説明

プラズマ装置およびその製造方法

【課題】長期間に亘って確実にプラズマに点火可能なプラズマ装置を提供する。
【解決手段】軸方向に中空構造を有する中空構造体(11)、中空構造体(11)の内部に配置される第1電極(12)、中空構造体(11)のプラズマ発生領域(13)を外面から覆う構造を有する第2電極(14)を備え、第1電極(12)は、中空構造体のプラズマ発生領域において変形構造(12b)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間に亘り安定してプラズマを点火させることが可能なプラズマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路をエッチングしたり洗浄したりワイヤをボンディングしたりするためにプラズマを発生させるプラズマ装置が用いられている。
【0003】
プラズマ装置の具体的な構造として、例えば、特開2002−343599号公報には、メタルチューブの先端に細められた先端を有するガラスチューブが設けられ、ガラスチューブの周囲には高周波電力が供給される高周波コイルが巻き回され、ガラスチューブの内部には高融点金属製ワイヤ8が延設されたプラズマトーチが記載されている(特許文献1)。ガラスチューブのプラズマ発生領域部分の間壁にワイヤの先端部が接触するとガラスチューブに穴が開いたりワイヤの先端部が溶けたりすることを防止するため、プラズマ発生領域の手前でワイヤに折り曲げ箇所を設けたりコイル状部分を設けたりすることが提案されている(特許文献1、段落0042−0044、図5および図6)。
【0004】
また特開2009−141211号公報には、円筒形状の先端部と、先端部に接続される円筒形状のガラス導入管と、先端部の外部に高周波電力が供給される外部電極と、ガス導入管から先端部に向かって円筒形状の内部を延びる内部電極とで構成されるプラズマトーチが開示されている(特許文献2)。内部電極はガス導入管の内面に接触するように設けられている(特許文献、段落0026、図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−343599号公報
【特許文献2】特開2009−141211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、発明者らは、特許文献1や特許文献2に記載されたようなプラズマ発生装置では、高周波電力が供給される高周波コイルが位置するチューブの中心付近や、高周波電力が供給される外部電極が設けられている先端部の中心付近において、プラズマの温度が最も高くなることを見出した。
【0007】
プラズマはプラズマガス内部に存在する微小な尖端部分において電荷が偏在することにより点火が促されることが判っており、そのような尖端部分はワイヤや内部電極の表面が製造当初から有している表面の微細な起伏が相当する。このような表面の微細な起伏が喪失すると、長期間に亘りプラズマを確実に発生させるという点火の安定性が失われるのである。
【0008】
上記特許文献1や特許文献2に記載されたプラズマ発生装置では、プラズマトーチの中心付近にワイヤや内部電極が位置しているので、プラズマが相対的に高温になってワイヤや内部電極の表面を溶かす危険がある。表面が溶解したワイヤや内部電極ではプラズマの点火を促す微細な突起が喪失しているので、プラズマが徐々に点火しにくくなってしまうのである。
【0009】
そこで、上記問題点に鑑み、本発明は、長期間に亘り安定的にプラズマを点火させることが可能なプラズマ装置を提供することを目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のプラズマ装置は、以下の態様を有する。
(1)軸方向に中空構造を有する中空構造体と、中空構造体の内部に配置される第1電極と、中空構造体のプラズマ発生領域を外面から覆う構造を有する第2電極と、を備え、第1電極は、中空構造体のプラズマ発生領域において変形構造を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、中空構造体のプラズマ発生領域において変形構造を有するため、プラズマ発生時に非常に温度が高くなる軸芯付近からずれた位置に第1電極の多くの部分が位置することになる。このため、第1電極の表面の微細な起伏が高温により溶解して喪失することがなく、確実にプラズマに点火させることができる。
【0012】
本願発明は所望により以下の態様を備えていてもよい。
【0013】
(2)上記(1)において、第1電極は、中空構造体のプラズマ発生領域において中空構造体の内壁に接触している。
【0014】
(3)上記(1)において、第1電極は、中空構造体のプラズマ発生領域において中空構造体の軸を中心とする所定の径の禁止空間を回避した構造を備えることは好ましい。
【0015】
(4)上記(1)または(2)において、第1電極の変形構造は、波形である。
【0016】
(5)上記(1)−(3)のいずれかにおいて、第1電極の変形構造は、コイル形状である。
【0017】
(6)上記(1)−(5)のいずれかにおいて、中空構造体は、セラミックで形成されている。
【0018】
また上記目的を達成するために、本発明のプラズマ装置の製造方法は、以下の態様を要する。
【0019】
(7)中空構造体の内部に接地電極を備えるプラズマ装置の製造方法であって、
