説明

プリント配線板および電子部品

【課題】 誘電正接が低く、ガラス転移温度が高く、高湿環境下での誘電率および誘電正接の増加がしにくく、難燃性が高い材料から構成されたプリント配線板および電子部品を提供する。
【解決手段】 プリント配線板および電子部品は、エポキシ樹脂、分子鎖末端にアリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基を有する、芳香族多価カルボン酸残基と芳香族多価ヒドロキシ化合物残基とからなるポリエステル、硬化促進剤および難燃剤を含む有機絶縁材料からなる絶縁層と、この有機絶縁材料に誘電体粉末および表面処理剤をさらに含む誘電体層と、の少なくとも一方から構成された樹脂層と、樹脂層の絶縁層と誘電体層との少なくとも一方に設けられ、キャパシタ素子またはインダクタ素子を構成する、少なくとも1つの導電性素子部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板および電子部品に関し、特に、高周波領域において有用なプリント配線板および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信情報の急増や機能の付加に伴い、プリント配線板、電子部品等には、種々の特性が一層厳しく要求されるようになっている。例えば、携帯移動通信、衛星通信においては、ギガHz帯のような高周波域の電波が使用されるようになっており、このような高周波域の電波に対応するため、プリント配線板および電子部品においては、伝送損失が低いことが求められている。
【0003】
伝送損失は、数式1に示すように、誘電損失と導体損失との和で求められる。誘電損失は、数式2に示すように、誘電率及び誘電正接が低いほど低くなる。このため、誘電率及び誘電正接を低くする必要がある。配線やインダクタ素子を形成する材料にはこのような特性の材料が有益である。
【0004】
(数式1)
(伝送損失)=(誘電損失)+(導体損失)
【0005】
(数式2)
(誘電損失)=(係数)×(周波数)×(誘電率)1/2×(誘電正接)
【0006】
また、通信情報の急増や機能の付加に伴い、通信機器において回路の小型化が強く望まれている。回路の小型化を図るためには、回路の多層化に加えキャパシタ素子などの回路を内蔵するに当たり、単位面積あたりの静電容量値をあげて電極面積を小さくする必要がある。
【0007】
静電容量値は、数式3に示すように、絶縁層の厚みあたりの誘電率と電極面積との積で求められる。このため、静電容量値を高くするには誘電率を高くすることが有効である。キャパシタ素子、共振器などを形成する材料には、このような特性の材料を用いることが有益である。
【0008】
(数式3)
(静電容量値)=(誘電率)×(電極面積)/(絶縁層厚み)
【0009】
このように、プリント配線板および電子部品について、高周波領域における伝送損失を低減するためには、誘電率および誘電正接が低い材料を用いることが望まれ、回路の小型化を達成するためには、誘電率を高くし且つ誘電正接を低くしたバランスの取れた材料が望まれる。
【0010】
また、環境による電気特性の変化が大きいと、共振器やフィルタに寄与する素子には不向きであるため、このような素子として用いる場合には環境による変化の小さな材料が望まれる。
【0011】
そこで、プリント配線板および電子部品に要求される基本性能を満足しつつ、誘電体層の高誘電率及び低誘電正接を達成すべく、プリント配線板および電子部品の誘電体層を構成する絶縁材料として、ポリビニルベンジルエーテル化合物に誘電体セラミック粉末を分散したものを用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
ところで、プリント配線板や電子部品等に用いられる多層基板用絶縁材料としては、電気的特性、機械的特性、接着性などに優れたエポキシ樹脂が用いられている。このエポキシ樹脂の硬化剤としては、アミン化合物、フェノール化合物などの活性水素を有する化合物が使用されている。しかし、これら活性水素を有する硬化剤を使用してエポキシ樹脂を硬化させた場合には、エポキシ基と活性水素との反応によって極性の高いヒドロキシ基が発生してしまい、誘電正接を低くすることが困難である。
【0013】
このため、極性の高いヒドロキシル基を発生させないように、例えば、カルボン酸と芳香族ヒドロキシ化合物とからなるエステル化合物を、エポキシ樹脂の硬化剤として使用する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、カルボン酸と芳香族ヒドロキシ化合物とからなるエステル化合物の有するエステル結合がエポキシ基に対して高い反応活性を持つことを利用しており、このエステル化合物を硬化剤としてエポキシ樹脂を硬化させた場合には、極性の高いヒドロキシ基を生じることがないため、得られる硬化物は低い誘電正接を示すことができる。このようなエステル化合物として、フタル酸やトリメリット酸とフェノール類とのエステル化合物、安息香酸類とビスフェノールAやビスフェノールSとのエステル化合物、あるいは、安息香酸類とフェノール樹脂とのエステル化合物などが知られている。
【0014】
しかし、これらエステル化合物は、活性の高いエステル結合が分子または分子鎖の末端にしか存在しないため、得られるエポキシ樹脂硬化物の架橋密度が高くならず、また、硬化物内部で水素結合が形成されることもないので、鉛フリーの半田加工に耐え得る高いガラス転移温度を有するエポキシ樹脂硬化物が得られなかった。このため、鉛フリーのはんだ加工に耐え得るだけの高いガラス転移温度(Tg)を有するエポキシ樹脂硬化物を得ることができなかった。なかでも、安息香酸と芳香族ヒドロキシ化合物とのエステルを硬化剤として使用したエポキシ樹脂硬化物は、硬化反応により生成した安息香酸エステル結合が、吸湿によって加水分解したときに、低分子量のカルボン酸である安息香酸が遊離するため、高湿度の環境下で誘電正接が増大するという問題があった。
【0015】
エポキシ基に対して高い反応活性を持つエステル化合物のなかで、高いガラス転移温度を有するエポキシ樹脂硬化物を与えるエステル化合物としては、分子鎖を形成する全てのエステル結合がエポキシ基に対して反応活性を有する多官能性ポリエステル、例えば、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジヒドロキシ化合物とから得られる多官能性ポリエステルが知られている(例えば、特許文献3参照)。このような多官能性ポリエステルを硬化剤として使用してエポキシ樹脂を硬化させた場合には、分子鎖を形成する全てのエステル結合が硬化反応に関与できるので、エポキシ樹脂硬化物の架橋密度が高くなり、ガラス転移温度を高くすることができる。
【0016】
しかし、このような多官能性ポリエステルの分子鎖の両末端が極性の高いヒドロキシ基、またはカルボキシ基であるため、この多官能性ポリエステルをエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合には、ヒドロキシ基が硬化物中に残存するうえに、カルボキシ基がエポキシ基と反応してヒドロキシ基を生成してしまい、エポキシ樹脂硬化物の誘電正接を低くすることが困難であった。また、未反応のカルボキシ基が硬化物中に残存すると、吸湿による加水分解により、該カルボキシ基を有する低分子量の芳香族ジカルボン酸が遊離し、高湿度の環境下で誘電正接が増大するという問題があった。さらに、芳香族ジカルボン酸や芳香族ジヒドロキシ化合物として、嵩高い構造を持たないフタル酸類やビスフェノール類などを使用した場合には、得られるポリエステルが結晶化しやすく、該ポリエステルを含有した樹脂組成物の溶媒への溶解性が十分に得られないという問題があった。
【0017】
また、上記多官能性ポリエステルと同様に、分子鎖を形成する全てのエステル結合が硬化反応に関与できるエステル化合物としては、芳香族多価カルボン酸と芳香族多価ヒドロキシ化合物とから得られる、両末端にヒドロキシ基を有するポリエステルの、ヒドロキシ基をモノカルボン酸でエステル化したポリエステルがある(例えば、特許文献4参照)。このようなポリエステルを硬化剤として使用してエポキシ樹脂を硬化させた場合には、ガラス転移温度を高くでき、かつ分子鎖末端のヒドロキシ基をモノカルボン酸でエステル化しているため、エポキシ樹脂を硬化させた際に極性の高いヒドロキシ基を生じることがない。
【0018】
しかし、このようなポリエステルの分子鎖末端がアルキルカルボニルオキシ基、あるいはアリールカルボニルオキシ基であるため、このポリエステルを硬化剤として用いた場合には、加水分解により容易に低分子量のカルボン酸が遊離してしまい、誘電正接が低くならず、高湿度の環境下では誘電率および誘電正接が増加してしまうという問題があった。
【0019】
また、エポキシ樹脂硬化物を電気絶縁用材料に使用する場合には、漏電や短絡等によって容易に燃焼しないように難燃性が求められているが、上記したポリエステルでは難燃性に劣るという問題点があった。
【特許文献1】特開2001−247733号公報
【特許文献2】特開昭62−53327号公報
【特許文献3】特開平5−51517号公報
【特許文献4】特開平10−101775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このように、従来のエステル化合物を硬化剤として使用した樹脂組成物は、誘電正接が低く、ガラス転移温度が高く、難燃性が高いものではなかった。このため、誘電正接が低く、ガラス転移温度が高く、難燃性が高い等の特性を実現可能な材料から構成されたプリント配線板および電子部品が求められていた。
【0021】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、誘電正接が低く、ガラス転移温度が高く、高湿環境下での誘電率および誘電正接の増加がしにくく、難燃性が高い材料から構成されたプリント配線板および電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかるプリント配線板は、
分子鎖末端にアリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基を有する、芳香族多価カルボン酸残基と芳香族多価ヒドロキシ化合物残基とからなるポリエステルと、エポキシ樹脂と、硬化促進剤と、難燃剤とを含む樹脂組成物からなる樹脂層を備える、ことを特徴とする。
【0023】
前記芳香族多価ヒドロキシ化合物残基は、下記式(1)〜(4)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、
前記芳香族多価カルボン酸残基は、下記式(5)〜(7)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、
前記アリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基中のアリール基は、下記式(8)〜(10)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種のアリール基である、ことが好ましい。
【0024】
【化1】

(1)

(式(1)中、kは0または1である。)
【0025】
【化2】

(2)
【0026】
(式(2)中、Yは酸素原子、メチレン基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたメチレン基、フェニル基で置換されたメチレン基、ナフチル基で置換されたメチレン基、ビフェニル基で置換されたメチレン基、9−フルオレニル基で置換されたメチレン基、または該フェニル基、該ナフチル基、あるいは該ビフェニル基に更に炭素数1〜4のアルキル基が核置換したメチレン基を表す。nおよびmは、各々1〜3の整数を表す。)
【0027】
【化3】

(3)
【0028】
【化4】

(4)
【0029】
【化5】

(5)
【0030】
【化6】

(6)
【0031】
【化7】

(7)
【0032】
(式中A、B、D、E、Gは置換基であり、各々炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表す。a、e、gは各々0〜4の整数を示し、b、dは各々0〜3の整数を表す。Xは単結合、−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、または−SO−を表す。)
【0033】
【化8】

(8)
【0034】
【化9】

(9)
【0035】
【化10】

(10)
【0036】
(式中、P、Q、R、T、Uは置換基であり、各々炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲン原子を表す。p、rは0〜5の整数、q、tは0〜4の整数、uは0〜3の整数を表す。Zは単結合、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、または−SO−を表す。)
【0037】
前記樹脂層に設けられ、キャパシタ素子またはインダクタ素子を構成する、少なくとも1つの導電性素子部を備えることが好ましい。
【0038】
前記難燃剤は、臭素化芳香族系難燃剤であることが好ましい。また、前記難燃剤は、エタン−1,2−ビス(ベンタブロモフェニル)であることが好ましい。前記樹脂組成物は、スチレン系エラストマーとポリブタジエン系ポリマーとの少なくとも一つを含有してもよい。
【0039】
少なくとも1層に前記樹脂組成物と、前記樹脂組成物よりも大きい比誘電率を有する誘電体セラミック粉末とを含有する樹脂層を備えていてもよい。
【0040】
前記誘電体セラミック粉末としては、例えば、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、スズ、ネオジウム、ビスマス、リチウム、サマリウム及びタンタルからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む金属酸化物粉末であって、比誘電率が3.7〜10000あり、Q値が200〜100000である金属酸化物粉末である。
【0041】
前記誘電体セラミック粉末と前記樹脂組成物との合計を100体積%としたとき、前記誘電体セラミックス粉末が5〜65体積%含有することが好ましい。
【0042】
前記樹脂層は、前記樹脂組成物中に分散される磁性体粉末を更に含んでもよい。前記樹脂層は、強化繊維からなるクロスを更に含んでもよい。前記強化繊維は、Eガラスのガラスクロス、Dガラスのガラスクロス、NEガラスのガラスクロス、Hガラスのガラスクロス、Tガラスのガラスクロス、アラミドの多孔質膜、ポリアミドの多孔質膜、及びポリ4弗化エチレンの多孔質膜からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0043】
本発明の第2の観点にかかる電子部品は、
分子鎖末端にアリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基を有する、芳香族多価カルボン酸残基と芳香族多価ヒドロキシ化合物残基とからなるポリエステルと、エポキシ樹脂と、硬化促進剤と、難燃剤とを含む樹脂組成物からなる樹脂層を備える、ことを特徴とする。
【0044】
前記芳香族多価ヒドロキシ化合物残基は、下記式(1)〜(4)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、
前記芳香族多価カルボン酸残基は、下記式(5)〜(7)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、
前記アリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基中のアリール基は、下記式(8)〜(10)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種のアリール基である、ことが好ましい。
【0045】
【化11】

(1)

(式(1)中、kは0または1である。)
【0046】
【化12】

(2)
【0047】
(式(2)中、Yは酸素原子、メチレン基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたメチレン基、フェニル基で置換されたメチレン基、ナフチル基で置換されたメチレン基、ビフェニル基で置換されたメチレン基、9−フルオレニル基で置換されたメチレン基、または該フェニル基、該ナフチル基、あるいは該ビフェニル基に更に炭素数1〜4のアルキル基が核置換したメチレン基を表す。nおよびmは、各々1〜3の整数を表す。)
【0048】
【化13】

(3)
【0049】
【化14】

(4)
【0050】
【化15】

(5)
【0051】
【化16】

(6)
【0052】
【化17】

(7)
【0053】
(式中A、B、D、E、Gは置換基であり、各々炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表す。a、e、gは各々0〜4の整数を示し、b、dは各々0〜3の整数を表す。Xは単結合、−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、または−SO−を表す。)
【0054】
【化18】

