説明

ホスホリパーゼCガンマの調節、並びにそれによる疼痛及び侵害受容の制御

【課題】疼痛を予防及び治療する方法、そのための薬剤を同定する方法、並びに疼痛の治療及び/又は予防のためのそれらの使用を提供する。更に疼痛を診断及び予知する方法を提供する。
【解決手段】患者におけるPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節(例えば阻害)すること、又はPLCγに対するリガンド若しくは結合パートナーの結合を調節すること。更に、対照区と比較し、PLCγの活性及び/又は発現が調節されていることを測定し、それを指標とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者のホスホリパーゼCガンマ(PLCγ)の活性、機能及び/又は発現の調節、並びに、例えば疼痛の治療及び予防のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛治療のための新規な、改良された方法及び薬剤の必要性は、現在の医学において重大な問題となっている。例えば損傷又は疾病に関連する激しい急性疼痛は、患者の回復に重大な影響を及ぼす。更に大きな問題は慢性疼痛であり、これは大多数の人々を悩ませており、相当の不快感を起こすだけでなく、自尊感情の低下、憂鬱、怒りを生じさせ、また患者の通常の日常的な活動を妨げ、あるいは完全に阻止することさえある。
【0003】
この分野では多数の研究がなされているが、痛覚に関与する機構及び経路の多くは未だ十分に解明されていない。疼痛治療のための治療的介入の新たな戦略を提供する必要性が今なお残されている。
【非特許文献1】Leeら、Mol.Vis.8:17−25、2002
【非特許文献2】Buckleyら、J.Biol.Chem.279:41807−14、2004
【非特許文献3】Monick、M.M.ら、J.Immunol.162、3005、1999
【非特許文献4】Maragoudakis、M.E.ら、1993、Kidney Int.43、147、
【非特許文献5】Schutze、S.ら、Cell 71、765、1992
【非特許文献6】Muller−Decker、K.,Biochem.Biophys.Res.Commun.162、198、1989
【非特許文献7】Sauer、G.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81、3263、1984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、疼痛を治療及び/又は予防する方法に関する。本発明は更に、患者におけるホスホリパーゼCガンマ(PLCγ)の活性、発現、及び/又は機能を調節(例えば阻害)する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によれば、患者の疼痛を治療又は予防する方法を提供し、該方法は、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することを含む。
【0006】
本発明の他の一実施形態によれば、患者の疼痛を治療又は予防する方法を提供し、該方法は、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤を該患者に投与することを含む。
【0007】
本発明の更なる他の一実施形態によれば、患者の疼痛を治療又は予防する方法を提供し、該方法は、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤、及び医薬的に許容される担体を含有する組成物を、該患者に投与することを含む。
【0008】
本発明の更なる他の一実施形態によれば、患者の疼痛を治療又は予防するための組成物を提供し、該組成物は、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤、及び医薬的に許容される担体を含有する。
【0009】
本発明の更なる他の一実施形態によれば、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤、及び疼痛の治療又は予防におけるその使用の方法に関する説明書を含むパッケージを提供する。
【0010】
本発明の更なる他の一実施形態によれば、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤、及び医薬的に許容される担体、及び疼痛の治療又は予防におけるその使用の方法に関する説明書を含むパッケージを提供する。
【0011】
また本発明の更なる実施形態によれば、疼痛を治療又は予防するための、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤の使用を提供する。
【0012】
本発明の他の一実施形態によれば、疼痛を治療又は予防する医薬品の製造のための、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤の使用を提供する。
【0013】
本発明の更なる他の一実施形態によれば、疼痛の治療又は予防のための、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤、及び医薬的に許容される担体を含有する組成物の使用を提供する。
【0014】
本発明の他の一実施形態によれば、疼痛の治療又は予防のための薬剤を同定又は解析する方法を提供し、該方法は、試験薬剤の存在下でPLCγの活性、機能及び/又は発現を測定することを含む。一実施態様において、本方法は、試験薬剤をPLCγ、又はPLCγの活性、機能及び/若しくは発現を有する細胞と接触させ、薬剤の存在下でPLCγの活性、機能及び/又は発現が調節(例えば阻害)されるか否かを測定する工程を含み、ここで該調節が、薬剤が疼痛の治療又は予防に使用することが可能であることを示す指標となる。
【0015】
本発明は更に、疼痛の治療又は予防のための化合物を同定又は解析する方法を提供し、該方法は、(a)試験化合物を、レポータータンパク質をコードすることができるレポーター遺伝子を含む第二の核酸に作動可能に結合した、通常PLCγ遺伝子関連転写調節因子を含む第一の核酸を有する細胞と接触させ、(b)該試験化合物の存在下で、レポーター遺伝子の発現又はレポータータンパク質の活性が低下されるか否かを測定する工程を含み、ここで前記レポーター遺伝子の発現の低下、又はレポータータンパク質活性の低下が、前記試験化合物が疼痛の治療又は予防に使用することが可能であることを示す指標となる。
【0016】
本発明は更に、疼痛の治療又は予防のための薬剤を同定又は解析する方法を提供し、該方法は、薬剤及びPLCγリガンドを、PLCγを含む細胞と接触させ、該薬剤の存在下で、PLCγに対するリガンドの結合が低下するか否かを測定することを含み、ここで該低下が、薬剤が疼痛の治療又は予防に使用することが可能であることを示す指標となる。
【0017】
本発明は更に、疼痛の治療又は予防のための薬剤を同定又は解析する方法を提供し、該方法は、薬剤及びPLCγリガンドをPLCγと接触させ、該薬剤の存在下で、PLCγに対するリガンドの結合が低下するか否かを測定することを含み、ここで該低下が、薬剤が疼痛の治療又は予防に使用することが可能であることを示す指標となる。
【0018】
本発明の更なる他の一実施形態によれば、患者における侵害受容を減少させる方法を提供し、該方法は、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することを含む。
【0019】
本発明の更なる他の一実施形態によれば、患者における侵害受容を減少させる方法を提供し、該方法は、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤を、該患者に投与することを含む。
【0020】
本発明の更なる実施形態によれば、患者における侵害受容を減少させる方法を提供し、該方法は、患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤、及び医薬的に許容される担体を含有する組成物を、該患者に投与することを含む。
【0021】
一実施態様において、上述したPLCγの活性、機能及び/又は発現の調節は、PLCγの活性又は発現を阻害することである。一実施態様において、上述したPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することができる薬剤は、PLCγの活性、機能及び/又は発現を阻害することができる薬剤である。
【0022】
一実施態様において、本願に定義する薬剤は、PLCγ阻害剤、抗PLCγ抗体、アンチセンス分子、siRNA、siRNA様分子、又はPLCγとリガンド又は結合パートナーとの結合の阻害剤であり得る。例えば、PLCγ阻害剤は、トリシクロデカン−9−イル−キサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、又は1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンであり得る。
【0023】
一実施態様において、アンチセンス分子は、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である。一実施態様において、アンチセンス分子は、配列番号2及び配列番号4から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸に対して実質的に相補的な核酸である。更なる実施態様において、アンチセンス分子は、配列番号1及び配列番号3から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸に対して実質的に相補的な核酸である。一実施態様において、上記のmRNAの部分は、少なくとも5個の連続した塩基を含む。
【0024】
一実施態様において、siRNA又はsiRNA様分子は、PLCγをコードするmRNAの部分と実質的に同一である。一実施態様において、siRNA又はsiRNA様分子は、配列番号2及び配列番号4から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列に対応するmRNAの部分と実質的に同一である。更なる実施態様において、siRNA又はsiRNA様分子は、配列番号1及び配列番号3から選択されるDNA配列に対応するmRNAの部分と実質的に同一である。一実施態様において、siRNA又はsiRNA様分子は、約30個未満のヌクレオチドを含み、他の実施態様においては約21〜23個のヌクレオチドを含む。
【0025】
一実施態様において、疼痛は、神経因性疼痛及び/又はCNS不全関連疼痛である。
【0026】
更なる実施態様において、疼痛は、神経因性疼痛、体性痛又は内臓痛であり得る。例えば、神経因性疼痛は、神経又は路の損傷を含む。また他の一実施態様では、疼痛は慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛又は反復性急性疼痛を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は患者の疼痛を予防及び/又は治療するための方法を提供する。実施態様において、患者は、脊椎動物又は哺乳類であり得る。一実施態様において、患者は哺乳類、例えばヒトである。本方法は、患者の、例えば患者の細胞又は組織の、例えば中枢神経系(CNS)の神経細胞又は組織のホスホリパーゼCガンマ(PLCγ)の活性、機能及び/又は発現を阻害又は低下させることを含む。本方法は、患者に対して、疼痛を緩和する手段としてPLCγの活性、発現及び/又は機能を調節、例えば阻害することができる薬剤を、全身又は局所的に投与することを含み得る。薬剤は疼痛の開始前、ほぼ開始時、又は開始後に投与することが可能である。
