説明

マスクブランク用レジスト下層膜形成組成物、マスクブランク及びマスク

【課題】マスクブランク及びマスクの作製工程に使用されるレジスト下層膜形成組成物、それを用いて作製されるマスクブランク及びマスクを提供する。
【解決手段】基板上に転写パターンを形成する薄膜及び化学増幅型レジスト膜の順に含むマスクブランクにおいて、該、転写パターンを形成する薄膜とレジスト膜の間のレジスト下層膜を形成するために用いられ、ハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物及び溶媒を含むレジスト下層膜形成組成物である。前記高分子化合物は、少なくとも10質量%のハロゲン原子を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅型レジスト膜の下にレジスト下層膜を有するマスクブランクに使用するレジスト下層膜形成組成物に関する。詳細には、ハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物及び溶媒を含むレジスト下層膜形成組成物に関する。更に、該レジスト下層膜形成用組成物からなるレジスト下層膜が形成されたマスクブランク並びに該マスクブランクを用いて作製されたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細加工技術に用いられるフォトマスク(レチクル)は、透明基板上に形成された遮光性膜をパターニングすることにより製造される。遮光性膜のパターニングは、例えばレジストパターンをマスクとしたエッチングにより行われる。レジストパターンは、例えば電子線リソグラフィー法等により形成される。
【0003】
近年、マスク製造分野において、電子線リソグラフィー法で用いる電子線の加速電圧を50eV以上にすることが検討されている。これは、電子線レジスト中を通過する電子線の前方散乱を少なくするとともに、電子線ビームの集束性を上げることによって、より微細なレジストパターンが解像されるようにする必要があるからである。電子線の加速電圧が低いとレジスト表面やレジスト中で前方散乱が生じ、前方散乱があるとレジストの解像性が悪化する。しかし、電子線の加速電圧を50eV以上とした場合、加速電圧に反比例して前方散乱が減少し前方散乱によってレジストに付与されるエネルギーが減少するため、たとえば10〜20eV等の加速電圧の時に使用していた電子線レジストではレジストの感度が不足し、スループットが落ちてしまう。
【0004】
ここで、マスク製造分野において化学増幅型レジスト膜を使用した場合、例えば下地膜の表面近傍の膜密度が比較的疎な状態や荒れた状態であると、化学増幅型レジスト膜の失活の問題が生じうることが知られている。具体的には、下地膜となる酸化クロムの反射防止膜等とレジスト膜の界面において、パターニング中の酸触媒反応が阻害され、レジストパターンの裾部分において解像性が悪化する場合がある。この場合は、例えばポジ型の化学増幅型レジスト膜においては裾引き、ネガ型では食われといった形状不良が生じる。
【0005】
この原因は、例えば露光によりレジスト膜中に生成される酸が酸化クロム表面の塩基成分により抑制(クエンチ)されることや、酸が酸化クロム側に拡散してしまうこと等により、下地膜との界面における化学増幅型レジスト膜の感度が見かけ上、低下するため(レジスト膜の失活)であると考えられる。
【0006】
上記の形状不良の問題を解決する方法として、化学増幅型レジスト膜の下に、シリサイド系材料の無機膜や、有機系反射防止膜等を下層膜(失活抑制膜)として導入する構成が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
一方、特許文献2には、波長157nmの光に強い吸収を有する反射防止膜を形成するための、ハロゲン原子を含有する高分子材料を含む反射防止膜形成組成物が開示されている。
【特許文献1】特開2003−107675号公報
【特許文献2】国際公開第03/071357号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の発明のように、レジスト膜の下に下層膜を形成した場合、該レジスト下層膜の影響により、遮光性膜のパターニングの解像性が低下してしまう場合があることが観察された。例えば、化学増幅型レジスト膜のレジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜及び遮光性膜をエッチングした場合に、レジスト下層膜のエッチング中にレジスト膜もエッチングされてしまい、結果として、レジストパターンの解像性の低下が観られた。
【0009】
この場合、形成直後のレジストパターンの解像性が高かったとしても、遮光性膜をエッチングした時点ではレジストパターンの解像性が低下してしまう。また、それにより、このレジストパターンをマスクとしてエッチングされる遮光性膜のパターニングの解像性も低下してしまう。
【0010】
即ち、化学増幅型レジスト膜をマスクブランクに使用した際に生じる裾引きや食われ等の上記形状不良の問題をレジスト下層膜を形成することにより解決したとしても、レジスト下層膜を形成することにより遮光性膜のパターニングの解像性が十分に高められなくなるという新たな問題を引き起こす場合があることが判った。
【0011】
また、化学増幅型レジスト膜をマスクブランクに使用すること自体によって生じる問題点について検討を行ったところ、レジスト膜の下地層の組成によっては、レジスト膜と下地層の密着性が十分に得られない場合があることが観察された。例えば、下地膜がシリサイド膜である場合、レジスト膜と下地膜の密着性が不足して、現像中にレジストパターンが消失してしまう場合があった。また、塗布性が十分でなく、均一なレジスト膜を形成するのが難しい場合があった。
【0012】
従って、本発明は、化学増幅型レジスト膜をマスクブランクに使用した際に生じる上記問題を解決しうる、即ち、裾引きや食われといった形状不良を起こさず、転写パターンを形成する薄膜のパターニングの解像性を十分に高めることができ、レジスト膜や他の下地膜との密着性に優れる、レジスト膜の下に形成されるレジスト下層膜に使用されるレジスト下層膜形成組成物の提供を課題とし、更に、裾引きや食われといった形状不良を起こさず、転写パターンを形成する薄膜のパターニング解像性を十分に高めることができるマスクブランク及びマスクの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は第1観点として、基板上に、転写パターンを形成する薄膜、レジスト下層膜及び化学増幅型レジスト膜の順に形成してなるマスクブランクに使用するレジスト下層膜形成組成物であって、ハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物及び溶媒を含むレジスト下層膜形成組成物、
第2観点として、前記高分子化合物が、少なくとも10質量%のハロゲン原子を含有するものである第1観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第3観点として、前記高分子化合物が式(1):
【化1】

(式中、Lは高分子化合物の主鎖を構成する結合基を表し、Mは直接結合、又は−C(=O)−、−CH2−又は−O−から選ばれる少なくとも1つを含む連結基であり、Qは有機
基であり、L、M、及びQのうち少なくとも1つはハロゲン原子を含有する。Vは高分子化合物に含まれる単位構造の数であり1から3000の数を示す。)で表されるものである第1観点又は第2観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第4観点として、Lがアクリル系又はノボラック系高分子化合物の主鎖である第3観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第5観点として、ハロゲン原子が塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である第1観点乃至第4観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第6観点として、高分子化合物及び溶媒に更に架橋剤、及び架橋触媒を含有するものである第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第7観点として、高分子化合物及び溶媒に更に酸発生剤を含有するものである第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第8観点として、高分子化合物の重量平均分子量が700〜1000000である第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第9観点として、基板上に転写パターンを形成する薄膜とレジスト下層膜が順に形成されたマスクブランクであって、前記レジスト下層膜は、第1観点乃至第8観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物から形成されたレジスト下層膜であることを特徴とするマスクブランク、
第10観点として、前記転写パターンを形成する薄膜はクロムを含む材料からなることを特徴とする第9観点に記載のマスクブランク、
第11観点として、前記マスクブランクは、前記レジスト下層膜上に形成される化学増幅型レジストによるレジストパターンをマスクにして塩素を含む塩素系ガスのドライエッチング処理により、前記転写パターンを形成する薄膜をパターニングするマスク作製方法に対応する、ドライエッチング処理用のマスクブランクであることを特徴とする第9観点又は第10観点に記載のマスクブランク、
第12観点として、前記レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト膜が形成されていることを特徴とする第9観点乃至第11観点のいずれか1つに記載のマスクブランク、
第13観点として、第9観点乃至第12観点のいずれか1つに記載のマスクブランクにおける前記転写パターンを形成する薄膜をパターニングして形成されたマスクパターンを備えることを特徴とするマスクである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレジスト下層膜形成組成物によって得られたレジスト下層膜は、パターニング中の酸触媒反応を阻害しないことより、良好なレジストパターンを得ることができ、また上層に被覆されるレジストに比べ十分に高いエッチングレートを有し、下層膜のエッチング中にレジスト膜がエッチングされないため、レジスト膜の形成直後のレジストパターンの解像性を保ったまま、転写パターンを形成する薄膜をエッチングすることができ、これにより転写パターンを形成する薄膜のパターニングの解像性を高めることができる。
