説明

レール凹凸測定装置

【課題】レールの凹凸をレール長手方向に連続測定するレール凹凸測定装置を提供する。
【解決手段】測定レール(R1)上を走行可能な測定車両(10)と、測定車両(10)の進行距離を測定する距離センサ(31)と、測定車両(10)に取り付けられると共に測定レールの長手方向に不均等な間隔で順に直列に配置された第1、第2および第3の変位センサ(21、22、23)からなる変位センサ群(20)を有し、第1、第2および第3の変位センサ(21、22、23)のうち少なくとも1つの変位センサは位置について変更可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの凹凸を測定するレール凹凸測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レールの凹凸を測定する技術は、地上で測定する技術、車上で測定する技術がある。地上で測定する技術は、2つのタイプに分けられる。1つのタイプは、レールに装置を固定し、基準長間(2m、1mあるいは0.5m等)のレール凹凸を直接測定するものである。他の1つのタイプは、レールの上を装置が移動しながら凹凸を測定するものである。さらに、この移動しながら測定する方式で2つのタイプがある。1つは加速度センサを用い、他の1つは変位センサを用いる。前者は加速度の2階積分で変位になるという慣性測定の原理を用いて、加速度センサをレール上で移動させながらレール凹凸を間接的に測定する(慣性測定方式)。後者は、複数の変位センサを用いて、レール凹凸を直接測定する(直接変位測定方式)。
【0003】
車上で測定する技術はさらに分類して2つのタイプがある。1つは、変位センサ群をレール上で移動させながらレール凹凸を直接測定するものである。別の1つは、加速度を2階積分すれば変位となるという慣性測定の原理を用いて、加速度センサをレール上で移動させながらレール凹凸を間接的に測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−241946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記地上測定方式において固定式は、レール凹凸の連続測定が困難であった。また、上記慣性測定方式では継目部等で衝撃的な加速度が発生するので、継目部等は欠測となっていた。この場合、加速度から積分演算とバンドパスフィルタ演算を実施してレール凹凸を算定する。そのため、過渡応答によってレール継目の前後2〜3m程度の凹凸データの信頼性が得られなかった。上記直接変位測定方式は、正矢法を用いているため、計測特性上、検測倍率が0となり、測定できない波長があり、および、弦長よりも長い波長の凹凸を測定する場合、測定精度が劣る。
【0006】
また、レール凹凸は、レール長手方向のみならずレール長手方向に直交するレール断面方向についても、凹凸の大きさが異なることが分かっている。しかしながら、これらの装置は、レールの断面方向について、測定位置を変化させる機構を備えていないか、備えていてもその機構が不十分であった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、地上で連続測定を行いながらも、レール継目部での欠測部を最小限に留めるレール凹凸測定装置を提供する。
【0008】
また、本発明の目的は、レールに対する測定位置を正確に設定するレール凹凸測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、符号を付して本発明の特徴を説明する。なお、符号は参照のためであり、本発明を実施形態に限定するものでない。
【0010】