【0028】
一実施態様において、そのPLCγの活性、機能及び/又は発現が調節されるCNS神経細胞は、後角表層又は脊髄に位置する。加えて、前記細胞は、疼痛シグナルが発する末梢神経細胞又は神経線維に対して経シナプス的に連結する。
【0029】
本発明はまた、急性及び慢性疼痛の治療、より詳細には神経因性疼痛の治療に関する。本願で使用する「神経因性疼痛」は、神経の損傷関連慢性疼痛(例えば、神経の挫傷、離断若しくは圧迫の後、又は疾病から起こる神経退化の後)を指す。神経因性疼痛は、神経又は路の損傷に関連することが可能である。更に、神経因性疼痛は内臓痛及び/又は体性痛に関連することが可能である。
【0030】
一実施態様において、疼痛は慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、反復性急性疼痛、及び/又はその任意の組み合わせから選択される病状に関連するものを含む。
【0031】
本発明は更に、患者における侵害受容を減少させる方法を提供する。本方法は、侵害受容を減少させるために患者のPLCγの活性、機能及び/又は発現を調節することを含む。本願で使用する「侵害受容」は、疼痛の感覚成分を指す。疼痛は、圧力、損傷、熱刺激又は化学的(例えば、イオン)刺激を含むが、これらに限定されるものではない様々な刺激の結果起こり得る。
【0032】
薬剤は、タンパク質活性を直接又は間接的に変更するもの、及びタンパク質の生成及び/又は安定性を調節する(例えば、転写、翻訳、成熟、転写後修飾、リン酸化及び分解のレベルで)ものを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、薬剤は、PLCγ阻害剤であり得る。一実施態様において、そのような阻害剤は、ペプチド又はペプチドをベースとした化合物(例えば、ペプチド類似物)を含む。更なる実施態様において、薬剤は、PLCγの結合、及び/又は触媒活性を調節することができる抗PLCγ抗体を含む。抗PLCγ抗体の例は、例えば非特許文献1及び2に記載されている。更なる実施態様において、薬剤は、PLCγをコードするmRNAの全部又は一部に対して相補的なアンチセンス分子を含む。更なる実施態様において、薬剤は、siRNA又はsiRNA様分子を含む。
【0033】
更なる実施態様において、上述した阻害は、PLCγの結合領域(一つ又は複数)の阻害により行われる。この場合、薬剤は、PLCγに対するリガンド又は結合パートナーの阻害剤である。例えば、PLCγに対する(例えば、Dドメインに対する)マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(例えば細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK1及びERK2))の結合を阻害することが可能である。非特許文献2に示されるように、ERK及びリン酸化ERKの両方が(BDNFのTrkBとの結合によりPLCγが活性化される様に)PLCγのDドメインに結合し、このアイソザイムのリン酸化を誘導する。
【0034】
一実施態様において、PLCγの活性及び/又は発現を調節することができる薬剤は、PLCγ阻害剤である。PLCγ阻害剤の例は、トリシクロデカン−9−イル−キサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンを含むが、これらに限定されるものではない。トリシクロデカン−9−イル−キサントゲン酸(D609とも称される)のPLCγ阻害作用を説明する参考文献は、非特許文献3から7等が挙げられる。上記のPLCγ阻害剤は、EMD Biosciences(Calbiochem部)から入手可能である。
【0035】
他の一実施態様において、PLCγの活性及び/又は発現を調節することができる薬剤は、抗PLCγ抗体である。抗PLCγ抗体の例は、例えば非特許文献1及び2に記載されている。そのような抗PLCγ抗体を調製するために、PLCγ又はその断片、ホモログ、及び/若しくは変異体を使用して、小哺乳類、例えばマウス又はウサギを免疫して、PLCγを認識する抗体を産生させもよい。抗PLCγ抗体はポリクローナル及びモノクローナルのいずれであってもよい。ポリクローナル又はモノクローナル抗体を調製する方法は、当該技術分野にて周知である。Harlow及びLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、及びYelton等(1981)Ann.Rev.Biochem.50:657−690を参照(参照により本願に援用される)。モノクローナル抗体に関しては、参照により本願に援用されるKohler及びMilstein(1975)Nature 256:495−497を参照されたい。
【0036】
「PLCガンマ」又は「PLCγ」は、ホスファチジルイノシトール4,5二リン酸を切断してジアシルグリセロール及びイノシトール1,4,5−トリホスフェートを提供することができる活性を有するポリペプチドを指す。実施態様において、PLCγは、PLCγ1及びPLCγ2アイソフォームから選択される。ヒトPLCγポリペプチドをコードする遺伝子は、例えばNCBIアクセッション番号M34667、NM_002660、NM_002661及びNM_182811に記されている。ヒトPLCγポリペプチドをコードする遺伝子、及びそれらがコードするポリペプチドの例を、図2及び図3並びに配列番号1から4に示す。PLCγ活性に関し、Carpenter及びJi(1999、Experimental Cell Research、253:15−24)を参照のこと。PLCγ活性は、例えばゲルシフトアッセイ(Noh等、1998、Anticancer Research、18:2643−8)及びミオイノシトール1,4,5−トリホスフェート放射性受容体アッセイ(Shu等、2002、J.Biol.Chem.277:18447−18453)により解析することが可能である。
【0037】
上記したように、本発明の方法には、活性を維持するPLCγの断片、ホモログ及び/又は変異体を使用してもよい。ホモログは、PLCγのアミノ酸配列と実質的に同一であるタンパク質配列を含み、PLCγと有意な構造的及び機能的相同性を共有する。変異体は、任意の修飾、及び/又はアミノ酸置換、削除又は追加によりPLCγとは異なるタンパク質、又はペプチドを含むが、これらに限定されるものではない。修飾は、ポリペプチド骨格、(即ち、アミノ酸配列)、アミノ酸残基、及びアミノ又はカルボキシ末端を含む任意の場所に施すことが可能である。そのような置換、削除又は追加は、一個又は二個以上のアミノ酸に関するものでもよい。断片は、PLCγの断片若しくは一部、又はPLCγのホモログ若しくは変異体の断片若しくは一部を含む。
【0038】
抗体は、例えばキメラ(例えば、ヒト由来の定常領域に連結したマウス由来の可変領域によって構成された)、ヒト化(ヒト免疫グロブリンの定常領域、及び動物、例えばマウス由来の超可変領域)、並びに/又は一本鎖であり得る。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の両方が、免疫グロブリン断片、例えば、F(ab)’2、Fab又はFab’断片の形態を有してもよい。抗体は、任意のアイソタイプ、例えば、IgG又はIgAであってもよく、またポリクローナル抗体は、一種のアイソタイプ又はアイソタイプの混合物であってもよい。抗PLCγ抗体は、標準的な免疫学的アッセイ、例えばウエスタンブロット、ドットブロット、又はELISAによる解析法を用いて調製及び同定することが可能である。
【0039】
PLCγ発現の制限に使用することが可能である化合物の別の一クラスは、PLCγ転写物のレベルを低下させる化合物である。それにより、これらの化合物がPLCγポリペプチドの生成レベルを減少させ、疼痛の治療又は予防に使用することができる。これらの化合物は、dsRNA、siRNA、siRNA様分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はリボザイムを含むが、これらに限定されない。
【0040】
一実施態様において、標的ポリペプチド、又はその断片をコードする核酸の発現は、転写後遺伝子サイレンシングの一種であるRNA干渉(RNAi)技術を用いて阻害、又は予防することが可能である。RNAiは擬「ノックアウト」、即ち、遺伝子、又は標的のコード領域によりコードされた生成物の発現が低下される系を形成する際に使用され、それにより該系においては、コードされた生成物の活性全体が低下される。そのようなものとして、RNAiは、標的の核酸、又はその断片若しくは変異体を標的とし、続いてその発現及びそれがコードする生成物の活性レベルを低下させる。このような系は、生成物の機能的解析や、そのような生成物の活性関連疾患の治療にも使用することが可能である。RNAiは、例えばHammond等(2001)、Sharp(2001)、Caplen等(2001)、Sedlak(2000)並びに公開された米国特許出願公開第20020173478号(Gewirtz、2002年11月21日公開)及び米国特許出願公開第20020132788号(Lewis等、2002年11月7日公開)に記載されている。RNAiを実施するための試薬及びキットは、例えばAmbion Inc.(Austin、TX、USA)及びNew England Biolabs Inc.(Beverly、MA、USA)から商業的に入手可能である。
【0041】
いくつかの系において、RNAiのための最初の薬剤は、標的核酸に対応するdsRNA分子であると思われる。次いで、dsRNAは、21〜23ヌクレオチド長(各々2ヌクレオチドの3’オーバーハング(overhang)を有する19〜21bpの二重鎖)の短い干渉RNA(siRNA)に切断されると考えられる。この第一の切断ステップに係ると考えられている酵素は「ダイサー」(Dicer)と称され、dsRNA特異的リボヌクレアーゼのRNaseIIIファミリーのメンバーに分類されている。あるいは、RNAiは、直接導入するか、又はそのようなsiRNA若しくはsiRNA様分子の適切な前駆体(例えば、前駆体(一つ又は複数)をコードするベクター等)を細胞内に導入して、細胞内で生成させることによって実施してもよい。次いで、siRNAは他の細胞内成分と結合して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成することが可能である。このように形成されたRISCは続いて、そのsiRNA成分と標的転写物との間の相補的塩基対間相互作用を介して標的転写物を検知し、siRNAの3’末端から約12ヌクレオチドの標的転写物を切断する。このように、標的mRNAは切断され、それがコードするタンパク質生成物のレベルが低下する。
【0042】
