説明

モリブデン系ターゲット及び溶射によってターゲットを製造するための方法

本発明は、少なくとも1つのモリブデン系化合物を含む公称厚さのターゲットであって、ラメラ微細構造、1000ppm未満、好ましくは600ppm未満、特に好ましくは450ppm未満の酸素量、及び前記化合物の理論電気抵抗率の5倍未満、好ましくは3倍未満、特に好ましくは2倍未満の電気抵抗率を有することを特徴とするターゲットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中又は不活性若しくは反応性雰囲気中で実施される堆積プロセスにおいて使用することを意図したターゲットを製造するための方法であって、特にはマグネトロンスパッタリング又はイオンビームスパッタリングによる方法に関する。
【0002】
本発明の別の側面によれば、本発明はまた、上記の方法を実施することによって得ることができるモリブデン系ターゲット、当該ターゲットからスパッタされた物質に基づく膜を得るためのこのようなターゲットの使用、及び本発明の方法によって上記ターゲットを製造するための化合物の組成に関する。
【背景技術】
【0003】
幾つかの粉末成形技術を含むターゲットを製造するための種々の技術が知られている。したがって、当該ターゲットは、鋳造プロセス;粉末焼結プロセス、続いて熱成形である場合が多い成形操作、次いで支持体上での集成;焼結セグメントの直接的な集成;又はあまり一般的ではないが溶射技術、より詳しくはプラズマ溶射技術によって得ることができる。
【0004】
これらのターゲットは、特にガラス基材上への薄膜の堆積のために産業規模で一般に採用されているプロセス、例えばマグネトロンスパッタリングプロセスのようなプロセスにおいて使用することを意図している。このプロセスでは、堆積されるべき化学元素を含むターゲットの近くに高真空中でプラズマを発生させる。プラズマの活性種は、ターゲットを攻撃することにより、上記の化学元素を剥ぎ取り、それらが基材上に堆積して所望の薄層が形成される。
【0005】
モリブデンを堆積させることを意図したターゲットの特定のケースでは、プラズマがスパッタリングガス、好ましくはAr、Kr、Xe又はNeタイプの希ガスのみから構成される非反応性の堆積プロセスが用いられる。このプロセスは、大きな基材に対して実施され、例えば両辺の長さが6mを超える平坦なガラスシート上に薄層を堆積させることが可能である。
【0006】
これらのターゲットは平面形状又は管状形状を有する。
【0007】
平面ターゲットは、非常により複雑な回転式ターゲット専用のカソードと比較すると、比較的簡単な構造のカソードにおいて組み入れることができるという利点を有する。しかしながら、平面ターゲットは一般的に50%以下の利用率を有し、これは実質的に50%を超える利用率を有する回転式ターゲットとは異なる。
【0008】
特に高価な金属であるモリブデンの薄膜の特定のケースでは、米国特許第4,356,073号に記載されているように、円筒形状の回転式ターゲットを使用することが好ましい。というのも、これらのターゲットは、70%超、好ましくは75%超の原料歩留まり(薄層を製造するためのターゲットに利用できる物質の量に対するスパッタされる物質の割合を表す)を有するからである。しかしながら、他の種々のマグネトロンターゲットの形状、すなわち平面の(ディスク、正方形、長方形)形状が知られており、本発明は円筒形状以外の形状にも適用できる。
【0009】
純粋なモリブデンに関する文献データが以下に与えられる。
−密度:10.28g/cm3
−熱膨張:4.8×10-6-1
−ヤング率:324N/mm2
−電気抵抗率:5.34μΩ・cm
−熱伝導率:139W/mK
−融点:2630℃
【0010】
さらに、ターゲットを用いたマグネトロンスパッタリング以外にも、モリブデンを堆積させるための他の真空プロセスがあり、これらのプロセスとしては、例えば、レーザースパッタリング(パルス又は連続レーザーを用いたレーザーアブレーション)及びイオンビームスパッタリングが挙げられる。これらのプロセスも、本発明によるターゲットの使用から利益を得ることができる。
【0011】
より詳しく述べると、モリブデンのマグネトロンターゲット又は他の耐火金属からなるターゲットについては、多くの発明が以下のプロセスに関して出願され、欧州特許出願公開第1784518号、米国特許出願公開第2008/0193798号及び国際公開第2006/041730号の主題を構成している。
【0012】
インゴット又は予備成形体を(200〜250MPaの圧力下において1780〜2175℃の温度で)プレスして次いで焼結し、続いてこの予備成形体を圧延、押出又は鍛造によって(約900℃で)熱間成形する。一般的には、このプロセスはまた、ターゲット中の酸化物の含有量を低減するために水素又は還元性雰囲気中での熱処理を含み、任意選択で応力緩和のアニーリング処理を含む。
【0013】
また、ガス/粉末混合物を超音速でスプレーすることにあるコールドスプレイングによってターゲットを完全に又は部分的に構成又は修復することが国際公開第2006/117145号から公知であり、ここで、上記の粉末は溶融状態ではないので、溶射プロセスとは異なる。
【0014】
上記の文献では、これらの方法を用いた種々の組成を有するターゲットの製造も包含されているが、純粋なモリブデンターゲットは、通常、以下の特性を有するものである。
−純度:>99.95%
−密度:理論密度の95%超
−微粒子の微細構造
【0015】
