説明

モールドアンダーフィル工程のマスキングテープ用粘着剤組成物およびそれを用いたマスキングテープ

【課題】 モールドアンダーフィル(Molded Underfill;MUF)工程のマスキングテープ用粘着剤組成物、およびこれを用いたマスキングテープの提供。
【解決手段】 本発明のモールドアンダーフィル工程のマスキングテープ用粘着剤組成物およびそれを用いたマスキングテープは、改善されたアクリル離型粘着層を構成することにより、既存のアクリル離型粘着層のPCB表面粘着剤残渣(residue)および封止材(EMC)の種類による表面の跡の問題を改善することができる。これにより、PCB表面への粘着剤残渣を防いで、工程不良率を下げることができ、各種のEMCによる表面の跡の問題を改善してMUF工程に用いられる様々な封止材への適用が可能であるというメリットがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモールドアンダーフィル工程のマスキングテープ用粘着剤組成物およびそれを用いたマスキングテープに係り、さらに詳しくは、エネルギー線硬化型シリコン樹脂を粘着剤組成として添加して用いることにより、プリント回路基板(Printed Circuit Board;PCB)の表面に粘着剤が残留することを防ぎ、封止材(EMC)の種類によらずに表面の跡防止特性を有するモールドアンダーフィル工程のマスキングテープ用粘着剤組成物およびそれを用いて製造されるマスキングテープに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、信号処理およびメモリ容量増大に伴う要求と、携帯電話の小型化および低価格化の傾向に伴い、メモリ実装面積は減らす一方、増大するメモリ密度および性能を高めるために考案されたPoP(Package on package)構造が登場している。かようなPoP構造の底層(Bottom layer)は、チップ(chip)が接地として用いられるため、チップの表面が露出された形のフリップチップパッケージ(Die Exposed Flip Chip Package;DEFCP)から構成される。次いで、チップの破損防止および放熱のためのモールドアンダーフィル(Molded Underfill;MUF)工程が実施され、このとき、チップをマスキング(masking)する用途に粘着テープが用いられる。
【0003】
かようなDEFCPのMUF用粘着マスキングテープ用途の粘着テープとして、出願人は、例えば、下記の特許文献1を出願している。前記出願においては、既存のPET−フィルム基材のモールド汚染の問題を改善するために、オリゴマー溶出特性が低いPEN−フィルムを基材として用い、優れた離型特性および耐熱性を有するアクリル離型粘着層を備える構造が提案されている。しかしながら、前記アクリル離型粘着層は、表面硬さが高くて優れた離型特性を有するのに対し、引っ掻かれ易いため、MUF工程が行われる間にモールドの鋭い角部により粘着層が突き刺されるという現象が発生し、このとき、引き剥がされた粘着層がモールド下側のPCBの表面に転写されるという問題が発生していた。なお、各種のEMCでMUF工程を行う過程で、特定のEMCの場合、モールディングされた表面の一部に跡が生じるという問題が発生していた。
【0004】
そこで、本発明者らは、既存の前記DEFCPのMUF用粘着マスキングテープの優れたモールド汚染の防止特性はそのまま維持するが、表面硬さの調節および硬化剤種類の変更を通じて、PCB表面への粘着剤残渣の防止および封止材(EMC)の種類による表面の跡防止の特性を有する改善されたアクリル離型粘着層を構成することにより、前記問題点を解消し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許第10−2011−0005902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂にエネルギー線硬化型シリコン樹脂を添加して用いることにより、PCB表面に粘着剤が残留することを防ぎ、封止材(EMC)の種類によらずに表面の跡防止特性を有するモールドアンダーフィル工程のマスキングテープ用粘着剤組成物を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記組成物を用いて製造されるマスキングテープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明のモールドアンダーフィル(MUF)工程のマスキングテープ用粘着剤組成物は、(a)アクリル系共重合体100重量部に対して、(b)熱硬化剤1〜20重量部と、(c)エネルギー線硬化型ウレタン樹脂5〜40重量部と、(d)エネルギー線硬化型シリコン樹脂0.1〜5重量部と、(e)エネルギー線開始剤と、を含む。
【0009】
エネルギー線硬化型ウレタン樹脂は、アリファチック2官能性ウレタンアクリレート(Aliphatic difunctional urethane acrylate)、アリファチック3官能性ウレタンアクリレート(Aliphatic trifunctional urethane acrylate)、アリファチック6官能性ウレタンアクリレート(Aliphatic hexafunctional urethane acrylate)、アロマチック2官能性ウレタンアクリレート(Aromatic difunctional urethane acrylate)、アロマチック3官能性ウレタンアクリレート(Aromatic trifunctional urethane acrylate)およびアロマチック6官能性ウレタンアクリレート(Aromatic hexafunctional urethane acrylate)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることが好ましい。