RNAiは、インビトロで合成された適切なsiRNA又はsiRNA様分子の細胞内への導入により実施される。RNAiは、例えば化学合成されたRNA(Brown等、2002)を使用して実施される。あるいは、適切な発現ベクターを用いて、インビトロ又はインビボのいずれかで、そのようなRNAを転写してもよい。(同一又は別個のベクター上に存在する配列によりコードされた)センス及びアンチセンス鎖は、例えばT7RNAポリメラーゼを使用してインビトロで転写されてもよく、この場合、ベクターは、T7プロモーターに作動可能に連結した適切なコード配列を含み得る。インビトロで転写されたRNAは、実施態様においては、インビトロで(例えば、E.coliのRNaseIIIを使用して)RNAiを実行させるためのサイズに加工することが可能である。センス及びアンチセンス転写物を組み合わせてRNA二重鎖を形成し、標的細胞内に導入する。siRNA様分子に加工することが可能であるスモールヘアピンRNA(shRNA)を発現する他のベクターを使用してもよい。ベクターをベースとする様々な方法が、例えばBrummelkamp等(2002)、Lee等(2002)、Miyagashi及びTaira(2002)、Paddison等(2002)、Paul等(2002)、Sui等(2002)、並びにYu等(2002)に記載されている。インビトロ又はインビボのいずれかでそのようなベクターを細胞内に導入する様々な方法は(例えば、遺伝子治療)、当該技術分野にて公知である。
【0043】
従って、一実施態様において、PLCγをコードする核酸又はその断片の発現は、標的のポリペプチドをコードする核酸、若しくはその断片、又はそれと相同な核酸に対応するsiRNA若しくはsiRNA様分子を細胞内に導入するか、又は細胞内で生成させることによって阻害することが可能である。「siRNA様分子」とは、siRNAと類似し(例えば、寸法及び構造において)、siRNA活性を引き出すことができ、即ちRNAiの仲介による発現の阻害を実行する核酸分子を指す。様々な実施態様において、このような方法はsiRNA又はsiRNA様分子の細胞内への直接投与、又は上記したベクターベースの方法の使用を伴う。一実施態様において、siRNA又はsiRNA様分子は、約30個未満のヌクレオチドの長さを有する。更なる実施態様において、siRNA又はsiRNA様分子は、約21〜23個のヌクレオチドの長さを有する。一実施態様において、siRNA又はsiRNA様分子は19〜21bpの二重鎖部分を含み、各鎖は、2ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する。実施態様において、siRNA又はsiRNA様分子は、PLCγをコードする核酸、又はその断片若しくは変異体(若しくは変異体の断片)と実質的に同一である。そのような変異体は、PLCγと類似した活性を有するタンパク質をコードすることが可能である。実施態様において、siRNA又はsiRNA様分子のセンス鎖は、配列番号1若しくは3、又はその断片と実質的に同一である(DNA配列のT塩基の代わりにUを有するRNA)。
【0044】
また他の一実施態様では、PLCγの発現を阻害するために、アンチセンスコンストラクトによる細胞の形質転換を使用することが可能である。アンチセンスコンストラクトは、転写されて、PLCγをコードするmRNAの全部、又は一部に対して実質的に相補的なアンチセンス分子を提供する核酸分子であり、従ってアンチセンスコンストラクトの発現はPLCγの発現を妨げる。一実施態様において、前記のアンチセンス分子は、PLCγを、一実施態様においてはヒトPLCγをコードするDNA配列に対してアンチセンスである。従って、幾つかの実施態様において、本発明のアンチセンスコンストラクトは、PLCγをコードする核酸配列の連続部分に対して実質的に相補的な、5個又は6個以上の連続した核酸塩基をコードする。
【0045】
更なる実施態様において、本願に記載するものと実質的に同一のポリペプチド及び核酸を、本発明にて使用してもよい。
【0046】
本発明において「相同性」及び「相同な」とは、2個のペプチド又は2個の核酸分子間の配列類似性を意味する。相同性は、整列された配列内で各位置を比較して決定することが可能である。核酸間又はアミノ酸配列間の相同性の程度は、配列により共有される位置におけるヌクレオチド又はアミノ酸の同一又は一致する数の関数である。本願において核酸配列は、2個の配列が実質的に同一であり、配列の機能的活性が保存される場合に、別の一配列と「相同」である(本願において用語「相同な」とは、進化学的な関連性を推測するものではない)という。2個の核酸配列は、最適に整列された際(ギャップが許可されて)、それらが少なくとも約50%の配列類似性若しくは同一性を共有する場合、又は配列が規定された機能的モチーフを共有する場合に、実質的に同一であると考慮される。あるいは、他の実施態様において、最適に整列された実質的に同一な配列の配列類似性は、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%であり得る。本願で使用されるように、配列間の相同性の所定の割合は、最適に整列された配列における配列同一性の程度を表す。「無関係の」又は「非相同な」配列は、配列番号1から4のいずれかと40%未満の同一性を共有するが、好ましくは、約25%未満の同一性を共有する。
【0047】
実質的に相補的な核酸とは、一つの分子の「相補物(complement)」が、他の分子と実質的に同一である核酸を指す。同一性比較のための配列の最適なアラインメントは、例えばSmith及びWaterman、1981、Adv.Appl.Math 2:482の局所的相同性アラインメントアルゴリズム、Needleman及びWunsch、1970、J.Mol.Biol.48:443の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson及びLipman、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444の類似性サーチ方法のような様々なアルゴリズム、及びこれらアルゴリズムのコンピュータによる処理(例えば、Genetics Computer Group、Madison、WI、U.S.AのWisconsin Genetics Software Package内のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)を使用して実施することできる。配列同一性はまた、Altschul等、1990、J.Mol.Biol.215:403−10に記載されているBLASTアルゴリズム(公開されたデフォルト設定)を使用して決定してもよい。BLAST解析を実行するためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Informationから(インターネットのhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/を介して)入手可能であり得る。BLASTアルゴリズムでは、最初に、データベース配列内の同一長の単語と整列した場合に、正の値の閾値スコアTに一致するか、又はそのいくつかを満たす、クエリー配列内の長さWの短い単語を同定することによって、ハイスコアの配列対(HSP)を同定する。Tは、近隣単語スコア閾値と称される。最初の近隣単語ヒットは、より長いHSPを見つけるための種として機能する。単語ヒットは、累積アラインメントスコアが増大することが可能である限り、各配列に沿って両方向へ伸張される。単語ヒットの各方向における伸張は、累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ低下した場合、累積スコアが、一つ若しくは二つ以上の負スコアの残基のアラインメントの蓄積によって、ゼロ若しくはそれ未満になった場合、又はいずれかの配列が終点に到達した場合に停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTプログラムはデフォルトとして単語長(W)11、BLOSUM62スコアマトリクス(Henikoff及びHenikoff、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919)アラインメント(B)50、期待値(E)10(又は1又は0.1又は0.01又は0.001又は0.0001)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用することが可能である。BLASTアルゴリズムを使用した二つの配列間の統計的類似性の一つの基準は、最小和確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは二つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間で一致が偶然に発生する確率の指標を提供する。本発明の他の実施態様では、試験配列の比較における最小和確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合、ヌクレオチド又はアミノ酸配列は実質的に同一であると考えられる。
【0048】
あるいは、二つの核酸配列が実質的に相補的であることの指標として、二つの配列が中度にストリンジェントな条件下で、又は好ましくは厳密な条件下で互いにハイブリダイズすることである。中度に厳密な条件下におけるフィルター結合配列に対するハイブリダイゼーションでは、例えば0.5M NaHPO、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中で65℃にて実施され、0.2×SSC/0.1%SDS中で42℃にて洗浄される(Ausubelら(eds)、1989、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.1、Green Publishing Associates、Inc.及びJohn Wiley&Sons、Inc.New York p.2.10.3参照)。あるいは、ストリンジェントな条件下におけるフィルター結合配列に対するハイブリダイゼーションでは、例えば0.5M NaHPO、7%SDS、1mM EDTA中で65℃にて実施され、0.1×SSC/0.1%SDS中で68℃にて洗浄される(Ausubel、等(eds)、1989、前出参照)。ハイブリダイゼーション条件は、標的配列に応じて、周知の方法に従って変更されてもよい(Tijssen、1993、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes、Part I、Chapter 2“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”、Elsevier、NewYork参照)。一般に、厳密な条件は、規定されたイオン強度及びpHにおいて、特定の配列の融点より約5℃以上低いように選択される。
【0049】
