説明

ポリ間電荷トラップ構造体を有する浮遊ゲートメモリ素子

【課題】非対称な複数のトンネル障壁を有する電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子を提供する。
【解決手段】本メモリセルはチャネル領域で分離されたソース領域及びドレイン領域を備える。第1トンネル障壁構造体が該チャネル領域の上方に配置されている。浮遊ゲートが該第1トンネル障壁構造体上に配置され該チャネル領域を覆っている。第2トンネル障壁構造体が該浮遊ゲート上に配置されている。該第2トンネル障壁構造体上に電荷トラップ構造体が配置され、該電荷トラップ構造体上に阻止誘電構造体が配置されている。該上部誘電構造体上に配置された上部導電層がゲートとして働く。該メモリセルをプログラムするバイアス条件下及び消去するバイアス条件下で、該第2トンネル障壁構造体は該第1トンネル障壁構造体より効率的なトンネル電流の導体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね不揮発性メモリ素子、特に、フラッシュメモリ及びフラッシュメモリ素子の製造に関する。
【0002】
《関連する出願への相互参照》
本出願は、2008年04月18日付で出願した米国仮特許出願第61/124,652号の利益を主張する特許出願である。
【0003】
本出願は、2007年05月31日付で出願した同時係属の米国特許出願第11/756,559号に関連する特許出願である。この出願を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0004】
フラッシュメモリ技術は、電界効果トランジスタのチャネルとゲートとの間に電荷を蓄えるメモリセルを含む。蓄えられた電荷は、このトランジスタの閾値に影響を与え、蓄積電荷による閾値の変化は検知されデータを表すことができる。
【0005】
広く使用されている1つのタイプの電荷蓄積メモリセルは、浮遊ゲートメモリセルとして知られている。浮遊ゲートメモリセルにおいて、ポリシリコン等の導電材料でできた浮遊ゲートはトンネル障壁構造体上に形成され、ポリ間(interpoly)誘電体が該浮遊ゲート上に形成されて浮遊ゲートをメモリセルのワード線又は制御ゲートから絶縁する。浮遊ゲートの形状は、浮遊ゲートとチャネルの間の電圧に対して高カップリング比を実現するよう設計され、該制御ゲートに印加された電圧によって該トンネル障壁構造体により強い電界がかかる。例えば、浮遊ゲートの形状はT字形又はU字形であり、このため制御ゲートと浮遊ゲートの間の表面積が浮遊ゲートとチャネルの間より大きくなり、これにより、制御ゲートと浮遊ゲートの間の容量がより大きくなる。この技術は広く成功を収めてきたが、メモリセルのサイズとメモリセル間距離の縮小とともに、隣り合う浮遊ゲート間の干渉のために浮遊ゲート技術は劣化し始めている。
【0006】
電界効果トランジスタのチャネルとゲートとの間に電荷を蓄える別のタイプのメモリセルは、誘電体電荷トラップ構造体を使用する。このタイプのメモリセルにおいては、誘電体電荷トラップ構造体がトンネル障壁構造体上に形成され(トンネル障壁構造体は誘電体電荷トラップ構造体をチャネルから絶縁する)、上部誘電体層が該誘電体電荷トラップ構造体上に形成され、誘電体電荷トラップ構造体をワード線又はゲートから絶縁する。代表的な素子はシリコン‐酸化物‐窒化物‐酸化物‐シリコンSONOSセルとして知られている。
【0007】
誘電体電荷トラップ構造体を使用するメモリセルにおいては、設計においてカップリング比を操作する必要がないので、素子は平坦であってよい。平坦な構造と隣接セル間の非常に少ないカップリングのために、製造プロセスにおける最小フィーチャー寸法が約45nm未満になると、誘電体電荷トラップ構造体を使用するメモリセルは、浮遊ゲートメモリセルより重要性が高くなると予想されている。
【0008】
SONOS型メモリセルでさえ、最小フィーチャー寸法が約45nm未満になると、性能低下をきたす可能性があることが分かった。特に、誘電体電荷トラップ構造体における外縁の電界によるチャネル幅に沿って不均一な電荷注入は、メモリセルの縁に沿った領域における閾値電圧を実効的に低くし、一方、チャネルの中心付近の領域における閾値は実効的に高い。縁に沿った低閾値領域は性能を低下させる可能性がある。本出願と譲受人及び発明者が同じである2007年05月31日付で出願した米国特許出願第11/756,559(特許文献1)には、浮遊ゲート構造体(電界分配層と呼ばれる)と、ゲートと浮遊ゲート構造体の間の電荷トラップ層との組合せが記載されている。
【0009】
従って、電荷トラップ構造体におけるチャネル幅に沿った電荷密度が不均一であっても、チャネル幅に沿ってより均一な閾値電圧を維持することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008‐0116506号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は不揮発性メモリ素子、より具体的には第1トンネル障壁構造体と誘電体電荷トラップ構造体の間に、浮遊ゲートと該浮遊ゲートに接触した第2トンネル障壁構造体とを備え、これらのトンネル障壁は非対称である不揮発性メモリ素子に関する。該第2トンネル障壁構造体は、該第1トンネル障壁構造体と異なる電子トンネル現象確率関数を有するよう、例えばバンドギャップ操作及び/又は異なる材料又は材料厚みにより操作可能であり、これにより浮遊ゲート内の電子が電荷トラップ誘電体層内へ移動するよう促す一方、電荷トラップ誘電体層から浮遊ゲートを通って基板へ電子がトンネルするのを防ぐ。浮遊ゲートは電荷トラップ誘電体層内にトラップされた電荷によって影響される電界をチャネルに亘ってより均一に分布させ、電荷トラップ構造体内のチャネル幅に沿った電荷密度が不均一であっても、該導電層の下のチャネル幅に沿った閾値電圧をより均一にする。浮遊ゲートと電荷トラップ構造体の組合せは、高密度アレイにおける隣接素子間の干渉を低減する平坦な浮遊ゲートを持つメモリセル構造の使用を可能にする。また、浮遊ゲートと電荷トラップ構造体の組合せは、その組合せによって捕捉される電荷の大部分は電荷トラップ誘電体層内の深いトラップに捕捉されるよう構成された第1、第2トンネル障壁構造体と共に、高密度フラッシュメモリの改善されたデータ保持特性を提供する。
【0012】
従って、本発明の1つの実施形態では、メモリセルはチャネル領域で分離されたソース領域及びドレイン領域を備える。トンネル現象確率関数を確立する厚みと誘電特性を持った第1トンネル障壁構造体が該チャネル領域の上方に配置されている。浮遊ゲートが該第1トンネル障壁構造体上に配置され該チャネル領域を覆っている。第2トンネル障壁構造体が該浮遊ゲート上に配置されている。該第2トンネル障壁構造体上に電荷トラップ構造体が配置され、該電荷トラップ構造体上に阻止誘電構造体が配置されている。該阻止誘電構造体上に配置された上部導電層がゲートとして働く。該第2トンネル障壁構造体は、該メモリセルをプログラムするバイアス条件下及び消去するバイアス条件下でトンネル電流の導体として該第1トンネル障壁構造体より効率的となるよう本発明のメモリセルの実施形態に係る厚みと誘電特性を有する。即ち、第2トンネル障壁構造体は所定のバイアス条件下で第1トンネル障壁構造体より高いトンネル現象確率を有する。また、幾つかの実施形態では、読み出し動作時バイアス条件下でこの確率は逆になり、第2トンネル障壁構造体は所定のバイアス条件下で第1トンネル障壁構造体より低いトンネル現象確率を有する。このようにして、メモリセル内に捕捉された電荷は、プログラム又は消去時、浮遊ゲートから電荷トラップ誘電体層内へ掃き出される。この電荷は、セルの寸法と隣接セル間距離の両方が縮小される時にデータ保持不良の原因となる電荷リークを起こし難い。
【0013】
上記のセルを備える集積回路メモリ素子も開示される。
【0014】
本発明のメモリセルを製造する方法は、半導体基板の表面上に第1トンネル障壁構造体を形成することと、該第1トンネル障壁構造体上に浮遊ゲート層を形成することと、該浮遊ゲート層上に第2トンネル障壁構造体を形成することと、該第2トンネル障壁構造体上に電荷トラップ構造体を形成することと、該電荷トラップ構造体上に上部誘電構造体を形成することと、該上部誘電構造体上に上部導電層を形成することとを含む。第2トンネル障壁構造体は第1トンネル障壁構造体と上述したように異なる。ソース領域とドレイン領域は半導体基板に不純物を注入することで形成でき、ソース領域とドレイン領域はチャネルにより分離され、チャネルは第1トンネル障壁構造体の下に位置する。
【0015】
本質的に浮遊ゲートFGとバンドギャップ操作BE‐SONOS電荷トラップ素子との「融合」である新しいメモリが開示される。従来のフラッシュメモリ構造と異なり、電荷トラップ素子(BE‐SONOS)は浮遊ゲートFG上に作られ、ポリ間誘電体層IPDを置き換える。極薄ポリFG(5nm未満)を含む非常に平坦な構造体を提供し、従来の構造と違いピッチ縮小を可能にする。
【0016】
本発明の他の特徴と利点が図面、詳細な説明、及び請求項から分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のSONOS型メモリセルの基本構造を例示する。
【図2】従来の基本SONOS型メモリセルのチャネル幅寸法(NANDアレイ構成のワード線に平行)に沿った断面図を例示する。
【図3】図2と類似の構造を例示する。この構造では、チャネル幅は底部誘電体と電荷トラップ層と上部誘電体との組合せの実効酸化物厚みと同等にまで縮小されている。
【図4】従来のメモリセルのチャネル幅寸法に沿った不均一な電荷トラップ分布を例示する。
【図5】図4に示した不均一な電荷トラップ分布によって生じるメモリセルの実効的な閾値電圧のチャネル幅寸法に沿った分布を例示する。
【図6】不均一な電荷トラップ分布を持ったSONOS型メモリセルのチャネルを通るドレイン電流の対ゲート電圧I‐V特性を例示する。
【図7】トンネル障壁構造体上に導電層を有する誘電体電荷トラップメモリセルのチャネル長寸法に沿った断面図を例示する。
【図8】図7と同様のメモリセルのアレイのチャネル幅寸法に沿った断面図を例示する。
【図9】図8に例示したような導電層を有する誘電体電荷トラップメモリセルのチャネル幅寸法に沿った電荷密度の例を示す。
【図10】導電層内の均一電位と、チャネル幅寸法に沿った閾値電圧の分布へのこの均一電位の効果を例示する。
【図11】導電層を有する電荷分布が不均一な誘電体電荷トラップメモリセルのドレイン電流対ゲート電圧I‐V特性のシミュレーション結果を例示する。
【図12】ワード線に沿った従来の浮遊ゲートメモリセルの断面図を例示する。
【図13】平坦なセル構造を持った従来の浮遊ゲートメモリセルのワード線に沿った断面図を例示する。
【図14】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリセルのワード線に沿った断面図を例示する。