これらの特徴を有するターゲットは、例えば、カルコパイライト群(例えばCIS又はCIGS)に属する活性材料に基づく光起電力用途のための電極として用いられる薄膜を得るようにスパッタされる。モリブデンは、電気伝導率(30μΩ・cm未満)、耐温度性(耐火物特性:融点:2610℃)及び高いセレン化抵抗性の間で優れた妥協を提供する。これは、モリブデンがCIS又はCIGS堆積工程の際に用いられるセレンリッチ雰囲気に対してより高い抵抗性を有するからであり、モリブデンはセレンと表面上で反応してその電気伝導特性を損なうことなくMoSe2保護層を形成し、あるいは、極めて低い欠陥(「ピンホール」)密度を要求するTFT(薄膜トランジスタ)用途に関しては、1〜5μmのサイズを有する500個/m2の最大ピンホール密度を特に挙げることができる。このような品質レベルは、スパッタリングプロセスがアーク放電タイプの如何なる電気的不安定性もない場合にのみ達成することができる。これは、ターゲットが目立った多孔性を有していない、すなわち少なくとも90%の密度を有する場合に特に可能である。
【0016】
プラズマ溶射によってターゲットを得るための方法はこれまでに得られたものと同様の特性を与えないことが知られているものの、本発明は、プラズマ溶射によってモリブデン系ターゲットを製造するための方法に適用でき、従来の製造方法によって得られたものよりも優れているとは言わないまでも少なくともそれに等しい使用における性能を提供する。
【0017】
この目的で、少なくとも1つのモリブデン系化合物を含むターゲットを、溶射、特にはプラズマトーチによるプラズマ溶射によって製造するための本発明の方法は、粉末組成物の形態の前記化合物の少なくとも一部が、不活性ガスの雰囲気中で溶射によって前記ターゲットの少なくとも一方の表面部分にスプレーされ、及びその構築の際に前記ターゲット上に向けられかつトーチの周りに分布される強力な極低温の冷却ジェットが使用されることを特徴としている。
【0018】
−150℃以下の温度を有する流体が規定により極低温流体であるとみなされる。
【0019】
プラズマ溶射の際の極低温の冷却ジェット(極低温の液体ジェット、混合された極低温のガス/液体ジェット、又は極低温のガスジェット)の使用により、ターゲットの品質を改善することができ、一方で、以下の2つの機能を提供することができる。
−スプレー領域の即時の冷却を提供し、それによって(チャンバー中に酸素又は窒素が少量でさえ存在することで)スプレーされる材料の部分的な酸化又は窒化が生じる可能性を排除する。
−粒子間の優れた清浄な凝集及び連続パスを提供するようにスプレー表面の強力な洗浄を提供する。
【0020】
さらに、プラズマトーチ及びプラズマガス混合物を使用することで、スプレーされる粉末粒子の飛行を大きく低減させ、したがってターゲット中に存在する酸素の含有量を粉末中に存在する酸素の含有量に比べて低減させることができる(Toc<Top(式中、Tocはターゲット中に存在する酸素の含有量であり、Topは粉末中に存在する酸素の含有量である)。
【0021】
さらに、本発明の方法は、以下のより好都合な側面を含む。
−プラズマトーチとターゲットの間の相対運動が確立される。
−ターゲットの表面が化合物の堆積前に準備される。
−表面の準備としては、当該ターゲットの表面部分を研磨粒子のジェットでブラストする工程(サンドブラストと称される)又は副層の定着に適した筋を機械加工する工程が含まれる。
−表面の準備としては、当該ターゲットの表面部分に定着材料の膜(副層)をスプレーする工程が含まれる。
【0022】
本発明の他の実施態様では、以下の配置の1つ及び/又は他のものを任意選択でさらに用いることができる。
−化合物が、不活性ガスでパージ又はリンスされ、次いで50mbar〜1100mbarの範囲であることができる圧力まで不活性ガスで満たされたチャンバーにスプレーされ、酸素欠乏雰囲気をチャンバー内に作り出すようにされる(%O2<5%)。
−溶射がプラズマトーチによって実施され、用いられるプラズマガス混合物は還元性であり(粉末中に最初に存在する酸化されたモリブデンの含有量を低減することができる)、好ましくはプラズマガス混合物の組成は10%超の水素又は他の還元性プラズマガスを含む。
−定着副層が用いられ、それは当該ターゲットの表面部分に前記化合物を溶射する前に堆積される。
−ターゲットはプラズマ溶射の際に熱的に調節される。
−5μm<D10<50μm、25μm<D50<100μm、及び40μm<D90<200μmで表される粒度分布を有する粉末粒子を含むスプレーされた化合物の粉末組成物が用いられる。
−酸化物形態のターゲット中に存在する酸素の含有量は出発粉末中に最初に存在する酸素の含有量よりも5%超小さい。
−溶射工程の後、それに続く熱処理工程を、ターゲット中に存在する酸素の含有量を低減させるために還元性雰囲気において含む。
−熱ジェットの異なるポイントで、注入パラメータが各注入器に注入される材料に従って独立して調整される異なる材料を注入するために複数の化合物注入器が用いられる。
【0023】
本発明の別の側面は、本発明の方法によって任意に製造され、そしてスパッタリング装置、特にはマグネトロンスパッタリング装置又はターゲットを用いた他の任意の真空スパッタリング装置において使用されることを意図したターゲットであって、モリブデンを主として含むターゲットに関する。
【0024】
この目的のため、少なくとも1つのモリブデン系化合物を含む公称厚さ(e)の本発明のターゲットは、
−ラメラ微細構造、
−1000ppm未満、好ましくは600ppm未満、より好ましくは450ppm未満の酸素含有量、及び
