつれて拡大し続けることができる。
【0063】
隣接しているそれぞれの電子放出面の間に電子流の領域を作り出すために、電子放出面はバイポーラ電源又はパルス電源(不図示)の極に交互に電気的に接続される。当該接続は、どの表面においても両側の二つの表面の電圧が中央で一方と位相がずれるように行われるのが好ましい。従って、第一の電子放出面40及び第二の電子放出面41は交流電圧又はパルス電圧によって電力を供給され、互いに位相がずれている。残りの列にある後続の電子放出面は、列のほかの全ての表面が電気的に同相になるようにバイアスをかけることができる。電気的な接続は、配列の両端にある電子放出面を除いて、各電子放出面が両側にそれぞれ位相が異なる電子放出面を有するように行われる。絶縁壁42は、配列の外側にプラズマが形成されるのを阻止するために、電子放出面の外側に配置される。
【0064】
基板11から離れたPECVD装置の側面上に反応ガス及び前駆体ガスのための一連のマニホルドがある。反応ガスマニホルド43はそれぞれの電子流空間用に存在し、反応ガスが電子放出面に沿って流れることができるように位置付けられる。前駆体ガスマニホルド44は、前駆体ガスが電子流の流れる空間の中心を通って主に流れるように位置付けられる。反応ガスマニホルド43及び前駆体マニホルド44のこの位置付けは、電子放出面41及び40上の前駆体物質の堆積を減少させるためである。それに応じて、電子が流れる空間はそれぞれ3つの関連するマニホルドを有する。前駆体ガスマニホルド44は、ガスが図3のPECVD源を通過する際に多層堆積が基板11上に形成されるように異なる前駆体ガスによって供給されうる。限定するものではない実施例として、ガラス/SiO2/TiO2/SnO2のガラス被覆システムが必要とされる場合、三つの連続する前駆体ガスマニホルドはシリコン、チタン及びスズをそれぞれ備える適切な前駆体ガスを供給されうる。
【0065】
また、反応ガスマニホルド43も異なるガス物質によって供給されうる。限定するものではない実施例として、オキシ窒化物型の層が求められる場合、反応ガスマニホルドには酸素と窒素を供給できる。反応ガス及び前駆体ガスは、絶縁壁42内で穴45を通ってマニホルド43及び44から流れる。図3において三つのマニホルド46を短く切ることによって、電流が流れる空間に入るガス流の穴45の列を示している。
【0066】
ここでの開示を鑑みて当業者に認識及び評価されるように、広域基板の被覆又は表面処理のために、配列は少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸張することができる。図3において、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0067】
全体の配列は一つの電源(不図示)によって駆動できる。驚いたことに、一つの電源から、プラズマは各表面の長さに沿って均一に分配されるだけでなく、電子放出面から配列の電子放出面に均一に分配され、それにより二次元のプラズマを作る。プラズマのこの二次元の均一な広がりによって、PECVDによる基板表面上への物質の約0.5μm/秒以上という予想外に高い堆積率を可能にする。
【0068】
ここに説明された主題の発明者は、伸長された中空陰極が、驚いたことに広域表面を被覆するPECVD源として使用することができることを見いだした。中空陰極は互いに略平行な二つの表面であり、ここに説明された電子放出面と同様に、該表面は電圧でバイアスされて互いに位相をずらしている。適切な電圧でバイアスされた場合、該表面はプラズマを生成し、その後、該表面に電子又は他のイオンが衝突する。
【0069】
図4は、本発明による二つの中空陰極を示す。中空陰極12はもう一つの中空陰極13に極めて近接して設置される。中空陰極は電子放出物質を含むことに留意する。電気絶縁材14は中空陰極の周りに設置され、プラズマが中空陰極の外側から周囲環境に移動するのを制限する。各中空陰極間で起こる電子振動16の領域、及び二次電子流15が図4に示されている。PECVD源は、堆積される予定の前駆体ガスを送るための前駆体ガスマニホルド17及び前駆体ガス流入管19とともに配置される。また、管18も反応ガスの送出用に設けられる。
【0070】
図4のPECVD装置において、中空陰極12及び13のそれぞれの間に、暗い空間として知られる空間20が存在する。図4に示された二つの中空陰極の間の暗い空間は、プラズマを備えていない又は各陰極間に電流を流さないようにし、それに従って前駆体ガス流用の流路を提供する。暗い空間20内にプラズマが無いことは、前駆体ガスが被覆される基板11に到達する前に反応又は劣化しないことを確実にするので、二つの中空陰極間の暗い空間20内に前駆体ガスを流すことは有利である。言い換えれば、暗い空間において前駆体又は反応ガスのイオン化は発生し得ない。ガス流が該空間内に望ましくない場合、必要に応じて、任意で暗い空間20を絶縁物質で充填することができる。暗い空間20の幅は圧力に左右され、約1ミリバールから約10−3ミリバールの圧力範囲内で約0.3mmから約3mmとなりうる。
【0071】
広域基板の被覆又は表面処理のために、中空陰極は、少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸長することができる。図4では、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0072】
本発明の中空陰極PECVD源の実施形態が図5に示されている。図5と図4は、両方の実施形態が隣接して配置された中空陰極を描いているという点で類似している。しかしながら、図5においては、中空陰極の数が2から4に増えることによって、隣接して配置された中空陰極の配列を形成している。ここでの開示を鑑みて当業者には認識されるように、中空陰極の正確な数は特に制限されず、必要に応じて調整できる。一般に、4つから8つの中空陰極が使用できるが、必要に応じて8つを超える数も使用できる。
【0073】
図5の中空陰極は、二つの表面の間で振動を容易にする電子放出面31及び38を装備する。図5の装置において、電子放出面31は、同相で交流する電圧と電気的に接続される。電子放出面38は電子放出面31と位相がずれている。従って、配列の各電子放出面は、電圧位相がずれている電子放出面をどちらかの側に有するであろう。スロット32は、隣接している電子放出面に電流及びプラズマを流すためにある。各中空陰極間の空間33は暗い空間を意味する。暗い空間33は任意で固体絶縁物によって充填することもできる。暗い空間の幅は圧力に左右され、約1ミリバールから約10−3ミリバールの圧力範囲内で幅約0.3mmから約3mmであってもよい。暗い空間33は、前駆体供給管36及びマニホルド37から電子放出面31及び38と基板11との間の電子流39の領域に流れる前駆体ガス流のために使用することができる。配列の各端部及び配列の裏にある中空陰極の外面は絶縁材34によって覆われて、図5のPECVD装置の裏側及び側面のプラズマ形成を軽減する。
【0074】
反応ガスは管35を通って電子振動の領域内に直接供給することができる。また、別の反応ガスも管35を通って供給することができる。限定するものではない実施例として、オキシ窒化物型の層が必要となる場合、反応ガスマニホルドには酸素及び窒素を供給することができる。
【0075】
前駆体ガスマニホルド36は、ガスが図5のPECVD源を通過する時に多層の堆積が基板11上に形成されるように、別の前駆体ガスを供給されてもよい。限定するものではない実施例として、ガラス/SiO2/TiO2/SnO2のガラス被覆システムが必要とされる場合、三つの連続する前駆体ガスマニホルドはシリコン、チタン及びスズをそれぞれ備える適切な前駆体ガスを供給されうる。非常に高い堆積率が単一の物質に必要とされる場合は、同一の前駆体ガスを二つ以上の前駆体マニホルド36内に注入することができる。そしてこの構成によって達成される少なくとも約0.2μm/秒の堆積率は、中空陰極の組数を乗ずることができる(例えば、一組の中空陰極は少なくとも約0.2μm/秒の堆積率に相当し、二組の中空陰極は少なくとも約0.4μm/秒の堆積率に相当し、三組の中空陰極は少なくとも約0.6 μm/秒の堆積率に相当する)。
【0076】
広域基板の被覆又は表面処理のために、中空陰極は少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸長できる。図5においては、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0077】
「インライン(in-line)」のPECVD源として説明できる本発明によるPECVD源が図6に示されている。図6のPECVD源は、前駆体及び/又は反応ガスがプラズマ電流の領域25を通過するように構成される。複数の電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁が隣接して配置され、電子振動が、例えば電極表面21と22及び23と24の間など、これらの壁の各電極表面間で起こる。バイポーラ電源29は、各電極表面21と22、及び23と24に接続するために使用することができる。電極表面21及び22が電極表面23及び24に対して負にバイアスをかけられる場合に、電子振動が発生する。その後、表面23及び24が表面21及び22に対して負にバイアスをかけられるように、このそれぞれのバイアスはある振動数で極性を反転される。この極性の反転は、プラズマ領域25を通る交流のプラズマ電流を形成する。図示されてはいないが、各電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁は、電気絶縁体によって外面を覆うことによって壁の外側にプラズマを形成させないようにできる。
【0078】
電極表面21、22、23及び24は、電気絶縁体30によって互いに電気的に絶縁することができる。電気絶縁体30は、電極表面23及び24とガスマニホルド26、27及び28とを備える導電性の各壁の間に配置することもできる。マニホルド26は前駆体ガスの送出しに使用することができ、それによって前駆体ガスは電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁の間の中心に流下する。反応ガスマニホルド27及び28は、反応ガスをこれらの壁に沿って移動させて前駆体による好ましくない堆積を防ぐ。
【0079】
従って、「インライン」PECVD源の配置は、反応物及び/又は前駆体ガスが「走り」抜けざるを得ない「プラズマガーネット(plasma garnet)」であると考えられる。この配置において、ガスが基板11に到達するために横断しなければならない距離やプラズマ領域内で最も高いプラズマエネルギーに暴露されることから、反応物及び/又はプラズマガスが励起される機会は劇的に増加する。広域基板の被覆又は表面処理のために、装置は少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸長できる。図6において、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0080】
図7は、「インライン」PECVD源として説明することもできる本発明によるPECVD源を示す。図7のPECVD源は、前駆体及び/又は反応ガスが電子振動及びプラズマ形成の領域25を通過できるように構成される。複数の電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁が隣接して設置され、電子振動がこれらの壁の電極表面21と22及び23と24の間などの各電極表面間で起こる。バイポーラ電源は、電極表面21と22、及び23と24に接続するために使用することができる。電極表面21及び22が電極表面23及び24に対して負にバイアスをかけられる場合、電子振動が発生する。ある振動数において、それぞれのバイアス極性は表面21、22、23及び24の間で反対になる。図示されてはいないが、電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁は、電気絶縁体によって覆われることにより壁の外側にプラズマが形成されるのを抑制する。
【0081】
電極表面21、22、23及び24は、電気絶縁体30によって互いに電気的に絶縁することができる。また、電気絶縁体30は、電極表面23及び24、ガスマニホルド26、27及び28を備える導電性の壁の間に設置することもできる。図7では、プラズマ形成壁及びマニホルドの端部は説明のために開いた状態で示している。ここでの開示を鑑みて当業者には認識されるように、それぞれの端部は、反応ガス、前駆体ガス及びプラズマのいずれかを含むように通常は閉じられている。マニホルド26は、前駆体ガスの送出しに使用することができ、それによって前駆体ガスは電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁の間の中心に流下する。反応ガスマニホルド27及び28は、反応ガスをこれらの壁に沿って移動させて前駆体による好ましくない堆積を防ぐ。
【0082】
従って、反応物及び/又は前駆体ガスが基板11に到達するために横断しなければならない距離は図6における距離よりもさらに長いので、図7の「インライン」PECVD源の配置は図6の配置よりむしろ「プラズマガーネット(plasma garnet)」であると考えられる。広域基板の被覆又は表面処理のために、装置は少なくとも 2メートルから3メートルの長さに伸長できる。図7において、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0083】
図8は追加のマグネットを含む本発明によるPECVD源を示す。磁場の追加は、電子放出面間の通常は真っ直ぐな電流路から電子を抜け出させるのに役立つ。従って、プラズマの高密度化は、プラズマ生成装置からある程度遠隔に行われうる。磁力線が「磁気ミラー」効果を組み込む場合、プラズマの驚くほど高密度かつエネルギー的局在化が形成されうる。また、この高密度化した領域は、広域基板の表面改質又は被覆に使用される均一な高エネルギープラズマストリップ(strip)の中に伸長できる。
