説明

レジストトリミング方法及びトリミング装置

【課題】 低いトリミング速度でレジストトリミングを実施することにより、高精度で寸法をコントロールすることが可能なレジストトリミング方法を提供する。
【解決手段】 反応ガスのプラズマを生成するプラズマ生成工程と、生成したプラズマからイオン及び電子を除去し、ラジカルを選択的に取り出す除去工程と、イオン及び電子が除去されたプラズマをレジストパターンに照射することで、レジストパターンをトリミングするトリミング工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置の解像限界以下の超微細レジストパターンを形成するためのレジストトリミング方法及びトリミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の高集積化及びチップサイズの縮小化に伴い、パターンサイズの微細化が推し進められている。半導体装置の速度性能は、材料が同じ場合には主に回路パターンの幅寸法によって決まるため、年々微細化が推し進められており、それに応じて精密な露光工程が要求される。
【0003】
露光工程の微細化能力は、主に露光光源の波長に依存するため、I線からKrFレーザ、ArFレーザと、より短い波長の光源とその波長に感度のあるレジスト材料の開発が進められてきた。しかし、近年、光源の短波長化が微細化の進展に追いつかず、パターン転写能力が限界にきており、ゲート長32nm以降の世代では微細化を行うことが難しい。
【0004】
そこで、露光によって形成できないような微細パターンについて、別の方法でレジストを変形させ、細らせて微細化する技術の開発が行われている。
【0005】
このような技術として、例えば、真空処理室内に酸素等のエッチングガスを導入し、減圧下でプラズマ放電を発生させ、プラズマ処理を施してレジストパターンの幅を狭くするレジストトリミングという技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2005−303088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示すような容量結合型プラズマを利用したレジストトリミングでは、次のような問題があった。
【0008】
第1に、プラズマの電子密度が1×10+10〜10+12cm-3と非常に高いために、レジストのエッチング速度、即ちトリミング速度が数百から数千nm/minと速すぎて、数十nmから数nmレベルの寸法制御が難しい。
【0009】
第2に、上述したように、プラズマの電子密度やイオン密度が高いと、高密度のプラズマが基板に直接照射されるために、処理基板へのチャージアップダメージを引き起こす可能性がある。
【0010】
第3に、イオン密度が高いと、イオン衝撃により等方的なエッチングを行うことが難しく、例えば、目的のパターン幅にしようとすると、パターン厚さが小さくなりすぎてしまうことがある。
【0011】
本発明は、上述した問題に鑑み提案されたもので、低いトリミング速度でレジストトリミングを実施することにより、高精度で寸法をコントロールすることが可能なレジストトリミング方法及びトリミング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のレジストトリミング方法は、上述した目的を達成するため、以下の工程を含むことを特徴とする。
【0013】
第1の工程は、反応ガスのプラズマを生成するプラズマ生成工程である。第2の工程は、生成したプラズマからイオン及び電子を除去し、ラジカルを選択的に取り出す除去工程である。第3の工程は、イオン及び電子が除去されたプラズマをレジストパターンに照射することで、レジストパターンをトリミングするトリミング工程である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレジストトリミング方法によれば、低いトリミング速度でレジストトリミングを実施することができるため、高精度で寸法をコントロールすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明のレジストトリミング方法及びトリミング装置の実施形態を説明する。
【0016】
[トリミング装置の構成]
