説明

マルチモード用光モジュールの製造方法

【課題】長いマルチモード光ファイバが接続されて使用される際の性能の低下を抑えることができるマルチモード用光モジュールを製造する。
【解決手段】面発光型発光素子を内蔵したキャン1と、レンズを内蔵したバレル2からなるマルチモード用光モジュールを接続する際に、バレル2に試験用シングルモード光ファイバ10を接続し、このバレル2をキャン1に対向させた状態で面発光型発光素子を発光させた。試験用シングルモード光ファイバ10に接続された光出力計11を用いて光出力を測定しながら、バレル2および試験用シングルモード光ファイバ10をキャン1に対して相対的に3次元的に移動させる。そして、光出力が最大になった位置でバレル2をキャン1に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチモード用光モジュールの製造方法に関し、具体的には、マルチモード光ファイバと接続された状態で使用される、面発光型半導体素子を内蔵した光モジュールの製造方法、特に、その光調芯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子(レーザーダイオード)や受光素子(フォトダイオード)などの光半導体素子を内蔵した光モジュールが、光通信や、光信号による情報処理などに広く用いられている。これらの光モジュールは、発光素子や受光素子などの光半導体素子が内蔵された光半導体素子内蔵デバイスと、光ファイバが接続されるコネクタとを有する構成であり、レンズなどの光学素子が光半導体素子と光ファイバとの間に介在する場合もある。このような光モジュールは、光半導体素子と光ファイバの光軸が一致していないと、十分な光結合効率が得られず、所望の性能が達成できない。したがって、光モジュールの製造時には、光半導体素子と、光ファイバを保持するコネクタと、レンズなどの光学素子が存在する場合にはその光学素子との位置合わせ(光調芯)が非常に重要である。
【0003】
特許文献1には、発光素子からの出力光を受光素子でモニターしながら、発光素子と光ファイバの位置合わせを行う構成が開示されている。特許文献2には、光源から光ファイバを通って受光素子に光を入射させ、その光電流をモニターしながら、光コネクタの保持部品と受光素子の位置合わせを行う構成が開示されている。また、特許文献3には、2対の光ファイバの間に光導波路が配置された構成において、光導波路を介して光ファイバ間を伝わる光のパワーをモニターしながら、光ファイバの位置合わせを行う方法が開示されている。そして、特許文献4は、発光素子とレンズと光ファイバの位置合わせ作業が煩雑であることを課題として、それを解決するために、レーザーダイオードが形成されたのと同一の半導体ウエハ上にV字形状のガイド溝が形成された構成を提案している。
【0004】
近年用いられている光モジュールの一例である、いわゆるTOSA(Transmitter Optical Subassembly)は、発光素子(レーザーダイオード)が内蔵された光半導体素子内蔵デバイスであるキャン(CAN)に、光ファイバとの接続用のコネクタであるバレル(barrel)が接合された構造である。通常、バレルにはレンズが取り付けられており、このレンズによって光を集光して光ファイバとの光接続を可能にしている。TOSAの製造時には、キャンに内蔵された発光素子と、バレルに搭載されたレンズとを、光軸を一致させた状態で互いに固定する。例えば、図7に概略的に示すように、光ファイバ22を接続したバレル21をキャン23に対向させた状態で発光素子(図示せず)を発光させる。光ファイバ22に接続された光出力計24を用いて光出力を測定しながら、バレル21および光ファイバ22をキャン23に対して相対的に3次元的に移動させる。そして、光出力が最大になった位置でバレル21をキャン23に固定する。なお、キャン23自体にレンズが内蔵されており、バレル21にはレンズが取り付けられていない場合もある。この場合にも、やはり図7に示すのと同様な方法で、キャン23とバレル21の位置合わせが行われる。
【0005】
