ワークピースを硬化する方法及び装置、並びに該方法により硬化されたワークピース
本発明は、ワークピースを熱処理するための方法及び装置に関し、該装置は、冷却室及び、ワークピースが加熱装置の直接熱放射により950から1200℃に加熱される2つ以上の浸炭室を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースを硬化する方法、該方法を実施するための装置及び該方法により硬化されたワークピースに関する。本発明による方法は、以下の、
(a)ワークピースを950から1200℃の温度に加熱する工程と、
(b)ワークピースを、950から1200℃の温度及び100mbar未満の圧力で、炭素含有ガス及び/又は窒素含有ガスに曝す工程と、
(c)ワークピースを、100mbar未満の圧力の雰囲気中で950から1200℃の温度に保つ工程と、
(d)適切ならば、工程(b)及び(c)を1回又は数回繰り返す工程と、
(e)ワークピースを冷却する工程と
を含む。
【0002】
本発明による装置は、2つ以上の浸炭室、少なくとも1つの冷却室及びワークピースのためのラックを操作するための移動システムを備え、各々の浸炭室は1つ以上の真空ゲートバルブ又は断熱ゲートバルブを通じて冷却室に接続されることができ、各浸炭室はラックの置場及びそれに加えて発熱体も有する。
【0003】
ワークピースは、28Cr4(ASTM5130による)、16MnCr5、18CrNi8及び18CrNiMo7−6などの合金鋼製の、主として金属材料製の機械部品及びギヤ機構、例えば中空ホイール(hollow wheel)、ギヤホイール、シャフト又は噴射構成部品である。
【背景技術】
【0004】
浸炭することによりワークピースを硬化する方法及び装置は、先行技術において知られている。
【0005】
DE10322255A1は、排気することができる処理室内で、炭素供与体ガスを用いて930℃を超える温度で鋼部品を浸炭する方法であって、加熱段階中及び拡散段階中の両方で、アンモニアなどの窒素放出ガスが、処理室中に供給される方法を開示している。
【0006】
DE10359554B4には、真空炉中で金属のワークピースを浸炭する方法が記載されている。該方法においては、炉雰囲気は浸炭工程の条件下で開裂して純炭素を放出する炭素キャリアを含む。炭素キャリアはパルス方式で供給され、各浸炭はパルスに次いで拡散のために一時中断される。浸炭パルス中に供給されるべき炭化水素の量は、材料のそのときの容量に適合するように変えられる。その目的で、各浸炭パルスの開始時におけるアセチレンの体積流速は高くしておき、炉雰囲気又はオフガス中の主成分である水素及び/又はアセチレン及び/又は合計炭素の濃度を測定し、それによりアセチレンの体積流速を適切に低下させる。
【0007】
DE102006048434A1は、熱処理炉中の保護ガス又は処理雰囲気中で実施される浸炭方法に関し、該方法においては、アルコール及び二酸化炭素が熱処理炉中に導入されて化学的に反応する。エタノール及び二酸化炭素は、熱処理炉中に導入され、その際、導入されるエタノールと導入される二酸化炭素との比は、好ましくは1:0.96である。そのような様式で作られる熱処理雰囲気は、金属材料、例えば鉄材料の浸炭する及び浸炭しないアニーリングに特に適している。
【0008】
DE102007038991A1は、ワークピースの熱処理のための、特に金属のワークピースのガス浸炭のための回転炉床炉であって、炉室、炉室と底部で境界をつける回転炉床、炉室を側面で囲む外壁及び炉室と頂部で境界をつける覆い板を備え、炉室が回転板の回転軸に対して放射状に伸びた内壁で少なくとも2つの処理区域にさらに分割されている炉を記載している。ワークピースを処理するために、回転板の回転軸に対して放射状に配向し、ワークピース又はワークピースの搬送体を受け取るように意図された、複数の放射状に装填できるラックが回転板上に配置しており、各内壁はラックに相補形の様式に形成された通路を有し、それを通じてラックは、回転板が円周方向に回転するときに、それぞれの内壁を通じて導かれ得る。
【0009】
DE102007047074A1には、ワークピースが850から1050℃の範囲内の温度でガス状炭化水素を含む雰囲気中に保たれる、鋼のワークピース、特に外部表面及び内部表面を有するワークピースを浸炭する方法が開示されている。少なくとも2種の異なったガス状炭化水素が使用され、及び/又はワークピースは、浸炭パルスの間は、ガス状炭化水素を含む雰囲気中に、拡散段階の間は炭化水素を含まない雰囲気中に、交互に保たれる。
【0010】
先行技術で知られている方法は、以下の、
‐ 浸炭によりワークピースを硬化するために必要とされる温度が850℃を超え、通常45分を超える時間が加熱のために必要になる。ワークピースの満足な生産性又は高い処理量を達成するために、浸炭は、装荷ラック中で上下に重ねて積まれた複数の層に配置された多数のワークピースでバッチ方式により達成される。例として、10枚の網棚を有する装荷ラックには28Cr4合金(ASTM5130による)製の合計160個の中空ホイールが積み込まれ、10枚の各網棚の上に、16個の中空ホイールが互いに横に並べて配置される。典型的な装荷材料又は装荷ラックの寸法は、3空間方向の各々に400mmから2000mmまでの範囲内である。ここで及び以下の文において、この従来タイプの装荷を「3D装荷」という用語によっても表す。生産過程において、浸炭は実質的にひと続きの機械加工(いわゆるソフト機械加工)の後に行う。この目的で、準備は緩衝領域でなされ、ソフト機械加工されたワークピースは、そこで、浸炭のための3D装荷が完了するまで集められる。3D装荷の浸炭は、加熱炉及び緩衝領域両方のために相当の面積をとる。それに加えて、それは、機械加工の準連続的な流れを中断して、物流のための追加の費用をもたらす。したがって、この目的に適したロボットシステムは技術的及び経済的理由で使用できないので、3D装荷の緩衝はワークピースの人手による取り扱いが必要になる、
‐ 3D装荷の浸炭は、ワークピース及びさらに周囲の生産ラインも汚染し得る炭素含有残留物の生成の増加をもたらす、
‐ 3D装荷で浸炭したワークピースは、一般的に、複雑な再機械加工(いわゆるハード機械加工)が必要になる相当な熱的歪みを経験する、
‐ 3D装荷で浸炭したワークピースは、浸炭深さ、表面炭素含有率及びコア硬度などの特性に大きい変動を有し、したがって、それにより直接又は間接に影響される特徴的な品質価値、例えば浸炭した部品で構成される機械的ギヤ機構の滑り又は摩擦損失を改善することは不可能である
という不利点の1つ以上を有する。
【発明の概要】
【0011】
上記の不利点が大きく回避される、ワークピースを硬化する生産性の高い方法を提供することが本発明の目的である。
【0012】
この目的は、以下の、
(a)ワークピースを950から1200℃の温度に加熱する工程であって、各ワークピースの表面の30から100%が、加熱装置の直接熱放射により加熱される工程と、
(b)ワークピースを、950から1200℃の温度及び100mbar未満の圧力で、炭素含有ガス及び/又は窒素含有ガスに曝す工程と、
(c)ワークピースを、100mbar未満の圧力の雰囲気中で950から1200℃の温度に保つ工程と、
(d)適切ならば、工程(b)及び(c)を1回又は数回繰り返す工程と、
(e)ワークピースを冷却する工程と
を含む方法により達成される。
【0013】
本発明による方法の工程(a)においては、ワークピースを装置中の1つの層又は1つの列において互いに並べて配置することによりワークピースを加熱する。このタイプの配置は、ここで及び以下の文中で、「2D装荷」という用語により表される。
【0014】
さらに、本発明による方法の構成は:
‐ 工程(a)において、各々のワークピースを、2つ以上の空間方向から熱放射により加熱すること、
‐ 工程(a)において、各々のワークピースの表面付近の区域を、35から135℃/分、好ましくは50から110℃/分、特に50から75℃/分の速度で加熱すること、
‐ 工程(a)において、各々のワークピースのコアを、18から120℃/分の速度で加熱すること、
‐ 工程(e)において、ワークピースを、800から500℃の温度範囲で2から20kJ・kg−1・s−1という特定の冷却速度で冷却すること、
‐ 工程(b)において、ワークピースをアセチレン(C2H2)及び/又はアンモニア(NH3)に曝すこと、
‐ 工程(e)において、ワークピースを、ガス、好ましくは窒素で冷却すること、
‐ ワークピースを、2から20bar、好ましくは4から8bar、特に5から7barの圧力で窒素によって冷却すること、
‐ 工程(e)において、ワークピースの表面を、900から1200℃の範囲内の温度から300℃の温度に、40から100秒以内で冷却すること、及び
‐ 1個のワークピースを基準として、(a)から(e)の工程を実施するためのサイクル時間が、5から120秒、好ましくは5から60秒、特に5から40秒であること
を特徴とする。
【0015】
内燃機関用の噴射ノズル又は質量が50から300gのネジボルトのような小さいワークピース又は構成部品を本発明による方法により硬化するために、約50から400個の構成部品を、バスケットとして形成されたラック、又は構成部品を整然と配置するための特製のラック中で1から3層の台の形態で配置する。バスケット中に多数のワークピースが置かれた結果として、各ワークピースについて工程(a)から(e)を実施するのに、20から5秒の範囲内の短いサイクル時間を達成することが可能である。ワークピースのかさ密度は、この場合、各ワークピースの表面の少なくとも30%が加熱装置の直接熱放射により加熱されるように選択する。
【0016】
特に、本発明による方法は、以下の、
(i)ワークピースをラック中/上に単層で配置する工程と、
(ii)ワークピースを載せたラックを冷却室に導入して、100mbar未満の圧力に排気する工程と、
(iii)ラックを浸炭室中に移動する工程であって、ラックを、適切ならば浸炭室中に導入する前に、一時置場に一時的に保管する工程と、
(iv)ワークピースを熱放射により950から1200℃の温度に加熱する工程であって、各ワークピースの表面の30から100%が浸炭室の直接熱放射により加熱される工程と、
(v)ワークピースを、950から1200℃の温度及び100mbar未満の圧力で炭素含有ガス及び/又は窒素含有ガスに曝す工程と、
(vi)ワークピースを、100mbar未満の圧力の雰囲気中で950から1200℃の温度に保つ工程と、
(vii)適切ならば、工程(iv)及び(v)を1回又は数回繰り返す工程と、
(viii)ワークピースを載せたラックを冷却室中に移動する工程と、
(ix)ワークピースを、ガス、好ましくは窒素で冷却する工程と、
(x)ワークピースを載せたラックを冷却室から取り出す工程と
を含む方法により達成される。
【0017】
上記の方法にしたがってワークピースを硬化する装置を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0018】
この目的は、2つ以上の浸炭室、少なくとも1つの冷却室及びワークピースのためのラックを操作するための移動システムを備え、冷却室は各浸炭室と1つ以上の真空ゲートバルブを通じて接続することができ、各浸炭室は、ラックのための置場及び少なくとも2つの発熱体を有し、発熱体から発せられた放射が各々のワークピースの表面を平均立体角0.5πから2πで照射するような様式で発熱体が配置される装置、によって達成される。
【0019】
別の実施形態において、本発明による装置は、2つ以上の浸炭室、少なくとも1つの冷却室、浸炭室および冷却室の間に配置されたロック室、及びワークピースのためのラックを操作するための移動システムを備え、冷却室は真空ゲートバルブを通じてロック室に接続することができ、各浸炭室は断熱ゲートバルブを通じてロック室に接続することができ、各浸炭室は、ラックのための置場及び少なくとも2つの発熱体を有し、発熱体から発せられた放射が各々のワークピースの表面を平均立体角0.5πから2πで照射するような様式で発熱体が配置される装置、を含む。
【0020】
本発明による装置の発展は、
‐ 断熱ゲートバルブが真空ゲートバルブの形態であり、
‐ 冷却室がワークピースを導入するため及び取り出すために2つの真空ゲートバルブを備え、
‐ 発熱体が表面エミッタの形態であり、
‐ 発熱体がグラファイト又は炭素繊維強化炭素(CFC)からなり、
‐ ラックが格子状の荷台の形態であり、
‐ ラックがグラファイト又は炭素繊維強化炭素(CFC)からなり、及び
‐ 移動システムが、上方及び下方のガイドの付いた垂直に配置されたチェーン駆動部及びチェーン並びにさらに荷台を受けるための水平可動伸縮自在フォークを備え、伸縮自在フォークはギヤ機構を通じてチェーンのうちの一つに連結している
ことを特徴とする。
【0021】
本発明のさらなる目的は、改善された性質を有する、特に熱的歪みが減少した硬化されたワークピースを提供することである。歪みが減少するので、再機械加工(いわゆるハード機械加工)のための費用はかなり減少する。
【0022】
この目的は、上記の方法の1つにより硬化された金属材料製のワークピースにより達成される。
【0023】
本発明によるワークピースは、