接地電極を構成する導電性線状部材に変形構造を形成するステップと、
変形構造を設けた導電性線状部材の一端を中空構造体の一端から挿通するステップと、
中空構造体の他端から出た導電性線状部材の一端を引いて導電性線状部材に形成された変形構造を中空構造体のプラズマ発生領域に位置させるステップと、を備え、
変形構造を形成するステップでは、
中空構造体に挿入する前の変形構造を中空構造体の内径以上の幅を有するように形成することを特徴とする。
【0020】
(8)上記(7)において、第2電極の変形構造は、波形またはコイル形状である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プラズマ発生時に非常に温度が高くなる中空構造体の軸芯付近の空間を回避して接地電極が位置するため、接地電極の表面の微細な起伏が高温により溶解して喪失することがなく、比較的長期間に亘って確実にプラズマに点火することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1に係るプラズマ装置の全体構成図。
【図2】実施形態1に係るプラズマ装置の構造を説明する断面図。
【図3】中空構造体内部の温度分布の説明図。
【図4】実施形態1に係るプラズマ装置の製造方法であって、接地電極の変形構造形成工程の製造工程断面図。
【図5】実施形態1に係るプラズマ装置の製造方法であって、接地電極の挿通工程の製造工程断面図(その1)。
【図6】実施形態1に係るプラズマ装置の製造方法であって、接地電極の挿通工程の製造工程断面図(その2)。
【図7】実施形態1に係るプラズマ装置の製造方法であって、接地電極の引っ張り工程の製造工程断面図。
【図8】実施形態1に係るプラズマ装置の製造方法であって、接地電極の設置終了時の製造工程断面図。
【図9】実施形態2に係る接地電極の変形構造を説明する斜視図。
【図10】実施形態2に係るプラズマ装置の構造を説明する断面図。
【図11】実施形態3に係る接地電極の変形構造を説明する断面図。
【図12】実施形態4に係る接地電極の変形構造を説明する断面図。
【図13】実施形態5に係る接地電極の変形構造を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施の形態に限定して解するべきではない。
【0024】
(実施形態1)
本発明の実施形態1は、波形の変形構造を有する接地電極を備えたプラズマ装置に関する。
図1に、本実施形態1におけるプラズマ装置の全体構成図を示す。図1に示すように、本実施形態1におけるプラズマ装置1は、ガスチャンバ10、中空構造体11、接地電極(第1電極)12、負荷電極(第2電極)14、および接地配線17を備えて構成される。例えば、このプラズマ装置1は、洗浄対象である半導体装置の洗浄面に対向して配置され、プラズマを発生させて半導体装置の洗浄面を洗浄するために用いられる。
【0025】
(ガスチャンバ10)
ガスチャンバ10は、中空構造体11にプラズマガスを供給するためのガス充填室である。ガスチャンバ10は、隔壁16によりガス室18と前室19とに分離されている。ガスチャンバ10は、壁面が金属で構成されており導電性を有する。ガス室18には、ガス供給口15からプラズマガスが供給されるようになっている。
【0026】
プラズマ発生に用いるプラズマガスとしては、H2、O2、N2、またはこれらと不活性ガスとの混合ガスを用いることが可能である。特に不活性ガスを用いることが好ましい。不活性ガスとしては、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、キセノン(Xe)、ネオン(Ne)が利用可能であり、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)が最もよく利用される。
【0027】
プラズマガスは、図示しないガスボンベ、コンプレッサ、圧力計、流量計、配管等を備えるガス供給系統を通じてプラズマガス供給口15に所定の気圧、例えば大気圧から3気圧程度までに加圧されて供給されるようになっている。
【0028】
なお、プラズマ装置1は、上記構成の他、大気圧雰囲気下でプラズマを供給する大気圧プラズマ装置として構成されていても、真空(減圧)雰囲気下でプラズマを供給する真空(減圧)プラズマ装置として構成されていても、いずれでもよい。
【0029】
(中空構造体11)
中空構造体11は、プラズマで発生する高温や高反応性に耐性のある絶縁材料で構成された構造物であり、本実施形態では所定の径W0の円筒形状に形成されている。ただし、中空構造体11の形状は円筒形状に限られることはなく、プラズマ発生に適していれば方形や多角形、楕円形などその他の形状を有していてもよい。中空構造体11を構成する絶縁材料として、各種セラミックスは熱伝導性、耐熱性、耐プラズマ性が比較的高くて好適である。その他絶縁材料としては、石英ガラス等も利用可能である。中空構造体11には、内部に接地電極12が設けられている。中空構造体11の中空内部において、負荷電極14によって外面から覆われている領域がプラズマ発生領域13となる。中空構造体11はガスチャンバ10のガス室18に連通して設置されており、ガス室18の加圧されたプラズマガスが接地電極11の周囲を高速に流通するように構成されている。プラズマを使用時、中空構造体11の端部11aに対向させてプラズマ照射すべき面(半導体装置の被洗浄面等)が配置される。