また、本発明のレジスト下層膜形成組成物を用いて形成した下層膜は、レジスト膜や他の下地膜との密着性にも優れるものである。
本発明のマスクブランクにおけるレジスト下層膜は、半導体製造プロセスにおける反射防止膜が基板より生じる反射光を防止するためのものであるのとは対照的に、反射光を防止する効果を必要とすることなく、マスクブランク用レジストの下に形成することで電子線によるレジストの露光時に鮮明なマスクパターンの形成を可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、化学増幅型レジスト膜が形成されたマスクブランクの作製に用いられ、基板上の転写パターンを形成する薄膜と、該レジスト膜の間のレジスト下層膜を形成するために用いられ、ハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物及び溶媒を含むレジスト下層膜形成組成物である。
【0016】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、基本的にハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物及び溶剤からなるもの、ハロゲン原子及び架橋形成置換基を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物及び溶剤からなるもの、又は、ハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造及び架橋形成置換基を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物及び溶剤からなるものであり、任意成分として架橋触媒、界面活性剤等を含有するものである。本発明のレジスト下層膜形成組成物の固形分は、0.1〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%である。固形分とはレジスト下層膜形成組成物から溶媒成分を取り除いたものである。
【0017】
上記高分子化合物のレジスト下層膜形成組成物における含有量は、固形分中で20質量%以上、例えば20〜100質量%、または30〜100質量%、または50〜90質量%、または60〜80質量%である。
【0018】
また、高分子化合物が、少なくとも10質量%、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%のハロゲン原子を含有するものである。
【0019】
ハロゲン原子は式(1)中の主鎖に相当するLの部分、連結基に相当するMの部分、有機基に相当するQ、又はこれらの組み合わせからなる部分に含有する。
【0020】
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であるが、特に塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0021】
前記高分子化合物は架橋形成置換基を含むことができる。そのような架橋形成置換基は水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、メトキシ基などが挙げられ、この置換基は高分子化合物の主鎖及び/又は側鎖に導入される。
【0022】
この導入された架橋形成置換基は本発明のレジスト下層膜形成組成物中に導入された架橋剤成分と加熱焼成時に架橋反応を起こすことができる。このような架橋形成反応により形成されるレジスト下層膜は、上層に被覆されるレジスト膜との間でインターミキシングを防ぐ効果がある。
【0023】
ハロゲン原子を含有する高分子化合物は、ハロゲン原子を含有する単位モノマーの重合反応、ハロゲン原子を含有する単位モノマーとハロゲン原子を含有しない単位モノマーとの共重合反応によって合成することができる。
【0024】
ハロゲン原子を含有する単位モノマーに架橋形成置換基が存在しない場合には、ハロゲン原子を含有しない単位モノマーに架橋形成置換基を存在させることができる。
【0025】
重合反応に用いられる単位モノマーは、同種のものでもよいが、2種類以上の単位モノマーを用いることもできる。単位モノマーより形成される高分子化合物はラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、縮重号などの方法により合成することができる。その形態は溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの方法が可能である。
【0026】
ハロゲン原子を有する単位モノマーとしては、例えばアクリル酸類、アクリル酸エステル類、アクリル酸アミド類、メタクリル酸類、メタクリル酸類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコール類、スチレン類、ベンゼン類、フェノール類、ナフタレン類、ナフタノール類等が挙げられる。
【0027】
また、ハロゲン原子を含有しない単位モノマーとしては、例えばアクリル酸類、アクリル酸エステル類、アクリル酸アミド類、メタクリル酸類、メタクリル酸類、メタクリル酸
エステル類、メタクリル酸アミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコール類、スチレン類、ベンゼン類、フェノール類、ナフタレン類、ナフタノール類等が挙げられる。
【0028】
式(1)の構造中でLとしては高分子化合物の主鎖を構成する結合基であれば特に制限はないが、例えば下記(a−1)〜(a−11)を例示することができる。
【化2】

上記式中で、vは繰り返し単位の数であり1から3000であり、nはベンゼン環又はナフタレン環に置換したハロゲン原子の数を示し、その数は1以上であり、置換することが可能な最大の数までのうちの任意の整数を示す。
【0029】
式(1)中のMは、直接結合、又は例えば、−C(=O)−、−C(=O)O−、−CH2−、−CH(I)−、−O−、−C(=O)O−CH2−、−C(=O)−NH−、−C(=O)−NH−CH2−、−OC(=O)−、又は−OC(=O)−CH2−等の連結基、更には(b−1)〜(b−10):
【化3】

を例示することができる。
【0030】
また、式(1)のQの部分は、ハロゲン原子の場合や、また例えば、(c−1)〜(c−10):
【化4】

のハロゲン原子を有する有機基を例示することができる。
【0031】
以下に高分子化合物に含まれるハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造の具体例を例示する。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

式[3−1]から[3−27]において、nはハロゲン原子の数を示しベンゼン環では1〜5、ナフタレン環では1〜7、アントラセン環では1〜9の数を示す。
【0032】
また、ハロゲン原子を含有する高分子化合物に架橋形成基が存在しない場合には、ハロゲン原子を有さず架橋形成基を有する繰り返し単位のモノマーを共重合させることができる。それらのモノマー構造は例えば、
【化19】

が挙げられる。
【0033】
以下に本発明レジスト下層膜形成組成物に使用する高分子化合物の具体例を示す。
【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

[5−1]から[5−55]において、v1、v2、及びv3は繰り返し単位の数を示し、それぞれが1以上であり、v1、v1+v2、v1+v2+v3の合計の繰り返し単
位の数は3000以下である。
【0034】
そして、上記記載の(1−1)〜(1−34)、(2−1)〜(2−30)、及び(3
−1)〜(3−27)のモノマーを単独で重合した重合物、これらのモノマーと(4−1
)〜(4−10)のモノマーとの共重合物、及び上記具体例として記載した(5−1)〜(5−55)の重合物は、重量平均分子量が700〜1000000、好ましくは700〜500000、更に好ましくは900〜300000である。
【0035】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、組成物中の高分子化合物に含まれているハロゲン原子の含有量(質量%)を変化させることができる。すなわち、高分子化合物の主鎖構造の選択、高分子化合物合成に用いられる単位モノマーの種類の選択、重合反応によって
得られたポリマーと反応させる化合物の種類の選択、含まれるハロゲン原子の数及び種類の選択、といったことにより、高分子化合物に含まれているハロゲン原子の含有量(質量%)を変化させることが可能である。そして、ハロゲン原子の含有量(質量%)の異なる高分子化合物を用いることにより、レジスト下層膜形成組成物の固形分中のハロゲン原子含有量(質量%)、すなわち、成膜後のレジスト下層膜中のハロゲン原子含有量(質量%)を変化させることができる。そして、成膜後のレジスト下層膜中のハロゲン原子含有量(質量%)を変化させることにより、レジスト下層膜の減衰係数k値を調整することが可能である。また、成膜後のレジスト下層膜中のハロゲン原子含有量(質量%)は、一定のハロゲン原子含有量を有する高分子化合物の固形分中での割合を変えることによっても変化させることができ、この方法によってもレジスト下層膜の減衰係数k値を調整することが可能である。なお、ここで、レジスト下層膜形成組成物の固形分とは、該レジスト下層膜形成組成物から溶剤成分を除いた成分のことであり、成膜後のレジスト下層膜中のハロゲン原子含有量(質量%)はレジスト下層膜形成組成物の固形分中のハロゲン原子含有量(質量%)であるものとする。
【0036】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、上塗りするレジストとのインターミキシングを防ぐ意味で、塗布後加熱により架橋させることが好ましく、本発明のレジスト下層膜形成組成物はさらに架橋剤成分を含むことができる。その架橋剤としては、メチロール基、メトキシメチル基といった架橋形成置換基を有するメラミン系化合物や置換尿素系化合物や、エポキシ基を含有する高分子化合物等が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、メトキシメチル化グリコウリル、またはメトキシメチル化メラミンなどの化合物であり、特に好ましくは、テトラメトキシメチルグリコールウリル、またはヘキサメトキシメチロールメラミンである。架橋剤の添加量は、使用する塗布溶剤、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、全組成物100質量%に対して0.001〜20質量%、好ましくは 0.01〜