本発明の第1の特徴に係わるレール凹凸測定装置は、測定レール(R1)上を走行可能な測定車両(10)と、測定車両(10)の進行距離を測定する距離センサ(31)と、測定車両(10)に取り付けられると共に測定レールの長手方向に不均等な間隔で順に直列に配置された第1、第2および第3の変位センサ(21、22、23)からなる変位センサ群(20)を有し、第1、第2および第3の変位センサ(21、22、23)のうち少なくとも1つの変位センサは位置について変更可能である。
【0011】
以上の第1の特徴において、前記少なくとも1つの変位センサは測定レール(R1)の長手方向の位置について変更可能である。
【0012】
前記少なくとも1つの変位センサは測定レール(R1)の長手方向に直交する断面方向の位置について変更可能である。
【0013】
測定車両(10)は、測定レール(R1)上に配置された走行車輪(14、15)と、走行車輪(14、15)が取り付けられたフレーム(11)を有し、測定車両(10)は変位センサ群(20)の振動を防止する防振機構(40)を有し、防振機構(41、42)は走行車輪(14、15)とフレーム(11)との間に配置される。
【0014】
測定車両(10)はフレーム(11)に取り付けられた測定基準梁(18)を有し、変位センサ群(20)は測定基準梁(18)に取り付けられ、防振機構(43、44)は測定基準梁(18)とフレーム(11)との間に配置される。
【0015】
測定車両(10)は、測定レール(R1)上を走行可能な走行車輪(14)と、測定レール(R1)とまくらぎを介して固定された対側のレール(R2、R3)上で走行可能な補助車輪(19)と、測定レール(R1)に沿って走行車輪(14)を誘導し、前記まくらぎを介して固定された対側のレール(R2、R3)に沿って補助車輪(19)を誘導するガイド(52A、52B)と、ガイド(52A、52B)を測定レール(R1)および前記まくらぎを介して固定された対側のレール(R2、R3)に押し付ける付勢部材(51)を有する。
【0016】
前記距離センサはロータリエンコーダであり、測定車両(10)は前記ロータリンエンコーダを有すると共に測定レール(R1)に付勢された距離測定車輪(61)を有する。
【0017】
前記少なくとも1つの変位センサはレーザー式変位センサである。
【0018】
変位センサ群(20)は距離センサ(31)と同期して測定する。
【0019】
第1の変位センサ(21)と第2の変位センサ(22)との間隔は、第2の変位センサ(22)と第3の変位センサ(23)との間隔より大きく、第1の変位センサ(21)は測定車両(10)の進行方向において第2の変位センサ(22)および第3の変位センサ(23)よりも前に配置される。
【0020】
第1の変位センサ(21)と第2の変位センサ(22)との間隔は第2の変位センサ(22)と第3の変位センサ(23)との間隔より大きく、第3の変位センサ(23)は測定車両(10)の進行方向において第1の変位センサ(21)および第2の変位センサ(22)よりも前に配置される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の特徴によれば、地上で連続測定を行いながらも、レール継目部での欠測区間を最小限に留めることができる。
【0022】
変位センサ群のレール長手方向の位置を変えて偏心矢の弦長を変更できるので、検出したいレールの凹凸の波長を適した弦長で測定することができる。
【0023】
レールの断面方向に変位センサ群の位置を変更できるので、その測定位置を正確に設定することができる。
【0024】
防振機構は変位センサ群を防振するので、変位センサ群の測定誤差を減少することができる。
【0025】
付勢部材はガイドを測定レールおよびまくらぎを介して固定された対側のレールに押し付けるので、測定レールに対して変位センサ群を位置決めすることができる。
【0026】
ロータリエンコーダを内蔵した距離測定車輪は測定レールに付勢されるので、距離測定車輪の空転、滑走を防止し、正確な距離測定を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態のレール凹凸測定装置の概要図である。