−化合物の理論電気抵抗率の5倍未満、好ましくは3倍未満、より好ましくは2倍未満の電気抵抗率
を有することを特徴としている。
【0025】
この抵抗率の測定は、Van der Pauw(ASTM F76)法を用いて実施され、相対抵抗率の測定値は、大量の化合物の20℃における理論値(又は文献から得られる値)に対して算出される(なお、モリブデンは5.34μΩ・cmの抵抗率を有する)。
【0026】
本発明の好ましい実施態様では、以下の配置の1つ及び/又は他のものを任意選択でさらに用いることができる。
−ターゲットはまた、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、タングステン、レニウム、銅、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、及びロジウムから選択される少なくとも1つの追加元素を含み、ターゲットは1つ又は複数の追加元素を0.5〜30wt%有する。
【0027】
この場合には、1つ又は複数の追加元素を以下の手段の1つによって提供することができる。
−各粉末粒子がターゲットの所望の組成(粉末の溶射の際に揮発による一様でない損失を考慮するために僅かに異なる可能性がある)を有する予め合金にした粉末を使用する。
−一方で、純粋又は予め合金にしたモリブデン粉末と、他方で、1つ又は複数の他の純粋又は予め合金にした粉末とからなり、ターゲットの最終的な組成が望ましいものであるような粉末混合物を使用する。
−それぞれが溶射工程の際に熱ジェット中に異なる流路によって注入される2つ以上の粉末を使用する。
【0028】
ターゲットの別の実施態様によれば、ターゲットは、モリブデンとケイ素とから構成され、そのモル比は、ケイ素5モル当たりモリブデン1モルからケイ素1モル当たりモリブデン5モルまでの範囲であることができ、好ましくはケイ素2モル当たりモリブデン1モルである。
−ターゲットのラメラ微細構造は複合体であり、純ケイ素のラメラと並置された純モリブデンのラメラを含む。
−ターゲットは平面形状である。
−ターゲットは管状形状である。
−ターゲットは、その端部のそれぞれに追加の厚さの材料を有する。
−ターゲットは、化合物が堆積される1つ又は複数の部分を備え、この1つ又は複数の部分はスパッタリング機に取り付けることができる平面の支持体であるか又は次いでこの支持体に結合される中間部分である。
−追加の厚さは、化合物層の公称厚さの約25〜50%である。
−ターゲットは、85%超、好ましくは90%超の密度を有する(ISO5016基準に従って測定された密度)。
−公称厚さ(e)は1〜25mm、好ましくは6〜14mmである。
−ターゲットは、50ppm未満、好ましくは35ppm未満の鉄含有量を有する。
−ターゲットは、20ppm未満、好ましくは10ppm未満のNi含有量を有する。
−ターゲットは、50ppm未満、好ましくは20ppm未満のCr含有量を有する。
−ターゲットは、300ppm未満、好ましくは200ppm未満のタングステン含有量を有する。
−ターゲットは、少なくとも99.95%の純度を有する。
−ターゲットは、使用中のマグネトロンターゲットの予想される特性(十分な機械強度、十分な熱伝導率、使用中のターゲットの冷却用水に対する耐食性など)に対応する特性を提供する支持材料、例えば銅若しくは銅合金又はオーステナイト系ステンレス鋼、例えばX2CrNi18−9若しくはX2CrNiMo17−12−2の上に構成される。
【0029】
本発明のさらに別の特徴によれば、本発明は、上記のターゲットをスパッタリングすることによって得られたモリブデン系又はMoSi2系膜に関する。
【0030】
本発明の好ましい実施態様によれば、以下の配置の1つ及び/又は他のものを任意選択でさらに用いることができる。
−モリブデン膜は、25μΩ・cm未満、好ましくは20μΩ・cm未満の抵抗率を有する。
【0031】
本発明のさらに別の側面によれば、本発明は、スクリーンが以下の技術、すなわち、TFT(薄膜トランジスタ)、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、OLED(有機発光ダイオード)、ILED(無機発光ダイオード)又はFED(電界放出ディスプレイ)のうちの1つによって得ることができる平面ディスプレイスクリーンに関し、あるいは少なくとも1つのMo系又はMoSi2系膜を含む半導体部材に関し、あるいは本発明は半導体部材の製造におけるマスクとして使用されるMoSi2膜に関する。
【0032】
本発明のさらに別の側面によれば、本発明は、上記のターゲットから形成された少なくとも1つの電極であって、光起電力電池又はモジュールにおいて使用される電極に関する。
【0033】
本発明のさらに別の特徴によれば、本発明は、上記のターゲットをスパッタリングすることによって得られたモリブデン膜に関する。
【0034】
本発明の好ましい実施態様によれば、以下の配置の1つ及び/又は他のものを任意選択でさらに用いることができる。
−膜は、80nm〜500nmの膜厚に関して20μΩ・cm未満、好ましくは17μΩ・cm未満の抵抗率を有する。
−膜は、250ppm未満、好ましくは220ppm未満の酸素含有量を有する。
−膜は、50ppm未満、好ましくは30ppm未満の窒素含有量を有する。
−膜は、50ppm未満、好ましくは40ppm未満の鉄含有量を有する。
−膜は、10ppm未満のニッケル含有量を有する。
−膜は、20ppm未満のクロム含有量を有する。
−膜は、150ppm未満のタングステン含有量を有する。