(8)
【0055】
【化19】

(9)
【0056】
【化20】

(10)
【0057】
(式中、P、Q、R、T、Uは置換基であり、各々炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲン原子を表す。p、rは0〜5の整数、q、tは0〜4の整数、uは0〜3の整数を表す。Zは単結合、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、または−SO−を表す。)
【0058】
前記樹脂層に設けられ、キャパシタ素子またはインダクタ素子を構成する、少なくとも1つの導電性素子部を備えることが好ましい。
【0059】
前記難燃剤は、臭素化芳香族系難燃剤であることが好ましい。また、前記難燃剤は、エタン−1,2−ビス(ベンタブロモフェニル)であることが好ましい。前記樹脂組成物は、スチレン系エラストマーとポリブタジエン系ポリマーとの少なくとも一つを含有してもよい。
【0060】
少なくとも1層に前記樹脂組成物と、前記樹脂組成物よりも大きい比誘電率を有する誘電体セラミック粉末とを含有する樹脂層を備えていてもよい。
【0061】
前記誘電体セラミック粉末としては、例えば、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、スズ、ネオジウム、ビスマス、リチウム、サマリウム及びタンタルからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む金属酸化物粉末であって、比誘電率が3.7〜10000あり、Q値が200〜100000である金属酸化物粉末である。
【0062】
前記誘電体セラミック粉末と前記樹脂組成物との合計を100体積%としたとき、前記誘電体セラミックス粉末が5〜65体積%含有することが好ましい。
【0063】
前記樹脂層は、前記樹脂組成物中に分散される磁性体粉末を更に含んでもよい。前記樹脂層は、強化繊維からなるクロスを更に含んでもよい。前記強化繊維は、Eガラスのガラスクロス、Dガラスのガラスクロス、NEガラスのガラスクロス、Hガラスのガラスクロス、Tガラスのガラスクロス、アラミドの多孔質膜、ポリアミドの多孔質膜、及びポリ4弗化エチレンの多孔質膜からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、誘電正接が低く、ガラス転移温度が高く、高湿度下において誘電率および誘電正接の増加がしにくく、難燃性が高い材料から構成されたプリント配線板および電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、本発明のプリント配線板および電子部品について詳細に説明する。
【0066】
本発明のプリント配線板および電子部品は、エポキシ樹脂、分子鎖末端にアリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基を有する、芳香族多価カルボン酸残基と芳香族多価ヒドロキシ化合物残基とからなるポリエステル(以下、「ポリエステル(A)」と略記する。)、硬化促進剤および難燃剤を含む有機絶縁材料からなる絶縁層と、この有機絶縁材料に誘電体粉末および表面処理剤をさらに含む誘電体層と、の少なくとも一方から構成された樹脂層と、
樹脂層の絶縁層と誘電体層との少なくとも一方に設けられ、キャパシタ素子またはインダクタ素子を構成する、少なくとも1つの導電性素子部と、
を備えている。
【0067】
まず、絶縁層について説明する。絶縁層は、前述のように、エポキシ樹脂、ポリエステル(A)、硬化促進剤および難燃剤を含む有機絶縁材料からなる。
【0068】
本発明のプリント配線板および電子部品に使用される有機絶縁材料に含有するエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限されず、例えば、クレゾールノボラック、フェノールノボラック、α―ナフトールノボラック、β―ナフトールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ビフェニルノボラック、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシナフタレンなどの多価フェノールのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエニルジフェノールとエピクロルヒドリンとから得られるジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニル型エポキシ樹脂、テトラフェニル型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール、水添ビスフェノールAなどのアルコール系のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸やダイマー酸などを原料としたグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンなどのアミンを原料としたグリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ベンゾピラン型エポキシ樹脂、およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0069】
なかでも、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニル型エポキシ樹脂、テトラフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、および臭素化エポキシ樹脂を使用すると、耐熱性に優れたエポキシ樹脂硬化物が得られる。
【0070】
本発明のプリント配線板および電子部品に使用される有機絶縁材料に含有するポリエステル(A)は、分子鎖末端にアリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基を有する、芳香族多価カルボン酸残基と芳香族多価ヒドロキシ化合物残基とからなるポリエステルであり、エポキシ樹脂の硬化剤として好適に用いることができる。これは、ポリエステル(A)の有するエステル結合が、エポキシ基に対して高い反応活性を有するためであり、ポリエステル(A)を硬化剤として使用した場合には極性の高いヒドロキシ基を生じることがなく、得られるエポキシ樹脂硬化物は低い誘電正接を示す。更に、誘電率の増加を抑制する。
【0071】
また、ポリエステル(A)は、エポキシ基に対して反応活性を持つエステル結合を分子鎖内部にも有するため、ポリエステル(A)を硬化剤として使用したエポキシ樹脂硬化物は架橋密度が高く、ガラス転移温度が高い。
【0072】
ポリエステル(A)の分子鎖末端にアリールオキシカルボニル基を有する場合には、得られるエポキシ樹脂硬化物の架橋点のエステル結合が吸湿によって加水分解されても、誘電正接を増大させる低分子量のカルボン酸が遊離せず、得られるエポキシ樹脂硬化物は高湿度条件下においても低い誘電正接を示す。更に、誘電率の増加を抑制する。
【0073】
さらに、芳香族多価ヒドロキシ化合物が式(1)〜(4)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を残基として与える芳香族ジヒドロキシ化合物である場合には、式(1)〜(4)で表される基はいずれも嵩高い芳香環や脂環式構造を分子内に複数有するため、ポリエステル(A)は分子鎖の結晶化が抑えられ、有機溶媒中への溶解性に優れる。このため、ポリエステル(A)を含有する樹脂組成物を溶媒に溶解させる際や、ワニスを調整する際に、使用する溶媒量が少量でよい。
【0074】
【化21】

(1)
(式(1)中、kは0または1である。)
【0075】
【化22】

(2)
【0076】
(式(2)中、Yは酸素原子、メチレン基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたメチレン基、フェニル基で置換されたメチレン基、ナフチル基で置換されたメチレン基、ビフェニル基で置換されたメチレン基、9−フルオレニル基で置換されたメチレン基、または該フェニル基、該ナフチル基、あるいは該ビフェニル基に更に炭素数1〜4のアルキル基が核置換したメチレン基を表す。nおよびmは、各々1〜3の整数を表す。)
【0077】
【化23】

(3)
【0078】
【化24】

(4)
【0079】
また、下記一般式(11)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物残基を有するポリエステル(A)を用いることも好ましい。この場合、ポリエステル(A)は、一般式(11)で表される、臭素原子を持つ芳香族ジヒドロキシ化合物残基を有するため、このポリエステル(A)を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物は、優れた難燃性を示す。
【0080】
【化25】

(11)
(式(11)中、Jは−CH−、−C(CH−、または−SO−からなる群から選ばれる二価の基を表す。)
【0081】
本発明のプリント配線板およびプリント基板に使用される有機絶縁材料に含有するポリエステル(A)は、例えば、芳香族多価カルボン酸と芳香族多価ヒドロキシ化合物とを重縮合させ、両末端にカルボキシ基を有するポリエステルを合成しておき、該カルボキシ基を芳香族モノヒドロキシ化合物でエステル化して得られる。該ポリエステル(A)は、上記脱水エステル化反応以外にエステル交換反応やショッテン・バウマン反応によって製造することもできる。
【0082】
エステル交換反応では、芳香族多価ヒドロキシ化合物と芳香族モノヒドロキシ化合物を無水酢酸によりアセチル化した後、芳香族多価カルボン酸とをアシドリシスさせることによりポリエステル(A)が得られる。
【0083】
ショッテン・バウマン反応を利用する場合、該反応を界面で行わせる界面重縮合法と、均一溶液中で行わせる溶液重縮合法とがある。界面重縮合法では、芳香族多価カルボン酸の酸ハロゲン化物を含む有機溶液相と、芳香族多価ヒドロキシ化合物、および芳香族モノヒドロキシ化合物を含む水相とを接触させ、酸捕捉剤の共存下で界面重縮合させることによりポリエステル(A)が得られる。また、溶液重縮合法では、芳香族多価カルボン酸の酸ハロゲン化物を含む溶液と、芳香族多価ヒドロキシ化合物と芳香族モノヒドロキシ化合物を含む溶液とを、酸捕捉剤の存在下で混合し、脱ハロゲン化水素反応させることでポリエステル(A)が得られる。
【0084】
ポリエステル(A)は、芳香族多価カルボン酸、芳香族多価ヒドロキシ化合物、および芳香族モノヒドロキシ化合物の脱水エステル化反応によっても得られるが、一般に芳香族ヒドロキシ化合物の反応性は低いので、前記エステル交換反応、あるいはショッテン・バウマン反応を利用するのが好ましい。
【0085】
以下、ショッテン・バウマン反応を利用する製造方法を例として、本発明に使用するポリエステル(A)について具体的に説明する。ポリエステル(A)の製造に使用する芳香族多価ヒドロキシ化合物としては、芳香族ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であればよいが、例えば、上記式(1)〜(4),(11)で表される基を与える化合物であり、具体的には下記式(12)〜(16)で表される芳香族多価ヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0086】
【化26】

(12)
(式(12)中、kは0または1である。)
【0087】
【化27】

(13)
【0088】
(式(13)中、Yは酸素原子、メチレン基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたメチレン基、フェニル基で置換されたメチレン基、ナフチル基で置換されたメチレン基、ビフェニル基で置換されたメチレン基、9−フルオレニル基で置換されたメチレン基、または該フェニル基、該ナフチル基、あるいは該ビフェニル基に更に炭素数1〜4のアルキル基が核置換したメチレン基を表す。nおよびmは、1〜3の整数を表す。)
【0089】
【化28】

(14)
【0090】
【化29】

(15)
【0091】
【化30】

(16)
(式(16)中、Jは−CH−、−C(CH−、または−SO−からなる群から選ばれる二価の基を表す。)
【0092】
上記式(12)〜(16)で表される芳香族多価ヒドロキシ化合物のなかでも、式(12)で表される芳香族多価ヒドロキシ化合物を使用して得られるポリエステル(A)を硬化剤とするエポキシ樹脂硬化物は、構造中に疎水性の脂環式構造を有するため、吸水が少なく、高湿度環境下においても安定な誘電特性を示す。
【0093】
ただし、式(12)で表される芳香族多価ヒドロキシ化合物のうちkの平均値が0.2を越えるものは、溶媒に溶解してポリエステルを合成する際にゲル化が生じるおそれがあるため、式(12)で表される芳香族多価ヒドロキシ化合物を使用する場合には、kの平均値が0〜0.2の範囲にあるものを使用するか、あるいは、式(13)〜(16)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と混合して使用することが好ましい。式(13)〜(16)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と共に使用する場合には、式(12)で表される芳香族多価ヒドロキシ化合物の使用量をkの値に応じて適宜調整する必要があり、例えば、kが1の場合には、ポリエステル(A)を合成する際の式(12)で表される芳香族多価ヒドロキシ化合物の使用量は、使用する芳香族多価ヒドロキシ化合物全量に対して20mol%以下とすることが好ましい。
【0094】
一般式(16)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を使用して得られるポリエステル(A)を硬化剤としたエポキシ樹脂硬化物は、構造中に臭素原子を有するため、該エポキシ樹脂硬化物が熱分解した際に臭化水素が生じ、臭化水素の酸素遮断効果と、燃焼時の高活性なフリーラジカルを捕捉して燃焼エネルギーを低下させる効果によりエポキシ樹脂硬化物は難燃性を有する。
【0095】
ただし、ポリエステル(A)を合成する際に、上記一般式(16)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物のみを使用した場合には、ポリエステル(A)の結晶性が高くなり、該ポリエステル(A)を含有するエポキシ樹脂組成物の溶媒への溶解性が十分得られないことがあるため、上記一般式(16)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物以外に、十分な溶剤溶解性を与える芳香族多価ヒドロキシ化合物を併用することが好ましい。このときの一般式(16)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の使用量は、使用する芳香族多価ヒドロキシ化合物全量に対して、30〜60質量%の範囲であることが好ましい。
【0096】
十分な溶媒溶解性を与える芳香族多価ヒドロキシ化合物としては、上記式(12)〜(15)で表される化合物が挙げられる。ただし、式(12)で表される芳香族多価ヒドロキシ化合物を一般式(16)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と共に用いる場合、式(12)で表される芳香族多価ヒドロキシ化合物は、kの平均値が0〜0.2の範囲にあるものを使用するか、あるいは、式(13)〜(16)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と混合して使用することが好ましいことなどは上述した通りである。
【0097】
ショッテン・バウマン反応を利用してポリエステル(A)を製造する場合においては、芳香族多価カルボン酸は酸ハロゲン化物の形で使用する。ここで使用する酸ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素、または臭素を使用するのが一般的である。酸ハロゲン化物の形で使用する芳香族多価カルボン酸としては、カルボキシ基を2個以上有する化合物であればよく、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、あるいは、下記一般式(17)〜(19)で表される芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0098】
【化31】

(17)
【0099】
【化32】

(18)
【0100】
【化33】

(19)
【0101】
(一般式(17)〜(19)中、A、B、D、E、Gは置換基を表し、各々炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表す。a、e、gは各々0〜4の整数を表し、b、dは各々0〜3の整数を示す。A〜Gで表される置換基は、それぞれ、すべて同一であっても異なっていてもよい。Xは単結合、−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、または−SO−を表す。)
【0102】
上記芳香族多価カルボン酸のなかでも、一般式(17)〜(19)で表される芳香族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物から得られるポリエステル(A)は各種溶媒に対して優れた溶解性を示し、また、該ポリエステル(A)を硬化剤として使用したエポキシ樹脂硬化物は、高いガラス転移温度、低い誘電正接を示す。一般式(17)〜(19)で表される芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−、2,3−、あるいは2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。なかでも、イソフタル酸とテレフタル酸の混合物を使用して得られるポリエステル(A)は、特に各種溶媒への溶解性に優れる。
【0103】
芳香族モノヒドロキシ化合物としては、下記一般式(20)〜(22)で表される芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0104】
【化34】