15質量%、さらに好ましくは0.05〜10質量%である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、前記本発明のレジスト下層膜形成組成物に使用する高分子化合物中に架橋形成置換基が存在する場合は、それらの架橋形成置換基と架橋反応を起こすことができる。
本発明のマスクブランク用レジスト下層膜形成組成物に用いられるハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物は、主鎖にハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造、側鎖にハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造又はそれらの組合せからなる。
【0037】
好ましいハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物としては、以下の一般式(d)、(e)及び(f)で表される化合物が挙げられる。
【化33】

(式中、Aは、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基又はアントラニルカルボニル基(該フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基及びアントラニルカルボニル基は、水酸基、ハロゲン原子又は水酸基とハロゲン原子の両方で任意に置換されていてもよい。)を意味し、p
は1から3000までの整数を意味し、nは0から3までの整数を意味し、該化合物は繰り返し単位中に少なくとも1個のハロゲン原子を含む。)
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
好ましいAとしては、ベンゾイル基、ナフチル基又はナフチルカルボニル基(該ベンゾイル基、ナフチル基及びナフチルカルボニル基は、水酸基、ハロゲン原子又は水酸基とハロゲン原子の両方で任意に置換されていてもよい。)が挙げられ、また、ベンゾイル基、1,6−ジブロモ−2−ナフチル基、2−ナフチルカルボニル基、4−ヒドロキシベンゾイル基、3,5−ジヨード−2−ヒドロキシベンゾイル基、3,5−ジブロモベンゾイル基、3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシベンゾイル基が挙げられる。
【化34】

(式中、Ar2とAr3は同一でなく、それぞれ、フェニル基、ナフチル基又はアントラニル基(該フェニル基、ナフチル基及びアントラニル基は、水酸基、ハロゲン原子又は水酸基とハロゲン原子の両方で任意に置換されていてもよい。)を意味し、q及びrは、それぞれ1以上の整数であり且つq+rは2から3000までの整数を意味し、nは0から3までの整数を意味し、該化合物は、置換基Ar2を含む繰り返し単位中に少なくとも1個
のハロゲン原子を含むか、置換基Ar3を含む繰り返し単位中に少なくとも1個のハロゲ
ン原子を含むか、又は、置換基Ar2を含む繰り返し単位中及び置換基Ar3を含む繰り返し単位中の両方に少なくとも1個づつのハロゲン原子を含む。)
好ましいAr2としては、ナフチル基が挙げられ、また、2−ナフチル基が挙げられる
。好ましいAr3としては、アントラニル基が挙げられ、また、9−アントラニル基が挙
げられる。
【化35】

(式中、R1は水素原子又はC1-4アルキル基を意味し、R2はCF3、CCl3、CBr3、CH(OH)CH2OR3(式中、R3は、フェニル基、ナフチル基又はアントラニル基(
該フェニル基、ナフチル基及びアントラニル基は、水酸基、ハロゲン原子又は水酸基とハロゲン原子の両方で任意に置換されていてもよい。)を意味する。)又はCH(OH)CH2OC(O)R4(式中、R4は、フェニル基、ナフチル基又はアントラニル基(該フェ
ニル基、ナフチル基及びアントラニル基は、水酸基、ハロゲン原子又は水酸基とハロゲン原子の両方で任意に置換されていてもよい。)を意味する。)を意味し、q及びrは、それぞれ1以上の整数であり且つq+rは2から3000までの整数を意味し、該化合物は、置換基R2を含む繰り返し単位中に少なくとも1個のハロゲン原子を含む。)
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
1-4アルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル
基、ノルマルブチル基、イソブチル基、第二ブチル基又は第三ブチル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
好ましいR1としては、水素原子又はメチル基が挙げられる。
好ましいR3としては、ナフチル基(該ナフチル基は、水酸基、ハロゲン原子又は水酸
基とハロゲン原子の両方で任意に置換されていてもよい。)が挙げられ、また、1,6−ジブロモ−2−ナフチル基が挙げられる。
好ましいR4としては、フェニル基(該フェニル基は、水酸基、ハロゲン原子又は水酸
基とハロゲン原子の両方で任意に置換されていてもよい。)が挙げられ、また、3,5−ジヨード−2−ヒドロキシフェニル基が挙げられる。
【0038】
前記架橋反応を促進するための触媒として、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、などの酸性化合物又は/及び、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシラート、2−ニトロベンジルトシラート等の熱酸発生剤を配合する事が出来る。配合量は全固形分100質量%当たり、0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%である。
【0039】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、リソグラフィー工程で上層に被覆されるレジストとの酸性度を一致させる為に、酸発生剤を添加する事が出来る。好ましい酸発生剤としては、例えば、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系酸発生剤類、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系酸発生剤類、ベンゾイントシレート、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸系酸発生剤類等が挙げられる。上記酸発生剤の添加量は全固形分100質量%当たり0.02〜3質量%、好ましくは0.04〜2質量%である。
【0040】
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、上記以外に必要に応じて更なるレオロジー調整剤、接着補助剤、界面活性剤などを添加することができる。
【0041】
レオロジー調整剤は、主にレジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させるための目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、レジスト下層膜形成組成物の全組成物100質量%に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0042】
接着補助剤は、主に基板あるいはレジストとレジスト下層膜形成組成物の密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないようにするための目的で添加される。具体
例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’ービス(トリメチルシリン)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γークロロプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2ーメルカプトベンズイミダゾール、2ーメルカプトベンゾチアゾール、2ーメルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1ージメチルウレア、1,3ージメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、レジスト下層膜形成組成物の全組成物100質量%に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0043】
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、ピンホールやストレーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトツプEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、メガフアツクF171、F173(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンSー382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明のレジスト下層膜形成組成物の全組成物100質量%当たり通常0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0044】
上記ポリマーを溶解させる溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2ーヒドロキシプロピオン酸エチル、2ーヒドロキシー2ーメチルプロピオン酸エチル、エトシキ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2ーヒドロキシー3ーメチルブタン酸メチル、3ーメトキシプロピオン酸メチル、3ーメトキシプロピオン酸エチル、3ーエトキシプロピオン酸エチル、3ーエトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、等を用いることが
できる。これらの有機溶剤は単独で、または2種以上の組合せで使用される。
【0045】
