説明

ロボット装置

【課題】教示作業が容易であり、且つ実動作でのタクトタイムを短縮できるロボット装置を提供する。
【解決手段】ワークを保持するワーク保持部10を有して往復運動する第1アーム11、その第1アーム11を連結して第1アーム11と同じ方向に往復運動する第2アーム12とで少なくとも構成されたアーム部2、及び、第1アーム11の動作を第2アーム12に優先して制御して、アーム部2を始点座標P0から所定の座標位置Pまで移動させる制御装置を備えたロボット装置1により、上記課題を解決した。前記の制御装置は、ロボット座標系としてR軸を設け、始点座標P0から所定の座標位置Pまでの距離RをR=R1+R2(R1は第1アーム11の移動距離であり、R2は第2アーム12の移動距離である。)の順機構解を定義し、RからR1,R2への割付を逆機構解として定義することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット装置に関し、更に詳しくは、教示作業が容易であり、且つ実動作でのタクトタイムを短縮できるロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルやプラズマディスプレイパネル(PDP)等の一般的な製造工程では、例えば図1に示すように、複数枚のガラス基板31が収納されたカセット30からガラス基板を取り出すため、乃至、TFT形成工程や配線工程を経た後のガラス基板をカセット30に収納するための、スライダ型アームを有するロボット装置1が用いられている。こうしたスライダ型アームを有するロボット装置1は、直進精度に優れ、且つカセット30に収納するガラス基板31のピッチを狭くすることができるので、近年好ましく用いられるようになっている。
【0003】
スライダ型アームを有するロボット装置としては、図13(A)に示すように、ハンドアーム141とベース部材142とで構成された単スライダ143や、図13(B)に示すように、ハンドアーム144と第2アーム145とベース部材146とで構成された複合スライダ147が知られている。
【0004】
現在の主流は単スライダ143であるが、単スライダ143は、ベース部材自体の旋回動作等により、ベース部材142をカセット148の近傍に近づけることができないという問題がある。また、単スライダ143は、長いベース部材142が必要であるので、ハンドアーム141の移動距離が長くなり、タクトタイムを短縮できないという問題がある。また、アーム部が大型化し、ロボット装置全体が大型化するという問題もある。
【0005】
一方、図13(B)に示す複合スライダ147は、ベース部材146が短くて旋回が容易であると共に、2つのアームの移動動作によりタクトタイムを短縮できるため、上記単スライダ143の問題を解決できるという利点がある。複合スライダを有するロボット装置として、例えば下記特許文献1,2には、静止状態にあるワークの保持を行ない移載を行なうために、ワークの保持を行なう上フォークを所定の方向に往復駆動する第1駆動部を備える第1移動体と、下フォークを前記と同じ方向に往復駆動する第2駆動部を備える第2移動体とを備え、さらに第1移動体と第2移動体の往復駆動方向に沿うように往復駆動する第3駆動部を備える第3移動体とを具備したロボット装置が提案されている。
【特許文献1】特開平11−238775号公報
【特許文献2】特開2003−86659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複合スライダ147を有するロボット装置は、ハンドアーム144の先端を所定の座標位置Pまで移動させる場合、単スライダの組み合わせとしてハンドアーム144と第2アーム145を扱うと、教示作業時の操作ボタンや位置表示部等が、ハンドアーム144のものと第2アーム145のものとに分かれてしまう。そのため、所定の座標位置Pは、両者の無数の組み合わせにより教示可能となり、教示作業が極めて煩雑になるという難点がある。
【0007】