(20)
【0105】
【化35】

(21)
【0106】
【化36】

(22)
【0107】
(一般式(20)〜(22)中、P、Q、R、T、Uは置換基を表し、各々炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲン原子を表す。p、rは0〜5の整数、q、tは0〜4の整数、uは0〜3の整数を示す。P〜Uで表される置換基は、それぞれ、すべて同一であっても異なっていてもよい。Zは単結合、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、または−SO−を表す。)
【0108】
一般式(20)〜(22)で表される芳香族モノヒドロキシ化合物としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、3、5−キシレノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、2−ベンジルフェノール、4−ベンジルフェノール、4−(α―クミル)フェノール、α―ナフトール、β−ナフトールなどが挙げられる。なかでも、α−ナフトール、β−ナフトール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、4−(α―クミル)フェノールを使用したポリエステル(A)を硬化剤とするエポキシ樹脂硬化物は特に低い誘電正接を有する。
【0109】
ポリエステル(A)を界面重縮合法により製造する場合の有機溶液相に用いる溶媒としては、芳香族多価カルボン酸の酸ハロゲン化物を溶解し、酸ハロゲン化物に不活性で、かつ、水と非相溶の溶媒であればよく、例えば、トルエン、ジクロロメタンなどが挙げられる。水相には芳香族多価ヒドロキシ化合物と酸捕捉剤であるアルカリを溶解する。
【0110】
溶液重合法により製造する場合に用いる溶媒としては、芳香族多価カルボン酸の酸ハロゲン化物、芳香族多価ヒドロキシ化合物、および芳香族モノヒドロキシ化合物を溶解し、かつ、酸ハロゲン化物に不活性な溶媒であればよく、トルエン、ジクロロメタンなどが使用できる。また、重縮合反応に使用する酸捕捉剤としては、ピリジンやトリエチルアミンなどを使用することができる。
【0111】
得られたポリエステル(A)は、洗浄や再沈殿などの操作によって精製し、不純物含有量を低減することが好ましい。ポリエステル(A)中にモノマー、ハロゲンイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、あるいは塩類などの不純物が残存すると、誘電正接を増大させる要因となる。
【0112】
ポリエステル(A)のポリスチレン換算の数平均分子量は550〜7000の範囲にあることが好ましい。数平均分子量が550未満であると、エポキシ樹脂硬化物の架橋密度が十分に高くならないため、ガラス転移温度に及ぼす効果が不十分となり、7000を越えると、溶媒へ溶解した際にゲル化が生じる場合がある。
【0113】
さらに、本発明では、必須成分ではないが、エポキシ樹脂の硬化剤として、芳香族多価カルボン酸のすべてのカルボキシ基が芳香族モノヒドロキシ化合物でエステル化された芳香族エステル(以下、該芳香族エステルを「芳香族エステル(H)」と略記する。)を併用することができる。
【0114】
芳香族エステル(H)は、芳香族多価カルボン酸と芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステルであり、上記ポリエステル(A)と同様の製造方法により得ることができる。
【0115】
芳香族エステル(H)の製造に使用する芳香族多価カルボン酸としては、例えば、上記ポリエステル(A)の合成に使用した芳香族多価カルボン酸と同様のカルボン酸を使用することができる。なかでも、イソフタル酸、あるいはテレフタル酸を使用した芳香族エステル(H)は、エポキシ樹脂組成物の溶媒への溶解性が良好である。
【0116】
芳香族モノヒドロキシ化合物としては、上記ポリエステル(A)の合成に使用する芳香族モノヒドロキシ化合物を使用することができる。なかでも、α−ナフトール、β−ナフトールを使用した芳香族エステル(H)は、得られるエポキシ樹脂硬化物の誘電正接を、より低くすることができるため好ましい。
【0117】
ポリエステル(A)と芳香族エステル(H)とを併用する場合、エポキシ樹脂組成物中に含まれる、ポリエステル(A)と芳香族エステル(H)との比率は、ポリエステル(A):芳香族エステル(H)が85:15〜55:45の範囲の質量比であると、特に優れたガラス転移温度と誘電正接とを兼備できる。
【0118】
本発明のプリント配線板および電子部品に使用される有機絶縁材料に含有する硬化促進剤としては、公知慣用のエポキシ樹脂硬化促進剤を用いることができる。例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどの有機ホスフィン化合物、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどの有機ホスファイト化合物、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物およびDBUとテレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸との塩、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウム塩、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、クロロフェニル尿素、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチル尿素などの尿素化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ、カリウムフェノキシドやカリウムアセテートなどのクラウンエーテルの塩などが挙げられ、これらは単独あるいは複数で用いることができる。これらの中でもイミダゾール化合物が好ましく用いられる。
【0119】
本発明のプリント配線板および電子部品に使用される有機絶縁材料に含有する難燃剤としては、臭素化芳香族系、縮合リン酸エステル系、金属水酸化物系、アンチモン系、リン系などの公知慣用の難燃剤を用いることができる。特に、臭素化芳香族系難燃剤は、構造中に臭素原子を有するため、エポキシ樹脂硬化物が熱分解した際に臭化水素が生じ、臭化水素の酸素遮断効果と、燃焼時の高活性なフリーラジカルを捕捉して燃焼エネルギーを低下させる効果とにより、エポキシ樹脂組成物に優れた難燃性を付与できる。しかも、該エポキシ樹脂組成物の硬化物の伝送損失を悪化させにくいので好ましい。この観点から特に好適な難燃剤は、エタン−1,2−ビス(ベンタブロモフェニル)である。
【0120】
ここで難燃性とは、炎や発熱体を近づけて試験片に点火し、再び消火するまでの燃焼に関する特性、すなわち燃えにくさのことを意味する。本発明における優れた難燃性とは、米国UL規格のうち、機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験に関するUL−94の、垂直燃焼試験による有焔時間を難燃性の基準とし、該規格のなかの電子材料に関係の深い94V−0の規格(有焔時間が10秒未満)を満たすことをいう。
【0121】
本発明のプリント配線板および電子部品に使用される有機絶縁材料に含有するエポキシ樹脂とポリエステル(A)との配合量は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1molに対して、ポリエステル(A)中のアリールオキシカルボニル基が0.15〜5molとなる配合量が好ましく、0.5〜2.5molとなる配合量であればさらに好ましい。ポリエステル(A)の配合量が該範囲外であると、ポリエステル(A)によるエポキシ樹脂の硬化反応が十分に進行せず、誘電正接やガラス転移温度に及ぼす効果が不十分になる。
【0122】
硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲であることが好ましい。硬化促進剤の配合量が0.01質量部未満であると硬化反応速度が遅くなり、5質量部より多いとエポキシ樹脂の自己重合が生じてポリエステル(A)によるエポキシ樹脂の硬化反応が阻害されることがある。
【0123】
本発明のプリント配線板および電子部品に使用する有機絶縁材料は、ポリエステル(A)、エポキシ樹脂、硬化促進剤、難燃剤、さらに必要に応じて添加される可とう性付与材などの所望の種類および量を含有する。
【0124】
可とう性付与材としては、スチレン系エラストマー、およびポリブタジエン系ポリマーの少なくとも一つを添加することができる。
スチレン系エラストマーとしては、スチレンと、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(エチレン/ブチレン)、ポリ(エチレン/プロピレン)、ポリ(ビニル/イソプロピレン)、およびポリエチレンから選択される1種または2種以上とのジブロック共重合体またはトリブロック共重合体が挙げられる。
また、ポリブタジエン系ポリマーとしては、1,2―ポリブタジエンまたは1,4−ポリブタジエンの二重結合の一部をエポキシ化した重合体を用いることができる。
【0125】
可とう性付与材は絶縁層に靭性を付与することが可能であり、また絶縁層が強化繊維を含むプリプレグである場合、そのハンドリング性が向上する。なお、可とう性付与材は必須のものではなく、プリント配線板および電子部品を製造する上で半硬化物に可とう性が要求されない用途では、特に添加する必要はない。
【0126】
可とう性付与材は、エポキシ樹脂100質量部に対して、5〜30質量部添加することが好ましい。可とう性付与材の量が前記以下だと、エポキシ樹脂組成物の改質効果がほとんどなく、脆い物性が改良されない。また、前記以上だとエポキシ樹脂組成物の本来の物性が発揮できなくなり、溶剤中での配合の際に固形分濃度が上げられず、溶液粘度が上がり、吸水率が増加する等の問題が生じるおそれがある。
【0127】
本発明のプリント配線板および電子部品に使用する有機絶縁材料に、ガラスや樹脂で作成されたクロスや不織布、フィラーなどを含有してもよい。例えば、使用されるフィラーとしては、低誘電率で低誘電正接のSiOやウイスカーなどがある。この場合、有機絶縁材料の硬化収縮の低減、線膨張係数の低減、強度の強化、材料の低誘電正接化などにより、プリント配線板および電子部品の変形や欠損等が十分に防止され、硬化収縮の低減による製造精度の向上や、熱衝撃等の信頼性の向上、誘電正接の低減、伝送特性の向上が可能となる。
【0128】
また、本発明のプリント配線板および電子部品に使用する有機絶縁材料に磁性を持たせてもよい。この場合、フィラーに磁性体粉末を含有することが好ましい。この磁性体粉末により、磁気特性を付加し、線膨張係数を低減させることができる。
【0129】
上記磁性体粉末としては、Mn−MgZn、Ni−Zn、Mn−Mg、プラナ材等のフェライトもしくはカルボニル鉄、鉄−シリコン系合金、鉄−アルミ−珪素系合金、鉄−ニッケル系合金、アモルファス系の強磁性金属が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
上記磁性体粉末の平均粒径は、0.01〜100μmの範囲内にあることが好ましく、0.2〜20μmの範囲内にあることがさらに好ましい。磁性体粉末の平均粒径が0.01μm未満では、樹脂の混練がしにくくなる傾向があり、100μmを超えると、均一な分散を行うことができなくなる傾向がある。
【0131】
また、磁性体粉末の含有量は、有機絶縁材料と磁性体粉末との合計を100体積%としたとき、5〜65体積%の範囲とすることが好ましく、この範囲内で適切な量を選択すればよい。5体積%未満では、磁性体粉末添加の効果が表れない傾向があり、65体積%を超えると、流動性が悪くなる。
【0132】
また、前記フィラーを含有する場合、表面処理剤を含むことが好ましい。表面処理剤はフィラーと有機絶縁材料との密着性を高め、基板強度が向上し、吸水性を低減するものである。
【0133】
このような表面処理剤としては、例えば、クロロシラン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤、有機官能性シラン系カップリング剤、シラザン系シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。使用する表面処理剤は、必要とされる特性に応じて単独で、あるいは2種類以上を混合してもよい。
【0134】
プリント配線板および電子部品においては、リフロー等の耐熱性が要求されるため、表面処理剤は、有機官能性シラン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤であることが好ましい。
【0135】
表面処理剤の添加量は、フィラー100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲内で適宜選択すればよい。添加量の選択は、使用するフィラーの粒径、形状、添加する表面処理剤の種類により決定される。表面処理方法としては、例えば、乾式法、湿式法、スプレー法、インテグラルブレンド法などが挙げられるが、必要に応じて選択すればよい。
【0136】
次に、誘電体層について説明する。誘電体層は、有機絶縁材料に誘電体粉末および表面処理剤をさらに含んでいる。
【0137】
プリント配線板および電子部品に使用される誘電体層は、主にキャパシタ素子の面積の縮小や共振器の波長短縮を目的とし、回路設計により適宜誘電特性を設定すればよい。例えば、誘電体層の誘電率を高くするためには、0.1GHz以上の高周波領域において、上述した有機絶縁材料にそれよりも高い誘電率を持つフィラーを含有すればよい。
【0138】
例えば、より誘電率を高くするには、主に、
(1)誘電率が非常に高い誘電体セラミック粉末を含有させる
(2)含有量を多くする
の2つの方法がある。
【0139】
また、誘電体層の誘電正接をより小さくするには、
(1)Q値の高いセラミックス粉末を含有させる
(2)含有量を多くする
の2つの方法がある。
【0140】
上記誘電体セラミック粉末は、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、スズ、ネオジウム、ビスマス、リチウム、サマリウム及びタンタルからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む金属酸化物粉末であって、比誘電率が3.7以上であり、かつ、Q値が200以上である金属酸化物粉末であることが好ましく、必要とされる誘電率及び誘電正接に応じて適切なセラミック粉末を選択すればよい。比誘電率とQ値はトレードオフの関係にあり、比誘電率が非常に高く、Q値も非常に高い誘電体はないのが実情である。例えば、BaTiOの比誘電率は1500と有機絶縁体と比較して非常に高いが、Q値は100も得られない。
【0141】
金属酸化物粉末の比誘電率が3.7未満である場合は、樹脂層(誘電体層)の比誘電率を高くすることができず、プリント配線板および電子部品の小型化が困難となる傾向がある。金属酸化物粉末のQ値が200未満である場合、Q値が減少傾向になるため、電気特性のよい素子をプリント配線板および電子部品に内蔵することは困難になる。
【0142】
誘電体セラミック粉末の具体例としては、下記成分を主成分とするものが挙げられる。なお、上記比誘電率及びQ値は、ギガHz帯における値であり、本発明において、ギガHz帯とは、0.1〜10GHzの周波数帯をいう。
【0143】
すなわち、MgSiO[ε=7、Q=20000]、Al[ε=9.8、Q=40000]、MgTiO[ε=17、Q=22000]、ZnTiO[ε=26、Q=800]、ZnTiO[ε=15、Q=700]、TiO[ε=104、Q=15000]、CaTiO[ε=170、Q=1800]、SrTiO[ε=255、Q=700]、SrZrO[ε=30、Q=1200]、BaTi[ε=42・Q=5700]、BaTi[ε=38、Q=9000]、BaTi20[ε=39、Q=9000]、Ba(Ti,Sn)20[ε=37、Q=5000]、ZrTiO[ε=39、Q=7000]、(Zr,Sn)TiO[ε=38、Q=7000]、BaNdTi14[ε=83、Q=2100]、BaNdTi12[ε=92、Q=1700]、BaSmTiO14[ε=74、Q=2400]、BaO−CaO−Nd−TiO[ε=90、Q=2200]、BaO−SrO−Nd−TiO[ε=90、Q=1700]、BaO−Nd、MgO−TiO、MgO−SiO[ε=6.1、Q=5000]、ZnO−TiO[ε=26、Q=840]、Bi−BaO−Nd−TiO[ε=88、Q=2000]、PbO−BaO−Nd−TiO[ε=90、Q=5200]、(Bi、PbO)−BaO−Nd−TiO[ε=105、Q=2500]、LaTi[ε=44、Q=4000]、NdTi[ε=37、Q=1100]、(Li,Sm)TiO[ε=81、Q=2050]、Ba(Mg1/3Ta2/3)O[ε=25、Q=35000]、Ba(Zn1/3Ta2/3)O[ε=30、Q=14000]、Ba(Zn1/3,Nb2/3)O[ε=41、Q=9200]、Sr(Zn1/3Nb2/3)O[ε=40、Q=4000]
【0144】
上記誘電体セラミック粉末のうち、Q値が高く且つεが樹脂よりも大きいという理由から、TiO、CaTiO、SrTiO、BaO−Nd−TiO、BaO−CaO−Nd−TiO、BaO−SrO−Nd−TiO、BaO−Sm−TiO、BaTi、BaTi20、Ba(Ti,Sn)20、MgO−TiO、ZnO−TiO、MgO−SiO、Alの成分を主成分とするものが好ましい。上記成分を主成分とする誘電体セラミック粉末は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
誘電体セラミック粉末の含有量は、有機絶縁材料と誘電体セラミックス粉末の合計を100体積%としたとき、5〜65体積%の範囲とすることが好ましく、この範囲内で、必要とされる誘電率及び誘電正接に応じて適切な量を選択すればよい。誘電体セラミック粉末の添加量が5体積%未満では、誘電体セラミック粉末により誘電率を増加させることが困難となる傾向があり、65体積%を超えると、樹脂組成物の流動性の低下を起こし、ボイドの発生や誘電体層の導電性金属に対する密着性が低下、長期間の使用により導電性金属が誘電体層から剥離し、電子部品の性能が変動するおそれがある。
【0146】
上記誘電体セラミック粉末の平均粒径は、0.01〜100μmの範囲内にあることが好ましく、0.2〜20μmの範囲内にあることがさらに好ましい。平均粒径が0.01μm未満では、ワニス粘度の増加、樹脂組成物の流動性の低下を起こし、接着性能が発現しなくなるおそれがあり、100μmを超えるとプリプレグ作製時に誘電体セラミック粉末が沈降するおそれがある。
【0147】
表面処理剤は、誘電体セラミック粉末と有機絶縁材料との密着性を高め、基板強度を高め、吸水性を低減するものである。
【0148】
このような表面処理剤としては、例えば、クロロシラン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤、有機官能性シラン系カップリング剤、シラザン系シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。使用する表面処理剤は、必要とされる特性に応じて単独で、あるいは2種類以上を混合してもよい。
【0149】
プリント配線板および電子部品においては、リフロー等の耐熱性が要求されるため、表面処理剤は、有機官能性シラン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤であることが好ましい。
【0150】
表面処理剤の添加量は、誘電体セラミック粉末100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲内で適宜選択すればよい。添加量の選択は、使用する誘電体セラミック粉末の粒径、形状、添加する表面処理剤の種類により決定される。表面処理方法としては、例えば、乾式法、湿式法、スプレー法、インテグラルブレンド法などが挙げられるが、必要に応じて選択すればよい。
【0151】
また、誘電体層は、強化繊維からなるクロスを更に含んでもよい。プリント配線板および電子部品の構成により、十分な強度が得られない場合、強化繊維からなるクロスにより誘電体層の機械強度が増強され、プリント配線板および電子部品の欠損又は変形等が十分に防止される。
【0152】
強化繊維の材質は、Eガラス、Dガラス、NEガラス、Hガラス、Tガラス又はアラミド繊維のいずれかであることが好ましい。これらのうち、NEガラスは低誘電正接であり、Hガラスは高誘電率を有し、Eガラスは、コストとのバランスが取れる。従って、要求する特性に応じて、適宜使い分ければよい。
【0153】
クロスの厚さは、20〜300μmであることが好ましく、必要とする厚さ、特性に応じて適宜使い分ければよい。
【0154】
クロスの具体例としては、101(厚さ約20μm)、106(厚さ約30μm)、1080(厚さ約50μm)、2116(厚さ約100μm)、7628(厚さ約200μm)などが挙げられる。
【0155】
またクロスの表面には、必要に応じて開繊、閉塞等の処理を施してもよく、さらにクロス表面に、樹脂との密着力を高めるためにカップリング剤等による表面処理を施しても良い。
【0156】
次に、導電性素子部について説明する。
【0157】
導電性素子部は、絶縁層と誘電体層との少なくとも一方に設けられている。絶縁層には少なくとも金属導体による配線が設けられ、絶縁層および誘電体層には少なくとも1つの導電性素子部を有している。
【0158】
導電性素子部は、キャパシタ素子またはインダクタ素子、共振器素子を構成するものであり、誘電体層において、導電性素子部は1つに限らず、複数あってもよい。誘電体層に複数又は複数種類の導電性素子部を設けることにより、プリント配線板および電子部品に種々の機能を付与することが可能である。具体的には、導電性素子部は、絶縁層および誘電体層に形成される金属導体で構成される。
【0159】
金属導体としては、銅、ニッケル、クロム、金、銀、錫、ニッケル−クロム合金等が挙げられるが、安価、入手の容易性という理由から、銅が好ましい。金属導体の厚さは1〜70μmであることが好ましい。金属導体の作製方法は、電解、圧延、スパッタ、蒸着のいずれの方法であってもよく、要求される厚さ、特性によって適宜選択すればよい。
【0160】
本発明において、プリント配線板および電子部品の基礎となるプリプレグを得るには、所定の配合としたエポキシ樹脂、ポリエステル(A)、硬化促進剤、難燃剤、また目的に応じてこれに誘電体セラミック粉末や磁性体粉末を含む樹脂組成物を溶剤に混練してスラリー化したペーストを塗工し、乾燥すればよい。この際に用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド、ジオキソラン等の揮発性溶剤が挙げられる。かかる溶剤は、エポキシ樹脂、ポリエステル等を液状化すると共に、ペーストの粘度調整するために用いられる。混練は、ボールミル、攪拌機等の公知の方法により行うことができる。
【0161】
プリプレグ及び基板の作製方法としては、下記2つの方法が挙げられる。
【0162】
(方式1)
スラリー化したペーストをクロスに含浸塗工した後、乾燥してクロス入りプリプレグを得る。この際に塗工するペーストの厚さは、クロスに対して片側5〜50μmとすることが好ましい。5μm未満では、プリプレグとしての流動性を確保することが困難となる傾向があり、50μmを超えると、ペーストのだれ等が生じやすくなり、厚さ、付着重量等にバラツキが大きくなりやすいためである。乾燥条件は、使用する溶剤、塗工する厚さによって適時条件を定めればよいが、50℃〜150℃程度で1〜60分程度の範囲から選択すればよく、必要に応じて温度を何段階かに分けるステップ乾燥を行ってもよい。
【0163】
基板を得るには、高温真空プレスを用いて加熱加圧することが一般的であり、温度及び加熱時間は、150〜250℃の間で0.5〜20時間とすればよい。減圧は必要に応じて行うが、4000Pa(30Torr)以下で行うことが好ましい。なお、この際に片面又は両面金属箔をつけたい場合は、高温真空プレスの際にプリプレグの上下に金属箔を置いて加熱、加圧プレスすればよい。
【0164】
(方式2)
スラリー化したペーストを金属箔若しくはPET、PI、PPS、LCP等のフィルム上にドクターブレード制御による方式、スプレー方式、カーテンコート方式、スピンコート方式、スクリーン印刷方式など公知の方法のいずれかを用いて塗工すればよく、必要とされる厚さ、精度、材料供給形態(例えば、ロールによる供給か、シートによる供給か)に応じて適時選択すればよい。
【0165】
この際に塗工されるペーストの厚さは、乾燥後で5〜100μmの範囲内とすればよく、さらに詳しくは、誘電体セラミック粉末などのフィラーを含有する場合、フィラーの最大粒径の2倍以上の厚さとすればよい。フィラーの最大粒径の2倍未満では、塗工の際のペーストの塗工性、平滑性やその硬化物の絶縁性に問題が生じるおそれがあり、厚さが100μmを超えると、残存する溶剤を除去する乾燥条件出しが困難となる傾向がある。
【0166】
但し、この場合は薄い厚さのペーストを重ね塗りしてもよい。乾燥条件は材料組成、得たい厚み、使用する溶剤によって適時条件を定めればよいが、50〜150℃程度の温度で1〜60分程度の時間、乾燥させればよく、必要に応じて温度を何段階かに分けて変化させるステップ乾燥を行ってもよい。
【0167】