‐ 表面硬化深さ(CHD)が、公称値の±0.05mm、好ましくは±0.04mm、特に±0.03mmの範囲内にあり、該公称値が0.3から1.4mmである、
‐ 表面炭素含有率が、公称値の±0.025重量%、好ましくは±0.015重量%、特に±0.01重量%の範囲内にあり、該公称値が0.6から0.85重量%である、及び
‐ コア硬度が、公称値の±30HV、好ましくは±20HVの範囲内にあり、該公称値が280から480HVである
という事実により区別される。
【0024】
表面硬化深さ(CHD)、表面炭素含有率及びコア硬度の公称値からの偏差又は変動の範囲(すなわち、最大測定値と最小測定値との間の差)は、装荷している1から5個のワークピースについての測定により決定される。
【0025】
ワークピースは、主として、金属材料製の機械部品及びギヤ機構、例えば、28Cr4(ASTM5130による)、16MnCr5、18CrNi8及び18CrNiMo7−6などの合金鋼製の中空ホイール、ギヤホイール、シャフト又は噴射構成部品である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
ここで本発明を、図を参照して、以下により詳細に説明する。
【図1a】2つの発熱体とワークピースの配置を示す図である。
【図1b】ワークピースの放射加熱を示す図である。
【図2】ワークピースを置いた荷台を示す図である。
【図3】垂直可動冷却室を有する硬化装置を示す図である。
【図3A】移動室を有する装置を示す図である。
【図4】固定冷却室及び中央ロック室を有する硬化装置を示す図である。
【図5A】中央ロック室を有する装置のための移動システムを示す図である。
【図5B】中央ロック室を有する装置のための移動システムを示す図である。
【図6】垂直に配置した2つの発熱体の間にある複数のワークピースを示す図である。
【図7】ワークピースの加熱に関する測定データを示す図である。
【図8】ワークピースの硬度プロファイルに関する測定データを示す図である。
【図9】ワークピースのコア硬度に関する測定データを示す図である。
【図10】ワークピースの表面炭素に関する測定データを示す図である。
【図11】ワークピースの楕円率に関する測定データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1aは、2つの発熱体(21、22)を有する、ワークピース6を加熱するための配置を示す。ワークピース6は格子状の荷台の形態にあるラック5上に置かれる。発熱体(21、22)は、荷台5又はワークピース6に対して、発熱体(21、22)が発する放射(図1中で矢印8により表される)が、種々の空間方向からワークピース6の表面上に投射される様式で配置される。発熱体(21、22)は、荷台5の両側に、互いに向かい合うように配置されることが好ましい。発熱体(21、22)の配置は、各ワークピース6の表面の30から100%が直接熱放射8に曝されるように、すなわち、発熱体(21、22)の表面と視覚的に直接接するように選択される。本発明の適切な発展において、発熱体(21、22)は、ワークピース6に対して、ワークピース6の表面の一点(9、9’)に投射される熱放射8により照らされる平均の立体角が0.5πから2πであるように、形成されて配置される。各ワークピース6の表面の30から100%が熱放射8により平均立体角0.5πから2πで照らされるこの構成により、ワークピース6を急速に加熱することが可能になる。図1bは、ワークピース6の表面上の点9を照射する2πの大きさの最大立体角Ωを示す斜視図である。図1aから、ワークピース6の表面の一部の領域が荷台5により覆い隠されて、発熱体(21、22)と視覚的な直接接触を有しないことがわかる。ワークピース6の表面が凹面の形態を有する領域にも同じことがいえる。上記の表面領域はワークピース6内の熱伝導により間接的に加熱される。本発明により、各ワークピースの表面の少なくとも30%が発熱体(21、22)の1つと視覚的に直接接触していれば、ワークピース6の急速な加熱が保証される。
【0028】
発熱体(21、22)は、電力で作動する「能動的放射ヒータ」であることが好ましい。しかしながら、本発明は、「受動的放射ヒータ」、例えば、浸炭室内に配置された放射ヒータにより1000℃を超える、特に1400℃を超える高温に加熱された浸炭室壁も備える。浸炭室壁は、硬化すべきワークピースの熱容量の数倍の熱容量を有することが好ましい。これは、ワークピースの装填と除去の間に浸炭室の温度が僅かしか低下しないことを保証する。本発明による効果は、放射電熱器によっても、放射ヒータにより加熱された浸炭室壁と同様に達成される。
【0029】
図2は、格子状の荷台5の上にある、例えばギヤホイールであるワークピース6の本発明による単層配置を示す斜視図である。荷台5の対称横断面7において、及び対称横断面7に対して垂直な面法線7’に関して測定された、格子に対する開放面積の比は、ここで及び以下の文中において開放比と称し、本発明によれば60%を超え、好ましくは70%を超え、特に80%を超える。好都合には、荷台5は炭素繊維強化炭素(CFC)からなり、その結果、高い機械的及び熱的安定性を有する。
【0030】
図3に模式的に示した本発明による装置100は、垂直可動冷却室190及び互いに上下に垂直に配置した4つの浸炭室(110、120、130、140)を備える。冷却室190及び各々の浸炭室(110、120、130、140)は、真空ポンプ又は真空ポンプスタンド(図3には示していない)に接続している。真空ポンプにより、各室(190、110、120、130、140)は、他室と独立に、100mbar未満、好ましくは20mbar未満の圧力に排気することができる。
【0031】
それに加えて、冷却室190は、ヘリウム又は窒素などの冷却ガスのための圧力容器(図3には示していない)に、ガス配管を通して接続している。冷却ガスは、圧力容器中で2から25barの圧力に保たれる。圧力を発生させるために、圧力容器は、コンプレッサ又は高圧ガス供給源に既知の様式で接続している。圧力容器からの冷却室190へのガス配管は、調節弁を備える。冷却室190に通気又はそれを排気するために、調節弁を閉じる位置に動かして、冷却ガスが圧力容器から冷却室190中に流れ込まないようにする。
【0032】
各々の浸炭室(110、120、130、140)は、アセチレンなどの炭素含有ガスのための容器(図3には示していない)に、専用のガス配管を通して接続している。場合により、各々の浸炭室は、窒素含有ガスのためのさらなる容器に接続している。単数又は複数の該容器から浸炭室(110、120、130、140)へのガス配管は、それぞれの浸炭室(110、120、130、140)に供給されるガス流を精密に制御するために、調節弁、好ましくは質量流量制御器(MFC)を備える。
【0033】
さらに、各々の浸炭室(110、120、130、140)は、2つの発熱体(21、22)及び荷台5のための置場又は支え(図3には示していない)も備える。発熱体(21、22)は、電気的に作動し、好ましくは広大な形態を有し、グラファイト又は炭素繊維強化炭素(CFC)などの材料からなる。特に、発熱体(21、22)は、曲がりくねった大面積のヒータの形態にある(図6参照)。
【0034】
冷却室190は、2つの対向する端に第1及び第2の真空ゲートバルブ191及び192を備える。真空ゲートバルブ191及び/又は192が開いているときは、ワークピース6を載せた荷台5を、冷却室190中に導入し又はそこから取り出すことができる。荷台5を移動又は操作するために、冷却室190は、特にプログラム可能な論理制御器(PLC)と連結した、自動化された移動システム153を備える。冷却室190は、垂直リフト装置160の支持台上に取り付けられる。リフト装置160により、冷却室190は、各々の浸炭室(110、120、130、140)の前に位置することができる。各々の浸炭室(110、120、130、140)は、真空ゲートバルブ(111、121、131、141)を備える。冷却室190及び浸炭室(110、120、130、140)は、冷却室190が浸炭室(110、120、130、140)のうちの1つの前に位置するときに、それらが、真空気密様式で互いに接続し得る様式で設計されている。そのような連結に適した真空構成部品(図3には示していない)は、当業者に知られており、市販もされている。図3は、例として、冷却室190と浸炭室120との間の真空気密連結を示す。この場合、冷却室190及び浸炭室120の真空ゲートバルブ192及び121を、これらの室のうちの1つの真空が破られることなく、同時に開くことができる。それ故、本発明による真空技法を用いる室(190、110、120、130、140)の構成により、ワークピース6を載せた荷台5を、浸炭室(110、120、130、140)と冷却室190との間で、真空を破らずに、後方及び前方へ移動することが可能になる。
【0035】
図3Aは、冷却室195及び移動室196を備える、本発明による装置の有利な態様100Aを示す。移動室196は、冷却室195の、浸炭室(110、120、130、140)に向かい合う側に取り付けられており、水平移動システム154を受け取る役目を果たす。移動室196中に配置されているので、移動システム154は、冷却室195が作動状態であるかにかかわりなく、浸炭室(110、120、130、140)の1つに、ワークピース6を載せた荷台5を装荷するのに利用できる。移動システム154は、両方向に水平移動可能であり、それ故、荷台5は、冷却室195と各々の浸炭室(110、120、130、140)との間を移動することができる。それに加えて、「新しい(fresh)」ワークピース6、すなわち硬化すべきワークピース6、を載せた荷台5を待機させるための置場(図3Aには示していない)が、装置100Aにおいて一番上の浸炭室140の上に設けられる。真空気密分離のために、真空ゲートバルブ197が、冷却室195と移動室196との間に配置されている。移動室196は、浸炭室(110、120、130、140)に向かい合う端部に開口部を有し、その端部は、浸炭室(110、120、130、140)に真空気密様式で接続することができる。そのために、開口部の縁は円周の真空シール198を備える。例えばゴムからなる真空シール198は、移動室196を浸炭室(110、120、130、140)の1つにドッキングする役目を果たす。移動室196は、冷却室195及び各々の浸炭室(110、120、130、140)と同様に、専用の真空ポンプ(図3Aには示していない)又は真空ポンプスタンドに接続している。したがって、移動室196は、冷却室195と浸炭室(110、120、130、140)との間の真空封止として使用することができる。リフト装置160により、移動室196は、冷却室195と一緒に垂直方向に移動して、各々の浸炭室(110、120、130、140)の前に位置することができる。浸炭室(110、120、130、140)にドッキングするために、移動室196及び冷却室195は、水平に配置した直線駆動機構(図3Aには示していない)上に取り付けられている。水平直線駆動機構は、垂直リフト装置160の支持台上にその一部が取り付けられている。移動室196を備える上記の態様100Aは、ALD Vacuum Technologies AGからのModulThermタイプの設備の概念に対応する。
【0036】
各々の浸炭室(110、120、130、140)は、電気的に加熱できる。加熱は、各々の浸炭室(110、120、130、140)の底面側及び上面側にいずれの場合にも互いに向かい合うように配置された、広大な形態を有する2つの電気的に作動する発熱体(21、22)によりもたらされることが好ましい。浸炭室(110、120、130、140)の壁は金属材料、特に鋼からなり、適切ならば二重壁形態を有し、水などの冷却流体のための配管を備える。浸炭室(110、120、130、140)の壁の室の内部に面する側には、グラファイトフェルトなどの断熱材料が張られている(図3には示していない)。本発明の特に好ましい態様において、浸炭室(110、120、130、140)の壁は、内側に、鋼又はグラファイトなどの蓄熱材料をさらに装備している。断熱材料に対する蓄熱材料の厚さの比又は質量比(例えば、グラファイトフェルトの質量占有率(kg/m2)に対するグラファイトの質量占有率(kg/m2))を適当に選択することにより、浸炭室(110、120、130、140)の熱容量及び熱エネルギー損失を指定した値に適合させることができる。その結果、熱容量の大きい厚いグラファイト板を使用することにより、ワークピース6を浸炭室(110、120、130、140)に導入したりそこから取り出したりする間の温度低下を減少させることが可能である。これにより、加熱時間を短縮して装置の処理能力又は生産性を増加させることが可能になる。そのように蓄熱内張りを備えた浸炭室(110、120、130、140)は、ワークピース6及び/又は周囲環境に放射された「エネルギー損失」が、浸炭室(110、120、130、140)中で任意の望ましい位置に配置された電熱器により供給される、空洞熱放射体の様式で作動することができる。この態様において、ワークピース6は、浸炭室(110、120、130、140)の「受動的」内張りが発する放射により加熱される。
【0037】