【0010】
前記エネルギー線硬化型シリコン樹脂は、シリコンジアクリレート(Silicone diacrylate)、シリコンヘキサアクリレート(Silicone hexaacrylate)、シリコンポリエステルアクリレート(Silicone Polyester acrylate)、シリコンウレタンアクリレート(Silicone Urethane acrylate)およびシリコンウレタンメタアクリレート(Silicone Urethane methacrylate)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることが好ましい。
【0011】
前記熱硬化剤は、メラミン系硬化剤であることが好ましい。
【0012】
本発明のモールドアンダーフィル工程用マスキングテープは、耐熱性基材11と、前記耐熱性基材の片面または両面に形成された帯電防止層と、前記帯電防止層の上に形成された粘着剤層と、を備える。
【0013】
前記耐熱性基材は、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムおよびポリブチレンテレフタレートフィルムよりなる群から選ばれるいずれか一種であることが好ましい。
【0014】
前記粘着剤層は、(a)アクリル系共重合体100重量部に対して、(b)熱硬化剤1〜20重量部と、(c)エネルギー線硬化型ウレタン樹脂5〜40重量部と、(d)エネルギー線硬化型シリコン樹脂0.1〜5重量部と、(e)エネルギー線開始剤と、を含む粘着剤組成物から製造されるものであることが好ましい。
【0015】
前記粘着剤層のポリシュドシリコンウェーハ(polished silicon wafer)面に対する常温粘着力は、50gf/inch以下であることが好ましい。
【0016】
前記粘着剤層の表面抵抗は、粘着層面が1011Ω/□以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のモールドアンダーフィル工程のマスキングテープ用粘着剤組成物およびそれを用いたマスキングテープは、改善されたアクリル離型粘着層を構成することにより、既存のアクリル離型粘着層のPCB表面粘着剤残渣(residue)および封止材(EMC)の種類による表面の跡の問題を改善することができる。これにより、PCB表面への粘着剤残渣を防いで、工程不良率を下げることができ、各種のEMCによる表面の跡の問題を改善してMUF工程に用いられる様々な封止材への適用が可能であるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の粘着剤が適用されたモールドアンダーフィル(MUF)工程のマスキングテープに対する模式的断面図である。
【図2】DEFCPのMUF工程において本発明のマスキングテープが適用される工程模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のモールドアンダーフィル(MUF)工程のマスキングテープ用粘着剤組成物は、(a)アクリル系共重合体と、(b)熱硬化剤と、(c)エネルギー線硬化型ウレタン樹脂と、(d)エネルギー線硬化型シリコン樹脂と、(e)エネルギー線開始剤と、を含む。以下、各組成を詳述する。
【0020】
1.粘着剤組成物
1−1.アクリル系共重合体
本発明のMUF工程のマスキングテープ用粘着剤組成物において、アクリル系共重合樹脂は、分子内二重結合がない飽和高分子(Saturated polymer)であり、その固有な性質の面で、酸化に対する抵抗に優れているため卓越した耐候性を有し、且つ、求められる必要物性に応じて、高分子(Polymer)組成の変更や官能基(Functional group)の導入などによって改質され易いというメリットがある。本発明において、アクリル系共重合樹脂とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸やこれらの誘導体の共重合体のことをいう。好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートおよびドデシル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれるいずれか一種以上のアクリルモノマーが単独または2種以上混合されて共重合されたものである。
【0021】
前記アクリル系共重合体としては、重量平均分子量が、好ましくは、100,000〜1,500,000であり、さらに好ましくは、500,000〜1,000,000であるものを使用する。前記重量平均分子量が100,000未満である場合には、コーティング後に得られた粘着層の内部凝集力に乏しいため、テープの引き剥がし後にプラズマに活性化されたチップの表面に樹脂成分を残留させ易く、1,500,000を超える場合には、溶媒への溶解性が減少して均一なコーティング層を形成することが困難になるだけではなく、熱硬化又はエネルギー線硬化による硬化効率が低下して、結果的に樹脂成分の残留が発生してしまうという問題点がある。
【0022】
1−2.熱硬化剤
本発明の粘着剤組成物において、熱硬化剤は、前記アクリル共重合体の架橋構造を形成するために用いられる。このための熱硬化剤としては、具体的に、メラミン系、ポリアジリジン系、アリールイソシアネート(aryl isocyanate)系などの熱硬化剤を用いる。
【0023】