例えば、複合スライダ147を距離R移動させて複合スライダ147を座標位置Pまで到達させる場合、図11では、ハンドアーム144を長さR1移動させ、第2アーム145を長さR2(R1>R2)移動させているが、図12では、ハンドアーム144の長さR1が極めて短く、第2アーム145を長さR2(R1≪R2)移動させている。すなわち、同じ座標位置Pを教示する場合でも、作業のたびに、あるいは作業者が代わるたびに教示方法が変化することになってしまう。そのため、教示作業の一貫性を維持する努力が必要になり、作業者の負担が大きくなるという難点がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、教示作業が容易であり、且つ実動作でのタクトタイムを短縮できるロボット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明のロボット装置は、ワークを保持するワーク保持部を有して往復運動する第1アーム、該第1アームを連結して前記第1アームと同じ方向に往復運動する第2アームとで少なくとも構成されたアーム部、及び、前記第1アームの動作を優先して前記アーム部を所定の座標位置Pまで移動させる制御装置を備えたロボット装置であって、前記制御装置は、前記第2アームを動作させずに前記第1アームを前記ワーク側に向かって移動させる第1アーム移動ステップと、前記第1アームを所定の長さR1移動させた後に前記第2アームを所定の長さR2移動させる第2アーム移動ステップとにより、前記所定の座標位置Pまで前記アーム部を移動させて教示する教示手段を含むことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、制御装置が上記の教示手段を含むので、上記の教示手段によりアーム部を所定の座標位置Pまで移動させるとき、ロボット座標系としてR軸を設け、R=R1+R2として順機構解を定義し、RからR1,R2への割付は逆機構解を定義すれば、所定の座標位置Pまでの移動は、第1アームを所定の長さR1移動させた後に第2アームを移動させて行うことにより、この教示手段を含む制御装置で一意に決定することができる。これにより、作業者は座標位置Pのみを意識して教示作業をすればよく、作業のたびにあるいは作業者が代わるたびに教示方法が変化することがなくなり、R1・R2の一貫性を維持する負担が軽減される。また、教示作業時の操作ボタン等もロボット座標Rに割り付けられるため、容易に操作することが可能となる。
【0011】
ここで、教示作業とは、産業用ロボットの動作を設定する作業であり、オペレータが生産ライン等で直接ロボットを操作して座標位置等を設定する作業のことであり、また、順機構解とは、軸空間からカルテシアン空間への変換のことであり、逆機構解とは、その逆変換のことである。
【0012】
本発明のロボット装置において、前記制御装置は、前記所定の座標位置Pまでの距離Rが前記第1アームの所定の移動可能長さL1の範囲内である場合には、前記第1アームのみを移動させ、前記所定の座標位置Pまでの距離Rが前記第1アームの所定の移動可能長さL1を超える場合には、該移動可能長さL1と同じ長さR1移動する第1アームの動作と、距離Rから前記移動長さR1を差し引いた長さR2移動する第2アームの動作とを同時に行う第1制御手段を含むことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、制御装置が上記の第1制御手段を含むので、所定の座標位置Rに対するR1(第1アームの移動長さ),R2(第2アームの移動長さ)の割付は、教示手段により予め逆機構解で定義され、且つ第1アームと第2アームが割り付けられた長さR1,R2が同時に移動するので、タクトアップ可能になる。また、所定の座標位置Pまでの距離Rが第1アームの所定の移動可能長さL1の範囲内である場合には、第1アームのみが移動するので、任意の座標位置に干渉物がある場合に、その干渉物を回避するアーム動作を容易に実現することができる。
【0014】
本発明のロボット装置において、前記制御装置は、前記第2アームの移動長さR2が指定された場合において、前記所定の座標位置Pまでの距離Rが前記第1アームの所定の移動可能長さL1と前記第2アームの指定移動長さR2との和(L1+R2)の範囲内である場合には、前記第1アームの移動長さR1はR×L1/(L1+R2)となり、前記第2アームの移動長さR2は距離Rから前記移動長さR1を差し引いた長さ(R−R1)となる関係で、前記第1アームの動作と前記第2アームの動作とを同時に行う第2制御手段を含むことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、制御装置が上記の第2制御手段を含むので、上記第1制御手段と同様、所定の座標位置Rに対するR1(第1アームの移動長さ),R2(第2アームの移動長さ)の割付は、教示手段により予め逆機構解で定義され、且つ第1アームと第2アームが割り付けられた長さR1,R2が同時に移動するので、タクトアップ可能になる。