説明

ワークピースの座標を確定するための方法

本発明は、ワークピース(9)に対して不動に位置決めされている第一座標系を固定すること、 ワークピース(9)の第一座標を、第一座標測定装置(3)を使用することにより測定すること、 ワークピース(9)の第二座標を、第二座標測定装置(5)を使用することにより測定すること、そして 第一座標と第二座標から、共通の座標組を、ワークピース(9)に不動に位置決めされた座標系に対する第一座標系においてあるいは第二座標系において作ることを特徴とするワークピース(9)の座標を確定するための方法に関する。特に多数のワークピース(9)の座標はワークピース(9)の製造工程および/または加工工程の最中および/または後に確定することができる。さらに本発明はワークピース(9)が両座標測定装置(3,5)を用いた測定の間に位置および/または姿勢が変化する場合にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースの座標を確定するための方法および測定設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特に物体の寸法と形状の特徴を確定できるように、座標測定装置が使用され、この座標測定装置は一つあるいはそれより多くの物体の表面を(例えば非接触式で光学的に、あるいは表面を非接触式に走査することにより)走査する。
【0003】
さらにいわゆる代替え的な測定方法も提案されており、この方法では光源から発生した測定光線が物体の材料を透過する。例えば特許文献1は部分的な非破壊検査のためのシステムを記載しており、この場合三次元コンピュータ画像回転法を用いる。このシステムはCAD/CAMプログラムを有する携帯型プロセッサと、X線光源と、シンチレータスクリーンとシリコンセンサーフィールドとを備えている。このプロセッサは対応する三次元画像をCAD/CAMプログラムの座標系で形成させるためのコマンドを含んでいる。
【0004】
特にワークピースを大量生産する場合、高度に精密で、壊れずに、かつ製造ラインで組み込み可能な測定技術の必要性が増す。
【0005】
ワークピースはこの明細書においては物体の各態様であり、この物体は加工工程において加工され、および/または製造工程において製造され、および/または使用される。例えばワークピースそれ自体を加工することができ、および/または組立の際には他のワークピースと組合せることができる。さらにワークピースは互いに異なる連結された部材からできていてもよい。
【0006】
さらに幾つかの選択されたワークピースの寸法とその相対位置を互いに確定するだけでなく、少なくとも可能性を有し、さらにきわめてアクセスし易いワークピースの領域を測定することができる必要性が増す。例えばワークピースの機能役割に関しては実質的に空洞部の領域内における前もって設定された寸法と形状を厳密に守ることにかかっている。
【0007】
ワークピースの材料を透過し、その強度が測定される測定光線を基にした測定方法により、たしかにこのような空洞部の位置に関する情報は得られるが、材料面の座標及び場合によってはあり得る材料移行部の座標に関するこれらの情報ははっきりしていない。
【特許文献1】米国特許第6341153号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ワークピースの様々な特徴の測定を可能にし、その際測定の複雑さを最大限効率化しかつ測定コストを最大限抑えることができねばならない、ワークピースの座標を確定するための方法および測定システムを提供することにある。特別な形態において、コストが正しいと認めうるほど経済的である場合の方法あるいは測定システムは、中空構造になっているかあるいはアクセスがしやすい領域を備えたワークピースの測定に適していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ワークピースに対して不動に位置決めされている第一座標系を固定すること、ワークピースの第一座標を、第一座標測定装置を使用することにより測定すること、ワークピースの第二座標を、第二座標測定装置を使用することにより測定すること、そして 第一座標と第二座標から、共通の座標組を、ワークピースに不動に位置決めされた座標系に対する第一座標系においてあるいは第二座標系において作ることを特徴とするワークピースの座標を確定するための方法を提案する。
【0010】
特に多数のワークピースの座標はワークピースの製造工程および/または加工工程の最中、および/またはワークピースの製造工程および/または加工工程の後に確定することができる。
【0011】