さらに、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を混合して使用することができる。これらの溶剤の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノンがレベリング性の向上に対して好ましい。
【0046】
本発明におけるレジスト下層膜の上層に塗布されるレジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用できる。酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジストなどがある。また、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジストなどもある。
【0047】
本発明のレジスト下層膜形成組成物を使用して形成したレジスト下層膜を有するポジ型レジストの現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジーn−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。
【0048】
本発明のハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物を含むレジスト下層膜形成組成物より作製したレジスト下層膜は、ハロゲン原子を含んでいるため比較的大きなドライエッチング速度を有しており、また、ハロゲン原子の含有量を変化させることにより、ドライエッチング速度を調整することができるものである。
【0049】
本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランクは、以下の構成を有する。
(構成1)化学増幅型レジスト膜が形成されるマスクブランクは、基板と、基板上に形成された転写パターンを形成する薄膜と、レジスト下層膜が順に形成され、前記レジスト下層膜は、ハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物及び溶媒を含むレジスト下層膜形成組成物を前記転写パターンを形成する薄膜に塗布し、加熱処理されたものとする。このようなレジスト下層膜は、化学増幅型レジスト膜の失活抑制効果を得るための膜厚を小さくすることができ、且つ、エッチングレートが高いため、レジスト下層膜をエッチングしている間に化学増幅型レジスト膜が実質的にエッチングされない。そのため、形成直後のレジストパターンの解像性を保ったまま、転写パターンを形成する薄膜をエッチングできる。これにより、転写パターンを形成する薄膜のパターニングの解像性を高めることができる。
【0050】
化学増幅型レジスト膜とは、例えば電子線によりレジスト膜中に生成される触媒物質の酸が、引き続き行われる熱処理工程においてポリマーの溶解性を抑制する官能基或いは官能物質と反応することによりレジスト機能を発現するレジスト膜である。レジスト機能を発現するとは、例えば、官能基等を外すことによってアルカリに溶解するようになることである。化学増幅型レジスト膜は、50keV以上の加速電圧で加速された電子線によってレジスト描画(露光)されるのが好ましい。
【0051】
レジスト下層膜の膜厚は25nm以下とし、パターニングされた化学増幅型レジストをマスクとして転写パターンを形成する薄膜をエッチングする場合に、レジスト下層膜のエッチングレートが化学増幅型レジスト膜のエッチングレートの1.0倍以上、好ましくは1.1〜10倍とすることが望ましい。
【0052】
レジスト下層膜の膜厚が大きかったり(例えば、30nm以上)、エッチングレートが低いレジスト下層膜を形成した場合、レジスト下層膜をエッチングしている間にレジスト膜もエッチングされてしまうことから、転写パターンを形成する薄膜の解像性向上に対してレジスト下層膜が阻害要因となるので望ましくない。
【0053】
(構成2)本発明によって得られるレジスト下層膜は、例えば膜厚5nm程度の極めて薄い膜厚で十分なレジスト膜の失活抑制機能を発揮させることができる。また、エッチングレートを適切に高めることができる。そのため、極薄厚でかつエッチングレートの高いレジスト下層膜を形成できる。
【0054】
(構成3)本発明では、化学増幅型レジスト膜が形成されるマスクブランクに使用され、基板と、基板上に形成された転写パターンを形成する薄膜と、化学増幅型レジスト膜の失活を抑制するために転写パターンを形成する薄膜上に形成されたレジスト下層膜とを備える。このように構成すれば、極薄厚でかつエッチングレートの高いレジスト下層膜を形成できる。また、これにより転写パターンを形成する薄膜のパターニングの解像性を高めることができる。
【0055】
(構成4)本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランクでは、上記転写パターンを形成する薄膜は、クロムを含む材料からなる場合に適している。具体的には、上記転写パターンを形成する薄膜は、露光光を遮断する遮光性膜であって、該遮光性膜は少なくとも炭化クロム(CrC)を主成分とする下層と、酸化クロム又は窒化クロムの少なくとも一方を主成分とする反射防止機能を有する上層を有する。反射防止層は、例えばクロムに酸素および窒素を添加した膜(CrON膜)である。反射防止層は、酸化クロム(CrO)を主成分とする膜であってもよい。また、炭化クロムを主成分とする層の下に窒化クロム(CrN)を主成分とする層を更に有してよい。
【0056】
転写パターンを形成する薄膜としてクロム系の遮光性膜を用いた場合は、遮光性膜は例えば塩素系ガス又はフッ素系ガス等を用いてドライエッチングされる。この場合に、レジスト下層膜の膜厚が大きいか、エッチングレートが低いとすれば、レジスト下層膜をエッチングしている間にレジスト膜がエッチングされ、レジストパターンの解像度が低下してしまう。しかし、(構成4)のようにすれば、薄厚でかつエッチングレートの高いレジスト下層膜を用いることによりクロム系の遮光性膜のドライエッチングによりレジストパターンの解像度の低下するのを適切に防ぐことができる。
【0057】
(構成5)本発明を適用するマスクブランクでは、レジスト下層膜の下に形成されたシリサイド膜を備え、シリサイド膜に対するレジスト下層膜の密着性は、シリサイド膜上に化学増幅型レジスト膜を形成した場合のシリサイド膜に対する化学増幅型レジスト膜の密着性よりも高い。このように構成すれば、シリサイド膜と化学増幅型レジスト膜との密着
性を改善できる。そのため、シリサイド膜上に化学増幅型レジスト膜を適切に形成できる。なお、このシリサイド膜は、例えばハードマスクとして用いられる膜である。このように構成すれば、ハードマスクブランクスにおいて化学増幅型レジスト膜を適切に使用できる。
【0058】
ここで、シリサイド膜と化学増幅型レジスト膜との密着性を改善するためには、例えばシランカップリング剤(HMDS等)の前処理を行うことも考えられる。しかし、このような前処理を行うとすれば、工程数の増加により、コストの上昇を招くことになる。これに対し、(構成5)のようにすれば、レジスト下層膜を利用して、シリサイド膜と化学増幅型レジスト膜との密着性を改善できる。そのため、密着性の改善のために工程数が増加することもなく、マスクブランクのコストを低減できる。
【0059】
(構成6)本発明では、化学増幅型レジスト膜が形成されたマスクブランクに適用され、基板と、基板上に形成された転写パターンを形成する薄膜と、転写パターンを形成する薄膜上に形成されたシリサイド膜と、シリサイド膜上に形成された本発明によるレジスト下層膜とを備え、化学増幅型レジスト膜は当該下層膜上に形成される。
シリサイド膜上に化学増幅型レジスト膜を形成した場合のシリサイド膜に対する化学増幅型レジスト膜の密着性よりも、シリサイド膜に対する当該下層膜の密着性が高く、当該下層膜の膜厚は、25nm以下である。
【0060】
パターニングされた化学増幅型レジスト膜をマスクとしてシリサイド膜をエッチングする場合に、当該下層膜のエッチングレートが化学増幅型レジスト膜のエッチングレートの1.0倍以上である。このようにすれば、シリサイド膜と化学増幅型レジスト膜との密着性を適切に改善できる。また、シリサイド膜のパターニングの解像性を適切に高めることができる。
【0061】
(構成7)本発明では化学増幅型レジスト膜が形成されるマスクブランクに適用され、基板と、基板上に形成されたシリサイド膜と、シリサイド膜上に形成された本発明によるレジスト下層膜とを備え、化学増幅型レジスト膜は当該下層膜上に形成される。このようにすれば、シリサイド膜と化学増幅型レジスト膜との密着性が適切に改善できる。また、シリサイド膜のパターニングの解像性を適切に高めることができる。
【0062】
(構成8)本発明が適用されるマスクブランクでは、化学増幅型レジスト膜を備える。このように構成すれば、転写パターンを形成する薄膜又はシリサイド膜のパターニングの現像性を適切に高めることができる。また、化学増幅型レジスト膜の失活を適切に抑制できる。
【0063】
(構成9)構成1から構成8のいずれかに記載のマスクブランクにおける転写パターンを形成する薄膜をパターニングして形成されたマスクパターンを備えるマスクを製造できる。このように構成すれば(構成1)から(構成8)の効果を得ることができる。
【0064】
なお、上記において、マスクブランクにはフォトマスクブランク、位相シフトマスクブランクのような透過型のマスクブランク他、反射型のマスクブランクが含まれる。また、マスクブランクには、レジスト膜付きブランク、レジスト膜形成前のブランクが含まれる。
【0065】
位相シフトマスクブランクには、ハーフトーン膜上にクロム系材料などの遮光性膜が形成される場合を含む。尚、この場合、転写パターンを形成する薄膜はハーフトーン膜や遮光性膜を指す。マスクには、フォトマスク、位相シフトマスクのような透過型のマスクや反射型のマスクが含まれる。マスクには、レクチルが含まれる。
反射型のマスクブランクは、基板上に多層反射膜と吸収体膜が形成される構成や、基板上に多層反射膜、バッファー層、吸収体膜が形成される構成をいい、この場合、転写パターンを形成する薄膜は、吸収体膜や、吸収体膜とバッファー層を指す。
【0066】
また、遮光性膜は、具体的には、露光光を遮断する遮光性膜が含まれる。この遮光性膜の膜材料、膜構造、膜厚等は特に限定されない。遮光性膜の膜材料としては、例えばクロム単体や、クロムに酸素、窒素、炭素からなる元素を少なくとも1種を含むもの(Crを含む材料)、又は、LEAR(Low Energy Activation Resis
t)用としてアセタール系レジストやHEAR(High Energy Activation Resist)用としてSCAP系レジスト等の化学増幅型レジスト膜を用いた