他の実施態様において、本発明は、外因的に投与され、PLCγmRNAに結合して、翻訳を低下及び/又は阻害するアンチセンス分子及びリボザイムを提供する。参照により本願に援用される治療的アンチセンスオリゴヌクレオチドの例として、米国特許第5135917号(1992年8月4日公開)、米国特許第5098890号(1992年3月24日公開)、米国特許第5087617号(1992年2月11日公開)、米国特許第5166195号(1992年11月24日公開)、米国特許第5004810号(1991年4月2日公開)、米国特許第5194428号(1993年3月16日公開)、米国特許第4806463号(1989年2月21日公開)、米国特許第5286717号(1994年2月15日公開)、並びに米国特許第5264423号及び米国特許第5276019号、Bio World Today、Apr.29(1994)p.3を含む。
【0050】
アンチセンス分子は、特異的な結合が所望される条件下で、例えばインビボアッセイ若しくは治療的処置の場合は生理的条件下で、又はインビトロアッセイの場合はそのアッセイが実施される条件下で、非標的配列に対するアンチセンス分子の非特異的結合を避けるために、PLCγmRNAに対する十分な程度の相補性を有することが好ましい。アンチセンス結合のための標的mRNAは、タンパク質をコードする情報のみでなく、例えば5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、5’キャップ領域及びイントロン/エクソン接合部リボヌクレオチドなどの関連するリボヌクレオチドを含み得る。本発明の阻害剤として使用することが可能であるアンチセンス及びリボザイム核酸のスクリーニング法は、米国特許第5932435号に開示されている(参照により本願に援用される)。
【0051】
本発明のアンチセンス分子(オリゴヌクレオチド)は、例えばホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキル若しくはシクロアルキル糖間結合又は短鎖複素原子若しくは複素環糖間結合、ホスホロチオエート及びCH−NH−O−CH、CH−N(CH)−O−CH(メチレン(メチルイミノ)又はMMI骨格として周知)、CH−O−N(CH)−CH、CH−N(CH)−N(CH)−CH及びO−N(CH)−CH−CH骨格(ここでホスホジエステルはO−P−O−CHである)を有するもののような、骨格の糖間結合を有するものでもよい。モルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドを使用してもよい(米国特許第5034506号)。他の実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA、「タンパク質核酸」とも称される)骨格を有してもよく、ここでオリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格はポリアミド骨格と置き換えられ、ヌクレオチド塩基がポリアミド骨格のアザ窒素原子、又はメチレン基に直接又は間接的に結合している(Nielsen等、1991、Science 254:1497及び米国特許第5539082号)。ホスホジエステル結合は、キラル及びエナンチオマー特異的な構造で置き換えられてもよい。当業者は、本発明の実施の際に使用するために、他の結合を選択することが可能である。
【0052】
オリゴヌクレオチドはまた、少なくとも一つの修飾されたヌクレオチド塩基を有する化学種を含み得る。従って、通常自然界に見られるものとは異なるプリン及びピリミジンを使用することが可能である。同様に、ヌクレオチドサブユニットのペントフラノシル部分上にも修飾が行われ得る。そのような修飾の例は、2’−O−アルキル−及び2’−ハロゲン置換ヌクレオチドである。本発明に有用な、糖部分の2’位における修飾のいくつかの特定の例は、OH、SH、SCH、F、OCN、O(CHNH若しくはO(CHCH(ここでnは1〜約10である)、C〜C10の低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル(alkaryl)若しくはアラルキル、Cl、Br、CN、CF、OCF、O−、S−、若しくはN−アルキル、O−、S−、若しくはN−アルケニル、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善する基、又はオリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善する基、及び同様の特性を有する他の置換基がある。一つ又は二つ以上のペントフラノシル基は、別の糖、例えばシクロブチルのような糖類似体、又は糖に代わる別の部分によって代替されてもよい。
【0053】
数個の実施態様において、本発明におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約5〜約100のヌクレオチド単位を含み得る。公知のように、ヌクレオチド単位は、ホスホジエステル、又は骨格構造を形成する他の結合を介して、隣接するヌクレオチド単位に対して適切に結合した塩基−糖の組み合わせ(又はそれに類似した構造の組み合わせ)である。
【0054】
本発明はまた、PLCγの活性及び/又は発現を調節することができる薬剤、及び医薬的に許容される担体を含有する医薬組成物(医薬品)を提供する。一実施態様において、そのような組成物は、疼痛を治療又は緩和するのに十分な治療的又は予防的有効量の薬剤、及び医薬的に許容される担体を含有する。
【0055】
「治療的有効量」とは、必要な用量及び時間内において、例えば疼痛の軽減のような所望の治療結果を達成するために有効な量を指す。PLCγの活性及び/又は発現を調節することができる薬剤の治療的有効量は、個人の疾病状態、年齢、性別、及び体重、並びに個人にて所望の応答を誘発する該薬剤の能力のような要因に従って変動することが可能である。投与計画は最適な治療効果を提供するように調節することが可能である。治療的有効量はまた、治療的に有益な効果が、薬剤の有毒又は有害な任意の効果を上回る量である。「予防的有効量」は、その必要な用量及び時間において、所望の予防結果を達成する、例えば疼痛の開始又は疼痛の度合いの増大を予防若しくは抑制するために有効な量を指す。予防的有効量は、治療的有効量に関して上述と同様に決定することが可能である。任意の特定の患者に関して、特定の投与計画は、個人の必要性、及び組成物を投与する又は組成物の投与を管理する者の専門的判断に従って、長期に亘って調整することが可能である。
【0056】
本願で使用する「医薬的に許容される担体」又は「賦形剤」は、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、皮膜、抗菌及び抗真菌薬、等張及び吸収遅延剤、及び生理学的に適合可能な同様物を含む。一実施態様において、担体は非経口投与に用いられるものである。あるいは、担体は静脈内、腹腔内、筋内、頭蓋内、くも膜下腔内、舌下又は経口投与に用いられるものである。医薬的に許容される担体は、無菌水性溶液又は分散剤、及び無菌注射溶液若しくは分散剤の即時調製のための無菌粉末を含む。医薬的活性物質のためのこれら媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野にて周知である。従来の任意の媒体又は薬剤が活性薬剤と不適合な場合を除いて、本発明の医薬組成物中でそれらを使用することが想定される。補助的な活性化合物を組成物中に組み入れてもよい。
【0057】
治療組成物は、一般に、製造及び保管条件下で無菌かつ安定である必要がある。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に適した他の特殊な形態として処方することが可能である。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、並びに同様物)、並びにそれらの適切な混合物を含む溶媒、又は分散媒体であり得る。適当な流動性は、例えばレシチンのような被膜の使用により、分散剤の場合は、必要とされる粒径の保守により、及び界面活性剤の使用により維持することが可能である。多くの場合、組成物中に例えば糖、例えばマンニトール、ソルビトールのような多価ポリアルコール、又は塩化ナトリウムのような等張剤を含めることが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物中に含めることによって可能となる。更に、PLCγの活性及び/又は発現を調節することができる薬剤は、時限放出製剤、例えば遅延放出ポリマーを含有する組成物にて投与することが可能である。活性化合物は、例えばインプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む徐放製剤等、該化合物を急速放出から保護する担体と共に調製することが可能である。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、及びポリ乳酸−ポリグリコール酸コポリマー(PLG)のような生分解性、生体適合性ポリマーを使用することが可能である。これら製剤を調製する多数の方法が特許され、又は一般に当業者に知られている。
【0058】
無菌注射溶液は、活性薬剤(例えば、PLCγの活性及び/又は発現を調節することができる薬剤)の必要な量を、必要に応じて上記に列挙した一種の又は組み合わせた成分と共に適正な溶媒中に組み入れた後、濾過滅菌して調製することが可能である。一般に、分散剤は、基本的な分散媒体と、上記に列挙したものから選択した必要な他の成分とを含有する無菌ビヒクル中に活性薬剤を組み入れて調製することが可能である。無菌注射溶液を調製する無菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これらによって、その予め濾過滅菌した溶液からの活性成分、及び任意の更なる所望の成分の粉末が得られる。本発明の他の実施形態によれば、患者のPLCγの活性及び/又は発現を調節することができる薬剤は、その可溶性を高める一種又は二種以上の更なる化合物と共に処方することが可能である。
【0059】
他の一実施態様において、本発明の薬剤は、CNS組織又はCNS神経細胞と接触するよう投与される。本願で使用する「中枢神経系」又はCNSは、脳及び脊髄(例えば、腰部領域内)を含む神経系である。一方、「末梢神経系」又はPNSは、脳及び脊髄以外の神経系である。更なる実施態様において、CNS組織は後角表層であり、更なる実施態様においては、ラミナI神経細胞である。そのようなものとして、実施態様において本発明の薬剤は、インビボで頭蓋内若しくはくも膜下腔内へ直接投与されるか、又は脳脊髄液内へ投与されて、CNS細胞を治療することが可能である。あるいは、薬剤は血液脳関門を通過してCNSに入ることができる形態で、全身投与(例えば、静脈内又は経口投与)されてもよい。本願で「神経」及び「神経細胞」は、互換的に使用され、両方とも神経細胞及び神経系に関係する。
【0060】
本発明の更なる実施態様において、CNS細胞のPLCγの活性及び/又は発現を低下/阻害することができる薬剤を含有する本発明の治療的組成物は、キット/容器又はパッケージ(例えば、商業的パッケージ)として提供されてもよく、これらは疼痛治療のためにそれらを使用する際の説明書を更に含む。同様に、本発明は、PLCγの活性及び/又は発現を低下/阻害することができる薬剤を、疼痛の予防及び/又は治療のための説明書と共に含むパッケージを提供する。
【0061】
本発明は更に、疼痛の予防及び/若しくは治療のための、又は疼痛の予防及び/若しくは治療のための医薬品の製造のための、PLCγの活性及び/若しくは発現を低下/阻害することができる薬剤、又はPLCγの活性及び/若しくは発現を低下/阻害することができる薬剤を含有する組成物の使用を提供する。