【0084】
磁気ミラー現象はプラズマ物理学の分野で知られている。磁気ミラー効果は、電場及び磁場が両方存在して電子運動を促進かつ誘導するところに存在する。磁力線がある時点で集束する場合、該集束に向かって移動する及び集束内に移動する電子は、反射して逆方向にさせられる傾向がある。磁気集束のエリアにおいて、電子密度は単位面積当たりで増加し、負の電気的バイアスの領域を作る。負電荷があることにより、正イオンはこの領域から外へ加速され、これらのイオンは、今度は表面上に衝突する。
【0085】
図8のプラズマ源において、電子は第一の電子放出面70及び第二の電子放出面71によって生成される。図8では、電子放出面は、振動電子プラズマを閉じ込める壁を備える中空管である。管79は、管70及び71にガスを供給する。一般に、このガスは不活性ガス、反応ガス又はそれらの混合物であるだろう。他の種類の電子放出面は、振動電子プラズマを生成するものの代わりになることができる。スロット(不図示)が管70及び71内に作られて、生成されたプラズマの電子及びイオンのための出口経路を作り出す。電子放出面は、交流電流のバイポーラ電源(不図示)によって電力を供給される。これによってプラズマ経路72及び磁気ミラー領域74を通る、交流で、往復する電子流が作られる。装置が伸長する際に、電子の交流の流れはプラズマを広げて均一に分配する傾向がある。発明者は、驚いたことに四メートルに迫るプラズマの長さが、均一及び安定したプラズマ特性を保持できることを見いだした。高密度化されたプラズマ領域74は、これらの長さにわたって驚くほど均一であり、基板11の表面に驚くほど大量のエネルギーを付与する。例えば、基板11が厚さ3mmのガラスモノリス又はガラスリボンである場合、温度は数秒以内に上昇し、その間にプラズマの線に沿って直線的にガラスを切断するには十分である。特に基板がガラス、ポリマー又は熱損傷を受ける他の物質である場合、局在化された熱損傷を避けるように基板11を動かし続けることが望ましい。
【0086】
高密度化されたプラズマ74の領域は、電子放出面からみて基板の反対側に一つ以上の磁極75を有することによって基板11との接触を保たれる。磁場の一部分は、電子放出面付近からプラズマエリア72を通り、次に領域77の基板11を通って基板の後ろの極まで伸びる。磁気回路の他の部分は、磁極片78及び79を通って流れる磁場を含む。これらは通常、鉄などの磁気的導電性材料から作られる。磁極片部分77及び78の間で、磁場は基板11を通って領域76内に入る。
【0087】
より大きなエネルギー又は広域にわたって広がるエネルギーは、基板11の後ろの磁極の数を増加させることによって実現できる。一般に、磁気回路を容易にするためには、奇数の極が基板11の後ろに維持される。多数の電子放出面の組が追加の磁極と同様に取り入れられる場合、多くの他の構成が可能である。これらの追加の構成は、ここでの開示を鑑みて当業者には認識及び評価されるであろう。
【0088】
図8のブロック80は多数の異なるハードウェアコンポーネントに対応することができる。その最も簡単な形状は、圧力制御、ガスの閉じ込め、遮蔽、又は他の機械的な使用のためのプラズマ空間を囲む壁でもよい。ブロック80は、スパッタリング源、蒸発源又は前駆体ガスの分配用のガスマニホルドなどの堆積原子の追加資源となることができる。そのような構成は、ここでの開示を鑑みて当業者には認識及び評価されるであろう。
【0089】
図8の装置は、プラズマのこの高密度化が基板表面と接触し、堆積源からの堆積原子が基板に付着する前に高密度化されたプラズマ領域74を通過する場合、特に有利である。堆積原子又は分子が高密度化したプラズマ領域74を通過する場合、堆積物質に与えられる追加エネルギーは、堆積層に与えられる望ましい特性になることができる。堆積層に与えられるこの有利な特性には、強化された遮断性、層密度及び向上した結晶性が含まれうるが、それらに限定されるわけではない。さらに、結晶化は、既存の被覆の後処理及び急速なアニーリング(annealing)によって達成又は向上させることもできる。
【0090】
また、図8の装置は、プラズマエネルギー、イオン衝撃、又はプラズマ内に含まれる高い反応ガス種によって表面を化学的に改質する点で有効である。広域基板の被覆又は表面処理のために、装置は少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸長することができる。図8において、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0091】
図9は、追加の第三の電極を含む本発明によるPECVD源を示す。この第三の電極に印加される電圧の適用によって、該第三の電極は、二つの電子放出面が形成するプラズマから外へイオンを加速させる機能を果たすことができる。この電圧は電子放出面に印加される電圧とは区別され、不変の正又は負のバイアス(直流)でもよく、又は何らかの交流電圧に変化してもよい。交流電圧は継続的に変化している又はパルス化されてもよい。該電圧は、電子放出面の電圧と同期させることができる。ここでの開示を鑑みて当業者には認識及び評価されるように、適切な電圧要件は、図9のPECVD源の所望の適用によって決定される。第三の電極は、ある特定の方法で電子を閉じ込める又は誘導するために磁場を用いて構成できる。他の機器の組み合わせ及び第三の電極の位置づけは、当業者によって認識及び評価されるであろう。
【0092】
図9において、プラズマは、第一の電子放出面100及び第二の電子放出面101によって形成される。電子放出面100及び101は電子振動型である。該電子放出面は、四つの水冷管102によって任意で水冷することができる。プラズマ103は、二つの電子放出面100及び101のそれぞれの対向面の間やそれぞれの対向面の中に形成される。導電性の第三の電極105は、その両端上の絶縁体104によって電子放出面との直接的な電気接触を絶縁される。独特の長さで、幅及び高さが非常にコンパクトあるイオンビームは、電極105に向かって又は電極105から離れるように加速することができる。
【0093】
図9のPECVD源の実際の適用は、第三の電極105を高電流、高電圧の負パルスを可能にする電源に接続することによって行うことができる。この方法でパルス化された場合、正イオンは第三の電極105の表面に向かって加速され、この表面のスパッタリング又はイオン衝撃による侵食をもたらす。スパッタされた原子は主に電極表面から外側へ向けられ、基板表面11上に被膜を形成する。この方法による被覆は、磁気材料などのマグネトロンスパッタリングによって行うのが通常難しい物質の堆積を可能にする。プラズマ103は、その密度や高プラズマ電流の結果、この適用においては非常に効率的なイオン源である。このスパッタリング法によって見込まれる長さは、他のハードウェアによって効果的に得られるものではない。広域基板の被覆又は表面処理のために、装置は少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸長することができる。図9において、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0094】
また、図9のPECVD源は、イオン衝撃源として適用することもできる。一定の電圧(直流)又は交流電圧によって第三の電極105を正にバイアスをかけることで、イオンは基板に向かって加速できる。
【0095】
図10は、本発明によるPECVD源の別の実施形態を示す。図10は、二つの中空陰極設計を示し、対向する電子放出面81、82、83及び84は、該電子放出面の間にプラズマ電流で電子振動92及び93の二つの領域を形成し、多孔性の導電体を備える。驚いたことに、対向する電子放出面81、82、83及び84が固形の導電性の壁から構成されない場合、電子振動効果は維持される。各面81、82、83及び84は、ワイヤースクリーン構造、焼結された多孔性の金属、穿孔されたプレート、又は、ガス或いはプラズマ成分の流量(throughput)を与える任意の導電体を備えることができる。場合によっては、イオンなどの加速された粒子が固体物と衝突せずに通過するための直線状の経路を設けることは、多孔性の電子放出面の孔にとって有利である。電子放出面の多孔性は、約75%からわずか約0.1%でもよい。好ましい範囲は約50%から約1%である。孔は、細長い穴、正方形、又は丸い穴を含む多様な形状で構成できるが、これらに限定されるわけではない。電子放出面は、導電性の発泡体又は焼結された物質から作ることができる。
【0096】
プラズマ領域内に入るガスはさまざまな方法で構成することができる。図10では、作動ガスが管88を通ってから電気絶縁壁85の穴90を通って注入される。各絶縁壁85は約2mmから約1メートル間隔をあけて配置できる。驚いたことに、プラズマは該間隔にかかわらず均一に広がる。プラズマ源が(図10の上方方向に)伸長する場合、約10mmから約4メートルの長さにすることができる。プラズマはこの全長にわたって均一に広がり、必要に応じて大きなプラズマの二次元の面を作ることができる。
【0097】
図10において、磁極片87を伴う任意の磁石86が示されている。この構成において、プラズマ92及び93は、基板11の反対側に位置づけられた磁石の磁力線をプラズマ形成装置から集束させることによって基板11上に集められる。磁力線は、プラズマ92が表面と接触する領域で基板を通過し、領域91で磁気的に導電する磁極片87を通る。絶縁壁89はプラズマ領域を磁石から絶縁する。
【0098】
図11は、本発明によるPECVD源を示す。図11は、図6の電子放出面を繰り返し配置して一つの配列にしたものを示す。この構造において、一組の対向面110及び111を形成する振動電子プラズマは列を成して繰り返し配置される。電子を放出する組数は、図6のように一組から十組であってもよい。全ての電子放出面は二つのワイヤ118及び119を通って一つのバイポーラ電源117に電気的に接続される。基板11に最も近い対向する電子面111の全ての列は、ワイヤ119によって一緒に電気的に接続されて、プラズマ114を生成できる。対向する電子放出面110の全ての列は、別のワイヤ118を通って、列111と位相が異なる交流電圧によって一緒に電気的に接続され、プラズマ113を生成できる。驚いたことに、一つの電源によって駆動されるにもかかわらず、プラズマは配列の全ての組にわたって幅方向に均一に分散される。プラズマ源が4メートルに伸長される際、プラズマも長さが統一される。
【0099】
前駆体ガス及び反応性ガスは、別々のガスマニホルド114及び115を通って分散させることができる。前駆体ガスは中央のマニホルド114を通って注入されることが望ましい。反応性ガスは、電子放出面110及び111に沿って反応性ガスを流す方法でマニホルド115を通して注入されるのが望ましく、それにより当該放出面の被覆を軽減させる。任意で、電子放出面110及び111は、水冷チャネル112を通って冷却することができる。
【0100】
図11の配列は、一つの前駆体が使用される場合に、非常に高い堆積率で基板11上に被覆物質を堆積させるのに使用できる。堆積率は、現在、従来のPECVD装置の機能を超える約0.5μm/秒を達成できる。また、装置は、異なる電子放出面の組に注入された異なる前駆体ガスで動作し、多層被覆の積み重ねを形成することができる。また、一つの装置から多層の積み重ねを形成する機能は層を50mmの狭さで4メートルの長さにすることもでき、該機能は従来のPECVD被覆技術を使用しても得ることはできない。
【0101】
実施例1
図5のPECVD装置から作られる二酸化シリコン被覆が以下に説明される。PECVD装置は、全長約150mm、幅約50mmである。中空陰極電極の底部からガラス基板の上面までの距離は、11mmに固定された。全部で4つの中空陰極が隣接して配置され、AC電源に接続された。前駆体ガスは、供給管36を経由して暗い空間33に、100sccmの割合で供給された。前駆体ガスは、テトラメチルジシロキサン(tetramethyldisiloxane)100%であった。反応ガスは、供給管35を経由して中空陰極空間に供給された。反応ガスは、酸素100%であり、300sccmの割合で供給された。基板11は、ソーダ石灰フロートガラスの一部分であり、図5のPECVD源の下に静止して保持された。使用されたAC電源供給源は、アドバンスドエナジー社のPE−II、40kHzのAC電源供給源であった。基板11上の被覆された領域の大きさは50mm×100mmであった。被覆プロセスの結果を表1に示す。
【表1】
【0102】
表1から分かるように、二酸化シリコンの薄膜被覆は静止したガラス基板上に10秒間堆積され、厚さ6ミクロンの二酸化シリコン薄膜を生成した。これにより、0.6μm/秒の堆積率を生み出す。発明者が現在認識している中で、そのような高堆積率を可能にするPECVD装置は他にはない。二酸化シリコン膜の光学的特性は光学顕微鏡を使って質的に検査され、被覆が高い平滑度及び低ヘイズ度を有することを示した。また、引張り応力は、二酸化シリコン被覆を基板から切り離すこと及び被覆のいかなる「カーリング(curling)」を観察することによって質的に評価された。十分な引張り応力が被覆に存在している場合、カール(curl)することが予想される。しかしながら、カーリングは確認されず、従って、実施例1の二酸化シリコン被覆は引張り応力が低いと見なされた。
【0103】
本発明は特定の実施形態に関して説明されているが、ここに記載の特定の詳細に限定されず、当業者が連想できるさまざまな変更又は改良を含み、それらは全て下記の請求項により定義されるように本発明の範囲内に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に薄膜の堆積及び表面の化学的改質のためのプラズマ源に関する。より具体的には、本発明はプラズマ強化化学蒸着(CVD)用の線状プラズマ源に関する。