メラミン系熱硬化剤としては、例えば、n−ブチル化メラミン、イソ−ブチル化メラミンおよびn−ブチル化メラミン−ベンゾグアナミンなどがある。
【0024】
ポリアジリジン系硬化剤としては、例えば、プロピレンイミン(アジリジン)、トリス(2−メチル−1−アジリジンイル)ホスフィンオキシドなどがある。
【0025】
アリールイソシアネート系熱硬化剤としては、例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート(Methylene Diphenyl Diisocyanate;MDI)、トルエンジイソシアネート(Toluene Diisocyanate;TDI)などがある。
【0026】
好ましくは、メラミン系硬化剤を用いる。前記メラミン系熱硬化剤の場合、加熱時に反応が行われ、配合量と架橋構造量が比例して形成されるという特徴がある。イソシアネート系熱硬化剤の場合、反応性に優れているため常温下でも反応が行われ得るという特徴があり、アジリジン系熱硬化剤の場合、低温硬化に有利であるため硬化時間を短縮し易いものの、高価であるという欠点がある。
【0027】
前記熱硬化剤の含量は、好ましくは、アクリル系共重合体100重量部に対して、1〜20重量部、さらに好ましくは、1〜15重量部である。前記熱硬化剤の含量が1重量部未満である場合、架橋構造が正常に形成されない結果、低い内部凝集力によって基材の表面に粘着剤が残留してしまう虞があり、前記熱硬化剤が20重量部を超える場合、必要以上に架橋化が進んでしまい表面硬さが高くなるため、粘着層の破砕などの現象が発生する虞があるため好ましくない。
【0028】
前記熱硬化剤は、硬化反応を促進するために、有機酸系熱硬化促進剤が併用可能である。このために用いられる有機酸系熱硬化促進剤としては、無水フタル酸(Phthalic Anhydride)、無水テトラヒドロフタル酸(Tetra hydro Phthalic Anhydride)、無水メチルテトラヒドロフタル酸(Methyl Tetra Hydro Phthalic Anhydride)、無水ヘキサヒドロフタル酸(Hexa Hydro Phthalic Anhydride)、無水メチルナジック酸(Methyl Nadic Anhydride)などがある。前記熱硬化促進剤を用いる場合に、その含量は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して15重量部未満であり、好ましくは、10重量部未満である。前記熱硬化促進剤の含量が15重量部を超える場合には、熱硬化剤の含量が高いときと同様に、表面硬さが高くなるため、粘着層の破砕などの現象が発生する虞がある。
【0029】
1−3.エネルギー線硬化型樹脂
エネルギー線硬化型樹脂は、UV、EB、放射線などの強いエネルギー線により分子鎖にラジカルが生成されることにより架橋化がなされる成分である。波長数が200〜400nmの紫外線を粘着剤内に含まれている光開始剤が吸収して反応性を示した後、樹脂の主成分であるモノマーと反応して重合されて硬化される。紫外線硬化型樹脂内に含まれている光開始剤がUVを受光すれば、光重合反応が開始されて、樹脂の主成分である単量体(Monomer)と中間体(Oligomer)が瞬時に重合体(Polymer)を形成して硬化される。
【0030】
前記エネルギー線硬化型樹脂は、重合形態に応じて、ラジカル重合型、ラジカル付加型、陽イオン重合型に分類される。各分類による反応性樹脂として、ラジカル重合型にはアクリレート系、ラジカル付加型にはポリエン/ポリチオール系およびスピラン樹脂系、陽イオン重合型にはエポキシ樹脂およびビニルエーテルが用いられる。好ましくは、アクリレート系反応性オリゴマーが用いられる。アクリレート系オリゴマーとしては、エポキシアクリレート(Epoxy acrylate)、ウレタンアクリレート(Urethane acrylate)、ポリエステルアクリレート(Polyester acrylate)、シリコンアクリレート(Silicone acrylate)があり、本発明においては、好ましくは、ウレタンアクリレートとシリコンアクリレートとの混合物の形で用いられる。これらは、後述するエネルギー線開始剤と一緒に反応してsemi−IPN構造を形成するために用いられる。
【0031】
1−3−1.エネルギー線硬化型ウレタン樹脂
エネルギー線硬化型ウレタン樹脂は、粘着剤の優れた耐熱特性を与えるために用いられる。前記エネルギー線硬化型ウレタン樹脂としては、アリファチック2官能性ウレタンアクリレート(Aliphatic difunctional urethane acrylate)、アリファチック3官能性ウレタンアクリレート(Aliphatic trifunctional urethane acrylate)、アリファチック6官能性ウレタンアクリレート(Aliphatic hexafunctional urethane acrylate)、アロマチック2官能性ウレタンアクリレート(Aromatic difunctional urethane acrylate)、アロマチック3官能性ウレタンアクリレート(Aromatic trifunctional urethane acrylate)、アロマチック6官能性ウレタンアクリレート(Aromatic hexafunctional urethane acrylate)などがある。
【0032】