【図2】(A)乃至(D)は、図1に示す変位センサの測定スポットを説明する概要図である。
【図3】(A)は25mm〜230mmの弦長の偏心矢を用いた偏心矢法の検出特性グラフ、(B)は50mm弦正矢を用いた正矢法の検出特性グラフであり、(C)は150mm弦正矢を用いた正矢法の検出特性グラフである。
【図4】偏心矢を構成する3つの変位センサのうち、変位センサ同士の間隔の大きい側を先行して測定するレール凹凸測定装置の概要図である。
【図5】偏心矢を構成する3つの変位センサのうち、変位センサ同士の間隔の小さい側を先行して測定するレール凹凸測定装置の概要図である。
【図6】加速度センサを用いた慣性測定方式によるレール凹凸測定装置を示す概要図である。
【図7】第2の実施形態のレール凹凸測定装置の概要図である。
【図8】第3の実施形態のレール凹凸測定装置を示す概要図である。
【図9】(A)、(B)は図8に示す要部を示す概要図である。
【図10】第4の実施形態のレール凹凸測定装置の概要図である。
【図11】(A)、(B)は大きな車輪幅の走行車輪を示す概要図であり、(C)は小さな車輪幅の走行車輪を示す概要図である。
【図12】第5の実施形態のレール凹凸測定装置の要部を示す概要図である。
【図13】(A)、(B)は図12に示すレール凹凸測定装置の測定方法を示す概要図である。
【図14】(A)、(B)は図12に示すレール凹凸測定装置の測定方法を示す概要図である。
【図15】第6の実施形態のレール凹凸測定装置を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
第1の実施形態
図1に示すように、レール凹凸測定装置1は、測定レールR1上を走行可能な測定車両10と、測定車両に取り付けられた変位センサ群20を有する。
【0030】
測定車両10は、フレーム11と、フレーム11にサスペンション12、13を介在して取り付けられた前後の走行車輪14、15と、ばね16、17を介在してフレーム11に取り付けられた測定基準梁18と、測定基準梁18に取り付けられた変位センサ群20と、測定車両10の進行距離を測定する距離センサとしてのロータリエンコーダ31を有する。
【0031】
変位センサ群20は、測定レールR1の長手方向に沿って配置された第1、第2、第3の変位センサ21、22、23を有する。第1、第2、第3の変位センサ21、22、23は不均等な間隔で直列に配置される。つまり、第1、第2の変位センサ21、22の間隔は、第2、第3の変位センサ22、23の間隔よりも、小さく設定される。第1、第2の変位センサ21、22の間隔は、例えば、25mmであり、第2、第3の変位センサ22、23の間隔は、例えば、230mmである。第1、第2、第3の変位センサ21、22、23の配置は、偏心矢A1を構成する。
【0032】
各変位センサ21、22、23は、例えば、非接触式のレーザー変位センサである。レーザー変位センサの測定スポットは、例えば、200×750μmに設定される。同測定スポットは、レール継目等のレール欠線部やレール段差部の測定は、変位センサの測定スポットを小さくした方がよい。
【0033】
すなわち、図2(A)、(B)に示すように、新品のレールR11の場合、測定位置によらず小さなスポットS1と大きなスポットS2は測定誤差につい相違を生じない。一方、図2(C)、(D)に示すように、側摩耗したレールR12の場合、測定位置によってスポットS1は、スポットS2に比較してより小さな測定範囲となるので、測定誤差をより少なくする。
【0034】
なお、各変位センサ21、22、23は、その他の渦電流式変位センサのような非接触式の変位センサを用いてもよい。
【0035】