【背景技術】
【0002】
ここに参照されるすべての米国特許及び米国特許出願は、その内容を全て参照によりここに援用する。不一致がある場合には、本明細書及び明細書中の定義が支配する。
【0003】
薄膜堆積は多くの技術によって達成可能であり、最も一般的なのは、化学的堆積法、物理的堆積法及びその二つを混合することである。化学的堆積法に関しては、めっき法、化学溶液堆積(CSD)法及び化学蒸着(CVD)法が周知の技術である。CVDが一般にガス状の化学的前駆体を利用するのに対して、めっき法及びCSDは一般に液体の化学的前駆体を利用する。これらの技術は、大気圧又は真空状態下で行うことができる。物理的堆積法に関しては、熱蒸着、スパッタリング、パルスレーザー堆積及び陰極アーク堆積が周知の技術である。これらの物理的堆積技術は、所望の薄膜物質を堆積させるために一般に真空状態を利用する。化学的堆積法に関しては、最も一般的な技術はCVDであり、一方で物理的堆積法においては、最も一般的な技術はスパッタリングである。
【0004】
CVDは、一般に前駆体ガスが基体表面に付着又は粘着するような状態を作るために、エネルギー源が含まれることを必要とする。そうでない場合は、表面への付着が生じないこととなる。例えば、板ガラス基板上に薄膜被覆を行う熱分解CVDプロセスにおいて、ガラス基板が加熱されるのは一般的である。加熱されたガラス基板はCVDエネルギー源として機能し、前駆体ガスが加熱されたガラス基板に接触すると、前駆体ガスは熱いガラス表面に付着する。また、加熱された表面は、前駆体ガスが化学的に反応して最終的な薄膜被覆組成物(composition)を形成するのに必要なエネルギーを提供する。
【0005】
また、プラズマは、プラズマ強化CVD又はPECVDとして知られる、CVD型プロセス用のエネルギー源となることもできる。プラズマは部分的にイオン化したガス及び自由電子を含み、各構成要素はある程度独立して動くことができる。この独立した動きがプラズマを導電化し、電磁界に対応できるようになる。 この導電率は、他の既知の化学的及び物理的堆積技術よりも数多くの利点をPECVDプロセスにもたらす。
【0006】
PECVDプロセスでは、蒸着物質は通常前駆体ガスから生じる。そのような前駆体ガスの具体例が当業者によく知られている。例えば、ケイ素系の薄膜が蒸着される場合、共通の前駆体ガスはシラン(SiH4)である。SiH4がプラズマ源に導入される際、プラズマはシラン分子のエネルギーレベルを、表面と反応し、固体層として付着する段階に上げるように機能できる。より具体的には、SiH4はイオン化され、その電子はより高いエネルギーレベルに移行する。これは、その後の水素原子の剥離と同時に起こる。イオン化分子は利用可能な露出した反応部位を有し、酸素などの反応ガスがある場合、SiO2(二酸化ケイ素)の薄膜をすぐに形成できる。イオン化分子が反応ガスの存在下にない場合、シリコンの薄膜が形成されうる。前駆体ガスが過剰な各要素のために化学的に存在するので、PECVDによって蒸着できる要素や物質を広く利用できる。PECVDによって蒸着できる各種薄膜は、透明導電性酸化薄膜被覆、太陽熱制御(solar control)と光学薄膜被覆、及び半導体薄膜被覆があるが、これらに限定されるものではない。当業者は、PECVDによって蒸着可能な他の種類の薄膜被覆を認識及び評価するであろう。
【0007】
従って、表面に近接してプラズマを作ることは、特に塗装業においては共通の工業的実施である。多くの装置がプラズマを作成及び成形するために開発されてきている。最もよく知られる装置は円筒形状のプラズマプルーム(plasma plume)を作成し、被覆や表面処理のために非常に多くの方面で実用化されている。しかしながら、線状プラズマは、場合によってはさらに実用性があるかもしれない。線状プラズマは広い基板の表面部分に手を加えることができ、広域のガラス被覆、ウェブ被覆や複数の部分に分かれたバッチ被覆に有用である。
【0008】
今日まで、ほとんどのプラズマ源は非常に短くて狭い領域しか被覆できなかったので、最もよく知られるPECVD装置は小規模な(すなわち1m2未満)堆積用である。従って、広域被覆に適用されたPECVDは実施が困難であった。しかしながら、広域の表面を被覆するために設計されたPECVD装置は存在してきた。これらの装置は、マグネトロン源、陽極層イオン源及びMadocks源を含むが、これらに限定されるものではない。
【0009】
しかしながら、前述のPECVD装置を広域表面の被覆に使用することに付随していくつかの欠点がある。例えば、マグネトロン源は、通常幅150mm、深さ300mmというかさばる大きさであり、かつ磁石を必要とする傾向がある。また、PECVDに使用される場合、マグネトロン源の表面は堆積される物質で覆われる傾向があり、それゆえ、マグネトロンは絶縁化されて、アーク放電や他の厄介な問題を引き起こしうる。さらに、スパッタされた物質が堆積される物質を汚染する。例えば、陽極層イオン源は、被覆されることに加えて、大き過ぎて扱いにくくかつ磁石を必要とする傾向がある点で、マグネトロン源と類似の欠点に悩まされる。さらに、陽極層イオン源はPECVD物質を0.1μm/秒という低い割合で堆積させる傾向がある。例えばMadocks源は、約15%といった低い被覆効率に加えて、大き過ぎて扱いにくくかつ磁石を必要とするという欠点に悩まされる。さらに、三つの前述の源はどれも、均一したプラズマを作るために閉回路電子ドリフト(例えば、ホール効果)に依存する。
【0010】
閉回路電子ドリフト又はホール効果(Hall effect)に依存せずに均一なプラズマを作ることは可能である。これを行うためによく使われる手法は、互いに略平行に並べられた二つの電子放出面を有することであり、そこで電子放出面は、AC電源を経由して位相をずらした方法で二極式に互いに接続される。電圧差が両方の電子放出面に加えられると、プラズマが作り出される。二つの電子放出面間の極性はある所定の周波数で正極から負極に切り換えられ、プラズマが広がって均一になる。
【0011】
並列の電子放出面に基づくプラズマ源が開発されてきた。そのような源の一つが、特許文献1に説明されるような中空陰極源である。より具体的には、特許文献1に説明されるプラズマ源は、図1に示すように、バイポーラAC電源に接続される二つの中空陰極形状で構成された構造を備えている。プラズマ源は、第1及び第2の中空陰極構造1及び2を含む。二つの中空陰極構造1及び2は、ワイヤ6によってAC電源5に電気的に接続され、該AC電源5はAC電流を生成してプラズマ3の形成を促進する。中空陰極構造の一つに負電圧を与えると同時に、別の中空陰極構造に正電圧を与え、中空陰極構造間の電圧差を作って当該構造間に電流が流れるようにし、それによって電気回路を完成させる。任意で、中空陰極構造1及び2の間のプラズマ電流を高めるために、各中空陰極の開口部に近接して磁石4を配置することができる。しかしながら、特許文献1は、どのPECVDプロセスのためにも又は広域の表面被覆のためにも、開示された中空陰極の使用に取り組んでいない。
【0012】
従って、広範囲被覆の技術分野では、かなりの長さ、すなわち0.5メートルを超える長さの均一かつ安定したプラズマを作り出せるプラズマ源又はPECVD源の必要性が残っている。また、小型でありかつ高い被覆効率で被覆させることができるPECVD源の当技術分野における必要性も残っている。さらに、当技術分野においては、全体の作業コストが削減されるように、作業中のエネルギー消費が少ないPECVD源及びプロセスの必要性が残っている。
【0013】
<関連する出願への相互参照>
本出願は、2008年8月4日に出願された米国仮特許出願第61/137,839号の利益を主張すると共に、その全内容を参照により本出願に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,444,945号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様において、安定、均一かつ長いプラズマを提供する。
【0016】
本発明の一態様において、安定、均一かつ長いプラズマを形成できるプラズマ源を提供する。
【0017】
本発明の一態様において、線状プラズマ源として機能する一対の電子放出面を提供する。
【0018】
本発明の一態様において、二次元のプラズマ源として機能する一連の電子放出面を提供する。
【0019】
本発明の別の態様において、安定、均一かつ長い線状プラズマを形成する方法を提供する。
【0020】
本発明の別の態様において、安定、均一かつ長い二次元のプラズマを形成する方法を提供する。
【0021】
本発明の別の態様において、前駆体ガスのエネルギー源として機能するプラズマを提供する。
【0022】
本発明の別の態様において、前駆体ガスをプラズマ源に供給する方法を提供する。
【0023】
本発明の更に別の態様において、安定、均一かつ長いプラズマを使用して広域の被覆を形成する方法を提供する。
【0024】
本発明の更に別の態様において、磁石を用いて作られた高密度化したプラズマを提供する。
【0025】
本発明の更に別の態様において、高密度化したプラズマ源を曲げる方法を提供する。
【0026】
本発明の更に別の態様において、PECVDプロセスによって蒸着された被覆の被覆効率を向上させる方法を提供する。
【0027】
本発明の更に別の態様において、二次電子流をもたらすPECVD装置を提供する。
【0028】
これら及び他の態様は、本発明の好適な実施形態の原則に従って、AC電源を経由して互いに接続される少なくとも二つの電子放出面を設けることによって達成され、該AC電源は、可変又は交流のバイポーラ電圧を当該二つの電子放出面に供給する。より具体的には、AC電源が二つの電子放出面にバイポーラ電圧差を印加するように、当該少なくとも二つの電子放出面はAC電源を経由して互いに接続される。バイポーラ電源は、初めに第一の電子放出面を負電圧にしてプラズマの形成を可能にし、一方で第二の電子放出面は、電圧応用回路の陽極として機能するために正電圧にされる。その後、第一の電子放出面を正電圧にし、陰極と陽極の役割を反対にする。電子放出面の一つが負極になると、対応する空洞内で放電が発生する。その後、もう一つの陰極が陽極を形成し、電子をプラズマから逃れさせて陽極側に移動させ、それによって電気回路を完成させる。
【0029】
本発明による電子放出面の配置は、標準モードと熱電子モードという二つの一般的なモードで行うことができる。標準モードにおいては、電子放出面の温度は比較的低温に保たれ、水冷又は他の冷却方法によって制御される。標準モードの際、電子流は比較的低いままで、陰極は動作するのに数百から数千ボルトを必要とする。熱電子モードにおいて、電子放出面は、プラズマ加熱効果又は別の加熱装置から温度が上がってもよい。電子放出面が高温になる場合、電子放出は冷陰極の電子放出より少なくとも一桁高く増大し、比較的低電圧での高い陰極放電電流をもたらす。熱電子モードになるために必要な温度及び効率的な動作に必要な電圧は、陰極の物質の仕事関数に部分的に左右されるであろう。
【0030】
所望する場合、磁石及び/又は追加の電極は、本発明による電子放出面の配置と関連して使用することができる。磁石及び/又は追加の電極の使用により、本発明のPECVD源によって作られるプラズマの高密度化をもたらす。本発明によるプラズマ源は、例えば継目のない(monolithic)ガラス及び/又はガラスリボンを被覆する広域被覆などのような、安定、均一かつ長いプラズマが求められるさまざまな応用のいずれにも使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明は、従来技術のプラズマ源を超える多数の明確な利点及び設計特性を提供する。これらは、1)本発明によるプラズマ形成装置は、二つの電子放出面間の距離を約0.5mmと狭く、全長約60mm未満の非常に小型にすることができる、2)プラズマ源は線状かつ長さを例えば0.5メートル未満にすることができる、3)電子放出面は、ガス防護及び/又は熱蒸発によって清潔に保つことができる(例えば表面が被覆されないなど)、4)前駆体ガスはより高い反応性を得るために熱的及び/又は電気的にエネルギーを加えられる、5)プラズマ源は、単位長さ当たりの高いプラズマ電流を生成することができる、6)プラズマ源は、容量性又はダイオード型のシステムの密度を超えるプラズマ密度を形成できる、及び7)プラズマ源から作られるプラズマは二次元にされてもよいことを含むが、それらに限定されるものではない。
【0032】
ここでの主題の発明者は、驚いたことに上述の利点が、1)二次電子表面間の高い二次電子流、2)広域被覆の高い堆積率、3)数ミクロンの厚さが可能であるが低応力である広域被覆、4)数ミクロンの厚さが可能であるが平滑な広域被覆、及び5)数ミクロンの厚さがあるが低ヘイズを有する広域被覆を導くことを見いだしている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】先行技術の中空陰極装置を示す。
【図2】本発明による基本的な線状PECVD装置を示す。
【図3】図2の基本的な線状PECVD装置の配列を示す。
【図4】本発明によるPECVD装置における二つの中空陰極を示す。
【図5】本発明によるPECVD装置における中空陰極の配列を示す。
【図6】本発明によるPECVD装置の「インライン(in-line)」配置を示す。
【図7】本発明によるPECVD装置の別の「インライン」配置を示す。
【図8】マグネットを備える本発明によるPECVD装置を示す。
【図9】第三の電極を備える本発明によるPECVD装置を示す。
【図10】一連の多孔壁を備える本発明によるPECVD装置を示す。