こうして得られた半硬化接着シート(上下に金属箔が必要な場合は金属箔に塗工した半硬化接着シート、上下に金属箔が不要な場合はPET、PI、PPS、LCP等のフィルム上に塗工した半硬化接着シート)を2つ用い、間にクロスを挟んで高温真空プレスを行う。なお、クロス中への含浸、充填性が心配される場合は、あらかじめクロスに、固形分濃度を薄くしたペーストを含浸、乾燥しておいてもよい。高温真空プレスは、150〜250℃の温度で0.5〜20時間の時間で行えばよい。また必要に応じステップキュアを行ってもよい。圧力は1.5〜6.0MPaの間で行えばよく、減圧は必要に応じて行うが、4000Pa(30Torr)以下で行うのが好ましい。
【0168】
なお、上記のような基板には、両面パターンニング基板や多層基板などがある。
【0169】
本発明のプリント配線板および電子部品は、上記のようなプリプレグ、銅箔付基板、積層基板等と素子構成パターンを組み合わせることにより得ることができる。
【0170】
本発明のプリント配線板および電子部品は、上記のような配線パターン、コンデンサ(キャパシタ)回路、コイル(インダクタ)回路、フィルタ等の回路の他、これらと、これら以外の、増幅素子、機能素子を組み合わせたアンテナ回路や、RF回路(RF増幅段)、VCO(電圧制御発振回路)回路、パワーアンプ(電力増幅段)回路等の高周波電子回路、光ピックアップなどに用いられる重畳回路等、これらを複数組み合わせた回路であってもよい。
【0171】
次に、本発明のプリント配線板および電子部品をさらに具体的に説明する。
【0172】
(第1実施形態)
図1は本発明の電子部品の第1実施形態であるインダクタを示した透視斜視図、図2は本発明の電子部品の第1実施形態であるインダクタを示した断面図である。
【0173】
図1,2に示すように、インダクタ10は、構成層10a〜10eを積層してなる積層体と、構成層10b〜10eに設けられる内部導体13a〜13dと、この内部導体13a〜13dを電気的に接続するためのビアホール14とを有する。また、内部導体13とビアホール14とによりコイルパターン(導電性素子部)が構成されている。
【0174】
各構成層10a〜10eは、上記絶縁層もしくは誘電体層により構成されている。ビアホール14はドリル、レーザー加工、エッチング等により形成することができる。
【0175】
また、積層体の対向する両側面にはそれぞれ端子電極12が設けられており、コイルパターンの両端部はそれぞれ、各端子電極12に接続されている。なお、端子電極12の両端にはランドパターン11が設けられている。
【0176】
端子電極12は、貫通ビアの円筒を半分に分割した構造となっている。端子電極12がこのような構造になるのは、集合積層基板に複数の素子を形成し、最終的に素子ごとに切断する場合に、ダイシング、Vカット等により、貫通ビアの中心から切断するためである。
【0177】
インダクタ10を高周波用のチップインダクタとして使用する場合、分布容量をできるだけ減らす必要があることから、各構成層10a〜10eの比誘電率は、2.6〜3.5とすることが好ましい。またインダクタ10が共振回路を構成するインダクタである場合は、積極的に分布容量を用いる場合があり、このような用途では各構成層10a〜10eの比誘電率を5〜40とすることが好ましい。
【0178】
このインダクタ10においては、高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、インダクタ10の高湿度環境下での信頼性が高くなる。また電子部品の小型化、回路への容量素子の取付けの省略を図ることができる。また、これらのインダクタ10においては、材料の損失をできるだけ抑える必要があるため、各構成層10a〜10eの誘電正接(tanδ)を0.0025〜0.0075とすることにより、材料損失の極めて少ない、Q値の高いインダクタを得ることができる。また、各構成層10a〜10eは同一でも異なってもよく、最適な組み合せを選択すればよい。
【0179】
なお、図1の電子部品の等価回路を図10(a)に示す。図10(a)に示されるように、等価回路ではインダクタ10は、コイル31を有する電子部品(インダクタ)として示されている。
【0180】
(第2実施形態)
図3は本発明の電子部品の第2実施形態であるインダクタを示した透視斜視図、図4は電子部品の第2実施形態であるインダクタを示した断面図である。
【0181】
本実施形態の電子部品は、コイルパターンが、横方向、すなわち対向する端子電極12を結ぶ方向に巻回されている点で第1実施形態の電子部品と相違する。その他の構成要素は、第1実施形態と同様であり、図3、図4において、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0182】
(第3実施形態)
図5は本発明の電子部品の第3実施形態であるインダクタを示した透視斜視図、図6は本発明の電子部品の第3実施形態であるインダクタを示した断面図である。
【0183】
本実施形態の電子部品は、上下面においてそれぞれスパイラル状に形成された内部導体13がビアホール14により連結されている点で第1実施形態の電子部品と相違する。その他の構成要素は、第1実施形態と同様であり、図5、図6において、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0184】
(第4実施形態)
図7は本発明の電子部品の第4実施形態であるインダクタを示した透視斜視図、図8は本発明の電子部品の第4実施形態であるインダクタを示した断面図である。
【0185】
本実施形態の電子部品は、積層体の両側に設けられる端子電極12を結ぶ内部導体13のパターン形状をミアンダ状にしている点で第1実施形態の電子部品と相違する。その他の構成要素は、第1実施形態と同様であり、図7、図8において、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0186】
(第5実施形態)
図9は本発明の電子部品の第5実施形態であるインダクタを示した透視斜視図である。
【0187】
本実施形態の電子部品は、積層体にコイルパターンを4連設けている点で、積層体にコイルパターンを1つ設けている第1実施形態の電子部品と相違する。このような構成とすることにより、電子部品を回路基板等に配置する場合に、1つのコイルバターンを有する電子部品を4つ用いる場合に比べて、省スペース化を図ることができる。
【0188】
なお、図10(b)は、本実施形態のインダクタの等価回路図である。図10(b)に示すように、本実施形態のインダクタは、等価回路ではコイル31a〜31dが4連装されたものとして示されている。
【0189】
(第6実施形態)
図11は本発明の電子部品の第6実施形態であるキャパシタ(コンデンサ)を示した透視斜視図、図12は本発明の電子部品の第6実施形態であるキャパシタ(コンデンサ)を示した断面図である。
【0190】
図11、図12に示すように、キャパシタ20は、構成層20a〜20gを積層してなる積層体と、構成層20b〜20g上に形成されている内部導体23と、積層体の両側にそれぞれ設けられる端子電極22と、を備えている。そして、隣り合う内部導体23は、それぞれ異なる端子電極22に接続されている。また端子電極22の両端にはランドパターン21が設けられている。積層体に設けられる内部導体23により導電性素子部が構成されている。また各構成層20a〜20gは、上記絶縁層もしくは誘電体層により構成されている。
【0191】
また各構成層20a〜20gは、得られる容量の多様性や精度の観点からは2.6〜40の比誘電率を有し、0.0025〜0.0075の誘電正接を有することが好ましい。このキャパシタ20においては、高周波域においても比誘電率が大きくなるため、内部導体23の面積を小さくすることができ、ひいてはキャパシタ20の小型化が可能となる。またキャパシタ20を高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、キャパシタ20の高湿度環境下での信頼性が高くなる。また誘電正接(tanδ)を0.0075〜0.025とすることにより、材料損失の極めて少ないキャパシタとすることができる。各構成層20a〜20gは同一でも異なってもよく、最適な組み合せを選択すればよい。
【0192】
図14(a)は、本実施形態のキャパシタの等価回路図である。図14(a)に示すように、等価回路ではキャパシタ32を有する電子部品(コンデンサ)が示されている。
【0193】
(第7実施形態)
図13は本発明の電子部品の第7実施形態であるキャパシタを示した透視斜視図である。
【0194】
本実施形態の電子部品は、キャパシタ素子を構成する4つの導電性素子部が積層体にアレイ状に設けられている点で、キャパシタ素子を構成する1つの導電性素子部が積層体に設けられている第6実施形態のキャパシタと相違する。またキャパシタ素子の数に合せて端子電極22及びランドパターン21が設けられている。さらにキャパシタをアレイ状に形成する場合、様々な容量を精度よく形成する場合がある。このため、上記誘電率、誘電正接の範囲が好ましいといえる。
【0195】
その他の構成要素は、第6実施形態と同様であり、図13において、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0196】
図14(b)は、本実施形態のキャパシタの等価回路図である。図14(b)に示すように、等価回路ではキャパシタ32a〜32dが4連装された電子部品(コンデンサ)が示されている。
【0197】
(第8実施形態)
図15〜図18は、本発明の電子部品の第8実施形態であるバルントランスを示している。ここで図15は透視斜視図、図16は断面図、図17は各構成層の分解平面図、図18は等価回路図である。
【0198】
図15〜17に示すように、バルントランス40は、構成層40a〜40oを積層してなる積層体と、積層体の上下および中間に配置された内部GND導体45と、この内部GND導体45間に形成されている内部導体43とを有する。この内部導体43は、λg/4長のスパイラル状導体であり、図18の等価回路に示される結合ライン53a〜53dを構成するようにビアホール44等で連結されている。
【0199】
このバルントランス40の構成層40a〜40oは、比誘電率を2.6〜40とし、誘電正接(tanδ)を0.0075〜0.025とすることが好ましく、各構成層40a〜40oとしては、上記絶縁層もしくは誘電体層が用いられる。なお、各構成層は同一でも異なってもよく、最適な組み合せを選択すればよい。
【0200】
このバルントランス40によれば、高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、バルントランス40の高湿度環境下での信頼性が高くなる。
【0201】
(第9実施形態)
図19〜図22は、本発明の電子部品の第9実施形態である積層フィルタを示している。ここで図19は斜視図、図20は分解斜視図、図21は等価回路図、図22は伝達特性図である。
【0202】
本実施形態の積層フィルタは、2ポール型の伝達特性を有するように構成されている。図19〜21に示すように、積層フィルタ60は、構成層60a〜60eが積層された積層体を備えている。ここで、構成層60bは上部構成層群であり、構成層60dは下部構成層群である。積層体のほぼ中央の構成層60cには一対のストリップ線路68が形成され、これに隣接する下部構成層群60d上には、一対のコンデンサ導体67が形成されている。構成層60b、60eの表面にはそれぞれGND導体65が形成され、これらGND導体65によりストリップ線路68及びコンデンサ導体67が挟み込まれるようになっている。ストリップ線路68、コンデンサ導体67及びGND導体65はそれぞれ、積層体の端面に形成された端部電極(外部端子)62に接続されている。また、端部電極62の両側にはGNDパターン66が形成され、GNDパターン66はGND導体65に接続されている。
【0203】
ストリップ線路68は、図21の等価回路図に示されるλg/4長またはそれ以下の長さを有するストリップ線路74a、74bであり、コンデンサ導体67は、入出力結合容量Ciを構成する。またストリップ線路74a、74b間は、結合容量Cmおよび結合係数Mにより結合されている。積層型フィルタ60は、このような等価回路を形成するように構成されているため、図22に示すような2ポール型の伝達特性を有する。
【0204】
積層フィルタ60の構成層60a〜60eは、比誘電率を2.6〜40とすることにより、数100MHz〜数GHzの帯域において、所望の伝達特性が得られるようになる。また、ストリップライン共振器の材料損失はできるだけ抑えることが望ましいため、誘電正接(tanδ)を0.0025〜0.0075とすることが好ましい。このような構成層60a〜60eとしては、上記絶縁層または誘電体層を用いられる。なお、各構成層は同一でも異なってもよく、最適な組み合せを選択すればよい。
【0205】
この積層フィルタ60によれば、高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、積層フィルタ60の高湿度環境下での信頼性が高くなる。
【0206】
(第10実施形態)
図23〜図26は、本発明の電子部品の第10実施形態である積層フィルタを示している。ここで、図23は斜視図、図24は分解斜視図、図25は等価回路図、図26は伝達特性図である。
【0207】
本実施形態の積層フィルタは、4ポール型の伝達特性を有するように構成されている。図23〜25に示すように、積層フィルタ60は、構成層60cに4本のストリップ線路68が形成されている点で、構成層60cに2本のストリップ線路68が形成されている第9実施形態の積層フィルタと相違する。
【0208】
本実施形態の積層フィルタにおいては、ストリップ線路68は、図25の等価回路図に示されるλg/4長またはそれ以下の長さを有するストリップ線路74c、74d、74e、74fであり、またストリップ線路74c、74d間、ストリップ線路74d、74e間、及びストリップ線路74e、74f間はそれぞれ、結合容量Cmおよび結合係数Mにより結合されている。積層型フィルタ60は、このような等価回路を形成するように構成されているため、図26に示すような4ポール型の伝達特性を有する。
【0209】
その他の構成要素は、第9実施形態と同様であり、図23、図24において、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0210】
(第11実施形態)
図27〜図31は、本発明の電子部品の第11実施形態であるカプラを示している。ここで図27は透視斜視図、図28は断面図、図29は各構成層の分解斜視図、図30は内部結線図、図31は等価回路図である。
【0211】
図27〜31に示すように、カプラ110は、構成層110a〜110cが積層された積層体と、積層体の構成層110bの上下面に形成された内部GND導体115と、この内部GND導体115間に形成され、トランスを構成する2つのコイルパターンとを有する。各コイルパターンは、複数の内部導体113と、これら内部導体113を連結するビアホール114とにより構成されており、スパイラル状となっている。また形成された各コイルパターンの端部と内部GND導体115とは、図30に示すように、それぞれ積層体の側面に形成された端子電極112に接続されている。なお、端子電極112の両端部にはランドパターン111が形成されている。
【0212】
このように、カプラ110においては、図31の等価回路図で示すように、2つのコイル125a,125bが結合したものとなる。
【0213】
カプラ110の構成層110a〜110cは、広帯域化を実現しようとした場合、比誘電率はできるだけ小さい方が好ましい。一方、小型化を考えると比誘電率はできるだけ大きい方がよい。従って、構成層110a〜110cを構成する材料として、用途や、要求される性能、仕様等によりそれに適した比誘電率を有する材料を用いればよい。通常は、構成層110a〜110cの比誘電率を2.6〜40とすることにより、数100MHzから数GHzの帯域において、所望の伝達特性が得られるようになる。また、内部インダクタのQ値を上げるためには、誘電正接(tanδ)を0.0025〜0.0075とすることが好ましい。これにより、材料損失が極めて少なくなり、Q値の高いインダクタを形成でき、高性能のカプラを得ることができる。上記構成層110a〜110cとしては、上記誘電体層が用いられる。なお、各構成層は同一でも異なっていてもよく、最適な組み合せを選択すればよい。
【0214】
このカプラ110によれば、高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、カプラ110の高湿度環境下での信頼性が高くなる。
【0215】
(第12実施形態)
図32〜図34は、本発明の電子部品の第12実施形態であるアンテナを示した図であり、図32は透視斜視図、図33(a)は平面図、(b)は側面断面図、(c)は正面断面図、図34は各構成層の分解斜視図である。
【0216】
図32〜図34に示すように、アンテナ130は、構成層130a〜130cを積層してなる長尺状の積層体と、この構成層130b及び構成層130c上にそれぞれ形成されている内部導体133と、長尺状の積層体の両端にそれぞれ設けられる端子電極132とを有する。
【0217】
内部導体133はアンテナパターンを構成している。本実施形態では、内部導体133は、使用周波数に対し、長さが約λg/4となるようなリアクタンス素子として構成され、アンテナパターンは、ミアンダ状に形成されている。
【0218】
また内部導体133の両端部はそれぞれ、各端子電極132に接続されている。広帯域化を実現しようとした場合、このアンテナ130の構成層130a〜130cの比誘電率はできるだけ小さい方が好ましい。一方、小型化を考えると比誘電率はできるだけ大きい方がよい。従って、構成層130a〜130cを構成する材料として、用途や、要求される性能、仕様等によりそれに適した比誘電率を有する材料を用いればよい。通常は、構成層130a〜130cの比誘電率が2.6〜40であり、誘電正接が0.0075〜0.025であることが好ましく、構成層130a〜130cとしては、上記絶縁層もしくは誘電体層が用いられる。これにより、周波数の範囲が広がり、高精度に形成できる。また、材料の損失をできるだけ抑える必要がある。このため、誘電正接(tanδ)を0.0025〜0.0075とすることにより、材料損失の極めて少ないアンテナとすることができる。なお、各構成層は同一でも異なっていてもよく、最適な組み合せを選択すればよい。
【0219】
このアンテナ130によれば、高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、アンテナ130の高湿度環境下での信頼性が高くなる。
【0220】
(第13実施形態)
図35は、本発明の電子部品の第13実施形態であるアンテナの透視斜視図、図36は、本発明の電子部品の第13実施形態であるアンテナの分解斜視図である。
【0221】
図35、36に示すように、アンテナ140は、構成層140a〜140cを積層してなる積層体と、この構成層140b及び構成層140c上にそれぞれ形成されている内部導体143a,143bとを有する。そして、上下の内部導体143a,143bはビアホール144にて接続され、ヘリカル状のアンテナパターン(インダクタンス素子)を形成するようになっている。なお、積層体の両端にはそれぞれ、第12実施形態と同様、端子電極が設けられており、アンテナパターンの両端部はそれぞれ各端子電極に接続されている。
【0222】
(第14実施形態)
図37は本発明の電子部品の第14実施形態であるパッチアンテナを示した透視斜視図、図38は、本発明の電子部品の第14実施形態であるパッチアンテナを示した断面図である。
【0223】
図37、38に示すように、本実施形態のパッチアンテナ150は、構成層150aと、この構成層150aの表面上に形成されている平板状のパッチ導体159と、このパッチ導体159に対向するように構成層150aの底面に形成されたGND導体155とを有する。ここで、パッチ導体159は、アンテナパターンを構成している。また、パッチ導体159には給電用のスルー導体154が給電部153で接続され、このスルー導体154はGND導体155とは接続されないようにGND導体155との間にギャップ156が設けられている。このため、GND導体155の下部からスルー導体154を通って給電が行われるようになっている。
【0224】
広帯域化を実現しようとした場合、このパッチアンテナ150の構成層150aの比誘電率はできるだけ低い方が好ましい。一方、小型化を考えると比誘電率はできるだけ高い方がよい。従って、構成層150aとしては、用途や、要求される性能、仕様等によりそれに適した比誘電率を有する材料を用いればよい。通常は、構成層150aの比誘電率は2.6〜40であり、誘電正接は0.0075〜0.025であることが好ましく、構成層150aとしては、上記の絶縁層もしくは誘電体層が用いられる。これにより、周波数の範囲が広がり、高精度に形成できる。また、誘電正接(tanδ)を0.0025〜0.0075とすることにより、材料損失の極めて少ない放射効率の高いアンテナとすることができる。
【0225】
また、数100MHz以下の周波数帯域においては、磁性体も誘電体と同様の波長短縮効果が得られ、さらに、放射素子のインダクタンス値を上げることができる。また、Q値の周波数ピークを合わせることにより、比較的低い周波数においても高いQ値が得られる。このため、パッチアンテナ150を数十〜数100MHzの無線機器の用途に使用する場合には透磁率を3〜20とすることが好ましく、構成層150aとして、磁性体粉末を含有した磁性体層を用いることが好ましい。これにより、数100MHz以下の周波数帯域において高特性化、小型化を実現できる。また各構成層は同一でも異なっていてもよく、最適な組み合せを選択すればよい。
【0226】
このパッチアンテナ150によれば、条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、パッチアンテナ150の高湿度環境下での信頼性が高くなる。
【0227】
(第15実施形態)
図39は本発明の電子部品の第15実施形態であるパッチアンテナを示した透視斜視図、図40は、本発明の電子部品の第15実施形態であるパッチアンテナを示した断面図である。
【0228】
図39、40に示すように、パッチアンテナ160は構成層160aと、この構成層160aの表面上に形成されているパッチ導体(アンテナパターン)169と、このパッチ導体169に対向するように構成層160aの底面に形成されたGND導体165とを有する。また構成層160aの側面であって、パッチ導体169の近傍に、これと接触しないように給電用の給電導体161が配置され、給電端子162から給電導体161に給電が行われるようになっている。給電端子162は、銅、金、パラジウム、白金、アルミニウム等により構成されており、メッキ、ターミネート、印刷、スパッタ、蒸着等の処理法を用いて形成することができる。その他の構成要素は、第14実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0229】
(第16実施形態)
図41は、本発明の電子部品の第16実施形態である多層型パッチアンテナを示した透視斜視図、図42は本発明の電子部品の第16実施形態である多層型パッチアンテナを示した断面図である。
【0230】
図41に示すように、本実施形態のパッチアンテナ170は、構成層150a及び構成層150bを積層してなる積層体と、この構成層150a、150b上にそれぞれ形成されているパッチ導体159a,159eと、このパッチ導体159a,159eに対向するように構成層150bの底面に形成されたGND導体155とを有する。また、パッチ導体159aには給電用のスルー導体154が給電部153aで接続され、このスルー導体154はGND導体155およびパッチ導体159eとは接続されないようにGND導体155およびパッチ導体159eとの間にギャップ156が設けられている。このため、GND導体155の下部からスルー導体154を通ってパッチ導体159aに給電が行われるようになっている。このときパッチ導体159eには、パッチ導体159aとの容量結合およびスルー導体154とのギャップによって形成される容量により給電される。その他の構成要素は第14実施形態と同様であり、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0231】
(第17実施形態)
図43は本発明の電子部品の第17実施形態である多連型パッチアンテナを示した透視斜視図、図44は、本発明の電子部品の第17実施形態である多連型パッチアンテナを示した断面図である。
【0232】
本実施形態のパッチアンテナ180は、積層体にアンテナを構成する4つの導電性素子部が格子状に設けられている点で、積層体に1つの導電性素子部のみが設けられている第16実施形態のパッチアンテナと相違する。すなわち図43、図44に示すように、パッチアンテナ180は、構成層150a、150bを積層してなる積層体と、構成層150a上に形成されているパッチ導体159a、159b、159c、159dと、構成層150b上に形成されているパッチ導体159e、159f、159g、159hと、これらのパッチ導体159a,159eに対向するように構成層150bの底面に形成されたGND導体155とを有する。その他の構成要素は第16実施形態と同様であり、同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0233】
このように複数の導電性素子部を1つの積層体に格子状に配設することにより、パッチアンテナの小型化と部品点数の削減が可能となる。
【0234】
(第18実施形態)
図45〜図47は、本発明の電子部品の第18実施形態であるVCO(電圧制御発振器)を示している。ここで、図45は透視斜視図、図46は断面図、図47は等価回路図である。
【0235】