【図14A】低電界時のバンドオフセット技術を含むバンドギャップ操作トンネル障壁構造体のバンド図であり、相対的に低いトンネル現象確率を示す。
【図14B】高電界時のバンドオフセット技術を含むバンドギャップ操作トンネル障壁構造体のバンド図であり、相対的に高いトンネル現象確率を示す。
【図15】本発明の電荷トラップ層が浮遊ゲートから第2トンネル障壁構造体によって分離された電荷トラップ浮遊ゲートメモリセルのワード線に沿った断面図を例示する。
【図16】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリセルのプログラム動作のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図17】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリセルのプログラム動作の場合のトラップされた電荷の密度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図18】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリセルの消去動作のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図19】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリセルの消去動作の場合のトラップされた電荷の密度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図20】メモリアレイを製造する方法における半導体基板上に第1トンネル障壁構造体と浮遊ゲートポリシリコン層とを形成する段階を例示する。
【図21】メモリアレイを製造する方法における基板内への絶縁トレンチのエッチング形成と誘電体材料の絶縁トレンチ内への堆積を行う段階を例示する。
【図22】メモリアレイを製造する方法における絶縁トレンチ蒸着ステップからの余分な酸化物を取除き、硬いマスク層と浮遊ゲートポリシリコン層上の酸化物とを取除く段階を例示する。
【図23】メモリアレイを製造する方法における第2トンネル障壁構造体と電荷トラップ層と阻止誘電体層とを含む材料スタックと、ワード線用の上部導電層とを形成する段階を例示する。
【図24】メモリアレイを製造する方法の1段階における浮遊ゲート構造体と誘電体電荷トラップ構造体との組合せを有する本発明のメモリセルの斜視図である。
【図25】電荷トラップ浮遊ゲートCTFGメモリセルアレイと制御回路とを備えた集積回路の実施形態の簡略図である。
【図26】本発明のメモリセルと周辺回路のトランジスタとを製造する統合されたプロセスの1段階を例示する。
【図27】高κキャップバッファ酸化物阻止誘電体層を含む別の電荷トラップ浮遊ゲート構造体を例示する。
【図28】酸化アルミニウム阻止層と高仕事関数ゲート材料とを含む別の電荷トラップ浮遊ゲート構造体を例示する。
【図29】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子の正電圧ファウラー・ノルトハイムFNプログラム動作試験の結果を示すグラフである。
【図30】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子の負電圧ファウラー・ノルトハイムFN消去動作試験の結果を示すグラフである。
【図31】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子の段階増加パルスプログラミングISPP動作試験の結果を示すグラフである。
【図32】第1の長さと幅を持つ本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子の、閾値電圧がシフトする試験時のゲート電圧対ドレイン電流のグラフである。
【図33】第2の長さと幅を持つ本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子の、閾値電圧がシフトする試験時のゲート電圧対ドレイン電流のグラフである。
【図34】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子のサブ閾値シフト試験の結果を示すグラフである。
【図35】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子の相互コンダクタンス試験の結果を示すグラフである。
【図36】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子のチャネルホット電子プログラム時間対閾値電圧のグラフであり、閾値電圧は逆読み出し及び順読み出し動作の両方で測定した。
【図37】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子の、消去状態とプログラム状態のゲート電圧対ドレイン電流の対数グラフである。
【図38】本発明の電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子の、消去状態とプログラム状態のゲート電圧対ドレイン電流のリニア目盛グラフである。
【図39】電荷トラップ層と浮遊ゲートの間のトンネル障壁構造体が半導体と浮遊ゲートの間のトンネル障壁構造体と同じである被験電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子の閾値電圧対プログラム電圧のグラフである。
【図40】電荷トラップ層と浮遊ゲートの間のトンネル障壁構造体が半導体と浮遊ゲートの間のトンネル障壁構造体と同じである被験電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子の閾値電圧対消去時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図28を参照しながら、詳細な説明を提供する。
【0019】
図1は従来のSONOS型メモリセルの基本構造を例示する。このセルは半導体基板10上に形成され、該基板内の第1ドープ領域11がソース端子として、第2ドープ領域12がドレイン端子として働く。制御ゲート13は、底部トンネル障壁構造体14と、誘電体電荷トラップ層15と、上部誘電体16とを備える電荷トラップ構造体上に形成される。該メモリセルのチャネルは、基板10の第1ドープ領域11と第2ドープ領域12の間の領域である。図1に示した寸法Lは、チャネルのこの寸法に沿ってソース・ドレイン間を電流が流れるので、チャネル長Lと通常呼ばれる。図1のSONOS型メモリセルは、しばしばNANDアレイに構成され、アレイの各列は接地コンタクトとグローバルビット線コンタクトの間に直列に配列されたメモリセル群を備える。
【0020】
図2は従来の基本SONOS型メモリセルのチャネル幅寸法(NANDアレイ構成のワード線13に平行)に沿った断面図を例示する。奥行を考えると、ソース端子とドレイン端子は、図2の図平面の上と下に位置する。個々のメモリセル列は、浅いトレンチ絶縁STI構造体20等の絶縁構造体によって分離される。このように、複数のメモリセル列を高密度アレイ内で浅いトレンチ絶縁構造体20の幅だけ分離して配置することができる。この幅は、この素子の製造で使用される技術の最小フィーチャー寸法Fとほぼ同じであってもよい。同様に、チャネル幅Wは、図示のようにNANDアレイ構成の最小フィーチャー寸法Fとほぼ同じであってもよい。図2は、チャネルとワード線(制御ゲート13を含む)の間の誘電体層を通る電界線をチャネルの縁の電界線21、22を含めて例示する。電界線21、22は、電荷トラップ層15の縁においてトラップされた電荷の効果を減らす外縁電界を表す。図2に示した例において、底部トンネル障壁構造体14と電荷トラップ層15と上部誘電体16との組合せのEOT(通常およそ20nm)はチャネル幅Wよりかなり小さく、外縁電界効果は素子の動作にあまり影響しない。EOTは誘電体層の厚みに二酸化シリコンの誘電率と当該層材料の誘電率の比をかけたものに等しいと定義される。
【0021】
SONOS型メモリセルでさえ、最小フィーチャー寸法が約45nm未満になると、性能低下をきたす可能性があることが分かった。例えば、図3は図2に類似の構造を例示する。この構造では、チャネル幅Wは底部誘電体54と電荷トラップ層55と上部誘電体56との組合せのEOTと同等にまで縮小されている。この例では、メモリセルはポリシリコンワード線57と、STI構造体60によって絶縁されたメモリセル列とを備える。この例では、外縁電界を表す電界線61、62が、電荷トラップ層55の有効性に大きな影響を持つ可能性がある。特に、外縁電界による電荷トラップ層へのチャネル幅に沿って不均一な電荷注入は、チャネルの縁に沿った領域における閾値電圧を実効的に低くし、一方、チャネルの中心付近の領域における閾値は実効的に高い。
【0022】
図4は従来のメモリセルのチャネル幅寸法に沿った電荷トラップ層における不均一な電荷トラップ分布を例示する。図4に示すように、電荷トラップ層における電荷密度は、チャネルの左側でチャネルの中央付近より低い。また、電荷トラップ層における電荷密度は、チャネルの右側でチャネルの中央付近より低い。図5は、図4に示した不均一な電荷トラップ分布によって生じるメモリセルの実効的な閾値電圧のチャネル幅寸法に沿った分布を示す。従って、高閾値状態にプログラムされたメモリセルでも、その縁に沿って低閾値領域がまだ存在する。図6は外縁効果によって不均一な電荷分布を持ったSONOS型セルのチャネルを通るドレイン電流Idの対ゲート電圧Vg(I‐V)特性を例示する。図の左のトレース50はプログラムされていない新しいセルの良好なI‐V特性を示す。プログラムが進み、電荷トラップ層にトラップされた電荷が増加すると、I‐V特性が特にサブ閾値領域において劣化することをトレース51、52、53は示す。電荷をトラップする能力が電荷トラップ層の縁では弱いので、図の破線の楕円で示したようにサブ閾値電流はほとんど移動しない。
【0023】