【0062】
他の一実施形態において、本発明は、PLCγの活性及び/又は発現を低下/阻害することができる薬剤の同定及び解析に使用することが可能であるスクリーニング法における標的としてのPLCγの使用に関する。従って、本発明は更に、候補の薬剤が、患者のPLCγの活性及び/又は発現を調節することができ、それ故疼痛の予防及び治療に有用であるか否かを測定する方法を提供する。一実施態様において、該方法は、細胞(例えば、CNS由来の細胞)を候補薬剤と接触させ、試験薬剤の存在下でPLCγ活性が低下又は阻害されているか否かを測定することを含む。更なる実施態様において、アッセイは、活性PLCγの適切な標本又は試料を提供し、PLCγを候補薬剤と接触させ、その活性が試験化合物の存在下で阻害又は低下されるか否かを同様に測定することにより、無細胞系内で実施することが可能である。更なる実施態様において、アッセイは、候補化合物がPLCγに対する結合パートナー、又はリガンドの結合を阻害するか否かを評価することを含み得る。この場合、該方法は、PLCγ、又はPLCγを含む細胞を、候補薬剤及び結合パートナー又はリガンドと接触させ、候補又は試験化合物の存在下で、PLCγに対する結合パートナー、又はリガンドの結合が低下されるか否かを測定することを含む。実施態様において、結合パートナー又はリガンドは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、又はそのホモログ若しくは断片である(例えば、ERK1若しくはERK2、又はそのホモログ若しくは断片)。一実施態様において、PLCγのDドメインに対する結合が測定される。
【0063】
PLCγ活性の阻害若しくは低下、又は上述した結合の阻害若しくは低下は、試験薬剤が疼痛の治療又は予防に使用することが可能であることの指標となる。
【0064】
本願で使用される「CNS由来の細胞」は、CNS組織から単離された細胞、又はCNS組織由来の細胞であり、実施態様においては神経細胞の初代培養物、不死化神経細胞株、及び許容されたインビトロでの神経細胞モデル系(例えば、インビトロで神経細胞に分化した細胞)の両方を含む。一実施態様において、上述した細胞は、PLCγ活性を有する。
【0065】
上述した方法は、一種の試験薬剤、又は複数の試験薬剤、若しくは試験薬剤のライブラリー(例えば、組み合わせライブラリー)を用いて実施することが可能である。後者の場合、薬剤の組み合わせにより提供された相乗効果も、同定及び解析することが可能である。上述した薬剤は、疼痛の治療及び/又は予防に使用、又は向上された特異性、効力及び/又は薬理学的(例えば、薬物動態学的)性質を有する更なる薬剤を開発及び試験するためのリード薬剤として使用することが可能である。一実施態様において、薬剤は、適切な作用部位、例えばCNS組織内(例えば、脊髄内)でその活性型に変更されるプロドラッグであり得る。所定の実施態様において、本発明のスクリーニング/試験方法のステップの一つ又は複数が自動化されてもよい。
【0066】
本発明は更に、PLCγ遺伝子の発現を低下/阻害することができる薬剤を、同定及び解析するための方法を提供する。この方法は、試験薬剤の存在下でのPLCγ遺伝子の発現を、試験薬剤の不在下でのPLCγ遺伝子の発現に対して測定することを含む。このような遺伝子発現は、対応するRNA若しくはタンパク質を検出するか、又はレポーター遺伝子に作動可能に結合した、通常このようなPLCγ遺伝子に結合した転写調節因子(一つ又は複数)を含む適切なレポーター構造を使用して測定することができる。第一の核酸配列は、該第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的位置関係に配置される場合、第二の核酸配列と「作動可能に結合」することが可能である。例えば、プロモーターは、該プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を与える場合、コード配列に作動可能に結合されているという。一般に、作動可能に結合したDNA配列は連続しており、また必要な場合、リーディングフレーム内の二つのタンパク質コード領域を接続する。しかしながら、例えば、エンハンサーは通常、プロモーターから数kbだけ離れている場合に機能し、イントロン配列は多様な長さを有することが可能であるため、数個のポリヌクレオチド要素は作動可能に結合することが可能であるが、連続的ではない。「転写調節要素」とは、例えば開始及び終止シグナル、エンハンサー、並びにプロモーター、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル等のDNA配列を指す一般名であり、それらが作動可能に結合するタンパク質コード配列の転写を誘導又は制御する。そのようなレポーター遺伝子の発現は、転写又は翻訳レベルで、例えば生産されるRNA又はタンパク質の量によって測定することが可能である。RNAは、例えばノーザン分析により、又は逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法により検出することが可能である(例えば、Sambrook等(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(second edition)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、USA参照)。タンパク質レベルは、親和性試薬(例えば、抗体又はその断片(方法に関しては、例えばHarlow、E.及びLane、D(1988)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYを参照)、タンパク質に結合するリガンド)を使用して、又は他の特性(例えば、緑色蛍光タンパク質の場合の蛍光)を使用して直接検出することが可能であるか、又は検出可能な生成物(例えば、分光学的特性の変化)若しくは検出可能な表現型(例えば、細胞増殖の変化)を生成することが可能である酵素活性を含むタンパク質の活性を測定することによって検出することが可能である。適切なレポーター遺伝子は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−Dガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、又は緑色蛍光タンパク質を含むが、これらに限定されるものではない。
【0067】
本発明は更に、CNS不全関連疼痛を診断又は予知するための方法を提供する。一実施態様において、そのようなCNS不全に関連する疼痛は、神経因性疼痛である。一実施態様において、本方法は、PLCγに対応する対照区における活性及び/又は発現と比較して、CNS神経細胞のPLCγの活性及び/又は発現が調節されているか否かを測定することを含む。この特定の方法において、対照のレベルに対する試験レベルの差異は、患者がCNS不全関連疼痛を体験していることを示す。一実施態様において、本方法は、PLCγの活性及び/又は発現が、対照の活性及び/又は発現と比較して調節されているか否かを測定することを含み得る。また他の一実施態様において、PLCγの活性及び/又は発現は、以下の確立された標準、例えば以前に患者にて測定された対応するPLCγ活性及び/又は発現レベル;患者が上記した痛覚と比較してより軽い疼痛を体験しているか又は実質的に無疼痛の際に前記患者において測定された、対応するPLCγ活性及び/又は発現レベル;又は上記した試験患者の現在の痛覚と比較してより軽い疼痛を体験しているか又は実質的に無疼痛の対照患者において測定された、対応するPLCγ活性及び/又は発現レベル、から選択することができる。一実施態様において、より軽い疼痛を体験しているか又は実質的に無疼痛である患者又は対照患者は、該患者の中枢又は末梢神経系における明らかな損傷(例えば、神経因性疼痛)、又は持続性疼痛を示さない。
【0068】
例えば、PLCγ活性及び/又は発現は、患者に対してその患者のCNS神経細胞と接触することができるインジケータ化合物(例えば、PLCγの活性及び/又は発現を示す化合物)を投与することにより測定することが可能である。インジケータ化合物を投与した後、そのインジケータ化合物関連インビボシグナルを評価することが可能である。一実施態様において、インジケータ化合物、例えば免疫検出ベースの試薬(例えば、PLCγポリペプチドに対抗する抗体、一本鎖抗体、若しくはFab断片)、又はPLCγ活性により検出可能な生成物を与える適切な基質を使用することが可能である。インジケータ化合物を注入した後、画像技術を用いてインビボでインジケータ化合物関連シグナルを評価することが可能である。画像技術は、インビボでのインジケータ化合物のシグナルの評価を可能にすることが可能である。
【0069】
一実施態様において、上記した診断/予知の方法は、上記した治療的/予防的方法と共に実施されて、患者の疼痛を予防又は治療することが可能である。従って、このような方法は、疼痛を診断又は予知し、かつ患者のPCLγの活性及び/又は発現を調節することによって、疼痛を予防又は治療することを含む。
【0070】
本願に本発明の様々な実施態様が開示されているが、当業者が共有する一般的な知識に従って、本発明の範囲内で様々な調節及び変更をなすることが可能である。そのような変更は、実質的に同一の方法で同一の結果を達成するために、本発明の任意の実施形態を公知の同等物で置換することを含む。範囲を定義する数字には、数値域が含まれる。請求項において、「を含む」という言葉は、オープンエンドを指す用語として使用され、「を含むが、限定されない」という表現と実質的に同等である。以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を説明するものであり、本願に開示する本発明の幅広い実施形態を限定するものではない。
【実施例1】
【0071】
11匹の成熟したSprague−Dawleyラットの坐骨神経に、人為的に絞扼性神経損傷を与えた(Mosconi&Kruger、1996、Pain 64:37−57)。2週間に亘り徐々に増大した神経因性疼痛を示す疼痛過敏を、Von Frey法により監視した(Chaplan等、1994、J.Neurosci.Methods53:55−63)。アロディニア発生後(≦2.0gの50%逃避閾値(WD50)により解析)、くも膜下カテーテルを用いて、ラットにトリシクロデカン−9−イル−キサントゲン酸500ngを投与した。トリシクロデカン−9−イル−キサントゲン酸は、生理食塩水(0.9%NaCl)溶液中にて、10%v/vジメチルスルホキシドと共に調製された。トリシクロデカン−9−イル−キサントゲン酸は、EMD Biosciences(Calbiochem部)から入手可能である。10%v/vジメチルスルホキシドを含む生理食塩水(0.9%NaCl)溶液をビヒクルとして、対照ラットに注入した。投与したビヒクルの体積は、PLCγ阻害剤溶液と同一であった。
【0072】
7匹のアロディニアのラットがビヒクルのくも膜下投与を1回受けた一方、4匹のラットがトリシクロデカン−9−イル−キサントゲン酸の投与を1回受けた。注入前、両方のグループの平均WD50は、1.9±0.2gであった。注入後、僅か4時間で、トリシクロデカン−9−イル−キサントゲン酸を投与されたラットのWD50は、ビヒクルを受けたラットと有意に異なり(トリシクロデカン−9−イル−キサントゲン酸、8.8±2.1g対ビヒクル、4.1±0.7g、p<0.05)、また、開始時、注入前のWD50と有意に異なっていた(p<0.05、混合モデルのANOVA(analysis of variance:分散分析)にて)。この疼痛過敏の有意な低下は、6時間以上持続した。