−膜はまた、バナジウム、ニオブ、タンタル、タングステン、レニウム、銅、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、及びロジウムから選択される少なくとも1つの追加元素を含み、膜は1つ又は複数の追加元素を0.5〜30wt%有する。
【0035】
限定的でない例として、本発明は以下の図面によって示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1a】本発明の製造方法によって得られたMoターゲットの断面の微細構造を示す図である。非常に高密度の構造を示し、粒子間の接続は酸化物のラメラがないために区別することが難しい。
【図1b】本発明の製造方法によって得られたMoターゲットの断面の微細構造を示す図である。非常に高密度の構造を示し、粒子間の接続は酸化物のラメラがないために区別することが難しい。
【図1c】本発明の製造方法によって得られたMoターゲットの断面の微細構造を示す図である。高倍率で、溶射プロセスの典型的なラメラ構造を区別することが可能である。
【図2a】従来の製造方法、すなわち押出、次いで熱成形によって得られたMoターゲットの断面の微細構造を示す図である。管状ターゲットに関し、押出方向に沿った一方向の粒子テクスチャリングを有する熱成形(押出)が明らかにされている。
【図2b】従来の製造方法、すなわち焼結、次いで熱成形によって得られたMoターゲットの断面の微細構造を示す図である。平面ターゲットに関し、その微細構造は焼結微細構造に関して従来のものである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明の過程で明らかになるであろう。
【0038】
ターゲットが構築される支持体は、銅、銅合金、ステンレス鋼、又はマグネトロンターゲットの製造と適切に適合できる他の任意の合金から製造することができる。本発明では、支持体に関する本発明の方法に関連する特定の要件はないが、形状、機械強度、及び冷却水に対する化学的不活性の観点でマグネトロンターゲットに関する通常の要件は満たす必要がある。
【0039】
[支持体の表面の調製]
脱脂の後、支持体の表面は、砥粒のジェットでブラストすることにより調製される。これらの砥粒としては、種々のもの、すなわちコランダム(溶融白色アルミナ)粒子、褐色コランダム粒子、アルミナ−ジルコニア砥粒、ヒューズ−キャストスラグ粒子から製造された砥粒(バシルグリット(Vasilgrit)タイプ)、アルマンディンガーネット粒子若しくは角形鋼又は鋳鉄のショットであることができる(このリストは網羅的なものではない)。
【0040】
好ましくは、以下の研磨材、すなわち、コランダム(溶融白色アルミナ)及びアルミナ−ジルコニア(例えばSaint−Gobain Coating SolutionsからのAZ24)(この材料は、粒子の破壊及びその結果として粒子分の表面への包含を抑制するその高い靭性のため好ましく、このような包含はコーティングの接着に対して悪影響を及ぼす)が用いられる。研磨粒子の平均直径は、研磨材のタイプに応じて、180〜800μmであることが好ましい。この操作の目的は、結合副層又はモリブデン系化合物の正しい接着を確実にすることができる表面粗さを与えることである。
【0041】
別の方法は、副層又はモリブデン化合物の良好な接着を可能にする筋を機械加工することにある。
【0042】
[溶射による結合副層の製造]
ターゲットの機能層の機械的接着を最適化するために、結合副層を溶射によって製造することができる。この操作は、プラズマ(粉末)溶射、電気アーク(ワイヤ)溶射、酸素ガスフレーム溶射(設備によってはワイヤ又は粉末)、HVOF(高速酸素燃料)プロセスを用いた溶射、爆裂溶射プロセス、及び粉末が注入される任意選択で予備加熱されたガスを用いたコールドスプレープロセスから選択される通常の溶射プロセスを用いることができる。この操作は、周囲空気中で本発明を損なうことなく実施することができる。
【0043】
結合副層の材料は、副層として一般に用いられる以下の従来の材料から選択することができる。
−ニッケル又はニッケル系合金、すなわちNiAl、NiCr又はNiCrAl;鉄又は第一鉄の合金、すなわちFeCrAl鋼、FeCrC鋼又はFeMnC鋼;X2CrNi18−9又はX2CrNiMo17−12−2のオーステナイト系ステンレス鋼など
−銅又は銅合金、例えばCuAl、CuAlFe、CuZnなど
−モリブデン又はモリブデン合金、すなわちMoCuなど
【0044】
上記リストは網羅的なものではなく、支持体チューブの材料及び溶射設備に応じて(及び適切な形態のフィラー材料の入手可能性に応じて)副層材料を選択することができる。
【0045】
[本発明のターゲットの機能膜の、好ましくはプラズマ溶射による形成]
ターゲットの機能膜は、以下の特定の条件下で、溶射、好ましくはプラズマ溶射によって形成される。
−「不活性な」雰囲気、すなわち、酸素及び窒素の含有量が低く、主として不活性ガス(例えばアルゴン)からなる雰囲気を有し、圧力が50mbar〜1100mbarであるチャンバーにおいて実施されるプラズマ溶射
−還元性のプラズマガス混合物を用いたプラズマス溶射(これにより粉末粒子を溶融するとき及び粉末粒子が基材上を飛行している間、粉末粒子の表面に最初に存在する酸素の量を低減することができる)
−不活性流体の液体又はガスの強力な極低温ジェットを吹き付けるためのノズルのプラズマ溶射トーチのすぐ近くでの使用(このジェットはトーチの周りに分布される)