【図11】本発明による「インライン」PECVD装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は多くの異なる形で具体化しても良いが、多数の例示的実施形態がここには説明されており、本発明の開示は本発明の原理の実施例を提供するとみなされていると理解されて、そのような実施例は本発明をここに説明された及び/又は例示された好適な実施形態に限定するものではない。さまざまな実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に開示されている。他の実施形態を使用してもよく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく構成的及び論理的な変更を加えても良いと理解されている。
【0035】
ここで言及されるように、「暗い空間」とは、プラズマ電流が非常に低い狭い区間又は電極の周囲部分を意味する。一般に、二つの逆帯電したプラズマ電極、又は暗い空間の距離によって相隔たる一つのプラズマ電極と接地電位導体は、実質的にそれらの間に電流は流れないことを示す。
【0036】
「中空陰極」とは、主に対向する陰極表面及び第三の隣接した陽極表面を一般に含むプラズマ形成装置を意味する。対向する陰極表面は、各表面の負の電界の間で電子が振動して閉じ込められるように間隔をあけている。
【0037】
「前駆体ガス」とは、凝結して固体被覆となる一つの化学元素又は複数の化学元素を含んでいる分子形態のガスを意味する。前駆体ガスから凝結される化学元素は、金属、遷移金属、ホウ素、炭素、シリコンゲルマニウム及び/又はセレンを含むことができる。一般に、前駆体分子は、エネルギー源によって活性化、部分的に分解、或いは完全に分解されるまで非反応物質であり又は表面上に付着しにくく、その結果被覆用の所望の化学元素を含む前駆体ガスのケミカルフラグメント(chemical fragment)は、表面上に固形で化学的に結合又は凝結することができるようになる。前駆体化合物の凝結した部分は、主に純元素、元素の混合物、前駆体化合物の構成成分から生じた化合物、又は化合物の混合物でもよい。
【0038】
「反応ガス」とは、酸素及び/又は窒素を意味する。前駆体ガス単体から化学的に利用可能でない表面上の化合物を堆積させるのが望ましいことが多い。多くの場合、酸素又は窒素などの反応ガスはCVDプロセスに加えられて酸化物又は窒化物を形成する。他の反応ガスは、フッ素、塩素、他のハロゲン又は水素を備えることができる。反応ガスは、活性化又は化学的に分解された場合であっても、凝縮できる分子的実体は形成されないという事実によって、前駆体ガスと区別することができる。一般に、反応ガス又は反応ガスフラグメント(fragments)自体は固体析出を促進させることはできないが、反応することはでき、前駆体ガス又は他の固体析出源から得られる固体析出に化学的に組み込まれることとなる。
【0039】
「基板」とは、本発明によって被覆される或いは化学的に改良された表面を有する、狭い領域又は広い領域の部材を意味する。ここで参照される基板は、ガラス、プラスチック、無機物、有機物、又は被覆或いは改良される表面を有する他のいかなる物質を含むことができる。
【0040】
「プラズマ」とは、自由電子と陽イオンの両方を備える導電性の気体媒体を意味する。
【0041】
「ホール電流」とは、交差した電場及び磁場よって引き起こされる電子流を意味する。多くの従来のプラズマ形成装置においては、ホール電流は電子流の密閉循環路又は「レーストラック(racetrack)」を形成する。
【0042】
「AC電力」又は「AC電源」とは交流電源からの電力を意味し、電圧が正弦波、方形波、パルス状又は他の何らかの波形で、ある周波数で変化している。電圧変動は、負電圧から正電圧が多い。バイポーラ形式の場合、二つのリードによって伝達される出力は通常約180°位相がずれている。
【0043】
「熱電子の」とは、高い表面温度によって放出が大幅に加速する表面からの電子放出を意味する。熱電子の温度は、通常約600℃以上である。
【0044】
「仕事関数」とは、電子を固体表面から固体表面のすぐ外側に移動させるのに必要である電子ボルト(eV)の最小エネルギーを意味する。
【0045】
「二次電子」又は「二次電子流」とは、微粒子による表面の衝撃及び結果的に生成された電流による固体表面からの電子放出をそれぞれ意味する。
【0046】
本明細書の主題の発明者は、PECVDプロセスにとって有益な、長くて(例えば、0.5メートルを超える)安定した均一の線状プラズマが閉回路電子ドリフト(例えばホール効果など)に依存せずに作り出されることを驚いたことに見いだした。これは、AC電源を経由して互いに接続される少なくとも2つの電子放出面を設けることによって達成でき、該AC電源は、可変又は交流のバイポーラ電圧を該2つの電子放出面に供給する。より具体的には、AC電源が二つの電子放出面にバイポーラ電圧差を印加するように、当該少なくとも2つの電子放出面はAC電源を経由して互いに接続される。バイポーラ電源は、最初に第一の電子放出面を負電圧にしてプラズマの形成を可能にし、一方で第二の電子放出面は、電圧応用回路の陽極として機能を果たすために正電圧にされる。その後、第一の電子放出面を正電圧にし、陰極と陽極の役割を反対にする。電子放出面の一つが負極になると、対応する空洞内で放電が発生する。その後、もう一つの陰極は陽極を形成し、電子をプラズマから逃れさせて陽極側に移動させ、それによって電気回路を完成させる。
【0047】
本発明による電子放出面はプラズマを生成し、二つの表面は今度はさらに電子又はイオンの衝突を受ける。電子又はイオンによる電子放出面の衝突は、各電子放出面から放出される二次電子をもたらす。二次電子流は高密度化されたプラズマの生成に役立つので、二次電子放出は重要である。二つの電子放出面の間に存在する空間は、電流が電子流及び/又はイオン流を備える空間である。この空間は、使用する被覆パラメータに応じて距離によって変化させることができる。この距離は約1mmから約0.5メートルの間で可能であり、プラズマ形成装置の構造及び電子放出面を取り囲む作動ガス圧力によって部分的に決定される。電子放出面の電子放出を増加させるために、電子放出面はトリウムタングステン(thoriated tungsten)又は他の類似の物質などの低仕事関数物質を含むことができる。代わりに、電子放出面を約600℃から約2000℃に加熱することによって、例えば熱電子放出などの電子放出を増加させることができる。好適な温度範囲は約800℃から約1200℃である。電子放出面が上昇した温度に保たれると、プラズマを形成するのに必要な電圧はより小さくなる。上昇した温度にある場合、電圧の範囲は約10ボルトから約1000ボルトでもよい。好ましい範囲は、約30ボルトから約500ボルトである。電子放出面が水又は他の冷却手段によって冷却されると、より大きな電圧がプラズマの形成に必要となる。そのような低い温度にある場合、電圧の範囲は約100ボルトから約2000ボルトでもよい。好ましい範囲は、約300ボルトから約1200ボルトである。
【0048】
また、電子放出は、中空陰極又は電子振動効果の形成によって増加させることもできる。いずれか一つの電子放出面が同じ電位で二つの対向面で構成されるように形成される際、電子は振動して、それらの二つの対向面の間に閉じ込めることができる。各電子放出面間の最適距離は、減少していく圧力に従って伸びていく。典型的な作動圧力は、およそ大気圧から約10−4ミリバールでもよい。本発明による好ましい作動圧力は、約1ミリバールから約10−3ミリバールである。それゆえ、約1ミリバールの作動ガス圧での最適距離は、約2mmから約30mmでもよい。好ましい距離は、約3mmから約10mmである。約10−3ミリバールの作動ガス圧での最適距離は約10mmから約100mmでもよい。好ましい距離は約10mmから約30mmである。本発明によるプラズマの長さは、電子放出面の長さを変化させることによって必要に応じて長く或いは短くすることができる。本発明によるプラズマは、0.5メートルを超えて非常に長くすることができる。本発明によるプラズマは、1メートルを超える長さにするのが好ましい。
【0049】
また、電子放出面は、金属、黒鉛、炭化ケイ素、ニホウ化チタンなどの多孔性の導電性物質を含むこともできる。設計が電子放出面用にこれらの多孔性の物質を取り入れる場合、反応ガスもこれらの表面を通って供給される。反応ガスのこの注入方法は、前駆体ガスが壁と接触して被覆を形成するのを防ぐ傾向がある。
【0050】
必要に応じて、図3及び図5に示した放出面のように、電子放出面の数を増加させて電子放出面の配列を形成することができる。ここでの主題の発明者は、驚いたことに、そのような電子放出面の配列が長さだけでなく、かなりの幅も有するプラズマを形成できることを見いだした。 言い換えれば、図3及び図5に示したような配列は二次元のプラズマを形成することができる。そのような配列型のPECVD源は、電子放出面が二つしかないPECVD源に対して利点がある。また、ここでの主題の発明者は、正及び負にバイアスされた電子放出面の間に存在する「暗い空間」が前駆体及び/又は反応ガスを交流の電子流空間内に供給するために利用できることも予想外に発見した。プラズマはそのような「暗い空間」内に入り込まないことが知られており、その結果、前駆体及び/又は反応ガスは、被覆されるべき基板の表面に到達する前にほとんど劣化することなく、又は反応することなく、基板に近接して供給されうる。
【0051】
本発明による均一で、長く安定したプラズマの形成に必須というわけではないが、磁石は、ここに説明されたプラズマ源と共に利用可能であり、1)磁石は有意義なホール電流が形成されない場合に使用されてもよい、2)高密度化したプラズマは磁力線を集めることによって形成することができる、3)高密度化したプラズマを形成するために使用される磁力線は基板の表面の最も近くを通る、或いは通り抜ける、4)磁気「ミラー」は電子放出面の間の電流路内に形成することができる、及び5)高密度化したプラズマを追加の電極と接触させることができることを含む幾つかの利点を提供するが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明による装置及びプラズマ源の前述の利点は、広域ガラス被覆などの広域被覆の分野に直接的な影響を与える。 ガラス基板は、1)誘電体薄膜、2)透明導電性薄膜、3)半導体薄膜、及び4)太陽熱制御(solar control)薄膜を含む薄膜で被覆されるが、これらに限定されるものではない。前述の被覆グループに関して、結晶性、引張り応力及び多孔性などの特性は、本発明によるプラズマ源のある堆積パラメータを調整することによって状況に合わせた性質にすることができる。
【0053】
透明導電性薄膜の広域被覆に関して、結晶化度は、透明導電性膜の伝導度に直接影響する。従来、ほとんどの透明導電性層は基板が高温の時に、スパッタリング又はCVDによって堆積される。上昇した基板の温度によって、電気伝導性にとって最適な結晶化度に再構成するのに必要なエネルギーが堆積した透明導電性物質に与えられる。ガラス基板などの基板の温度を上昇させる必要性は、多くの弊害を引き起こす。これらの弊害には、1)基板の加熱及び冷却、2)基板の加熱及び冷却を取り扱うことができる装置、3)基板の加熱及び冷却に関連する費用、及び4)基板を加熱及び冷却するのに必要な時間が長く(少なくとも一時間に)なりがちであることが含まれるが、これらに限定されるものではない。透明導電性薄膜は基板の要件なしに高温で堆積することができるので、本発明によるPECVD装置のプラズマ源はこれらの弊害を回避する。光学結晶の再配列を容易にするエネルギー源である高温の基板というよりは、エネルギーはプラズマ自体によって提供でき、前述の弊害は解消できる。
【0054】
誘電体薄膜の広域被覆に関して、PECVD式の方法では、表面積が大きい被覆を実行するのは困難である。そのような表面積が大きい被覆用のほとんどの誘電体膜は、スパッタリング式の方法によって堆積される。これらの方法は、約0.1μm以下といった比較的薄い誘電体被覆の生産に使用されてきた。従って、今まで表面積が大きい被覆用に約0.1μm以上の厚さの誘電体被覆は限られてきた。本発明によるPECVD装置のプラズマ源は、例えば少なくとも約0.2μm/秒以上といった高い堆積率の使用を可能にするので、上記制限を回避する。好ましい堆積率は約0.3μm/秒である。最も好ましい堆積率は約0.5μm/秒である。本発明によるPECVD装置を表面積の大きい被覆に適応させる場合、この高い堆積率は、同様に、より厚い誘電体被覆を可能にする。
【0055】
光起電性の応用によるガラス上の薄膜シリコンなどの半導体薄膜の広域被覆に関して、従来の半導体薄膜堆積方法は遅い物質堆積率に制限される。本発明によるPECVD装置のプラズマ源は、例えば少なくとも約0.2μm/秒以上といった高い堆積率の使用が可能なのでこの制限を回避する。本発明によるPECVD装置を表面積の大きい被覆に適応させる場合、この高い堆積率は、同様に、より厚い半導体薄膜被覆を可能にする。
【0056】
本発明によるPECVD装置及び方法によって堆積できる別の物質は、誘電体、透明導電性物質及び/又は半導体物質に特に制限されない。必要に応じて、有機物質は本発明によるPECVD装置及び方法によって堆積できる。例えば、ここに説明されたPECVD装置からのプラズマを受ける有機単量体(organic monomer)は、十分なエネルギーを与えられて重合体になる。
【0057】
本発明の以下の実施形態は、制限することを全く意図していない。当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなくここに説明された装置及び方法をいかにして適応させるかを認識及び評価するであろう。
【0058】