様々な座標測定装置を使用することにより、ワークピースの様々な特徴を測定することができ、様々な速度および/または精度を備えたワークピースの特徴を測定することができ、および/またはワークピースの製造工程時に新たに付加される特徴をただ座標測定装置の一つだけを使用して測定することができる。ただ一つの座標測定装置を用いた測定に比べて拡大された可能性がある。測定されるべきワークピースの特徴を、第一および第二座標測定装置を用いて測定される特徴に分類することにより、測定コストを最小限に抑え、測定精度を最大限まで高めおよび/または測定速度を最大限まで上げることができる。
【0012】
第一座標測定装置において、および第二座標測定装置において座標を測定するための様々な測定原理を使用することが好ましい。特に例えば表面を触感で走査するような様々な古典的測定原理は問題になる。
【0013】
例えば座標測定装置の一つはプローブを備えた装置であり、このプローブはワークピースを表面を接触することにより走査し、かつこのようにして座標を確定する。さらにワークピースの表面を接触しないで走査する装置を使用することもできる(特にいわゆる縞投影法あるいは格子投影法による表面の光学的走査)。
【0014】
座標測定装置のもう一方として、ワークピースの情報を確定するために光線を使う装置を使用するのは好ましい。この光線はワークピースの材料を透過し、その際減衰しおよび/または屈折する。例えばこれに関して、コンピュータ断層撮影装置はX線照射、β線照射および/または陽電子照射を基礎としている。特にこのようなシステムにおいて、ワークピースの外側構造と内側構造がぼやけて検知され、この場合例えば低いグレースケール値から高いグレースケール値への移行部分はワークピースの表面あるいは縁部を示す。さらに特に光線の吸光度と回析により確定されているピンぼけの様式は、ワークピースの材料に左右される。しかしながら本発明は別の座標測定装置としてのこのような装置を使用することに限定されている。むしろ例えば非接触式にワークピースの表面を走査する装置を使用することもできる。この走査装置は、特にいわゆる縞投影法あるいは格子投影法により例えばワークピースの表面を光学的に走査する。
【0015】
一般的な言葉で言うと、それにより検知される輪郭の正確な(第一)座標を提供する第一座標測定装置を使用するのが好ましく、第二座標測定装置により算出される第二座標は第一座標を用いることにより、ワークピースに対して不動に位置決めされた座標系に適用される。特にこれに関して、第一座標から算出された測定点の距離(例えばワークピースの長さあるいは直径)を使用することができる。間隔が固定してあると、距離は例えば様々なボケた輪郭における、ワークピースの輪郭が存在しなければならない同じ濃度のグレースケール値の間隔から算出することができる。第二座標測定装置により算出される情報のスケーリングおよび/または位置決めのための一つの測定値を使用するのではなく、少なくとも二つの装置を使用することが好ましい。この場合測定値は重複したおよび/または重複していない情報を含むことができ、および/または異なるおよび/または同じ方向で相対配置方向していることができる。重複によりスケーリングおよび/または位置決めの信頼性は上がり、重複しない測定値により、様々な方向にスケーリングおよび/または位置決めされる。
【0016】
さらに一般的な言葉で言うと、第二座標測定装置によりワークピース(あるいは参照物体)の測定値を、ワークピース(あるいは参照物体)の縁部あるいは材料移行部がある局部的な領域内で測定することを提案する。この場合第一座標測定装置により測定される第一座標は、縁部あるいは材料移行部の位置および測定値を割当てるために使用される。参照物体を測定する場合、さらに第一座標は参照物体にも関係する。
【0017】
“第一” 座標測定装置という名称は、この装置により実施される測定が第二座標測定装置の測定の前に行われるという意味には理解できない。むしろ測定は任意の順序で同時におよび/または繰り返し実施される。さらに一つあるいはそれより多くの座標測定装置が設けられていてもよい。実際のところ測定の時間は測定がどのようにして製造ラインおよび/または組立ラインに組み込まれるのが一番であるかにかかっている。
【0018】
本発明は特にワークピースが両座標測定装置を用いた測定の間に、位置および/または姿勢が変化する場合に関係する。この場合ワークピースは例えば一方の座標測定装置から他方の座標測定装置まで移動し、および/またはワークピースの姿勢および/または位置は付加的な測定情報が入手可能であるように変化する。
【0019】
(例えばワークピースを透過する光線を用いた座標測定装置の場合に)可能であり、あるいは場合によっては、例えば三次元座標系における座標を維持するためにワークピースを測定時に移動させることさえも必要である。
【0020】
第一座標および/または第二座標は、参照座標系においてあるいは参照座標系の各々において測定されてもよい。