図7は、1つの実施形態に係るトンネル障壁構造体105上に導電層101を有する誘電体電荷トラップメモリセル100のチャネル長寸法Lに沿った断面図を例示する。図7に示した実施形態において、メモリセル100は、チャネルにより隔てられそれぞれソースとドレインとして働くドープ領域102とドープ領域103を有する基板104を含む。図7に示した実施形態では、基板104の表面上で、チャネル上にトンネル障壁構造体105(この例では単一の誘電体層)が配置されている。図7に示した実施形態では、メモリセル100はトンネル障壁構造体105上に配置された導電層101と、導電層101上に配置された電荷トラップ構造体106と、電荷トラップ構造体106上に配置された上部誘電構造体107と、上部誘電構造体107上に配置された上部導電層108とを更に含む。幾つかの実施形態では、トンネル障壁構造体105は二酸化シリコン又は酸窒化シリコンでできていてもよい。幾つかの実施形態では、トンネル障壁構造体105はおよそ4〜6nmの厚みを持つ二酸化シリコンからなる。幾つかの実施形態では、電荷トラップ構造体106は窒化シリコン、ナノ粒子埋込み誘電体、又はAl23、Hf23等の高κ金属酸化物を含む他の材料でできている。幾つかの実施形態では、電荷トラップ構造体106は、およそ5〜7nmの厚みを持つ窒化シリコンからなる。幾つかの実施形態では、上部誘電構造体107は二酸化シリコン又はAl23、Hf23等の高κ金属酸化物等の他の誘電体材料でできている。幾つかの実施形態では、上部誘電構造体107はおよそ5〜9nmの厚みを持つ二酸化シリコンからなる。また、幾つかの実施形態では、導電層101はp型ポリシリコン、n型ポリシリコン、他のドープされた半導体材料、又はアルミニウム、銅、タングステン等の金属でできていてもよい。代表的な実施形態では、導電層101は約2〜6nmの厚みを持つドープされたポリシリコンからなる。導電層101は隣接するセルの導電層間の電界による干渉が小さくメモリセルの性能に影響しないように薄く、電界分布を可能にする層の確実な形成のためには十分厚くすることが可能である。幾つかの実施形態では、上部導電層108は、p型ポリシリコン、n型ポリシリコン、他のドープされた半導体材料、又はアルミニウム、銅、タングステン等の金属でできていてもよい。これらの実施形態で選択された材料は容易に製造される材料を代表している。様々な他の材料及びそれらの組合せをメモリセルの層及び構造体として使用することができる。
【0024】
図8は、1つの実施形態に係る図7と同様のメモリセルのアレイのチャネル幅寸法に沿った断面図を例示する。図8に示した実施形態では、メモリセルは、トレンチ絶縁構造体110によって分離されている。図8に示した実施形態では、チャネル幅Wはメモリセルのトンネル障壁構造体105と、電荷トラップ構造体106と、上部誘電構造体107との実効酸化物厚みEOTとサイズが同等である。導電層101は導電層であり誘電体ではないので、メモリセルのEOTに影響しない。導電層101の1つの特徴として、浮遊ゲートメモリセルのようにカップリング比を大きくするよう操作されることがない。むしろ、チャネル上方の導電層101の面積とチャネルの面積の比は、チャネル上方の上部導電層108の面積と導電層101の面積の比とほぼ等しくすることができる。これにより、導電層101上方の電界は、導電層101下方の電界とほぼ同じになる。幾つかの電子が導電層101内に捕捉されても、プログラミング中に印加される強い電界がこれらの電子の全て又は大多数を電荷トラップ構造体106内へ直ちに掃き出す。
【0025】
図8に例示したように、外縁電界111、112、113は導電層101内の均一な電位によって終端される。従って、電荷トラップ構造体106内の外縁電界効果は低減される。また、図8に示したようなメモリセルに不均一な電荷分布が発生しても、導電層101内の均一な電位は、電界をトンネル障壁構造体105に亘って均一に分布させ、チャネルの閾値電圧の実効分布をチャネル幅寸法に沿ってより均一にする。
【0026】
図9は、図8に例示したような導電層を有する誘電体電荷トラップメモリセルのチャネル幅寸法に沿った電荷密度の例を示す。この例の場合、図8に示したメモリセルの電荷密度分布は、前述した典型的なSONOS型メモリセルの電荷密度分布に類似している。図10は、チャネル幅寸法に沿った閾値電圧VTの分布への導電層101の効果を例示する。図10に示したように、導電層101内の均一な電位により、チャネル幅寸法に沿って閾値電圧の均一な分布が得られる。従って、電荷トラップ構造体106内の電荷分布が不均一であっても、メモリセルの性能は大きく劣化することはない。
【0027】
図11は、1つの実施形態に係り、電荷トラップ構造体内の電荷分布が不均一な、導電層を有する誘電体電荷トラップメモリセルのドレイン電流Id対ゲート電圧Vg(I‐V)特性のシミュレーション結果を例示する。左のトレース80はプログラムされていない新しいセルの良好なI‐V特性を示す。プログラミングが進み、電荷トラップ構造体内に捕捉された電荷が増加すると、I‐V特性が劣化しないことをトレース81、82は示す。サブ閾値電流の挙動(サブ閾値シフト)は閾値電圧の増加に追従する。
【0028】
図12は、ワード線200(WL)に沿った従来の浮遊ゲート素子の断面を示す。複数のメモリセルのチャネルが、紙面に垂直に延びる半導体201上に、例えばNAND列状に形成されている。浅いトレンチ絶縁STI又は他の方法を使用して形成された誘電体トレンチ202によって半導体内の各列は互いから分離されている。トンネル障壁構造体203が半導体201上に形成されている。ポリシリコン浮遊ゲート204(FG)がトンネル障壁構造体203上に形成されている。この例では酸化シリコン層205、窒化シリコン層206、及び酸化シリコン層207からなるポリ間誘電体がポリシリコン浮遊ゲート204上に形成されている。このポリ間誘電体(205〜207)は、ワード線200と浮遊ゲート204の間の電荷リークを阻止するよう設計されている。また、浮遊ゲート204とワード線200の間のカップリングに大きな表面積を与えるために、浮遊ゲート204は相対的に厚く(現在の技術で通常100nm超)なければならない。この大きな表面積は浮遊ゲート素子のゲートカップリング比を増加させ、プログラミング及び消去中、ワード線200から浮遊ゲート204へより大きな電圧が伝えられる。しかし、厚い浮遊ゲートは、隣接する列同士の浮遊ゲート間の重大な干渉を引き起こす。この例では、図の左側の浮遊ゲートの表面に電子が分布しているのが示されている。右側の浮遊ゲート204内の電子は、これらの浮遊ゲート間に望ましくない電界を生成し、例えば脱電子が周囲の欠陥又はSTI内の酸化物トラップに捕捉されることで、電荷リークが発生する。隣接セル間のこの干渉の問題は、SONOS型誘電体電荷トラップ素子の研究と実現の重要な動機となっている。この素子では、電荷は深いトラップに捕捉され、電荷リークを引き起こす隣接セルからの干渉を受け難い。
【0029】
また、メモリセルの製造技術が30nm素子を可能にするとともに、セルに蓄えられる電子の数が非常に少なくなっている。例えば、100個未満の電子が小さなメモリセルにおいて記憶状態を確立するために使用されると考えられている。記憶状態を確立する電子の数が益々少なくなるとともに、隣接セル間の干渉と他の形態の電荷リークがメモリセル構造の設計にとってより重要になりつつある。
【0030】
図13はワード線210に沿った従来の浮遊ゲート素子の断面を示し、浮遊ゲート素子を改良する設計上の傾向を例示する。図13に示した構造では、複数のメモリセルのチャネルが、半導体211上に形成される。誘電体トレンチ212によって半導体内の各列は互いから分離されている。トンネル障壁構造体213が半導体211上に形成されている。浮遊ゲート214がトンネル障壁構造体213上に形成されている。この例では酸化シリコン層215、窒化シリコン層216、及び酸化シリコン層217からなる平坦な又はほぼ平坦なポリ間誘電体が、ワード線210に沿って浮遊ゲート構造群の上面に亘って延在している。図13に示した平坦な又はほぼ平坦な素子の問題点は、ゲートカップリング比GCRが非常に低いことである。ゲートカップリング比を改善するために、ワード線界面に対する浮遊ゲートの容量を大きくする従来にないポリ間誘電構造体を使用することが提案されている。例えば、このポリ間誘電構造体(この例では215〜217)を高κ誘電体材料で置き換えることができる。例えば、酸化アルミニウム又は他の材料が提案されている。別の高κポリ間誘電構造体は、酸化アルミニウム等の高κ誘電体材料と、底部バッファ層、又は底部及び上部バッファ層として酸化シリコンとを含む多層スタックからなる。
【0031】
図13に示したような平坦な浮遊ゲート素子の問題点は、プログラミング中、強い電界が存在するので電荷がポリ間誘電体内に容易に注入されることである。従って、ポリ間誘電体は電荷を容易に捕捉する。しかし、ポリ間誘電体内に残された電荷を取除くことは非常に難しく、この素子は消去が困難であるので、フラッシュメモリ素子の多くの用途において非実用的である。
【0032】
図14は、従来のフラッシュメモリ構成の問題点の多くを克服する電荷トラップ・浮遊ゲートメモリ素子のワード線310に沿った断面を示す。図14に示した構造において、メモリセルのチャネルが半導体311上に形成される。例えば注入不純物又は反転領域を使用してワード線の両側にソース端子とドレイン端子が配置されている。誘電体トレンチ312によって半導体内の各列は互いから分離されている。第1トンネル障壁構造体313が半導体311上に形成されている。浮遊ゲート314が第1トンネル障壁構造体313上に形成されており、誘電充填材が浮遊ゲート314の上面が露出した平坦な又はほぼ平坦な構造体を提供する。浮遊ゲート314上に電荷トラップ構造体が形成されている。この電荷トラップ構造体は第2トンネル障壁構造体315と、電荷トラップ層319と、阻止誘電体層320とを含む。本実施形態の第2トンネル障壁構造体315は、バンドギャップ障壁操作材料の多層スタックからなり、この多層スタックは好ましくは約2nm未満の厚みの二酸化シリコン層316、好ましくは約3nm未満の厚みの窒化シリコン層317、及び好ましくは約3.5nm未満の厚みの酸化シリコン層を含む。ワード線310は阻止誘電体層320上に形成されている。このように、浮遊ゲート素子(基本的には領域321)は電荷トラップ素子(基本的には領域322)で上を覆われている。
【0033】
この構造は、プログラミング又は消去のためのバイアス条件下で第2トンネル障壁構造体315が提供するよりも大きなトンネル障壁を提供する第1トンネル障壁構造体313を有することを特徴とする。従って、第1トンネル障壁構造体313と第2トンネル障壁構造体315は一緒に、閾値電圧を増加させるための正ゲートバイアス条件下で浮遊ゲート314内の電子が半導体からこの浮遊ゲートを通って電荷トラップ層319へ移動するのを可能する手段を提供し、一方、読出しのためのバイアス条件下で電子が電荷トラップ層319から浮遊ゲート314を通って半導体311へトンネルするのを防ぐ。プログラミング中、電子が第1トンネル障壁構造体313を通って浮遊ゲート内へトンネルし、プログラミング中、障壁高さが低くなるので、第2トンネル障壁構造体315を通って誘電体電荷トラップ層319内へ掃き出され、この層の誘電体材料内の相対的に深いトラップに電子は捕捉される。第1トンネル障壁構造体313と第2トンネル障壁構造体315との相対的な障壁効果を操作することで、浮遊ゲート314内に電子が実際ほとんど溜まらないようセルを設計することができる。
【0034】