二つの電子放出面51及び52の配列を描く本発明の実施形態が図2に示されており、該電子放出面51及び52は交流のバイポーラ電源(不図示)に接続され、それにより該電子放出面51及び52の電圧は互いに位相がずれている。電圧は300から1200ボルトに達することができ、また、通常一方の面が負にバイアスをかけられる場合、もう一方の面は正にバイアスをかけられる。しかしながら、プラズマ形成を行うのとは異なる十分な電圧がある間は、電子放出面は両方とも正又は負のいずれかにバイアスをかけることができる。極性は、通常約10Hzから108Hzの間のある所定の周波数で切り換えることができる。本発明による好適な周波数帯域は、約103Hzから107Hzである。 図2に示された本発明の実施形態は、幅約18mm、高さ約30mmの小型化したPECVD源の性質を説明する。これらの寸法は、最も知られた従来のプラズマ源よりもはるかに小さい。図2のPECVD装置の底から基板11までの距離は、約3mmから約100mmでもよい。好ましい距離は、約6mmから約50mmである。一般に、基板11はプラズマ源の下に所定の割合で移動していくが、必要に応じて固定されてもよい。
【0059】
前駆体ガスは、吸気管55を通って前駆体マニホルド54に注入され、次に前駆体ガスが穴56の列を通ってプラズマ電流領域に入り、その後プラズマと相互作用できるようにする。高効率の被覆が広域の基板11上に堆積できるように、作られたプラズマは前駆体ガス分子を非常に高い割合で活性化、イオン化及び/又は分解するのに利用できる大量のエネルギーを提供することが有利である。図2の装置がPECVDに適応される場合、他の線状、広域堆積源の報告された堆積率を超える堆積率が実現可能である。驚いたことに、堆積率は、0.5μm/秒の高さ、或いはそれ以上の高さになりうる。絶縁層53は、電子放出面51及び52の間の領域に対するプラズマ生成を制限する。言い換えれば、絶縁層53は、プラズマが電子放出面51及び52によって画定された空間から離れて周囲環境に入らないようにする。
【0060】
驚いたことに、二つの表面51及び52の間に形成されたプラズマは、表面の長さに反って線状かつ均一に広がる。図2のPECVD装置の動作においては、プラズマは約200mmの長さに生成される。しかしながら、プラズマは数メートルの長さにすることができ、なおも安定性及び均一性を維持できる。ここでの開示を鑑みて当業者には認識及び評価されるように、本発明のPECVD装置の特定の大きさは、ここに説明された大きさに変更を加えてプラズマの長さを変えることができる。各表面間の領域内のプラズマ電流は比較的高く、長さ25mm当たり1又は2アンペアの範囲である。該装置による総電力消費量は高く、長さの単位当たり10キロワット秒(kWs)でもよい。
【0061】
図2及び残りの各図は、図示するだけの目的で変更可能なものとしてここに説明されるマニホルド及びPECVD源の他の構成材料を示す。当業者には認識及び評価されるように、各端部は一般に反応ガス、前駆体ガス及びプラズマのいずれかを含むように閉じられている。
【0062】
本発明のPECVD源の実施形態を図3に示す。図3と図2は、両方の実施形態が互いに平行に配置された電子放出面を示している点で類似している。しかしながら、図3では、電子放出面の数が2から10に増加することによって電子放出面の列を形成している。ここでの開示を鑑みて当業者には認識及び評価されるように、電子放出面の正確な数は特に制限されず、必要に応じて調整できる。一般に、4から20の電子放出面が使用可能であるが、必要に応じて20を超える放出面も使用できる。電子放出面の対の数が増加すると、PECVD装置の堆積率性能も向上する。既に高い少なくとも約0.2μm/秒の予想堆積率は、電子放出面の数が4に増加されると二倍になり、電子放出面の数が6に増加されると三倍になることができる(例えば2つの電子放出面は少なくとも約0.2μm/秒の堆積率に相当し、4つの電子放出面は少なくとも約0.4μm/秒の堆積率に相当し、6つの電子放出面は少なくとも約0.6μm/秒の堆積率に相当する)。この堆積率の増加は、より多くの電子表面の対が列に追加されるにつれて拡大し続けることができる。
【0063】
隣接しているそれぞれの電子放出面の間に電子流の領域を作り出すために、電子放出面はバイポーラ電源又はパルス電源(不図示)の極に交互に電気的に接続される。当該接続は、どの表面においても両側の二つの表面の電圧が中央で一方と位相がずれるように行われるのが好ましい。従って、第一の電子放出面40及び第二の電子放出面41は交流電圧又はパルス電圧によって電力を供給され、互いに位相がずれている。残りの列にある後続の電子放出面は、列のほかの全ての表面が電気的に同相になるようにバイアスをかけることができる。電気的な接続は、配列の両端にある電子放出面を除いて、各電子放出面が両側にそれぞれ位相が異なる電子放出面を有するように行われる。絶縁壁42は、配列の外側にプラズマが形成されるのを阻止するために、電子放出面の外側に配置される。
【0064】
基板11から離れたPECVD装置の側面上に反応ガス及び前駆体ガスのための一連のマニホルドがある。反応ガスマニホルド43はそれぞれの電子流空間用に存在し、反応ガスが電子放出面に沿って流れることができるように位置付けられる。前駆体ガスマニホルド44は、前駆体ガスが電子流の流れる空間の中心を通って主に流れるように位置付けられる。反応ガスマニホルド43及び前駆体マニホルド44のこの位置付けは、電子放出面41及び40上の前駆体物質の堆積を減少させるためである。それに応じて、電子が流れる空間はそれぞれ3つの関連するマニホルドを有する。前駆体ガスマニホルド44は、ガスが図3のPECVD源を通過する際に多層堆積が基板11上に形成されるように異なる前駆体ガスによって供給されうる。限定するものではない実施例として、ガラス/SiO2/TiO2/SnO2のガラス被覆システムが必要とされる場合、三つの連続する前駆体ガスマニホルドはシリコン、チタン及びスズをそれぞれ備える適切な前駆体ガスを供給されうる。
【0065】
また、反応ガスマニホルド43も異なるガス物質によって供給されうる。限定するものではない実施例として、オキシ窒化物型の層が求められる場合、反応ガスマニホルドには酸素と窒素を供給できる。反応ガス及び前駆体ガスは、絶縁壁42内で穴45を通ってマニホルド43及び44から流れる。図3において三つのマニホルド46を短く切ることによって、電流が流れる空間に入るガス流の穴45の列を示している。
【0066】
ここでの開示を鑑みて当業者に認識及び評価されるように、広域基板の被覆又は表面処理のために、配列は少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸張することができる。図3において、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0067】
全体の配列は一つの電源(不図示)によって駆動できる。驚いたことに、一つの電源から、プラズマは各表面の長さに沿って均一に分配されるだけでなく、電子放出面から配列の電子放出面に均一に分配され、それにより二次元のプラズマを作る。プラズマのこの二次元の均一な広がりによって、PECVDによる基板表面上への物質の約0.5μm/秒以上という予想外に高い堆積率を可能にする。
【0068】
ここに説明された主題の発明者は、伸長された中空陰極が、驚いたことに広域表面を被覆するPECVD源として使用することができることを見いだした。中空陰極は互いに略平行な二つの表面であり、ここに説明された電子放出面と同様に、該表面は電圧でバイアスされて互いに位相をずらしている。適切な電圧でバイアスされた場合、該表面はプラズマを生成し、その後、該表面に電子又は他のイオンが衝突する。
【0069】
図4は、本発明による二つの中空陰極を示す。中空陰極12はもう一つの中空陰極13に極めて近接して設置される。中空陰極は電子放出物質を含むことに留意する。電気絶縁材14は中空陰極の周りに設置され、プラズマが中空陰極の外側から周囲環境に移動するのを制限する。各中空陰極間で起こる電子振動16の領域、及び二次電子流15が図4に示されている。PECVD源は、堆積される予定の前駆体ガスを送るための前駆体ガスマニホルド17及び前駆体ガス流入管19とともに配置される。また、管18も反応ガスの送出用に設けられる。
【0070】
図4のPECVD装置において、中空陰極12及び13のそれぞれの間に、暗い空間として知られる空間20が存在する。図4に示された二つの中空陰極の間の暗い空間は、プラズマを備えていない又は各陰極間に電流を流さないようにし、それに従って前駆体ガス流用の流路を提供する。暗い空間20内にプラズマが無いことは、前駆体ガスが被覆される基板11に到達する前に反応又は劣化しないことを確実にするので、二つの中空陰極間の暗い空間20内に前駆体ガスを流すことは有利である。言い換えれば、暗い空間において前駆体又は反応ガスのイオン化は発生し得ない。ガス流が該空間内に望ましくない場合、必要に応じて、任意で暗い空間20を絶縁物質で充填することができる。暗い空間20の幅は圧力に左右され、約1ミリバールから約10−3ミリバールの圧力範囲内で約0.3mmから約3mmとなりうる。
【0071】
広域基板の被覆又は表面処理のために、中空陰極は、少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸長することができる。図4では、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0072】
本発明の中空陰極PECVD源の実施形態が図5に示されている。図5と図4は、両方の実施形態が隣接して配置された中空陰極を描いているという点で類似している。しかしながら、図5においては、中空陰極の数が2から4に増えることによって、隣接して配置された中空陰極の配列を形成している。ここでの開示を鑑みて当業者には認識されるように、中空陰極の正確な数は特に制限されず、必要に応じて調整できる。一般に、4つから8つの中空陰極が使用できるが、必要に応じて8つを超える数も使用できる。
【0073】
図5の中空陰極は、二つの表面の間で振動を容易にする電子放出面31及び38を装備する。図5の装置において、電子放出面31は、同相で交流する電圧と電気的に接続される。電子放出面38は電子放出面31と位相がずれている。従って、配列の各電子放出面は、電圧位相がずれている電子放出面をどちらかの側に有するであろう。スロット32は、隣接している電子放出面に電流及びプラズマを流すためにある。各中空陰極間の空間33は暗い空間を意味する。暗い空間33は任意で固体絶縁物によって充填することもできる。暗い空間の幅は圧力に左右され、約1ミリバールから約10−3ミリバールの圧力範囲内で幅約0.3mmから約3mmであってもよい。暗い空間33は、前駆体供給管36及びマニホルド37から電子放出面31及び38と基板11との間の電子流39の領域に流れる前駆体ガス流のために使用することができる。配列の各端部及び配列の裏にある中空陰極の外面は絶縁材34によって覆われて、図5のPECVD装置の裏側及び側面のプラズマ形成を軽減する。
【0074】
反応ガスは管35を通って電子振動の領域内に直接供給することができる。また、別の反応ガスも管35を通って供給することができる。限定するものではない実施例として、オキシ窒化物型の層が必要となる場合、反応ガスマニホルドには酸素及び窒素を供給することができる。
【0075】
前駆体ガスマニホルド36は、ガスが図5のPECVD源を通過する時に多層の堆積が基板11上に形成されるように、別の前駆体ガスを供給されてもよい。限定するものではない実施例として、ガラス/SiO2/TiO2/SnO2のガラス被覆システムが必要とされる場合、三つの連続する前駆体ガスマニホルドはシリコン、チタン及びスズをそれぞれ備える適切な前駆体ガスを供給されうる。非常に高い堆積率が単一の物質に必要とされる場合は、同一の前駆体ガスを二つ以上の前駆体マニホルド36内に注入することができる。そしてこの構成によって達成される少なくとも約0.2μm/秒の堆積率は、中空陰極の組数を乗ずることができる(例えば、一組の中空陰極は少なくとも約0.2μm/秒の堆積率に相当し、二組の中空陰極は少なくとも約0.4μm/秒の堆積率に相当し、三組の中空陰極は少なくとも約0.6 μm/秒の堆積率に相当する)。
【0076】
広域基板の被覆又は表面処理のために、中空陰極は少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸長できる。図5においては、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0077】
「インライン(in-line)」のPECVD源として説明できる本発明によるPECVD源が図6に示されている。図6のPECVD源は、前駆体及び/又は反応ガスがプラズマ電流の領域25を通過するように構成される。複数の電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁が隣接して配置され、電子振動が、例えば電極表面21と22及び23と24の間など、これらの壁の各電極表面間で起こる。バイポーラ電源29は、各電極表面21と22、及び23と24に接続するために使用することができる。電極表面21及び22が電極表面23及び24に対して負にバイアスをかけられる場合に、電子振動が発生する。その後、表面23及び24が表面21及び22に対して負にバイアスをかけられるように、このそれぞれのバイアスはある振動数で極性を反転される。この極性の反転は、プラズマ領域25を通る交流のプラズマ電流を形成する。図示されてはいないが、各電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁は、電気絶縁体によって外面を覆うことによって壁の外側にプラズマを形成させないようにできる。
【0078】
電極表面21、22、23及び24は、電気絶縁体30によって互いに電気的に絶縁することができる。電気絶縁体30は、電極表面23及び24とガスマニホルド26、27及び28とを備える導電性の各壁の間に配置することもできる。マニホルド26は前駆体ガスの送出しに使用することができ、それによって前駆体ガスは電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁の間の中心に流下する。反応ガスマニホルド27及び28は、反応ガスをこれらの壁に沿って移動させて前駆体による好ましくない堆積を防ぐ。