発光素子には、図8(a)に示すような面発光型発光素子25(VCSEL:Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser)と、図8(b)に示すような端面発光型発光素子26が存在する。通常、面発光型発光素子25の発光径D1は30〜40μm程度であり、端面発光型発光素子26の発光径D2(10〜20μm程度)よりも大きい。面発光型発光素子25は、マルチモード光ファイバとの光結合効率が大きくなるように作られており、シングルモード光ファイバとの光結合効率は、マルチモード光ファイバとの光結合効率の1/3以下である。また、この面発光型発光素子25は、光出力の絶対値が小さいが発光を開始するしきい値電流も小さいという特徴を有し、逆に、端面発光型半導体素子26は、光出力の絶対値が大きいが発光を開始するしきい値電流も大きいという特徴を有している。したがって、光出力の絶対値が大きくなければならない、いわゆるFTTH(Fiber To The Home)などの長距離通信には、端面発光型発光素子26を内蔵した光モジュールと、シングルモード光ファイバが用いられている。一方、建物内の複数のコンピュータ間の接続など、あまり大きな光出力は必要ではないが、省電力化が望まれる通信には、面発光型発光素子25を内蔵した光モジュールと、マルチモード光ファイバが用いられている。このように、用途に応じて光モジュールおよび光ファイバの使い分けが行われている。
【特許文献1】特開昭61−279190号公報
【特許文献2】特開平8−122587号公報
【特許文献3】特開平6−242343号公報
【特許文献4】特開平6−67070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したように、あまり大きな光出力は必要ではないが省電力化が望まれる通信には、面発光型発光素子25を内蔵した光モジュールが用いられ、この光モジュールにはマルチモード光ファイバが接続される。この光モジュールの製造時には、図7に示すのと同様に、試験用マルチモード光ファイバ22を接続したバレル21をキャン23に対向させた状態で、面発光型発光素子25を発光させる。そして、試験用マルチモード光ファイバ22に伝わる光出力を測定しながらキャン23とバレル21の位置合わせを行ってから、バレル21とキャン23を接合して光モジュールを完成させている。しかし、このようにして製造した光モジュールを用いて実使用条件下での通信を行った際に、出力および通信品質が低いという不具合が発生することがある。その不具合率は10〜15%にも達する場合がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、実使用条件下での通信の際に十分な出力および通信品質が得られ、従来よりも不具合の発生率が小さい、面発光型の発光素子を内蔵したマルチモード用の光モジュールを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、面発光型発光素子を内蔵した光半導体素子内蔵デバイスと、光ファイバが接続されるコネクタとが互いに接合され、コネクタにマルチモード光ファイバが接続された状態で使用されるマルチモード用光モジュールの製造方法において、シングルモード光ファイバをコネクタに接続した状態で、コネクタを光半導体素子内蔵デバイスに対向させ、面発光型発光素子を作動させて面発光型発光素子からシングルモード光ファイバに入射した光を測定しながら、光半導体素子内蔵デバイスとコネクタの位置合わせを行うことを特徴とする。光半導体素子内蔵デバイスとコネクタの位置合わせを行う際に用いられるシングルモード光ファイバは、マルチモード用光モジュールの使用時にコネクタに接続されるマルチモード光ファイバよりも短い、試験用シングルモード光ファイバである。
【0009】
この方法によると、実使用時にはマルチモード光ファイバに接続されるマルチモード用光モジュールの製造時に、試験用シングルモード光ファイバを用いて、コネクタと光半導体素子内蔵デバイスの相対位置合わせを行う。通常、試験用光ファイバは実使用時に接続される光ファイバに比べて非常に短いため、実使用時に性能の低下が見られることがあった。しかし、本発明では、試験用マルチモード光ファイバではなく試験用シングルモード光ファイバを用いることにより、厳しい条件下で高精度の光調芯を行う。従って、実使用時に長いマルチモード光ファイバを接続して光通信を行っても、性能の低下が抑えられる。
【0010】