【0021】
本発明の一形態の場合、ワークピースと少なくとも一つの参照物体は互いに不動に連結しており、この場合第一座標測定装置により、および第二座標測定装置により参照物体の参照座標が測定され、共通の座標組は参照座標系を使用することにより作られる。その際第一および第二座標測定装置は様々な参照座標系を使用することができる。この様々な参照座標系に関連して第一あるいは第二座標が測定される。例えばこのことはワークピースが一方の座標測定装置により測定位置で測定されるその場合に合理的である。この測定位置において、参照物体は他方の座標測定装置と同じようには検知できない。この場合、座標測定装置は、参照座標系を算出するために、例えば様々な参照物体あるいは同じ参照物体の様々な特徴に関係がある。しかしながら座標測定装置は同じ座標系に関係があり、ワークピース座標はこの座標系で測定されるのが好ましい。この形態によりワークピース固定座標系における座標から共通組を作ることが容易になる。
【0022】
参照物体はワークピースと直接および/または間接的に連結しているかあるいは連結する。
【0023】
特に第一座標測定装置により、第二座標測定装置により、あるいは別の座標測定装置により、ワークピースの座標と参照物体の参照座標を測定することができ、そこから一方においては参照物体の、他方においてはワークピースの相対的状態および位置に関する情報を得ることができ、および共通の座標組を相対的状態および位置に関する情報を使用することにより作ることができる。次に相対位置と相対配置方向が変わらない場合、ワークピースが固定された状態での参照物体の絶対配置方向および/または絶対位置は、第一座標の測定値と第二座標の測定値の間で変化してもよい。相対位置と相対配置方向に関する情報を得るために、例えば一方においては少なくとも一つの特有なワークピースの形状の特徴の座標を、座標測定装置の各々に対して固定している座標系において測定し、かつ他方においては参照物体の座標を小穴時座標系において測定する。
【0024】
参照物体は任意でかつ適した物体であればよい。特に球は適している。というのも球は様々な方向から、かつ様々な座標測定装置により確実かつ精密に検知できるからである(走査あるいは他の方法で検知もできる)。
【0025】
添付した図に関連してさらに詳しく立ち入った好ましい形態において、ワークピースは座標測定装置により実施される測定の間はパレット上に固定されている。パレットは例えばワークピースが配置されている形状が安定したパレットを備えている。このようなパレットの長所は、ワークピースがただ一方の側からカバーされていることである。さらにまたパレットには参照物体が固定されていてもよい。そこに固定されたワークピースを有するパレットを一方の測定ステーションから他方の測定ステーションまで運動すなわち移送することができ、かつ測定ステーション内で任意に整向することができる。パレットに関して代替え的に、他方の物体はワークピースに固定することができる。この物体は少なくとも一つの参照物体であるかあるいはこの物体に少なくとも一つの参照物体が設けられているかあるいは設けられる。測定装置の少なくとも一つが、ワークピースの材料を透過する測定光線を使用する場合、パレットに関しては測定光線に関する吸収率がゼロである材料を選択するのが好ましい。
【0026】
特にワークピースを連続的に測定する場合に参照座標系を確定する際の費用を削減するために、そこに固定されたワークピースを有する参照物体は一定の位置に移動する。この位置は第一座標測定装置に対しておよび/または第二座標測定装置に対して固定されている。参照物体が一定の位置にある間に、参照座標の少なくとも一部、すなわち第一座標および/または第二座標が測定される。さらに位置が一定であることにより、参照座標系の姿勢もわかる。多数の参照物体あるいは参照物体の形状の特徴が各々一定の位置内にあると、その上さらに参照座標系の方向配置もわかる。
【0027】
さらに本発明の範囲には、ワークピースの座標を確定するための測定設備が所属しており、この測定設備は、
−ワークピースの第一座標を測定するための第一座標測定装置と、
−ワークピースの第二座標を測定するための第二座標測定装置と、
−第一および第二座標測定装置と連結され、かつ第一座標と第二座標とからワークピースの共通の座標組を作るように形成されている確定装置とを備え、
この場合共通の座標組はワークピースに対して不動に位置決めされている座標系において規定されている。
【0028】
特に測定設備は移動装置(例えばコンベヤベルトおよび/またはローラコンベヤ)を備えており、この移動装置はワークピースを測定位置に持ってくるように形成されている。この測定位置において第一座標測定装置と第二座標測定装置はワークピースの第一座標と第二座標を測定することができる。この移動装置は特に多数のワークピースを測定位置内に連続して持ってくるように形成されていてもよい。