ロータリエンコーダ31は、走行車輪15と同軸に取り付けられている。ロータリエンコーダ31は走行車輪15の回転に伴って測定車両10の進行距離を測定する。なお、ロータリエンコーダ31の代わりにレーザー距離センサ、光学式距離センサ、超音波式距離センサを用いてもよい。
【0036】
次に、偏心矢測定方式について説明する。
【0037】
レール凹凸測定装置1は、不均等な間隔に配置された第1、第2、第3の変位センサ21、22、23よって構成した偏心矢A1を用いた偏心矢測定機構を採用している。偏心矢測定機構は、均等な間隔に配置した変位センサ群によって構成した正矢を用いた正矢測定機構よりも、検出波長域が広い点、また、検測倍率がゼロとなる波長をなくすことができる点で優れている。
【0038】
すなわち、レールの長い波長の波状摩耗を測定可能とする場合、正矢の弦長を長くする必要がある。さらに、正矢法の検測特性により、検測倍率が0となる波長が存在する。一方、レール凹凸測定装置1は、偏心矢A1の基本特性により検測精度が0となる波長を無くすことができる(偏心矢の基本特性)。また、レール凹凸測定装置1は、正矢法と同じ弦長とした場合、正矢法よりも短い波長から長い波長まで正矢法よりも高い精度で測定可能である。すなわち、図3(A)に示すように、偏心矢A1を用いたレール凹凸測定装置1は、30〜450mmの波長の波状摩耗を高い精度で検出可能である。一方、図3(B)、(C)に示すように、正矢を用いた測定は、高い精度の波長の検出範囲は偏心矢を用いた測定よりも小さくなる。つまり、図3(B)において、50mm弦正矢を用いた測定は、30〜150mmの波状摩耗の波長において高い精度となる。図3(C)において、150mm弦正矢を用いた測定は90〜500mmの波状摩耗の波長において高い精度となる。
【0039】
次に、レールの波状摩耗を例としてレール凹凸測定装置1の使用方法を説明する。
【0040】
図1において、測定車両10を測定レールR1上で進行させる。検測速度は、例えば、8km/h以下である。同時に、ロータリエンコーダ31は測定車両10の進行距離を測定する。ロータリエンコーダ31と同期して第1、第2および第3の変位センサ21、22、23は測定レールR1の変位を測定する。第1、第2および第3の変位センサ21、22、23の測定したそれぞれの変位から偏心矢A1を決定し、偏心矢A1に基づいて測定レールR1の凹凸を決定する。
【0041】
ここで、非接触式のレーザー変位センサを用いることにより、継目通過時の測定上の制約を無くすことができる。一方、接触式の変位センサの場合、継目等の段差で支障し、センサを損傷する場合がある。
【0042】
また、変位を直接測定しているので、偏心矢のフィルタの次数を適切に設定すれば,レールの継目等通過時に生じるノイズによる欠測区間を継目前後0.2〜0.3m程度まで短くすることができる。
【0043】
また、ロータリエンコーダ31と同期して測定レールR1の変位を直接測定するので、検測速度に依存しない測定機構を有する。さらに、測定車両10が測定途中で停止しても、測定結果に影響しない。一方、加速度センサを用いた慣性測定方式によるレール凹凸測定装置(図6参照)もロータリエンコーダと同期して加速度を測定している。しかし、加速度を時間軸上で2回積分して変位を求めるため、検測速度は制約される(4km/h前後)。また、途中で停止すると、測定する加速度が0となって、レールの凹凸を演算できなくなるため、その前後が2m程度欠測となる。
【0044】
また、レール凹凸測定装置1は、偏心矢測定機構を採用しているので、測定車両10の前進、後進の何れの方向においても、測定レールR1の凹凸を測定可能である。すなわち、図4に示すように、測定車両10が前進する方向、つまり、偏心矢A1を構成する3つの変位センサ21、22、23のうち、変位センサ同士の間隔の大きい側が先行の場合、および、図5に示すように、測定車両10の後進する方向、すなわち、偏心矢A1を構成する3つの変位センサ21、22、23のうち、変位センサ同士の間隔の小さい側が先行する場合である。