【0073】
本出願全体を通して多くの参考文献が引用され、本発明が属する技術分野の状況をより詳細に説明している。これら参考文献の開示は、本願において参照により本開示内に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】トリシクロデカン−9−イル−キサントゲン酸(○)及びビヒクル(□)で処置されたラットの疼痛過敏の50%逃避閾値の比較。
【図2A】ヒトホスホリパーゼCガンマ1のDNA配列(配列番号1)(PLCG1、アクセッション番号NM_002660)。コーディング配列は、DNA配列の122−3997位で定義される。
【図2B】図2Aの続き。
【図2C】図2Bの続き。
【図2D】図2Cの続き。
【図2E】ヒトホスホリパーゼCガンマ1のポリペプチド配列(配列番号2)(PLCG1、アクセッション番号NP_002651)。コーディング配列は、DNA配列の122−3997位で定義される。
【図3A】ヒトホスホリパーゼCガンマ2のDNA配列(配列番号3)(PLCG2、アクセッション番号NM_002661)。コーディング配列は、DNA配列の153−3911位で定義される。
【図3B】図3Aの続き。
【図3C】図3Bの続き。
【図3D】ヒトホスホリパーゼCガンマ2のポリペプチド配列(配列番号4)(PLCG2、アクセッション番号NM_002661及びNP_002652)。コーディング配列は、DNA配列の153−3911位で定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の疼痛を治療又は予防する方法であって、その患者のホスホリパーゼCγ(PLCγ)の活性又は発現を阻害することを含む方法。
【請求項2】
前記患者がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
中枢神経系(CNS)の細胞又は組織において、PLCγの活性又は発現を調節することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
疼痛シグナルが、経シナプスでCNS細胞へ至る末梢神経系(PNS)細胞又は神経線維から発せられる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記疼痛が神経因性疼痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記神経因性疼痛が、神経又は路の損傷に関連する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記神経因性疼痛が、体性痛及び内臓痛からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記疼痛が、慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、並びに反復性急性疼痛からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
患者の疼痛を治療又は予防する方法であって、患者のPLCγの活性又は発現を阻害することができる薬剤をその患者に投与することを含む方法。
【請求項11】
前記薬剤がPLCγ阻害剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤が抗PLCγ抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記薬剤が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、siRNA様分子、及びPLCγとリガンドとの結合の阻害剤から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記アンチセンス分子が、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アンチセンス分子が、配列番号2及び配列番号4から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸に対して実質的に相補的な核酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アンチセンス分子が、配列番号1及び配列番号3から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸に対して実質的に相補的な核酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記mRNAの部分が、少なくとも5個の連続した塩基を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記siRNA又は前記siRNA様分子が、PLCγをコードするmRNAの部分と実質的に同一である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記siRNA又は前記siRNA様分子が、配列番号2及び配列番号4から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA配列に対応するmRNAの部分と実質的に同一である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記siRNA又は前記siRNA様分子が、配列番号1及び配列番号3から選択されるDNA配列に対応するmRNAの部分と実質的に同一である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を調節することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項24】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
疼痛シグナルが、経シナプスでCNS細胞へ至るPNS細胞又は神経線維から発せられる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記疼痛が神経因性疼痛である、請求項10に記載の方法。
【請求項27】
前記神経因性疼痛が、神経又は路の損傷に関連する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記神経因性疼痛が、体性痛及び内臓痛からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記疼痛が、慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、並びに反復性急性疼痛からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項30】
患者の疼痛を治療又は予防する方法であって、その患者のPLCγの活性又は発現を阻害することができる薬剤、及び医薬的に許容される担体を含有する組成物を、その患者に投与することを含む方法。
【請求項31】
前記薬剤がPLCγ阻害剤である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記薬剤が抗PLCγ抗体である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記薬剤が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、siRNA様分子、及びPLCγとリガンドとの結合の阻害剤から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記アンチセンス分子が、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を調節することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
疼痛シグナルが、経シナプスでCNS細胞へ至るPNS細胞又は神経線維から発せられる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記疼痛が神経因性疼痛である、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
前記神経因性疼痛が、神経又は路の損傷に関連する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記神経因性疼痛が、体性痛及び内臓痛からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記疼痛が、慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、並びに反復性急性疼痛からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
患者の疼痛の治療又は予防のための組成物であって、患者のPLCγの活性又は発現を阻害することができる薬剤、及び医薬的に許容される担体を含有する組成物。
【請求項45】
前記薬剤がPLCγ阻害剤である、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンからなる群から選択される、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸である、請求項45に記載の組成物。
【請求項48】
前記薬剤が抗PLCγ抗体である、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
前記薬剤が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、siRNA様分子、及びPLCγとリガンドとの結合の阻害剤から選択される、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
前記アンチセンス分子が、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を調節することを含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項52】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
疼痛シグナルが、経シナプスでCNS細胞へ至るPNS細胞又は神経線維から発せられる、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
前記疼痛が神経因性疼痛である、請求項44に記載の組成物。
【請求項55】
前記神経因性疼痛が、神経又は路の損傷に関連する、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記神経因性疼痛が、体性痛及び内臓痛からなる群から選択される、請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