前記エネルギー線硬化型ウレタン樹脂の含量は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して、5〜40重量部、好ましくは、5〜35重量部である。前記エネルギー線硬化型ウレタン樹脂の含量が5重量部未満である場合、架橋構造が正常に形成されない結果、内部凝集力が低下し、粘着剤残渣が発生する虞がある。前記エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂の含量が40重量部を超える場合、表面硬化度が高くて粘着層が引っ掻かれ易いため、既存の粘着層のように、モールドの角部によって突き刺されるという現象が発生する虞がある。
【0033】
1−3−2.エネルギー線硬化型シリコン樹脂
エネルギー線硬化型シリコン樹脂は、粘着剤の優れた離型特性を与えるために用いられる。前記エネルギー線硬化型シリコン樹脂としては、シリコンジアクリレート(Silicone diacrylate)、シリコンヘキサアクリレート(Silicone hexaacrylate)、シリコンポリエステルアクリレート(Silicone Polyester acrylate)、シリコンウレタンアクリレート(Silicone Urethane acrylate)、シリコンウレタンメタアクリレート(Silicone Urethane methacrylate)などがある。
【0034】
エネルギー線硬化型シリコン樹脂の含量は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して、好ましくは、0.1〜5重量部、さらに好ましくは、1〜5重量部である。エネルギー線硬化型シリコン樹脂の含量が0.1重量部未満である場合、架橋構造が正常に形成されない結果、内部凝集力が低下し、しかも、粘着剤残渣が発生する虞がある。前記エネルギー線硬化型シリコン樹脂の含量が5重量部を超える場合、表面硬化度が高くて粘着層が引っ掻かれ易いため、既存の粘着層のようにモールドモールドの角部によって突き刺される現象が発生する虞がある。
【0035】
1−5.エネルギー線開始剤
前記エネルギー線開始剤は、紫外線のエネルギーを吸収して光重合反応を開始する機能をする。このために用いられる開始剤としては、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、メチル−[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリンプロパノン、4−ベンジル−4´−メチルジフェニルスルフィド、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、メチル−オルト−ベンゾ−ベンゾエート、メチルベンゾイルホルメート、4−フェニルベンゾフェノン、2、4、6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィン、2−ヒドロキシ−1、2−ジフェニルエタノンなどが使用可能である。
【0036】
前記エネルギー線開始剤の含量は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して、1〜15重量部、好ましくは、1〜10重量部である。前記エネルギー線開始剤の含量が、前記エネルギー線硬化型ウレタン樹脂100重量部に対して、1重量部未満である場合、エネルギー線硬化型樹脂の硬化が正常に行われなくなる虞があり、15重量部を超える場合には、反応に与らずに残留するエネルギー線開始剤が粘着剤残渣となって半導体パッケージを汚染させる汚染源になる虞がある。
【0037】
1−6.さらなる添加剤
また、前記粘着層組成物は、上記の成分に加えて、溶媒および光増減剤、老化防止剤、レベリング剤などの添加剤がさらに使用可能である。
【0038】
2.マスキングテープ
図1に基づき、本発明の粘着剤組成物が用いられるマスキングテープを説明する。図1は、本発明の粘着剤が適用されたモールドアンダーフィル(MUF)工程のマスキングテープに対する模式的断面図である。図1を参照すれば、前記マスキングテープ10は、耐熱性基材11と、前記耐熱性基材11の片面または両面に形成された帯電防止層12、12´と、前記帯電防止層12または12´の上に形成された粘着剤層13と、から構成される。
【0039】
2−1.耐熱性基材
前記耐熱性基材は、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムおよびポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムなどが挙げられる。前記基材フィルムの厚さは、通常、10〜100μmであり、好ましくは、10〜50μmであり、さらに好ましくは、25〜50μmである。
【0040】
また、前記基材フィルムには、帯電防止層および/または粘着層との密着維持性などを高めるために、マット処理、コロナ放電処理、プライマー処理および架橋結合処理などの通常の物理的または化学的な表面処理が施されてもよい。
【0041】
2−2.帯電防止層
さらに、前記基材フィルムの片面または両面には、帯電防止のための帯電防止層がコーティングされる必要がある。このとき、この帯電防止層には、界面活性剤、伝導性高分子などの帯電防止特性を有するコーティング性物質が使用可能であるが、好ましくは、帯電防止の尺度である表面抵抗値も低く、導電層の表面転移が少なく、湿度にあまり敏感ではなく、帯電性能も永久的に維持される伝導性高分子から導電層を構成するものとする。一般に、帯電防止コーティング用に用いられる高分子は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどである。さらに、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンだけではなく、その誘導体なども使用可能である。かような伝導性コーティング液を基材フィルムの表面に円滑にコーティングするためにバインダーと混合するが、バインダーとしては、電気が伝達可能なアクリル、ウレタン、エステル、エーテル、エポキシ、アミド、イミド、スチレン系樹脂などが使用可能である。また、好ましくは、前記帯電防止層は、0.1〜1μmにコーティングすることを特徴とする。これは、0.1μm以内に薄くコーティングすれば、所望の帯電特性が発現され難く、1μmを超過するよう厚くコーティングすれば、必要以上の帯電性能が発現されてしまうとともに、伝導性高分子が高価であるため費用負担がある他、導電層の上に粘着層をコーティングする上で円滑にコーティングできなくなるという不都合がある。