【0030】
(負荷電極14)
負荷電極14は、本発明の第2電極に相当し、接地電極12の対となる電極であり、高周波信号発生装置20から高周波信号HS(高電圧HV)が印加されるようになっている。負荷電極14は、中空構造体11の外側から接地電極12の一部を囲むように形成されている。本実施形態では、円筒形状の中空構造体11に適合するように断面管形状(円環状)に形成されている。負荷電極14によって外周から囲まれた中空構造体11の内部がプラズマ発生領域13となる。負荷電極14は、耐酸化性のある金属であり、例えばステンレスまたはメッキ等により耐酸化性を付与された金属で形成されている。負荷電極14と接地電極12との距離は、印加する高周波信号の電力と発生させたいプラズマ密度との関係に基づき設定されている。負荷電極14は、断面円環状に形成する他、中空構造体11に巻き回し等したコイル状に形成されていてもよい。
【0031】
(高周波信号発生装置20)
高周波信号発生装置20は、図示しないが、例えば、高周波電源、進行波・反射波検出装置、高電圧発生装置、重畳コイル等を備えて構成された、プラズマを点火するための高電圧HVおよびプラズマを発生・維持させるための高周波信号HSを生成する装置である。高電圧HVは、負荷となるプラズマガスにプラズマを励起するのに十分な放電を与えるような電圧値、例えば0.8kVから2kV程度で供給される。高電圧HVの周波数は例えば1kHzでその際の供給電圧は1kVである。高周波信号HSは、プラズマ装置の仕様によって異なるが、プラズマの発生・維持に適した周波数として、例えば10kHz程度から1GHz程度、プラズマの発生・維持に適した電力として、例えば0.1W程度〜100W程度で供給される。
【0032】
(整合装置21)
整合装置21は、高周波信号発生装置20と負荷電極14と間の伝送経路上に設けられており、高周波信号発生装置20側と負荷電極14側とのインピーダンスを整合させるよう機能する。整合装置21は、コイルおよび可変コンデンサ等で構成されたフィルタ回路構造を有しており、プラズマが安定的に生成された状態での負荷インピーダンスが高周波信号発生装置20の出力側から見て、特性インピーダンスZ0(例えば50Ω)になるように設計されている。
【0033】
(同軸ケーブル22)
同軸ケーブル22は、高周波信号HSを高周波信号発生装置20から負荷電極14に供給する特性インピーダンスZ0の伝送経路である。同軸ケーブル22は、整合装置21および前室19のそれぞれにコネクタで接続されており、同軸ケーブル22の被覆は、整合装置21または前室19の少なくとも一方で接地されている。
【0034】
(リアクタンス補正コイル23)
リアクタンス補正コイル23は、整合装置21と負荷電極14との間に接続されたインダクタ素子である。リアクタンス補正コイル23は、負荷電極14と接地電極12との間に存在する容量成分によって生ずるリアクタンス(インピーダンス)の影響を抑制し、電圧定在波比VSWRを改善するように機能する。
【0035】
(接地電極12の構造)
接地電極12は、本発明の第1電極に相当し、負荷電極14の対になる電極であり、プラズマを発生させるために接地される電極である。接地電極12は、中空構造体11の中空内部に設けられている。接地電極12は、周囲に発生するプラズマの高温に耐えられるような高融点を有する導電性線状部材、例えばプラチナやタングステン等のワイヤにより構成されている。接地電極12は、ガス室18の壁を経て接地配線17により電気的に接地されている。
【0036】
図2に中空構造体11の中空内部に設置される接地電極12の詳細な構造を表す断面図を示す。図2において、右側は中空構造体11の軸芯に沿った断面図であり、左側は中空構造体11の一方の端部11a側(先端側)から見た正面図である。
【0037】
図2に示すように、中空構造体11は内径W0の中空構造をしている。中空構造体11は他方の端部11cが隔壁16に設けられた開口部16aに嵌合し、中空内部がガス室18と連通するようになっている。よって、接地電極12はガス室18と連通した中空構造体11の中空内部に設置される。
【0038】
特に接地電極12は、少なくともプラズマ発生領域13において変形構造12bを有することを特徴としている。接地電極12は、プラズマ発生領域13より先端側の端部11a側では軸芯に沿った直線形状の直線部12aを有し、プラズマ発生領域13より基部側(ガスチャンバ10側)の端部11c側でも軸芯に沿った直線形状の直線部12cを有している。
【0039】
特に本実施形態1における変形構造12bは波形である。この波形の変形構造12bは、図2の正面図から明らかなように軸芯を通る平面において二次元的な波形形状として形成されている。変形構造12bは、プラズマ発生領域13の長さW1を超えて形成されていてもよい。変形構造12bの波形は規則的なピッチpで形成されている。ただし、このピッチpは変形構造12bの全長に亘って一定である必要はない。
【0040】
図3の断面図に、中空構造体11の中空内部の温度分布を示す。図3に示すように、プラズマは負荷電極14で外面から覆われた中空構造体11の内部のプラズマ発生領域13で発生する。前述したように、プラズマは接地電極12の表面が製造当初から有している表面の微細な起伏において電荷が偏在することにより点火される。点火されたプラズマは、図3に示すように、軸芯Cで最も温度が高く軸芯Cから離れるほど温度が低くなるような温度分布を有する。軸芯Cを中心とした幅W2の空間13cでは接地電極12が溶解するしきい値温度Tthよりも高くなり、その空間13cの外側では接地電極12が溶解するしきい値温度Tth以下となる。このため、接地電極12が空間13の内側に配置されていると表面が溶解する可能性があり、空間13の外側に配置されていると表面が溶解しない。