特にこの第2制御手段は、両アームが上記式で規定した長さR1,R2を同時に移動するので、動作時間をより短縮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のロボット装置によれば、作業者はロボット座標Rのみを意識して教示作業をすればよく、作業のたびにあるいは作業者が代わるたびに教示方法が変化することがなくなり、第1アームの移動長さR1と第2アームの移動長さR2の一貫性を維持する負担が軽減することができる。また、教示作業時の操作ボタン等もロボット座標に割り付けられるため、容易に操作することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のロボット装置について、図面に基づいて詳述する。なお、以下においては図面を例示して説明するが、本発明の技術的範囲はその記載及び図示例に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明のロボット装置の一例を示す斜視図である。本発明のロボット装置1は、図1に示すように、スライダ型のアーム部2を有するロボット装置であり、そのアーム部2は、ワークを保持するワーク保持部10を有して往復運動する第1アーム11と、第1アーム11を連結して第1アーム11と同じ方向に往復運動する第2アーム12とで少なくとも構成されている。本発明では、アーム部2が、往復運動可能な2つのアームから構成されているが、同じ方向に往復運動する3つ以上のアームで構成されていても構わない。往復運動する2以上のアームは、ベース部材13に連結している。したがって、図1に示すアーム部2は、第1アーム11と第2アーム12とベース部材13とで構成されている。
【0019】
アーム部2は、上下に移動できると共に、平面視で右回り・左回りに旋回できる。こうしたアーム部2の動作は、上下動部材14が鉛直方向に移動すると共に水平方向に回動することで、上下動作や旋回動作を行うことができる。また、上下動部材14は、基台15に連結し、その基台15は、レール部材4上をスライドして隣のカセット(図示しない)等に移動することができる。
【0020】
本発明のロボット装置1において、第2アーム内には、第1アーム11をスライドさせることができるスライド機構が設けられている。ベース部材13内には、第2アームをスライドさせることができるスライド機構が設けられている。基台15内には、図示しないが、上下動部材14を介してアーム部2を旋回させることができる回動機構が設けられている。さらに、基部15内には、図示しないが、上下動部材14を上下動させることができる上下動機構が設けられている。
【0021】
ここで、第2アーム11が収納するスライド機構は図示しないが、例えば、第2アーム11の長手方向に延びる軌道レールと、その軌道レール上をスライドすると共に第1アーム11に連結されたスライダと、第2アーム11の長手方向の両端に配置されたプーリと、そのプーリ間に掛け渡されると共に前記スライダに固定されたベルトとを備えたものを例示できる。そして、そのプーリをモータ等で回転させることにより、第1アーム11をスライドさせることができる。なお、ベース部材13内にも、同様のスライド機構を収納させることができ、第2アーム12をスライドさせることができる。
【0022】
また、上下動部材14が収納する上下動機構も図示しないが、例えば、複数の上下動部材の組合せたものを例示できる。そして、その上下動部材14は、上下動機構を構成するモータ等を駆動させることにより、アーム部2を上下動させることができる。また、アーム部2の回動機構は、基台15内に設けられており、その上下動部材14は、回動機構を構成するモータ等を駆動させることにより、アーム部2を回動させることができる。
【0023】