本発明は、面発光型発光素子を内蔵した光半導体素子内蔵デバイスと、光ファイバが接続されるコネクタとが互いに接合され、コネクタにマルチモード光ファイバが接続された状態で使用されるマルチモード用光モジュールの製造方法において、モードスクランブラーが取り付けられたマルチモード光ファイバをコネクタに接続した状態で、コネクタを光半導体素子内蔵デバイスに対向させ、面発光型発光素子を作動させて面発光型発光素子からマルチモード光ファイバに入射した光を測定しながら、光半導体素子内蔵デバイスとコネクタの位置合わせを行うことをもう1つの特徴とする。光半導体素子内蔵デバイスとコネクタの位置合わせを行う際に用いられるマルチモード光ファイバは、マルチモード用光モジュールの使用時にコネクタに接続されるマルチモード光ファイバよりも短い、試験用マルチモード光ファイバである。この方法でも、モードスクランブラーが取り付けられた試験用マルチモード光ファイバが試験用シングルモード光ファイバと同様の働きをし、前記したのと同様な作用が得られる。
【0011】
なお、光半導体素子内蔵デバイスはキャンであり、コネクタはバレルであり、キャンまたはバレルにはレンズが取り付けられており、光半導体素子内蔵デバイスとコネクタの位置合わせ工程は、面発光型発光素子とレンズの光調芯を行う工程であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、実使用時に接続されるマルチモード光ファイバよりも短い試験用の光ファイバを用いる場合であっても、比較的厳しい条件で光調芯を行うことができるため、実使用時の性能の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1に、本発明の製造方法によって製造された光モジュールが示されている。この光モジュールはキャン1とバレル2が接合されたいわゆるTOSAと呼ばれるものである。
【0015】
キャン1は、ベース3上に、図8(a)に示されているのと同様な面発光型発光素子(レーザーダイオード)4が実装され、この面発光型発光素子4が、少なくとも一部が開口部または透明部になっているキャップ5で覆われた構成である。さらに、面発光型発光素子4に接続されている端子6が、ベース3の、面発光型発光素子4搭載面と反対側に突出している。バレル2は、キャン1のキャップ5を覆うことができる形状の円筒部7aを有するハウジング7と、円筒部7a内に保持されているレンズ8とからなる。ハウジング7には、光ファイバの端部に位置するフェルールが収容される開口部7bと、レンズ8が取り付けられた部分と開口部7bとを連通させる光路孔7cが形成されている。このキャン1とバレル2が、レンズ8と面発光型発光素子4の光軸が一致するように位置合わせされた状態で、接着剤9によって接合されている。こうして製造された、面発光型発光素子4を内蔵した光モジュールはマルチモード光ファイバ(図示せず)に接続されて、例えば建物内の複数のコンピュータ間の光通信などのために使用される。
【0016】
このような光モジュールの製造時には、キャン1とバレル2をそれぞれ製造した後に、レンズ8と面発光型発光素子4の光軸が一致するように位置合わせ(光調芯)してから、接着剤9を用いてキャン1とバレル2を接合する。所望の性能を有する光モジュールを製造するためには、この光調芯作業が非常に重要である。そこで、本実施形態では、図2に示すように、試験用シングルモード光ファイバ10(コア径は9μm程度)を接続したバレル2をキャン1に対向させた状態で面発光型発光素子4を発光させる。そして、試験用シングルモード光ファイバ10に接続された光出力計11を用いて光出力を測定しながら、バレル2および試験用シングルモード光ファイバ10をキャン1に対して相対的に3次元的に移動させる。光出力が最大になった位置で、接着剤9を用いてバレル2をキャン1に固定する。
【0017】
前記した通り、この光モジュールは面発光型発光素子4を内蔵しており、発光径が大きく、十分な光結合効率を得るためにマルチモード光ファイバ(図示せず)が接続されて使用される。しかし、本実施形態では、試験用シングルモード光ファイバ10を用いて、キャン1とバレル2の位置合わせを行っている。このような位置合わせ工程を行った後にキャン1とバレル2を接合して完成させた光モジュールは、マルチモード光ファイバと接続されて実使用条件下での光通信を行った際に、優れた性能を発揮した。その根拠について以下に説明する。
【0018】