図4は、互いに垂直に配置する4つの浸炭室(210、220、230、240)に、ロック室280を通じて接続する固定冷却室290を備える特に好ましい装置200を示す。冷却室290は、ワークピース6を載せた荷台5を導入し、取り出すための第1及び第2のロック291及び292を備える。垂直可動支持台250の付いたリフト装置260がロック室290中に備えられる。水平の両方向に移動可能な自動移動システム253が支持台250に取り付けられている。移動システム253と連結している垂直リフト装置260は、ワークピース6を載せた荷台5を、冷却室290と浸炭室(210、220、230、240)との間で移動する役目を果たす。
【0038】
ロック室280及び冷却室290は、真空ポンプ又は真空ポンプスタンド(図4に示していない)に接続していて、互いに独立に100mbar未満の圧力に排気することができる。場合により、それに加えて、各々の浸炭室(210、220、230、240)は、真空ポンプ又は真空ポンプスタンドに接続していて、他室と独立に排気することができる。図3に示した装置100に類似して、冷却室290は、冷却ガス、例えばヘリウム又は窒素のための圧力容器に接続しており、各々の浸炭室(210、220、230、240)は、アセチレンなどの炭素含有ガスのための容器及び/又は窒素含有ガスのための容器に接続している。
【0039】
各々の浸炭室(210、220、230、240)は、可動ゲートバルブ(211、221、231、241)を備え、それは、主として、熱の閉じ込めのため、及び浸炭室(210、220、230、240)中の熱エネルギー保存のために役立つ。断熱ゲートバルブ(211、221、231、241)は、ワークピースを浸炭室(210、220、230、240)中に導入し及びそこから取り出すためにのみ開かれる。場合により、断熱ゲートバルブ(211、221、231、241)は、浸炭室(210、220、230、240)をロック室280に対して真空気密様式で閉鎖することができるように、真空ゲートバルブの形態にすることもできる。
【0040】
図3に示した装置100に類似して、装置200の浸炭室(210、220、230、240)は、グラファイトなどの蓄熱材料、及びグラファイトフェルトなどの断熱材料の多層張りを備える。
【0041】
装置200の適切な発展においては、ロック室280は荷台5のための置場を備え、それにより、ワークピース6を載せた荷台5を、浸炭室が空になり開放されたら直ぐにそれを浸炭室(210、220、230、240)のうちの一つに装填するべく用意しておくために、「待機」させることが可能になる。この「一時置場」は、浸炭室(210、220、230、240)の垂直上方に配置することが好ましい。この一時置場により、荷台を浸炭するためのサイクル時間を減少させることができ、それ故、装置200で達成し得る処理能力又は生産性を向上することができる。
【0042】
図3及び4に示した装置100及び200は、組み立てユニットの設計を有し、それ故、生産性を向上させるために、さらに浸炭室を追加することが可能である。下に挙げたリスト:
‐ 荷台の冷却室中への導入、
‐ 冷却室のポンプによる排気、
‐ 空の浸炭室中への移動、
場合により一時置場における一時保管、
‐ 浸炭及び拡散、
‐ 冷却室中への移動、
‐ 冷却、
‐ 冷却室から荷台の取り出し、
の個々の方法の工程の期間に応じて、図3及び4に示した4室でなく6室の浸炭室を使用することが適切であることが分かるだろう。それと反対に、要求される生産能力が低ければ、初期投資のコストを低減させるために2室又は3室の浸炭室だけ使用することも可能である。
【0043】
図5A〜5Bに、図4に描いたロック室280を備える装置200のための、本発明による好ましい移動装置(260、253)の模式的正面図及び側面図を示す。
【0044】
移動システム(260、253)は、上方及び下方のガイド(261、263、261’、263’)及びチェーン(262、262’)の付いた2つの垂直に配置したチェーン駆動部を備える。チェーン262’は、水平なプラットホーム254に接続している。プラットホーム254は、1つ又は2つの垂直な支え265に沿って動かされる。荷台5を受け取るための水平可動伸縮自在フォーク(255、256)は、プラットホーム254の上に取り付けられている。伸縮自在フォーク(255、256)は、チェーン262に連結しているギヤ機構251により駆動される。チェーン262とギヤ機構251との間の連結は、複数のガイドによりもたらされる。
【0045】
好ましくは、ギヤホイールであるガイド263及び263’は、シャフト264を通じてロック室280の外側に配置されたモータ(図5A〜5Bに示していない)に連結している。シャフト264を通すために、ロック室280の壁には真空気密回転貫通部が設けられている。プラットホーム254を垂直に動かすために、チェーン駆動部(261、262、263)及び(261’、262’、263’)を同期させて作動し、その結果、チェーン262とギヤ機構251との間の設定は不変のままであり且つ伸縮自在フォーク(255、256)はその水平な姿勢を維持する。これで伸縮自在フォーク(255、256)と浸炭室などの装置200の他の部品との衝突が防止される。プラットホーム254が固定された垂直な位置にあれば、チェーン262はギヤホイール263を通じて駆動し、シャフト264はロック室280の外側に配置されたモータにより作動するので、伸縮自在フォーク(255、256)は水平に動く。
【0046】
図6は、ワークピース61、例えばギヤシャフトが、垂直な層又列で浸炭室中の発熱体21と22との間に配置されている、本発明のさらなる態様の部分斜視図を示す。ワークピース61は、それらの位置にラック(図6に示していない)により保たれる。この場合、ラックは、支持ブラケットを有する枠の形態又はラックに載せるためのスパイク若しくはシャフトを押し込むための穴などの機械的保持装置を有する支持板の形態にある。図6による垂直な配置をしている、ワークピースを硬化するための本発明による装置は、図3及び4に示した装置に類似して設計され、それらとは、浸炭室が垂直に上下ではなくて互いに水平な方向に並んで配置されているという点でのみ異なる。このことにより、冷却室は、水平に可動であるように配置され、ロック室及び移動装置は水平に配置される。本発明は、図3及び4に示したような、ワークピースの水平な取り付け(例えば、荷台上で)、及び図6に示したような垂直な取り付け又は懸垂を両方とも包含する。これらの態様は両方とも、ワークピースが1層又は1列に、すなわち加熱装置中に2D装荷様式で配置され、その結果各ワークピースの表面の30から100%が加熱装置により発せられる熱放射に直接曝されるという、本発明に必須の共通の特徴を有する。
【0047】
図6に示した発熱体(21、22)は、グラファイト又はCFC製の曲がりくねった大面積のヒータの形態である。このタイプの大面積ヒータ(21、22)は、先行技術において知られており、種々のメーカーから市販されている。
【0048】
本発明の発展において、冷却室は、機械的な固定装置及び/又は冷却ガスのためのフローガイド(flow guide)機構を備える。固定装置は、ワークピースの形状に適合して、本発明によるこの場合には、冷却室中で冷却すべきワークピースの上に配置されている。ガス導入の開始前に、ワークピースを載せた荷台を固定装置に対して下から決められた力で押すか、又はガス導入の開始前に固定装置をワークピースに対して上から決められた力で押すかのいずれかを行う。固定装置の助けで、冷却後のワークピースの平面性はかなり改善され、それ故、ワークピースの歪みはかなり減少する。
【0049】
それに加えて、冷却室は、ワークピースを低歪みで冷却するために、フローガイド機構を備えることができる。この場合、このガイド機構は、冷却室中で、冷却すべきワークピースの上に配置されて、ガスが構成部品上に高い局所速度で投射され、それに加えて、冷却が非常に均一にもたらされるような様式で形成される。可能な最も均一な冷却をもたらすために、この場合は、構成部品の壁厚の大きい区域を高い流速に曝し、構成部品の壁厚の小さい区域を低い流速に曝す。さらに、ワークピースに冷却ガスを上と横の両方から系統的に当てるように、ガイド機構を「3次元的に」設計することが可能である。この目的のためには、ガス導入の開始前に、ワークピースを下から持ち上げてガイド機構中に入れなければならいか、又はガイド機構を上からワークピース上に降ろさなければならないかのいずれかである。
【0050】
フローガイド機構の助けで、ワークピースの冷却速度はかなり増加する。これで、合金化不十分な材料で作製されたワークピースを硬化することが可能になる。それに加えて、急冷をより低いガス圧で実施することができるので、ガス消費コストが減少する。さらに、冷却がより均一にもたらされる結果、ワークピースに生じる応力が小さくなるため、ワークピースの歪みがかなり減少する。
【0051】
本発明による単層熱処理(2D装荷)であるという理由だけで、固定装置及び/又はフローガイド機構を使用することが可能になる。多層3D装荷を用いる先行技術では、これらの選択肢を使用することは可能でない。
【0052】
温度及び炭素含有率を測定する方法
当業者は、金属のワークピースの温度を測定する方法に精通している。本発明の関係では、ワークピース表面の温度は、熱電対、高温計及び熱撮像カメラにより測定した。各熱電対は、熱電対の全センサ面積がワークピース表面と接触するようにワークピースにワイヤで固定した。センサとワークピースとを良好に接触させるために、構成部品表面に小さい溝を作る。熱電対及びさらに固定ワイヤも、熱容量はワークピースに比較して無視し得る。
【0053】
ワークピースのコアの温度も熱電対によって同様に測定した。この目的で、0.5から1.5mmの直径を有する盲穴を、測定すべきワークピースの位置に穿孔して、熱電対を盲穴に挿入した。ワークピースのコアの温度を使用して、具体的な冷却速度を[kJ・kg−1・s−1]の単位で決定する。この目的で、ワークピースの測定温度Tと比熱容量C(単位kJ・kg−1・K−1)との積を、800から500℃の範囲で、以下の関係式、
【数1】
により積分し、冷却するのに要する時間で除す。鋼の場合、比熱容量は、800℃の温度において約0.8kJ・kg−1・K−1であり、735℃付近の狭い温度範囲においてこの値の倍に増大する。
【0054】
ワークピースと一緒に硬化装置中に、すなわち冷却室中及び浸炭室中の両方に導入した熱電対からのシグナルを、可搬式の断熱電子測定値検出器(「Furnace Tracker」)により記録した。
【0055】
該熱電対を、浸炭室中におけるワークピースの加熱中及びさらに冷却室中における冷却中の温度プロファイルを決定するために使用した。
【0056】
表面炭素含有率を決定するために、ワークピース表面を10°という小さい角度で約1000μmの深さまで研削し、研削した表面を、注意深く清浄化した後、光学的分光分析、二次イオン質量分析法(SIMS)、さらに電子プローブミクロ分析(EPMA)により、10μm未満の位置分解能、すなわち3.5μm(=10μm×sin(10°))未満の深さ分解能で測定した。SIMSにより炭素について達成される化学的検出限界は、1ppm未満の領域内である。
【実施例】
【0057】
例1:
20MoCr4の材料で作製された、外径54mm、内径30mm及び高さ35mmの太陽歯車を使用して、各8個で5列、すなわち40個で全重量12.5kgの1層での本発明による2D装荷、及び各8個の各5列で8層、すなわち320個で全重量100kgの3D装荷にまとめた。1層用の装填ラックとして、CFC製で450mm×600mmの寸法を有する構造的に同一の網状格子を、2D装荷及び3D装荷両方のために使用した。
【0058】
硬化工程の結果について、以下の目標値を予め規定した:
‐ 610HVの限界硬度を有する0.3から0.5mmの表面硬化深さ、
‐ 端面における670HVの表面硬度、及び
‐ 歯底円における歯の中心において280HV10を超えるコア硬度。
【0059】
図7は、本発明(2D装荷、単層)及び従来法(3D装荷、多層)により硬化したワークピースの温度プロファイルの比較を示す。温度は、両方の場合ともに、それぞれの装荷の中央及び端部に位置したワークピースに取り付けた複数の熱電対により測定する。熱電対により測定したデータは、Furnace Trackerにより記録した。本発明による2D装荷の場合、温度は急速に上昇し、装荷の中央に位置するワークピースと装荷の端部に位置するワークピースとの間で、温度プロファイルにおける識別できる差はない。それと対照的に、3D装荷の場合には、装荷の中央に位置するワークピースの温度プロファイルは、装荷の端部に位置するワークピースの温度プロファイルとかなり異なる。それに加えて、2D装荷におけるワークピースの温度は、3D装荷の端部におけるワークピースの温度より急速に上昇する。この差は、3D装荷の外側に置かれたワークピースが内側に置かれたワークピースに対して、放出し又は取られた放射エネルギーの結果である。3D装荷における全てのワークピース、特に内側に置かれたワークピースを1050℃という温度に加熱するためには、約130分という時間が必要になる。対照的に、2D装荷の場合に要する加熱は約15分である。
【0060】