【0041】
図3の下側に示されている写真は、実際のプラズマ装置でプラズマを何回か発生させた後に、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した接地電極12の表面写真である。軸芯Cの位置p2では接地電極の表面が溶解して金属表面の傷や金属結晶の粒界が喪失している。これに対し、中空構造体の壁面付近である位置p1やp3では、金属表面の傷や金属結晶の粒界が残留していることが明りょうに観察できる。このように軸芯付近に接地電極が配置されているとプラズマを点火させるために必要な微細な起伏が時間とともに喪失してしまうのである。
【0042】
従来のプラズマ装置では、軸芯Cの位置に接地電極が配置されていたので、プラズマの発生を繰り返しているうちに接地電極の表面が溶解し微細な起伏が消失してしまうことが多かった。このため長期間に亘って安定的にプラズマを発生させることができなかった。プラズマを点火することができなくなった場合には接地電極を取り替える必要があるため、従来のプラズマ装置では頻繁に接地電極を交換することを余儀なくされていた。
【0043】
そこで本実施形態1では、プラズマ発生領域13において接地電極12に波形の変形構造12bを設けてある。変形構造12bを設けることにより、変形構造12bの大部分は空間13cの外側、すなわち金属が溶解するしきい値温度Tth以下の領域に位置することになる。このため接地電極12の表面における微細な起伏が溶解により喪失することが防止できるのである。以下、空間13cを接地電極12の配置を避けるべき空間として「禁止空間」とよぶ。
【0044】
なお、本実施形態1では変形構造12bが軸芯Cを通る波形に形成されているため、変形構造12bの一部が禁止空間13cを通過しているが、接地電極12の大部分は禁止空間13cの外側に位置するので、禁止空間13cの内部に位置している電極の表面で溶解が生じたとしても、プラズマが点火しなくなるようなことはない。
【0045】
(動作の説明)
次に本実施形態1におけるプラズマ装置1の動作を説明する。
プラズマを点火するための準備状態(以下「プラズマ待機状態」という。)となると、図示しない制御装置の制御により、または、管理者の操作により、プラズマガスがガス供給口15からガスチャンバ10に供給される。プラズマガスが供給されると、ガスチャンバ10のガス室18に充填されたプラズマガスが所定の圧力で中空構造体11の内部を流れるようになる。プラズマガスの流れが安定したら、高周波信号発生装置20に対し、プラズマ点火指示が出力される。
【0046】
高周波信号発生装置20は、システムのステータスがプラズマ待機状態か否かを判定する。プラズマ待機状態ではない場合には、プラズマ点火の準備が整っていないことを意味するので、高周波信号発生装置20はその旨を警告する。プラズマ待機状態であったら、高周波信号発生装置20は、周波数450MHzで出力30Wの高周波信号HSを伝送経路に出力する。高周波信号HSが供給されると、負荷電極14と接地電極12との間に高周波電磁波が誘起される。
【0047】
高周波信号HSが供給されると、整合装置21によって高周波信号発生装置20の出力側のインピーダンスと負荷電極14側のインピーダンスとが等しくなるようにマッチング制御を行う。高周波信号発生装置20は、伝送経路における高周波信号HSの進行波振幅値Vfおよび負荷電極14から反射される反射波振幅値Vrを検出してVSWR値を算出する。負荷電極14側の負荷インピーダンスは、整合装置21の機能により、適正なプラズマが発生している状態では、高周波信号発生装置20の特性インピーダンスと同じ値になるようになっている。プラズマ発生前のこの段階では負荷電極14側の負荷インピーダンスは特性インピーダンスZ0と大幅に異なっている。このため検出される反射波振幅値Vrは大きな値となり、VSWR値も相対的に大きな値となる。
【0048】
次いで高周波信号発生装置20は、算出されたVSWR値がプラズマの発生を識別するためのしきい値Vthより大きいと判定された場合には高電圧HVの供給を開始する。生成された高電圧HVは、高周波信号HSに重畳されて伝送経路に出力される。高周波信号HSに高電圧HVが重畳されると、負荷電極14と接地電極12との間にも高電圧HVが印加され、中空構造体11のプラズマ発生領域13において、接地電極12の表面にある微細な起伏に電荷が集中し、放電が発生する。放電が発生すると、電子が種火となってプラズマが発生する。プラズマが発生すると、負荷電極14に印加されている高周波信号HSによりプラズマが維持される。安定的にプラズマが発生すると、中空構造体11の端部11aからプラズマジェットが噴出し、必要な半導体装置等の表面に供給することが可能となる。プラズマが発生すると、負荷電極14側の負荷インピーダンスは特性インピーダンスZ0に向けて収束していく。
【0049】