−ターゲット上に形成される厚さ、特にターゲットの端部における厚さの可能性のある変更を可能にして、「ドッグボーン」ターゲットと一般に呼ばれている追加の厚さを形成することによるトーチとターゲットの間の相対運動
−粉末をプラズマジェット内により良好に分布させることができる1つ又は複数の粉末注入器の使用
−プラズマトーチは以下のものであることができる。
・商業的に入手可能なDCブローンアークプラズマトーチ
・又は誘導結合RFプラズマトーチ
【0046】
ターゲットを製造するのに用いられる粉末は、以下の典型的な特徴を有する。
−以下のような規定された粒子サイズ分布
・D10%(粒子の10%がこの直径よりもサイズが小さいような直径):5〜50μmの間
・D50%(中央直径):25〜100μm
・D90%(粒子の90%がこの直径よりもサイズが小さいような直径):40〜200μm
−ターゲットに関する目標純度に従った純度、好ましくは99.95%超
−酸素含有量:<1500ppm、好ましくは<1000ppm又は<500ppm
【0047】
本発明の方法により、特に純粋なモリブデンターゲットの場合には、溶射で従来得られかつラメラ微細構造を有するターゲットよりも優れたターゲット品質を得ることができ(図1a、1b及び1cを参照)、そして500ppm未満の酸素含有量を有するターゲットを還元性雰囲気での高温熱処理のような以降の工程なしで直接的に得ることができる。
【0048】
以降の熱処理工程を用いないという事実には、モリブデンとは顕著に異なる膨張係数を有する支持体を含む支持体(管状ターゲットのためのチューブ又は平面ターゲットのための平坦な支持体)のための如何なるタイプの材料、例えば、酸素含有量を低減するための以降の熱処理の場合に排除されるオーステナイト系ステンレス鋼を用いることができるという利点がある。
【0049】
当然ながら、このようにして製造されるターゲット中の酸素含有量をさらに低減するため、選択肢として熱処理を実施してもよい。
【0050】
[平面ターゲットの場合]
本発明によれば、以下の手順に従って平面ターゲットを製造することができる。
−使用するためマグネトロンに取り付けるのに適した平面ターゲットの支持体
−ターゲットの支持体が複雑な形状を有しそしてターゲットを使用した後、それを再利用する必要がある場合には、ターゲット材料は、ターゲット支持体上に直接的には形成されずに、支持体上に結合されている1つ又は複数の中間プレート([タイル]と称される)上に形成される。
−タ−ゲット材料(モリブデン)は先に述べたのと同じ手順に従って支持体又は1つ又は複数のタイル上に形成される。
−1つ又は複数のタイルの結合は、(支持体が高い機械強度を有する場合には)ターゲット材料の形成前に、又は支持体が十分強くない場合にはタイル上へのターゲット材料の形成後に実施することができる。後者の場合、タイルの寸法は、プラズマ溶射によってターゲット材料を形成する操作の際に、タイルが変形するリスクを最小限にするよう決定される。
【実施例】
【0051】
この実施例は、回転カソードとともにマグネトロンスパッタリンにおいて使用することを意図した管状ターゲットに関するものである。以下のプロセスを実施した。
−オーステナイト系ステンレス鋼、例えばX2CrNi18−9又はX2CrNiMo17−12−2からなる支持体チューブ
−AZグリット24のアルミナ−ジルコニア吹き付け加工による支持体チューブの表面調製
−空気中で実施されるツインアークワイヤ溶射による、NiAl(95%ニッケル/5%アルミニウム)の組成を有する定着副層の製造。この実施例では、定着副層の厚さは公称200μmであった。
−以下の条件下でのプラズマ溶射によるターゲット上へのモリブデン活性膜の形成
・特定のプラズマジェットの速度特性を与えるプラズマトーチ、及びその結果としてスプレーされた粒子の特性
・チャンバーに配置されたターゲット
・ターゲット上に向けられる極低温冷却ジェットの使用(このジェットはトーチの周りに分布される)
・ターゲットを製造するのに使用される粉末は以下の特徴を有するモリブデン粉末であった。
・凝集焼結モリブデン粉末
・粒径d50=80μm
・純度99.95%、特にFe20ppm及び酸素600ppm
・以下のパラメータで実施されるプラズマス溶射
・以下のパラメータを有するプラズマトーチを用いて実施例のターゲットを製造した。
【0052】
【表1】

・Rmax<15μmのような粗さを得るための研磨又は機械加工による表面仕上げ
【0053】
上記のとおり、本発明の特定の方法により、得られたターゲット中の酸素含有量は330ppmであり、粉末中に最初に存在していた600ppmよりも小さかった。得られたターゲットの本質的な特徴は下表に与えられる(ターゲット実施例4)。
【0054】
異なる粉末組成でのこの手順による追加の結果を本発明による極低温ジェットなしの結果と比較して下表に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
上記の結果が示すように、プラズマトーチの周りに分布された極低温冷却ジェットによるプラズマ溶射プロセスによって、ターゲット中の酸素含有量を、出発粉末中の酸素含有量と比べて低減することができる。したがって、非常に純度の高い出発粉末を選択する必要がない。というのも、特には特定量の酸素を含有する粉末を回避することは実際には不可能であるからである。したがって、本発明の方法は特に有利である。
【0057】
[本発明の特性及び利点]
本発明のターゲットは以下の特性及び利点を有する。