図45〜47に示すように、VCO210は、構成層210a〜210gが積層された積層体と、積層体の上に形成、配置されたコンデンサ、インダクタ、半導体素子、レジスタ等の電気素子261と、構成層210a〜210d上に形成されている導体パターン及び構成層210e〜210g上にそれぞれ形成されている導体パターン262,263,264とを有する。VCO210は、図47に示すような等価回路を形成するように構成されており、導体パターン263は、ストリップラインとなっている。また、VCO210は、ストリップラインのほか、コンデンサ、信号線、半導体素子、電源ラインなどを有する。このため、構成層は、それぞれの機能に適した材料で形成するのが効果的である。
【0236】
より具体的には、上記構成層210gの表面には、内部導体である導体パターン263によりストリップラインが形成され、裏面にはGND導体としての導体パターン262及び端子導体としての導体パターン266が形成されている。また、構成層210eの表面にはコンデンサ導体としての導体パターン264が形成され、構成層210bの表面上には配線インダクタ導体265が形成されている。また、各構成層に形成された内部導体はビアホール214により接続され、表面にはマウントされた電子素子261が搭載されて、図47の等価回路に示すようなVCOが形成される。
【0237】
例えば、本実施形態のVCO210では、共振器を構成する構成層210f,210gには誘電正接が0.0025〜0.0075の絶縁層もしくは誘電体層を用いることが好まく、コンデンサを構成する構成層210c〜210eには、誘電正接が0.0075〜0.025、比誘電率が5〜40となるような誘電体層を用いることが好ましい。配線およびインダクタを構成する構成層210a,210bには、誘電正接が0.0025〜0.0075、比誘電率が2.6〜3.5の絶縁層もしくは誘電体層を用いることが好ましい。
【0238】
このように構成することにより、それぞれの機能に適した比誘電率、Q値、誘電正接とすることができ、高性能化、小型、薄型化が可能となる。このVCO210によれば、高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、VCO210の高湿度環境下での信頼性が高くなる。
【0239】
(第19実施形態)
図48〜図50は、本発明の電子部品の第19実施形態であるパワーアンプ(電力増幅器)を示している。ここで図48は各構成層の分解平面図、図49は断面図、図50は等価回路図である。
【0240】
図48〜50に示すように、パワーアンプ300は、構成層300a〜300eを積層してなる積層体と、積層体の上に配設されたコンデンサ、インダクタ、半導体、レジスタ等の電気素子361と、この構成層300a〜300e中およびその上下面に形成されている導体パターン313,315を有する。このパワーアンプ300は図50に示すような等価回路により構成されているため、ストリップラインL11〜L17、コンデンサC11〜C20、信号線、半導体への電源ラインなどを有する。このため、それぞれの機能に適した材料で構成層を形成するのが効果的である。
【0241】
より具体的には、これらの構成層300a〜300eの表面には、内部導体としての導体パターン313、GND導体としての導体パターン315等が形成されている。また、それぞれの内部導体はビアホール314により接続され、積層体の表面には、マウントされた電気素子361が搭載されて図50の等価回路に示すようなパワーアンプ300が形成される。
【0242】
本実施形態のパワーアンプ300では、ストリップラインを構成する構成層300d,300eには誘電正接が0.0075〜0.025、比誘電率が2.6〜40の絶縁層もしくは誘電体層を用いることが好ましい。コンデンサを構成する構成層300a〜300cには、誘電正接が0.0075〜0.025、比誘電率が5〜40となるような絶縁層もしくは誘電体層を用いることが好ましい。
【0243】
このように構成することにより、それぞれの機能に適した誘電率、Q値、誘電正接とすることができ、高性能化、小型、薄型化が可能となる。このパワーアンプ300によれば、高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、パワーアンプ300の高湿度環境下での信頼性が高くなる。
【0244】
(第20実施形態)
図51〜図53は、本発明の電子部品の第20実施形態である、光ピックアップなどに使用される重畳モジュールを示している。ここで、図51は各構成層の分解平面図、図52は断面図、図53は等価回路図である。
【0245】
図51〜53に示すように、重畳モジュール400は、構成層400a〜400kが積層された積層体と、積層体の上に形成、配置されたコンデンサ、インダクタ、半導体、レジスタ等の電気素子461と、この構成層400a〜400k中およびその上下面に形成されている導体パターン413,415等を有する。この重畳モジュール400は図53に示すような等価回路により構成されているため、インダクタL21、L23、コンデンサC21〜C27、信号線、半導体への電源ラインなどを有する。このため、それぞれの機能に適した材料で構成層を形成するのが効果的である。
【0246】
より具体的には、これらの構成層400a〜400kの表面には、内部導体としての導体パターン413、GND導体としての導体パターン415等が形成されている。また、それぞれの内部導体はビアホール414により上下に接続され、表面にはマウントされた電気素子461が搭載されて図53の等価回路に示すような重畳モジュール400が形成される。
【0247】
本実施形態の重畳モジュール400では、コンデンサを構成する構成層400d〜400iには、誘電正接が0.0075〜0.025、比誘電率が10〜40となるような誘電体層を用いることが好ましい。インダクタを構成する構成層400a〜400c,400j〜400kには誘電正接が0.0025〜0.0075、比誘電率が2.6〜3.5の絶縁層もしくは誘電体層を用いることが好ましい。
【0248】
このように構成することにより、それぞれの機能に適した誘電率、Q値、誘電正接とすることができ、高性能化、小型、薄型化が可能となる。この重畳モジュール400によれば、高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、重畳モジュール400の高湿度環境下での信頼性が高くなる。
【0249】
(第21実施形態)
図54〜図57は、本発明の電子部品の第21実施形態であるRFモジュールを示している。ここで、図54は斜視図、図55は外装部材を外した状態での斜視図、図56は各構成層の分解斜視図、図57は断面図である。
【0250】
図54〜57に示すように、RFモジュール500は、構成層500a〜500iが積層された積層体と、積層体の上に配設されたコンデンサ、インダクタ、半導体、レジスタ等の電気素子561と、この構成層500a〜500i中およびその上下面に形成されている導体パターン513,515、572と、アンテナパターン573とを有する。このRFモジュール500は、上記のようにインダクタ、コンデンサ、信号線、半導体への電源ラインなどを有する。このため、それぞれの機能に適した材料で構成層を形成するのが効果的である。
【0251】
本実施形態のRFモジュール500では、アンテナ構成、ストリップライン構成および配線層としての構成層500a〜500d、500gには、誘電正接が0.0025〜0.0075、比誘電率が2.6〜3.5の絶縁層もしくは誘電体層を用いることが好ましい。コンデンサ構成層としての構成層500e、500fには、誘電正接が0.0075〜0.025、比誘電率が10〜40となるような誘電体層を用いることが好ましい。電源ライン層としての構成層500h、500iには、透磁率が3〜20であり、磁性体粉末を含む磁性体層を用いることが好ましい。
【0252】
そして、これらの構成層500a〜500iの表面には、内部導体としての導体パターン513、GND導体としての導体パターン515、アンテナ導体としてのアンテナパターン573等が形成されている。また、それぞれの内部導体はビアホール514により上下に接続され、積層体の表面にはマウントされた電気素子561が搭載されてRFモジュール500が形成される。
【0253】
このように構成することにより、それぞれの機能に適した誘電率、Q値、誘電正接とすることができ、高性能化、小型、薄型化が可能となる。このRFモジュール500によれば、RFモジュール500を高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、RFモジュール500の高湿度環境下での信頼性が高くなる。
【0254】
(第22実施形態)
図58、図59は、本発明の電子部品の第22実施形態である共振器を示している。ここで、図58は透視斜視図、図59は断面図である。
【0255】
図58、59に示すように、共振器600は、ベース材610と、ベース材610を貫通する筒状の同軸導体641とを備えている。
【0256】
共振器600は、金型成形により円筒状の貫通孔が形成されたベース材610の表面に、メッキ、エッチング、印刷、スパッタ、蒸着等の処理法により表面GND導体647及び端部導体682を形成し、この表面GND導体647と端部導体682が接続されるようにベース材610の内壁面に同軸導体641を形成し、同軸導体641と接続されるように共振器用HOT端子681等を形成する。表面GND導体647、端部導体682、同軸導体641、共振器用HOT端子681は、銅、金、パラジウム、白金、アルミニウム等で形成する。ここで、同軸導体641は、ある特性インピーダンスを有する同軸型線路であり、同軸導体641を囲むようにベース材610に表面GND導体647が形成されている。
【0257】
この共振器のベース材610は、比誘電率を2.6〜40とすることにより、数100MHzから数GHzの帯域において、所望の共振特性が得られるようになる。また、共振器の材料損失はできるだけ抑えることが望ましく、誘電正接(tanδ)を0.0025〜0.0075とすることが好ましい。このようなベース材610としては、上記絶縁層もしくは誘電体層が用いられる。この共振器600によれば、共振器600を高湿度条件下で使用しても比誘電率の経時変化が十分に抑えられる。このため、共振器600の高湿度環境下での信頼性が高くなる。
【0258】
(第23実施形態)
図60、図61は、本発明の電子部品の第23実施形態であるストリップ共振器を示している。ここで、図60は透視斜視図、図61は断面図である。
【0259】
図60、61に示すように、ストリップ共振器700は、構成層710a〜710dを積層してなる積層体と、構成層710c上に形成される長方形のストリップ導体784と、構成層710b、構成層710d上に、ストリップ導体784を挟むように形成される矩形状のGND導体783とを有する。また、積層体の両側にはそれぞれ共振器用HOT端子781およびGND端子782が設けられ、ストリップ導体784の両端はそれぞれ共振器用HOT端子781およびGND端子782に接続されている。ストリップ共振器700は、第1実施形態のインダクタと同様にして製造すればよい。
【0260】
ストリップ共振器700の構成層710a〜710dは、比誘電率を2.6〜40とすることにより、数100MHzから数GHzの帯域において、所望の共振特性が得られるようになる。また、共振器の材料損失はできるだけ抑えることが望ましく、誘電正接(tanδ)を0.0025〜0.0075とすることが好ましい。このような構成層710a〜710dとしては、上記絶縁層もしくは誘電体層が用いられる。
【0261】
(第24実施形態)
図62は、本発明の電子部品の第24実施形態である共振器を示す透視斜視図である。
【0262】
図62に示すように、共振器800は、ベース材810と、ベース材810を貫通する円筒状の同軸型導電体841と、ベース材810を貫通し同軸型導電体841と平行に設けられる同軸型導電体842とを備えている。ベース材810には、同軸型導電体842の一端に端部電極882が形成され、他端に接続用電極885が形成されている。また、同軸型導電体841の一端は接続用電極885を介して同軸型導電体842と接続され、他端には共振器用HOT端子881が形成されている。ここで、端部電極882と共振器用HOT端子881とは電気的に絶縁されている。そして、ベース材810を囲むように、表面GND導体847が形成されている。表面GND導体847は、端部電極882とは接続されているが、共振器用HOT端子881とは電気的に絶縁されている。従って、同軸型導電体841、842は、ある特性インピーダンスを有する同軸型線路として機能する。
【0263】
この共振器800のベース材810は、比誘電率を2.6〜40とすることにより、数100MHzから数GHzの帯域において、所望の共振特性が得られるようになる。また、共振器800の材料損失はできるだけ抑えることが望ましく、誘電正接(tanδ)を0.0025〜0.0075とすることが好ましい。このようなベース材810として、上記絶縁層もしくは誘電体層が用いられる。
【0264】
(第25実施形態)
図63は、本発明の電子部品の第25実施形態であるストリップ共振器を示す透視斜視図である。
【0265】
図63に示すように、ストリップ共振器850は、複数の構成層810を積層してなる積層体と、構成層810上に形成されるU字状のストリップ導体884と、ストリップ導体884を構成層810を介して上下より挟み込むようにして配置された矩形状のGND導体883とを有する。また積層体の両側にはそれぞれ共振器用HOT端子881およびGND端子882が並設され、ストリップ導体884の両端部はそれぞれ共振器用HOT端子881およびGND端子882に接続されている。ストリップ共振器850の製造方法は、第1実施形態のインダクタと同様である。
【0266】
このストリップ共振器850の構成層810は、比誘電率を2.6〜40とすることにより、数100MHから数GHzの帯域において、所望の共振特性が得られるようになる。また、ストリップ共振器850の材料損失はできるだけ抑えることが望ましく、誘電正接(tanδ)を0.0025〜0.0075とすることが好ましい。このような構成層810としては、上記絶縁層もしくは誘電体層を用いることが好ましい。
【0267】
図64は、上記第22〜25実施形態の共振器の等価回路図を示している。図64に示すように、共振器用HOT端子981が同軸路、またはストリップラインから構成される共振器984,941の一端に接続され、共振器984,941の他端にはGND端子982が接続されている。
【0268】
(第26実施形態)
図65は、本発明の電子部品の第26実施形態を示すブロック構成図であり、携帯端末機器に本発明の電子部品を使用した例を示している。
【0269】
図65に示す携帯端末器1000においては、ベースバンドユニット1010から送出された送信信号は、ミキサ1001により混成回路1021からのRF信号と混合される。この混成回路1021には電圧制御発信回路(VCO)1020が接続されていて、フェーズロックループ回路(PLL)1019と共にシンセサイザ回路を構成し、所定の周波数のRF信号が供給されるようになっている。
【0270】
ミキサ1001によりRF変調が行われた送信信号は、バンドパスフィルタ(BPF)1002を経て、パワーアンプ1003により増幅される。このパワーアンプ1003の出力の一部は、カプラ1004から取り出され、減衰器1005で所定のレベルに調整された後、再びパワーアンプ1003に入力され、パワーアンプ1003の利得が一定になるように調整される。カプラ1004から送出された送信信号は、逆流防止用のアイソレータ1006、ローパスフィルタ(LPF)1007を経てデュプレクサ1008に入力され、これと接続されているアンテナ1009から送信される。
【0271】
一方、アンテナ1009に入力された受信信号は、デュプレクサ1008からアンプ1011に入力され、所定のレベルに増幅される。アンプ1011から出力された受信信号は、バンドパスフィルタ(BPF)1012を経て、ミキサ1013に入力される。このミキサ1013には、混成回路1021からバンドパスフィルタ(BPF)1022を経てRF信号が入力され、RF信号成分が除去され、復調される。ミキサ1013から出力された受信信号は、SAWフィルタ1014を経てアンプ1015で増幅された後、ミキサ1016に入力される。ミキサ1016には局部発信回路1018から所定の周波数の局部発信信号が入力され、前記受信信号は所望の周波数に変換され、アンプ1017で所定のレベルに増幅された後、ベースバンドユニット1010へ送出される。
【0272】
上記携帯端末器1000は、アンテナ1009、デュプレクサ1008、ローパスフィルタ1007を含むアンテナフロントエンドモジュール(図65の破線参照)1200や、アイソレータ1006、カップラ1004、減衰器1005、パワーアンプ1003を含むアイソレータパワーアンプモジュール(図65の破線参照)1100等として、上記のアンテナやパワーアンプを用いることができ、これによりハイブリッドモジュールを構成することができる。また、これら以外の構成要素を含むものをRFユニットとして構成できることは既に第21実施形態で示した通りであり、図65のBPF、VCO等も、第9〜11実施形態および第18実施形態に示すVCO等を用いることができる。
【0273】
上記のようにして携帯端末機器に本実施形態の電子部品を搭載すると、電子部品の小型化により携帯端末器1000を小型化することができる。また本実施形態の電子部品は曲げ強度に優れるため、電子部品の付け時において、電子部品の欠損ないし変形等を十分に防止することができる。さらに本実施形態の電子部品は、高湿度で使用しても誘電特性の経時変化が十分に防止されるため、携帯端末器1000を高湿度で使用してもその性能を長期間にわたって維持することができる。
【0274】
(第27実施形態)
図66〜68は、本発明の第27実施形態であるプリント配線板の製造工程を示している。まず、図66(a)に示す複合材料1101の上下両面に銅箔1102が貼り付けられた両面銅箔付シートを準備し、このシートの銅箔1102上にレジストフィルム1103を配置し(図66(b))、さらにマスク1104を配置して露光(図66(c))、現像(図66(d))、エッチング(図66(e))した後、レジストを剥離し(図66(f))、両面パターニング基板を形成する。次に、図66(g)に示すように、3つのプリプレグ1105と2つの両面パターニング基板とを交互に重ね合わせて5層に積層し、加圧加熱して成形する。続いて、例えば、NC加工により貫通スルーホール1106を形成し(図66(h))、形成した貫通スルーホール1106にデスミア無電解メッキを施し、無電解メッキ膜1107を形成する(図66(i))。次に、電解メッキを施し(図67(j))、研磨した後(図67(k))、レジストを配置し(図67(l))、さらに、マスク1108を配置して露光(図67(m))、現像(図67(n))、エッチング(図67(o))した後、レジストを剥離する(図68(p))。続いて、レジストを配置し(図68(q))、ニッケルメッキ、金メッキすることにより(図68(r))、プリント配線板が形成される。このように形成されたプリント配線板の複合材料1101、プリプレグ1105として、上記絶縁層もしくは誘電体層が用いられる。
【0275】
(第28実施形態)
図69〜71は、本発明の第28実施形態であるプリント配線板の製造工程を示している。第27実施形態と同様に、図69(a)に示す複合材料1201の上下両面に銅箔1202が貼り付けられた両面銅箔付シートを準備し、このシートの銅箔1202上にレジストフィルム1203を配置し(図69(b))、さらにマスク1204を配置して露光(図69(c))、現像(図69(d))、エッチング(図69(e))した後、レジストを剥離し(図69(f))、両面パターニング基板を形成する。次に、図69(g)に示すように、両面パターニング基板を挟むように、半硬化シート(RCC)1205を重ねて加圧加熱して成形する。続いて、レジスト、露光、現像、エッチング、レジスト剥離を行った後(図69(h))、レーザー加工を行い、スルーホールを形成する(図69(i))。次に、スルーホールにデスミア無電解メッキを施し、無電解メッキ膜を形成した後(図69(j))、電解メッキを施し(図70(k))、研磨した後(図70(l))、これを挟むように、半硬化シート(RCC)を重ねて加圧加熱して成形する(図70(m))。続いて、レジスト、露光、現像、エッチング、レジスト剥離を行った後(図70(n))、デスミア無電解メッキ、電解メッキ、研磨を施し(図70(o))、さらに、レジスト、露光、現像、エッチング、レジスト剥離を行う(図70(p))。そして、レジストを配置し(図71(q))、ニッケルメッキ、金メッキすることにより(図71(r))、プリント配線板が形成される。このように形成されたプリント配線板の複合材料1201、RCC1205として、上記絶縁層もしくは誘電体層が用いられる。
【0276】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明のプリント配線板および電子部品は、上記実施形態に記載の回路および電子部品のほか、コイルコア、トロイダルコア、円盤コンデンサ、貫通ンデンサ、クランプフィルタ、コモンモードフィルタ、EMCフィルタ、電源用フィルタ、パルストランス偏向コイル、チョークコイル、DC−DCコンバータ、ディレイライン、電波吸収シート、薄型電波吸収体電磁シールド、ダイプレクサ、デュプレクサ、アンテナスイッチ回路、アンテナフロントエンド回路、アイレータ・パワーアンプ回路、PLL回路、フロントエンド回路、チューナー回路ユニット、方向性結合器、ブルバランスドミキサー(DBM)、電力合成器、電力分配器、トナーセンサ、電流センサ、アクチュエータサウンダ(圧電型音声発生器)、マイク、レシーバ、ブザー、PTCサーミスタ、温度ヒューズ、フェライト石等であってもよい。
【実施例】
【0277】
以下に実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0278】
<合成例1>
反応容器に水1000ml、および水酸化ナトリウム20gを入れ、窒素気流中で、表1の合成例1の欄に示した量の芳香族モノヒドロキシ化合物と芳香族多価ヒドロキシ化合物とを投入し、ファードラー翼により毎分300回転で1時間攪拌した。次いで、30℃に保った反応容器に、塩化メチレン1000ml中に表1の合成例1の欄に示した量の芳香族多価カルボン酸の酸ハロゲン化物を溶解した溶液を15秒かけて滴下し、4時間攪拌を続けた。得られた混合液を静置分液して水相を除去し、残った塩化メチレン相を0.5%濃度の水酸化ナトリウム水溶液による洗浄、および水相の除去を3回繰り返し、さらに、脱イオン水による洗浄と水相の除去を3回繰り返した。洗浄後の塩化メチレン相を400mlまで濃縮した後、ヘプタン1000mlを15秒かけて滴下し、析出物をメタノールにより洗浄し、ろ過、乾燥してポリエステル(A1)を得た。
【0279】
<合成例2〜3>
合成例1における、表1の合成例1の欄に示した量の芳香族モノヒドロキシ化合物、芳香族多価ヒドロキシ化合物の代わりに、表1の合成例2、3の欄に示した量の芳香族モノヒドロキシ化合物、芳香族多価ヒドロキシ化合物を使用した以外は合成例1と同様にして、ポリエステル(A2)〜(A3)を得た。
【0280】
<合成例4>
反応容器に水1000ml、および水酸化ナトリウム20gを入れ、窒素気流中で、表1の合成例4の欄に示した量の芳香族モノヒドロキシ化合物を投入し、ファードラー翼により毎分300回転で1時間攪拌した。次いで、30℃に保った反応容器に、塩化メチレン1000ml中に表1の合成例4の欄に示した量の芳香族多価カルボン酸の酸ハロゲン化物を溶解した溶液を15秒かけて滴下し、4時間攪拌を続けた。得られた混合液を静置分液して水相を除去し、残った塩化メチレン相を0.5%濃度の水酸化ナトリウム水溶液による洗浄、および水相の除去を3回繰り返し、さらに、脱イオン水による洗浄と水相の除去を3回繰り返した。洗浄後の塩化メチレン相を400mlまで濃縮した後、ヘプタン1000mlを15秒かけて滴下し、析出物をメタノールにより洗浄し、ろ過、乾燥してエステル(B1)を得た。
【0281】
<合成例5>
反応容器に水1000ml、および水酸化ナトリウム20gを入れ、窒素気流中で、表1の合成例1の欄に示した量の芳香族モノヒドロキシ化合物と芳香族多価ヒドロキシ化合物とを投入し、ファードラー翼により毎分300回転で1時間攪拌した。次いで、30℃に保った反応容器に、塩化メチレン1000ml中に表1の合成例5の欄に示した量の芳香族多価カルボン酸の酸ハロゲン化物を溶解した溶液を15秒かけて滴下し、4時間攪拌を続けた。得られた混合液を静置分液して水相を除去し、残った塩化メチレン相を0.5%濃度の水酸化ナトリウム水溶液による洗浄、および水相の除去を3回繰り返し、さらに、脱イオン水による洗浄と水相の除去を3回繰り返した。洗浄後の塩化メチレン相を400mlまで濃縮した後、ヘプタン1000mlを15秒かけて滴下し、析出物をメタノールにより洗浄し、ろ過、乾燥してポリエステル(A4)を得た。
【0282】
<合成例6>
合成例5における、表1の合成例5の欄に示した量の芳香族多価ヒドロキシ化合物、芳香族モノカルボン酸の代わりに、表1の合成例6の欄に示した量の芳香族モノカルボキシル化合物、芳香族モノカルボン酸を使用した以外は合成例5と同様にして、ポリエステル(A5)を得た。
【0283】
<合成例7>
反応容器にテトラヒドロフラン400mlを入れ、窒素気流中で、トリエチルアミン11gとレゾルシノール5.1gとを溶解させ、氷冷しながらイソフタル酸クロリド5.1gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液を30分かけて滴下した。4時間撹拌した後、p−アセトキシ安息香酸クロリド19.9gをテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、溶液を5%濃度の炭酸ナトリウム水溶液中に注ぎ、析出物を吸引濾過、水およびメタノールで洗浄し、減圧乾燥して、下記式(23)で表される、ポリエステル(H1)(数平均分子量2900)を得た。
【0284】
【化37】