【0045】
一方、図6に示すように、加速度センサを用いた慣性測定方式によるレール凹凸測定装置100は、測定車両110と、測定車両110に取り付けられた接触式の加速度センサ120を有する。測定車両110は、フレーム111と、フレーム111の前後に取り付けられた走行車輪114、115を有する。同レール凹凸測定装置100は、装置の機構上、一定の向きでの測定を推奨されている。同レール凹凸測定装置100が逆向きに測定する場合、その加速度センサ120がレール間の継目および測定レールR1の大きな凹凸の段差に、支障して引っかかってしまう。これにより、装置の故障の可能性がある。
【0046】
第2の実施形態
図7に示すように、レール凹凸測定装置1Aは、偏心矢A1の弦長を可変する機構を有する。
【0047】
第1、第2、第3の変位センサ21、22、23は、測定基準梁18に対して、例えば、ボルトで固定されている。そして、第1、第2、第3の変位センサ21、22、23は、ボルトによる固定位置の変更により測定レールR1の長手方向の位置について変更可能である。例えば、変位センサ同士の間隔の小さい側の第1、第2の変位センサ21、22の間隔は25〜45mmの範囲で変更可能であり、例えば、変位センサ同士の間隔の大きい側の第2、第3の変位センサ22、23の間隔は180mm〜300mmの範囲で変更可能である。
【0048】
また、第1、第2、第3の変位センサ21、22、23は測定基準梁18にボルトで固定し、間隔調整部材等を用いて、第1、第2、第3の変位センサ21、22、23の測定
レールR1の長手方向の位置を変更してもよい。これによれば、第1、第2、第3の変位センサ21、22、23は測定基準梁18に固定されるので、偏心矢の弦長は非常に高い精度で管理される。
【0049】
波状摩耗の波長は、一般的に、曲線区間の曲線内側のレールで、50〜200mm程度、曲線区間の曲線外側のレールで150〜400mm程度、直線レールで150〜400mm程度である。25mm〜230mmの弦長の偏心矢を用いて、40〜500mmの波状摩耗の波長域について高い測定精度を得ることができる。一方、偏心矢A1の弦長可変機構は、偏心矢の弦長を変更できるので、異なる波長の波状摩耗を測定する場合、適切な弦長を設定して測定を実施することができる。
【0050】
第3の実施形態
図8に示すように、本実施形態のレール凹凸測定装置1Bは、変位センサ群20の測定レールR1の長手方向と直交する断面方向の位置を可変とする断面位置案内機構としてのリニアガイド35を有する。
【0051】
測定基準梁18Aは、ばね16、17に固定された第1の測定基準梁部18aと、リニアガイド35を用いて第1の測定基準梁部18aに取り付けられた第2の測定基準梁部18bを有する。
【0052】
リニアガイド35は、第1の測定基準梁部18aと第2の測定基準梁部18bと間に配置される。このリニアガイド35は、第1の測定基準梁部18aに固定されたリニアレール36と、第2の測定基準梁部18bに固定されると共にリニアレール36にその長手方向に直線移動可能に取り付けられたリニアスライダ37を有する。リニアレール36とリニアスライダ37とは断面位置調整ねじで固定されている。
【0053】
次に、図9を用いて、リニアガイド35の使用方法を説明する。
【0054】
図9(A)において、断面位置調整ねじを外すことにより、リニアスライダ37はリニアレール36に対して移動可能なる。図9(B)に示すように、リニアスライダ37を測定レールR1の断面方向に直線移動させ、断面位置調整ねじを留めることにより、リニアスライダ37をリニアレール36に固定する。これにより、第2の測定基準梁18bは第1の測定基準梁18aに対して測定レールR1の断面方向に移動し、変位センサ群20を測定レールR1の断面方向の任意の位置に設定する。例えば、測定レールR1の横方向の断面中心から±20mmの範囲で設定可能である.