図8は、ワークピースの表面からの距離の関数としての硬度のプロファイルを示す。測定曲線を参照して、表面硬化深さ(CHD)を見ることが可能である。CHDは、DIN ISO2639(2002)にしたがって決定される。この目的のために、試験すべき構成部品を、熱の発生を避けて、表面と垂直に切断して分離する。表面からの距離が増したところで、次にビッカース硬度HV1を、一般的に9.8Nの試験負荷で測定する。表面から硬度が限界硬度(Hs、この場合には610HV1)に相当する点までの距離をCHDと称する。
【0061】
CHD値の変動(最大測定値と最小測定値との間の差)は2D装荷において約0.06mmであり、3D装荷の変動である約0.12mmよりも有意に小さいことが、図8からわかる。
【0062】
図9は、コア硬度についての測定値の比較を示す。コア硬度を決定するために、硬化されたワークピース(ここでは、上記の太陽歯車)を、熱の発生を避けて、対称軸に対して垂直に切断分離する。分離された表面を研磨して磨く。次に、ビッカース硬度[HV10]は歯根(=歯元隅肉部間の中央)のコアで決定される。この測定は、DIN EN ISO6507−1(金属材料−ビッカース硬度試験−第1部:試験方法ISO6507−1:2005、ドイツ版EN ISO6507−1:2005)にしたがって行う。図9から、2D装荷におけるコア硬度の変動は、3D装荷におけるよりも有意に小さいことを見ることができる。
【0063】
図10は、本発明による2D装荷と従来法で浸炭した3D装荷の表面炭素含有率の変動の比較を示す。表面炭素含有率は、研磨した表面で、上記のように、分光分析、SIMS及びEPMAによる炭素シグナルを、深さ範囲0から100μmにわたって積分することにより決定した。
【0064】
例2:
28Cr4の材料で作製した、外径140mm、高さ28mm及び98歯の中空ホイールを使用して、8個の1層で全重量6.5kgの本発明による2D装荷、及び各8個の10層、すなわち80個で全重量が65kgの3D装荷にまとめた。2D装荷及び3D装荷両方のために、1層のための装填ラックとして、CFC製の450mm×600mmの寸法を有する構造的に同一の網状格子を使用した。
【0065】
図11は、2D装荷による8個の中空ホイール及び3D装荷による8個の中空ホイールの熱的歪み又は楕円率における変化についての測定結果を示す。この点において、2D装荷の8個の中空ホイール及び3D装荷の8個の中空ホイールの位置は、2D装荷及び3D装荷の面積又は体積全体にわたって均一に分布させた。楕円率は、浸炭の前及び後に、中空ホイールの外円周で3D座標測定系により測定し、浸炭の前と後で楕円率の値における差が生じた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースを硬化する方法、該方法を実施するための装置及び該方法により硬化されたワークピースに関する。本発明による方法は、以下の、
(a)ワークピースを950から1200℃の温度に加熱する工程と、
(b)ワークピースを、950から1200℃の温度及び100mbar未満の圧力で、炭素含有ガス及び/又は窒素含有ガスに曝す工程と、
(c)ワークピースを、100mbar未満の圧力の雰囲気中で950から1200℃の温度に保つ工程と、
(d)適切ならば、工程(b)及び(c)を1回又は数回繰り返す工程と、
(e)ワークピースを冷却する工程と
を含む。
【0002】
本発明による装置は、2つ以上の浸炭室、少なくとも1つの冷却室及びワークピースのためのラックを操作するための移動システムを備え、各々の浸炭室は1つ以上の真空ゲートバルブ又は断熱ゲートバルブを通じて冷却室に接続されることができ、各浸炭室はラックの置場及びそれに加えて発熱体も有する。
【0003】
ワークピースは、28Cr4(ASTM5130による)、16MnCr5、18CrNi8及び18CrNiMo7−6などの合金鋼製の、主として金属材料製の機械部品及びギヤ機構、例えば中空ホイール(hollow wheel)、ギヤホイール、シャフト又は噴射構成部品である。
【背景技術】
【0004】
浸炭することによりワークピースを硬化する方法及び装置は、先行技術において知られている。
【0005】
DE10322255A1は、排気することができる処理室内で、炭素供与体ガスを用いて930℃を超える温度で鋼部品を浸炭する方法であって、加熱段階中及び拡散段階中の両方で、アンモニアなどの窒素放出ガスが、処理室中に供給される方法を開示している。
【0006】
DE10359554B4には、真空炉中で金属のワークピースを浸炭する方法が記載されている。該方法においては、炉雰囲気は浸炭工程の条件下で開裂して純炭素を放出する炭素キャリアを含む。炭素キャリアはパルス方式で供給され、各浸炭はパルスに次いで拡散のために一時中断される。浸炭パルス中に供給されるべき炭化水素の量は、材料のそのときの容量に適合するように変えられる。その目的で、各浸炭パルスの開始時におけるアセチレンの体積流速は高くしておき、炉雰囲気又はオフガス中の主成分である水素及び/又はアセチレン及び/又は合計炭素の濃度を測定し、それによりアセチレンの体積流速を適切に低下させる。
【0007】
DE102006048434A1は、熱処理炉中の保護ガス又は処理雰囲気中で実施される浸炭方法に関し、該方法においては、アルコール及び二酸化炭素が熱処理炉中に導入されて化学的に反応する。エタノール及び二酸化炭素は、熱処理炉中に導入され、その際、導入されるエタノールと導入される二酸化炭素との比は、好ましくは1:0.96である。そのような様式で作られる熱処理雰囲気は、金属材料、例えば鉄材料の浸炭する及び浸炭しないアニーリングに特に適している。
【0008】
DE102007038991A1は、ワークピースの熱処理のための、特に金属のワークピースのガス浸炭のための回転炉床炉であって、炉室、炉室と底部で境界をつける回転炉床、炉室を側面で囲む外壁及び炉室と頂部で境界をつける覆い板を備え、炉室が回転板の回転軸に対して放射状に伸びた内壁で少なくとも2つの処理区域にさらに分割されている炉を記載している。ワークピースを処理するために、回転板の回転軸に対して放射状に配向し、ワークピース又はワークピースの搬送体を受け取るように意図された、複数の放射状に装填できるラックが回転板上に配置しており、各内壁はラックに相補形の様式に形成された通路を有し、それを通じてラックは、回転板が円周方向に回転するときに、それぞれの内壁を通じて導かれ得る。
【0009】
DE102007047074A1には、ワークピースが850から1050℃の範囲内の温度でガス状炭化水素を含む雰囲気中に保たれる、鋼のワークピース、特に外部表面及び内部表面を有するワークピースを浸炭する方法が開示されている。少なくとも2種の異なったガス状炭化水素が使用され、及び/又はワークピースは、浸炭パルスの間は、ガス状炭化水素を含む雰囲気中に、拡散段階の間は炭化水素を含まない雰囲気中に、交互に保たれる。
【0010】
先行技術で知られている方法は、以下の、
‐ 浸炭によりワークピースを硬化するために必要とされる温度が850℃を超え、通常45分を超える時間が加熱のために必要になる。ワークピースの満足な生産性又は高い処理量を達成するために、浸炭は、装荷ラック中で上下に重ねて積まれた複数の層に配置された多数のワークピースでバッチ方式により達成される。例として、10枚の網棚を有する装荷ラックには28Cr4合金(ASTM5130による)製の合計160個の中空ホイールが積み込まれ、10枚の各網棚の上に、16個の中空ホイールが互いに横に並べて配置される。典型的な装荷材料又は装荷ラックの寸法は、3空間方向の各々に400mmから2000mmまでの範囲内である。ここで及び以下の文において、この従来タイプの装荷を「3D装荷」という用語によっても表す。生産過程において、浸炭は実質的にひと続きの機械加工(いわゆるソフト機械加工)の後に行う。この目的で、準備は緩衝領域でなされ、ソフト機械加工されたワークピースは、そこで、浸炭のための3D装荷が完了するまで集められる。3D装荷の浸炭は、加熱炉及び緩衝領域両方のために相当の面積をとる。それに加えて、それは、機械加工の準連続的な流れを中断して、物流のための追加の費用をもたらす。したがって、この目的に適したロボットシステムは技術的及び経済的理由で使用できないので、3D装荷の緩衝はワークピースの人手による取り扱いが必要になる、
‐ 3D装荷の浸炭は、ワークピース及びさらに周囲の生産ラインも汚染し得る炭素含有残留物の生成の増加をもたらす、
‐ 3D装荷で浸炭したワークピースは、一般的に、複雑な再機械加工(いわゆるハード機械加工)が必要になる相当な熱的歪みを経験する、
‐ 3D装荷で浸炭したワークピースは、浸炭深さ、表面炭素含有率及びコア硬度などの特性に大きい変動を有し、したがって、それにより直接又は間接に影響される特徴的な品質価値、例えば浸炭した部品で構成される機械的ギヤ機構の滑り又は摩擦損失を改善することは不可能である
という不利点の1つ以上を有する。
【発明の概要】
【0011】
上記の不利点が大きく回避される、ワークピースを硬化する生産性の高い方法を提供することが本発明の目的である。
【0012】
この目的は、以下の、
(a)ワークピースを950から1200℃の温度に加熱する工程であって、各ワークピースの表面の30から100%が、加熱装置の直接熱放射により加熱される工程と、
(b)ワークピースを、950から1200℃の温度及び100mbar未満の圧力で、炭素含有ガス及び/又は窒素含有ガスに曝す工程と、
(c)ワークピースを、100mbar未満の圧力の雰囲気中で950から1200℃の温度に保つ工程と、
(d)適切ならば、工程(b)及び(c)を1回又は数回繰り返す工程と、
(e)ワークピースを冷却する工程と
を含む方法により達成される。
【0013】
本発明による方法の工程(a)においては、ワークピースを装置中の1つの層又は1つの列において互いに並べて配置することによりワークピースを加熱する。このタイプの配置は、ここで及び以下の文中で、「2D装荷」という用語により表される。
【0014】
さらに、本発明による方法の構成は:
‐ 工程(a)において、各々のワークピースを、2つ以上の空間方向から熱放射により加熱すること、
‐ 工程(a)において、各々のワークピースの表面付近の区域を、35から135℃/分、好ましくは50から110℃/分、特に50から75℃/分の速度で加熱すること、
‐ 工程(a)において、各々のワークピースのコアを、18から120℃/分の速度で加熱すること、
‐ 工程(e)において、ワークピースを、800から500℃の温度範囲で2から20kJ・kg−1・s−1という特定の冷却速度で冷却すること、
‐ 工程(b)において、ワークピースをアセチレン(C2H2)及び/又はアンモニア(NH3)に曝すこと、
‐ 工程(e)において、ワークピースを、ガス、好ましくは窒素で冷却すること、
‐ ワークピースを、2から20bar、好ましくは4から8bar、特に5から7barの圧力で窒素によって冷却すること、
‐ 工程(e)において、ワークピースの表面を、900から1200℃の範囲内の温度から300℃の温度に、40から100秒以内で冷却すること、及び
‐ 1個のワークピースを基準として、(a)から(e)の工程を実施するためのサイクル時間が、5から120秒、好ましくは5から60秒、特に5から40秒であること
を特徴とする。
【0015】
内燃機関用の噴射ノズル又は質量が50から300gのネジボルトのような小さいワークピース又は構成部品を本発明による方法により硬化するために、約50から400個の構成部品を、バスケットとして形成されたラック、又は構成部品を整然と配置するための特製のラック中で1から3層の台の形態で配置する。バスケット中に多数のワークピースが置かれた結果として、各ワークピースについて工程(a)から(e)を実施するのに、20から5秒の範囲内の短いサイクル時間を達成することが可能である。ワークピースのかさ密度は、この場合、各ワークピースの表面の少なくとも30%が加熱装置の直接熱放射により加熱されるように選択する。
【0016】
特に、本発明による方法は、以下の、
(i)ワークピースをラック中/上に単層で配置する工程と、
(ii)ワークピースを載せたラックを冷却室に導入して、100mbar未満の圧力に排気する工程と、
(iii)ラックを浸炭室中に移動する工程であって、ラックを、適切ならば浸炭室中に導入する前に、一時置場に一時的に保管する工程と、
(iv)ワークピースを熱放射により950から1200℃の温度に加熱する工程であって、各ワークピースの表面の30から100%が浸炭室の直接熱放射により加熱される工程と、
(v)ワークピースを、950から1200℃の温度及び100mbar未満の圧力で炭素含有ガス及び/又は窒素含有ガスに曝す工程と、
(vi)ワークピースを、100mbar未満の圧力の雰囲気中で950から1200℃の温度に保つ工程と、
(vii)適切ならば、工程(iv)及び(v)を1回又は数回繰り返す工程と、
(viii)ワークピースを載せたラックを冷却室中に移動する工程と、
(ix)ワークピースを、ガス、好ましくは窒素で冷却する工程と、
(x)ワークピースを載せたラックを冷却室から取り出す工程と
を含む方法により達成される。
【0017】
上記の方法にしたがってワークピースを硬化する装置を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0018】