図から分かるように、基板と浮遊ゲート間のトンネル障壁構造体よりも高い効率のトンネル障壁を提供するために、浮遊ゲートメモリ素子のポリ間誘電体を、バンドギャップ操作(BE)を使用する誘電体電荷トラップ構造体で置き換える。代表的な障壁操作方法は、上述のONO構造に似たU字形障壁を有する頂きのある障壁層を含む。電荷トラップ層は、深いトラップにより提供される良好なデータ保持特性と、非常に高いトラップ効率とを有するのが好ましい。約5nm以上の厚みの窒化シリコン層は、これらの特性を提供する代表的な実施形態である。他の実施形態では、ナノ粒子埋込み誘電体、又はAl23、Hf23等の高κ金属酸化物を含む他の材料を窒化シリコンの代りに使用することができる。
【0035】
阻止誘電体層320は低リークであるべきであり、例えば酸化シリコン及び酸窒化シリコンからなる。ワード線(制御ゲート)との界面において、上部誘電体はゲート注入を抑制する高い障壁高さを有するべきである。また、阻止誘電体層320の上部で、バッファ酸化物層の上に高κ層(酸化シリコンバッファ層上の酸化アルミニウム等)を使用すると、阻止誘電体層320内の電界が低下し、ゲート注入が更に抑制される。浮遊ゲート層は比較的薄くてよい(例えば20nm未満)。典型的な実施形態はn+ドープポリシリコンを使用する。非ドープポリシリコン及びp+ドープポリシリコンを使用してもよい。基板と浮遊ゲートの間のトンネル障壁構造体として働く底部トンネル酸化物層のリークは非常に低いことが望ましい。従って、5nm超7nm未満の厚みの二酸化シリコンが好適な底部トンネル障壁構造体である。
【0036】
代表的な実施形態において、メモリセルのゲートとして働くワード線310はp+ポリシリコン(仕事関数は約5.1eV)でできている。n+ポリシリコンを使用してもよい。他の実施形態は、金属、金属化合物、又は金属と金属化合物の組合せ、例えば白金、窒化タンタル、ケイ化金属、アルミニウム又は他の金属又は金属化合物ゲート材料等(例えばTi、TiN、Ta、Ru、Ir、RuO2、IrO2、W、WN等)をゲートに使用する。幾つかの用途では、4eVより高い、好ましくは4.5eVより高い仕事関数を有する材料を使用することが好ましい。ゲート端子として使用するのに適切な様々な高仕事関数の材料が、米国特許第6,912,163号に記載されている。このような材料は通常、スパッタリング又は物理蒸着技術を使用して蒸着され、反応性イオンエッチングを使用してパターンを形成することができる。
【0037】
図14の実施形態において、第1トンネル障壁構造体313は、例えば、その場蒸気生成ISSG(堆積後NOアニール、又は堆積中にNOを加えることによる窒化物形成を伴ってもよい)を使用して形成された酸化シリコンからなる。二酸化シリコンからなる第1トンネル障壁構造体313の厚みは70Å未満で約40Åより大きく、代表的な実施形態では、約50Åである。浮遊ゲート314は従来の浮遊ゲートポリシリコンプロセスを使用して形成され、本明細書の幾つかの実施形態では、その厚みは縮小されている。
【0038】
図14の実施形態において、浮遊ゲート314上の第2トンネル障壁構造体315は、浮遊ゲート314の上面上の、例えばその場蒸気生成ISSG(堆積後NOアニール、又は堆積中にNOを加えることによる窒化物形成を伴ってもよい)を使用して形成された二酸化シリコンからなり正孔トンネル層と呼ばれる第1層316を含む複数の材料の複合体からなる。二酸化シリコンからなる第1層316の厚みは20Å未満、好ましくは15Å以下であり、代表的な実施形態では、10Å又は12Åである。
【0039】
バンドオフセット層と呼ばれる窒化シリコンからなる層317は、二酸化シリコンからなる第1層316上に、例えば680℃でジクロロシランDCS及びNH3前駆体を使用する低圧化学蒸着LPCVDを使用して形成される。或いは、このバンドオフセット層は、N2O前駆体を用いる同様のプロセスを使用して作られる酸窒化シリコンからなる。窒化シリコンの層317の厚みは30Å未満、好ましくは25Å以下である。
【0040】
分離層と呼ばれる二酸化シリコンからなる層318は、窒化シリコンの層317上に、例えばLPCVD高温酸化物HTO蒸着を使用して形成される。二酸化シリコンからなる第2層318の厚みは35Å未満、好ましくは25Å以下である。第1位置における価電子帯エネルギーレベルは、半導体との界面と該第1位置の間の薄い領域を通る正孔トンネル現象を引き起こすのに十分な電界が、該第1位置以降の価電子帯エネルギーレベルを第1位置以降の操作トンネル障壁構造体における正孔トンネル障壁を実効的に無くすレベルに上げるのにも十分であるようなレベルである。逆U字形価電子帯を持つこの構造体は、電界による高速な正孔トンネル現象を可能にし、一方、電界が無いか又はデータ読み出し、隣接セルのプログラミング等の他の動作のための小さな電界が存在する場合、この操作トンネル障壁構造体を通る電荷リークを効果的に防止する。
【0041】
従って、代表的な素子では、この操作トンネル障壁構造体315は、極薄酸化シリコン層O1(例えば18Å以下)、極薄窒化シリコン層N1(例えば30Å以下)、及び極薄酸化シリコン層O2(例えば35Å以下)からなり、価電子帯エネルギーレベルが半導体との界面から15Å以下離れた位置で約2.6eV増加する。該O2層は価電子帯エネルギーレベルがより低く(より高い正孔トンネル障壁)、伝導帯エネルギーレベルがより高い領域によって、N1層を第2オフセット位置(該界面から例えば約30Å〜45Å)で電荷トラップ層から分離する。正孔トンネル現象を引き起こすのに十分な電界は、該第2位置は該界面からより離れているので、第2位置以降の価電子帯エネルギーレベルを正孔トンネル障壁を実効的に無くすレベルに上げる。従って、O2層は電界による正孔トンネル現象又は電子トンネル現象をあまり妨げることがなく、一方、低電界時のリークを阻止する該操作トンネル障壁構造体の能力を向上させる。
【0042】
操作トンネル障壁層の構造のより詳細を、図14A及び図14Bを参照しながら下記に説明する。
【0043】
本実施形態における電荷トラップ層319は、例えばLPCVDを使用して形成された約50Å以上の厚みの窒化シリコンからなり、幾つかの実施形態では例えば70Åもある。他の電荷トラップ材料及び構造、例えば酸窒化シリコン(Sixyz)、シリコンリッチ窒化物、シリコンリッチ酸化物、ナノ粒子埋込みトラップ層等を使用してもよい。様々な電荷トラップ材料が、2006年11月23日公開の米国特許出願公開第2006/0261401号に記載されている。
【0044】
本実施形態における阻止誘電体層320は、二酸化シリコンで、例えば湿式炉酸化プロセスにより窒化物から湿式転化によって形成することができる。他の実施形態は高温酸化物(HTO)又はLPCVDSiO2を使用してもよい。阻止誘電体層の厚みは約50Å以上で、幾つかの実施形態では例えば90Åもある。
【0045】
図14Aは、図14の層316〜318のスタックからなる誘電トンネル構造体の伝導帯及び価電子帯の低電界時のエネルギーレベルの図であり、U字形伝導帯と、逆U字形価電子帯と、読み出し動作のような低いバイアス条件下でのトンネル現象の確率関数とを示す。右側から半導体のバンドギャップが領域30に示され、正孔トンネル層の価電子帯と伝導帯が領域31に示され、オフセット層のバンドギャップが領域32に示され、分離層の価電子帯と伝導帯が領域33に示され、電荷トラップ層の価電子帯と伝導帯が領域34に示されている。負号の付いた円で表わされ電荷トラップ領域34内にトラップされた電子は、3つの領域31、32、33全てにおいてトンネル障壁構造体の伝導帯は、該トラップのエネルギーレベルより高いので、チャネルの伝導帯へトンネルすることができない。電子トンネル現象の確率は、トンネル障壁構造体内のU字形の伝導帯の下で、トラップからチャネルへのエネルギーレベル水平線の上の面積と相関がある。従って、低電界条件時、電子トンネル現象はまず起らない。この障壁構造体は1つの実施形態であり、浮遊ゲートと半導体の間のトンネル障壁構造体と組み合わされて、読み出し時のバイアス条件下の誘電体電荷トラップ層から浮遊ゲートを通り半導体への電子トンネル現象を有効に防止することができる。同様に、領域30内のチャネルの価電子帯内の正孔は、領域31、32、33の全厚みとチャネル界面での高い正孔トンネル障壁高さとによって、電荷トラップ層(領域34)へのトンネリングを阻止される。正孔トンネル現象の確率は、トンネル障壁構造体内の逆U字形の価電子帯の上で、チャネルから電荷トラップ層へのエネルギーレベル水平線の下の面積と相関がある。従って、低電界条件時、正孔トンネル現象はまず起らない。
【0046】
正孔トンネル層が二酸化シリコンからなる代表的な実施形態では、約4.5eVの正孔トンネル障壁高さは正孔トンネル現象を妨げる。窒化シリコンの価電子帯は、チャネルの価電子帯より1.9eV低い。従って、トンネル障壁構造体の全3つの領域31、32、33の価電子帯は、チャネル領域30の価電子帯よりかなり低い。従って、本明細書で説明するトンネル障壁構造体は、半導体との界面にある薄い層(領域31)の比較的大きな正孔トンネル障壁高さと、チャネル表面から2nm未満離れた第1位置での価電子帯エネルギーレベルの増加37とを含むバンドオフセット特性によって特徴付けられる。該バンドオフセット特性は、比較的高いトンネル障壁高さの材料でできた薄い層(領域33)を設けたことによる、チャネルから離れた第2位置での価電子帯エネルギーレベルの減少38を更に含む。これにより価電子帯は逆U字形となる。同様に、これらの材料を選択したことによって、伝導帯はU字形となる。
【0047】
図14Bは、正孔トンネル現象を起こす(図14BでO1層は約15Å厚)ために印加されたトンネル領域31において約−12MV/cmの電界条件下における前記誘電体トンネル構造体のバンド図である。この電界下で価電子帯はチャネル表面から上向きに傾斜している。従って、チャネル表面からあるオフセット距離でトンネル障壁構造体の価電子帯のエネルギーレベルはかなり上昇し、図においてチャネル領域の価電子帯のバンドエネルギーレベルより上に上昇する。従って、チャネルの価電子帯レベルと、トンネルスタックの傾斜した逆U字形価電子帯の間の面積(図14Bの陰を付けた部分)が減少し、正孔トンネル現象の確率が大きく増加する。バンドオフセットは、高電界時、トンネル障壁構造体から領域32のオフセット層と領域33の分離層との阻止機能を実効的に無くし、比較的小さな電界(例えば、E<14MV/cm)で大きな正孔トンネル電流を発生させる。
【0048】
分離層(領域33)はオフセット層(領域32)を電荷トラップ層(領域34)から分離する。これは、低電界時、電子と正孔両方に対する実効的な阻止能力を増加させ、電荷保持特性を向上させる。
【0049】
本実施形態のオフセット層(領域32)は無視できる電荷トラップ効率を持つよう十分に薄い。また、オフセット層は誘電体で、非導電性である。従って、窒化シリコンを使用する実施形態では、オフセット層の厚みは30Å未満、好ましくは約25Å以下であるべきである。
【0050】