前記疼痛が、慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、並びに反復性急性疼痛からなる群から選択される、請求項44に記載の組成物。
【請求項58】
患者のPLCγの活性又は発現を阻害することができる薬剤、及び疼痛の治療又は予防におけるその薬剤の使用の方法に関する説明書を含むパッケージ。
【請求項59】
前記薬剤がPLCγ阻害剤である、請求項58に記載のパッケージ。
【請求項60】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンからなる群から選択される、請求項59に記載のパッケージ。
【請求項61】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸である、請求項59に記載のパッケージ。
【請求項62】
前記薬剤が抗PLCγ抗体である、請求項59に記載のパッケージ。
【請求項63】
前記薬剤が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、siRNA様分子、及びPLCγとリガンドとの結合の阻害剤から選択される、請求項59に記載のパッケージ。
【請求項64】
前記アンチセンス分子が、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である、請求項63に記載のパッケージ。
【請求項65】
方法が、CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を調節することを含む、請求項59に記載のパッケージ。
【請求項66】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項65に記載のパッケージ。
【請求項67】
疼痛シグナルが経シナプスでCNS細胞へ至るPNS細胞又は神経線維から発せられる、請求項65に記載のパッケージ。
【請求項68】
前記疼痛が神経因性疼痛である、請求項59に記載のパッケージ。
【請求項69】
前記神経因性疼痛が、神経又は路の損傷に関連する、請求項68に記載のパッケージ。
【請求項70】
前記神経因性疼痛が、体性痛及び内臓痛からなる群から選択される、請求項68に記載のパッケージ。
【請求項71】
前記疼痛が、慢性炎症痛、、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、並びに反復性急性疼痛からなる群から選択される、請求項58に記載のパッケージ。
【請求項72】
患者のPLCγの活性又は発現を阻害することができる薬剤を含有する組成物、及び医薬的に許容される担体、並びに疼痛の治療又は予防における前記組成物の使用の方法に関する説明書、を含むパッケージ。
【請求項73】
前記薬剤がPLCγ阻害剤である、請求項72に記載のパッケージ。
【請求項74】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[β−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンからなる群から選択される、請求項73に記載のパッケージ。
【請求項75】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸である、請求項73に記載のパッケージ。
【請求項76】
前記薬剤が抗PLCγ抗体である、請求項72に記載のパッケージ。
【請求項77】
前記薬剤が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、siRNA様分子、及びPLCγとリガンドとの結合の阻害剤から選択される、請求項72に記載のパッケージ。
【請求項78】
前記アンチセンス分子が、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である、請求項77に記載のパッケージ。
【請求項79】
方法が、CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を調節することを含む、請求項72に記載のパッケージ。
【請求項80】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項79に記載のパッケージ。
【請求項81】
疼痛シグナルが、経シナプスでCNS細胞へ至るPNS細胞又は神経線維から発せられる、請求項79に記載のパッケージ。
【請求項82】
前記疼痛が神経因性疼痛である、請求項72に記載のパッケージ。
【請求項83】
前記神経因性疼痛が、神経又は路の損傷に関連する、請求項82に記載のパッケージ。
【請求項84】
前記神経因性疼痛が、体性痛及び内臓痛からなる群から選択される、請求項82に記載のパッケージ。
【請求項85】
前記疼痛が、慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、並びに反復性急性疼痛からなる群から選択される、請求項72に記載のパッケージ。
【請求項86】
疼痛を治療又は予防するための、患者のPLCγの活性又は発現を阻害することができる薬剤の使用。
【請求項87】
前記薬剤がPLCγ阻害剤である、請求項86に記載の使用。
【請求項88】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンからなる群から選択される、請求項87に記載の使用。
【請求項89】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸である、請求項87に記載の使用。
【請求項90】
前記薬剤が抗PLCγ抗体である、請求項86に記載の使用。
【請求項91】
前記薬剤が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、siRNA様分子、及びPLCγとリガンドとの結合の阻害剤から選択される、請求項86に記載の使用。
【請求項92】
前記アンチセンス分子が、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である、請求項91に記載の使用。
【請求項93】
方法が、CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を調節することを含む、請求項86に記載の使用。
【請求項94】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項93に記載の使用。
【請求項95】
疼痛シグナルが、経シナプスでCNS細胞へ至るPNS細胞又は神経線維から発せられる、請求項93に記載の使用。
【請求項96】
前記疼痛が神経因性疼痛である、請求項86に記載の使用。
【請求項97】
前記神経因性疼痛が、神経又は路の損傷に関連する、請求項96に記載の使用。
【請求項98】
前記神経因性疼痛が、体性痛及び内臓痛からなる群から選択される、請求項96に記載の使用。
【請求項99】
前記疼痛が、慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、並びに反復性急性疼痛からなる群から選択される、請求項86に記載の使用。
【請求項100】
疼痛を治療又は予防する医薬品の製造のための、患者のPLCγの活性又は発現を阻害することができる薬剤の使用。
【請求項101】
前記薬剤がPLCγ阻害剤である、請求項100に記載の使用。
【請求項102】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンからなる群から選択される、請求項101に記載の使用。
【請求項103】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸である、請求項101に記載の使用。
【請求項104】
前記薬剤が抗PLCγ抗体である、請求項102に記載の使用。
【請求項105】
前記薬剤が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、siRNA様分子、及びPLCγとリガンドとの結合の阻害剤から選択される、請求項104に記載の使用。
【請求項106】
前記アンチセンス分子が、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である、請求項105に記載の使用。
【請求項107】
方法が、CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を調節することを含む、請求項100に記載の使用。
【請求項108】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項107に記載の使用。
【請求項109】
疼痛シグナルが、経シナプスでCNS細胞へ至るPNS細胞又は神経線維から発せられる、請求項107に記載の使用。
【請求項110】
前記疼痛が神経因性疼痛である、請求項100に記載の使用。
【請求項111】
前記神経因性疼痛が、神経又は路の損傷に関連する、請求項110に記載の使用。
【請求項112】
前記神経因性疼痛が、体性痛及び内臓痛からなる群から選択される、請求項110に記載の使用。
【請求項113】
前記疼痛が、慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、並びに反復性急性疼痛からなる群から選択される、請求項100に記載の使用。
【請求項114】
疼痛の治療又は予防のための、患者のPLCγの活性又は発現を阻害することができる薬剤、及び医薬的に許容される担体を含有する組成物の使用。
【請求項115】
前記薬剤がPLCγ阻害剤である、請求項114の使用。
【請求項116】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンからなる群から選択される、請求項115に記載の使用。
【請求項117】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸である、請求項115に記載の使用。
【請求項118】
前記薬剤が抗PLCγ抗体である、請求項114に記載の使用。
【請求項119】
前記薬剤が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、siRNA様分子、及びPLCγとリガンドとの結合の阻害剤から選択される、請求項114に記載の使用。
【請求項120】
前記アンチセンス分子が、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である、請求項119に記載の使用。
【請求項121】
方法が、CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を調節することを含む、請求項114に記載の使用。
【請求項122】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項121に記載の使用。
【請求項123】
疼痛シグナルが、経シナプスでCNS細胞へ至るPNS細胞又は神経線維から発せられる、請求項121に記載の使用。
【請求項124】
前記疼痛が神経因性疼痛である、請求項114に記載の使用。
【請求項125】
前記神経因性疼痛が、神経又は路の損傷に関連する、請求項124に記載の使用。
