説明

モータジェネレータ付エンジンおよびハイブリッド自動車

【課題】歯車機構と、発電機とを一体とすることができ、小型化することができるモータジェネレータ付エンジンを提供する。
【解決手段】エンジンは、エンジン本体7と、エンジン本体7の動力によって発電するモータジェネレータ8とを有する。モータジェネレータ8は、第1のフライホイール81と、フライホイール81と対向して同軸上に配設された第2のフライホイール82と、第1のフライホイール81の回転に対して第2のフライホイール82を逆回転させる遊星歯車機構9とを有する。第1のフライホイール81には、回転軸を中心とする円環状に複数の永久磁石81Cが設けられている。第2のフライホイール82には、回転軸を中心とする円環状に複数のコイル82Bが設けられている。複数の永久磁石81Cと、複数のコイル82Bとは対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータジェネレータ付エンジンおよびハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの回転によって発生する振動を低減させる振動低減装置を有するエンジンが知られている(例えば、特許文献1参照)。この振動低減装置は、クランクシャフトに接続されたフライホイールの周縁に沿って形成されたインターナルギヤと、インターナルギヤと噛合するプラネタリギヤと、プラネタリギヤと噛合するサンギヤとによって構成される遊星歯車機構を有している。また、プラネタリギヤは、その公転が規制されたキャリアによって軸支されている。このような遊星歯車機構によれば、クランクシャフトの回転に伴って回転するフライホイールの回転に対してサンギヤを逆回転させることができる。したがって、サンギヤは、トルクバランサとして機能するので、振動低減装置は、エンジンの回転によって発生する振動を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−311297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された発明では、振動低減装置にオルタネータ(発電機)を取り付けることによって、モータジェネレータを構成して発電している。具体的には、振動低減装置のサンギヤと、オルタネータのロータとを一体的に形成することによって、サンギヤの回転に伴ってロータを回転させて発電している。しかしながら、このような構成では、遊星歯車機構を有する振動低減装置と、オルタネータとを別体としているので、エンジンが大型化するという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、歯車機構と、発電機とを一体とすることができ、小型化することができるモータジェネレータ付エンジンおよびハイブリッド自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、クランクシャフトと、第1のフライホイールと、第2のフライホイールと、歯車機構と、複数の永久磁石と、複数のコイルとを有し、クランクシャフトの回転に伴って、第1のフライホイールと、第2のフライホイールとが逆回転することによって発電するモータジェネレータ付エンジンを提供する。第1のフライホイールは、クランクシャフトに接続される。第2のフライホイールは、第1のフライホイールと対向して同軸上に配設される。歯車機構は、第1のフライホイールの回転に対して第2のフライホイールを逆回転させる。複数の永久磁石は、第1のフライホイールおよび第2のフライホイールのいずれか一方に、回転軸を中心とする円環状に設けられる。複数のコイルは、第1のフライホイールおよび第2のフライホイールのいずれか他方に、回転軸を中心とする円環状に設けられるとともに、複数の永久磁石と対向する。
【0007】
第2の発明は、前述したモータジェネレータ付エンジンを有し、モータジェネレータ付エンジンによって駆動されるハイブリッド自動車を提供する。
【0008】
ここで、本発明において、歯車機構は、第1のフライホイールおよび第2のフライホイールのいずれか一方に設けられたサンギヤと、第1のフライホイールおよび第2のフライホイールのいずれか他方に設けられたリングギヤと、サンギヤと、リングギヤとの間に介在して配設されるとともに、公転が規制されたプラネタリギヤとを有する遊星歯車機構であることが好ましい。また、複数の永久磁石と、複数のコイルとは、アキシャル方向に対向して設けられていてもよく、ラジアル方向に対向して設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1のフライホイールの回転に対して第2のフライホイールを逆回転させる歯車機構を有している。また、第1のフライホイールおよび第2のフライホイールのいずれか一方に、回転軸を中心とする円環状に複数の永久磁石を設けるとともに、いずれか他方に、複数の永久磁石と対向する複数のコイルを設けることによって発電機を構成している。したがって、歯車機構と、発電機とを一体とすることができるので、モータジェネレータ付エンジンを小型化することができ、ひいてはハイブリッド自動車を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド自動車を示す機能ブロック図
【図2】エンジンの要部を示す断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド自動車を示す機能ブロック図である。ハイブリッド自動車1は、エンジン2と、インバータ3と、バッテリ4と、モータ5と、駆動輪6とを有するシリーズハイブリッド方式の自動車である。エンジン2は、エンジン本体7と、エンジン本体7の動力によって発電するモータジェネレータ8とを有するモータジェネレータ付エンジンである。モータジェネレータ8にて発電された電力は、インバータ3を介してバッテリ4に蓄えられる。モータ5は、バッテリ4に蓄えられた電力によって駆動輪6を駆動するとともに、制動時には回生ブレーキとして機能する。