本発明の実施形態に係るトリミング装置は、高周波電極が配置されたプラズマ生成空間と、被処理体を配置可能なトリミング処理空間と、導電性部材と、ガス導入手段と、排気手段と、高周波電力制御手段と、コントローラとを備えている。導電性部材は、プラズマ生成空間とトリミング処理空間との間に配されており、両空間を連通するための複数の貫通孔を有している。ガス導入手段は、プラズマ生成空間に反応ガスを導入するための手段である。排気手段は、プラズマ生成空間及びトリミング処理空間を排気するための手段である。高周波電力制御手段は、高周波電極への電力供給を制御するための手段である。コントローラは、ガス導入手段、排気手段及び高周波電力制御手段を制御することで、イオン及び電子が除去されたプラズマをトリミング処理空間に導入し、当該トリミング処理空間に導入されたレジストパターンをトリミングするための手段である。
【0017】
以下、図1を参照して、本発明の実施形態に係るトリミング装置を具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るトリミング装置の構成を示す概略図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るトリミング装置は、内部を真空状態に保持可能な真空容器11を備えている。真空容器11の内部には、導電性部材(SUSやアルミニウム)からなる隔壁板1が、水平な状態で設けられている。真空容器11は、この隔壁板1によって接地されるとともに、プラズマ生成空間として機能するプラズマ放電空間を形成するプラズマ生成室3と、トリミング処理空間として機能するトリミング処理室4とに分けられている。この隔壁板1には、プラズマ生成室3とトリミング処理室4とを上下方向に貫通する複数の貫通孔5が形成されており、これにより電子やイオンを遮断する。また、プラズマ生成室3に反応ガスであるトリミングガスを導入し、高周波電力制御手段として機能する高周波電源21から高周波電極2に高周波電力(例えば、13.56MHz)を供給することで、容量結合プラズマが生起される。
【0019】
トリミング処理室4には、静電吸着作用等により基板を保持可能な基板保持機構6が配置されている。また、基板保持機構6の内部にはヒータ7が設けられており、このヒータ7によって基板温度を均一にコントロールし、トリミング分布を均一に保つことが可能である。なお、隔壁板1や真空容器11の内部全体にもヒータを取り付けて真空容器11の全体の温度を均一にコントロールすることにより、面内分布の良いトリミング形状を得ることが可能である。
【0020】
ガス導入手段として機能するガス導入系8は、ガスの供給源からプラズマ生成室3にガスを導入するものであり、図示しないマスフローコントローラを有し、コントローラ9からの指令に基づいてプラズマ生成室3に導入する流量を調整可能になっている。ガス導入系8から導入するトリミングガスとしては、ホトレジストの構成材料となる有機化合物との反応により、C,H,OなどをCO2などの成分に変換可能な物質としてO原子、H原子、N原子などを含むガスを用いることができる。O原子を含むラジカルは反応性が高いため好適に用いることができ、例えば、ホトレジスト中のC原子を二酸化炭素などの成分に変換する。また、H原子を含むラジカルは、ホトレジスト中のC原子と反応して、CHXなどの成分に変換する。例えば、O2、O3、N2、NH3、H2、NOX、XY(X,Yは任意の数、例えば、メタンやエタンなどのアルカン類、エチレンなどのアルキン類)、CXYZ(X,Y,Zは任意の数、例えば、アルコール類(CH3OH等)、ケトン類(メチルエチルケトン、イソプロピルメチルケトン、メチルプロピルケトン等)、アルデヒド類、カルボン酸類、エーテル類、エステル類)などを含むガスを用いることができる。
【0021】
トリミングガスをプラズマ生成室3に導入した状態で、高周波電力を高周波電極2に供給すると、プラズマ生成室3でラジカル発生源となるプラズマが発生する。プラズマは、電子、ラジカル、イオンを含むが、高周波放電により帯電した隔壁板1によって電子やイオンは遮断され、ラジカルが選択的に貫通孔5を通過してトリミング処理室4に導入され、基板に照射されることになる。例えば、酸素がプラズマ生成室3に導入された状態で高周波電力をプラズマ生成室3に供給すると、酸素プラズマが発生する。その内、酸素ラジカルのみが貫通孔を通過して分離されてレジストトリミング室に導入され、酸素ラジカルが処理基板に照射される。酸素ラジカルは、ホトレジスト中のC原子と結合してCO2やCOとなり、あるいはH原子と結合しH2Oなどに変換される。