【0029】
さらに本発明の範囲には、プログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムと、記憶されたプログラムコード手段を備えたデータ転送体と、対応するコンピュータプログラム製品が所属しており、前記プログラムコード手段は、コンピュータあるいはコンピュータネットワーク上で走らせる際に、その形態における本発明による方法の少なくともその一部あるいはそれより多くの部分を実行し、この少なくともその一部あるいはそれより多くの部分は、測定装置の少なくとも一つの制御および/または測定により得られる測定情報の処理に関しており、特にプログラムコード手段はデータ構造の形でコンピュータで読めるデータキャリアに記憶することができ、前記コンピュータプログラム製品にあってはコンピュータプログラム製品の下でプログラムあるいはプログラムコード手段が扱い易い製品として理解され、プログラムあるいはプログラムコード手段が任意の形で、例えば書類あるいはコンピュータで読めるデータキャリア上で存在し、かつ特にデータ転送ネットワークを経由して分配することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に本発明を図において概略的に示した実施例に基づき詳しく説明する。しかしながら本発明は実施例においてのみ限定されているだけではない。
【実施例】
【0031】
図1に示すワークピース座標を確定するための測定設備1は、第一座標測定装置3と第二座標測定装置5とを備えている。この図は参照符号10で明示した多数の形状的特徴を備えたワークピース9を示している。ワークピース9はこの例の場合パレット状の担持体7上に固定されており、例えば固く締結されており、固くネジ止めされておりおよび/または粘着されている。同様にして担持体7上には、互いに間隔をおいて設けられた三つの参照物体8a,8b,8cが固定されており、この三つの参照物体は各々担持体7の長方形の面の角の領域内に設けられている。参照物体の一つ(8b)においては、矢印により三つの参照物体が担持体7に対して不動に位置決めされている座標系を定義することを示している。この座標系は別の記述では参照座標系と言い、かつRKSと略す。参照物体8は例えば球である。
【0032】
三つの矢印でもって、同様にしてワークピース自体の座標系WKSが示してある。担持体7におけるワークピース9の固定に基づいて、RKSとWKSは互いに近似的に変わらない相対位置と相対配置方向に居続ける。したがってワークピース9の座標を異なる座標測定装置3,5により(および場合によっては別の座標測定装置により)、RKSにおいて測定し、かつ所望の時点にWKSに換算することが可能である。
【0033】
測定中は座標測定装置3,5を介して、および/または測定の合間には座標測定装置3,5とは異なる座標測定装置を介して起こりえる温度の変化のために、RKSとWKSの相対位置の変化とスケーリングの変化が生じる。従って温度を測定し、かつ担持体7とワークピース9の材料の熱線膨張係数を考慮に入れて変化量を算出することを提案する。温度を測定するために温度センサーは担持体7内に一体化されているのが好ましい。
【0034】
図1において、ワークピース9の座標の測定は矢印で示してあり、この場合第一座標測定装置3と第二座標測定装置5は同じワークピース9の座標を同時におよび/または前後して測定する。
【0035】
対応する測定されたデータは例えば第一座標測定装置3からデータ処理装置11まで転送され、このデータ処理装置はRKSおよびWKSの相対位置と相対相対配置方向を算出しかつこの情報を第二座標測定装置5に転送する。データ処理装置11はこの明細書に記載された他の機能に代替え的にあるいは付加的に、例えば座標測定装置3,5により検出された座標の換算ファクタをWKSおよび/または温度較正部へ転送することができる。
【0036】
図2は図3から図5を組み合わせた状態で特に好ましい本発明による座標測定装置の実施形態を示す。座標測定装置は移送装置12を備え、この移送装置上には多数のワークピース9が設けられている。ワークピース9とは例えば図1に示したワークピース9であり、このワークピースはパレット7上でその表面に固定された参照物体8と一緒に取付けられている。移送装置12は多数のワークピース9を第一測定ステーションまで次々に移送し、図2にはただストッパ13だけが示してある。図2に示したスナップショットに比べていくぶん遅く、ワークピース9の一つはストッパ13に達し、従って移送行程上の一定の位置に達する。この位置において、ワークピース9は光源17からのX線によりX線撮影される、すなわち光学的に測定される。ワークピース9の後方の光源17の視点から設けられた、当るX線の二次元像を収容するためのセンサー装置16は、X線の減衰と回析を基にしてワークピース9を介して得られる情報を捕捉するために使用される。例えば光源17を少なくとも一つの別の場所に移動させることにより、X線は別の方向からワークピース9に達し、他のX線画像は収容され、図3に図示していないデータ処理設備により、ワークピース9の三次元画像が形成される。測定ステーション14はさらにパレット7上に設けられた参照物体8がX線画像内に一緒に含まれているように設計されている。