【0012】
図2は、エンジン2の要部を示す断面模式図である。エンジン本体7は、シリンダに収容されたピストン71と、ピストン71にコンロッド72を介して連結されたクランクシャフト73と、これらを収納するシリンダブロックとを有する。クランクシャフト73は、シリンダ内における混合気の燃焼によるピストン71の往復運動がコンロッド72を介して伝達されることによって回転する。
【0013】
モータジェネレータ8は、クランクシャフト73にボルトによって接続された第1のフライホイール81と、フライホイール81と対向して同軸上に配設された第2のフライホイール82と、第1のフライホイール81の回転に対して第2のフライホイール82を逆回転させる遊星歯車機構9とを有する。
【0014】
第1のフライホイール81は、第2のフライホイール82側に突出するように、周縁に沿って円環状に形成された突出部81Aと、第2のフライホイール82側の面にクランクシャフト73の回転軸に沿って断面円形状に形成された凹部81Bとを有する。そして、第1のフライホイール81には、回転軸を中心とする円環状に複数の永久磁石81Cが設けられている。
【0015】
第2のフライホイール82は、クランクシャフト73の回転軸に沿って両側に突出するように形成された軸部82Aを有する。軸部82Aにおいて、第1のフライホイール81側の端部は、ベアリングを介して第1のフライホイール81の凹部81Bに支持される。また、軸部82Aにおいて、第1のフライホイール81と反対側の部位は、シリンダブロックに取り付けられたハウジング10にベアリングを介して支持される。そして、第2のフライホイール82には、複数のコイル82Bが外周面に沿って設けられ、複数の永久磁石81Cとアキシャル方向に対向している。なお、本実施形態では、複数の永久磁石81Cと、複数のコイル82Bとは、アキシャル方向に対向するように設けられているが、ラジアル方向に対向するように設けられていてもよい。
【0016】
遊星歯車機構9は、第1のフライホイール81の突出部81Aに形成されたリングギヤ91と、リングギヤ91と噛合する複数のプラネタリギヤ92と、プラネタリギヤ92と噛合するサンギヤ93とを有する。プラネタリギヤ92には、ハウジング10に固定された軸部10Aが摺動自在に挿入される。したがって、ハウジング10は、プラネタリギヤ92のキャリアとして機能し、プラネタリギヤ92の公転を規制する。サンギヤ93は、第2のフライホイール82の軸部82Aにおいて、第1のフライホイール81と反対側の部位に形成されている。
【0017】
このような遊星歯車機構9によれば、クランクシャフト73の回転に伴って第1のフライホイール81およびリングギヤ91が回転すると、第2のフライホイールおよびサンギヤ93は逆回転するので、第1のフライホイール81の回転に対して第2のフライホイール82を逆回転させることができる。ここで、第1のフライホイール81には、回転軸を中心とする円環状に複数の永久磁石81Cが設けられるととともに、第2のフライホイール82には、回転軸を中心とする円環状に複数のコイル82Bが設けられ、複数の永久磁石81Cと、複数のコイル82Bとは対向しているので、発電機を構成することができる。また、第2のフライホイール82は、トルクバランサとして機能するので、エンジン1の回転によって発生する振動を低減させることができる。
【0018】
なお、軸部82Aにおいて、第1のフライホイール81と反対側の部位には、スリップリング83の回転側端子が取り付けられている。この回転側端子は、第2のフライホイール82の内部を通る配線(図示略)を介して複数のコイル82Bにそれぞれ接続されている。また、ハウジング10において、スリップリング83の回転側端子と対向する位置には、スリップリング83の固定側端子が取り付けられている。したがって、第1のフライホイール81と、第2のフライホイール82とが逆回転することによって、複数のコイル82Bにて発電された電力、すなわちモータジェネレータ8にて発電された電力は、スリップリング83を介してバッテリ4に蓄えられる。なお、複数のコイル82Bに電力を供給することによって、モータジェネレータ8をエンジン2のスタータモータとして利用することもできる。
【0019】
この際、第1のフライホイール81と、第2のフライホイール82とは逆回転するので、永久磁石81Cに対するコイル82Bの回転は、第1のフライホイール81の回転を基準として2倍以上の速度を得ることができる。換言すれば、一定量の発電をするのに必要な回転速度を、第1のフライホイール81の回転のみによって発電をする場合と比較して半分以下にすることができるので、モータジェネレータ8の寿命を延ばすことができる。
【0020】
このように、本実施形態によれば、第1のフライホイール81の回転に対して第2のフライホイール82を逆回転させる遊星歯車機構9を有している。また、第1のフライホイール81に、回転軸を中心とする円環状に複数の永久磁石81Cを設けるとともに、第2のフライホイール82に、複数の永久磁石81Cと対向する複数のコイル82Bを設けることによって発電機を構成している。したがって、遊星歯車機構9と、発電機とを一体とすることができるので、エンジン2を小型化することができ、ひいてはハイブリッド自動車1を小型化することができる。
【0021】