なお、本明細書中で言う「試験用光ファイバ」は、光モジュールの実使用時に接続される可能性のあるほとんどの光ファイバよりも短い光ファイバであり、一般的に1〜2m程度の長さの光ファイバである。
【0019】
特許文献1〜4に記載されているように、従来は、実使用時にマルチモード光ファイバと接続されて用いられる光モジュールの光調芯を行う際には、試験用マルチモード光ファイバが用いられ、実使用時にシングルモード光ファイバと接続されて用いられる光モジュールの光調芯を行う際には、試験用シングルモード光ファイバが用いられていた。すなわち、実使用時と異なる種類の光ファイバを用いて光調芯を行うことは、従来は行われていなかった。しかし、試験用マルチモード光ファイバを用いて光調芯を行って製造した、面発光型発光素子を内蔵した光モジュールにおいては、実使用条件下での通信時に所望の出力および通信品質が得られない不良品が10〜15%程度存在した。
【0020】
本出願人が検討したところ、光調芯時、すなわちキャンとバレルの位置合わせ時には、長さが1〜2m程度の試験用マルチモード光ファイバ(コア径は50μm程度)を用いて光出力をモニターしているが、実使用条件下では、試験用マルチモード光ファイバよりも長い、最低でも数m、長い場合には数kmにも及ぶほどのマルチモード光ファイバを用いて通信を行うことが、不具合率の高い原因ではないかと推察された。すなわち、1〜2m程度の短い試験用マルチモード光ファイバを用いた光通信時には問題にならなくても、その試験用マルチモード光ファイバよりもはるかに長いマルチモード光ファイバを用いた光通信時には、特に、1次モード以外(2次モード以上)の光や、光ファイバのコアの外部の光の影響により、性能の低下が起こると考えられる。
【0021】
そこで、本出願人は、光調芯の精度を従来よりも高めることによって、実使用条件下での通信時の性能の低下を抑えることを図ることにした。そして、光調芯の精度を容易に高めるために、試験用マルチモード光ファイバに代えて試験用シングルモード光ファイバを用いて光調芯を行う方法を発明した。シングルモード光ファイバは、マルチモード光ファイバに比べて口径が小さいため、口径が小さいシングルモード光ファイバを用いて光調芯を行うと、口径が大きいマルチモード光ファイバを用いて光調芯を行う場合に比べて、非常に精密な位置合わせが必要になる。したがって、より高精度の光調芯が行われることになる。さらに詳しく言うと、シングルモード光ファイバは1次モードの光のみを通し、2次以上の高次モードの光は通さない。そして、1次モードの光と高次モードの光は、光ファイバへの入射角が異なる。図3に示すように、1次モードの光の方が、高次モードの光に比べて、より平行であり、光ファイバ内での反射回数が少ないため伝播損失がより小さい。したがって、1次モードの光を用いるとより正確な光軸調整が行えるので、1次モードの光のみを伝播するシングルモード光ファイバを用いて光調芯を行うと実使用上での性能低下を改善できる。一方、マルチモード光ファイバを用いて光調芯を行うと、光ファイバ内での反射回数が多く伝播損失がより大きい高次モードの光が存在するため実使用上での性能低下の可能性が高い。
【0022】
以上説明した通り、本実施形態では、マルチモード用の光モジュールを製造するための光調芯工程において試験用シングルモード光ファイバ10を用いることによって、高次モードの光やコアの外部の光の影響を低減し、試験用マルチモード光ファイバを用いるよりも厳しい条件での位置合わせが行える。したがって、実使用条件下で、試験用の光ファイバよりも長いマルチモード光ファイバに接続して光通信を行っても、性能低下が小さい。こうして、製造した光モジュールの歩留まりは99%程度で不具合率は1%程度であり、従来よりも大きく改善された。
【0023】
図4(a),(b)には、実際に本実施形態の方法で製造した多数のマルチモード用光モジュールと、試験用マルチモード光ファイバを用いて光調芯を行った従来の多数のマルチモード用光モジュールとの性能を比較した結果を示している。
【0024】
図4(a)は、各光モジュールを実使用条件下かつ25度の温度で作動させたときの光強度を横軸に取り、その光モジュールを25度から75度まで温度変化させた際の光強度の変化率を示している。このグラフを見ると、本実施形態の光モジュールは従来の光モジュールよりも、温度変化による光強度の変動が小さく(光強度の変化率が0%に近く)、光強度の変化率のばらつきも小さいことがわかる。
【0025】