VSWR値がしきい値Vth以下となった場合には、高周波信号発生装置20は、高電圧HVの重畳を停止する。伝送経路には、高周波信号HSのみが供給されるようになる。この段階では、プラズマが安定的に発生しているので、高電圧HVの重畳が存在しなくなってもプラズマが消失することはなくなっている。
【0050】
本実施形態1によれば、上記のようなプラズマ点火動作を繰り返しても、プラズマ発生領域13において接地電極12に変形構造12bが形成されているので表面の微細な起伏が消失することがなく、長期間に亘り安定的にプラズマの点火を繰り返すことが可能なのである。
【0051】
(プラズマ装置の製造方法)
次に上記プラズマ装置の好適な製造方法を説明する。図4−図8は、本実施形態1におけるプラズマ装置の製造方法を説明する、中空構造体11の軸芯Cにおける製造工程断面図である。
【0052】
(変形構造形成工程)
図4に、接地電極の変形構造形成工程を示す。
接地電極形成工程では、図4に示すように、接地電極12を構成する導電性線状部材に変形構造12bを形成する。そのために、まず接地電極12の材料となる導電性線状部材を所定の長さに裁断する。導電性線状部材としては、プラズマの高温に耐えられるような高融点を有する金属であることが好ましい。例えばプラチナやタングステン等の線材とする。線材の太さ(直径)は中空構造体11の内部に変形構造を含めて収納できる程度の太さであり、中空構造体11の大きさに対応して適宜定める。
【0053】
裁断する長さとしては、加工を容易にするために十分長めに裁断することが好ましい。最終製品において必要な長さは、変形構造12bを設けた接地電極12を中空構造体11に収納してガスチャンバ10の隔壁16に取り付けて、接地電極12の直線部12cをガス室18の内壁に接地するに足りる長さがあればよい。しかし、後述する引っ張り工程において接地電極12が中空構造体11に収容される前の状態で線状部材の直線部12cをピンセットで把持して引っ張り張力を与えることができるように、把持するための長さを確保する。すなわち、変形構造12bを除いた直線部12cの長さが、中空構造体11の長さに、ピンセットで把持しうるだけの長さを付け加えた長さとなるように導電性線状部材を切断する。
【0054】
裁断した導電性線状部材において、中空構造体11に設置する際にプラズマ発生領域13に相当する位置に変形構造12bを形成する。本実施形態では接地電極12の接地端側の直線部12cを引っ張るようにするため、先端側の直線部12aから測って変形構造12bを形成する位置を定める。
【0055】
変形構造12bとしては規則的な波形とする。波形の山の数や波形の周期に相当するピッチを所望の数やピッチにして、波形を所望の形状に構成することが可能であるが、少なくとも3つの山(頂点、極大点)を形成することが好ましい。山の頂点が3つあれば、中空構造体11の内壁に3点において接触し、変形構造12bを安定的に設置することができるからである。
【0056】
変形構造12bの軸方向における形成時の長さは、後述する引っ張り工程において変形構造12bが変形して導電性線状部材が引っ張り方向に延びることを想定して、設置後の長さよりも若干短くなるように変形構造12bの設置前の長さを設定する。
【0057】
波形の振幅に相当する幅は、中空構造体11の内径以上の幅に形成することが好ましい。本実施形態では、中空構造体11の内径W0よりも若干量(Δw≧0)だけ大きくなるよう形成する。この若干量Δwは、後述する引っ張り工程において線状部材の直線部12cを引っ張ることで及ぼされる張力によって波形の頂点が潰れるように十分変形し、中空構造体11の内壁に納めることが可能な量にする。このように中空構造体11の内径W0より若干大きな幅に形成された変形構造12bを中空構造体11に収納することによって、変形に伴う導電性線状部材の弾性力によってプラズマ発生領域13に変形構造12bが両側の内壁に突っ張って安定的に固定できる。
【0058】
(挿通工程)
図5および図6に、接地電極の挿通工程を示す。
挿通工程では、図5に示すように、変形構造12bを設けた導電性線状部材の直線部12cを中空構造体11の先端側の端部11aから内部に挿通する。本実施形態では、導電性線状部材の直線部12cが長めに裁断されている。このため図6に示すように、中空構造体11に一方の端部11aから挿通された導電性線状部材の端部12が他方の端部11cから突き出ることになる。若干大きめの幅に形成した導電性線状部材の変形構造12bが中空構造体11の先端側の端部11aに当接するまで挿通させる。
【0059】
(引っ張り工程)
図7に、接地電極の引っ張り工程を示す。
引っ張り工程では、図7に示すように、中空構造体11の他方の端部11cから出た導電性線状部材の直線部12cを引いて導電性線状部材に形成された変形構造12bを中空構造体11のプラズマ発生領域13に位置させる。
【0060】
具体的には、中空構造体11の他方の端部11cから導電性線状部材の直線部12cが出て変形構造12bが中空構造体11の端部11aに当接したら、ピンセットで直線部12cを把持してゆっくり、図7に示す矢印の方向に張力を加える。張力が加えられることで中空構造体11の端部11aに当接した変形構造12bの波形の山の部分が弾性変形し、図7に示すように、中空構造体11の内径W0の幅に縮められて中空構造体11の中空部分に入り込む。総ての波形の山が中空構造体11の中空部分に入り込んだら、さらに変形構造12bの主要部分がプラズマ発生領域13に位置するまでスライドさせる。