正孔トンネル領域31として二酸化シリコンを使用する実施形態では、その厚みは20Å未満、好ましくは15Å未満であるべきである。好適な実施形態では、正孔トンネル領域31は約13Å又は10Å厚の二酸化シリコンであり、上述の窒化プロセスを経て極薄の酸窒化シリコンとなる。
【0051】
本発明の実施形態において、浮遊ゲート314上のトンネル障壁構造体315は、酸化シリコンと酸窒化シリコンと窒化シリコンとの複合体(これらの層間に厳密な遷移はない)が必要な逆U字形価電子帯を持ち、効率的な正孔トンネル現象に必要なチャネル表面から前記オフセット距離での価電子帯エネルギーレベルの変化がありさえすれば、この複合体を使用して実現することができる。また、バンドオフセット構造を提供する他の材料の組合せを使用してもよい。
【0052】
誘電体トンネル障壁構造体315を電子トンネル現象ではなく「正孔トンネル現象」に注目して説明した。これは、本技術はSONOS型メモリの正孔トンネル現象への依存の必要性に関連する問題を解決するからである。例えば、実用的な速度の正孔トンネル現象を可能にするのに十分薄い二酸化シリコンからなるトンネル障壁構造体は、電子トンネル現象によるリークを阻止するのには薄すぎる。しかし、障壁操作の効果は電子トンネル現象の性能を向上させる。電子トンネル現象によるプログラミングと正孔トンネル現象による消去の両方は障壁操作を使用してかなり改善される。例示した障壁構造体は、浮遊ゲートと半導体の間のトンネル障壁構造体と組合されて、プログラミング時の正ゲートバイアス条件下の半導体から浮遊ゲートを通り誘電体電荷トラップ層への電子トンネル現象を可能にすることができる1つの実施形態である。
【0053】
図15は、図14と類似の電荷トラップ・浮遊ゲート構造体のワード線330に沿った断面を示す。この構造体の電荷トラップ構造体は、ワード線方向に隣接するセルの誘電体電荷トラップ構造体同士を絶縁するようパターン形成され、非常に高密度なアレイにおける隣接セル間の電荷移動の可能性が大幅に取除かれている。図15に示した構造において、メモリセルのチャネルが半導体331上に形成される。誘電体トレンチ332によって半導体内の各列は互いから分離されている。第1トンネル障壁構造体333が半導体331上に形成されている。浮遊ゲート334が第1トンネル障壁構造体333上に形成されている。誘電充填体は、浮遊ゲート334の上面が露出した平坦な又はほぼ平坦な構造体を提供する。浮遊ゲート334上に電荷トラップ構造体が形成されている。この電荷トラップ構造体は第2トンネル障壁構造体335と、電荷トラップ層339と、阻止誘電体層340とを含む。本実施形態の第2トンネル障壁構造体335は、障壁操作材料の多層スタックからなる。この多層スタックは好ましくは約2nm未満の厚みの二酸化シリコン層336、好ましくは約3nm未満の厚みの窒化シリコン層337、及び好ましくは約3.5nm未満の厚みの酸化シリコン層338を含む。ワード線330は阻止誘電体層340上に形成されている。本実施形態では、電荷トラップ構造体を形成する誘電体スタックは、ワード線方向とワード線方向に直交する方向両方に沿ってパターン形成され、各浮遊ゲート334上の絶縁された電荷トラップ孤立体を提供する。図15の実施形態におけるワード線方向とビット線方向の電荷トラップ構造体間の絶縁は、高温保存時、誘電体電荷トラップ層における電荷の横方向移動の可能性を低減する。
【0054】
図14と図15の両方の実施形態において、電荷トラップ・浮遊ゲート構造体は平坦な浮遊ゲート素子に似た平坦な構造を有する一方、より良好な信頼性と消去性能を提供する。標準的な浮遊ゲート素子のポリ間誘電体は、非トラップポリ間誘電体である。標準的な浮遊ゲート素子内に電荷がトラップされることは望ましくなく、前述した消去困難状態を引き起こす。図14と図15の構造体において、標準的な浮遊ゲート素子のポリ間誘電体は、記憶状態を確立するメモリセルの電荷の大部分を蓄えるよう構成された電荷トラップ素子で置き換えられている。
【0055】
好適な電荷トラップ構造体は、米国特許出願公開第2007/0268753号に記載されたバンドギャップ操作SONOS素子(BE‐SONOS)に基づいている。この特許出願公開は、プログラム及び消去バイアス条件時、比較的厚い二酸化シリコンの第1トンネル障壁構造体313、333より小さいトンネル障壁を提供する非常に効率的なトンネル障壁構造体を提案している。注入された電荷(正孔又は電子)の大部分が浮遊ゲートから誘電体電荷トラップ層319、339内の深いトラップに掃き出されるので、高閾値状態でも浮遊ゲートはほとんど電荷がない中性の状態である。
【0056】
代表的な実施形態では、第1トンネル障壁構造体(図14の313)は、5nm超7nm未満の厚みの二酸化シリコン層からなる。これは、第2トンネル障壁構造体(図14の315)のバンドギャップ操作トンネル障壁層のプログラム及び消去バイアス条件時の障壁高さに寄与する実効的な厚みに比べて比較的厚い。しかし、典型的な浮遊ゲート素子において、トンネル誘電体の厚みは、浮遊ゲート内の電荷蓄積によるリークの確率が増加するので通常7nmを超える。
【0057】
1つの実施例では、浮遊ゲート上のBE‐SONOS型電荷トラップ構造体の場合、二酸化シリコン層316は約13Å厚、窒化シリコン層317は約20Å厚、酸化シリコン層318は約25Å厚、電荷トラップ誘電体層319は約50Å厚の窒化シリコン、阻止誘電体層320は約50Å厚の二酸化シリコンであってよい。しかし、電荷トラップ誘電体層319の厚みは70Å以上もあってよい。また、阻止誘電体層320の厚みは、二酸化シリコンの場合、70Å以上もあってよい。このスタックの全厚みは、動作電圧を決める1つのパラメータである。従って、より大きな全厚みはより大きな動作電圧を必要とする。
【0058】
ワード線310は通常、ポリシリコンの構造体である。好適な実施形態では、消去動作時のゲートからの注入を抑えるために、P+ドープポリシリコン等のより高い仕事関数の材料が好ましい。より高い仕事関数の材料をポリシリコンワード線と電荷トラップ構造体の界面、又はポリシリコンワード線の代りに使用することができる。そのような材料はTaN、WN、Pt、及びその他を含む。
【0059】
図14を参照して説明したメモリセルのプログラム及び消去性能のシミュレーション結果を図16〜図19A、図19Bに示す。シミュレーションされたセルにおいて、第2トンネル障壁層は13Å厚の二酸化シリコン層316と、20Å厚の窒化シリコン層317と、25Å厚の酸化シリコン層318とを含む。電荷トラップ誘電体層319は50Å厚の窒化シリコン、阻止誘電体層320は50Å厚の二酸化シリコンであった。第1トンネル障壁構造体は50Å厚の二酸化シリコンであった。浮遊ゲートはポリシリコン層であり20Å以下もの薄さが可能である。100〜1000Åの範囲の厚いポリシリコンは、本明細書に記載された利点を提供する。しかし、非常に高密度なアレイを製造するために、ポリシリコン層は100Å(10nm)未満の厚みであることが好ましい。
【0060】
図16はファウラー・ノルトハイムトンネル現象を引き起こすセルのゲート・基板間プログラムバイアス下で時間に対する閾値電圧の変化を示すグラフである。ここで、バイアス電圧はトレース400では+21V、トレース401では+20V、トレース402では+19V、トレース403では+18Vである。従って、本メモリセルを妥当なプログラムバイアス電圧で、妥当な時間でプログラムすることができる。
【0061】
図17は+21Vのプログラムバイアス下で時間に対する誘電体電荷トラップ層内の計算されたトラップ電子密度Qtrap(トレース404)と、浮遊ゲート内の計算されたトラップ電子密度QFG(トレース405)とを示すグラフである。このシミュレーションは誘電体電荷トラップ層内に捕捉された電荷の密度は浮遊ゲート内に捕捉された電荷の密度よりずっと大きいことを示す。これは、浮遊ゲートと誘電体電荷トラップ層の間のバンドギャップ操作トンネル障壁層のトンネル効率は、基板と浮遊ゲートの間のトンネル障壁層のものよりずっと良いからである。
【0062】
図18はファウラー・ノルトハイムトンネル現象を引き起こすセルのゲート・基板間消去バイアス下で時間に対する閾値電圧の変化を示すグラフである。ここで、バイアス電圧はトレース410では−21V、トレース411では−20V、トレース412では−19V、トレース413では−18Vである。従って、本メモリセルを妥当な消去バイアス電圧で、妥当な時間で消去することができる。プログラミング挙動はプログラミング電位に対して直線状であり、段階増加パルスプログラミングISPP傾きはほぼ1である。
【0063】
図19は−21Vの消去バイアス下で時間に対する誘電体電荷トラップ層内の計算されたトラップ電子密度Qtrap(トレース415)と、浮遊ゲート内の計算されたトラップ電子密度QFG(トレース414)とを示すグラフである。このシミュレーションは誘電体電荷トラップ層内に捕捉された電荷は急速に取除かれ、誘電体電荷トラップ層内に捕捉された正孔の密度は浮遊ゲート内に捕捉された正孔の密度よりずっと大きいことを示す。これは、浮遊ゲートと誘電体電荷トラップ層の間のバンドギャップ操作トンネル障壁層のトンネル効率は、基板と浮遊ゲートの間のトンネル障壁層のものよりずっと良いからである。このシミュレーションは、長い消去時間後、ポリシリコンワード線からのゲート注入が発生するために消去飽和状態を示す。
【0064】
このシミュレーションは誘電体電荷トラップ層内に捕捉された電荷は急速に取除かれ、誘電体電荷トラップ層内に捕捉された正孔の密度は浮遊ゲート内に捕捉された正孔の密度よりずっと大きいことを示す。
【0065】
図17〜図19に示したシミュレーションが例示するように、本明細書に記載された電荷トラップ・浮遊ゲートメモリセルは、従来の素子とは異なる新しい動作状態を提供する。この浮遊ゲートはチャネル上に等電位領域を確立し、チャネルに亘る閾値分布を制御する。トラップ電荷密度は誘電体電荷トラップ層内で不均一であったとしても、チャネルは等電位導電体である浮遊ゲートによって制御される。従って、この素子は、プログラム及び消去動作時の電流‐電圧曲線においてほぼ理想的な平行移動を示す。これは素子の縁における局所的電荷トラップ、又は浅いトレンチ絶縁構造体の縁の構成によって制御されていないことによる結果である。従って、従来の電荷トラップ誘電体メモリセルのエッジ効果問題に耐性がある。
【0066】
図17〜図19に示したシミュレーションが例示するように、注入された電荷の大部分は浮遊ゲート内ではなく誘電体電荷トラップ層内に蓄えられる。この結果、誘電体電荷トラップ層内の深いトラップに電荷は蓄えられ、良好なデータ保持と基板誘起リーク電流SILCに対する良好な耐性を提供する。また、浮遊ゲートを形成するために使用されるポリシリコン層は電荷を少量しか蓄えないので、浮遊ゲートと基板の間の誘電体トンネル障壁層の厚みを、例えば浮遊ゲートフラッシュメモリの場合に通常必要な7nmより小さくすることができる。上述したように、シミュレーションしたセルは、浮遊ゲートと基板の間の約5nm厚のトンネル障壁構造体を使用した。
【0067】