・本発明の方法では、カソード及びその磁石によって作り出される磁界の小さな曲率半径の湾曲部に相当する領域における広範囲の局部侵食を補償するようにターゲットの両端に追加の厚さを堆積させることができるので、プラズマ溶射によって得られる管状ターゲットにおいて使用される材料の利用率が焼結、続いて熱成形プロセスによって得られたものと比較して優れている。これにより、75%超又は80%超のターゲットの原料歩留まりを達成することが可能であり、一方で、平坦な形状のターゲットでは歩留まりは75%未満にとどまる。このタイプのターゲットを用いた結果として、膜、特にはモリブデンに基づく膜が得られ、膜が堆積される表面における基材の特性寸法に沿って得られるその均一性のプロファイルRは、偏差が(例えば3.20m幅の基材に関して)わずか±2%である。この測定は、「Nagy」タイプの装置を用いて非接触測定によって実施した。
・ターゲットの幅方向の材料厚さの範囲は1〜25mmであり、ターゲットの厚さはその所望の耐用年数に従って選択することができる(この厚さは、実際は、ラインの停止なしでの予想される生産期間によって決定される)。
・管状ターゲットの場合、ACモード又はDCモードにおいて30kW/mを超える電力レベル(堆積速度の増大)で(支持体チューブとターゲットの間の熱勾配による)亀裂のリスク又はろうの溶融のリスクなしでターゲットをバイアスすることができる。
・モリブデンの厚さは使用者にとって厳密に必要な大きさまで低減されるので、高電力の放電を保持するのに必要な電圧を制限することができ、したがってこのターゲットを現行のマグネトロンの電源と競合させることができる。
【0058】
組み合わされたセグメントを含むターゲットと対照的に、本発明を用いて製造されるモノリシックな管状又は平面ターゲトの場合には、以下のリスクはかなり低減される。
・寄生粒子を生成するアーク放電の出現のリスク、及びモリブデン膜の汚染源であるとして知られている、ターゲット材料のフラグメントがその支持体から分離するリスク
・ろう付け用材料又はターゲット支持体材料をセグメント間のギャップを介してスパッタリングするリスク
・支持体に対する結合(ろう又は導電性セメント)の熱又は機械破損のリスク
【0059】
本発明のターゲットは、当該ターゲットを形成する材料に基づく膜であって、モリブデンに基づく膜を得るために、真空の膜堆積設備(不活性又は反応性雰囲気中でのマグネトロンスパッタリング、特にはマグネトロンカソードスパッタリング、コロナ放電又はイオンビームスパッタリング)において使用されることを特に意図している。
【0060】
このモリブデンに基づく膜は、基材上に直接的に堆積することができるか、又は基材と接触している別の膜上に間接的に堆積することができ、当該基材は有機性(PMMA若しくはPC)又は無機性(シリカ系ガラス、金属など)であることができる。
【0061】
この薄膜は、光起電力電池又はパネルのための電極を形成することができるか、あるいはTFT、LCD、OLED、ILED若しくはFED技術を用いたディスプレイスクリーンの構造の一部(相互接続など)又は良好な品質の薄いモリブデン膜を要求する他の任意の組立体を形成することができる。
【0062】
以下の実施例の主題を形成する膜は、従来技術に従って得られたターゲット(実施例1及び3)並びに本発明に従って得られたターゲット(実施例4及び5)をマグネトロンスパッタリングすることによって得られた。
【0063】
【表3】

【0064】
薄いモリブデン系膜をSGG−Diamantエクストラクリアガラスタイプの3mm厚さのエクストラクリアガラス上に堆積した。これらの膜は、本発明のモリブデンターゲットを備えた水平型マグネトロン堆積装置において堆積し、このターゲットには、Huttinger BIG150電源によるACモード又はPinnacle AE電源によるDCモードのいずれかにおいて、実施例1及び4の場合は450sccmアルゴンを、そして実施例2、3及び5の場合は600sccmアルゴンのアルゴンプラズマを供給した。
【0065】
[コメント]
−実施例1に対する実施例4及び実施例2に対する実施例5:従来技術の高純度ターゲットと比較して本発明のターゲットは同一又は優れた性能であった。ターゲット中の450ppm未満の酸素含有量に関し、膜中の酸素含有量(それゆえ抵抗率)は堆積チャンバー中の制限的な真空に左右される(残留圧力下で利用できる酸素の量)。
−実施例3に対する実施例5:従来技術のターゲットと比較して本発明のターゲットは優れた性能であった。ターゲット中の酸素含有量が500ppmを超えると、膜中の酸素含有量はターゲットの純度に左右される(残留圧力下で利用できる酸素の量)。
【0066】
実施例4及び5に記載のターゲットは、ターゲットの寿命を通して有意なアーク放電なしにDC又はACバイアス下で完全に安定なプラズマを作り出す。
【0067】
変形態様として、本発明の方法によって得ることができるターゲットがスパッタされる場合には、このターゲットは(Fe、Ni、Cr、Wなどの)群に属する少なくとも1つの金属カチオンを含有することができ、これらの元素の特定の含有量を有する膜が同様に得られる。
【0068】
回転式ターゲットから生成した薄膜中のカチオン性不純物の含有量は、実際的にはターゲットのみから起因する。これは、回転技術はターゲットを取り付けるためのすべての部材(すなわちクランプ)を排除し、それゆえガラス上のプラスチックのスパッタリングの如何なる可能性も排除されるからである。
【0069】
ほどんどの用途では、薄いMo膜の抵抗性は膜中の酸素含有量に特に左右される。膜の酸化の最小レベルを維持し、それゆえ純粋な金属モリブデンに近い抵抗率を得るためには、この含有量を最小限に抑えることが特に重要である。
【0070】