以上のような駆動機構を有する本発明のロボット装置1は、第1アーム11の動作を優先してアーム部2を所定の座標位置Pまで移動させる制御装置を備えている。制御装置は、上記の駆動機構を駆動させるための装置であり、特に本発明の特徴は、その制御装置が、第2アーム12を動作させずに第1アーム11をワーク側に向かって移動させる第1アーム移動ステップと、第1アーム11を所定の長さR1移動させた後に第2アーム12を所定の長さR2移動させる第2アーム移動ステップとにより、前記所定の座標位置Pまで前記アーム部2を移動させて教示する教示手段を含むことにある。ここで、教示作業とは、産業用ロボットの動作を設定する作業であり、オペレータが生産ライン等で直接ロボットを操作して座標位置等を設定する作業のことであり、また、順機構解とは、軸空間からカルテシアン空間への変換のことであり、逆機構解とは、その逆変換のことである。
【0024】
すなわち、上記教示手段は、任意の座標位置Pまでアーム部2を移動させて教示するのを、第1アーム移動ステップと、第2アーム移動ステップとで実行することに特徴がある。図2〜図5は、教示手段の説明図である。
【0025】
図2は、第1アーム11と第2アーム12とがいずれも動いていない初期状態のときの形態である。初期状態においては、第1アーム11の先端は原点位置である座標位置P0にある。
【0026】
図3は、図2に示した状態から、第1アーム11を長さR1移動させ、その先端を座標位置P1まで到達させたときの形態である。このときの移動長さR1は、第1アーム11の移動可能長さL1以下である。本発明における教示手段は、図3に示すようなR≦L1の場合に、第2アーム12を動作させずに第1アーム11のみをワーク側に向かって移動させる第1アーム移動ステップを有する。図中のRは、座標位置P0から所定の座標位置P(例えば図3ではP1)までの距離を表している。
【0027】
図4は、図3に示した状態から、第1アーム11を移動可能長さL1移動させ、さらに第2アーム12を長さR2移動させて、その先端を座標位置P2まで到達させたときの形態である。このときの移動距離Rは、第1アーム11の移動可能長さL1と、第2アーム12を所定長さR2とを加えた距離である。本発明における教示手段は、図4に示すようなR>L1の場合に、第1アーム11を所定の長さR1(=L1)移動させた後に第2アーム12を所定の長さR2移動させる第2アーム移動ステップを有する。
【0028】
図5は、図4に示した状態から、さらに第2アーム12を移動可能長さL2移動させて、その先端を座標位置P3まで到達させたときの形態である。このときの移動距離Rは、第1アーム11の移動可能長さL1と、第2アーム12の移動可能長さL2とを加えた距離であり、移動可能範囲内での最大移動距離である。
【0029】
このように、本発明のロボット装置1は制御装置を有し、その制御装置は上記の教示手段を含むので、上記の教示手段によりアーム部2を所定の座標位置Pまで移動させるとき、ロボット座標系としてR軸を設け、R=R1+R2として順機構解を定義し、RからR1,R2への割付は逆機構解を定義すれば、所定の座標位置Pまでの移動は、第1アーム11を所定の長さR1移動させた後に第2アーム12を移動させて行うことにより、この教示手段を含む制御装置で一意に決定することができる。これにより、作業者は座標位置Pのみを意識して教示作業をすればよく、作業のたびにあるいは作業者が代わるたびに教示方法が変化することがなくなり、R1・R2の一貫性を維持する負担が軽減される。また、教示作業時の操作ボタン等もロボット座標に割り付けられるため、容易に操作することが可能となる。
【0030】
次に、制御装置が含む第1制御手段について説明する。本発明のロボット装置1が有する制御装置は、第1制御手段を含んでいる。図6は、図2から図5までの教示手段で教示された後の、第1制御手段を示すフローチャートである。
【0031】
図6に示すように、この第1制御手段は、所定の座標位置Pまでの距離Rが第1アーム11の所定の移動可能長さL1の範囲内である場合(R≦L1)には、第1アーム11のみを移動させ、R=R1となる。一方、所定の座標位置Pまでの距離Rが第1アーム11の所定の移動可能長さL1を超える場合(R>L1)には、移動可能長さL1と同じ長さR1移動する第1アーム11の動作(R1=L1)と、距離Rから移動長さR1を差し引いた長さR2移動する第2アーム12の動作(R2=R−R1)とを同時に行う。
【0032】
この第1制御手段は、R>L1の場合において、第1アーム11と第2アーム12とを、両アームが割り付けられた長さR1,R2を同時に移動させるので、タクトアップ可能になる。一方、所定の座標位置Pまでの距離Rが第1アーム11の所定の移動可能長さL1の範囲内である場合には、第1アームのみが移動するので、任意の座標位置に干渉物がある場合に、その干渉物を回避するアーム動作を容易に実現することができる。なお、所定の座標位置Rに対するR1(第1アームの移動長さ),R2(第2アームの移動長さ)の割付は、教示手段により予め逆機構解で定義される。