なお、上述した各実施形態では、第1のフライホイール81にリングギヤ91を設けるとともに、第2のフライホイール82にサンギヤ93を設けることによって、遊星歯車機構9を構成していた。これに対して、第1のフライホイールにサンギヤを設けるとともに、第2のフライホイールにリングギヤを設けることによって、遊星歯車機構を構成してもよい。要するに、第1のフライホイールおよび第2のフライホイールのいずれか一方をサンギヤとし、第1のフライホイールおよび第2のフライホイールのいずれか他方をリングギヤとする遊星歯車機構を構成すればよい。
【0022】
また、上述した各実施形態では、遊星歯車機構9を構成することによって、第1のフライホイール81の回転に対して第2のフライホイール82を逆回転させていた。これに対して、例えば、第1のフライホイールおよび第2のフライホイールのそれぞれを傘歯車とし、第1のフライホイールと、第2のフライホイールとの間に傘歯車を介在して配設することによって、歯車機構を構成してもよい。要するに、モータジェネレータ付エンジンは、第1のフライホイールの回転に対して第2のフライホイールを逆回転させる歯車機構を有していればよい。しかしながら、遊星歯車機構の場合、他の歯車機構を構成した場合と比較して、第1のフライホイールと、第2のフライホイールとのギャップに関する制約が少ないので、永久磁石と、コイルとのギャップを容易に管理することができることから、本発明では、歯車機構を遊星歯車機構とすることが好ましい。
【0023】
また、上述した各実施形態では、第1のフライホイール81に複数の永久磁石81Cを設けるとともに、第2のフライホイール82に複数のコイル82Bを設けていた。これに対して、第1のフライホイールに複数のコイルを設けるとともに、第2のフライホイールに複数の永久磁石を設けてもよい。要するに、第1のフライホイールおよび第2のフライホイールのいずれか一方に複数の永久磁石を設けるとともに、第1のフライホイールおよび第2のフライホイールのいずれか他方に複数の永久磁石と対向する複数のコイルを設ければよい。
【0024】
また、上述した各実施形態では、シリーズハイブリッド方式のハイブリッド自動車1に本発明のエンジン2を採用していたが、例えば、パラレルハイブリッド方式などの他のハイブリッド方式のハイブリッド自動車に本発明のモータジェネレータ付エンジンを採用してもよく、ハイブリッド自動車以外の対象を駆動するための駆動源として本発明のモータジェネレータ付エンジンを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明は、モータジェネレータ付エンジンおよびハイブリッド自動車に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ハイブリッド自動車
2 エンジン(モータジェネレータ付エンジン)
3 インバータ
4 バッテリ
5 モータ
6 駆動輪
7 エンジン本体
8 モータジェネレータ
9 遊星歯車機構
10 ハウジング
10A 軸部
71 ピストン
72 コンロッド
73 クランクシャフト
81 フライホイール(第1のフライホイール)
81A 突出部
81B 凹部
81C 永久磁石
82 フライホイール(第2のフライホイール)
82A 軸部
82B コイル
83 スリップリング
91 リングギヤ
92 プラネタリギヤ
93 サンギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータジェネレータ付エンジンにおいて、
クランクシャフトと、
前記クランクシャフトに接続された第1のフライホイールと、
前記第1のフライホイールと対向して同軸上に配設された第2のフライホイールと、
前記第1のフライホイールの回転に対して前記第2のフライホイールを逆回転させる歯車機構と、
前記第1のフライホイールおよび前記第2のフライホイールのいずれか一方に、回転軸を中心とする円環状に設けられた複数の永久磁石と、
前記第1のフライホイールおよび前記第2のフライホイールのいずれか他方に、回転軸を中心とする円環状に設けられるとともに、前記複数の永久磁石と対向する複数のコイルとを有し、
前記クランクシャフトの回転に伴って、前記第1のフライホイールと、前記第2のフライホイールとが逆回転することによって発電することを特徴とするモータジェネレータ付エンジン。
【請求項2】
前記歯車機構は、
前記第1のフライホイールおよび前記第2のフライホイールのいずれか一方に設けられたサンギヤと、
前記第1のフライホイールおよび前記第2のフライホイールのいずれか他方に設けられたリングギヤと、
前記サンギヤと、前記リングギヤとの間に介在して配設されるとともに、公転が規制されたプラネタリギヤと
を有する遊星歯車機構であることを特徴とする請求項1に記載されたモータジェネレータ付エンジン。
【請求項3】
前記複数の永久磁石と、前記複数のコイルとは、アキシャル方向に対向して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載されたモータジェネレータ付エンジン。
【請求項4】
前記複数の永久磁石と、前記複数のコイルとは、ラジアル方向に対向して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載されたモータジェネレータ付エンジン。
【請求項5】
ハイブリッド自動車において、
請求項1から請求項4のいずれかに記載されたモータジェネレータ付エンジンを有し、
前記モータジェネレータ付エンジンによって駆動されることを特徴とするハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−206632(P2012−206632A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74332(P2011−74332)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】