場合に、レジストパターンの底部に裾引き状突起部が形成される膜材料などが挙げられる。
【0067】
遮光性膜の膜組成は、光学特性(フォトマスクブランクにおいては、光学濃度、反射率など)に応じて適宜調整される。遮光性膜の膜構造としては、上記膜材料からなる単層、複数層構造とすることができる。また、異なる組成においては、段階的に形成した複数層構造や、連続的に組成が変化した膜構造とすることもできる。遮光性膜の膜厚は、光学特性(フォトマスクブランクにおいては光学濃度など)に応じて適宜調整される。フォトマスクブランクの場合、遮光性膜の膜厚は例えば30〜150nmである。
【0068】
本発明によれば、マスクブランクに化学増幅型レジスト膜を用いた場合に、転写パターンを形成する薄膜のパターニングの解像性を高めることができる。また、化学増幅型レジスト膜の下地層にシリサイド膜を用いた場合に、シリサイド膜と化学増幅型レジスト膜との密着性を改善できる。
【0069】
以下、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランクに関わる実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランク10の第1の実施形態に関わる構成の一例を示す図である。本例において、マスクブランク10はバイナリマスク用のマスクブランクであり、透明基板12、遮光性膜13(遮光層14、反射防止層16)、レジスト下層膜18、及び化学増幅型レジスト膜20を備える。
【0070】
透明基板12は、例えば石英基板又はソーダライムガラス等で形成される。遮光層14は、透明基板12上に、窒化クロム膜22及び炭化クロム膜24をこの順で有する。窒化クロム膜22は、窒化クロム(CrN)を主成分とする層であり、例えば15〜20nmの膜厚を有する。炭化クロム膜24は、炭化クロム(CrC)を主成分とする層であり、例えば50〜60nmの膜厚を有する。
【0071】
反射防止層16は、クロムに酸素及び窒素を添加した膜(CrON膜)であり、炭化クロム膜24上に形成される。反射防止層16の膜厚は、例えば20〜30nmである。反射防止層16は、酸化クロム(CrO)を主成分とする膜であってもよい。
【0072】
レジスト下層膜18は、化学増幅型レジスト膜20の失活を抑制するための層であり、反射防止層16を挟んで遮光性膜13上に形成される。レジスト下層膜18の膜厚は、例えば25nm以下である。レジスト下層膜18の膜厚は、1〜25nmであってよい。より好ましくは、1〜15nm、更に好ましくは5〜10nmである。
【0073】
本例において、レジスト下層膜18は極めて薄い膜厚で十分な失活抑制機能を発揮することができる。また、エッチングレートを適切に高めることができる。レジスト下層膜18上には、化学増幅型レジスト膜20が形成される。
【0074】
なお、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランク10の第1の実施形態に関わる変形例において、マスクブランク10は、位相シフト用のマスクブランクであってもよい。この場合、マスクブランク10は、例えば、透明基板12と遮光性膜13との間に、位相シフト膜を更に備える。位相シフト膜としては、例えば、クロム系(CrON等)、モリブデン系(MoSiON等)、タングステン系(WSiON等)、シリコン系(SiN等)の各種公知のハーフトーン膜を用いることができる。位相シフト用のマスクブランク10は、位相シフト膜を反射防止層16の上に備えてもよい。
【0075】
図2は、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランク10の第1の実施形態における化学増幅型レジスト膜20が電子線リソグラフィー法によりパターニングされた状態を示す。このようなパターニングされた化学増幅型レジスト膜20をマスクとして、レジスト下層膜18、遮光性膜13(反射防止層16、及び遮光層14)をエッチングすることにより、遮光性膜13をパターニングしたフォトマスクが製造できる。このフォトマスクは、パターニングにより形成された遮光性膜パターンを備える。
【0076】
遮光性膜13をエッチングする条件とは、パターニングされた化学増幅型レジスト膜20をマスクとして遮光性膜13をエッチングする工程におけるエッチング条件である。
【0077】
この場合、このエッチング条件において、マスクとして用いられる化学増幅型レジスト膜20がエッチングされるエッチングレート(エッチング速度)に対して、レジスト下層膜18のエッチングレートは1.0倍以上である。そのため、本例によれば、化学増幅型レジスト膜20の解像性を低下させることなく、遮光性膜13をエッチングできる。また、これにより、遮光性膜13のパターニングの解像性を高めることができる。レジスト下層膜のエッチングレートは、例えば化学増幅型レジスト膜20のエッチングレートの1.0〜20倍である。より好ましくは、1.0〜10倍、更に好ましくは1.1〜10倍である。
【実施例】
【0078】
合成例1
(式[5−42]の高分子化合物の合成)
臭素化エポキシフェノールノボラック樹脂(日本化薬(株)製、商品名BREN−304、臭素原子含有量42質量%、ベンゼン環当たり約1.5個の臭素原子を有する)30.0gと安息香酸11.6gをプロピレングリコールモノメチルエーテル168.4gに溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウム0.56gを加え、還流温度で24時間反応させ[5−42]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は2500であった。
【0079】
合成例2
(式[5−43]の高分子化合物の合成)
臭素化エポキシフェノールノボラック樹脂(日本化薬(株)製、商品名BREN−304、臭素原子含有量42質量%、ベンゼン環当たり約1.5個の臭素原子を有する)30.0g、2−ナフタレンカルボン酸6.5gと9−アントラセンカルボン酸12.6gをプロピレングリコールモノメチルエーテル198.7gに溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウム0.56gを加え、還流温度で24時間反応させ[5−43]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は2800であった。
【0080】
合成例3
(式[5−44]の高分子化合物の合成)
臭素化エポキシフェノールノボラック樹脂(日本化薬(株)製、商品名BREN−304、臭素原子含有量42質量%、ベンゼン環当たり約1.5個の臭素原子を有する)30.0gと1,6−ジブロモ−2−ナフトール27.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル231.3gに溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウム0.84gを加え、還流温度で24時間反応させ式[5−44]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は2700であった。
【0081】
合成例4
(式[5−45]の高分子化合物の合成)
臭素化エポキシフェノールノボラック樹脂(日本化薬(株)製、商品名BREN−304、臭素原子含有量42質量%、ベンゼン環当たり約1.5個の臭素原子を有する)30.0gと2−ナフタレンカルボン酸16.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテル187.3gに溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウム0.56gを加え、還流温度で24時間反応させ式[5−45]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は3000であった。
【0082】
合成例5
(式[5−46]の高分子化合物の合成)
臭素化エポキシフェノールノボラック樹脂(日本化薬(株)製、商品名BREN−304、臭素原子含有量42質量%、ベンゼン環当たり約1.5個の臭素原子を有する)30.0gと4−ヒドロキシ安息香酸12.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテル171.6gに溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウム0.56gを加え、還流温度で24時間反応させ式[5−46]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は3200であった。
【0083】
合成例6
(式[5−47]の高分子化合物の合成)
臭素化エポキシフェノールノボラック樹脂(日本化薬(株)製、商品名BREN−304、臭素原子含有量42質量%、ベンゼン環当たり約1.5個の臭素原子を有する)30.0gと3,5−ジヨードサリチル酸34.8gをプロピレングリコールモノメチルエーテル262.7gに溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウム0.84gを加え、還流温度で24時間反応させ式[5−47]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は3400であった。
【0084】
合成例7
(式[5−48]の高分子化合物の合成)
グリシジルメタクリレート21gと2−ヒドロキシプロピルメタクリレート39gをプロピレングリコールモノメチルエーテル242gに溶解させた後、70℃まで昇温させた。その後、反応液を70℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.6gを添加し、70℃で24時間反応させ高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は50000であった。
この樹脂20gを有する溶液100gに、1,6−ジブロモ−2−ナフトール13g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.3gとプロピレングリコールモノメチルエーテル454gを添加し、130℃で24時間反応させ式[5−48]の高分子化合物の溶液を得た。
【0085】
合成例8
(式[5−49]の高分子化合物の合成)