図4(b)は、各光モジュールを実使用条件下かつ25度の温度で作動させたときのスロープ効率を横軸に取り、その光モジュールを25度から75度まで温度変化させた際のスロープ効率の変化率を示している。このグラフを見ると、本実施形態の光モジュールは従来の光モジュールよりも、温度変化によるスロープ効率の変動が小さく(スロープ効率の変化率が0%に近く)、スロープ効率の変化率のばらつきも小さいことがわかる。
【0026】
図5,6には、本発明の第2の実施形態が示されている。本実施形態では、試験用マルチモード光ファイバ12を用いて光調芯を行っているが、試験用マルチモード光ファイバ12にモードスクランブラー13,14が取り付けられている。図5に示されている構成では、試験用マルチモード光ファイバ12を挟み込んで折り曲げる形態のモードスクランブラー13が用いられている。また、図6に示されている構成では、試験用マルチモード光ファイバ12をコイル状に巻き付ける形態のモードスクランブラー14が用いられている。図5,6のいずれのモードスクランブラー13,14も、高次モードの光を減衰させ、主に1次モードの光のみを伝播させるため、第1の実施形態において試験用シングルモード光ファイバ10を用いて光調芯を行ったのと実質的に同様の作用効果が得られる。なお、本実施形態は、試験用マルチモード光ファイバ12とモードスクランブラー13,14を用いること以外は、全て第1の実施形態と同様であるので、これ以上の説明は省略する。
【0027】
本発明の第1の実施形態では、実使用条件下で用いられる光ファイバと光調芯工程で用いられる光ファイバとが異なる。また、第2の実施形態でも、マルチモード光ファイバにモードスクランブラーを取り付けることによりシングルモード光ファイバと同等の働きをさせているため、実質的には、実使用条件下で用いられる光ファイバと光調芯工程で用いられる光ファイバとが異なると言える。これは、実使用条件よりも厳しい条件で光調芯工程を行うことにより、非常に長い光ファイバが接続される実使用時の性能低下を抑えるという本発明の技術的思想を実現するものである。これに対し、仮に、シングルモード用の光モジュールを製造するための光調芯工程において試験用マルチモード光ファイバを用いたとすると、実使用条件よりも緩やかな条件で光調芯工程が行われることになり、むしろ実使用時の性能低下が著しくなるおそれがある。これは、前記した本発明の技術的思想とは全く逆である。したがって、本発明は、マルチモード用光モジュールを製造するための光調芯工程において、試験用シングルモード光ファイバ、またはシングルモード光ファイバと同等の働きをする試験用光ファイバを用いることが必須の要件であると言える。
【0028】
また、以上の説明では、マルチモード用光モジュールとして、面発光型発光素子4を内蔵した光モジュールを挙げている。これは、前記した通り、端面発光型発光素子は、通常はシングルモード光ファイバに接続されて使用されるので除外されるためである。さらに、受光素子(フォトダイオード)は、発光素子の発光径に比べて大きな受光径を有しているので、シングルモード光ファイバを用いると光調芯が適切に行えない可能性があるという理由で除外されるためである。
【0029】
マルチモード用光モジュールの面発光型発光素子4以外の構成については、特に限定されるものではない。すなわち、図示されているようなキャン1とバレル2からなる構成に限られず、また、レンズ8等の光学素子の配置も図示されるものに限られず、面発光型発光素子4と光ファイバの間に光学素子が介在しない構成も考えられる。このように、様々な形態のマルチモード用光モジュールに関して、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に基づいて製造されるマルチモード用光モジュールを示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のマルチモード用光モジュールの光調芯工程を示す概略図である。