【0037】
図4は測定装置の別の移送装置12を示しており、この移送装置上には図3に示した移送装置と同じワークピース9が先か後のいずれかに第二測定ステーション15まで移送される。第二測定ステーション15は測定台21を備え、この測定台は移送装置12から間隔をおいて設けられている。図4に示す移送装置12からワークピース9は例えば可動なグラブにより測定台21上に達する。図5のように測定ステーション15は門構造のような座標測定装置20であることがわかる。水平方向に沿って移動可能に支承された座標測定装置20の二つの支柱22,23は、横方向ガイド24を担持しており、この横方向ガイドにより主軸25は横方向に可動に支承されている。主軸25と主軸の下方端部に固定されたプローブ26は垂直方向に可動であり、したがってプローブ26は座標測定装置20の測定領域内の任意の位置に達することができる。
【0038】
ワークピース9の座標を測定するために、プローブ26はその都度の面の接触により、パレット7上のワークピース9および参照物体8を走査し、ワークピース9の三次元座標は参照物体8により定義された座標系内において測量される。従って図8および9に関連してさらに詳しく説明するように、第一測定ステーション14内でおよび第二測定ステーション15内で検出されるワークピース9の座標から共通の座標組をワークピース固有の座標系内で作ることが可能である。さらに図6と7に関連して詳しく説明するように、第一測定ステーション内で非精密に測量されたワークピース9の輪郭の状態を第二測定ステーション15内で達成可能な精度でもって確定することも可能である。
【0039】
図6はX線(あるいはワークピース9の材料を透過するのに適した他の光線)を発生させるための光源17と、ワークピース9と、発生する光線の二次元画像を受光するためのセンサー装置とを示す。回転軸線18により示すように、ワークピース9は回転させられ、それにより様々な視点から多数の二次元画像が記録され、従ってワークピース9の三次元画像が計算で算出可能である。
【0040】
ワークピース9は深くかつ幅瀬狭の切欠き部を備え、この切欠き部の表面座標は表面を走査する座標測定装置により測定できないかあるいはただ制限された状態でのみ測定できるかである。従って図6に示したような様式の測定装置を、表面を探知する他の測定装置と組合わせ、測定から得られるワークピースの所望の座標を両測定装置を用いて算出することが提案される。
【0041】
図7は(ただ寸法における明瞭さと図を簡単にすることの理由から)三次元空間的光線吸収場の結果を示しており、この光線吸収場は図6に示した測定装置の多数の二次元画像から算出される。光線吸収場は二次元空間の各々の位置においてワークピース9により生じる光線吸収に対応する。図7のグラフにおいて、x方向での長さLを有するワークピース領域の吸収Iが示してある。別の言葉で言うと、x方向においてワークピース領域の材料表面は長さLの分だけ互いに隔たっている。材料表面の間には光線吸収に関して均質なワークピースの材料が配置されている。
【0042】
図7の概略図からわかるように、材料表面における測定された吸収は階段状に増加するかあるいは減少する。むしろ材料表面は吸収測定により曖昧にしか探知されない。x方向においては幅Dの曖昧な箇所がある。長さLが公知の場合、x方向での材料表面の実際の長さを確定することができる。例えばこれに関しては、両方の互いに相対している材料表面が同様に曖昧な吸収カーブを備えていることも仮定できる。この場合材料表面の位置は二つの同じ大きさの吸収値の間隔から判明し、この際間隔は長さLと同じである。長さLは例えば正確な測定から、材料表面を探知する座標測定装置により確定される。工程全体は較正と呼ばれる。較正を少なくとも一つの参照物体を基にして、例えばパレット7上に固定された球8の材料表面で行なうことは代替え的かあるいは付加的に可能である。
【0043】
本発明の特に好ましい実施形態をただ図8のフローチャートに基づいてのみ記載する。
【0044】
工程S0において、付加的にワークピースは多数の参照物体と固く連結され、続く工程S1では第一測定位置に運ばれ、この第一測定位置において第一座標測定装置はワークピースと参照物体の座標を測定することができる。多数の参照物体の代わりに、ただ一つの参照物体がワークピースと固く連結されてもよく、この場合座標測定装置の参照物体は検知可能な特徴(例えば形状の特徴および/または光学的に認識可能な特徴)を備えており、この特徴により座標測定装置を使用して参照物体により定義される座標系を確定することができる。