(23)
【0285】
<合成例8>
反応容器に水1000ml、および水酸化ナトリウム20gを入れ、窒素気流中で、ビスフェノールA45.7g、およびテトラブチルアンモニウムブロミド1.2gを溶解させた。30℃に保った反応容器に、イソフタル酸クロリド32.5g、およびテレフタル酸クロリド8.1gを溶解させた塩化メチレン溶液1000mlを30秒で滴下した。1時間撹拌した後、静置して分液し、水相を取り除いた。残った塩化メチレン相を0.5%濃度の水酸化ナトリウム水溶液による洗浄、水相の除去を3回繰り返し、さらに、脱イオン水による洗浄と水相の除去を3回繰り返した。洗浄後の塩化メチレン相を400mlまで濃縮した後、ヘプタン1000mlを15秒かけて滴下した後、析出物をメタノールにより洗浄し、ろ過、乾燥して、下記式(24)で表される、ポリエステル(H2)(数平均分子量8600)を得た。
【0286】
【化38】

(24)
【0287】
<合成例9>
反応容器に、トルエン500gとエチレングリコールモノエチルエーテル200gの混合溶媒にトリメチルヒドロキノン152gを溶解した溶液を入れ、該溶液にp−トルエンスルホン酸4.6gを加えた後、ベンズアルデヒド64gを滴下して、水分を留去しながら120℃で15時間撹拌した。次いで、冷却して析出した結晶をろ別し、ろ液が中性になるまで繰り返し水で洗浄して、下記式(25)で表されるジヒドロキシベンゾピランを得た。
【0288】
【化39】