【0079】
従って、「インライン」PECVD源の配置は、反応物及び/又は前駆体ガスが「走り」抜けざるを得ない「プラズマガーネット(plasma garnet)」であると考えられる。この配置において、ガスが基板11に到達するために横断しなければならない距離やプラズマ領域内で最も高いプラズマエネルギーに暴露されることから、反応物及び/又はプラズマガスが励起される機会は劇的に増加する。広域基板の被覆又は表面処理のために、装置は少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸長できる。図6において、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0080】
図7は、「インライン」PECVD源として説明することもできる本発明によるPECVD源を示す。図7のPECVD源は、前駆体及び/又は反応ガスが電子振動及びプラズマ形成の領域25を通過できるように構成される。複数の電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁が隣接して設置され、電子振動がこれらの壁の電極表面21と22及び23と24の間などの各電極表面間で起こる。バイポーラ電源は、電極表面21と22、及び23と24に接続するために使用することができる。電極表面21及び22が電極表面23及び24に対して負にバイアスをかけられる場合、電子振動が発生する。ある振動数において、それぞれのバイアス極性は表面21、22、23及び24の間で反対になる。図示されてはいないが、電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁は、電気絶縁体によって覆われることにより壁の外側にプラズマが形成されるのを抑制する。
【0081】
電極表面21、22、23及び24は、電気絶縁体30によって互いに電気的に絶縁することができる。また、電気絶縁体30は、電極表面23及び24、ガスマニホルド26、27及び28を備える導電性の壁の間に設置することもできる。図7では、プラズマ形成壁及びマニホルドの端部は説明のために開いた状態で示している。ここでの開示を鑑みて当業者には認識されるように、それぞれの端部は、反応ガス、前駆体ガス及びプラズマのいずれかを含むように通常は閉じられている。マニホルド26は、前駆体ガスの送出しに使用することができ、それによって前駆体ガスは電極表面21、22、23及び24を備える導電性の壁の間の中心に流下する。反応ガスマニホルド27及び28は、反応ガスをこれらの壁に沿って移動させて前駆体による好ましくない堆積を防ぐ。
【0082】
従って、反応物及び/又は前駆体ガスが基板11に到達するために横断しなければならない距離は図6における距離よりもさらに長いので、図7の「インライン」PECVD源の配置は図6の配置よりむしろ「プラズマガーネット(plasma garnet)」であると考えられる。広域基板の被覆又は表面処理のために、装置は少なくとも 2メートルから3メートルの長さに伸長できる。図7において、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0083】
図8は追加のマグネットを含む本発明によるPECVD源を示す。磁場の追加は、電子放出面間の通常は真っ直ぐな電流路から電子を抜け出させるのに役立つ。従って、プラズマの高密度化は、プラズマ生成装置からある程度遠隔に行われうる。磁力線が「磁気ミラー」効果を組み込む場合、プラズマの驚くほど高密度かつエネルギー的局在化が形成されうる。また、この高密度化した領域は、広域基板の表面改質又は被覆に使用される均一な高エネルギープラズマストリップ(strip)の中に伸長できる。
【0084】
磁気ミラー現象はプラズマ物理学の分野で知られている。磁気ミラー効果は、電場及び磁場が両方存在して電子運動を促進かつ誘導するところに存在する。磁力線がある時点で集束する場合、該集束に向かって移動する及び集束内に移動する電子は、反射して逆方向にさせられる傾向がある。磁気集束のエリアにおいて、電子密度は単位面積当たりで増加し、負の電気的バイアスの領域を作る。負電荷があることにより、正イオンはこの領域から外へ加速され、これらのイオンは、今度は表面上に衝突する。
【0085】
図8のプラズマ源において、電子は第一の電子放出面70及び第二の電子放出面71によって生成される。図8では、電子放出面は、振動電子プラズマを閉じ込める壁を備える中空管である。管79は、管70及び71にガスを供給する。一般に、このガスは不活性ガス、反応ガス又はそれらの混合物であるだろう。他の種類の電子放出面は、振動電子プラズマを生成するものの代わりになることができる。スロット(不図示)が管70及び71内に作られて、生成されたプラズマの電子及びイオンのための出口経路を作り出す。電子放出面は、交流電流のバイポーラ電源(不図示)によって電力を供給される。これによってプラズマ経路72及び磁気ミラー領域74を通る、交流で、往復する電子流が作られる。装置が伸長する際に、電子の交流の流れはプラズマを広げて均一に分配する傾向がある。発明者は、驚いたことに四メートルに迫るプラズマの長さが、均一及び安定したプラズマ特性を保持できることを見いだした。高密度化されたプラズマ領域74は、これらの長さにわたって驚くほど均一であり、基板11の表面に驚くほど大量のエネルギーを付与する。例えば、基板11が厚さ3mmのガラスモノリス又はガラスリボンである場合、温度は数秒以内に上昇し、その間にプラズマの線に沿って直線的にガラスを切断するには十分である。特に基板がガラス、ポリマー又は熱損傷を受ける他の物質である場合、局在化された熱損傷を避けるように基板11を動かし続けることが望ましい。
【0086】
高密度化されたプラズマ74の領域は、電子放出面からみて基板の反対側に一つ以上の磁極75を有することによって基板11との接触を保たれる。磁場の一部分は、電子放出面付近からプラズマエリア72を通り、次に領域77の基板11を通って基板の後ろの極まで伸びる。磁気回路の他の部分は、磁極片78及び79を通って流れる磁場を含む。これらは通常、鉄などの磁気的導電性材料から作られる。磁極片部分77及び78の間で、磁場は基板11を通って領域76内に入る。
【0087】
より大きなエネルギー又は広域にわたって広がるエネルギーは、基板11の後ろの磁極の数を増加させることによって実現できる。一般に、磁気回路を容易にするためには、奇数の極が基板11の後ろに維持される。多数の電子放出面の組が追加の磁極と同様に取り入れられる場合、多くの他の構成が可能である。これらの追加の構成は、ここでの開示を鑑みて当業者には認識及び評価されるであろう。
【0088】
図8のブロック80は多数の異なるハードウェアコンポーネントに対応することができる。その最も簡単な形状は、圧力制御、ガスの閉じ込め、遮蔽、又は他の機械的な使用のためのプラズマ空間を囲む壁でもよい。ブロック80は、スパッタリング源、蒸発源又は前駆体ガスの分配用のガスマニホルドなどの堆積原子の追加資源となることができる。そのような構成は、ここでの開示を鑑みて当業者には認識及び評価されるであろう。
【0089】
図8の装置は、プラズマのこの高密度化が基板表面と接触し、堆積源からの堆積原子が基板に付着する前に高密度化されたプラズマ領域74を通過する場合、特に有利である。堆積原子又は分子が高密度化したプラズマ領域74を通過する場合、堆積物質に与えられる追加エネルギーは、堆積層に与えられる望ましい特性になることができる。堆積層に与えられるこの有利な特性には、強化された遮断性、層密度及び向上した結晶性が含まれうるが、それらに限定されるわけではない。さらに、結晶化は、既存の被覆の後処理及び急速なアニーリング(annealing)によって達成又は向上させることもできる。
【0090】
また、図8の装置は、プラズマエネルギー、イオン衝撃、又はプラズマ内に含まれる高い反応ガス種によって表面を化学的に改質する点で有効である。広域基板の被覆又は表面処理のために、装置は少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸長することができる。図8において、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0091】
図9は、追加の第三の電極を含む本発明によるPECVD源を示す。この第三の電極に印加される電圧の適用によって、該第三の電極は、二つの電子放出面が形成するプラズマから外へイオンを加速させる機能を果たすことができる。この電圧は電子放出面に印加される電圧とは区別され、不変の正又は負のバイアス(直流)でもよく、又は何らかの交流電圧に変化してもよい。交流電圧は継続的に変化している又はパルス化されてもよい。該電圧は、電子放出面の電圧と同期させることができる。ここでの開示を鑑みて当業者には認識及び評価されるように、適切な電圧要件は、図9のPECVD源の所望の適用によって決定される。第三の電極は、ある特定の方法で電子を閉じ込める又は誘導するために磁場を用いて構成できる。他の機器の組み合わせ及び第三の電極の位置づけは、当業者によって認識及び評価されるであろう。
【0092】
図9において、プラズマは、第一の電子放出面100及び第二の電子放出面101によって形成される。電子放出面100及び101は電子振動型である。該電子放出面は、四つの水冷管102によって任意で水冷することができる。プラズマ103は、二つの電子放出面100及び101のそれぞれの対向面の間やそれぞれの対向面の中に形成される。導電性の第三の電極105は、その両端上の絶縁体104によって電子放出面との直接的な電気接触を絶縁される。独特の長さで、幅及び高さが非常にコンパクトあるイオンビームは、電極105に向かって又は電極105から離れるように加速することができる。
【0093】
図9のPECVD源の実際の適用は、第三の電極105を高電流、高電圧の負パルスを可能にする電源に接続することによって行うことができる。この方法でパルス化された場合、正イオンは第三の電極105の表面に向かって加速され、この表面のスパッタリング又はイオン衝撃による侵食をもたらす。スパッタされた原子は主に電極表面から外側へ向けられ、基板表面11上に被膜を形成する。この方法による被覆は、磁気材料などのマグネトロンスパッタリングによって行うのが通常難しい物質の堆積を可能にする。プラズマ103は、その密度や高プラズマ電流の結果、この適用においては非常に効率的なイオン源である。このスパッタリング法によって見込まれる長さは、他のハードウェアによって効果的に得られるものではない。広域基板の被覆又は表面処理のために、装置は少なくとも2メートルから3メートルの長さに伸長することができる。図9において、伸長は上方方向、或いは紙の平面から出てくるように行われる。
【0094】
また、図9のPECVD源は、イオン衝撃源として適用することもできる。一定の電圧(直流)又は交流電圧によって第三の電極105を正にバイアスをかけることで、イオンは基板に向かって加速できる。
【0095】
図10は、本発明によるPECVD源の別の実施形態を示す。図10は、二つの中空陰極設計を示し、対向する電子放出面81、82、83及び84は、該電子放出面の間にプラズマ電流で電子振動92及び93の二つの領域を形成し、多孔性の導電体を備える。驚いたことに、対向する電子放出面81、82、83及び84が固形の導電性の壁から構成されない場合、電子振動効果は維持される。各面81、82、83及び84は、ワイヤースクリーン構造、焼結された多孔性の金属、穿孔されたプレート、又は、ガス或いはプラズマ成分の流量(throughput)を与える任意の導電体を備えることができる。場合によっては、イオンなどの加速された粒子が固体物と衝突せずに通過するための直線状の経路を設けることは、多孔性の電子放出面の孔にとって有利である。電子放出面の多孔性は、約75%からわずか約0.1%でもよい。好ましい範囲は約50%から約1%である。孔は、細長い穴、正方形、又は丸い穴を含む多様な形状で構成できるが、これらに限定されるわけではない。電子放出面は、導電性の発泡体又は焼結された物質から作ることができる。
【0096】
プラズマ領域内に入るガスはさまざまな方法で構成することができる。図10では、作動ガスが管88を通ってから電気絶縁壁85の穴90を通って注入される。各絶縁壁85は約2mmから約1メートル間隔をあけて配置できる。驚いたことに、プラズマは該間隔にかかわらず均一に広がる。プラズマ源が(図10の上方方向に)伸長する場合、約10mmから約4メートルの長さにすることができる。プラズマはこの全長にわたって均一に広がり、必要に応じて大きなプラズマの二次元の面を作ることができる。
【0097】
図10において、磁極片87を伴う任意の磁石86が示されている。この構成において、プラズマ92及び93は、基板11の反対側に位置づけられた磁石の磁力線をプラズマ形成装置から集束させることによって基板11上に集められる。磁力線は、プラズマ92が表面と接触する領域で基板を通過し、領域91で磁気的に導電する磁極片87を通る。絶縁壁89はプラズマ領域を磁石から絶縁する。
【0098】
図11は、本発明によるPECVD源を示す。図11は、図6の電子放出面を繰り返し配置して一つの配列にしたものを示す。この構造において、一組の対向面110及び111を形成する振動電子プラズマは列を成して繰り返し配置される。電子を放出する組数は、図6のように一組から十組であってもよい。全ての電子放出面は二つのワイヤ118及び119を通って一つのバイポーラ電源117に電気的に接続される。基板11に最も近い対向する電子面111の全ての列は、ワイヤ119によって一緒に電気的に接続されて、プラズマ114を生成できる。対向する電子放出面110の全ての列は、別のワイヤ118を通って、列111と位相が異なる交流電圧によって一緒に電気的に接続され、プラズマ113を生成できる。驚いたことに、一つの電源によって駆動されるにもかかわらず、プラズマは配列の全ての組にわたって幅方向に均一に分散される。プラズマ源が4メートルに伸長される際、プラズマも長さが統一される。