【請求項126】
前記神経因性疼痛が、体性痛及び内臓痛からなる群から選択される、請求項124に記載の使用。
【請求項127】
前記疼痛が、慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、並びに反復性急性疼痛からなる群から選択される、請求項114に記載の使用。
【請求項128】
疼痛の治療又は予防のための薬剤を同定又は解析する方法であって、薬剤をPLCγの活性又は発現を有する細胞と接触させ、その薬剤の存在下でPLCγの活性又は発現が阻害されるか否かを測定することを含み、ここでその阻害を、薬剤が疼痛の治療又は予防に使用され得ることを示す指標とする、方法。
【請求項129】
疼痛の治療又は予防のための薬剤を同定又は解析する方法であって、薬剤をPLCγと接触させ、その薬剤の存在下でPLCγ活性が阻害されるか否かを測定することを含み、ここでその阻害を、薬剤が疼痛の治療又は予防に使用され得ることを示す指標とする、方法。
【請求項130】
CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現が、阻害されるか否かを測定することを含む、請求項128に記載の方法。
【請求項131】
CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
疼痛シグナルが、経シナプスでCNS細胞へ至るPNS細胞又は神経線維から発せられる、請求項130に記載の方法。
【請求項133】
前記疼痛が神経因性疼痛である、請求項128に記載の方法。
【請求項134】
前記神経因性疼痛が、神経又は路の損傷に関連する、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記神経因性疼痛が、体性痛及び内臓痛からなる群から選択される、請求項133に記載の方法。
【請求項136】
前記疼痛が、慢性炎症痛、関節炎関連疼痛、線維症、背痛、癌関連疼痛、消化器疾患関連疼痛、クローン病関連疼痛、自己免疫疾患関連疼痛、内分泌疾患関連疼痛、糖尿病性神経障害関連疼痛、幻肢痛、自発痛、慢性の術後痛、慢性顎関節痛、灼熱痛、帯状疱疹後神経痛、AIDS関連の疼痛、複合性局所疼痛症候群タイプI及びII、三叉神経痛、慢性背痛、脊髄損傷関連疼痛、並びに反復性急性疼痛からなる群から選択される、請求項128に記載の方法。
【請求項137】
患者の侵害受容を減少させる方法であって、その患者のPLCγの活性又は発現を阻害することを含む方法。
【請求項138】
前記患者がヒトである、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を阻害することを含む、請求項137に記載の方法。
【請求項140】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
患者のPLCγの活性又は発現を阻害することができる薬剤をその患者に投与することを含む、患者の侵害受容を減少させる方法。
【請求項142】
前記薬剤がPLCγ阻害剤である、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンからなる群から選択される、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸である、請求項142に記載の方法。
【請求項145】
前記薬剤が抗PLCγ抗体である、請求項142に記載の方法。
【請求項146】
前記薬剤が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、siRNA様分子、及びPLCγとリガンドとの結合の阻害剤から選択される、請求項142に記載の方法。
【請求項147】
前記アンチセンス分子が、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を阻害することを含む、請求項141に記載の方法。
【請求項149】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
患者の侵害受容を減少させる方法であって、患者のPLCγの活性又は発現を阻害することができる薬剤、及び医薬的に許容される担体を含有する組成物を、その患者に投与することを含む方法。
【請求項151】
前記薬剤がPLCγ阻害剤である、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸、1−O−オクタデシル−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホリルコリン、硫酸ネオマイシン、スペルミンテトラヒドロクロリド、1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−1H−ピロール−2,5−ジオン、及び1−[6−((17β−3−メトキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−イル)アミノ)ヘキシル]−2,5−ピロリジンジオンからなる群から選択される、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記PLCγ阻害剤が、トリシクロデカン−9−イルキサントゲン酸である、請求項151に記載の方法。
【請求項154】
前記薬剤が抗PLCγ抗体である、請求項150に記載の方法。
【請求項155】
前記薬剤が、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、siRNA様分子、及びPLCγとリガンドとの結合の阻害剤から選択される、請求項150に記載の方法。
【請求項156】
前記アンチセンス分子が、PLCγをコードするmRNAの部分に対して実質的に相補的な核酸である、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
CNSの細胞又は組織におけるPLCγの活性又は発現を阻害することを含む、請求項150に記載の方法。
【請求項158】
前記CNSの細胞又は組織が、脊髄細胞又は組織である、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
疼痛の治療又は予防のための化合物を同定又は解析する方法であって、
(a)試験化合物を、レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含む第二の核酸に対して作動可能に結合した、通常PLCγ遺伝子関連転写調節因子を含む第一の核酸を有する細胞と接触させ、
(b)前記試験化合物の存在下で、レポーター遺伝子の発現又はレポータータンパク質の活性が低下されるか否かを測定することを含み、
ここで前記レポーター遺伝子の発現又はレポータータンパク質活性の低下を、前記試験化合物が疼痛の治療又は予防に使用され得ることを示す指標とする、方法。
【請求項160】
前記細胞がCNS由来の細胞である、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
疼痛の治療又は予防のための薬剤を同定又は解析する方法であって、薬剤及びPLCγリガンドを、PLCγを含む細胞と接触させ、その薬剤の存在下で、PLCγに対するリガンドの結合が低下するか否かを測定することを含み、ここでその低下を、薬剤が疼痛の治療又は予防に使用され得ることを示す指標とする、方法。
【請求項162】
前記細胞がCNS由来の細胞である、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
疼痛の治療又は予防のための薬剤を同定又は解析する方法であって、薬剤及びPLCγリガンドをPLCγと接触させ、その薬剤の存在下で、PLCγに対するリガンドの結合が低下するか否かを測定することを含み、ここでその低下を、薬剤が疼痛の治療又は予防に使用され得ることを示す指標とする、方法。
【請求項164】
前記リガンドが、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、又はそのホモログ若しくは断片である、請求項15、35、146、155、161及び163のいずれか一項に記載の方法。
【請求項165】
前記マイトジェン活性化プロテインキナーゼが、細胞外シグナル関連キナーゼである、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記細胞外シグナル関連キナーゼが、ERK1又はERK2である、請求項165に記載の方法。
【請求項167】
前記結合が、前記PLCγのDドメインに対してなされる、請求項15、35、146、155、161及び163〜166のいずれか一項に記載の方法。
【請求項168】
前記リガンドが、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、又はそのホモログ若しくは断片である、請求項49に記載の組成物。
【請求項169】
前記マイトジェン活性化プロテインキナーゼが、細胞外シグナル関連キナーゼである、請求項168に記載の組成物。
【請求項170】
前記細胞外シグナル関連キナーゼが、ERK1又はERK2である、請求項169に記載の組成物。
【請求項171】
前記結合が、前記PLCγのDドメインに対してなされる、請求項168に記載の組成物。
【請求項172】
前記リガンドが、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、又はそのホモログ若しくは断片である、請求項49又は63に記載のパッケージ。
【請求項173】
前記マイトジェン活性化プロテインキナーゼが、細胞外シグナル関連キナーゼである、請求項172に記載のパッケージ。
【請求項174】
前記細胞外シグナル関連キナーゼが、ERK1又はERK2である、請求項173に記載のパッケージ。
【請求項175】
前記結合が、前記PLCγのDドメインに対してなされる、請求項174に記載のパッケージ。
【請求項176】
前記リガンドが、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、又はそのホモログ若しくは断片である、請求項91、105及び119のいずれか一項に記載の使用。
【請求項177】
前記マイトジェン活性化プロテインキナーゼが、細胞外シグナル関連キナーゼである、請求項176に記載の使用。
【請求項178】
前記細胞外シグナル関連キナーゼが、ERK1又はERK2である、請求項177に記載の使用。
【請求項179】
前記結合が、前記PLCγのDドメインに対してなされる、請求項179に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate


【公表番号】特表2007−537167(P2007−537167A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511816(P2007−511816)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000738
【国際公開番号】WO2005/110490
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(501449470)ユニヴェルシテ ラヴァル (2)
【Fターム(参考)】