この目的は、2つ以上の浸炭室、少なくとも1つの冷却室及びワークピースのためのラックを操作するための移動システムを備え、冷却室は各浸炭室と1つ以上の真空ゲートバルブを通じて接続することができ、各浸炭室は、ラックのための置場及び少なくとも2つの発熱体を有し、発熱体から発せられた放射が各々のワークピースの表面を平均立体角0.5πから2πで照射するような様式で発熱体が配置される装置、によって達成される。
【0019】
別の実施形態において、本発明による装置は、2つ以上の浸炭室、少なくとも1つの冷却室、浸炭室および冷却室の間に配置されたロック室、及びワークピースのためのラックを操作するための移動システムを備え、冷却室は真空ゲートバルブを通じてロック室に接続することができ、各浸炭室は断熱ゲートバルブを通じてロック室に接続することができ、各浸炭室は、ラックのための置場及び少なくとも2つの発熱体を有し、発熱体から発せられた放射が各々のワークピースの表面を平均立体角0.5πから2πで照射するような様式で発熱体が配置される装置、を含む。
【0020】
本発明による装置の発展は、
‐ 断熱ゲートバルブが真空ゲートバルブの形態であり、
‐ 冷却室がワークピースを導入するため及び取り出すために2つの真空ゲートバルブを備え、
‐ 発熱体が表面エミッタの形態であり、
‐ 発熱体がグラファイト又は炭素繊維強化炭素(CFC)からなり、
‐ ラックが格子状の荷台の形態であり、
‐ ラックがグラファイト又は炭素繊維強化炭素(CFC)からなり、及び
‐ 移動システムが、上方及び下方のガイドの付いた垂直に配置されたチェーン駆動部及びチェーン並びにさらに荷台を受けるための水平可動伸縮自在フォークを備え、伸縮自在フォークはギヤ機構を通じてチェーンのうちの一つに連結している
ことを特徴とする。
【0021】
本発明のさらなる目的は、改善された性質を有する、特に熱的歪みが減少した硬化されたワークピースを提供することである。歪みが減少するので、再機械加工(いわゆるハード機械加工)のための費用はかなり減少する。
【0022】
この目的は、上記の方法の1つにより硬化された金属材料製のワークピースにより達成される。
【0023】
本発明によるワークピースは、
‐ 表面硬化深さ(CHD)が、公称値の±0.05mm、好ましくは±0.04mm、特に±0.03mmの範囲内にあり、該公称値が0.3から1.4mmである、
‐ 表面炭素含有率が、公称値の±0.025重量%、好ましくは±0.015重量%、特に±0.01重量%の範囲内にあり、該公称値が0.6から0.85重量%である、及び
‐ コア硬度が、公称値の±30HV、好ましくは±20HVの範囲内にあり、該公称値が280から480HVである
という事実により区別される。
【0024】
表面硬化深さ(CHD)、表面炭素含有率及びコア硬度の公称値からの偏差又は変動の範囲(すなわち、最大測定値と最小測定値との間の差)は、装荷している1から5個のワークピースについての測定により決定される。
【0025】
ワークピースは、主として、金属材料製の機械部品及びギヤ機構、例えば、28Cr4(ASTM5130による)、16MnCr5、18CrNi8及び18CrNiMo7−6などの合金鋼製の中空ホイール、ギヤホイール、シャフト又は噴射構成部品である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
ここで本発明を、図を参照して、以下により詳細に説明する。
【図1a】2つの発熱体とワークピースの配置を示す図である。
【図1b】ワークピースの放射加熱を示す図である。
【図2】ワークピースを置いた荷台を示す図である。
【図3】垂直可動冷却室を有する硬化装置を示す図である。
【図3A】移動室を有する装置を示す図である。
【図4】固定冷却室及び中央ロック室を有する硬化装置を示す図である。
【図5A】中央ロック室を有する装置のための移動システムを示す図である。
【図5B】中央ロック室を有する装置のための移動システムを示す図である。
【図6】垂直に配置した2つの発熱体の間にある複数のワークピースを示す図である。
【図7】ワークピースの加熱に関する測定データを示す図である。
【図8】ワークピースの硬度プロファイルに関する測定データを示す図である。
【図9】ワークピースのコア硬度に関する測定データを示す図である。
【図10】ワークピースの表面炭素に関する測定データを示す図である。
【図11】ワークピースの楕円率に関する測定データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1aは、2つの発熱体(21、22)を有する、ワークピース6を加熱するための配置を示す。ワークピース6は格子状の荷台の形態にあるラック5上に置かれる。発熱体(21、22)は、荷台5又はワークピース6に対して、発熱体(21、22)が発する放射(図1中で矢印8により表される)が、種々の空間方向からワークピース6の表面上に投射される様式で配置される。発熱体(21、22)は、荷台5の両側に、互いに向かい合うように配置されることが好ましい。発熱体(21、22)の配置は、各ワークピース6の表面の30から100%が直接熱放射8に曝されるように、すなわち、発熱体(21、22)の表面と視覚的に直接接するように選択される。本発明の適切な発展において、発熱体(21、22)は、ワークピース6に対して、ワークピース6の表面の一点(9、9’)に投射される熱放射8により照らされる平均の立体角が0.5πから2πであるように、形成されて配置される。各ワークピース6の表面の30から100%が熱放射8により平均立体角0.5πから2πで照らされるこの構成により、ワークピース6を急速に加熱することが可能になる。図1bは、ワークピース6の表面上の点9を照射する2πの大きさの最大立体角Ωを示す斜視図である。図1aから、ワークピース6の表面の一部の領域が荷台5により覆い隠されて、発熱体(21、22)と視覚的な直接接触を有しないことがわかる。ワークピース6の表面が凹面の形態を有する領域にも同じことがいえる。上記の表面領域はワークピース6内の熱伝導により間接的に加熱される。本発明により、各ワークピースの表面の少なくとも30%が発熱体(21、22)の1つと視覚的に直接接触していれば、ワークピース6の急速な加熱が保証される。
【0028】
発熱体(21、22)は、電力で作動する「能動的放射ヒータ」であることが好ましい。しかしながら、本発明は、「受動的放射ヒータ」、例えば、浸炭室内に配置された放射ヒータにより1000℃を超える、特に1400℃を超える高温に加熱された浸炭室壁も備える。浸炭室壁は、硬化すべきワークピースの熱容量の数倍の熱容量を有することが好ましい。これは、ワークピースの装填と除去の間に浸炭室の温度が僅かしか低下しないことを保証する。本発明による効果は、放射電熱器によっても、放射ヒータにより加熱された浸炭室壁と同様に達成される。
【0029】
図2は、格子状の荷台5の上にある、例えばギヤホイールであるワークピース6の本発明による単層配置を示す斜視図である。荷台5の対称横断面7において、及び対称横断面7に対して垂直な面法線7’に関して測定された、格子に対する開放面積の比は、ここで及び以下の文中において開放比と称し、本発明によれば60%を超え、好ましくは70%を超え、特に80%を超える。好都合には、荷台5は炭素繊維強化炭素(CFC)からなり、その結果、高い機械的及び熱的安定性を有する。
【0030】
図3に模式的に示した本発明による装置100は、垂直可動冷却室190及び互いに上下に垂直に配置した4つの浸炭室(110、120、130、140)を備える。冷却室190及び各々の浸炭室(110、120、130、140)は、真空ポンプ又は真空ポンプスタンド(図3には示していない)に接続している。真空ポンプにより、各室(190、110、120、130、140)は、他室と独立に、100mbar未満、好ましくは20mbar未満の圧力に排気することができる。
【0031】
それに加えて、冷却室190は、ヘリウム又は窒素などの冷却ガスのための圧力容器(図3には示していない)に、ガス配管を通して接続している。冷却ガスは、圧力容器中で2から25barの圧力に保たれる。圧力を発生させるために、圧力容器は、コンプレッサ又は高圧ガス供給源に既知の様式で接続している。圧力容器からの冷却室190へのガス配管は、調節弁を備える。冷却室190に通気又はそれを排気するために、調節弁を閉じる位置に動かして、冷却ガスが圧力容器から冷却室190中に流れ込まないようにする。
【0032】
各々の浸炭室(110、120、130、140)は、アセチレンなどの炭素含有ガスのための容器(図3には示していない)に、専用のガス配管を通して接続している。場合により、各々の浸炭室は、窒素含有ガスのためのさらなる容器に接続している。単数又は複数の該容器から浸炭室(110、120、130、140)へのガス配管は、それぞれの浸炭室(110、120、130、140)に供給されるガス流を精密に制御するために、調節弁、好ましくは質量流量制御器(MFC)を備える。
【0033】
さらに、各々の浸炭室(110、120、130、140)は、2つの発熱体(21、22)及び荷台5のための置場又は支え(図3には示していない)も備える。発熱体(21、22)は、電気的に作動し、好ましくは広大な形態を有し、グラファイト又は炭素繊維強化炭素(CFC)などの材料からなる。特に、発熱体(21、22)は、曲がりくねった大面積のヒータの形態にある(図6参照)。
【0034】
冷却室190は、2つの対向する端に第1及び第2の真空ゲートバルブ191及び192を備える。真空ゲートバルブ191及び/又は192が開いているときは、ワークピース6を載せた荷台5を、冷却室190中に導入し又はそこから取り出すことができる。荷台5を移動又は操作するために、冷却室190は、特にプログラム可能な論理制御器(PLC)と連結した、自動化された移動システム153を備える。冷却室190は、垂直リフト装置160の支持台上に取り付けられる。リフト装置160により、冷却室190は、各々の浸炭室(110、120、130、140)の前に位置することができる。各々の浸炭室(110、120、130、140)は、真空ゲートバルブ(111、121、131、141)を備える。冷却室190及び浸炭室(110、120、130、140)は、冷却室190が浸炭室(110、120、130、140)のうちの1つの前に位置するときに、それらが、真空気密様式で互いに接続し得る様式で設計されている。そのような連結に適した真空構成部品(図3には示していない)は、当業者に知られており、市販もされている。図3は、例として、冷却室190と浸炭室120との間の真空気密連結を示す。この場合、冷却室190及び浸炭室120の真空ゲートバルブ192及び121を、これらの室のうちの1つの真空が破られることなく、同時に開くことができる。それ故、本発明による真空技法を用いる室(190、110、120、130、140)の構成により、ワークピース6を載せた荷台5を、浸炭室(110、120、130、140)と冷却室190との間で、真空を破らずに、後方及び前方へ移動することが可能になる。
【0035】
図3Aは、冷却室195及び移動室196を備える、本発明による装置の有利な態様100Aを示す。移動室196は、冷却室195の、浸炭室(110、120、130、140)に向かい合う側に取り付けられており、水平移動システム154を受け取る役目を果たす。移動室196中に配置されているので、移動システム154は、冷却室195が作動状態であるかにかかわりなく、浸炭室(110、120、130、140)の1つに、ワークピース6を載せた荷台5を装荷するのに利用できる。移動システム154は、両方向に水平移動可能であり、それ故、荷台5は、冷却室195と各々の浸炭室(110、120、130、140)との間を移動することができる。それに加えて、「新しい(fresh)」ワークピース6、すなわち硬化すべきワークピース6、を載せた荷台5を待機させるための置場(図3Aには示していない)が、装置100Aにおいて一番上の浸炭室140の上に設けられる。真空気密分離のために、真空ゲートバルブ197が、冷却室195と移動室196との間に配置されている。移動室196は、浸炭室(110、120、130、140)に向かい合う端部に開口部を有し、その端部は、浸炭室(110、120、130、140)に真空気密様式で接続することができる。そのために、開口部の縁は円周の真空シール198を備える。例えばゴムからなる真空シール198は、移動室196を浸炭室(110、120、130、140)の1つにドッキングする役目を果たす。移動室196は、冷却室195及び各々の浸炭室(110、120、130、140)と同様に、専用の真空ポンプ(図3Aには示していない)又は真空ポンプスタンドに接続している。したがって、移動室196は、冷却室195と浸炭室(110、120、130、140)との間の真空封止として使用することができる。リフト装置160により、移動室196は、冷却室195と一緒に垂直方向に移動して、各々の浸炭室(110、120、130、140)の前に位置することができる。浸炭室(110、120、130、140)にドッキングするために、移動室196及び冷却室195は、水平に配置した直線駆動機構(図3Aには示していない)上に取り付けられている。水平直線駆動機構は、垂直リフト装置160の支持台上にその一部が取り付けられている。移動室196を備える上記の態様100Aは、ALD Vacuum Technologies AGからのModulThermタイプの設備の概念に対応する。