グリシジルメタクリレート21gと2−ヒドロキシプロピルメタクリレート39gをプロピレングリコールモノメチルエーテル242gに溶解させた後、70℃まで昇温させた。その後、反応液を70℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.6gを添加し、70℃で24時間反応させ高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は50000であった。
この樹脂20gを有する溶液100gに、3,5−ジヨードサリチル酸17g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.3gとプロピレングリコールモノメチルエーテル469gを添加し、130℃で24時間反応させ式[5−49]の高分子化合物の溶液を得た。
【0086】
合成例9
(式[5−50]の高分子化合物の合成)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート5.0gとトルフルオロエチルメタクリレート25.8gをプロピレングリコールモノメチルエーテル123.3gに溶解させた後、70℃まで昇温させた。その後、反応液を70℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.3gを添加し、70℃で24時間反応させ式[5−50]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は52000であった。
【0087】
合成例10
(式[5−51]の高分子化合物の合成)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート5.0gとトルクロロエチルメタクリレート33.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテル153.7gに溶解させた後、70℃まで昇温させた。その後、反応液を70℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、70℃で24時間反応させ式[5−51]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は47000であった。
【0088】
合成例11
(式[5−52]の高分子化合物の合成)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート5.0gとトルブロモエチルメタクリレート53.9gをプロピレングリコールモノメチルエーテル235.7gに溶解させた後、70℃まで昇温させた。その後、反応液を70℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.6gを添加し、70℃で24時間反応させ式[5−52]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は51000であった。
【0089】
合成例12
(式[5−53]の高分子化合物の合成)
エポキシ化フェノールノボラック樹脂30.0gと3,5−ジブロモ安息香酸40.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテル285.3gに溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウム0.91gを加え、還流温度で24時間反応させ式[5−53]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は1800であった。
【0090】
合成例13
(式[5−54]の高分子化合物の合成)
エポキシ化フェノールノボラック樹脂30.0gと3,5−ジブロモサリチル酸42.7
gをプロピレングリコールモノメチルエーテル294.5gに溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウム0.91gを加え、還流温度で24時間反応させ式[5−54]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は1900であった。
【0091】
合成例14
(式[5−55]の高分子化合物の合成)
エポキシ化フェノールノボラック樹脂30.0gと3,5−ジヨードサリチル酸37.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル232.5gに溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウム0.61gを加え、還流温度で24時間反応させ式[5−55]の高分子化合物の溶液を得た。得られた高分子化合物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は2200であった。
【0092】
実施例1
上記合成例1で得た高分子化合物2gを有するプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液10gにテトラブトキシメチルグリコールウリル0.5g、p−トルエンスルホン酸0.01g、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸0.04gとメガファックR−30(界面活性剤、大日本インキ(株)製)0.004gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル49.8g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート16.5g及びシクロヘキサノン8.3gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過してレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0093】
実施例2
合成例1の高分子化合物を、合成例2の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例2の組成物を得た。
【0094】
実施例3
合成例1の高分子化合物を、合成例3の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例3の組成物を得た。
【0095】
実施例4
合成例1の高分子化合物を、合成例4の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例4の組成物を得た。
【0096】
実施例5
合成例1の高分子化合物を、合成例5の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例5の組成物を得た。
【0097】
実施例6
合成例1の高分子化合物を、合成例6の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例6の組成物を得た。
【0098】
実施例7
合成例1の高分子化合物を、合成例7の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例7の組成物を得た。
【0099】
実施例8
合成例1の高分子化合物を、合成例8の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例8の組成物を得た。
【0100】
実施例9
合成例1の高分子化合物を、合成例9の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例9の組成物を得た。
【0101】
実施例10
合成例1の高分子化合物を、合成例10の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例10の組成物を得た。
【0102】
実施例11
合成例1の高分子化合物を、合成例11の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例11の組成物を得た。
【0103】
実施例12
合成例1の高分子化合物を、合成例12の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例12の組成物を得た。
【0104】
実施例13
合成例1の高分子化合物を、合成例13の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例13の組成物を得た。
【0105】
実施例14
合成例1の高分子化合物を、合成例14の高分子化合物に変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例14の組成物を得た。
【0106】
実施例15
テトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例15の組成物を得た。
【0107】
実施例16
合成例1の高分子化合物を、合成例2の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例16の組成物を得た。
【0108】
実施例17
合成例1の高分子化合物を、合成例3の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例17の組成物を得た。
【0109】
実施例18
合成例1の高分子化合物を、合成例4の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例18の組成物を得た。
【0110】
実施例19
合成例1の高分子化合物を、合成例5の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例19の組成物を得た。
【0111】
実施例20
合成例1の高分子化合物を、合成例6の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例20の組成物を得た。
【0112】
実施例21
合成例1の高分子化合物を、合成例7の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例22の組成物を得た。
【0113】
実施例22
合成例1の高分子化合物を、合成例8の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例22の組成物を得た。
【0114】
実施例23
合成例1の高分子化合物を、合成例9の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例23の組成物を得た。