【0042】
2−3.粘着剤層
前記帯電防止層の上に形成される粘着剤層の組成は、上述の通りである。
【0043】
一方、粘着剤層の厚さは2〜30μmであることが好ましい。厚さが2μm未満であれば、被着剤の公差によってモールドの物性が低下し、厚さが30μmを超えると、円滑な紫外線硬化効率が期待し難く、これにより、粘着層の物性が低下して工程中に加わる圧力および刺激に弱くなる。
【0044】
前記粘着剤層のポリシュドシリコンウェーハ(polished silicon wafer)面に対する常温粘着力は、50gf/inch以下であり、さらに好ましくは、30gf/inch以下である。粘着力が50gf/inchを超えると、MUF工程が行われる間にプラズマ処理により活性化されたチップ(Chip)の表面に残渣を生じさせる虞がある。
【0045】
前記粘着剤層の表面抵抗は、1011Ω/□以下である。前記粘着剤層の表面抵抗が1011Ω/□を超えると、工程中に静電気不良を生じさせて完成されたパッケージの電気的な性能を低下または喪失させる虞がある。
【0046】
3.MUF工程
モールドアンダーフィル(MUF)工程は、PoPパッケージの底層を絶縁樹脂により保護するが、接地として活用されるチップの表面を露出させるための工程であり、図2にその工程図を示す。
【0047】
1)フィルム貼着工程
MUF工程は、175°C天板/底板モールド14、15内に行われ、天板モールド14に真空を用いて耐熱性基材フィルム11を貼り付ける。このとき、フィルムの引張り強さが低過ぎると、フィルムがやぶれる虞があり、伸び率が低過ぎると、モールド内のキャビティ(Cavity)に密着できず、フィルムが浮いてしまう現象が発生することがある。本発明において基材として用いたPENフィルムは、これに適した15kg/mm2以上の引張り強さおよび80%以上の伸び率を保持することにより、モールド貼着特性に優れた特性を有する。
【0048】
2)アンダーフィル工程
フィルムを貼り付けた後、天板モールド14が下降して底板モールド15と係合され、これにより、流れ性を有するEMC19によってチップ17の周縁が満たされ、チップの表面は粘着剤層13によってマスキングされる。
【0049】
このとき、粘着層の凝集特性が低下すれば、EMC19がチップ17の表面に浸透してモールドフラッシュが発生することがある。本発明の耐熱アクリル粘着剤層13は、耐熱特性および凝集力に優れたアクリル共重合体を構成することにより、モールドフラッシュを防ぐことができる。
【0050】
3)フィルムの引き剥がし工程
アンダーフィル工程後、天板モールド14が上昇して、基材11がチップ17の表面に硬化によりくっついているEMC19から引き剥がされる。
【0051】
このとき、粘着剤層13の離型力が足りない場合、基材フィルム11が引き剥がされ難いか、あるいは、EMC19またはチップ17の表面に残渣を残すことがある。本発明の耐熱アクリル粘着剤層13は、エネルギー線硬化型シリコンアクリレートを含んでいて優れた離型特性を保有しているため、フィルムが引き剥がされ易いという特性を有する。
【0052】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明の構成およびそれによる効果をより詳述する。しかしながら、これらの実施例は本発明をより具体的に説明するための単なる例示に過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されることはない。
【0053】
<実施例1>
アクリル系共重合体(サモン社製、AT5100)100重量部(固形分基準)に対してエチルアセテート(EA)600重量部を投入し、1時間攪拌した。この後、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂であるアリファチックポリウレタンアクリレート(日本合成社製、UV7600B80)25重量部(固形分基準)、シリコンヘキサアクリレート(CYTEC社製、EB1360)2重量部(固形分基準)、ホスフィン系エネルギー線開始剤(CYTEC社製、DAROCUR TPO)1重量部を混合して1時間攪拌し、メラミン系熱硬化剤(サモン社製、SM−20)5重量部(固形分基準)、有機酸系熱硬化促進剤(サモン社製、A−20)3重量部(固形分基準)を投入して1時間さらに攪拌した。前記粘着剤組成物を、両面に105Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止コーティング液が塗布された38μmのPENフィルムの片面に約10μmの厚さで塗布して、150°Cで5分間乾燥した後(熱硬化)、UV照射装置を用いて約500Wの光量でエネルギー線硬化を行い、マスキングテープを製造した。
【0054】
<実施例2>