【0045】
続く工程S2において、ワークピースと参照物体は第一座標測定装置により測定され、一方においては参照物体により定義された参照座標系RKSの相対位置と相対配置方向が確定され、他方においてはワークピース側の座標系WKSの相対位置と相対配置方向が確定される。RKSとWKSの相対位置と相対配置方向に関する情報は、引き続き行なわれる工程S7に記憶される。相対位置と相対配置方向の確定は遅れた時点に対して代替え的にあるいは付加的に行なわれ、特に第二座標測定装置により実施される。
【0046】
工程S2に続く工程3においては、第一座標測定装置によりRKSでのワークピースの第一座標が測定される。RKSとWKSの相対位置と配置方向の確定がすでに行われ、第一座標測定装置に対するRKSの位置がそれ以来変化しない場合、第一座標はWKSにおいて直接測定することができおよび/または記憶することができる。
【0047】
次に工程S4が行われ、この工程において参照物体がそこに固定された状態のワークピースは、変化した姿勢および/または位置に運ばれる。すぐ次のS5の前に、ワークピースはどんな場合でも必ずある姿勢と位置になることができ、従って少なくともワークピースの一部の座標は第二座標測定装置により測定することができる。さらにRKSをそれ自体確定すること(すなわち固有の座標系に対する関係を作り出すこと)、あるいは少なくとも一つの他の第二RKSを確定することはこの姿勢と位置における第二座標測定装置にとって可能である。参照物体に関する情報により、様々な参照座標系内にある座標は共通の座標系に換算することができる。
【0048】
特に二つあるいはそれより多くの異なるRKSを座標測定装置の一つにより確定でき、RKSとWKSの対応する相対的位置と姿勢をその都度確定ことができる。このことは特に他の座標測定装置が同じ参照物体の特徴を受入れやすくなく、従って確定したRKSがその特徴により確定できない場合に長所である。
【0049】
続く工程S5において、第二座標測定装置はRKS(あるいは第二RKS)を確定する。第二座標測定装置に、続く工程Sの前あるいは後において第一座標測定装置により検出されたRKSとWKSの相対的位置と姿勢に関する情報が供給されるのは選択的である。工程S6では、第二座標測定装置によってのみワークピースの第二座標が測定される。固定S5と工程S6は入れ換え可能でもある。RKSとWKSの相対的位置と姿勢に関する情報が第二座標の測定前にすでに自由に使用できる場合、第二座標はWKSにおいて直接測定でき、および/または記憶することができる。
【0050】
最後の工程S8において、第一座標からおよび第二座標から共通の座標組が作られ、しかもワークピースに関連して定まっている座標系内において作られる。特にこの工程では、各々RKSにおいてあるいはWKSにおいて測定された第一および第二座標は−ワークピースと参照物体の相対位置と相対配置方向に関する情報を利用することにより−WKSに変換される。さらにこの工程では必要な場合に、先に説明した較正を実施することができる。
【0051】
図9に関連して、ワークピースに対する参照座標系の位置と相対配置方向に関する情報(以下“相対情報)をどのようにして利用できるかということを明確にしなければならない。図9に示した工程は、各々ハードウェアおよび/またはソフトウェアとしても存在する。工程S11はこの場合相対情報を確定するための装置に、工程S12は例えば図8の工程S8を実行する判定装置に、工程S14は第一座標測定装置のデータプロセッサに、そして工程13は第二座標測定装置のデータプロセッサに相当する。
【0052】
図9において破線で示した実施例によれば、工程13と工程S14において、参照座標系でのあるいは参照座標系の一つでのワークピースの第二あるいは第一座標が確定される。さらに工程S11内の相対情報も確認される。工程S11、S13およびS14は、任意の時間的順序でおよび/または同時に実施されてもよい。さらに少なくとも一つの別の座標測定装置が設けられていてもよく、この座標測定装置は第三のあるいはそれ以外のワークピースの座標を測定し、および/または相対情報の確定に必要な測定を実施する。工程S12において、測定されたワークピースの座標は、共通の座標組を作るために相対情報を使用することにより算出される。
【0053】