【0033】
次に、制御装置が含む第2制御手段について説明する。本発明のロボット装置1が有する制御装置は、上記第1制御手段の代わりに、又は第1制御手段と共に、第2制御手段を含むものであってもよい。図7は、図2から図5までの教示手段で教示された後の、第2制御手段を示すフローチャートである。また、図8及び図9は、第2制御手段により動作するアーム部の形態の例である。
【0034】
図7に示すように、この第2制御手段は、第2アーム12の移動長さR2が指定され、しかも、所定の座標位置Pまでの距離Rが第1アーム11の所定の移動可能長さL1の範囲内である場合(R≦L1)であっても、第1アームのみが移動せず、両アームが同時に動作する場合である。
【0035】
すなわち、この第2制御手段においては、所定の座標位置Pまでの距離Rが第1アーム11の所定の移動可能長さL1と第2アーム12の指定移動長さR2との和(L1+R2)の範囲内である場合(R≦L1+R2)には、図7及び図8に示すように、第1アーム11の移動長さR1は「R×L1/(L1+R2)」となり、第2アーム12の移動長さR2は「R−R1」となり、両アームは同時に動作する。一方、所定の座標位置Pまでの距離Rが第1アーム11の所定の移動可能長さL1と第2アーム12の指定移動長さR2との和(L1+R2)の範囲を超える場合(R>L1+R2)には、図7及び図9に示すように、第1アーム11の移動長さR1は第1アーム11の所定の移動可能長さL1と同じになり、第2アーム12の移動長さR2は「R−R1」となり、両アームは同時に動作する。なお、R2は、第1アーム11が移動可能長さL1になったときに初めて到達する移動長さの値であり、「L1/(L1+R2)」は、RからR1への分配比(R1ratio)である。
【0036】
そして、この第2制御手段を上記第1制御手段と対比したとき、上記第1制御手段では、例えばフルストロークの中間点付近への移動が多い場合、必ず第1アーム11がフルストロークに近い動作をするため、第1アーム11の動作時間が律速となり、作業時間が長くなる。一方、第2制御手段では、指定移動長さR2の位置まで第1アーム11と第2アーム12とを同時に動作させることができるので、動作時間を短縮することが可能となる。さらに、R2>R2ではR1=L1となって干渉を回避することができる。
【0037】
以上のように、この第2制御手段は、R>L1+R2の場合において、第1アームと第2アームとを、割り付けられた長さR1,R2を同時に移動させるので、タクトアップが可能になる。なお、所定の座標位置Rに対するR1(第1アームの移動長さ),R2(第2アームの移動長さ)の割付は、教示手段により予め逆機構解で定義される。
【0038】
こうした本発明のロボット装置1は、液晶表示パネルやプラズマディスプレイパネル(PDP)等の一般的な製造工程で好ましく用いられるものであり、図1に示すように、複数枚のガラス基板31が収納されたカセット30からガラス基板を取り出すため、乃至、TFT形成工程や配線工程を経た後のガラス基板をカセット30に収納するための、スライダ型アームを有するロボット装置である。こうしたロボット装置1は、直進精度に優れ、且つカセット30に収納するガラス基板31のピッチを狭くすることができる。
【0039】
また、本発明のロボット装置1は、図10に示すように、アーム部を2つ有するダブルアーム型のものであってもよい。図10中、符号102はアーム部であり、符号111A,111Bは第1アームであり、符号112A,112Bは第2アームである。
【0040】
以上説明したように、本発明のロボット装置は、作業者はロボット座標Rのみを意識して教示作業をすればよく、作業のたびにあるいは作業者が代わるたびに教示方法が変化することがなくなり、第1アームの移動長さR1と第2アームの移動長さR2の一貫性を維持する負担が軽減することができる。また、教示作業時の操作ボタン等もロボット座標に割り付けられるため、容易に操作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のロボット装置の一例を示す斜視図である。