【0115】
実施例24
合成例1の高分子化合物を、合成例10の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例24の組成物を得た。
【0116】
実施例25
合成例1の高分子化合物を、合成例11の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例25の組成物を得た。
【0117】
実施例26
合成例1の高分子化合物を、合成例12の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例26の組成物を得た。
【0118】
実施例27
合成例1の高分子化合物を、合成例13の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例27の組成物を得た。
【0119】
実施例28
合成例1の高分子化合物を、合成例14の高分子化合物に変え、そしてテトラブトキシメチルグリコールウリルを、ヘキサメトキシメチロールメラミンに変えた以外は実施例1と同様に行い、実施例28の組成物を得た。
【0120】
(レジスト溶剤への溶出試験)
実施例1〜28で調製したレジスト下層膜形成組成物をスピナーを用い、シリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で205℃1分間加熱し、レジスト下層膜(膜厚0.10μm)を形成した。このレジスト下層膜をレジストに使用する溶剤、例えば乳酸エチル、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテルに浸漬し、その溶剤に不溶であることを確認した。
【0121】
(ドライエッチング速度の測定)
実施例1〜28で調製したレジスト下層膜形成組成物をスピナーを用い、シリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で205℃1分間加熱し、レジスト下層膜(膜厚0.10μm)を形成した。そして日本サイエンティフィック製RIEシステムES401を用いてドライエッチング速度を測定した。
【0122】
また、同様にレジスト溶液をスピナーを用い、シリコンウェハー上に塗膜を作成した。そして日本サイエンティフィック製RIEシステムES401を用いてドライエッチング速度を測定し、実施例1〜28のレジスト下層膜のドライエッチング速度との比較を行った。結果を表1に示す。
【0123】
表1において、レジストに対する本発明の塗布型下層膜のドライエッチング速度比(レジスト下層膜/レジスト)の測定は、CF4ガスをエッチングガスとして用いた。
〔表1〕 ドライエッチング速度比(レジスト下層膜/レジスト膜)
―――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 1.3
実施例2 1.3
実施例3 1.5
実施例4 1.3
実施例5 1.5
実施例6 1.7
実施例7 1.5
実施例8 1.7
実施例9 2.3
実施例10 2.7
実施例11 3.2
実施例12 1.3
実施例13 1.5
実施例14 1.5
実施例15 1.3
実施例16 1.3
実施例17 1.5
実施例18 1.3
実施例19 1.5
実施例20 1.7
実施例21 1.5
実施例22 1.7
実施例23 2.3
実施例24 2.7
実施例25 3.2
実施例26 1.3
実施例27 1.5
実施例28 1.5
―――――――――――――――――――――――――――――――
【0124】
以下、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランクの第1の実施形態に関わる実施例及び比較例を示す。
実施例29
透明基板12としてサイズ152.4mm角、厚さ6.35mmの合成石英基板を用い
、透明基板12上に、遮光性膜13として、窒化クロム膜22及び炭化クロム膜24を積層させた遮光層14をそれぞれスパッタリング法で形成し、続いて、反射防止層16として、クロムに酸素及び窒素を添加した膜(CrON膜)を形成した。尚、反射防止層16の膜厚は30nmとした。窒化クロム膜22の膜厚は約20nm、炭化クロム膜24の膜厚は約60nmとした。
【0125】
更に、実施例6のレジスト下層膜形成組成物を回転塗布法(スピナー法)で約10nmの膜厚で塗布して、レジスト下層膜18を形成した。その後、ホットプレートで130℃で10分間熱処理して、レジスト下層膜18を乾燥させた。次に、化学増幅型レジスト膜20として、市販の電子線露光用化学増幅型ポジレジスト(FEP171:フジフィルムアーチ社製)を回転塗布法で厚さ約400nmで塗布し、その後、ホットプレートで130℃で10分間熱処理して、化学増幅型レジスト膜20を乾燥させ、レジスト膜付きフォトマスクブランクであるマスクブランク10を得た。
【0126】
比較例1
レジスト下層膜18を形成しなかった以外は実施例29と同様にして、比較例1に関わるマスクブランクを得た。
【0127】
比較例2
レジスト下層膜18として公知の有機系反射防止膜(BARC:Bottom Ant
i Reflection Coating:ハロゲン原子を含有していない高分子化合物を含む反射防止膜)を用いた以外は実施例29と同様にして、比較例2に関わるマスクブランクを得た。用いたBARCは日産化学工業(株)社製(商品名NCA3211)を用いた。
【0128】
実施例29及び比較例1、2に関わるマスクブランクについて、解像性の違いを比較するために、遮光性膜のパターニングを行った。最初に、各マスクブランクを電子線露光装置で露光し、その後、露光後の焼成処理及び現像処理をして、レジストパターンを形成した。この露光は、50eV以上の加速電圧で加速された電子線によって行った。
【0129】
続いて、レジストパターンをマスクとし、Cl42をエッチングガスとして用いたドライエッチングにより、レジスト下層膜18、遮光性膜13(反射防止層16、及び遮光層14)をパターニングした。なお、このドライエッチングの条件において、実施例29のレジスト下層膜のエッチングレートは、約10nm/秒である。また、比較例2のレジスト下層膜の代わりに用いた有機系反射防止膜のエッチングレートは、約5nm/秒であり、実施例29と比べて低い。
【0130】
図3は、ドライエッチング後の化学増幅型レジスト膜及び遮光性膜の状態を示す、実施例29に係わるマスクブランク10の断面写真である。実施例29においては、レジストパターンの裾部分の裾引き状の突起部が形成されていないことが確認された。また、レジストパターンの解像性の低下が生じることなく、遮光性膜13がパターニングされていることが確認された。
【0131】
化学増幅型レジスト膜20及びレジスト下層膜18を除去してフォトマスクとして、遮光性膜13(反射防止層16及び遮光層14)の突起部分(パターンエッジのギザつき)をSEM(走査型電子顕微鏡)で調べたところ、約10nm程度以下のギザつきであった。また、100nmのライン及びスペースパターンが解像していることが確認された。なお、化学増幅型レジスト膜20及びレジスト下層膜18の除去は、濃硫酸に過酸化水素水を加えたレジスト剥離液に浸すことにより行った。
【0132】
図4は、ドライエッチング後の化学増幅型レジスト膜及び遮光性膜の状態を示す、比較例1に係わるマスクブランクの断面写真である。比較例1においては、レジストパターンの裾部分に裾引き状の突起部分が形成されていることが確認された。また、化学増幅型レジスト膜を除去してフォトマスクとして、遮光性膜(反射防止層及び遮光層)の突起部分(パターンエッジのギザつき)をSEM(走査型電子顕微鏡)で調べたところ、約30nm程度のギザつきであった。また、200nmのライン及びスペースパターンが解像しているにとどまった。
【0133】
図5は、ドライエッチング後の化学増幅型レジスト膜及び遮光性膜の状態を示す、比較例2に係わるマスクブランクの断面写真である。比較例2においては、ドライエッチングの影響により、レジストパターンの解像性の低下が生じていた。そのため、化学増幅型レジスト膜及びレジスト下層膜を除去してフォトマスクとして、遮光性膜(反射防止層及び遮光層)の突起部分(パターンエッジのギザつき)のSEM(走査型電子顕微鏡)で調べたところ、約30nm程度のギザつきであった。また、200nmのライン及びスペースパターンが解像しているにとどまった。
【0134】
図6は、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランク10の第2の実施形態に関わる構成の一例を示す図である。なお、以下に説明する点を除き、図6において、図1と同一又は同様の構成については、図1と同じ符号を付して説明を省略する。本例においては、マスクブランク10は、透明基板12、遮光性膜13(遮光層14、反射防止層16)、シリサイド膜32、レジスト下層膜18、及び化学増幅型レジスト膜20を備える。
【0135】
シリサイド膜32は、ハードマスク用のシリサイド膜であり、反射防止層16を挟んでいる。なお、シリサイド膜32とは、シリサイド系材料で形成された膜である。シリサイド膜32は、例えば、MoSiO、MoSiN、又はMoSiON等のMoSiを含む膜であってよい。シリサイド膜は、TaSiO、TaSiN、TaSiON、WSiO、WSiN、WSiON、ZrSiO、ZrSiN、ZrSiON、TiSiO、TiSiN、又はTiSiON等の膜であってよい。
レジスト下層膜18は、シリサイド膜32と化学増幅型レジスト膜20との密着性を改善するための有機膜であり、シリサイド膜32上に形成される。
【0136】
シリサイド膜32に対するレジスト下層膜18の密着性は、シリサイド膜32上に化学増幅型レジスト膜20を形成した場合のシリサイド32に対する化学増幅型レジスト膜20の密着性よりも高い。レジスト下層膜の膜厚は、例えば25nm以下(例えば、1〜25nm)である。より好ましくは1〜15nm、更に好ましくは5〜10nmである。レジスト下層膜18上には、化学増幅型レジスト膜20が形成される。
【0137】
図7は、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランク10の第2の実施形態における化学増幅型レジスト膜20が電子線リソグラフィー法によりパターニングされた状態を示す。このようにパターニングされた化学増幅型レジスト膜20をマスクとして、レジスト下層膜18及びシリサイド膜32がエッチングされる。また、シリサイド膜32をマスク(ハードマスク)として、遮光性膜13(反射防止層16及び遮光層14)がエッチングされる。