【0061】
図8に、変形構造12bの主要部がプラズマ発生領域13に位置した場合の様子を示す。導電性線状部材の変形構造12bの主要部がプラズマ発生領域13に位置したら、引っ張り工程を終了する。
【0062】
最後に接地電極12が設置された中空構造体11をプラズマ装置1に取り付ける。図2に示すように、隔壁16に設けられた開口部16aから導電性線状部材の直線部12cをガス室18に挿入して、導電性線状部材を適当な長さに切断する。そして切断した端部をガス室18の導電性の壁面に電気的に接続して接地する。最後に、図2に示すように、中空構造体11の端部11cを隔壁16の開口16aに嵌合して、プラズマ装置1を完成させる。
【0063】
なお、上記引っ張り工程では、導電性線状部材の直線部12cを引っ張ることにしたが、先端方向の直線部12aを引っ張るようにしてもよい。直線部12aを引っ張るようにする場合、導電性線状部材の直線部12aの長さを、中空構造体11の長さに、ピンセットで把持しうる程度の長さを付け加えた長さに切断しておく。次いで、中空構造体11の基部側(ガスチャンバ側)の端部11cから導電性線状部材の直線部12aを挿通し、中空構造体11の先端側の端部11aから飛び出た導電性線状部材の直線部12aを引っ張る。
【0064】
(本実施形態1の利点)
本実施形態1では以下の利点を有する。
(1)本実施形態1によれば、中空構造体11のプラズマ発生領域13において変形構造12bを有するため、プラズマ発生時に非常に温度が高くなる軸芯Cの付近(幅W2の禁止空間13c)からずれた位置に接地電極12の多くの部分が位置することになる。このため、接地電極12の表面の微細な起伏が高温により溶解して喪失することがなく、確実にプラズマに点火させることができる。
【0065】
(2)本実施形態1によれば、接地電極12は、中空構造体11のプラズマ発生領域13において中空構造体11の内壁に接触しているので、中空構造体11を伝って接地電極12を放熱することができる。特に本実施形態1によれば、中空構造体11はセラミックで形成されているので、ガラスに比べ熱伝導率が高く、中空構造体11の内壁との接触により効果的に熱を逃すことが可能である。
【0066】
(3)本実施形態1によれば、接地電極12は、中空構造体11のプラズマ発生領域13において径W2の禁止空間13cを極力回避した構造となっている。すなわち波形の変形構造12bを設けたことにより線状部材が禁止空間13cを横切る回数を些少に抑えてある。よって、プラズマ発生領域13において接地電極12の大部分は表面を溶解させるしきい値温度Vth以下となるため、接地電極12の表面の微細な起伏が高温により溶解して喪失することがなく、比較的長期間に亘って確実にプラズマに点火することができる。
【0067】
(4)本実施形態1によれば、接地電極12の変形構造12bを波形としたので、比較的簡単に変形構造12bを形成可能である。波形の変形構造12bであれば、変形構造形成工程において波形の山の数や変形構造12bの長さを調整することが比較的容易であり、引っ張り工程における設置作業も容易である。
【0068】
(5)本実施形態1によれば、中空構造体11の内径W0より若干大きめの幅(W0+Δw)に形成した導電性線状部材の変形構造12bを中空構造体11の中空内部に引っ張って設置するので、変形に伴う導電性線状部材の弾性力によってプラズマ発生領域13に変形構造12bが両側の内壁に突っ張ることにより、接地電極12を安定的に中空構造体11の内部に固定できる。また変形構造12bの山の頂部が弾性力により中空構造体11の内壁に押しつけられるので、接地電極12と中空構造体11との接触面積を大きくし、放熱効果を高めることができる。
【0069】
(実施形態2)
上記実施形態1では波形の変形構造を接地電極に適用したが、本実施形態2ではコイル形状の変形構造を適用する。
【0070】
図9に、本実施形態2に係る接地電極12Bの斜視図を示す。図10に、中空構造体11の中空内部に設置される接地電極12Bの詳細な構造を表す断面図を示す。図10の右側の図が側面断面図、右側の図が正面図である。
【0071】
上記実施形態1における接地電極12と同様に、本実施形態2に係る接地電極12Bも本発明の第1電極に相当し、負荷電極14の対になる電極であり、プラズマを発生させるために接地される電極である。接地電極12Bは、上記実施形態1と同様に、プラズマ発生領域13より端部11a側では軸芯に沿った直線形状の直線部12aを有し、プラズマ発生領域13より基部側(ガスチャンバ10側)の端部11b側でも軸芯に沿った直線形状の直線部12cを有しており、中空構造体11の内径W0の中空内部に設けられる。中空構造体11は端部11bにおいて隔壁16に設けられた開口部16aに嵌合し、中空内部がガス室18と連通するようになっている。接地電極12Bの直線部12cは、ガス室18の壁を経て接地配線17により電気的に接地される。接地電極12Bは、高融点を有する導電性線状部材、例えばプラチナやタングステン等のワイヤにより構成されている。
【0072】
特に本実施形態2の接地電極12Bでは、変形構造12bがコイル形状である点に特徴がある。コイル形状の変形構造12bは、図10から明らかなように、中空構造体11のプラズマ発生領域13において中空構造体11の軸Cを中心とする幅(径)W2の禁止空間13cを回避した構造を備えている。また上記実施形態1と同様に、コイル形状の変形構造12bは、プラズマ発生領域13の長さW1を超えて形成されていることが好ましい。変形構造12bの巻き回しは規則的なピッチpで形成されているが、このピッチpは変形構造12bの全長に亘って一定である必要はない。