膜の酸素含有量は、以下の2つ、すなわち、(i)スパッタリングガスの導入前の残留雰囲気(「基本真空」)からの酸素、及び(ii)ターゲットからの酸素に由来する。
【0071】
したがって、以下を用いて、スパッタコーターの残留酸素分圧に由来するモリブデン膜に理論的に含まれる酸素の量を算出することは可能である。
−JO2(堆積の際にガラスに達する酸素流量)=3.51×1022(MO2×T)-1/2×P(式中、MO2は酸素ガスの分子量であり、Tは温度(K)であり、Pは圧力(torr)である)
−JMo(O2と反応しうるガラス上のMo量)=VMo×NMo(式中、VMoはMoの堆積速度であり、NMoはマグネトロン金属膜1cm3あたりのMo原子の量(原子/cm3))
【0072】
基材上のモリブデンと接触している酸素がすべて反応すると仮定して、Mo膜中の最大予想酸素含有量を算出することができ、スパッタコーターの所与の堆積速度が8×10-7cm/sである場合、残留酸素分圧の関数としてのMo層中の残留酸素含有量は、下表において与えられるように得られる。
【0073】
【表4】

【0074】
スパッタコーターにおいて測定される最小残留分圧は通常は5×10-8mbar、すなわち約540ppmの理論酸素である。それゆえ、540ppmより十分低い酸素含有量を有する高純度ターゲットを使用する必要がない。というのも、最終的な膜の純度に関するターゲットの影響は、スパッタコーター中の雰囲気に由来する酸素によって隠されてしまうからである。本発明は、その酸素含有量が1000ppm未満、好ましくは600ppm未満、より好ましくは450ppm未満のMoターゲットを製造するための高価でないマグネトロン技術を選択することにある。
【0075】
本発明の範囲内で得られる薄いMo膜の金属カチオン(Fe、Ni、Cr、Wなど)の残留含有量は、以下の2つの理由から、従来のターゲットによって得られる膜の残留含有量よりも小さい。
−本発明の膜はモノリシックなターゲット(1つの単一のセグメント)をスパッタリングすることによって得られる。(チタン若しくはステンレス鋼からなる)裏地のチューブ又は裏地のチューブにMoを結合させるのに用いられる材料(例えばインジウム)をスパッタリングするリスクはない。
−本発明の膜は金属カチオンの観点で高純度のターゲットをスパッタリングすることによって得られ、これはターゲットを製造するための技術の選択及びその実施に依存し、高純度の原料粉末の選択、並びにプラズマ溶射による、すなわち、押出又は高温圧延技術のように、スプレーされるモリブデンと金属部品との間の直接的な接触又は鋼、ステンレス鋼、タングステンなどに基づく金属部品との接触なしでのターゲットの形成が可能である。
【0076】
本発明のモリブデン膜は、
−50ppm未満、好ましくは40ppm未満の鉄含有量、
−10ppm未満のニッケル含有量、
−20ppm未満のクロム含有量、及び/又は
−150ppm未満のタングステン含有量
を有する。
【図1a−1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのモリブデン系化合物を含む公称厚さ(e)のターゲットであって、
−ラメラ微細構造、
−1000ppm未満、好ましくは600ppm未満、より好ましくは450ppm未満の酸素含有量、及び
−前記化合物の理論電気抵抗率の5倍未満、好ましくは3倍未満、より好ましくは2倍未満の電気抵抗率
を有することを特徴とする、ターゲット。
【請求項2】
バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、タングステン、レニウム、銅、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、及びロジウムから選択される少なくとも1つの追加元素をさらに含み、1つ又は複数の追加元素を0.5〜30wt%有することを特徴とする、請求項1に記載のターゲット。
【請求項3】
モリブデンとケイ素とから構成され、そのモル比が、ケイ素5モル当たりモリブデン1モルからケイ素1モル当たりモリブデン5モルまでの範囲であることができ、好ましくはケイ素2モル当たりモリブデン1モルであることを特徴とする、請求項1に記載のターゲット。
【請求項4】
前記ターゲットのラメラ微細構造が複合体であり、純ケイ素のラメラと並置された純モリブデンのラメラを含むことを特徴とする、請求項3に記載のターゲット。
【請求項5】
モリブデンからなる、請求項1に記載のターゲット。
【請求項6】
平面形状を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項7】
管状形状を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項8】
その端部のそれぞれに追加の厚さの材料を有することを特徴とする、請求項7に記載のターゲット。
【請求項9】
前記ターゲットが、前記化合物が堆積される1つ又は複数の部分を備え、この1つ又は複数の部分がスパッタリング機に取り付けることができる平面の支持体であるか又は次いでこの支持体に結合される中間部分であることを特徴とする、請求項6に記載のターゲット。
【請求項10】
前記追加の厚さが、化合物層の公称厚さの約25〜50%であることを特徴とする、請求項8に記載のターゲット。
【請求項11】
85%超、好ましくは90%超の密度を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項12】