アクリル系共重合体(サモン社製、AT5100)100重量部(固形分基準)に対してエチルアセテート(EA)600重量部を投入し、1時間攪拌した。次いで、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂であるアリファチックポリウレタンアクリレート(日本合成社製、UV7600B80)25重量部(固形分基準)、シリコンヘキサアクリレート(CYTEC社製、EB1360)4重量部(固形分基準)、ホスフィン系エネルギー線開始剤(CYTEC社製、DAROCUR TPO)1重量部を混合して1時間攪拌し、メラミン系熱硬化剤(サモン社製、SM−20)5重量部(固形分基準)、有機酸系熱硬化促進剤(サモン社製、A−20)3重量部(固形分基準)を投入して1時間さらに攪拌した。前記粘着剤組成物を、両面に105Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止コーティング液が塗布された38μmのPENフィルムに、約10μmの厚さで塗布し、150°Cで5分間乾燥した後、エネルギー線硬化を行ってマスキングテープを製造した。
【0055】
<実施例3>
アクリル系共重合体(サモン社製、AT5100)100重量部(固形分基準)に対してエチルアセテート(EA)600重量部を投入し、1時間攪拌した。次いで、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂であるアリファチックポリウレタンアクリレート(日本合成社製、UV7600B80)25重量部(固形分基準)、シリコンヘキサアクリレート(CYTEC社製、EB1360)2重量部(固形分基準)、ホスフィン系エネルギー線開始剤(CYTEC社製、DAROCUR TPO)1重量部を混合して1時間攪拌し、メラミン系熱硬化剤(サモン社製、SM−20)3重量部(固形分基準)、有機酸系熱硬化促進剤(サモン社製、A−20)1重量部(固形分基準)を投入して1時間さらに攪拌した。前記粘着剤組成物を、両面に105Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止コーティング液が塗布された38μmのPENフィルムに、約10μm厚さで塗布し、150°Cで5分間乾燥した後、UV照射装置を用いて約500Wの光量でエネルギー線硬化を行い、マスキングテープを製造した。
【0056】
<実施例4>
アクリル系共重合体(サモン社製、AT5100)100重量部(固形分基準)に対してエチルアセテート(EA)600重量部を投入し、1時間攪拌した。次いで、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂であるアリファチックポリウレタンアクリレート(日本合成社製、UV7600B80)25重量部(固形分基準)、シリコンヘキサアクリレート(CYTEC社製、EB1360)1重量部(固形分基準)、ホスフィン系エネルギー線開始剤(CYTEC社製、DAROCUR TPO)1重量部を混合して1時間攪拌し、メラミン系熱硬化剤(サモン社製、SM−20)5重量部(固形分基準)、有機酸系熱硬化促進剤(サモン社製、A−20)3重量部(固形分基準)を投入して1時間さらに攪拌した。前記粘着剤組成物を、両面に105Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止コーティング液が塗布された38μmのPENフィルムに、約10μm厚さで塗布し、150°Cで5分間乾燥した後、UV照射装置を用いて約500Wの光量でエネルギー線硬化を行ってマスキングテープを製造した。
【0057】
<実施例5>
アクリル系共重合体(サモン社製、AT5100)100重量部(固形分基準)に対してエチルアセテート(EA)600重量部を投入し、1時間攪拌した。次いで、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂であるアリファチックポリウレタンアクリレート(日本合成社製、UV7600B80)25重量部(固形分基準)、シリコンヘキサアクリレート(CYTEC社製、EB1360)5重量部(固形分基準)、ホスフィン系エネルギー線開始剤(CYTEC社製、DAROCUR TPO)1重量部を混合して1時間攪拌し、メラミン系熱硬化剤(サモン社製、SM−20)5重量部(固形分基準)、有機酸系熱硬化促進剤(サモン社製、A−20)3重量部(固形分基準)を投入して1時間さらに攪拌した。前記粘着剤組成物を、両面に105Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止コーティング液が塗布された38μmのPENフィルムに、約10μm厚さで塗布し、150°Cで5分間乾燥した後、UV照射装置を用いて約500Wの光量でエネルギー線硬化を行い、マスキングテープを製造した。
【0058】
<比較例1>
アクリル系共重合体(サモン社製、AT5100)100重量部(固形分基準)に対してエチルアセテート(EA)600重量部を投入し、1時間攪拌した。次いで、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂であるアリファチックポリウレタンアクリレート(日本合成社製、UV7600B80)25重量部(固形分基準)、シリコンヘキサアクリレート(CYTEC社製、EB1360)10重量部(固形分基準)、ホスフィン系エネルギー線開始剤(CYTEC社製、DAROCUR TPO)1重量部を混合して1時間攪拌し、メラミン系熱硬化剤(サモン社製、SM−20)5重量部(固形分基準)、有機酸系熱硬化促進剤(サモン社製、A−20)3重量部(固形分基準)を投入して1時間さらに攪拌した。前記粘着剤組成物を、両面に105Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止コーティング液が塗布された38μmのPENフィルムに、約10μm厚さで塗布し、150°Cで5分間乾燥した後、UV照射装置を用いて約500Wの光量でエネルギー線硬化を行い、マスキングテープを製造した。