【0073】
本実施形態2によれば、上記実施形態1と同様の作用効果を奏する他、接地電極12Bの変形構造12bとしてコイル形状を適用したので、接地電極12Bが溶解しうるしきい値温度Tthよりも温度が高くなる禁止空間13には接地電極12Bが存在しないので、表面が溶解してプラズマを点火させるために必要な微細な起伏が時間とともに喪失してしまうことを効果的に防止可能である。よって、さらに長時間に亘って確実にプラズマに点火することができるプラズマ装置を提供可能である。
【0074】
(実施形態3)
本実施形態3は、上記実施形態1における波形の変形構造を接地電極の変形例に関する。
図11に、中空構造体11の中空内部に設置される接地電極12Cの構造を表す断面図を示す。本実施形態3における接地電極12Cは、変形構造12bが上記実施形態1と同様に波形に形成されているが、図11に示すように波形の山のピッチが規則的でない点で上記実施形態1と異なる。その他の構造については上記実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0075】
具体的に本実施形態3の接地電極12Cでは、変形構造12bの波形が、基部側(ガスチャンバ10側)に近くなるほど密なピッチとなり、先端側に近くなるほど疎なピッチとなっている。このように変形構造12bは、複数の屈曲点を備えており中空構造体11の中空内部に安定的に接地されるものなら、規則的なピッチを備えていなくてもよい。
【0076】
なお、変形構造12bの波形の幾つかが中空構造体11の内壁に接触していなくてもよい。接地電極12Cが溶解しうるしきい値温度Tthよりも温度が高くなる禁止空間13cを回避している限り、表面の溶解には至らないからである。
【0077】
また波形の疎密に方向性や規則性は必要なく、波形の疎密の向きが図11と逆であったり波形の一部のみが密であったり疎であったりしてもよい。
【0078】
さらに、上記実施形態2で説明したようなコイル形状に疎密が存在してもよい。その際、コイル形状の疎密に方向性や規則性は必要なく、コイル形状の疎密の向きが図11と逆であったりコイル形状の一部のみが密であったり疎であったりしてもよい。
【0079】
このような疎密は、上記実施形態1において説明したプラズマ装置の製造工程において生じうる。変形構造形成工程において変形構造12bに規則的な波形やコイル形状を形成したとしても、引っ張り工程において中空構造体11の内壁と変形構造12bとの摩擦が局所的に異なることによって変形構造12bの引き延ばされ方に相違が生ずることによって出現しうる。
本実施形態3によれば、上記実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0080】
(実施形態4)
本実施形態4は、上記実施形態1における波形や上記実施形態2におけるコイル形状に代えて矩形形状を変形構造に適用する。
【0081】
図12に、中空構造体11の中空内部に設置される接地電極12Dの構造を表す断面図を示す。本実施形態4における接地電極12Dは、変形構造12bが矩形形状に形成されている点で上記各実施形態と異なる。その他の構造については上記実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0082】
具体的に本実施形態4の接地電極12Dでは、変形構造12bが連続する矩形形状に形成されている。特に変形構造12bを矩形形状とすることで、中空構造体11の内壁との接触面積を大きくすることができるので、放熱効果を高めることができる。
【0083】
また接地電極12Dが比較的大きな接触面積で中空構造体11の内壁と接触するので、接地電極12Dを安定的に中空構造体11に設置することが可能である。
【0084】
このような変形構造12bを有する接地電極12Dを備えたプラズマ装置も上記と同様の製造方法によって製造しうる。例えば上記プラズマ装置の製造工程において、変形構造形成工程では、屈曲部の角度がほぼ直角になるように変形構造12bを作成する。引っ張り工程において、接地電極12Dの端部12cを引っ張ると、変形構造12bの矩形形状が引き延ばされ、図12に示すような台形状になって、プラズマ発生領域13に設置される。
【0085】
なお、上記実施形態3で説明したように、矩形形状のピッチは規則的である必要はなく、矩形形状のピッチに疎密があってもよい。また、矩形形状の一部が中空構造体11の内壁に接触していなくてもよい。
【0086】
本実施形態4によれば、上記実施形態1と同様の作用効果を奏する他、中空構造体11の内壁と接地電極12Dとの接触面積を大きくすることができるので、放熱効果を高めることができる。
【0087】
また本実施形態4によれば、接地電極12Dが比較的大きな接触面積で中空構造体11の内壁と接触するので、さらに接地電極12Dを安定的に中空構造体11に設置することが可能である。
【0088】
(実施形態5)
本実施形態5は、上記各実施形態における繰り返し形状の変形構造に代えて最も少ない接触点で効果的にかつ安定的に設置可能な変形構造を有する接地電極に関する。
【0089】