【0022】
なお、上記構成の装置とした場合、隔壁板1の貫通孔5内でのガス流速をu、実質的な貫通孔5の長さをL、相互ガス拡散係数をDとすると、uL/D>1の条件を満たすように貫通孔5の長さLやガス流速uを設定する。これにより、隔壁板1からプラズマ生成室3へのラジカルの逆拡散が防止される。また、隔壁板1の貫通孔5の径サイズや貫通孔5の数は、電子やイオンの遮断量にも関係しており、トリミング処理室4における電子密度を目的の値にするように設定される。
【0023】
排気手段として機能する排気系10は、図示しないターボ分子ポンプなどを備えて構成され、コントローラ9からの指令に基づいて所定の排気速度でトリミング処理室4を排気する。
【0024】
コントローラ9は、高周波電源21、ガス導入系8、排気系10、ヒータ7などに指令を送ることで、高周波電力、ガス流量、プロセス圧力、処理時間、基板温度などのプロセス条件をコントロール可能になっている。プロセス圧力は、本実施形態では、図示しない圧力センサからの入力に基づき、ガス導入系8及び排気系10の少なくとも一方をコントロールすることで、所定の値に設定される。なお、コントローラ9は、一般的なコンピュータ、各種装置への指令を送信可能なドライバなどを備えて構成され、プログラムに基づきトリミング処理を実行する。このような構成からなるコントローラ9は、制御部91、タイマ処理部92、トリミング速度情報記憶部93、終了タイミング演算部94として機能する。制御部91は、タイマコントローラ9を統合的に制御する機能部である。タイマ処理部92は、レジストパターンが所望のサイズにトリミングされた際に、トリミング処理を終了させるための機能部である。トリミング速度情報記憶部93は、トリミング速度に関するトリミング速度情報を記憶するための機能部である。終了タイミング演算部94は、トリミング速度情報に基づいて、トリミング処理の終了タイミングを決定するための機能部である。
【0025】
[トリミング方法]
次に、上述した構成のトリミング装置を用いたレジストトリミング方法について説明する。
【0026】
本発明の実施形態に係るレジストトリミング方法は、以下の3つの工程を主要な工程としている。第1の工程は、反応ガスのプラズマを生成するプラズマ生成工程である。第2の工程は、生成したプラズマからイオン及び電子を除去し、ラジカルを選択的に取り出す除去工程である。第3の工程は、イオン及び電子が除去されたプラズマをレジストパターンに照射することで、レジストパターンをトリミングするトリミング工程である。また、トリミング工程は、プラズマ生成空間に反応ガスを導入し、高周波電極に高周波電力を供給し、高周波放電させることで、プラズマを生成する。そして、生成したプラズマを導電性部材を介してトリミング処理空間に導入することで、イオン及び電子が除去されたプラズマを照射するようになっている。このトリミング工程では、電子密度が1×10+7cm-3以下のプラズマを照射することが好ましい。
【0027】
以下、図2を参照して、本発明の実施形態に係るレジストトリミング方法について具体的に説明する。図2は、本発明の実施形態に係るレジストトリミング方法を示す説明図である。
【0028】
まず、図2(a)に示すように、真空容器11内を所定の真空度に維持した状態で、被エッチング材料31及びレジストパターンが積層した基板(基板部分は図示せず)をトリミング装置に搬入し、基板保持機構6に載置する。そして、プラズマ生成室3にトリミングガスを導入し、高周波電極2に高周波電力を印加してプラズマを生成する。プラズマはトリミング処理室4へ向かって拡散するが、イオンや電子は隔壁板1に遮断され、トリミングガス分子のラジカルのみがトリミング処理室4に導入され、トリミング処理室4内の電子密度が1×10+7cm-3以下に維持される。
【0029】
トリミングガス分子のラジカルに曝されると、ホトレジスト32の表面が酸化され、二酸化炭素などの気体分子に変換されて、図2(b)に示すように、レジストパターンのサイズが小さくなる。
【0030】
レジストパターンが所望のサイズになったときに、高周波電極2への電力供給を停止することで、トリミング処理を終了する。これは、例えば、所定の処理時間が経過したとき、所望のサイズになったとして処理を終了する。
【0031】