従って、この電荷トラップ浮遊ゲートメモリ素子は、浮遊ゲート技術と電荷トラップ素子技術の両方の良好な特徴を結合する。また、この構造体を、これら2つの従来タイプのフラッシュメモリ素子のスケーリング及び信頼性問題を解決するために使用することができる。
【0068】
図20〜図24は、電荷トラップ浮遊ゲートメモリセルを使用するNANDフラッシュメモリアレイを製造するためのプロセスフローの実施形態を例示する。この製造プロセスの実施形態の第1段階が図20に例示されている。図20では材料群のスタックが半導体基板500上に形成されている。先ず、トンネル障壁構造体501(この例では5nm超7nm未満の厚みの二酸化シリコン層からなる)が基板500の表面上に形成される。次にポリシリコン層502がトンネル障壁構造体501上に形成される。代表的な実施形態のポリシリコン層は100nm未満の厚みであり、素子の大幅なスケーリングを実現するためにおよそ10nm以下の厚みであってもよい。図20に示した実施形態では、次に硬いマスク層503がポリシリコン層502上に形成される。硬いマスク層503が窒化シリコンからなる幾つかの実施形態では、この窒化シリコンの厚みは約100nmであってもよい。
【0069】
図21はこの製造プロセスの次の段階を例示する。この段階では、光リソグラフィプロセス又は他のパターン描画プロセスをトレンチ絶縁構造体の位置を画定するために使用することができる。次にこのパターンに従ってトレンチ群をエッチング形成する。エッチングは硬いマスク層503、浮遊ゲートポリ層502、及びトンネル障壁構造体501を通って基板500内に進み、メモリセル列を分離する基板トレンチ群を画定する。次にこれらのギャップは、例えば高密度プラズマHDP化学蒸着技術を使用して二酸化シリコン又は他の誘電体材料で充填され、トレンチ間の硬いマスク層上の帽子形構造体513、514と、基板500内に延びるトレンチ絶縁構造体510、511、512が形成される。幾つかの実施形態では、トレンチ絶縁構造体は約200nmだけ基板内に延びている。
【0070】
図22は本製造プロセスの次の段階を例示する。図22の実施形態は、例えば化学機械研磨CMPによりトレンチ絶縁蒸着プロセスからの余分な酸化物を取除くことと、フッ化水素溶液浸漬エッチングにより硬いマスク層と浮遊ゲートポリ層502上の酸化物とを取除くこととを含む。
【0071】
図23は本製造プロセスの次の段階を例示する。この段階では、電荷トラップ構造体を構成する誘電体層536〜540とワード線ポリシリコン層530とが形成される。本実施形態では、好ましくは約2nm未満の厚みの二酸化シリコン層536、約3nm未満、好ましくは約2.5nm以下の厚みの窒化シリコン層537、及び約3.5nm未満、好ましくは約3nm以下の厚みの酸化シリコン層538が形成され、第2トンネル障壁構造体を提供する。約5〜7nm厚の窒化シリコン層539が形成され、電荷トラップ層を提供する。次に約5〜9nm厚の二酸化シリコンからなる阻止誘電体層540が形成される。ワード線ポリシリコン層530が阻止誘電体層540上に形成される。
【0072】
次に層530はワード線形成のためのリソグラフィステップ又は他の描画ステップの準備として洗浄される。ワード線パターンに従って少なくとも浮遊ゲートポリシリコン層502までエッチングされ、分離された浮遊ゲート502‐1、502‐2が形成されメモリセルの横列が作製される。
【0073】
図24はメモリセルの横列に沿って配置された第1ワード線615‐1と第2ワード線615‐2とを備える得られた構造体の一部を例示する簡略斜視図である。次にワード線の間に不純物を注入し、ワード線の両側にソース領域とドレイン領域を画定することで、ソースとドレイン端子が形成され、浮遊ゲート同士を分離するためのワード線間への誘電体の充填、金属層パターン形成などのプロセスを実行することで素子が完成する。図24において、この構造体は、異なる材料と厚みで作られる浮遊ゲート要素601と誘電体電荷トラップ要素602とをそれぞれ単一のユニットとして示すために簡略化されている。例えば図27、図28を参照。
【0074】
得られた素子のほぼ平坦な構造は、製造プロセスの最小フィーチャーサイズの縮小に伴うメモリセルのピッチのスケーリングを可能にする。また、浮遊ゲートと誘電体電荷トラップ要素との組合せ、又は言い換えると、ポリ間誘電構造体を誘電体電荷トラップ要素で置き換えることは従来のいかなる素子とも異なる。上述した実施形態において、電荷トラップ要素は、浮遊ゲートから電荷トラップ層へのトンネル効率が基板と浮遊ゲート間のものよりずっと良くなるよう構成されている。従って、この構造体における使用に、バンドギャップ操作トンネル障壁構造体は適している。また、電荷の大部分が誘電体電荷トラップ層内に蓄えられるメモリセルを提供することで、本素子の良好な保持特性と信頼性が実現される。また、本素子のチャネルは等電位浮遊ゲートによって直接制御される。これは通常のMOSFETと同様のDC特性を提供する。
【0075】
図24に示したようなセルのチャネル領域は、ワード線615‐1の幅で規定されるソース領域とドレイン領域(不図示)間の長さを有する。この長さは注入プロセス時の不純物の拡散によって通常縮小する。チャネルの幅WはSTI構造体511、512間の距離によって規定される。チャネルのこの長さと幅は、ワード線615‐1の幅にSTI構造体間の距離をかけた値以下であるチャネル活性領域面積を確立する。
【0076】
例示の構造体の浮遊ゲート要素601はほぼ平坦で、その上面と底面は面積がほぼ等しい。浮遊ゲート要素601の面積は、STI構造体間の距離とワード線の幅を設定するエッチングプロセスによって決定される。浮遊ゲート要素601の上面と底面は面積がほぼ等しく、ワード線の幅とSTI構造体間の距離の積にほぼ等しい。同様に、本実施形態のセルの上部接触面の面積は、STI構造体間の距離とワード線の幅を設定するエッチングプロセスによって決定される。従って、セルの上部接触面として働くワード線の底面の面積は、この導電層の上面の面積(ワード線の幅とSTI構造体間の距離の積で規定される)とほぼ等しい。
【0077】
図24の斜視図から分かるように、45nm未満の重要なフィーチャーを形成するプロセスによって製造された本明細書に記載の典型的なメモリセルのチャネル領域は、45nm未満のソース・ドレイン間長さとこの長さに直交する45nm未満の幅を有する。
【0078】
30nm未満の重要なフィーチャーを形成するプロセスによって製造された代表的な実施形態は、30nm未満のソース・ドレイン間長さとこの長さに直交する30nm未満の幅を有する。多層スタックは約20nm以下の実効酸化物厚みを有し、チャネル領域は長さに直交する多層スタックの実効酸化物厚みの1.5倍未満の幅を有する。
【0079】
代表的な実施形態では、メモリセルのチャネル幅Wは45nm未満である。メモリセルの電荷トラップ要素602の実効酸化物厚みEOT(実際の厚みに二酸化シリコンの誘電率をその材料の誘電率で割ったものをかけた値)はおよそ15〜25nmであってもよい。この構造体を有するメモリセルの場合、チャネル幅は、メモリセルの電荷トラップ要素602の実効酸化物厚み(トンネル障壁構造体、電荷トラップ構造体、及び上部誘電体層の組合せのEOTとして計算される)の約1.5倍未満であってもよく、メモリセルの実効酸化物厚みにほぼ等しいのが好ましい。メモリセルのEOT未満で20nm以下もの小さいチャネル幅を持つ実施形態は、フォトレジストトリミング技法又は位相シフトマスク又は他のサブリソグラフィ描画技術を使用して実現することができる。
【0080】
幾つかの実施形態では、メモリセルはNANDアレイに構成され、45nm未満、好ましくは多層スタックのEOTにほぼ等しいチャネル幅を有する。
【0081】
本明細書に記載されたメモリセルは他のアレイ構造にも構成することができる。例えば、本発明の電荷トラップ・浮遊ゲートメモリセルを使用するアレイ構造はNOR構成やAND構成で実現されてもよい。また、本発明の電荷トラップ・浮遊ゲートメモリセルを使用するメモリアレイは、例えば同時係属の米国特許出願公開第2008/0175053号(特許出願第12/056,489号、2008年03月27日付出願)に記載されているように薄膜トランジスタTFT技術及びシリコン・オン・絶縁体技術を使用して実現することができる。この出願を本明細書に援用する。
【0082】
製造プロセスは、浮遊ゲート用の薄いポリシリコン層とほぼ平坦なポリ間誘電体電荷トラップ構造体とを提供するために変更されている以外は従来の浮遊ゲートフラッシュメモリの製造プロセスと非常に類似している。従って、様々なアレイ構造に容易に適応可能であることは理解されるべきである。また、電荷トラップ・浮遊ゲートメモリ素子はp‐チャネル技術及びn‐チャネル技術の両方で実現できることは理解されるべきである。
【0083】
図25は電荷トラップ浮遊ゲートCTFGメモリセルアレイを備えた集積回路の簡略図である。集積回路1950は本明細書に記載された半導体基板上の不揮発性CTFGメモリセルのメモリアレイ1900を備える。アレイ1900のメモリセルは並列、直列、又は仮想グラウンドアレイに相互接続されてよい。行デコーダ1901は、メモリアレイ1900の行に沿って配置された複数のワード線1902に結合されている。本発明のメモリセルはNANDアレイ、NORアレイ、又は他のタイプのアレイ構造に構成されてよい。列デコーダ1903は、メモリアレイ1900の列に沿って配置された複数のビット線1904に結合されている。アドレスはバス1905を介して列デコーダ1903と行デコーダ1901に供給される。ブロック1906のセンスアンプとデータ入力部はデータバス1907を介して列デコーダ1903に結合されている。データは集積回路1950の入出力ポート、又は集積回路1950内又は外の他のデータ源からブロック1906のデータ入力部にデータ入力線1911を介して供給される。データはブロック1906のセンスアンプから集積回路1950の入出力ポート、又は集積回路1950内又は外の他のデータ行き先へデータ出力線1915を介して供給される。バイアスモードステートマシン1909はバイアスモード供給電圧1908、例えば消去検査電圧、プログラム検査電圧等の印加と、メモリセルのプログラム、消去、読み出しのモード群とを制御する。このアレイは集積回路上で他のモジュール、例えばプロセッサー、他のメモリアレイ、プログラム可能ロジック、専用ロジック等と結合されてよい。
【0084】