(25)
【0289】
<合成例10>
反応容器に、上記式(25)で表されるジヒドロキシベンゾピラン187g、エピクロルヒドリン463g、n−ブタノール53g、およびテトラエチルベンジルアンモニウムクロリド2.3gを仕込み、窒素気流中で溶解させ、65℃の温度で共沸する圧力まで減圧した後、49%水酸化ナトリウム水溶液82gを5時間かけて滴下し、30分撹拌した。未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去した後、メチルイソブチルケトン550gとn−ブタノール55gとを加えて得られた溶液に、10%水酸化ナトリウム水溶液15gを添加して80℃で2時間反応させ、反応物を水洗して下記式(26)で表されるベンゾピラン型エポキシ樹脂を得た。
【0290】
【化40】

(26)
【0291】
【表1】

【0292】
表1に示す芳香族多価ヒドロキシ化合物は、各々下記を表す。
DHDBP:ジヒドロキシベンゾピラン(式(13)におけるYがフェニル基で置換されたメチレン基であり、n、mが共に3である、合成例9で得られた式(25)で表される芳香族多価ヒドロキシ化合物。ヒドロキシ基当量187g/eq)。
DCPDDP:日本石油株式会社製ジシクロペンタジエニルジフェノール「DPP―6085」(式(12)においてkの平均値が0.16である芳香族ジヒドロキシ化合物。ヒドロキシ基当量165g/eq)。
DHDN:東京化成工業株式会社製ジヒドロキシジナフタレン(式(14)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物。ヒドロキシ基当量143g/eq)。
【0293】
<実施例1〜5、14〜17>
合成例1〜6で得られたポリエステルA1〜A5、エステルB1を硬化剤として、これら硬化剤とエポキシ樹脂、硬化促進剤、有機溶剤(溶媒)、難燃剤および必要に応じてスチレン系エラストマーまたはブタジエン系ポリマーを表2に示す組成で25℃で混合し、ワニスを調製した。
<実施例6〜13、18〜24>
表2に示す組成に従い、合成例1〜6で得られたポリエステルA1〜A5とエステルB1を硬化剤として、これら硬化剤とエポキシ樹脂、硬化促進剤、溶媒、および必要に応じて難燃剤またはスチレン系エラストマーを25℃で混合し樹脂を溶解させた後、カップリング剤および誘電体粉末を加えて分散させて、ワニスを調製した。
【0294】
調製したワニスを公知のドクターブレード法による塗工機にてPETフィルム上に塗工・乾燥し、厚さ50μmの複合誘電体の半硬化物シートを作製した。得られた複合誘電体シートを20枚重ね合わせ、真空中150℃、4MPaの条件で1時間加圧プレスし、次いで、真空乾燥器中、190℃で10時間熱硬化させ、エポキシ樹脂硬化物を得た。
【0295】
<比較例1、7>
実施例1、14において、難燃剤を省いた以外は実施例と全く同様にしてワニスを調製した。
【0296】
<比較例2〜5>
合成例7〜8で得られたポリエステルH1およびH2、アジピン酸ジ(ニトロフェニル)エステル、およびメチルテトラヒドロ無水フタル酸を硬化剤として用い、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、および有機溶剤を表3に示す組成で混合し、ワニスを調製した。
【0297】
<比較例6、8>
表3に示す組成に従い、合成例1、5得られたポリエステルA1、A4を硬化剤として、これら硬化剤とエポキシ樹脂、硬化促進剤、溶媒、および難燃剤を25℃で混合し樹脂を溶解させた後、カップリング材および誘電体粉末を加えて分散させて、ワニスを調製した。
【0298】
調製したワニスを公知のドクターブレード法による塗工機にてPETフィルム上に塗工・乾燥し、厚さ50μmの複合誘電体の半硬化物シートを作製した。得られた複合誘電体シートを20枚重ね合わせ、真空中150℃、4MPaの条件で1時間加圧プレスし、次いで、真空乾燥器中、190℃で10時間熱硬化させ、エポキシ樹脂硬化物を得た。
【0299】
【表2】

【0300】
【表3】

【0301】
表2と表3中に示すエポキシ樹脂、硬化促進剤、難燃剤、スチレン系エラストマー、ブタジエン系ポリマーは、各々下記を表す。また、表2と表3中のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、溶媒、誘電体粉末、シランカップリング剤、難燃剤、スチレン系エラストマー、ブタジエン系ポリマー、及び重合開始剤の欄の数値は質量(g)を表す。
【0302】
EPICLON HP−7200H:大日本インキ化学工業株式会社製ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量280g/eq)。
ベンゾピラン型エポキシ樹脂:合成例10で得られた、式(26)で表されるベンゾピラン型エポキシ樹脂(エポキシ当量265g/eq)。
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン。
SAYTEX8010:アルベマールコーポレーション製のエタン−1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)。
KRATON G 1701:クレイトンポリマー製のスチレン−エチレン−プロピレンのジブロック共重合体。
BF−1000:旭電化工業株式会社製の部分エポキシ化した1,2−ポリブタジエン(オキシラン酸素=8%)。
【0303】
実施例1〜24および比較例1〜8で得られたワニスを用いて、下記の方法により、実施例1〜24および比較例1〜8の半硬化シート(A)、半硬化シート(B)、プリプレグ状シート(C)、硬化物シート(Da)、両面銅箔付硬化物シート(Db)、ガラスクロス入硬化物シート(E)、両面銅箔付ガラスクロス入硬化物シート(Fa)、両面銅箔付ガラスクロス入硬化物シート(Fb)を製造した。
【0304】
[半硬化シート(A)、半硬化シート(B)]
上記で得られたワニスを横型塗工機(ヒラノテクシード社製)により、ドクターブレードにてギャップを制御し、塗工を行った。
支持体にはポリエチレンテレフタレートシート(厚み50μm)もしくは、18μm電解銅箔(日鉱マテリアルズ JTC箔)を使用し、ギャップは100〜150μmで速度0.3m/min,乾燥は120℃/5分の熱風乾燥にて行い、ロールtoロールにて巻取った。これを100×100mmのサイズに裁断し、絶縁層厚み50μmの片面PET支持体付半硬化シートA(実施例1〜24)および片面銅箔付半硬化シートB(実施例1〜24)を得た。比較例1〜8についても同様の手順により、片面にPET支持体が付いた半硬化シートAおよび片面に銅箔が付いた半硬化シートBを作製した。
【0305】
[プリプレグ状シート(C)]
上記で得られたワニスを、含浸塗工装置(市金エンジニアング社製)を用い、ガラスクロス(1080タイプ、Eガラス、旭シュエーベル社製)に含浸塗工を行った。塗工速度は0.3m/minでギャップは300μm、乾燥条件は80℃/5分+120℃/5分で行い、ロールtoロールで巻き取った。さらに100×100mmに裁断し、厚み100μmの実施例1〜24、比較例1〜8に係るプリプレグ状シートCを得た。
【0306】
[硬化物シート(Da)]
上記実施例1〜24、比較例1〜8に係る半硬化シートAを100℃に加熱したホットプレート上にて貼り付け、支持体除去を16回繰り返し、厚み0.8mmの厚い半硬化シートを得、さらに高温真空プレス(KVHC型、北川精機株式会社製)を用い、4℃分→130℃/60分キープ→4℃/分→190℃/3時間、圧力1MPaの条件にて高温真空プレスを行った。得られた硬化物シート(Da)の厚みは0.7mmである。
【0307】
[両面銅箔付硬化物シート(Db)]
上記実施例1〜24、比較例1〜8に係る銅箔付きの半硬化シート(B)を、絶縁層(樹脂層)を合わせて重ね合わせ、高温真空プレス(KVHC型、北川精機株式会社製)を用い、4℃/分→130℃/60分キープ→4℃/分→190℃/3時間、圧力2MPaの条件にて高温真空プレスを行った。得られた両面銅箔付硬化物シート(Db)の厚みは0.1mmであった。
【0308】
[ガラスクロス入硬化物シート(E)]
実施例1〜24、比較例1〜8に係るプリプレグ状シート(C)を8枚重ねあわせ、高温真空プレス(KVHC型、北川精機株式会社製)を用い、4℃/分→130℃/60分キープ→4℃/分→190℃/3時間、圧力1MPaの条件にて高温真空プレスを行った。得られたガラスクロス入硬化物シート(E)の厚みは0.7mmであった。
【0309】
[両面銅箔付ガラスクロス入硬化物シート(Fa)]
実施例1〜24,比較例1〜8に係るプリプレグ状シート(C)の上下両面に、18μ厚の電解銅箔(日鉱マテリアルズ社製、JTC箔)を重ね合わせ、高温真空プレス(KVHC型、北川精機株式会社製)を用い、4℃/分→130℃/60分キープ→4℃/分→190℃/3時間、圧力2MPaの条件にて高温真空プレスを行った。得られた両面銅箔付ガラスクロス入硬化物シート(Fa)の厚みは0.1mmであった。
【0310】
[両面銅箔付ガラスクロス入硬化物シート(Fb)]
実施例1〜24、比較例1〜8に係る銅箔付きの半硬化シート(B)の間にガラスクロス(1080タイプ、Eガラス、旭シュエーベル社製)をはさみ、高温真空プレス(KVHC型、北川精機株式会社製)を用い、4℃/分→130℃/60分キープ→4℃/分→190℃/3時間、圧力2MPaの条件にて高温真空プレスを行った。得られた両面銅箔付ガラスクロス入硬化物シート(Fb)の厚みは0.1mmであった。
【0311】
以上の方法により製造した半硬化シート、プリプレグ状シート、硬化物シート、ガラスクロス入硬化物シート、両面銅箔付硬化物シート、両面銅箔付ガラスクロス入硬化物シートの評価を以下の方法によって行った。その結果を表4に示す。
【0312】
(誘電特性の測定)
硬化物シート(Da)およびガラスクロス入硬化物シート(E)について、TDKオリジナル測定方法である摂動法により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後のエポキシ樹脂硬化物、および121℃、2時間のプレッシャークッカーテストによる吸湿試験後のエポキシ樹脂硬化物の2GHzでの誘電率およびQ値(誘電正接の逆数)を測定した。
誘電率の変化率は下記式で算出した
誘電率の変化率(%)=(吸湿後の誘電率−初期誘電率)/(初期誘電率)×100
【0313】
(銅箔引き剥がし(ピール強度)試験)
両面銅箔付硬化物シート(Db)および両面銅箔付ガラスクロス入硬化物シート(Fa),(Fb)について、JIS C 6481に基づき、幅10mmの箔を50mm/分の速さで垂直に引き剥がしたときの強度を測定した。
【0314】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
硬化物シート(Da)およびガラスクロス入硬化物シート(E)について、セイコー電子工業株式会社製粘弾性スペクトロメータ「DMS200」により、1Hzにおけるtanδのピーク値の温度をガラス転移温度として測定した。
【0315】
(UL―94難燃性試験)
硬化物シート(Da)およびガラスクロス入硬化物シート(E)について、UL―94の規格に準拠した垂直燃焼試験により、合格するものを○、不合格なものを×とした。
【0316】
(はんだ耐熱性試験)
硬化物シート(Da)およびガラスクロス入硬化物シート(E)について、JIS−C−6481に準拠した方法により、300℃のはんだ浴に120秒間浸漬したエポキシ樹脂硬化物の状態を目視により評価した。目視により、膨れ、割れなどがないものを○、膨れ、割れなどが発生したものを×とした。
【0317】
【表4】