図3を参照して、所定の処理時間について説明する。図3は、CDとトリミング時間(この例では、レジストパターンの線幅)との対応を示すマップである。所定の処理時間は、例えば、図3に示すようにCDとトリミング時間との対応を示すマップを、各プロセス条件(トリミングガス種、プロセス圧力、基板温度等)及び各レジスト材料に対応させてコントローラ9に記憶しておき、これに基づいて決定する。具体的には、処理前の線幅CD0から目的の線幅CD1にするのに必要な処理時間Δtをマップに基づいて算出し、当該処理時間Δtが経過したときに処理を終了させる。もちろん、マップではなく、近似式に基づいて所定の処理時間を算出したり、適切な補正を行ったりしてもよい。
【0032】
このように、電子密度は1×10+7cm-3以下で、トリミングガスを用いてレジストパターンのトリミングを行うことにより、低いトリミング速度でレジストトリミングを実施することができる。このため、数十nmから数nmレベルでの高精度で寸法をコントロールすることが可能となる。
【0033】
また、基板にプラズマを直接照射しないことで、基板への電荷によるチャージアップダメージを無くすことが可能である。さらに、等方的なエッチングを行うことが可能である。
【0034】
なお、上述した所定の処理時間は、コントローラ9が演算により決定しているが、予め定めた値をユーザに入力させ、タイマ処理(所定時間が経過したときに終了信号を送る処理)のみをコントローラ9に実行させてもよい。また、終点をタイマ処理により決定しているが、公知の膜厚検出器などを用いて実値を検出し、フィードバック制御を行うようにしてもよい。但し、本発明の場合、ラジカルを選択的に用いることで、トリミング速度を非常に小さくできるので、トリミング速度に基づいて処理時間を決定する方法でも高い精度で所望の寸法を得ることができ、終点検出が容易で、装置構成が簡素にできるという利点がある。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では容量結合プラズマを生成しているが、誘導結合プラズマを生成する装置構成であってもよいし、ECRやヘリコン波プラズマを生成する装置構成であってもよい。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0037】
実施例1として、図1に示すトリミング装置が電子密度の要件を満たしていることを確認するために、トリミング処理室4の電子密度測定試験を行った。トリミング処理室4の電子密度をLangmuirプローブを用いて、処理基板直上11mmの箇所における飽和イオン電流密度を測定した。
【0038】
トリミングガスとして酸素500sccm、キャリアガスとしてアルゴン50sccmを使用した。プラズマ生成室3に配備される高周波電極2へはパワー200Wを投入した。プロセス圧力は20Paとした。
【0039】
図4は、実施例1の電子密度測定結果図である。図4に示すように、電子密度は1×10+7cm-3以下に保たれており、隔壁板1を用いない場合と比較すると、電子密度は3桁以上低いことが確認できた。
【0040】
[実施例2]
次に、実施例2として、チャージアップダメージの低減効果を確認する試験を行った。
【0041】
実施例2では、実施例1と同様の装置及びプロセス条件で、MOSキャパシタに対する処理を行った。
【0042】
比較例として、隔壁板1が存在しない容量結合タイプの装置について同様のテストを実施した。トリミングガスは酸素500sccm、圧力は180Pa、投入パワーは1000Wとして試験を行った。
【0043】
測定は8”ウエハ面内56ポイント、アンテナ比(上部電極とゲート酸化膜の面積比)は70万倍で測定した。
【0044】
図5〜図8は、MOSキャパシタのIV特性の測定により、チャージアップダメージを評価した結果図である。図5(実施例2)及び図7(比較例)中の数値は、各ポイントのリーク電流(pA)を示しており、チャージアップダメージがある場合、MOSキャパシタのリーク電流値の絶対値が大きくなる。また、図6(実施例2)及び図8(比較例)中の数値は、絶縁破壊電圧(V)を示しており、絶縁破壊電圧の絶対値が小さくなる。
【0045】