前記公称厚さ(e)が1〜25mm、好ましくは6〜14mmであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項13】
50ppm未満、好ましくは35ppm未満の鉄含有量を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項14】
少なくとも99.95%の純度を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項15】
少なくとも1つのモリブデン系化合物を含むターゲットを、溶射、特にはプラズマトーチによるプラズマ溶射によって製造するための方法であって、粉末組成物の形態の前記化合物の少なくとも一部が、不活性ガスの雰囲気中で溶射によって前記ターゲットの少なくとも一方の表面部分にスプレーされ、及びその構築の際に前記ターゲット上に向けられかつトーチの周りに分布される強力な極低温の冷却ジェットが使用されることを特徴とする、方法。
【請求項16】
前記化合物が、不活性ガスでパージ又はリンスされ、次いで50mbar〜1100mbarの範囲であることができる圧力まで不活性ガスで満たされたチャンバーにスプレーされ、酸素欠乏雰囲気をチャンバー内に作り出すようにされることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶射がプラズマトーチによって実施され、用いられるプラズマガス混合物が還元性であり(粉末中に最初に存在する酸化されたモリブデンの含有量を低減することができる)、好ましくは前記プラズマガス混合物の組成が10%超の水素又は他の還元性プラズマガスを含むことを特徴とする、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記ターゲットの表面部分に前記化合物を溶射する前に定着副層が堆積されることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ターゲットがプラズマ溶射の際に熱的に調節されることを特徴とする、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
スプレーされる化合物の粉末組成物が、5μm<D10<50μm、25μm<D50<100μm、及び40μm<D90<200μmで表される粒度分布を有する粉末粒子を含むことを特徴とする、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
酸化物形態の前記ターゲット中に存在する酸素の含有量が出発粉末中に最初に存在する酸素の含有量よりも5%超小さいことを特徴とする、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
溶射工程の後、それに続く熱処理工程を、前記ターゲット中に存在する酸素の含有量を低減させるために還元性雰囲気において含むことを特徴とする、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
熱ジェットの異なるポイントで、注入パラメータが各注入器に注入される材料に従って独立して調整される異なる材料を注入するために複数の化合物注入器が用いられることを特徴とする、請求項15〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項15〜23のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる少なくとも1つのモリブデン系化合物を含む公称厚さ(e)のターゲット。
【請求項25】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のターゲットをスパッタリングすることによって得られるモリブデンに基づく膜。
【請求項26】
ターゲットをスパッタリングすることによって得られるモリブデンに基づく膜、特にはモリブデン膜を製造するための方法であって、前記ターゲットが請求項15〜23のいずれか1項に記載の方法によって得られることを特徴とする、方法。
【請求項27】
請求項3に記載のターゲットをスパッタリングすることによって得られたMoSi2膜。
【請求項28】
請求項25に記載の膜を含む平面ディスプレイスクリーン。
【請求項29】
スクリーンが以下の技術、すなわち、TFT(薄膜トランジスタ)、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、OLED(有機発光ダイオード)、ILED(無機発光ダイオード)又はFED(電界放出ディスプレイ)のうちの1つによって得ることができる、請求項28に記載の平面ディスプレイスクリーン。
【請求項30】
請求項27に記載の少なくとも1つの膜を含む半導体部材。
【請求項31】
半導体部材の製造におけるマスクとしての請求項27に記載の膜の使用。

【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2012−523497(P2012−523497A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504063(P2012−504063)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050703
【国際公開番号】WO2010/116111
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511244919)
【Fターム(参考)】