【0099】
前駆体ガス及び反応性ガスは、別々のガスマニホルド114及び115を通って分散させることができる。前駆体ガスは中央のマニホルド114を通って注入されることが望ましい。反応性ガスは、電子放出面110及び111に沿って反応性ガスを流す方法でマニホルド115を通して注入されるのが望ましく、それにより当該放出面の被覆を軽減させる。任意で、電子放出面110及び111は、水冷チャネル112を通って冷却することができる。
【0100】
図11の配列は、一つの前駆体が使用される場合に、非常に高い堆積率で基板11上に被覆物質を堆積させるのに使用できる。堆積率は、現在、従来のPECVD装置の機能を超える約0.5μm/秒を達成できる。また、装置は、異なる電子放出面の組に注入された異なる前駆体ガスで動作し、多層被覆の積み重ねを形成することができる。また、一つの装置から多層の積み重ねを形成する機能は層を50mmの狭さで4メートルの長さにすることもでき、該機能は従来のPECVD被覆技術を使用しても得ることはできない。
【0101】
実施例1
図5のPECVD装置から作られる二酸化シリコン被覆が以下に説明される。PECVD装置は、全長約150mm、幅約50mmである。中空陰極電極の底部からガラス基板の上面までの距離は、11mmに固定された。全部で4つの中空陰極が隣接して配置され、AC電源に接続された。前駆体ガスは、供給管36を経由して暗い空間33に、100sccmの割合で供給された。前駆体ガスは、テトラメチルジシロキサン(tetramethyldisiloxane)100%であった。反応ガスは、供給管35を経由して中空陰極空間に供給された。反応ガスは、酸素100%であり、300sccmの割合で供給された。基板11は、ソーダ石灰フロートガラスの一部分であり、図5のPECVD源の下に静止して保持された。使用されたAC電源供給源は、アドバンスドエナジー社のPE−II、40kHzのAC電源供給源であった。基板11上の被覆された領域の大きさは50mm×100mmであった。被覆プロセスの結果を表1に示す。
【表1】
【0102】
表1から分かるように、二酸化シリコンの薄膜被覆は静止したガラス基板上に10秒間堆積され、厚さ6ミクロンの二酸化シリコン薄膜を生成した。これにより、0.6μm/秒の堆積率を生み出す。発明者が現在認識している中で、そのような高堆積率を可能にするPECVD装置は他にはない。二酸化シリコン膜の光学的特性は光学顕微鏡を使って質的に検査され、被覆が高い平滑度及び低ヘイズ度を有することを示した。また、引張り応力は、二酸化シリコン被覆を基板から切り離すこと及び被覆のいかなる「カーリング(curling)」を観察することによって質的に評価された。十分な引張り応力が被覆に存在している場合、カール(curl)することが予想される。しかしながら、カーリングは確認されず、従って、実施例1の二酸化シリコン被覆は引張り応力が低いと見なされた。
【0103】
本発明は特定の実施形態に関して説明されているが、ここに記載の特定の詳細に限定されず、当業者が連想できるさまざまな変更又は改良を含み、それらは全て下記の請求項により定義されるように本発明の範囲内に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電子放出面及び第二の電子放出面を備え、
前記各電子放出面は正負が交互に入れ替わる電圧を供給する電源に電気的に接続され、
前記各電子放出面は、ガスを含む空間によって隔てられ、
前記第二の電子放出面に供給される電圧は、 前記第一の電子放出面に供給される電圧と位相がずれており、
二次電子を備える電流は前記電子放出面の間に流れ、
プラズマは前記電子放出面の間に作られ、前記プラズマは線状であり、少なくとも長さ約0.5メートルであり、閉回路電子ドリフトが実質的に存在しない状態でプラズマの長さにわたって略均一に作られる、プラズマ源。
【請求項2】
前記各電子放出面は、互いに少なくとも約1ミリメートルから少なくとも約0.5メートル離れている、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項3】
前記プラズマ源によって作られる前記プラズマは、長さが少なくとも約一メートルである、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項4】
前記各電子放出面は、少なくとも約600℃から少なくとも約2000℃である、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項5】
前記各電子放出面は、少なくとも約800℃から少なくとも約1200℃である、請求項4に記載のプラズマ源。
【請求項6】
前記電流は前記各電子放出面に配置されたオリフィス又は限られた開口を通って流れる、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項7】
前記ガスを含む空間は、前駆体ガス、反応ガス又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項8】
前記前駆体ガスは、金属、遷移金属、ホウ素、炭素、シリコンゲルマニウム、セレン、又はそれらの組み合わせを備える、請求項7に記載のプラズマ源。
【請求項9】
前記反応ガスは、酸素、窒素、ハロゲン、水素又はそれらの組み合わせを備える、請求項7に記載のプラズマ源。
【請求項10】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.2μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項11】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.3μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項12】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.5μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項13】
請求項1に記載のプラズマ源によって生成される被膜。
【請求項14】
複数対の電子放出面を備え、各対は第一の電子放出面及び第二の電子放出面を備え、
前記複数対の電子放出面は配列に隣接して配置され、
電子放出面の各対はガスを含む空間によって隔てられ、
電子放出面の各対は、正負が交互に入れ替わる電圧を供給する電源に電気的に接続され、
各対の前記第二の電子放出面に供給される前記電圧は、各対の前記第一の電子放出面に供給される前記電圧と位相がずれており、
二次電子を備える電流は各対の前記電子放出面の間に流れ、
二次元のプラズマは、各対の前記電子放出面の間に作られた前記プラズマによって形成され、
前記二次元のプラズマは、長さが少なくとも約0.5メートルであり、閉回路電子ドリフトが実質的に存在しない状態で二次元に略均一に作られる、プラズマ源。
【請求項15】
各対の前記電子放出面は互いに少なくとも約1ミリメートルから少なくとも約0.5メートル離れている、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項16】
前記二次元のプラズマによって作られる前記プラズマ源は、長さが少なくとも約一メートルである、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項17】
各対の前記電子放出面は少なくとも約600℃から少なくとも約2000℃である、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項18】
各対の前記電子放出面は少なくとも約800℃から少なくとも約1200℃である、請求項17に記載のプラズマ源。
【請求項19】
前記電流は、各対の前記各電子放出面に配置されたオリフィス又は限られた開口を通って流れる、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項20】
前記ガスを含む空間は、前駆体ガス、反応ガスまたはそれらの組み合わせを含む、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項21】
前記前駆体ガスは、金属、遷移金属、ホウ素、炭素、シリコンゲルマニウム、セレン又はそれらの組み合わせを備える、請求項20に記載のプラズマ源。
【請求項22】
前記反応ガスは、酸素、窒素、ハロゲン、水素又はそれらの組み合わせを備える、請求項20に記載のプラズマ源。
【請求項23】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.2μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項24】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.3μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項25】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.5μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項26】
請求項14に記載のプラズマ源によって生成される被膜。
【請求項27】
第一の電子放出面と第二の電子放出面、及び少なくとも二つの磁極を備え、
前記各電子放出面は正負が交互に入れ替わる電圧を供給する電源に電気的に接続され、
前記各電子放出面はガスを含む空間によって隔てられ、
前記第二の電子放出面に供給される前記電圧は、前記第一の電子放出面に供給される前記電圧と位相がずれており、
二次電子を備える電流は前記電子放出面の間に流れ、
前記少なくとも二つの磁極は、前記電子放出面の間に作られたプラズマを曲げる及び/又は高密度化するように位置する、プラズマ源。
【請求項28】
請求項27に記載のプラズマ源によって生成される被膜。
【請求項29】
第一の電子放出面と第二の電子放出面、及び少なくとも一つの電極を備え、
前記電子放出面は正負が交互に入れ替わる電圧を供給する第一の電源に電気的に接続され、
前記少なくとも一つの電極は、前記第一及び第二の電子放出面に供給される前記電圧と異なる電圧を供給する第二の電源に接続され、
前記各電子放出面はガスを含む空間によって隔てられ、
前記第二の電子放出面に供給される前記電圧は、前記第一の電子放出面に供給される前記電圧と位相がずれており、
二次電子を備える電流は前記電子放出面の間に流れ、
前記少なくとも一つの電極が負にパルス化される場合、正イオンは前記少なくとも一つの電極の表面に向かって加速する、プラズマ源。
【請求項30】
請求項29に記載のプラズマ源によって生成される被覆。
【請求項31】
a)線状及び長さが少なくとも約0.5メートルで、閉回路電子ドリフトが実質的に存在しない状態でその長さにわたって略均一に作られるプラズマを提供することと、
b)前記プラズマに近接して前駆体及び/又は反応ガスを提供することと、
c)被覆されるべき少なくとも一つの表面を有する基板を前記プラズマに近接して提供することと、
d)前記基板の前記少なくとも一つの表面上に前記ガスを堆積させて被膜を形成することと
を備える被膜を形成する方法。
【請求項32】
前記被膜は少なくとも約0.2μm/秒の堆積率で堆積する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記被膜は少なくとも約0.3μm/秒の堆積率で堆積する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記被膜は少なくとも約0.5μm/秒の堆積率で堆積する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
a)二次元及び長さが少なくとも約0.5メートルであり、閉回路電子ドリフトが実質的に存在しない状態で二次元に略均一に作られるプラズマを提供することと、
b)前記プラズマに近接して前駆体及び/又は反応ガスを提供することと、
c)被覆されるべき少なくとも一つの表面を有する基板を前記プラズマに近接して提供することと、
d)前記基板の前記少なくとも一つの表面上に前記ガスを堆積させて被膜を形成することと
を備える被膜を形成する方法。
【請求項36】
前記被膜は少なくとも約0.2μm/秒の堆積率で堆積する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記被膜は少なくとも約0.3μm/秒の堆積率で堆積する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記被膜は少なくとも約0.5μm/秒の堆積率で堆積する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
a)線状及び長さが少なくとも約0.5メートルであり、閉回路電子ドリフトが実質的に存在しない状態でその長さにわたって略均一に作られるプラズマを提供することと、
b)前記プラズマに近接した少なくとも二つの磁極を提供することと
を備え、
前記少なくとも二つの磁極は前記プラズマを曲げる及び/又は高密度化するように位置する、
プラズマを曲げる及び/又は高密度化する方法。
【請求項40】
a)第一の電子放出面及び第二の電子放出面を提供することと、
b)少なくとも一つの電極を提供することと、
c)被覆されるべき少なくとも一つの表面を有する基板を提供することと、
d)前記電子放出面を正負が交互に入れ替わる電圧を供給する第一の電源に接続することと、
e)前記少なくとも一つの追加の電極を前記第一及び第二の電子放出面に供給される前記電圧と異なる電圧を供給する第二の電源に接続することと、
f)正イオンが前記少なくとも一つの追加の電極に向かって加速するように前記少なくとも一つの電極を負にパルス化することと