比較例では、リーク電流の絶対値がウエハ面内の中で1E+6pAと局所的に高い領域があり、また絶縁破壊電圧も局所的に小さい領域が測定された(図7、図8参照)。このことから、プラズマ中の電子密度が大きいために、わずかなプラズマの不均一によってチャージアップが誘発されることが確認された。一方、実施例2では、リーク電流はウエハ面内均一に40pA以下で、絶縁破壊電圧も面内均一でチャージアップダメージがないことが確認された(図5、図6参照)。
【0046】
[実施例3]
次に、実施例3として、トリミング速度の測定を行った。
【0047】
実施例3では、実施例1と同様の装置及びプロセス条件で、表面にホトレジストを形成した基板に対して処理を行い、トリミング速度を測定した。また、比較例として、実施例1における比較例と同様のプロセス条件で、ホトレジストを形成した基板に対して処理を行い、トリミング速度を測定した。
【0048】
図9は、トリミング速度の測定結果図である。図9に示すように、比較例ではレジストのトリミング速度は100〜1000nm/minと非常に速いが、本発明のラジカルを用いたレジストトリミング方法ではトリミング速度は10nm/min以下であることが確認された。
【0049】
[実施例4]
次に、実施例4として、レジストのトリミング速度と面内分布を基板温度やプロセス圧力を変化させて測定した。
【0050】
トリミングガスとして酸素500sccmと、キャリアガスとしてアルゴン50sccmを使用した。プラズマ生成室に配備される高周波電極へは、パワー200Wを投入した。
【0051】
プラズマ生成室3とトリミング処理室4のプロセス圧力はどちらも20から50Pa、処理基板の温度はレジストの耐性に影響がない低温領域である30から100度の領域を使用した。
【0052】
図10は、トリミング速度と基板保持機構の温度の測定結果図である。
【0053】
図10に示すように、30から100℃のどの温度帯においても、レジストトリミング速度は10nm/min以下と、トリミング速度が低く抑えられることが確認された。
【0054】
図11は、プロセス圧力と面内分布を示すもので、200mm基板上の面内分布を確認したものである。
【0055】
Edge exclusion 5mm、面内25ポイントで測定を実施した。
【0056】
図11に示すように、トリミング分布は3σで最高5%以下を実現した。
【0057】
[実施例5]
次に、実施例5として、寸法制御性を確認する試験を行った。
【0058】
実施例5として、プロセスガスは酸素500sccmとキャリアガスとしてアルゴン50sccmを使用した。プラズマ生成室に配備される高周波電極はパワー200Wを投入した。プラズマ生成室3とトリミング処理室4のプロセス圧力は50Pa、処理基板の温度は100℃で実施した。
【0059】
比較例として、ラジカルを選択することなく、プラズマをそのまま照射する誘導結合型プラズマを用いたトリミング方法に対してCD測定を実施した。プロセスガスは酸素1sccm、Ar 50sccm、パワーは500W、プロセス圧力は1Pa、処理基板の温度は80℃で実施した。
【0060】
図12は、レジストパターンのCDの測定結果図である。
【0061】
図12に示すように、比較例でトリミングを実施した結果、50nmのトリミングがわずか30sで終了してしまう。これに対して、本発明のトリミング方法は、50nmのトリミングを実施するのに200s程度とはるかに精度良いレジストトリミングが実施できることが示された。
【0062】
[実施例6]
次に、実施例6として、トリミング処理の等方性を確認する試験を行った。
【0063】
実施例6及び比較例のプロセス条件は、実施例5と同様とした。
【0064】
図13は、レジストトリミング後の縦横比の変化量の測定結果図である。
【0065】
レジストトリミング後の横方向の変化量をA、縦方向の変化量をBとした。
【0066】
図13に示すように、本発明のラジカルを用いたレジストトリミング方法では縦横比がA:B=1:1であるのに対して、従来法では縦横比がA:B=1:1.5であった。
【0067】
従来法ではイオン衝撃等のためにトリミングの縦横比が異方的になり易いが、本発明を用いたレジストトリミング方法によって、イオン衝撃を減らし、縦横比を等方的にトリミングすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係るトリミング装置の構成を示す概略図。
【図2】本発明の実施形態に係るレジストトリミング方法を示す説明図。
【図3】CDとトリミング時間との対応を示すマップ。