この実施形態によれば、測定レールR1の断面方向の任意の断面位置でレール凹凸を測定することができる。
【0055】
第4の実施形態
図10に示すように、レール凹凸測定装置1Cは、測定基準梁18Aの二重の防振機構40を有する。
【0056】
具体的には、防振機構40は、走行車輪14、15とフレーム11との間に取り付けられた第1のサスペンション41、42と、フレーム11と第1の測定基準梁18aとの間に取り付けられた第2のサスペンション43、44を有する。
【0057】
この防振機構40によれば、第1のサスペンション41、42はフレーム11を防振し、第2のサスペンション43、44は第1の測定基準梁18aおよび第2の測定基準梁18bを防振する。これらにより、変位センサ群20を防振し、測定誤差を減少することができる。
【0058】
また、レール凹凸測定装置1Cは、図11(A)に示すように、車輪径および車輪幅を大きくした走行車輪14A、15Aを用いてもよい。走行車輪14A、15Aの表面の材質は樹脂製であり、弾性を有する。樹脂は、例えば、ゴムである。大きな車輪径は、同測定装置1CがレールR11の欠損部、凹凸を通過する際の挙動を滑らかにする。また、樹脂製の表面はレールR11上を走行する際の振動を低減することができる。
【0059】
また、同車輪幅は、同図11(B)に示すように、側摩耗したレールR12でも、同測定装置1Cを安定して走行させる。一方、同図11(C)に示すように、小さな車輪幅の走行車輪14B、15Bは側摩耗部で下がり、振動を生じさせる。
【0060】
第5の実施形態
図12に示すように、本実施形態のレール凹凸測定装置は、車輪誘導機構50を有する。車輪誘導機構50は、走行車輪14と補助車輪19とを連結する連結部材32の補助車輪19側に取り付けられた付勢部材としての水平ばね51と、連結部材32に取り付けられると共に測定レールR1とまくらぎM1を介して固定された対側のレールR2に接するガイド52A、52Bを有する。走行車輪14は測定レールR1に対応し、補助車輪19は測定レールR1とまくらぎM1を介して固定された対側のレールR2に対応する。
【0061】
ここで、各ガイド52A、52Bは、連結部材32に取り付けられた軸部材53A、53Bと、軸部材53A、53Bに回転可能に取り付けられたゴム製のガイド車輪54A、54Bを有する。
【0062】
車輪誘導機構50によれば、水平ばね51は、縮んだ状態で、ガイド車輪54A、54Bを測定レールR1、R2の頭部内側に押し付ける。ガイド車輪54A、54Bは、それぞれ、測定レールR1、R2の上で回転しながら、走行車輪14、補助車輪19を測定レールR1、R2に沿って案内する。
【0063】
次に、図13(A)に示すように、補助車輪19が側摩耗したレールR2を通過する際、水平ばね51は伸びて、ガイド52Bのガイド車輪54BをレールR3の側摩耗した凹部に押し付ける。これにより、走行車輪14は、測定レールR1の断面方向の中心から変位しない。よって、変位センサ群20は、レールR3の断面方向の凹凸に影響されずに、測定レールR1の凹凸を測定することができる。
【0064】
また、図14(A)に示すように、走行車輪14が側摩耗したレールR4を通過する際、水平ばね51は伸びて、ガイド52Aのガイド車輪54AをレールR4の側摩耗した凹部に押し付ける。これにより、走行車輪14はレールR4の頂部の平坦部に位置決めされる。変位計群20はレールR4の側摩耗の影響を受けずに、レールR4の凹凸を測定することができる。
【0065】
以上から、図13(A)において、曲線外側の摩耗したレールR3を有する曲線区間において曲線内側の測定レールR1を測定する際、車輪誘導機構50は、曲線内側の測定レールR1の断面方向の中心に変位センサ群20を設定することができる。
【0066】
また、同曲線区間において摩耗した曲線外側のレールR3を測定する際、車輪誘導機構50は、走行車輪14のフランジがレールR3に接触している位置に変位センサ群20を設定することができる。
【0067】
なお、図13(B)、図14(B)に示すように、軸部材53A、53Bより長い軸部材55A、55Bを用いて、レールR3、R4の側摩耗のない部位にガイド車輪54A、54Bを接触させてもよい。水平ばね51は縮んだ状態でガイド車輪54A、54Bを測定レールR1、R2、R3、R4に押し付ける。この態様によれば、変位計群20はレールR3、R4の側摩耗に影響されずに測定レールR1、R4の凹凸を測定することができる。
【0068】
また、水平ばね51の代わり、付勢部材としてベローズを用いてもよい。
【0069】
第6の実施形態
図15に示すように、レール凹凸測定装置1Dの距離測定機構60は、ロータリエンコーダを内蔵した距離測定車輪61と、距離測定車輪61をフレーム11に取り付けるばね62を有する。距離測定車輪61は、幅広であり、その表面は樹脂製である。樹脂は、例えば、ゴムである。
【0070】