を備え、
前記正イオンが接触した際に、原子が前記少なくとも一つの電極から放出され、被覆されるべき前記基板の前記表面に向けられる、
被膜を形成する方法。
【請求項41】
前記電子放出面は多孔性物質を含む、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項42】
前記電子放出面は多孔性物質を含む、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項43】
前記電子放出面は多孔性物質を含む、請求項27に記載のプラズマ源。
【請求項44】
前記電子放出面は多孔性物質を含む、請求項29に記載のプラズマ源。
【請求項1】
第一の電子放出面及び第二の電子放出面を備え、
前記各電子放出面は正負が交互に入れ替わる電圧を供給する電源に電気的に接続され、
前記各電子放出面は、ガスを含む空間によって隔てられ、
前記第二の電子放出面に供給される電圧は、 前記第一の電子放出面に供給される電圧と位相がずれており、
二次電子を備える電流は前記電子放出面の間に流れ、
プラズマは前記電子放出面の間に作られ、前記プラズマは線状であり、少なくとも長さ約0.5メートルであり、閉回路電子ドリフトが実質的に存在しない状態でプラズマの長さにわたって略均一に作られる、プラズマ源。
【請求項2】
前記各電子放出面は、互いに少なくとも約1ミリメートルから少なくとも約0.5メートル離れている、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項3】
前記プラズマ源によって作られる前記プラズマは、長さが少なくとも約一メートルである、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項4】
前記各電子放出面は、少なくとも約600℃から少なくとも約2000℃である、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項5】
前記各電子放出面は、少なくとも約800℃から少なくとも約1200℃である、請求項4に記載のプラズマ源。
【請求項6】
前記電流は前記各電子放出面に配置されたオリフィス又は限られた開口を通って流れる、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項7】
前記ガスを含む空間は、前駆体ガス、反応ガス又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項8】
前記前駆体ガスは、金属、遷移金属、ホウ素、炭素、シリコンゲルマニウム、セレン、又はそれらの組み合わせを備える、請求項7に記載のプラズマ源。
【請求項9】
前記反応ガスは、酸素、窒素、ハロゲン、水素又はそれらの組み合わせを備える、請求項7に記載のプラズマ源。
【請求項10】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.2μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項11】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.3μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項12】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.5μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項13】
請求項1に記載のプラズマ源によって生成される被膜。
【請求項14】
複数対の電子放出面を備え、各対は第一の電子放出面及び第二の電子放出面を備え、
前記複数対の電子放出面は配列に隣接して配置され、
電子放出面の各対はガスを含む空間によって隔てられ、
電子放出面の各対は、正負が交互に入れ替わる電圧を供給する電源に電気的に接続され、
各対の前記第二の電子放出面に供給される前記電圧は、各対の前記第一の電子放出面に供給される前記電圧と位相がずれており、
二次電子を備える電流は各対の前記電子放出面の間に流れ、
二次元のプラズマは、各対の前記電子放出面の間に作られた前記プラズマによって形成され、
前記二次元のプラズマは、長さが少なくとも約0.5メートルであり、閉回路電子ドリフトが実質的に存在しない状態で二次元に略均一に作られる、プラズマ源。
【請求項15】
各対の前記電子放出面は互いに少なくとも約1ミリメートルから少なくとも約0.5メートル離れている、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項16】
前記二次元のプラズマによって作られる前記プラズマ源は、長さが少なくとも約一メートルである、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項17】
各対の前記電子放出面は少なくとも約600℃から少なくとも約2000℃である、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項18】
各対の前記電子放出面は少なくとも約800℃から少なくとも約1200℃である、請求項17に記載のプラズマ源。
【請求項19】
前記電流は、各対の前記各電子放出面に配置されたオリフィス又は限られた開口を通って流れる、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項20】
前記ガスを含む空間は、前駆体ガス、反応ガスまたはそれらの組み合わせを含む、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項21】
前記前駆体ガスは、金属、遷移金属、ホウ素、炭素、シリコンゲルマニウム、セレン又はそれらの組み合わせを備える、請求項20に記載のプラズマ源。
【請求項22】
前記反応ガスは、酸素、窒素、ハロゲン、水素又はそれらの組み合わせを備える、請求項20に記載のプラズマ源。
【請求項23】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.2μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項24】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.3μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項25】
前記プラズマ源は、少なくとも約0.5μm/秒の堆積率で被膜を生成することができる、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項26】
請求項14に記載のプラズマ源によって生成される被膜。
【請求項27】
第一の電子放出面と第二の電子放出面、及び少なくとも二つの磁極を備え、
前記各電子放出面は正負が交互に入れ替わる電圧を供給する電源に電気的に接続され、
前記各電子放出面はガスを含む空間によって隔てられ、
前記第二の電子放出面に供給される前記電圧は、前記第一の電子放出面に供給される前記電圧と位相がずれており、
二次電子を備える電流は前記電子放出面の間に流れ、
前記少なくとも二つの磁極は、前記電子放出面の間に作られたプラズマを曲げる及び/又は高密度化するように位置する、プラズマ源。
【請求項28】
請求項27に記載のプラズマ源によって生成される被膜。
【請求項29】
第一の電子放出面と第二の電子放出面、及び少なくとも一つの電極を備え、
前記電子放出面は正負が交互に入れ替わる電圧を供給する第一の電源に電気的に接続され、
前記少なくとも一つの電極は、前記第一及び第二の電子放出面に供給される前記電圧と異なる電圧を供給する第二の電源に接続され、
前記各電子放出面はガスを含む空間によって隔てられ、
前記第二の電子放出面に供給される前記電圧は、前記第一の電子放出面に供給される前記電圧と位相がずれており、
二次電子を備える電流は前記電子放出面の間に流れ、
前記少なくとも一つの電極が負にパルス化される場合、正イオンは前記少なくとも一つの電極の表面に向かって加速する、プラズマ源。
【請求項30】
請求項29に記載のプラズマ源によって生成される被覆。
【請求項31】
a)線状及び長さが少なくとも約0.5メートルで、閉回路電子ドリフトが実質的に存在しない状態でその長さにわたって略均一に作られるプラズマを提供することと、
b)前記プラズマに近接して前駆体及び/又は反応ガスを提供することと、
c)被覆されるべき少なくとも一つの表面を有する基板を前記プラズマに近接して提供することと、
d)前記基板の前記少なくとも一つの表面上に前記ガスを堆積させて被膜を形成することと
を備える被膜を形成する方法。
【請求項32】
前記被膜は少なくとも約0.2μm/秒の堆積率で堆積する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記被膜は少なくとも約0.3μm/秒の堆積率で堆積する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記被膜は少なくとも約0.5μm/秒の堆積率で堆積する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
a)二次元及び長さが少なくとも約0.5メートルであり、閉回路電子ドリフトが実質的に存在しない状態で二次元に略均一に作られるプラズマを提供することと、
b)前記プラズマに近接して前駆体及び/又は反応ガスを提供することと、
c)被覆されるべき少なくとも一つの表面を有する基板を前記プラズマに近接して提供することと、
d)前記基板の前記少なくとも一つの表面上に前記ガスを堆積させて被膜を形成することと
を備える被膜を形成する方法。
【請求項36】
前記被膜は少なくとも約0.2μm/秒の堆積率で堆積する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記被膜は少なくとも約0.3μm/秒の堆積率で堆積する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記被膜は少なくとも約0.5μm/秒の堆積率で堆積する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
a)線状及び長さが少なくとも約0.5メートルであり、閉回路電子ドリフトが実質的に存在しない状態でその長さにわたって略均一に作られるプラズマを提供することと、
b)前記プラズマに近接した少なくとも二つの磁極を提供することと
を備え、
前記少なくとも二つの磁極は前記プラズマを曲げる及び/又は高密度化するように位置する、
プラズマを曲げる及び/又は高密度化する方法。
【請求項40】
a)第一の電子放出面及び第二の電子放出面を提供することと、
b)少なくとも一つの電極を提供することと、
c)被覆されるべき少なくとも一つの表面を有する基板を提供することと、
d)前記電子放出面を正負が交互に入れ替わる電圧を供給する第一の電源に接続することと、
e)前記少なくとも一つの追加の電極を前記第一及び第二の電子放出面に供給される前記電圧と異なる電圧を供給する第二の電源に接続することと、
f)正イオンが前記少なくとも一つの追加の電極に向かって加速するように前記少なくとも一つの電極を負にパルス化することと
を備え、
前記正イオンが接触した際に、原子が前記少なくとも一つの電極から放出され、被覆されるべき前記基板の前記表面に向けられる、
被膜を形成する方法。
【請求項41】
前記電子放出面は多孔性物質を含む、請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項42】
前記電子放出面は多孔性物質を含む、請求項14に記載のプラズマ源。
【請求項43】
前記電子放出面は多孔性物質を含む、請求項27に記載のプラズマ源。
【請求項44】
前記電子放出面は多孔性物質を含む、請求項29に記載のプラズマ源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−530155(P2011−530155A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522159(P2011−522159)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/052679
【国際公開番号】WO2010/017185
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(507090421)エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr.,Suite 400,Alpharetta,GA 30022,U.S.A.
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(508056523)エージーシー グラス ヨーロッパ (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/052679
【国際公開番号】WO2010/017185
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(507090421)エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr.,Suite 400,Alpharetta,GA 30022,U.S.A.
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(508056523)エージーシー グラス ヨーロッパ (4)
【Fターム(参考)】
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