【0036】
各々の浸炭室(110、120、130、140)は、電気的に加熱できる。加熱は、各々の浸炭室(110、120、130、140)の底面側及び上面側にいずれの場合にも互いに向かい合うように配置された、広大な形態を有する2つの電気的に作動する発熱体(21、22)によりもたらされることが好ましい。浸炭室(110、120、130、140)の壁は金属材料、特に鋼からなり、適切ならば二重壁形態を有し、水などの冷却流体のための配管を備える。浸炭室(110、120、130、140)の壁の室の内部に面する側には、グラファイトフェルトなどの断熱材料が張られている(図3には示していない)。本発明の特に好ましい態様において、浸炭室(110、120、130、140)の壁は、内側に、鋼又はグラファイトなどの蓄熱材料をさらに装備している。断熱材料に対する蓄熱材料の厚さの比又は質量比(例えば、グラファイトフェルトの質量占有率(kg/m2)に対するグラファイトの質量占有率(kg/m2))を適当に選択することにより、浸炭室(110、120、130、140)の熱容量及び熱エネルギー損失を指定した値に適合させることができる。その結果、熱容量の大きい厚いグラファイト板を使用することにより、ワークピース6を浸炭室(110、120、130、140)に導入したりそこから取り出したりする間の温度低下を減少させることが可能である。これにより、加熱時間を短縮して装置の処理能力又は生産性を増加させることが可能になる。そのように蓄熱内張りを備えた浸炭室(110、120、130、140)は、ワークピース6及び/又は周囲環境に放射された「エネルギー損失」が、浸炭室(110、120、130、140)中で任意の望ましい位置に配置された電熱器により供給される、空洞熱放射体の様式で作動することができる。この態様において、ワークピース6は、浸炭室(110、120、130、140)の「受動的」内張りが発する放射により加熱される。
【0037】
図4は、互いに垂直に配置する4つの浸炭室(210、220、230、240)に、ロック室280を通じて接続する固定冷却室290を備える特に好ましい装置200を示す。冷却室290は、ワークピース6を載せた荷台5を導入し、取り出すための第1及び第2のロック291及び292を備える。垂直可動支持台250の付いたリフト装置260がロック室290中に備えられる。水平の両方向に移動可能な自動移動システム253が支持台250に取り付けられている。移動システム253と連結している垂直リフト装置260は、ワークピース6を載せた荷台5を、冷却室290と浸炭室(210、220、230、240)との間で移動する役目を果たす。
【0038】
ロック室280及び冷却室290は、真空ポンプ又は真空ポンプスタンド(図4に示していない)に接続していて、互いに独立に100mbar未満の圧力に排気することができる。場合により、それに加えて、各々の浸炭室(210、220、230、240)は、真空ポンプ又は真空ポンプスタンドに接続していて、他室と独立に排気することができる。図3に示した装置100に類似して、冷却室290は、冷却ガス、例えばヘリウム又は窒素のための圧力容器に接続しており、各々の浸炭室(210、220、230、240)は、アセチレンなどの炭素含有ガスのための容器及び/又は窒素含有ガスのための容器に接続している。
【0039】
各々の浸炭室(210、220、230、240)は、可動ゲートバルブ(211、221、231、241)を備え、それは、主として、熱の閉じ込めのため、及び浸炭室(210、220、230、240)中の熱エネルギー保存のために役立つ。断熱ゲートバルブ(211、221、231、241)は、ワークピースを浸炭室(210、220、230、240)中に導入し及びそこから取り出すためにのみ開かれる。場合により、断熱ゲートバルブ(211、221、231、241)は、浸炭室(210、220、230、240)をロック室280に対して真空気密様式で閉鎖することができるように、真空ゲートバルブの形態にすることもできる。
【0040】
図3に示した装置100に類似して、装置200の浸炭室(210、220、230、240)は、グラファイトなどの蓄熱材料、及びグラファイトフェルトなどの断熱材料の多層張りを備える。
【0041】
装置200の適切な発展においては、ロック室280は荷台5のための置場を備え、それにより、ワークピース6を載せた荷台5を、浸炭室が空になり開放されたら直ぐにそれを浸炭室(210、220、230、240)のうちの一つに装填するべく用意しておくために、「待機」させることが可能になる。この「一時置場」は、浸炭室(210、220、230、240)の垂直上方に配置することが好ましい。この一時置場により、荷台を浸炭するためのサイクル時間を減少させることができ、それ故、装置200で達成し得る処理能力又は生産性を向上することができる。
【0042】
図3及び4に示した装置100及び200は、組み立てユニットの設計を有し、それ故、生産性を向上させるために、さらに浸炭室を追加することが可能である。下に挙げたリスト:
‐ 荷台の冷却室中への導入、
‐ 冷却室のポンプによる排気、
‐ 空の浸炭室中への移動、
場合により一時置場における一時保管、
‐ 浸炭及び拡散、
‐ 冷却室中への移動、
‐ 冷却、
‐ 冷却室から荷台の取り出し、
の個々の方法の工程の期間に応じて、図3及び4に示した4室でなく6室の浸炭室を使用することが適切であることが分かるだろう。それと反対に、要求される生産能力が低ければ、初期投資のコストを低減させるために2室又は3室の浸炭室だけ使用することも可能である。
【0043】
図5A〜5Bに、図4に描いたロック室280を備える装置200のための、本発明による好ましい移動装置(260、253)の模式的正面図及び側面図を示す。
【0044】
移動システム(260、253)は、上方及び下方のガイド(261、263、261’、263’)及びチェーン(262、262’)の付いた2つの垂直に配置したチェーン駆動部を備える。チェーン262’は、水平なプラットホーム254に接続している。プラットホーム254は、1つ又は2つの垂直な支え265に沿って動かされる。荷台5を受け取るための水平可動伸縮自在フォーク(255、256)は、プラットホーム254の上に取り付けられている。伸縮自在フォーク(255、256)は、チェーン262に連結しているギヤ機構251により駆動される。チェーン262とギヤ機構251との間の連結は、複数のガイドによりもたらされる。
【0045】
好ましくは、ギヤホイールであるガイド263及び263’は、シャフト264を通じてロック室280の外側に配置されたモータ(図5A〜5Bに示していない)に連結している。シャフト264を通すために、ロック室280の壁には真空気密回転貫通部が設けられている。プラットホーム254を垂直に動かすために、チェーン駆動部(261、262、263)及び(261’、262’、263’)を同期させて作動し、その結果、チェーン262とギヤ機構251との間の設定は不変のままであり且つ伸縮自在フォーク(255、256)はその水平な姿勢を維持する。これで伸縮自在フォーク(255、256)と浸炭室などの装置200の他の部品との衝突が防止される。プラットホーム254が固定された垂直な位置にあれば、チェーン262はギヤホイール263を通じて駆動し、シャフト264はロック室280の外側に配置されたモータにより作動するので、伸縮自在フォーク(255、256)は水平に動く。
【0046】
図6は、ワークピース61、例えばギヤシャフトが、垂直な層又列で浸炭室中の発熱体21と22との間に配置されている、本発明のさらなる態様の部分斜視図を示す。ワークピース61は、それらの位置にラック(図6に示していない)により保たれる。この場合、ラックは、支持ブラケットを有する枠の形態又はラックに載せるためのスパイク若しくはシャフトを押し込むための穴などの機械的保持装置を有する支持板の形態にある。図6による垂直な配置をしている、ワークピースを硬化するための本発明による装置は、図3及び4に示した装置に類似して設計され、それらとは、浸炭室が垂直に上下ではなくて互いに水平な方向に並んで配置されているという点でのみ異なる。このことにより、冷却室は、水平に可動であるように配置され、ロック室及び移動装置は水平に配置される。本発明は、図3及び4に示したような、ワークピースの水平な取り付け(例えば、荷台上で)、及び図6に示したような垂直な取り付け又は懸垂を両方とも包含する。これらの態様は両方とも、ワークピースが1層又は1列に、すなわち加熱装置中に2D装荷様式で配置され、その結果各ワークピースの表面の30から100%が加熱装置により発せられる熱放射に直接曝されるという、本発明に必須の共通の特徴を有する。
【0047】
図6に示した発熱体(21、22)は、グラファイト又はCFC製の曲がりくねった大面積のヒータの形態である。このタイプの大面積ヒータ(21、22)は、先行技術において知られており、種々のメーカーから市販されている。
【0048】
本発明の発展において、冷却室は、機械的な固定装置及び/又は冷却ガスのためのフローガイド(flow guide)機構を備える。固定装置は、ワークピースの形状に適合して、本発明によるこの場合には、冷却室中で冷却すべきワークピースの上に配置されている。ガス導入の開始前に、ワークピースを載せた荷台を固定装置に対して下から決められた力で押すか、又はガス導入の開始前に固定装置をワークピースに対して上から決められた力で押すかのいずれかを行う。固定装置の助けで、冷却後のワークピースの平面性はかなり改善され、それ故、ワークピースの歪みはかなり減少する。
【0049】
それに加えて、冷却室は、ワークピースを低歪みで冷却するために、フローガイド機構を備えることができる。この場合、このガイド機構は、冷却室中で、冷却すべきワークピースの上に配置されて、ガスが構成部品上に高い局所速度で投射され、それに加えて、冷却が非常に均一にもたらされるような様式で形成される。可能な最も均一な冷却をもたらすために、この場合は、構成部品の壁厚の大きい区域を高い流速に曝し、構成部品の壁厚の小さい区域を低い流速に曝す。さらに、ワークピースに冷却ガスを上と横の両方から系統的に当てるように、ガイド機構を「3次元的に」設計することが可能である。この目的のためには、ガス導入の開始前に、ワークピースを下から持ち上げてガイド機構中に入れなければならいか、又はガイド機構を上からワークピース上に降ろさなければならないかのいずれかである。
【0050】
フローガイド機構の助けで、ワークピースの冷却速度はかなり増加する。これで、合金化不十分な材料で作製されたワークピースを硬化することが可能になる。それに加えて、急冷をより低いガス圧で実施することができるので、ガス消費コストが減少する。さらに、冷却がより均一にもたらされる結果、ワークピースに生じる応力が小さくなるため、ワークピースの歪みがかなり減少する。
【0051】
本発明による単層熱処理(2D装荷)であるという理由だけで、固定装置及び/又はフローガイド機構を使用することが可能になる。多層3D装荷を用いる先行技術では、これらの選択肢を使用することは可能でない。
【0052】
温度及び炭素含有率を測定する方法
当業者は、金属のワークピースの温度を測定する方法に精通している。本発明の関係では、ワークピース表面の温度は、熱電対、高温計及び熱撮像カメラにより測定した。各熱電対は、熱電対の全センサ面積がワークピース表面と接触するようにワークピースにワイヤで固定した。センサとワークピースとを良好に接触させるために、構成部品表面に小さい溝を作る。熱電対及びさらに固定ワイヤも、熱容量はワークピースに比較して無視し得る。
【0053】
ワークピースのコアの温度も熱電対によって同様に測定した。この目的で、0.5から1.5mmの直径を有する盲穴を、測定すべきワークピースの位置に穿孔して、熱電対を盲穴に挿入した。ワークピースのコアの温度を使用して、具体的な冷却速度を[kJ・kg−1・s−1]の単位で決定する。この目的で、ワークピースの測定温度Tと比熱容量C(単位kJ・kg−1・K−1)との積を、800から500℃の範囲で、以下の関係式、
【数1】
により積分し、冷却するのに要する時間で除す。鋼の場合、比熱容量は、800℃の温度において約0.8kJ・kg−1・K−1であり、735℃付近の狭い温度範囲においてこの値の倍に増大する。
【0054】
ワークピースと一緒に硬化装置中に、すなわち冷却室中及び浸炭室中の両方に導入した熱電対からのシグナルを、可搬式の断熱電子測定値検出器(「Furnace Tracker」)により記録した。
【0055】
該熱電対を、浸炭室中におけるワークピースの加熱中及びさらに冷却室中における冷却中の温度プロファイルを決定するために使用した。
【0056】