同車輪61は側摩耗したレールにも確実に接触する。同車輪61の表面は樹脂製であり、ばね62は同車輪61を測定レールR1に押し付けるので、測定レールR1との摩擦係数を高め、同車輪61の空転、滑走を防止する。これにより、ロータリエンコーダによる正確な距離測定を達成する。
【0071】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、また、各実施形態は発明の趣旨を変更しない範囲で変更、修正可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 レール凹凸測定装置
10 測定車両
11 フレーム
14 走行車輪
15 走行車輪
18 測定基準梁
19 補助車輪
20 変位センサ群
21 第1の変位センサ
22 第2の変位センサ
23 第3の変位センサ
31 ロータリエンコーダ
40 防振機構
50 車輪誘導機構
60 距離測定機構
R1 測定レール
R2 対側のレール
M1 まくらぎ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定レール上を走行可能な測定車両と、
前記測定車両の進行距離を測定する距離センサと、
前記測定車両に取り付けられると共に測定レールの長手方向に不均等な間隔で順に直列に配置された第1、第2および第3の変位センサからなる変位センサ群を有し、
前記第1、第2および第3の変位センサのうち少なくとも1つの変位センサは位置について変更可能である、
レール凹凸測定装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの変位センサは前記測定レールの長手方向の位置について変更可能である、
請求項1に記載のレール凹凸測定装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの変位センサは前記測定レールの長手方向に直交する断面方向の位置について変更可能である、
請求項1又は2に記載のレール凹凸測定装置。
【請求項4】
前記測定車両は、測定レール上に配置された走行車輪と、走行車輪が取り付けられたフレームを有し、
前記測定車両は前記変位センサ群の振動を防止する防振機構を有し、
前記防振機構は前記走行車輪と前記フレームとの間に配置される、
請求項1乃至3の何れか1つに記載のレール凹凸測定装置。
【請求項5】
前記測定車両は前記フレームに取り付けられた測定基準梁を有し、
前記変位センサ群は測定基準梁に取り付けられ、
前記防振機構は測定基準梁と前記フレームとの間に配置される、
請求項1乃至4の何れか1つに記載のレール凹凸測定装置。
【請求項6】
前記測定車両は、測定レール上を走行可能な走行車輪と、測定レールとまくらぎを介して固定された対側のレール上で走行可能な補助車輪と、測定レールに沿って走行車輪を誘導し、前記まくらぎを介して固定された対側のレールに沿って補助車輪を誘導するガイドと、前記ガイドを測定レールおよび前記まくらぎを介して固定された対側のレールに押し付ける付勢部材を有する、
請求項1乃至5の何れか1つに記載のレール凹凸測定装置。
【請求項7】
前記距離センサはロータリエンコーダであり、
前記測定車両は、前記ロータリンエンコーダを有すると共に前記測定レールに付勢された距離測定車輪を有する、
請求項1乃至6の何れか1つに記載のレール凹凸測定装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの変位センサはレーザー式変位センサである、
請求項1乃至7の何れかに1つに記載のレール凹凸測定装置。
【請求項9】
前記変位センサ群は前記距離センサと同期して測定する、
請求項1乃至8の何れか1つに記載のレール凹凸測定装置。
【請求項10】
前記第1の変位センサと第2の変位センサとの間隔は、第2の変位センサと第3の変位センサとの間隔より大きく、
前記第1の変位センサは前記測定車両の進行方向において第2の変位センサおよび第3の変位センサよりも前に配置される、
請求項1乃至9の何れか1つに記載のレール凹凸測定装置。
【請求項11】
前記第1の変位センサと第2の変位センサとの間隔は、第2の変位センサと第3の変位センサとの間隔より大きく、
前記第3の変位センサは前記測定車両の進行方向において第1の変位センサおよび第2の変位センサよりも前に配置される、
請求項1乃至10の何れか1つに記載のレール凹凸測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−251840(P2012−251840A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123896(P2011−123896)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(594002336)株式会社原田製作所 (3)
【Fターム(参考)】