図13に、中空構造体11の中空内部に設置される接地電極12Eの構造を表す断面図を示す。図13に示すように、本実施形態5における接地電極12Eは、変形構造12bに3つの屈曲点c1、c2、およびc3を備える。屈曲点c1およびc3は、プラズマ発生領域13の前後に設けられており、中空構造体11の内壁に接している。屈曲点c2は、プラズマ発生領域13の中程で中空構造体11の内壁に接している。屈曲点c1およびc3は、プラズマ発生領域13に入る前に十分に接地電極12Eを撓らせてプラズマ発生領域13の禁止空間13cを回避可能なように、位置決めおよび曲率が設定されている。
【0090】
上記変形構造形成工程において、屈曲点c1およびc2と屈曲点c3との間の幅を中空構造体11の内径W0より十分大きく形成することで、引っ張り工程による接地電極12Eの挿通後に、屈曲点c2は中空構造体11の内壁に適度な応力で接することになり、放熱効果を高めることができる。
【0091】
本実施形態5によれば、上記実施形態1と同様の作用効果を奏する他、最少の屈曲数で接地電極12Eを安定的に中空構造体11の内部に設置しつつ、プラズマ発生領域13の禁止空間13cを完全に回避することが可能である。
【0092】
(その他の変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、用途または目的に応じて、適宜組み合わせた実施例、または、変更若しくは改良を加えた応用例として適用することができ、上記発明の実施の形態を通じて説明された実施例に限定されるものではない。用途または目的に応じて適宜組み合わせられた実施例または応用例についても、本発明の課題を逸脱しない範囲において、本発明の技術的範囲に属する。
【0093】
例えば変形構造は、上記実施形態で説明した波形、コイル形状、矩形状に限定されない。プラズマ発生領域における禁止空間を極力回避しうるように積極的に接地電極を変形させたあらゆる態様が本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のプラズマ装置は、半導体装置の表面を洗浄する表面洗浄装置に適用するのみならず、プラズマを用いるあらゆる用途に適用することが可能である。例えば、洗浄(アッシング)処理の他に、エッチング処理、CVD処理、スパッタ処理等に適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…プラズマ装置、10…ガスチャンバ、11…中空構造体(セラミックチューブ)、11a、11b、11c…端部、12、12B〜12E…接地電極、12a、12c…直線部、12b…変形構造、13…プラズマ発生領域、13c…禁止空間、14…負荷電極、15…ガス供給口、16…隔壁、16a…開口部、17…接地配線、18…ガス室、19…前室、20…高周波信号発生装置、21…整合装置、22…同軸ケーブル、23…リアクタンス補正コイル、HS…高周波信号、HV…高電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に中空構造を有する中空構造体と、
前記中空構造体の内部に配置される第1電極と、
前記中空構造体のプラズマ発生領域を外面から覆う構造を有する第2電極と、
を備え、
前記第1電極は、前記中空構造体の少なくとも前記プラズマ発生領域において変形構造を有すること、
を特徴とするプラズマ装置。
【請求項2】
前記第1電極は、前記中空構造体の前記プラズマ発生領域において前記中空構造体の内壁に接触している、
請求項1に記載のプラズマ装置。
【請求項3】
前記第1電極は、前記中空構造体の前記プラズマ発生領域において前記中空構造体の前記軸を中心とする所定の径の禁止空間を回避した構造を備える、
請求項1または2に記載のプラズマ装置。
【請求項4】
前記第1電極の前記変形構造は、波形である、
請求項1または2に記載のプラズマ装置。
【請求項5】
前記第1電極の前記変形構造は、コイル形状である、
請求項1乃至3のいずれかに記載のプラズマ装置。
【請求項6】
前記中空構造体は、セラミックで形成されている、
請求項1乃至5のいずれかに記載のプラズマ装置。
【請求項7】
中空構造体の内部に接地電極を備えるプラズマ装置の製造方法であって、
前記接地電極を構成する導電性線状部材に変形構造を形成するステップと、
前記変形構造を設けた前記導電性線状部材の一端を前記中空構造体の一端から挿通するステップと、
前記中空構造体の他端から出た前記導電性線状部材の一端を引いて前記導電性線状部材に形成された前記変形構造を前記中空構造体のプラズマ発生領域に位置させるステップと、を備え、
前記変形構造を形成するステップでは、
前記中空構造体に挿入する前の前記変形構造を前記中空構造体の内径以上の幅を有するように形成すること、
を特徴とするプラズマ装置の製造方法。
【請求項8】
前記変形構造は、波形またはコイル形状である、
請求項7に記載のプラズマ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−104605(P2012−104605A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251099(P2010−251099)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000146722)株式会社新川 (128)
【Fターム(参考)】