表面炭素含有率を決定するために、ワークピース表面を10°という小さい角度で約1000μmの深さまで研削し、研削した表面を、注意深く清浄化した後、光学的分光分析、二次イオン質量分析法(SIMS)、さらに電子プローブミクロ分析(EPMA)により、10μm未満の位置分解能、すなわち3.5μm(=10μm×sin(10°))未満の深さ分解能で測定した。SIMSにより炭素について達成される化学的検出限界は、1ppm未満の領域内である。
【実施例】
【0057】
例1:
20MoCr4の材料で作製された、外径54mm、内径30mm及び高さ35mmの太陽歯車を使用して、各8個で5列、すなわち40個で全重量12.5kgの1層での本発明による2D装荷、及び各8個の各5列で8層、すなわち320個で全重量100kgの3D装荷にまとめた。1層用の装填ラックとして、CFC製で450mm×600mmの寸法を有する構造的に同一の網状格子を、2D装荷及び3D装荷両方のために使用した。
【0058】
硬化工程の結果について、以下の目標値を予め規定した:
‐ 610HVの限界硬度を有する0.3から0.5mmの表面硬化深さ、
‐ 端面における670HVの表面硬度、及び
‐ 歯底円における歯の中心において280HV10を超えるコア硬度。
【0059】
図7は、本発明(2D装荷、単層)及び従来法(3D装荷、多層)により硬化したワークピースの温度プロファイルの比較を示す。温度は、両方の場合ともに、それぞれの装荷の中央及び端部に位置したワークピースに取り付けた複数の熱電対により測定する。熱電対により測定したデータは、Furnace Trackerにより記録した。本発明による2D装荷の場合、温度は急速に上昇し、装荷の中央に位置するワークピースと装荷の端部に位置するワークピースとの間で、温度プロファイルにおける識別できる差はない。それと対照的に、3D装荷の場合には、装荷の中央に位置するワークピースの温度プロファイルは、装荷の端部に位置するワークピースの温度プロファイルとかなり異なる。それに加えて、2D装荷におけるワークピースの温度は、3D装荷の端部におけるワークピースの温度より急速に上昇する。この差は、3D装荷の外側に置かれたワークピースが内側に置かれたワークピースに対して、放出し又は取られた放射エネルギーの結果である。3D装荷における全てのワークピース、特に内側に置かれたワークピースを1050℃という温度に加熱するためには、約130分という時間が必要になる。対照的に、2D装荷の場合に要する加熱は約15分である。
【0060】
図8は、ワークピースの表面からの距離の関数としての硬度のプロファイルを示す。測定曲線を参照して、表面硬化深さ(CHD)を見ることが可能である。CHDは、DIN ISO2639(2002)にしたがって決定される。この目的のために、試験すべき構成部品を、熱の発生を避けて、表面と垂直に切断して分離する。表面からの距離が増したところで、次にビッカース硬度HV1を、一般的に9.8Nの試験負荷で測定する。表面から硬度が限界硬度(Hs、この場合には610HV1)に相当する点までの距離をCHDと称する。
【0061】
CHD値の変動(最大測定値と最小測定値との間の差)は2D装荷において約0.06mmであり、3D装荷の変動である約0.12mmよりも有意に小さいことが、図8からわかる。
【0062】
図9は、コア硬度についての測定値の比較を示す。コア硬度を決定するために、硬化されたワークピース(ここでは、上記の太陽歯車)を、熱の発生を避けて、対称軸に対して垂直に切断分離する。分離された表面を研磨して磨く。次に、ビッカース硬度[HV10]は歯根(=歯元隅肉部間の中央)のコアで決定される。この測定は、DIN EN ISO6507−1(金属材料−ビッカース硬度試験−第1部:試験方法ISO6507−1:2005、ドイツ版EN ISO6507−1:2005)にしたがって行う。図9から、2D装荷におけるコア硬度の変動は、3D装荷におけるよりも有意に小さいことを見ることができる。
【0063】
図10は、本発明による2D装荷と従来法で浸炭した3D装荷の表面炭素含有率の変動の比較を示す。表面炭素含有率は、研磨した表面で、上記のように、分光分析、SIMS及びEPMAによる炭素シグナルを、深さ範囲0から100μmにわたって積分することにより決定した。
【0064】
例2:
28Cr4の材料で作製した、外径140mm、高さ28mm及び98歯の中空ホイールを使用して、8個の1層で全重量6.5kgの本発明による2D装荷、及び各8個の10層、すなわち80個で全重量が65kgの3D装荷にまとめた。2D装荷及び3D装荷両方のために、1層のための装填ラックとして、CFC製の450mm×600mmの寸法を有する構造的に同一の網状格子を使用した。
【0065】
図11は、2D装荷による8個の中空ホイール及び3D装荷による8個の中空ホイールの熱的歪み又は楕円率における変化についての測定結果を示す。この点において、2D装荷の8個の中空ホイール及び3D装荷の8個の中空ホイールの位置は、2D装荷及び3D装荷の面積又は体積全体にわたって均一に分布させた。楕円率は、浸炭の前及び後に、中空ホイールの外円周で3D座標測定系により測定し、浸炭の前と後で楕円率の値における差が生じた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(6)を硬化する方法であって、以下の、
(a)前記ワークピース(6)を950から1200℃の温度に加熱する工程であって、各ワークピース(6)の表面の30から100%が、加熱装置(110、120、130、140、210、220、230、240)の直接熱放射により加熱される工程と、
(b)前記ワークピース(6)を、950から1200℃の温度及び100mbar未満の圧力で、炭素含有ガス及び/又は窒素含有ガスに曝す工程と、
(c)前記ワークピース(6)を、100mbar未満の圧力の雰囲気中で950から1200℃の温度に保つ工程と、
(d)適切ならば、工程(b)及び(c)を1回又は数回繰り返す工程と、
(e)前記ワークピース(6)を冷却する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(a)において、各々の前記ワークピース(6)を、2つ以上の空間方向から熱放射により加熱することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)において、各々の前記ワークピース(6)の表面付近の区域を、35から135℃/分、好ましくは50から110℃/分、特に50から75℃/分の速度で加熱することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)において、各々の前記ワークピース(6)のコアを、18から120℃/分の速度で加熱することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(e)において、前記ワークピース(6)を、800から500℃の温度範囲で2から20kJ・kg−1・s−1という特定の冷却速度で冷却することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)において、前記ワークピース(6)をアセチレン及び/又はアンモニアに曝すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(e)において、前記ワークピース(6)を、ガス、好ましくは窒素で冷却することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ワークピース(6)を、2から20bar、好ましくは4から8bar、特に5から7barの圧力で窒素によって冷却することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(e)において、前記ワークピース(6)の表面を、900から1200℃の範囲内の温度から300℃の温度に、40から100秒以内で冷却することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1個のワークピース(6)を基準として、(a)から(e)の工程を実施するためのサイクル時間が、5から120秒、好ましくは5から60秒、特に5から40秒であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(i)前記ワークピース(6)をラック(5)中/上に単層で配置する工程と、
(ii)前記ワークピース(6)を載せた前記ラック(5)を冷却室(190、290)に導入して、100mbar未満の圧力に排気する工程と、
(iii)前記ラック(5)を浸炭室(110、120、130、140、210、220、230、240)中に移動する工程であって、前記ラックを、適切ならば浸炭室(110、120、130、140、210、220、230、240)中に導入する前に、一時置場に一時的に保管する工程と、
(iv)前記ワークピース(6)を熱放射により950から1200℃の温度に加熱する工程であって、各ワークピース(6)の表面の30から100%が浸炭室(110、120、130、140、210、220、230、240)の直接熱放射により加熱される工程と、
(v)前記ワークピース(6)を、950から1200℃の温度及び100mbar未満の圧力で炭素含有ガス及び/又は窒素含有ガスに曝す工程と、
(vi)前記ワークピース(6)を、100mbar未満の圧力の雰囲気中で950から1200℃の温度に保つ工程と、
(vii)適切ならば、工程(iv)及び(v)を1回又は数回繰り返す工程と、
(viii)前記ワークピース(6)を載せた前記ラック(5)を前記冷却室(190、290)中に移動する工程と、
(ix)前記ワークピース(6)を、ガス、好ましくは窒素で冷却する工程と、
(x)前記ワークピース(6)を載せた前記ラック(5)を冷却室(190、290)から取り出す工程と
によって特徴づけられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11に記載した方法にしたがってワークピース(6)を硬化するための装置(100)であって、2つ以上の浸炭室(110、120、130、140)、少なくとも1つの冷却室(190、195)及びワークピース(6)のためのラック(5)を操作するための移動システム(160、153、154)を備え、前記冷却室(190、195)は各々の前記浸炭室(110、120、130、140)と1つ以上の真空ゲートバルブ(111、121、131、141、192、197)を通じて接続することができ、各浸炭室(110、120、130、140)は、ラック(5)のための置場及び少なくとも2つの発熱体(21、22)を有し、前記発熱体から発せられた放射が各々の前記ワークピースの表面(6)を平均立体角0.5πから2πで照射するような様式で前記発熱体が配置される、装置。
【請求項13】
請求項1から11に記載の方法にしたがってワークピース(6)を硬化するための装置(200)であって、2つ以上の浸炭室(210、220、230、240)、少なくとも1つの冷却室(290)、前記浸炭室(210、220、230、240)および前記冷却室(290)の間に配置されたロック室(280)、及び前記ワークピース(6)のためのラック(5)を操作するための移動システム(260、253)を備え、前記冷却室(290)は真空ゲートバルブ(292)を通じて前記ロック室(280)に接続することができ、各々の前記浸炭室(210、220、230、240)は断熱ゲートバルブ(211、221、231、241)を通じて前記ロック室(280)に接続することができ、各々の前記浸炭室(210、220、230、240)は、ラック(5)のための置場及び少なくとも2つの発熱体(21、22)を有し、前記発熱体から発せられた放射が各々の前記ワークピース(6)の表面を平均立体角0.5πから2πで照射するような様式で前記発熱体が配置される、装置。
【請求項14】
前記断熱ゲートバルブ(211、221、231、241)が真空ゲートバルブの形態であることを特徴とする、請求項13に記載の装置(200)。
【請求項15】
前記冷却室(190、195、290)がワークピース(6)を導入するため及び取り出すために2つの真空ゲートバルブ(191、192、197、291、292)を備える、請求項12から14のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項16】
前記発熱体(21、22)が表面エミッタの形態であることを特徴とする、請求項12から15のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項17】
前記発熱体(21、22)がグラファイト又は炭素繊維強化炭素(CFC)からなることを特徴とする、請求項12から16のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項18】
前記ラック(5)が格子状の荷台の形態であることを特徴とする、請求項12から17のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項19】
前記ラック(5)がグラファイト又は炭素繊維強化炭素(CFC)からなることを特徴とする、請求項12から18のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項20】