【図4】実施例1の電子密度測定結果図。
【図5】MOSキャパシタのIV特性の測定により、チャージアップダメージを評価した結果図(実施例2/リーク電流)。
【図6】MOSキャパシタのIV特性の測定により、チャージアップダメージを評価した結果図(実施例2/絶縁破壊電圧)。
【図7】MOSキャパシタのIV特性の測定により、チャージアップダメージを評価した結果図(比較例/リーク電流)。
【図8】MOSキャパシタのIV特性の測定により、チャージアップダメージを評価した結果図(比較例/絶縁破壊電圧)。
【図9】トリミング速度の測定結果図。
【図10】トリミング速度と基板保持機構の温度の測定結果図。
【図11】プロセス圧力と面内分布を示す図。
【図12】レジストパターンのCDの測定結果図。
【図13】レジストトリミング後の縦横比の変化量の測定結果図。
【符号の説明】
【0069】
1 隔壁板
2 高周波電極
3 プラズマ生成室
4 トリミング処理室
5 貫通孔
6 基板保持機構
7 ヒータ
8 ガス導入系
9 コントローラ
91 制御部
92 タイマ処理部
93 トリミング速度情報記憶部
94 終了タイミング演算部
10 排気系
11 真空容器
21 高周波電源
31 被エッチング材料
32 ホトレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスのプラズマを生成するプラズマ生成工程と、
生成したプラズマからイオン及び電子を除去し、ラジカルを選択的に取り出す除去工程と、
前記イオン及び電子が除去されたプラズマをレジストパターンに照射することで、レジストパターンをトリミングするトリミング工程と、
を含むことを特徴とするレジストトリミング方法。
【請求項2】
高周波電極が配置されたプラズマ生成空間と、
レジストパターンを形成した被処理体を配置可能なトリミング処理空間と、
前記プラズマ生成空間と前記トリミング処理空間との間に配され、かつ、両空間を連通する複数の貫通孔を有する導電性部材と、を備えた装置を用い、
前記トリミング工程は、前記プラズマ生成空間に反応ガスを導入し、高周波電極に高周波電力を供給し、高周波放電させることで、プラズマを生成し、生成したプラズマを前記導電性部材を介して前記トリミング処理空間に導入することで、イオン及び電子が除去されたプラズマを照射することを特徴とする請求項1に記載のレジストトリミング方法。
【請求項3】
前記トリミング工程は、電子密度が1×10+7cm-3以下のプラズマを照射することを特徴とする請求項1又は2に記載のレジストトリミング方法。
【請求項4】
高周波電極が配置されたプラズマ生成空間と、
トリミング処理空間と、
前記プラズマ生成空間と前記トリミング処理空間との間に配され、かつ、両空間を連通する複数の貫通孔を有する導電性部材と、
前記プラズマ生成空間に反応ガスを導入するガス導入手段と、
前記プラズマ生成空間及びトリミング処理空間を排気する排気手段と、
前記高周波電極への電力供給を制御する高周波電力制御手段と、
前記ガス導入手段、前記排気手段及び前記高周波電力制御手段を制御することで、イオン及び電子が除去されたプラズマを前記トリミング処理空間に導入し、当該トリミング処理空間に導入されたレジストパターンをトリミングするトリミング処理を実行するコントローラと、
を備えたことを特徴とするトリミング装置。
【請求項5】
前記コントローラは、レジストパターンが所定のサイズにトリミングされた際に、トリミング処理を終了させるタイマ処理部を有することを特徴とする請求項4に記載のトリミング装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
トリミング速度に関するトリミング速度情報を記憶するトリミング速度情報記憶部と、
前記トリミング速度情報に基づいて、トリミング処理の終了タイミングを決定する終了タイミング演算部と、
を有することを特徴とする請求項5に記載のトリミング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−253832(P2011−253832A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190778(P2008−190778)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】