これにより、遮光性膜13をパターニングしたフォトマスクが製造できる。
【0138】
シリサイド膜32をエッチングする条件とは、パターニングされた化学増幅型レジスト膜20をマスクとしてシリサイド膜32をエッチングする工程におけるエッチング条件である。
この場合、このエッチング条件において、マスクとして用いられる化学増幅型レジスト
膜20がエッチングされるエッチングレートに対して、レジスト下層膜18のエッチングレートは1.0倍以上である。そのため、本例によれば、化学増幅型レジスト膜20の解像性を低下させることなく、シリサイド膜32をエッチングできる。また、これにより、シリサイド膜32のパターニングの解像性を高めることができる。更には、ハードマスクとして用いられるシリサイド膜32のパターニングの解像性が高まることにより、遮光性膜13の解像性を高めることができる。レジスト下層膜18のエッチングレートは、化学増幅型レジスト膜20のエッチングレートの1.0〜20倍である。
より好ましくは1.0〜20倍、更にましくは1.1〜10倍である。
【0139】
以下、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランク10の第2の実施形態に関わる実施例及び比較例を示す。
実施例30
実施例29と同様の透明基板12を用い、実施例29と同様に遮光性膜13(遮光層14及び反射防止層16)を形成した。更に、シリサイド膜32として、MoSiON膜を形成した。シリサイド膜32の膜厚は10nmとした。
次に、実施例6のレジスト下層膜形成組成物を回転塗布法(スピナー法)で約10nmの膜厚で塗布し、レジスト下層膜18を形成した。その後、ホットプレートで130℃で10分間熱処理して、レジスト下層膜18を乾燥させた。次に、実施例29と同様に化学増幅型レジスト膜20を形成し、レジスト膜付きフォトマスクブランクであるマスクブランク10を得た。
【0140】
比較例3
レジスト下層膜18を形成しなかった以外は実施例30と同様にして、比較例3に係わるマスクブランクを得た。
実施例30及び比較例3に係わるマスクブランクについて、化学増幅型レジスト膜とシリサイド膜との密着性の違いを比較するために、化学増幅型レジスト膜のパターニングを行った。最初に、各マスクブランクを電子線照射装置で露光し、その後、露光後の熱処理及び現像処理をして、レジストパターンを形成した。この露光は、50eV以上の加速電圧で加速された電子線によって行った。
【0141】
図8は、現像処理後の化学増幅型レジスト膜の状態を示す、実施例30に係わるマスクブランク10の上面写真である。実施例30においては、レジスト下層膜18によって化学増幅型レジスト膜20とシリサイド膜32との密着性が改善されている。そのため、所望のライン及びスペースパターンがしっかりと形成されていることが確認された。
【0142】
図9は、現像処理後の化学増幅型レジスト膜の状態を示す、比較例3に係わるマスクブランクの上面写真である。比較例3においては、化学増幅型レジスト膜とシリサイド膜との密着性が不十分であり、現像処理中にレジストパターンの消失が生じた。
【0143】
実施例31
透明基板12としてサイズ152.4mm角、厚さ6.35mmの合成石英基板を用い、透明基板12上に、モリブデンシリサイド窒化膜からなるハーフトーン位相シフター膜を形成し、さらに、遮光性膜13として、窒化クロム膜22及び炭化クロム膜24を積層させた遮光層14、酸化窒化クロムの反射防止層16を形成してマスクブランクを作製した以外は実施例29と同様にしてマスクブランク、及びマスクを得た。尚、ハーフトーン位相シフター膜は、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)において、透過率が5.5%、位相シフト量が180°となるように、組成、膜厚を調整した。また、遮光性膜13の膜厚は、ハーフトーン位相シフター膜と遮光性膜13との組み合わせにおいて、光学濃度が3.0以上となるように調整し、59nmとした。
その結果、80nmのライン及びスペースパターンが解像しており、パターンのギザつ
きも実施例29よりも更に良好な結果が得られた。
【0144】
以上、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用するマスクブランクを実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載された範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、マスクブランク及びマスクレジストに適用される下層膜形成のためのレジスト下層膜形成組成物、該レジスト下層膜形成組成物からなるレジスト下層膜が形成されたマスクブランク、並びに該マスクブランクを用いて作製されたマスクを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用する第1の実施形態に係るマスクブランク10を示す断面図である。
【図2】図2は、化学増幅型レジスト膜20が電子線リソグラフィー法によりパターニングされた図1のマスブランク10の上部を示す断面図である。
【図3】図3は、実施例29に係わるマスクブランク10のドライエッチング後の化学増幅型レジスト膜及び遮光性膜の断面を撮影した写真である。
【図4】図4は、比較例1に係わるマスクブランクのドライエッチング後の化学増幅型レジスト膜及び遮光性膜の断面を撮影した写真である。
【図5】図5は、比較例2に係わるマスクブランクのドライエッチング後の化学増幅型レジスト膜及び遮光性膜の断面を撮影した写真である。
【図6】図6は、本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用する第2の実施形態に係るマスクブランク10を示す断面図である。
【図7】図7は、化学増幅型レジスト膜20が電子線リソグラフィー法によりパターニングされた図6のマスブランク10の上部を示す断面図である。
【図8】図8は、実施例30に係わるマスクブランク10の現像処理後の化学増幅型レジスト膜の上面を撮影した写真である。
【図9】図9は、比較例3に係わるマスクブランクの現像処理後の化学増幅型レジスト膜の上面を撮影した写真である。
【符号の説明】
【0147】
10 マスクブランク
12 透明基板
13 遮光性膜
14 遮光層
16 反射防止層
18 レジスト下層膜
20 化学増幅型レジスト膜
22 窒化クロム膜
24 炭化クロム膜
32 シリサイド膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、転写パターンを形成する薄膜、レジスト下層膜及び化学増幅型レジスト膜の順に形成してなるマスクブランクに使用するレジスト下層膜形成組成物であって、ハロゲン原子を含有する繰り返し単位構造を有する高分子化合物及び溶媒を含むレジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
前記高分子化合物が、少なくとも10質量%のハロゲン原子を含有するものである請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記高分子化合物が式(1):
【化1】

(式中、Lは高分子化合物の主鎖を構成する結合基を表し、Mは直接結合、又は−C(=O)−、−CH2−又は−O−から選ばれる少なくとも1つを含む連結基であり、Qは有機基であり、L、M、及びQのうち少なくとも1つはハロゲン原子を含有する。Vは高分子化合物に含まれる単位構造の数であり1から3000の数を示す。)で表されるものである請求項1又は2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
Lがアクリル系又はノボラック系高分子化合物の主鎖である請求項3に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
ハロゲン原子が塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
高分子化合物及び溶媒に更に架橋剤、及び架橋触媒を含有するものである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
高分子化合物及び溶媒に更に酸発生剤を含有するものである請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
高分子化合物の重量平均分子量が700〜1000000である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項9】
基板上に転写パターンを形成する薄膜とレジスト下層膜が順に形成されたマスクブランクであって、前記レジスト下層膜は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のレジス
ト下層膜形成組成物から形成されたレジスト下層膜であることを特徴とするマスクブランク。
【請求項10】
前記転写パターンを形成する薄膜はクロムを含む材料からなることを特徴とする請求項9に記載のマスクブランク。
【請求項11】
前記マスクブランクは、前記レジスト下層膜上に形成される化学増幅型レジストによるレジストパターンをマスクにして塩素を含む塩素系ガスのドライエッチング処理により、前
記転写パターンを形成する薄膜をパターニングするマスク作製方法に対応する、ドライエッチング処理用のマスクブランクであることを特徴とする請求項9又は10に記載のマスクブランク。
【請求項12】
前記レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト膜が形成されていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のマスクブランク。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか1項に記載のマスクブランクにおける前記転写パターンを形成する薄膜をパターニングして形成されたマスクパターンを備えることを特徴とするマスク。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−241259(P2007−241259A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26795(P2007−26795)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】