破線により図9で示すように、相対情報は第一および/または第二座標測定装置の共通座標により確定することができる。(ワークピースおよび参照物体の)共通座標が、相対情報に関する基盤を形成する相応する情報を含んでいると、座標測定装置は各々、座標を参照座標系においても、そしてワークピース側の座標系においても(あるいは座標測定装置の座標系においても)測定することができ、あるいは座標系の一つに変換することができる。従って共通座標組を確定するための測定された座標の中枢的な判断は必ずしも必要ではない。正確に言うと、座標測定装置の一つがこの機能を引き継いでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】二つの座標測定装置を備えた座標測定設備の概略図である。
【図2】ワークピースの座標が測定される測定ステーションに対して、多数のワークピースを次々と移送するための移送装置の側面図である。
【図3】図2による移送装置を上から見た図である。この場合ワークピースは測定ステーション内において座標測定装置の測定光線により放射線透過写真を撮影される。
【図4】ワークピースを第二測定ステーションまで移送し、第二測定ステーションにおいてワークピースが門構造のような座標測定装置により走査される、他の移送装置を上から見た図である。
【図5】図4による測定ステーションの側面図である。
【図6】凹部を備えたワークピースを放射線透過写真撮影する座標測定装置の原理を示す図である。
【図7】座標軸線に沿った、図6に示した座標測定装置により測定された測定値の経過を示す図である。
【図8】ワークピース座標を確定するための方法の特に好ましい実施形態を示すフローチャートである。
【図9】第二座標測定器具の測定値から共通の座標を確定することの観点を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(9)に対して不動に位置決めされている第一座標系を固定すること、
ワークピース(9)の第一座標を、第一座標測定装置(3)を使用することにより測定すること、
ワークピース(9)の第二座標を、第二座標測定装置(5)を使用することにより測定すること、
そして
第一座標と第二座標から、共通の座標組を、ワークピース(9)に不動に位置決めされた座標系に対する第一座標系においてあるいは第二座標系において作ることを特徴とするワークピース(9)の座標を確定するための方法。
【請求項2】
ワークピース(9)と少なくとも一つの参照物体(8)を互いに不動に連結すること、
第一座標測定装置(3)により、および第二座標測定装置(5)により参照物体(8)の参照座標を測定すること、および
共通の座標組を参照座標を使用することにより作ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一座標測定装置(3)により、第二座標測定装置(5)により、あるいは別の座標測定装置により、ワークピース(9)の座標と参照物体(8)の参照座標を測定すること、
そこから一方においては参照物体(8)の、他方においてはワークピース(9)の相対的状態および位置に関する情報を得ること、および
共通の座標組を相対的状態および位置に関する情報を使用することにより作ることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
ワークピース(9)がそこに固定された状態の参照物体(8)を、一定の位置に移動させ、この一定の位置が第一座標測定装置に対しておよび/または第二座標測定装置に対して固定されていること、および
参照物体(8)が一定の位置にある間に、参照座標、第一座標および/または第二座標の少なくとも一部を測定することを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ワークピース(9)がそこに固定された状態の参照物体(8)の配置方向および/または位置を、第一座標の測定値と第二座標の測定値との間で変更することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
第一座標測定装置(3)において、および第二座標測定装置(5)において座標を測定するための様々な測定原理を使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
第一座標測定装置(20)により、ワークピース(9)の表面を走査し、それによりワークピース(9)の表面の少なくとも一点の座標を測定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
第二座標測定装置(16,17)により、ワークピース(9)の材料の放射線透過写真を撮影し、そこからワークピース(9)の少なくとも一つの座標を確定する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
第二座標測定装置(16,17)により、ワークピース(9)および/または参照物体(8)の測定値を、ワークピース(9)および/または参照物体(8)の縁部あるいは材料移行部がある局所領域内で測定すること、および