【0059】
<比較例2>
アクリル系共重合体(サモン社製、AT5100)100重量部(固形分基準)に対してエチルアセテート(EA)600重量部を投入し、1時間攪拌した。次いで、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂であるアリファチックポリウレタンアクリレート(日本合成社製、UV7600B80)25重量部(固形分基準)、シリコンヘキサアクリレート(CYTEC社製、EB1360)3重量部(固形分基準)、ホスフィン系エネルギー線開始剤(CYTEC社製、DAROCUR TPO)1重量部を混合して1時間攪拌し、イソシアネート系熱硬化剤(ダウコーニング社製、CE138)3重量部(固形分基準)を投入して1時間さらに攪拌した。前記粘着剤組成物を、両面に105Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止コーティング液が塗布された38μmのPENフィルムに、約10μm厚さで塗布し、150°Cで5分間乾燥した後、UV照射装置を用いて約500Wの光量でエネルギー線硬化を行い、マスキングテープを製造した。
【0060】
<比較例3>
アクリル系共重合体(サモン社製、AT5100)100重量部(固形分基準)に対してエチルアセテート(EA)600重量部を投入し、1時間攪拌した。次いで、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂であるアリファチックポリウレタンアクリレート(日本合成社製、UV7600B80)25重量部(固形分基準)、ホスフィン系エネルギー線開始剤(CYTEC社製、DAROCUR TPO)1重量部を混合して1時間攪拌し、メラミン系熱硬化剤(サモン社製、SM−20)5重量部(固形分基準)、有機酸系熱硬化促進剤(サモン社製、A−20)3重量部(固形分基準)を投入して1時間さらに攪拌した。前記粘着剤組成物を、両面に105Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止コーティング液が塗布された38μmのPENフィルムに、約10μm厚さで塗布し、150°Cで5分間乾燥した後、UV照射装置を用いて約500Wの光量でエネルギー線硬化を行い、マスキングテープを製造した。
【0061】
<比較例4>
アクリル系共重合体(サモン社製、AT5100)100重量部(固形分基準)に対してエチルアセテート(EA)600重量部を投入し、1時間攪拌した。次いで、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂であるアリファチックポリウレタンアクリレート(日本合成社製、UV7600B80)25重量部(固形分基準)、シリコンヘキサアクリレート(CYTEC社製、EB1360)2重量部(固形分基準)、ホスフィン系エネルギー線開始剤(CYTEC社製、DAROCUR TPO)1重量部を混合して1時間攪拌し、メラミン系熱硬化剤(サモン社製、SM−20)5重量部(固形分基準)、有機酸系熱硬化促進剤(サモン社製、A−20)3重量部(固形分基準)を投入して1時間さらに攪拌した。前記粘着剤組成物を、両面に109Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止コーティング液が塗布された38μmのPENフィルムの片面に約10μm厚さで塗布し、150°Cで5分間乾燥した後、UV照射装置を用いて約500Wの光量でエネルギー線硬化を行い、マスキングテープを製造した。
【0062】
<評価>
前記実施例および比較例に従い製造されたDEFCPの製造のためのMUF工程用マスキングテープをそれぞれ評価し、下記表1に示す。各評価項目は、既存の粘着層に比べて改善された粘着層の特性を把握するための評価項目から構成し、下記の評価方法によって行われた。
【0063】
1.PCB残渣
PCB基板に粘着フィルムを貼り付け、周縁が尖っているモールド欠片を載せた後、天/底板175°Cのホットプレス機器にて700MPaの圧力にて押し付けた。次いで、顕微鏡を用いてPCB基板に対する粘着層残渣の存否を確認し、残渣がない場合を良好(O)とし、残渣が発生した場合を不良(X)とした。
【0064】
2.EMCの跡と離型特性
粘着フィルムの上にEMCペレットを載せた後、天/底板175°Cのホットプレス機器にて700MPaの圧力にてモールディングを行った。EMCの跡は、モールディングされた表面がきれいな場合を良好(O)とし、跡が発生したり粘着層側にEMCが超えてきた場合を不良(X)とした。離型特性は、粘着フィルムを引き剥がすときに、モールディング面に粘着剤残渣なしに弱い力でも容易に引き剥がされる場合を良好(O)とし、残渣が発生したり引き剥がされ難い場合を不良(X)とした。
【0065】
評価に用いたそれぞれのEMCの種類および特性につき、下記表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
3.粘着力
粘着フィルムを長手方向に幅1inch、長さ15cmに切り出した後、ポリシュドウェーハの上に、粘着フィルムを、2kgのローラーを用いて常温往復2回のラミネーションを行った。次いで、万能材料試験機(UTM)を用いて300mm/minの速度にて180°粘着力を測定した。
【0068】
4.表面抵抗
表面抵抗測定機(アドバンテスト社製、R8340A)を用いて、電圧100Vの印加時における粘着フィルムの表面抵抗を測定した。
【0069】