図26は本発明のメモリセルを周辺回路に使用されるCMOS素子と集積化することができる効率的な方法を例示する。図26には、図23に示したようなメモリセルが同じ符号を使用して示されている。右側に周辺部MOSFETが例示されている。図から分かるように、周辺部MOSFETは、メモリセルのチャネル/ビット線構造体と同時に描画形成することができるチャネル/半導体550を有する。同様に、周辺部MOSFETは、トンネル障壁構造体501がメモリアレイ領域に形成されるのと同時に設けることができるゲート誘電体層551を有する。プロセスを統合するために、浮遊ゲート502‐1上の電荷トラップ構造体を形成する層536〜540のスタックは、アレイ領域と周辺領域の両方を覆う被覆プロセスにおいて形成される。周辺領域において、リソグラフィプロセス又は他の描画プロセスを使用して開口600等のコンタクト開口を層536〜540のスタックに貫通形成する。アレイのワード線530用のポリシリコン堆積時、ポリシリコンはコンタクト開口を充填し、第1ポリシリコン層(メモリセルの浮遊ゲートを形成する)を第2ポリシリコン層(メモリセルのワード線と、周辺部MOSFETのトランジスタゲート及び配線を形成する)に接続する。従って、この製造プロセスはメモリセルと周辺回路を完全集積化するために、コンタクト開口600を形成するパターン形成ステップの追加を必要とするだけである。得られるMOSFETは、メモリアレイにおける局所ビット線を広域金属ビット線に結合する局所ビット線選択トランジスタとしても使用することができる。
【0085】
周辺部CMOS回路はしばしば複数のゲート酸化物厚みを必要とする。素子上に先ず厚い酸化物を形成し、厚い酸化物を必要とする領域を覆い、該領域外の厚い酸化物を除去する等の技法により、厚いゲート酸化物と薄いゲート酸化物を1つのプロセスで作製することができる。厚い酸化物を除去後、トンネル障壁構造体501、ゲート誘電体層551等の薄い酸化物を成長させることができる。厚い酸化物の厚みは薄い酸化物の成長中ほとんど変化しない。
【0086】
図27はバッファ層640と高κキャップ層641とを含むスタックからなる本実施形態の阻止誘電体層を提供するために、電荷トラップ誘電体要素602が図14の電荷トラップ誘電体スタック322から変更された別の電荷トラップ浮遊ゲートメモリセルを例示する。図27では適当である場合、図14内の符号と同じ符号を使用している。本明細書では高κは7を超える誘電率(Al23、HfO2、ZrO2、La23、AlSiO、HfSiO、ZrSiO等を含む材料が有するような)を指す。
【0087】
二酸化シリコンでできたバッファ層640は、湿式炉酸化プロセスにより窒化物から湿式転化によって形成することができる。他の実施形態は高温酸化物(HTO)又はLPCVDSiO2を使用してもよい。酸化アルミニウムキャップ誘電体層641は原子蒸着とその後の膜を強化するための約900℃で60秒間の急速熱アニールにより作ることができる。
【0088】
これらのプロセスを使用して、欠陥のほとんどない酸化シリコン層と、酸化アルミニウム等の高κ高伝導帯オフセット材料のキャップ層とを組み合わせることで、優れた保持特性と非常に低い消去飽和電圧を持つ阻止誘電体層が提供される。従って、EOTを低減し、動作電圧を下げることができる。
【0089】
また、酸化シリコン(κ1=3.9)と酸化アルミニウム(κ2=約8)の組合せの場合、阻止誘電体層の上部層641の厚みと底部層640の厚みの比は2未満が可能であることが分かった。一般に、上部層641は底部層640の厚みの誘電率比(8/3.9)倍より小さい厚みを有してもよい。従って、本明細書に記載された阻止誘電体層は、電荷トラップ誘電体層に接触する誘電率κ1の第1層640と、制御ゲートに接触し第1層のκ1より高い誘電率κ2を有し第1層の厚みのκ2/κ1倍未満の厚みの第2層641とを含む。Al23の障壁高さはSiO2とほぼ同じであり、N+ポリシリコンゲートとの酸化アルミニウムの電子障壁高さ又は伝導帯オフセットは約3.1eVである。一般に、本実施形態によれば、第2層は第1層のκ1より高い誘電率κ2を有し、第1層の厚みのκ2/κ1倍未満の厚みを有する。図27の構造は負バイアス・ファウラー・ノルトハイム消去時、ゲート注入電流を下げ、一方、良好な保持特性を維持する。
【0090】
図28は別の実施形態を示す。この実施形態は図14のスタックの代わりに電荷トラップ誘電体スタック652を使用し、トンネル障壁構造体315と阻止誘電体層320とを置き換える。第2トンネル障壁構造体650は、従来のMONOS素子で使用するような単一層トンネル酸化物、又は他のトンネル障壁構造体からなる。この実施形態では、トンネル障壁構造体650は、例えば3nm未満の厚みの二酸化シリコンを使用することで、上述したように第1トンネル障壁構造体313より小さいトンネル障壁を持たなければならない。また、阻止誘電体層651は酸化アルミニウム等の高κ材料でできている。ワード線653は、図14のワード線310と違いTaNまたは他の高仕事関数の材料でできている。MANOS/TANOS構造体として通常知られるこの構造体は浮遊ゲート上のポリ間誘電体の代りに設けられる。
【0091】
図29〜図38はFG‐BE‐SONOS素子の試験結果を示す。この素子において、第1トンネル障壁構造体はその場蒸気生成ISSGにより形成された酸化シリコン(約54Å厚)であり、浮遊ゲートは非ドープポリシリコン(約40Å厚)であり、第2トンネル障壁構造体はそれぞれ約13Å、20Å、25Å厚のO1/N1/O2からなるバンドギャップ操作構造体であり、電荷トラップ層は約50Å厚の窒化シリコンであり、阻止誘電体層は約40Å厚の酸化シリコンである。自己整合STI構造体は浮遊ゲートポリをSTI方向及びWL方向両方に絶縁するために形成された。試験した素子は、エッジ効果なく本質的な特性の測定と本構造体の実現性の実証を可能にする大面積素子であった。
【0092】
図29は+15V〜+22Vの範囲の+FNプログラミングバイアス下で試験した結果を示す。本素子の初期閾値電圧Vtは約2.2Vであった。試験サンプルの閾値は約6Vのレベルで飽和した。図から分かるように、本セルは+18V未満のバイアス条件下で急速に10ms以内に4V超のレベルまでプログラム可能である。より速いプログラム速度はより高い電界により達成できる。
【0093】
図30は−17V〜−20Vの範囲の負FN消去バイアス下で試験した結果を示す。消去状態は初期閾値より約2V低くできた。本素子の消去飽和は約0Vの閾値電圧で発生した。本素子は大きさが18V未満の負電圧バイアス条件下で100ms以内に1V未満の閾値レベルまで消去可能である。より速い消去速度はより高い電界により達成できる。
【0094】
図31は被試験素子の+FN段階増加パルスプログラミングISPP(17〜20Vの範囲の開始プログラムパルス大きさで100μsパルス/インクリメントを使用)の結果を示す。この例ではISPP傾きは約0.7であった。概ね、被試験素子は6Vを超える閾値電圧を達成するためにおよそ25Vの比較的高い電圧を必要とした。また、ISPPプログラミングは、およそ12Vのプログラム電位でオンする標準的なバンドギャップ操作SONOSに比べて16V超の比較的高い電位でオンした。この比較的高い電圧動作は本構造体のより大きな実効酸化物厚みによるものである。この実効酸化物厚みはBE‐SONOS構造体の約13nmのEOTと、浮遊ゲート下の約5nmの二酸化シリコンからなるトンネル障壁構造体のEOTと、空乏層化している浮遊ゲートのEOTとを含む。
【0095】
図32、図33はそれぞれ約0.2μの長さと約0.07μの幅を持つ第1セルと、約0.2μの長さと約0.15μの幅を持つ第2セルとのドレイン電流対ゲート電圧のIV曲線を例示する。試験において、ドレインと基板は接地され、ソースは約0.5Vの電位に結合された。初期閾値電圧時のIV曲線は図に描くことができないが、約2.2Vの閾値から始まり他の全ての曲線にほぼ平行である。これらの図のデータから分かるように、プログラム動作及び消去動作中、IV曲線は平行に移動する。
【0096】
図34は被試験メモリセルのサブ閾値シフトを例示する。図から分かるように、大きな範囲の閾値電圧に亘ってサブ閾値シフトSSの変化は非常に小さい。
【0097】
図35は閾値電圧に亘る相互コンダクタンスgmの変化を例示する。サブ閾値シフト及び相互コンダクタンスの変化は標準的なBE‐SONOSセルより小さい。この効果は、電荷トラップ浮遊ゲートセルの浮遊ゲートが等電位面を提供し、標準的な誘電体電荷トラップセルに発生するエッジ効果を打ち消すことの結果であると考えられる。
【0098】
図36はチャネルホット電子(CHE)プログラミングバイアス(それぞれ8Vと4Vから始まる段階状ゲート電圧と段階状ドレイン電圧を使用し1μsパルスで0.1Vステップ)下で試験したセルの性能を例示する。プログラム後、セルに逆読み出し及び順読み出しを行った。
【0099】
図37は−FNトンネリングによる消去状態の場合と、ドレイン側からのチャネルホット電子プログラミングによるプログラム状態の場合のゲート電圧対ドレイン電流を対数目盛で示す。図38はゲート電圧対ドレイン電流を0〜5×10-5アンペアの範囲のリニア目盛で示す。図36〜図38は順読み出し及び逆読み出しが基本的に同じ電流になることを示す。これは薄い浮遊ゲート(この例では約40Å厚)が、これがなければ誘電体電荷トラップ層で発生するであろう非均一注入からチャネルを守ることを暗に示す。また、チャネルホット電子プログラミングは非常に高速に7Vを超える閾値電圧までプログラムするのと、4Vを超えるメモリウィンドウとを可能にする。チャネルホット電子プログラミングはファウラー・ノルトハイムプログラミングよりずっと効率的でありうる。
【0100】
図39、図40は第1及び第2トンネル障壁構造体が共に約54Å厚の二酸化シリコン層である電荷トラップ浮遊ゲート素子の試験結果を例示する。浮遊ゲート層、電荷トラップ層、及び阻止層はバンドギャップ操作構造の第2トンネル障壁構造体を備える被試験素子のものと同じであった。図39はISPPプログラム動作の場合の本素子の閾値電圧対プログラム電圧プロットを例示する。図から分かるように、本素子は実質的にプログラムすることができなかった。図40は−20Vの消去電圧の場合の閾値電圧対消去時間を示す。この図はこのセルは消去できなかったことを示す。この試験結果に基づいて、電荷トラップ層内への電荷トンネリングを促す一方、リークを防止し良好な耐久特性を可能にするために、第2トンネル障壁構造体は上述したように第1トンネル障壁構造体と異なるトンネリング挙動を有しなければならないと結論することができる。
【0101】
要するに、説明したように、ポリ間誘電体が、電荷トラップ素子として働くよう構成された平坦な又はほぼ平坦な誘電体スタックで置換され、浮遊ゲートと該電荷トラップ素子の間のトンネル効率が、チャネルと浮遊ゲートの間より大きい薄い浮遊ゲートメモリセルからなるフラッシュメモリ素子を提供することができる。このメモリセル内に蓄えられる電荷の大部分は、誘電体電荷トラップ素子内に捕捉される。しかし、チャネル動作は捕捉された電荷とチャネルの間の等電位浮遊ゲート構造体によって制御され、MOSFET又は従来の浮遊ゲートセルと同様のDC性能を提供する。このメモリセルはNAND、NOR、仮想グラウンドAND構成を含む多くのタイプのアレイ構成に適応可能である。本素子はn‐チャネル技術及びp‐チャネル技術の両方で実現できる。また、本素子構成は電荷トラップ要素に隣接するトレンチ絶縁構造体によって引き起こされるエッジ効果を避け、良好なデータ保持特性とトンネル酸化物欠陥への耐性を提供し、従来の浮遊ゲートフラッシュメモリ技術に容易に統合される製造ステップを使用して作ることができる構造体を可能にする。