第一座標測定装置(20)により測定された第一座標を、縁部あるいは材料移行部の位置と測定値互いに割当てるために使用することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
多数のワークピース(9)の座標を、ワークピース(9)の製造工程と加工工程の最中および/または後に、請求項1〜9のいずれか一つに従った方法により確定することを特徴とする方法。
【請求項11】
ワークピース(9)の座標を確定するための測定設備(1)において、
測定設備(1)が、以下のように
−ワークピース(9)の第一座標を測定するための第一座標測定装置(3)と、
−ワークピース(9)の第二座標を測定するための第二座標測定装置(5)と、
−第一および第二座標測定装置(3,5)と連結され、かつ第一座標と第二座標とからワークピース(9)の共通の座標組を作るように形成されている確定装置(11)とを備え、
この場合共通の座標組がワークピース(9)に対して不動に位置決めされている座標系において規定されていることを特徴とする測定設備。
【請求項12】
移動装置(12)を備え、この移動装置がワークピース(9)を測定位置に運ぶように形成されており、この測定位置において第一座標測定装置(20)および/または第二座標測定装置(16,17)が第一あるいは第二座標を測定することができることを特徴とする請求項11記載の測定設備。
【請求項13】
移動装置(12)が多数のワークピース(9)を連続して測定位置に運ぶように形成されていることを特徴とする請求項11記載の測定設備。
【請求項14】
プログラムコード手段を用いてワークピースの座標を確定するためのコンピュータプログラムであって、このプログラムコード手段が、ワークピース(9)に対して不動に位置決めされた座標系における共通の座標組を作るために、
第一座標測定装置(3)を使用して測定されるワークピース(9)の第一座標と、
第二座標測定装置(5)を使用して測定されるワークピース(9)の第二座標とから形成されていることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項15】
プログラムコード手段が、一方においては参照物体(8)の相対位置と配置方向を算出するために、
他方においてはワークピース(9)の相対位置と配置方向を算出するために、ワークピース(9)の第一座標および/または第二座標と、
少なくとも一つの参照物体(8)の測定された参照座標とから形成されていることを特徴とする請求項14記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
コンピュータで判読可能な記憶媒体に記憶されている、請求項1〜15のいずれか一つによるプログラムコード手段を備えていることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項17】
記憶媒体あるいはコンピュータシステムであって、この記憶媒体あるいはコンピュータシステムデータフォーマットが記憶されており、このデータフォーマットがロード後コンピュータあるいはコンピュータネットワークのワーキングメモリおよび/または主記憶装置内で請求項14あるいは15によるコンピュータプログラムを実行するように構成されていることを特徴とする記憶媒体あるいはコンピュータシステム。
【請求項18】
請求項14によるプログラムコード手段を備えていることを特徴とするコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−534933(P2007−534933A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550014(P2006−550014)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000439
【国際公開番号】WO2005/070567
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(504258804)カール ツァイス インドゥストリエレ メステヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (11)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Industrielle Messtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Carl Zeiss Strasse 22, D−73447 Oberkochen,Germany
【Fターム(参考)】