前記評価の結果を下記表2にまとめて示す。
【0070】
【表2】

【0071】
前記表1から明らかなように、本発明に係る実施例1から実施例5の場合には、あらゆる主な要求特性を満足していた。しかしながら、シリコン系オリゴマーを過量投入した比較例1の場合、他の特性はいずれも良好であったものの、表面硬化度が高くてPCB残渣が発生し、イソシアネート系硬化剤を投入した比較例2の場合、流れ性が良くないパナソニック ECOM E EMCに対してEMCが過度に硬化された粘着層に浸透することにより、EMCの表面に跡が発生した。イソシアネート系硬化剤は、常温下でも反応が行われる程度に速い反応性を保有しているというメリットがあるが、過硬化が進んで表面硬さがやや高くなるという特徴がある。このため、流れ性が良好なEMCの場合には、粘着層との接触面に浸透されずに横広がりに良好に広がるため問題を引き起こさないものの、流れ性が良くないEMCの場合、粘着層と接触される過程で表面硬さが高い粘着層にEMCが浸透しやすく、その結果、EMCの表面に不均一な跡が発生してしまう。このため、比較例2を除く他の実施例および比較例の場合、配合量に見合う分だけ架橋構造が形成されるメラミン系熱硬化剤と反応性を増大させる熱硬化促進剤とを併用することにより過硬化を防ぐとともに表面硬さを調節してEMCの種類によらずにあらゆるEMCに対して表面の跡が発生しないようにした。シリコン系オリゴマーを除去した比較例3の場合、EMCから引き剥がされ難く、粘着力も100gfを超えていた。109Ω/□の表面抵抗を有する帯電防止コーティング液を両面に塗布した比較例4の場合、粘着面の表面抵抗が1014Ω/□であって、帯電防止機能を失っていた。
【0072】
以上、本発明の好適な実施例について詳述したが、本発明はこれらに何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において様々な形態に変形および修正可能であることは当業者にとって自明であり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属するということはいうまでもない。
【符号の説明】
【0073】
10…マスキングテープ
11…耐熱性基材
12、12´…帯電防止層
13…粘着剤層
14…天板モールド
15…底板モールド
16…PCB基板
17…チップ
18…ソルダーボール
19…EMC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アクリル系共重合体100重量部に対して、(b)熱硬化剤1〜20重量部と、(c)エネルギー線硬化型ウレタン樹脂5〜40重量部と、(d)エネルギー線硬化型シリコン樹脂0.1〜5重量部と、(e)エネルギー線開始剤と、を含むモールドアンダーフィル工程のマスキングテープ用粘着剤組成物。
【請求項2】
エネルギー線硬化型ウレタン樹脂は、アリファチック2官能性ウレタンアクリレート、アリファチック3官能性ウレタンアクリレート、アリファチック6官能性ウレタンアクリレート、アロマチック2官能性ウレタンアクリレート、アロマチック3官能性ウレタンアクリレート、及びアロマチック6官能性ウレタンアクリレートよりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のマスキングテープ用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記エネルギー線硬化型シリコン樹脂は、シリコンジアクリレート、シリコンヘキサアクリレート、シリコンポリエステルアクリレート、シリコンウレタンアクリレート、およびシリコンウレタンメタアクリレートよりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のマスキングテープ用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記熱硬化剤は、メラミン系硬化剤であることを特徴とする請求項1に記載のマスキングテープ用粘着剤組成物。
【請求項5】
耐熱性基材と、
前記耐熱性基材の片面または両面に形成された帯電防止層と、
前記帯電防止層の上に形成され、請求項1に記載の粘着剤組成物から製造される粘着剤層と、
を備えることを特徴とするモールドアンダーフィル工程用マスキングテープ。
【請求項6】
前記耐熱性基材は、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムおよびポリブチレンテレフタレートフィルムよりなる群から選ばれるいずれか一種であることを特徴とする請求項5に記載のモールドアンダーフィル工程用マスキングテープ。
【請求項7】
前記粘着剤層のポリシュドシリコンウェーハ面に対する常温粘着力は、50gf/inch以下であることを特徴とする請求項5に記載のモールドアンダーフィル工程用マスキングテープ。
【請求項8】
前記粘着剤層の表面抵抗は、粘着層面が1011Ω/□以下であることを特徴とする請求項5に記載のモールドアンダーフィル工程用マスキングテープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−84873(P2013−84873A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−6652(P2012−6652)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【出願人】(504092127)トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【Fターム(参考)】