【0102】
上記において好適な実施形態と詳細な実施例を参照しながら本発明を開示したが、これらの実施例は限定する意図ではなく、例示することを意図していることは理解されるべきである。本明細書に記載された製造ステップと構造体は、集積回路全体の完全な製造プロセスフローをカバーしていないことは理解されるべきである。本発明は既存の又は開発予定の様々な集積回路製造技術と一緒に実施することができる。本発明の思想と添付の請求項の範囲内に入る変更及び組合せを当業者は容易に想到するであろうことは考慮されている。
【符号の説明】
【0103】
100 メモリセル
101 導電層(浮遊ゲート)
102 ソース
103 ドレイン
104 半導体基板
105 トンネル障壁構造体
106 電荷トラップ構造体
107 上部誘電構造体
108 上部導電層
310 ワード線
311 半導体
313 第1トンネル障壁構造体
314 浮遊ゲート
315 第2トンネル障壁構造体
319 電荷トラップ層
320 阻止誘電体層
322 電荷トラップ誘電体スタック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリセルであって、
チャネル領域で分離されたソース領域及びドレイン領域が表面に形成された半導体基板と、
該基板の該表面上で該チャネル領域の上方に配置された第1トンネル障壁構造体と、該第1トンネル障壁構造体上で該チャネル領域の上方に配置された浮遊ゲートと、該浮遊ゲート上の第2トンネル障壁構造体と、該第2トンネル障壁構造体上で該チャネル領域の上方の電荷トラップ誘電体層と、該電荷トラップ誘電体層上に配置された上部誘電構造体とを含む多層スタックと、
該上部誘電構造体上で該チャネル領域の上方に配置された上部導電層と
を備え、
該メモリセルをプログラムするバイアス条件下及び消去するバイアス条件下で、該第2トンネル障壁構造体は該第1トンネル障壁構造体と異なる電子トンネル現象確率関数を有するメモリセル。
【請求項2】
前記第1トンネル障壁構造体は7nm未満4nm超の厚みの酸化シリコン層からなる請求項1に記載のメモリセル。
【請求項3】
前記第2トンネル障壁構造体は複数の材料の組合せからなり、該チャネル表面近傍における相対的に低い価電子帯エネルギーレベルと、該チャネル表面から第1距離における価電子帯エネルギーレベルの増加と、該チャネル表面から2nm超の第2距離における価電子帯エネルギーレベルの減少とを確立するよう構成されている請求項1に記載のメモリセル。
【請求項4】
前記第2トンネル障壁構造体は、前記浮遊ゲートに隣接し18Å以下の厚みの第1酸化シリコン層と、該第1酸化シリコン層上の30Å以下の厚みの窒化シリコン層と、該窒化シリコン層上の35Å以下の厚みの酸化シリコン層とを備える請求項1に記載のメモリセル。
【請求項5】
前記第2トンネル障壁構造体は、障壁操作トンネル障壁構造体からなる請求項1に記載のメモリセル。
【請求項6】
前記浮遊ゲートは、10nm未満の厚みの半導体層からなる請求項1に記載のメモリセル。
【請求項7】
前記上部誘電構造体は、前記電荷トラップ誘電体層に接触する誘電率κ1の第1層と、前記上部導電層に接触し該第1層のκ1より高い誘電率κ2を有し該第1層の厚みのκ2/κ1倍未満の厚みの第2層とを備える請求項1に記載のメモリセル。
【請求項8】
前記上部誘電構造体の前記第1層は、酸化シリコン又は酸窒化シリコンからなり、該上部誘電構造体の前記第2層は、酸化アルミニウムからなり、前記電荷トラップ誘電体層は窒化シリコン及び酸窒化シリコンのうち少なくとも1つからなる請求項7に記載のメモリセル。
【請求項9】
前記上部誘電構造体の前記第2層の前記誘電率κ2は7より大きい請求項7に記載のメモリセル。
【請求項10】
前記電荷トラップ誘電体層は窒化シリコンからなる請求項1に記載のメモリセル。
【請求項11】
該メモリセルに結合された制御回路を更に備え、
該制御回路は、前記チャネルと前記浮遊ゲートの間及び該浮遊ゲートと前記電荷トラップ構造体の間のトンネル現象を引き起こすバイアス条件を該メモリセルに印加しトラップされた負電荷を増加させるプログラムモードと、該電荷トラップ構造体と該浮遊ゲートの間及び該浮遊ゲートと該チャネルの間のトンネル現象を引き起こすバイアス条件を印加しトラップされた負電荷を減少させる消去モードとを含む請求項1に記載のメモリセル。
【請求項12】
メモリセルであって、
表面を有する半導体と、
浮遊ゲートと、該浮遊ゲートの上方の電荷トラップ誘電体層と、該電荷トラップ誘電体層上に配置された上部誘電構造体と、閾値電圧を増加させる正ゲートバイアス条件下で電子が該半導体から該浮遊ゲートを通って該電荷トラップ誘電体層へ移動するのを可能にする一方、読み出しバイアス条件下で該電荷トラップ誘電体層から該浮遊ゲートを通って該半導体への電子トンネル現象を防ぐ手段とを含む該半導体上の多層スタックと、
該上部誘電構造体上でチャネル領域の上方に配置された上部導電層と
を備えるメモリセル。
【請求項13】
該メモリセルに結合された制御回路を更に備え、
該制御回路は、前記チャネルと前記浮遊ゲートの間及び該浮遊ゲートと前記電荷トラップ構造体の間のトンネル現象を引き起こすバイアス条件を該メモリセルに印加しトラップされた負電荷を増加させるプログラムモードと、該電荷トラップ構造体と該浮遊ゲートの間及び該浮遊ゲートと該チャネルの間のトンネル現象を引き起こすバイアス条件を印加しトラップされた負電荷を減少させる消去モードとを含む請求項12に記載のメモリセル。
【請求項14】
メモリセルであって、
チャネル領域で分離されたソース領域及びドレイン領域が表面に形成された半導体基板と、
該基板の該表面上で該チャネル領域の上方に配置され、7nm未満4nm超の厚みの酸化シリコンからなるゲート誘電体と、
該ゲート誘電体上で該チャネル領域の上方の半導体浮遊ゲートと、
該浮遊ゲート上のトンネル障壁構造体であって、該浮遊ゲートに隣接し18Å以下の厚みの第1酸化シリコン層と、該第1酸化シリコン層上の30Å以下の厚みの窒化シリコン層と、該窒化シリコン層上の30Å以下の厚みの酸化シリコン層とを備えるトンネル障壁構造体と、
該トンネル障壁構造体上の7nm未満4nm超の厚みの窒化シリコンの電荷トラップ層と、
該電荷トラップ層上に配置された阻止誘電構造体と、
該阻止誘電構造体上に配置された上部導電層と
を備えるメモリセル。
【請求項15】
前記阻止誘電構造体は、前記電荷トラップ誘電体層に接触する誘電率κ1の第1層と、前記上部導電層に接触し該第1層のκ1より高い誘電率κ2を有し該第1層の厚みのκ2/κ1倍未満の厚みの第2層とを備える請求項14に記載のメモリセル。
【請求項16】
前記浮遊ゲートは、10nm未満の厚みの半導体層からなる請求項14に記載のメモリセル。
【請求項17】
集積回路を製造する方法であって、
半導体基板上にゲート誘電体層を形成することと、
該基板上のメモリ領域の第1パターン及び周辺領域の第2パターンを含むポリシリコン層のパターンを該ゲート誘電体層上に形成することと、
該ポリシリコン層パターンに接触するトンネル障壁構造体と、該トンネル障壁構造体上の電荷トラップ誘電体層と、該電荷トラップ誘電体層上に配置された上部誘電構造体とを含む多層誘電体スタックを該ポリシリコン層パターン上に形成することと、
該周辺領域内の選択された位置で該ポリシリコン層パターンを露出させるために該多層誘電体スタックを貫通するコンタクト開口を形成することと、
該多層誘電体スタック上に導電体のパターンを形成し、該選択された位置の該コンタクト開口を通って該ポリシリコン層パターンと接触させることと、
該基板表面で該導電体パターンの近傍にソース領域及びドレイン領域を形成することとを含む方法。
【請求項18】
前記トンネル障壁構造体は、プログラム動作バイアス条件下及び消去動作バイアス条件下で前記ゲート誘電体層より高い電荷トンネル効率を有する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ゲート誘電体層は7nm未満4nm超の厚みの酸化シリコンからなる請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記トンネル障壁構造体を形成することは、複数の誘電体層からなるバンドギャップ操作トンネル障壁構造体を形成することである請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記導電体はポリシリコンである請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記メモリ領域内の前記ポリシリコン層パターンをエッチングして浮遊ゲートを設けることを更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記上部誘電構造体は5〜9nmの範囲の厚みの二酸化シリコンからなる請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記上部導電層はポリシリコンからなる請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図30】
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【図31】
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【図34】
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【図35】
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【図39】
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【図40】
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【図29】
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【図32】
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【図33】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2009−290199(P2009−290199A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−99844(P2009−99844)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(599129074)旺宏電子股▲ふん▼有限公司 (27)
【Fターム(参考)】