【0318】
表4に示す結果から明らかなように、本発明のエポキシ樹脂硬化物を用いて製造された実施例1〜24の各種シートは、低い誘電正接、高い耐熱性、高い体積抵抗率(絶縁性)を示すと共に、難燃性に優れる。さらに、可とう性付与材としてスチレン系またはポリブタジエン系ポリマーを添加したエポキシ樹脂硬化物を用いて製造された実施例2〜4、7〜13、15〜16、19〜24の各種シートは、半硬化状態(Bステージ)における可とう性が良好であり、ハンドリング性や耐クラック性などが改善されたものとなる。このように、誘電正接が低く、ガラス転移温度が高く、難燃性が高い材料から構成されたプリント配線板および電子部品を提供することができる。
【0319】
以上説明したように、本発明のプリント配線板および電子部品においては、分子鎖末端にアリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基を有する、芳香族多価カルボン酸残基と芳香族多価ヒドロキシ化合物残基とからなるポリエステル(A)をエポキシ樹脂組成物の硬化剤とすることで、硬化時に極性の高いヒドロキシ基が生成せず、誘電正接の低いエポキシ樹脂硬化物が得られるため、優れた電気特性を得ることが可能になる。該硬化物は吸湿にともなう加水分解により誘電正接を増加させる低分子量のカルボン酸が遊離せず、高湿度条件下においても低い誘電正接を示す。
【0320】
また、分子鎖内部にもエポキシ基に対して反応活性を持つエステル結合を有するため、該ポリエステル(A)をエポキシ樹脂の硬化剤として使用すると、エポキシ樹脂硬化物の架橋密度が高くなり、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れたプリント配線板および電子部品が得られる。
【0321】
さらに、硬化促進剤を添加することにより、エポキシ樹脂硬化物の硬化速度を促進して生産性を向上することができる。難燃剤を添加することにより、電気絶縁用材料用途に要求される難燃性を付与することができる。有機溶剤を添加することにより、プリント配線板および電子部品の材料の製造に必要な塗工性、含浸性を付与することができる。
【0322】
特に、芳香族多価ヒドロキシ化合物残基が式(1)〜(4)で表される、嵩高い芳香環や脂環式構造を分子内に複数有する基である場合、得られるポリエステル(A)の分子鎖の結晶化が抑えられ、該ポリエステル(A)は有機溶剤中への溶解性に優れ、該ポリエステル(A)を含有するエポキシ樹脂組成物を溶媒に溶解させる際や、ワニスを調整する際には、使用する溶媒量が少量でよい。
また、芳香族多価カルボン酸として、一般式(5)〜(7)で表される芳香族多価カルボン酸から得られるポリエステル(A)は、各種溶媒に対し優れた溶解性を示す。また、一般式(8)〜(10)で表される芳香族モノヒドロキシ化合物を使用したポリエステル(A)を硬化剤としたエポキシ樹脂組成物からは、低い誘電正接を示すエポキシ樹脂硬化物が得られる。
【0323】
前記難燃剤として、臭素化芳香族系難燃剤を用いたエポキシ樹脂硬化物は、誘電正接や誘電率等の電気特性に対して悪影響を与えにくく、電気絶縁用材料などの用途に好適である。
【0324】
可とう性付与材として、スチレン系エラストマー、およびポリブタジエン系ポリマーの少なくとも一つを添加したエポキシ樹脂硬化物は、半硬化状態でのハンドリング性に優れ、クラックや切断の際の樹脂落ち(粉落ち)等を抑制することができる。
【0325】
本発明のプリント配線板および電子部品は、上記エポキシ樹脂硬化物を用いて製造されるものであるので、低い誘電正接、高い耐熱性、および難燃性を備え、特に高湿度の環境下でも誘電率が変化しにくい。これによって高湿度条件下において特性変化の小さなプリント基板および電子部品を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0326】
【図1】本発明の電子部品の第1実施形態であるインダクタを示す透視斜視図である。
【図2】本発明の電子部品の第1実施形態であるインダクタを示す断面図である。
【図3】本発明の電子部品の第2実施形態であるインダクタを示す透視斜視図である。
【図4】本発明の電子部品の第2実施形態であるインダクタを示す断面図である。
【図5】本発明の電子部品の第3実施形態であるインダクタを示す透視斜視図である。
【図6】本発明の電子部品の第3実施形態であるインダクタを示す断面図である。
【図7】本発明の電子部品の第4実施形態であるインダクタを示す透視斜視図である。
【図8】本発明の電子部品の第4実施形態であるインダクタを示す断面図である。
【図9】本発明の電子部品の第5実施形態であるインダクタを示す透視斜視図である。
【図10】(a)は本発明の電子部品の第1実施形態であるインダクタを示す等価回路図であり、(b)は本発明の電子部品の第5実施形態であるインダクタを示す等価回路図である。
【図11】本発明の電子部品の第6実施形態であるキャパシタを示す透視斜視図である。
【図12】本発明の電子部品の第6実施形態であるキャパシタを示す断面図である。
【図13】本発明の電子部品の第7実施形態であるキャパシタを示す透視斜視図である。
【図14】(a)は本発明の電子部品の第6実施形態であるキャパシタを示す等価回路図であり、(b)は本発明の電子部品の第7実施形態であるキャパシタを示す等価回路図である。
【図15】本発明の電子部品の第8実施形態であるバルントランスを示す透視斜視図である。
【図16】本発明の電子部品の第8実施形態であるバルントランスを示す断面図である。
【図17】本発明の電子部品の第8実施形態であるバルントランスの各構成層の分解平面図である。
【図18】本発明の電子部品の第8実施形態であるバルントランスを示す等価回路図である。
【図19】本発明の電子部品の第9実施形態である積層フィルタを示す斜視図である。
【図20】本発明の電子部品の第9実施形態である積層フィルタを示す分解斜視図である。
【図21】本発明の電子部品の第9実施形態である積層フィルタを示す等価回路図である。
【図22】本発明の電子部品の第9実施形態である積層フィルタの伝達特性を示すグラフである。
【図23】本発明の電子部品の第10実施形態である積層フィルタを示す斜視図である。
【図24】本発明の電子部品の第10実施形態である積層フィルタを示す分解斜視図である。
【図25】本発明の電子部品の第10実施形態である積層フィルタを示す等価回路図である。
【図26】本発明の電子部品の第10実施形態である積層フィルタの伝達特性を示すグラフである。
【図27】本発明の電子部品の第11実施形態であるカプラを示す透視斜視図である。
【図28】本発明の電子部品の第11実施形態であるカプラを示す断面図である。
【図29】本発明の電子部品の第11実施形態であるカプラの各構成層の分解斜視図である。
【図30】本発明の電子部品の第11実施形態であるカプラの内部結線図である。
【図31】本発明の電子部品の第11実施形態であるカプラの等価回路図である。
【図32】本発明の電子部品の第12実施形態であるアンテナを示す透視斜視図である。
【図33】本発明の電子部品の第12実施形態であるアンテナを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面断面図、(c)は正面断面図である。
【図34】本発明の電子部品の第12実施形態であるアンテナの各構成層の分解斜視図である。
【図35】本発明の電子部品の第13実施形態であるアンテナを示す透視斜視図である。
【図36】本発明の電子部品の第13実施形態であるアンテナを示す分解斜視図である。
【図37】本発明の電子部品の第14実施形態であるパッチアンテナを示す透視斜視図である。
【図38】本発明の電子部品の第14実施形態であるパッチアンテナを示す断面図である。
【図39】本発明の電子部品の第15実施形態であるパッチアンテナを示す透視斜視図である。
【図40】本発明の電子部品の第15実施形態であるパッチアンテナを示す断面図である。
【図41】本発明の電子部品の第16実施形態であるパッチアンテナを示す透視斜視図である。
【図42】本発明の電子部品の第16実施形態であるパッチアンテナを示す断面図である。
【図43】本発明の電子部品の第17実施形態であるパッチアンテナを示す透視斜視図である。
【図44】本発明の電子部品の第17実施形態であるパッチアンテナを示す断面図である。
【図45】本発明の電子部品の第18実施形態であるVCOを示す透視斜視図である。
【図46】本発明の電子部品の第18実施形態であるVCOを示す断面図である。
【図47】本発明の電子部品の第18実施形態であるVCOを示す等価回路図である。
【図48】本発明の電子部品の第19実施形態であるパワーアンプの各構成層の分解平面図である。
【図49】本発明の電子部品の第19実施形態であるパワーアンプを示す断面図である。
【図50】本発明の電子部品の第19実施形態であるパワーアンプを示す等価回路図である。
【図51】本発明の電子部品の第20実施形態である重畳モジュールの各構成層の分解平面図である。
【図52】本発明の電子部品の第20実施形態である重畳モジュールを示す断面図である。
【図53】本発明の電子部品の第20実施形態である重畳モジュールを示す等価回路図である。
【図54】本発明の電子部品の第21実施形態であるRFモジュールを示す斜視図である。
【図55】図54の外装部材を外した状態でのRFモジュールの斜視図である。
【図56】本発明の電子部品の第21実施形態であるRFモジュールの各構成層の分解斜視図である。
【図57】本発明の電子部品の第21実施形態であるRFモジュールを示す断面図である。
【図58】本発明の電子部品の第22実施形態である共振器を示す透視斜視図である。
【図59】本発明の電子部品の第22実施形態である共振器を示す断面図である。
【図60】本発明の電子部品の第23実施形態であるストリップ共振器を示す透視斜視図である。
【図61】本発明の電子部品の第23実施形態であるストリップ共振器を示す断面図である。
【図62】本発明の電子部品の第24実施形態である共振器を示す透視斜視図である。
【図63】本発明の電子部品の第25実施形態であるストリップ共振器を示す透視斜視図である。
【図64】本発明の電子部品の第22〜25実施形態である共振器の等価回路図である。
【図65】本発明の電子部品の第26実施形態である携帯端末器の高周波数部を示すブロック構成図である。
【図66】本発明の第27実施形態であるプリント配線板の製造工程を示す図である。
【図67】本発明の第27実施形態であるプリント配線板の製造工程を示す図である。
【図68】本発明の第27実施形態であるプリント配線板の製造工程を示す図である。
【図69】本発明の第28実施形態であるプリント配線板の製造工程を示す図である。
【図70】本発明の第28実施形態であるプリント配線板の製造工程を示す図である。
【図71】本発明の第28実施形態であるプリント配線板の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0327】
10 インダクタ(電子部品)
10a〜10e 構成層(絶縁層もしくは誘電体層)
13 内部導体(導電性素子部)
14 ビアホール(導電性素子部)
20 キャパシタ(電子部品)
20a〜20g 構成層(絶縁層もしくは誘電体層)
23 内部導体(導電性素子部)
40 バルントランス(電子部品)
40a〜40o 構成層(絶縁層もしくは誘電体層)
43 内部導体(導電性素子部)
45 GND導体(導電性素子部)
60 積層フィルタ(電子部品)
110 カプラ(電子部品)
130、140 アンテナ(電子部品)
150、160、170 パッチアンテナ(電子部品)
140a〜140c 構成層(絶縁層もしくは誘電体層)
143a、143b 内部導体(導電性素子部)
144 ビアホール(導電性素子部)
150a 構成層(絶縁層もしくは誘電体層)
155 GND導体(導電性素子部)
159 パッチ導体(導電性素子部)
159a、159e パッチ導体(導電性素子部)
160 パッチアンテナ(電子部品)
160a…構成層(絶縁層もしくは誘電体層)
165…GND導体(導電性素子部)
169…パッチ導体(導電性素子部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子鎖末端にアリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基を有する、芳香族多価カルボン酸残基と芳香族多価ヒドロキシ化合物残基とからなるポリエステルと、エポキシ樹脂と、硬化促進剤と、難燃剤とを含む樹脂組成物からなる樹脂層を備える、ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記芳香族多価ヒドロキシ化合物残基は、下記式(1)〜(4)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、
前記芳香族多価カルボン酸残基は、下記式(5)〜(7)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、
前記アリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基中のアリール基は、下記式(8)〜(10)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種のアリール基である、ことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【化1】

(1)

(式(1)中、kは0または1である。)
【化2】

(2)

(式(2)中、Yは酸素原子、メチレン基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたメチレン基、フェニル基で置換されたメチレン基、ナフチル基で置換されたメチレン基、ビフェニル基で置換されたメチレン基、9−フルオレニル基で置換されたメチレン基、または該フェニル基、該ナフチル基、あるいは該ビフェニル基に更に炭素数1〜4のアルキル基が核置換したメチレン基を表す。nおよびmは、各々1〜3の整数を表す。)

【化3】

(3)

【化4】

(4)

【化5】

(5)

【化6】

(6)

【化7】

(7)

(式中A、B、D、E、Gは置換基であり、各々炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表す。a、e、gは各々0〜4の整数を示し、b、dは各々0〜3の整数を表す。Xは単結合、−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、または−SO−を表す。)
【化8】

(8)

【化9】

(9)

【化10】

(10)

(式中、P、Q、R、T、Uは置換基であり、各々炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲン原子を表す。p、rは0〜5の整数、q、tは0〜4の整数、uは0〜3の整数を表す。Zは単結合、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、または−SO−を表す。)
【請求項3】
前記樹脂層に設けられ、キャパシタ素子またはインダクタ素子を構成する、少なくとも1つの導電性素子部を備える、ことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記難燃剤は、臭素化芳香族系難燃剤である、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記難燃剤は、エタン−1,2−ビス(ベンタブロモフェニル)である、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、スチレン系エラストマーとポリブタジエン系ポリマーとの少なくとも一つを含有する、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項7】
少なくとも1層に前記樹脂組成物と、前記樹脂組成物よりも大きい比誘電率を有する誘電体セラミック粉末とを含有する樹脂層を備える、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記誘電体セラミック粉末は、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、スズ、ネオジウム、ビスマス、リチウム、サマリウム及びタンタルからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む金属酸化物粉末であって、比誘電率が3.7〜10000あり、Q値が200〜100000である金属酸化物粉末である、ことを特徴とする請求項7に記載のプリント配線板。
【請求項9】
前記誘電体セラミック粉末と前記樹脂組成物との合計を100体積%としたとき、前記誘電体セラミックス粉末が5〜65体積%含有する、ことを特徴とする請求項7または8に記載のプリント配線板。
【請求項10】
前記樹脂層は、前記樹脂組成物中に分散される磁性体粉末を更に含む、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項11】
前記樹脂層は、強化繊維からなるクロスを更に含む、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項12】
前記強化繊維は、Eガラスのガラスクロス、Dガラスのガラスクロス、NEガラスのガラスクロス、Hガラスのガラスクロス、Tガラスのガラスクロス、アラミドの多孔質膜、ポリアミドの多孔質膜、及びポリ4弗化エチレンの多孔質膜からなる群から選ばれる少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項11に記載のプリント配線板。
【請求項13】
分子鎖末端にアリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基を有する、芳香族多価カルボン酸残基と芳香族多価ヒドロキシ化合物残基とからなるポリエステルと、エポキシ樹脂と、硬化促進剤と、難燃剤とを含む樹脂組成物からなる樹脂層を備える、ことを特徴とする電子部品。
【請求項14】
前記芳香族多価ヒドロキシ化合物残基は、下記式(1)〜(4)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、
前記芳香族多価カルボン酸残基は、下記式(5)〜(7)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、
前記アリールオキシカルボニル基もしくはアリールカルボニルオキシ基中のアリール基は、下記式(8)〜(10)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも一種のアリール基である、ことを特徴とする請求項13に記載の電子部品。
【化11】

(1)

(式(1)中、kは0または1である。)
【化12】

(2)

(式(2)中、Yは酸素原子、メチレン基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたメチレン基、フェニル基で置換されたメチレン基、ナフチル基で置換されたメチレン基、ビフェニル基で置換されたメチレン基、9−フルオレニル基で置換されたメチレン基、または該フェニル基、該ナフチル基、あるいは該ビフェニル基に更に炭素数1〜4のアルキル基が核置換したメチレン基を表す。nおよびmは、各々1〜3の整数を表す。)
【化13】

(3)

【化14】

(4)

【化15】

(5)

【化16】

(6)

【化17】

(7)

(式中A、B、D、E、Gは置換基であり、各々炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン原子を表す。a、e、gは各々0〜4の整数を示し、b、dは各々0〜3の整数を表す。Xは単結合、−S−、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、または−SO−を表す。)
【化18】

(8)

【化19】

(9)

【化20】

(10)

(式中、P、Q、R、T、Uは置換基であり、各々炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基、またはハロゲン原子を表す。p、rは0〜5の整数、q、tは0〜4の整数、uは0〜3の整数を表す。Zは単結合、−O−、−CO−、−CH−、−C(CH−、または−SO−を表す。)
【請求項15】
前記樹脂層に設けられ、キャパシタ素子またはインダクタ素子を構成する、少なくとも1つの導電性素子部を備える、ことを特徴とする請求項13または14に記載の電子部品。
【請求項16】
前記難燃剤は、臭素化芳香族系難燃剤である、ことを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項17】
前記難燃剤は、エタン−1,2−ビス(ベンタブロモフェニル)である、ことを特徴とする請求項13乃至16のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項18】
前記樹脂組成物は、スチレン系エラストマーとポリブタジエン系ポリマーとの少なくとも一つを含有する、ことを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項19】
少なくとも1層に前記樹脂組成物と、前記樹脂組成物よりも大きい比誘電率を有する誘電体セラミック粉末とを含有する樹脂層を備える、ことを特徴とする請求項13乃至18のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項20】
前記誘電体セラミック粉末は、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、スズ、ネオジウム、ビスマス、リチウム、サマリウム及びタンタルからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む金属酸化物粉末であって、比誘電率が3.7〜10000あり、Q値が200〜100000である金属酸化物粉末である、ことを特徴とする請求項19に記載の電子部品。
【請求項21】
前記誘電体セラミック粉末と前記樹脂組成物との合計を100体積%としたとき、前記誘電体セラミックス粉末が5〜65体積%含有する、ことを特徴とする請求項19または20に記載の電子部品。
【請求項22】
前記樹脂層は、前記樹脂組成物中に分散される磁性体粉末を更に含む、ことを特徴とする請求項13乃至21のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項23】
前記樹脂層は、強化繊維からなるクロスを更に含む、ことを特徴とする請求項13乃至22のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項24】
前記強化繊維は、Eガラスのガラスクロス、Dガラスのガラスクロス、NEガラスのガラスクロス、Hガラスのガラスクロス、Tガラスのガラスクロス、アラミドの多孔質膜、ポリアミドの多孔質膜、及びポリ4弗化エチレンの多孔質膜からなる群から選ばれる少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項23に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【公開番号】特開2006−59999(P2006−59999A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239966(P2004−239966)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】