【図2】第1アームと第2アームとがいずれも動いていない初期状態のときのロボット装置の一形態を示す斜視図である。
【図3】図2に示した状態から、第1アームを長さR1移動させ、その先端を座標位置P1まで到達させたときのロボット装置の一形態を示す斜視図である。
【図4】図3に示した状態から、第1アームを移動可能長さL1移動させ、さらに第2アームを長さR2移動させて、その先端を座標位置P2まで到達させたときのロボット装置の一形態を示す斜視図である。
【図5】図4に示した状態から、さらに第2アームを移動可能長さL2移動させて、その先端を座標位置P3まで到達させたときのロボット装置の一形態を示す斜視図である。
【図6】図2から図5までの教示手段で教示された後の、第1制御手段を示すフローチャートである。
【図7】図2から図5までの教示手段で教示された後の、第2制御手段を示すフローチャートである。
【図8】第2制御手段により動作するアーム部の形態の一例である。
【図9】第2制御手段により動作するアーム部の形態の他の一例である。
【図10】アーム部を2つ有するダブルアーム型のロボット装置の一例を示す斜視図である。
【図11】従来の教示方法の煩雑さを説明するための図である。
【図12】従来の教示方法の煩雑さを説明するための図である。
【図13】スライダ型アームを有するロボット装置の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ロボット装置
2 アーム部
4 レール部材
10 ワーク保持部
11 第1アーム
12 第2アーム
13 ベース部材
14 上下動部材
15 基台
30 カセット
31 ガラス基板
P0,P1,P2,P3,P4 座標位置
R アームの移動距離
R1 第1アームの移動長さ
R2 第2アームの移動長さ
L1 第1アームの移動可能長さ
L2 第2アームの移動可能長さ
R2 指定移動長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するワーク保持部を有して往復運動する第1アーム、該第1アームを連結して前記第1アームと同じ方向に往復運動する第2アームとで少なくとも構成されたアーム部、及び、前記第1アームの動作を優先して前記アーム部を所定の座標位置Pまで移動させる制御装置を備えたロボット装置であって、
前記制御装置は、前記第2アームを動作させずに前記第1アームを前記ワーク側に向かって移動させる第1アーム移動ステップと、前記第1アームを所定の長さR1移動させた後に前記第2アームを所定の長さR2移動させる第2アーム移動ステップとにより、前記所定の座標位置Pまで前記アーム部を移動させて教示する教示手段を含むことを特徴とするロボット装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記所定の座標位置Pまでの距離Rが前記第1アームの所定の移動可能長さL1の範囲内である場合には、前記第1アームのみを移動させ、前記所定の座標位置Pまでの距離Rが前記第1アームの所定の移動可能長さL1を超える場合には、該移動可能長さL1と同じ長さR1移動する第1アームの動作と、距離Rから前記移動長さR1を差し引いた長さR2移動する第2アームの動作とを同時に行う第1制御手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のロボット装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2アームの移動長さR2が指定された場合において、前記所定の座標位置Pまでの距離Rが前記第1アームの所定の移動可能長さL1と前記第2アームの指定移動長さR2との和(L1+R2)の範囲内である場合には、前記第1アームの移動長さR1はR×L1/(L1+R2)となり、前記第2アームの移動長さR2は距離Rから前記移動長さR1を差し引いた長さとなる関係で、前記第1アームの動作と前記第2アームの動作とを同時に行う第2制御手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−203434(P2007−203434A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28293(P2006−28293)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】