【図3】光ファイバ内の1次モードの光と高次モードの光の伝播する状態を示す概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に基づいて製造されたマルチモード用光モジュールと、従来の方法で製造されたマルチモード用光モジュールの性能を比較したグラフであり、(a)は温度変化に伴う光強度の変化率を示すグラフ、(b)は温度変化に伴うスロープ効率の変化率を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態のマルチモード用光モジュールの光調芯工程を示す概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のマルチモード用光モジュールの光調芯工程の他の例を示す概略図である。
【図7】従来のマルチモード用光モジュールの光調芯工程を示す概略図である。
【図8】(a)は面発光型発光素子を示す概略図、(b)は端面発光型発光素子を示す概略図である。
【符号の説明】
【0031】
1 キャン(光半導体素子内蔵デバイス)
2 バレル(コネクタ)
3 ベース
4 面発光型発光素子(レーザーダイオード)
5 キャップ
6 端子
7 ハウジング
7a 円筒部
7b 開口部
7c 光路孔
8 レンズ
9 接着剤
10 試験用シングルモード光ファイバ
11 光出力計
12 試験用マルチモード光ファイバ
13,14 モードスクランブラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面発光型発光素子を内蔵した光半導体素子内蔵デバイスと、光ファイバが接続されるコネクタとが互いに接合され、前記コネクタにマルチモード光ファイバが接続された状態で使用されるマルチモード用光モジュールの製造方法において、
シングルモード光ファイバを前記コネクタに接続した状態で、該コネクタを前記光半導体素子内蔵デバイスに対向させ、前記面発光型発光素子を作動させて前記面発光型発光素子から前記シングルモード光ファイバに入射した光を測定しながら、前記光半導体素子内蔵デバイスと前記コネクタの位置合わせを行うことを特徴とする、マルチモード用光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記光半導体素子内蔵デバイスと前記コネクタの位置合わせを行う際に用いられる前記シングルモード光ファイバは、前記マルチモード用光モジュールの使用時に前記コネクタに接続される前記マルチモード光ファイバよりも短い、試験用シングルモード光ファイバである、請求項1に記載のマルチモード用光モジュールの製造方法。
【請求項3】
面発光型発光素子を内蔵した光半導体素子内蔵デバイスと、光ファイバが接続されるコネクタとが互いに接合され、前記コネクタにマルチモード光ファイバが接続された状態で使用されるマルチモード用光モジュールの製造方法において、
モードスクランブラーが取り付けられたマルチモード光ファイバを前記コネクタに接続した状態で、該コネクタを前記光半導体素子内蔵デバイスに対向させ、前記面発光型発光素子を作動させて前記面発光型発光素子から前記マルチモード光ファイバに入射した光を測定しながら、前記光半導体素子内蔵デバイスと前記コネクタの位置合わせを行うことを特徴とする、マルチモード用光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記光半導体素子内蔵デバイスと前記コネクタの位置合わせを行う際に用いられる、前記モードスクランブラーが取り付けられた前記マルチモード光ファイバは、前記マルチモード用光モジュールの使用時に前記コネクタに接続される前記マルチモード光ファイバよりも短い、試験用マルチモード光ファイバである、請求項3に記載のマルチモード用光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記光半導体素子内蔵デバイスはキャンであり、前記コネクタはバレルであり、前記キャンまたは前記バレルにはレンズが取り付けられており、
前記光半導体素子内蔵デバイスと前記コネクタの位置合わせ工程にて、前記面発光型発光素子と前記レンズの光調芯を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチモード用光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−187774(P2007−187774A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4458(P2006−4458)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】