前記移動システム(260、253)が、上方及び下方のガイド(261、263、261’、263’)の付いた垂直に配置されたチェーン駆動部及びチェーン(262、262’)並びにさらに荷台(5)を受けるための水平可動伸縮自在フォーク(255、256)を備え、前記伸縮自在フォーク(255、256)はギヤ機構(251)を通じてチェーン(262)のうちの一つに連結していることを特徴とする、請求項13に記載の装置(200)。
【請求項21】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法にしたがって硬化された金属材料製のワークピース(6)。
【請求項22】
表面硬化深さ(CHD)が、公称値の±0.05mm、好ましくは±0.04mm、特に±0.03mmの範囲内にあり、前記公称値が0.3から1.4mmであることを特徴とする、請求項21に記載のワークピース(6)。
【請求項23】
表面炭素含有率が、公称値の±0.025重量%、好ましくは±0.015重量%、特に±0.01重量%の範囲内にあり、前記公称値が0.6から0.85重量%であることを特徴とする、請求項21又は22に記載のワークピース(6)。
【請求項24】
コア硬度が、公称値の±30HV、好ましくは±20HVの範囲内にあり、前記公称値が280から480HVであることを特徴とする、請求項21から23のいずれか一項に記載のワークピース(6)。
【請求項1】
ワークピース(6)を硬化する方法であって、以下の、
(a)前記ワークピース(6)を950から1200℃の温度に加熱する工程であって、各ワークピース(6)の表面の30から100%が、加熱装置(110、120、130、140、210、220、230、240)の直接熱放射により加熱される工程と、
(b)前記ワークピース(6)を、950から1200℃の温度及び100mbar未満の圧力で、炭素含有ガス及び/又は窒素含有ガスに曝す工程と、
(c)前記ワークピース(6)を、100mbar未満の圧力の雰囲気中で950から1200℃の温度に保つ工程と、
(d)適切ならば、工程(b)及び(c)を1回又は数回繰り返す工程と、
(e)前記ワークピース(6)を冷却する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(a)において、各々の前記ワークピース(6)を、2つ以上の空間方向から熱放射により加熱することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)において、各々の前記ワークピース(6)の表面付近の区域を、35から135℃/分、好ましくは50から110℃/分、特に50から75℃/分の速度で加熱することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)において、各々の前記ワークピース(6)のコアを、18から120℃/分の速度で加熱することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(e)において、前記ワークピース(6)を、800から500℃の温度範囲で2から20kJ・kg−1・s−1という特定の冷却速度で冷却することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)において、前記ワークピース(6)をアセチレン及び/又はアンモニアに曝すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(e)において、前記ワークピース(6)を、ガス、好ましくは窒素で冷却することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ワークピース(6)を、2から20bar、好ましくは4から8bar、特に5から7barの圧力で窒素によって冷却することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(e)において、前記ワークピース(6)の表面を、900から1200℃の範囲内の温度から300℃の温度に、40から100秒以内で冷却することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1個のワークピース(6)を基準として、(a)から(e)の工程を実施するためのサイクル時間が、5から120秒、好ましくは5から60秒、特に5から40秒であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(i)前記ワークピース(6)をラック(5)中/上に単層で配置する工程と、
(ii)前記ワークピース(6)を載せた前記ラック(5)を冷却室(190、290)に導入して、100mbar未満の圧力に排気する工程と、
(iii)前記ラック(5)を浸炭室(110、120、130、140、210、220、230、240)中に移動する工程であって、前記ラックを、適切ならば浸炭室(110、120、130、140、210、220、230、240)中に導入する前に、一時置場に一時的に保管する工程と、
(iv)前記ワークピース(6)を熱放射により950から1200℃の温度に加熱する工程であって、各ワークピース(6)の表面の30から100%が浸炭室(110、120、130、140、210、220、230、240)の直接熱放射により加熱される工程と、
(v)前記ワークピース(6)を、950から1200℃の温度及び100mbar未満の圧力で炭素含有ガス及び/又は窒素含有ガスに曝す工程と、
(vi)前記ワークピース(6)を、100mbar未満の圧力の雰囲気中で950から1200℃の温度に保つ工程と、
(vii)適切ならば、工程(iv)及び(v)を1回又は数回繰り返す工程と、
(viii)前記ワークピース(6)を載せた前記ラック(5)を前記冷却室(190、290)中に移動する工程と、
(ix)前記ワークピース(6)を、ガス、好ましくは窒素で冷却する工程と、
(x)前記ワークピース(6)を載せた前記ラック(5)を冷却室(190、290)から取り出す工程と
によって特徴づけられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11に記載した方法にしたがってワークピース(6)を硬化するための装置(100)であって、2つ以上の浸炭室(110、120、130、140)、少なくとも1つの冷却室(190、195)及びワークピース(6)のためのラック(5)を操作するための移動システム(160、153、154)を備え、前記冷却室(190、195)は各々の前記浸炭室(110、120、130、140)と1つ以上の真空ゲートバルブ(111、121、131、141、192、197)を通じて接続することができ、各浸炭室(110、120、130、140)は、ラック(5)のための置場及び少なくとも2つの発熱体(21、22)を有し、前記発熱体から発せられた放射が各々の前記ワークピースの表面(6)を平均立体角0.5πから2πで照射するような様式で前記発熱体が配置される、装置。
【請求項13】
請求項1から11に記載の方法にしたがってワークピース(6)を硬化するための装置(200)であって、2つ以上の浸炭室(210、220、230、240)、少なくとも1つの冷却室(290)、前記浸炭室(210、220、230、240)および前記冷却室(290)の間に配置されたロック室(280)、及び前記ワークピース(6)のためのラック(5)を操作するための移動システム(260、253)を備え、前記冷却室(290)は真空ゲートバルブ(292)を通じて前記ロック室(280)に接続することができ、各々の前記浸炭室(210、220、230、240)は断熱ゲートバルブ(211、221、231、241)を通じて前記ロック室(280)に接続することができ、各々の前記浸炭室(210、220、230、240)は、ラック(5)のための置場及び少なくとも2つの発熱体(21、22)を有し、前記発熱体から発せられた放射が各々の前記ワークピース(6)の表面を平均立体角0.5πから2πで照射するような様式で前記発熱体が配置される、装置。
【請求項14】
前記断熱ゲートバルブ(211、221、231、241)が真空ゲートバルブの形態であることを特徴とする、請求項13に記載の装置(200)。
【請求項15】
前記冷却室(190、195、290)がワークピース(6)を導入するため及び取り出すために2つの真空ゲートバルブ(191、192、197、291、292)を備える、請求項12から14のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項16】
前記発熱体(21、22)が表面エミッタの形態であることを特徴とする、請求項12から15のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項17】
前記発熱体(21、22)がグラファイト又は炭素繊維強化炭素(CFC)からなることを特徴とする、請求項12から16のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項18】
前記ラック(5)が格子状の荷台の形態であることを特徴とする、請求項12から17のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項19】
前記ラック(5)がグラファイト又は炭素繊維強化炭素(CFC)からなることを特徴とする、請求項12から18のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項20】
前記移動システム(260、253)が、上方及び下方のガイド(261、263、261’、263’)の付いた垂直に配置されたチェーン駆動部及びチェーン(262、262’)並びにさらに荷台(5)を受けるための水平可動伸縮自在フォーク(255、256)を備え、前記伸縮自在フォーク(255、256)はギヤ機構(251)を通じてチェーン(262)のうちの一つに連結していることを特徴とする、請求項13に記載の装置(200)。
【請求項21】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法にしたがって硬化された金属材料製のワークピース(6)。
【請求項22】
表面硬化深さ(CHD)が、公称値の±0.05mm、好ましくは±0.04mm、特に±0.03mmの範囲内にあり、前記公称値が0.3から1.4mmであることを特徴とする、請求項21に記載のワークピース(6)。
【請求項23】
表面炭素含有率が、公称値の±0.025重量%、好ましくは±0.015重量%、特に±0.01重量%の範囲内にあり、前記公称値が0.6から0.85重量%であることを特徴とする、請求項21又は22に記載のワークピース(6)。
【請求項24】
コア硬度が、公称値の±30HV、好ましくは±20HVの範囲内にあり、前記公称値が280から480HVであることを特徴とする、請求項21から23のいずれか一項に記載のワークピース(6)。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図3A】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図3A】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−504686(P2013−504686A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528260(P2012−528260)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005456
【国際公開番号】WO2011/029565
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(509060198)エーエルデー・バキューム・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー (6)
【氏名又は名称原語表記】ALD Vacuum Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Wilhelm−Rohn−Strasse 35, 63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005456
【国際公開番号】WO2011/029565
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(509060198)エーエルデー・バキューム・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー (6)
【氏名又は名称原語表記】ALD Vacuum Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Wilhelm−Rohn−Strasse 35, 63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】
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