ワーク保持機構
【課題】研削液などによって濡れた状態のウェーハ等のワークを、洗浄容易とするために乾燥させることなく洗浄手段まで搬送する。
【解決手段】円板状の支持プレート91の下方に配した3つの保持部材81を、支持プレート91に放射状に形成した長孔92に沿って移動自在に支持し、各保持部材81を移動手段100によって移動させる。各保持部材81を、外周側に広げた状態でチャックテーブル30上のワーク9の周囲に位置付け、ワーク9を浮上させてから各保持部材81を内周側に移動させ、係合凹部82にワーク9の外周縁を嵌め込んで保持する。チューブ130からウェーハ1の上面に水を供給しながらアーム72を旋回させ、ワーク9をスピンナ式洗浄装置60まで搬送する。
【解決手段】円板状の支持プレート91の下方に配した3つの保持部材81を、支持プレート91に放射状に形成した長孔92に沿って移動自在に支持し、各保持部材81を移動手段100によって移動させる。各保持部材81を、外周側に広げた状態でチャックテーブル30上のワーク9の周囲に位置付け、ワーク9を浮上させてから各保持部材81を内周側に移動させ、係合凹部82にワーク9の外周縁を嵌め込んで保持する。チューブ130からウェーハ1の上面に水を供給しながらアーム72を旋回させ、ワーク9をスピンナ式洗浄装置60まで搬送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の円板状のワークを保持して搬送するためのワーク保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、円板状の半導体ウェーハ(以下、ウェーハ)の表面に格子状の分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、これら矩形領域の表面にICやLSI等の電子回路を形成した後、全ての分割予定ラインを切断する、すなわちダイシングして、1枚のウェーハから多数の半導体チップを得ている。このようにして得られた半導体チップは、樹脂封止によりパッケージングされて、携帯電話やPC(パーソナル・コンピュータ)等の各種電気・電子機器に広く用いられている。
【0003】
このような製造工程において、ウェーハは、多数の半導体チップにダイシングされるに先立ち、電子回路が形成された表面とは反対側の裏面が研削され、所定の厚さに薄化されている。ウェーハの薄化は、機器のさらなる小型化や軽量化の他、熱放散性を向上させることなどを目的としてなされており、例えば、当初厚さの700μm前後から、50〜100μm程度の厚さまで薄化することが行われる。
【0004】
ウェーハを裏面研削する研削加工装置としては、研削前の多数のウェーハが収納される収納カセット、収納カセットから取り出された研削前のウェーハが一時的に載置され、搬送系の位置決めを行うための仮置きテーブル、仮置きテーブルから移されたウェーハを裏面が露出する状態に保持するチャックテーブル、チャックテーブルに保持されたウェーハの裏面を研削するグラインダ等の研削手段、裏面研削されたウェーハがチャックテーブルから移され、ウェーハを洗浄する洗浄部、洗浄部で洗浄されたウェーハが収納されるカセット等を備えたものが知られている(特許文献1,2参照)。
【0005】
ウェーハは、上記工程順にしたがって搬送されるが、上記特許文献1,2に記載の研削加工装置では、上記仮置きテーブルから上記チャックテーブルへのウェーハの移送と、チャックテーブルから上記洗浄部へのウェーハの移送を、真空吸着式のウェーハ保持機構を備えた搬送手段で行っている。この搬送手段は、先端にウェーハ保持機構を備えたアームが旋回することによってウェーハを搬送するものである。ウェーハ保持機構は、下方に向いた吸着パッドの吸着面から空気を吸引する真空運転を行ってウェーハをその吸着面に吸着、保持し、真空運転を停止することでウェーハを吸着パッドから離脱する。
【0006】
【特許文献1】特開2004−91196号公報
【特許文献2】特開2006−344778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記真空吸着式のウェーハ保持機構では、吸着パッドの吸着面が、空気を吸引しながらウェーハの裏面に吸着してウェーハを保持する。このため、ウェーハの裏面は、水分があった場合、その水分が吸引されて乾燥することになる。実際、裏面研削時においてはウェーハの裏面に研削液が供給されるため、裏面研削後のウェーハがウェーハ保持機構に保持されて取り上げられる際には、ウェーハの裏面は研削液で濡れた状態となっており、洗浄部まで搬送される際には、研削液が吸引されて乾燥するといったことが起こっていた。
【0008】
ウェーハの裏面に残る研削液は、裏面研削によって生じた粉状の研削屑等が混じって汚れており、洗浄部はその汚れを除去するところである。しかしながら、ウェーハ保持機構の吸着パッドが吸着することによってウェーハの裏面が乾燥してしまうと、洗浄部で裏面を洗浄しても汚れが落ちにくく、十分に洗浄されないといった不具合が生じていた。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、研削液などによって濡れた状態のウェーハ等のワークを乾燥させることなく目的の場所まで搬送することができ、これによって、例えばワークを十分に洗浄することができるなど、乾燥していないことによる効果を適確に得ることができるワーク保持機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のワーク保持機構は、円板状のワークの外周縁を保持する3個以上の保持部材と、該保持部材で外周縁が保持されるワークに対向して位置付けられ、該保持部材を放射方向に案内する案内部を有し、該案内部に沿って保持部材を移動可能に支持する支持プレートと、保持部材を案内部に沿って移動させる移動手段と、保持部材に保持されたワークの支持プレートへの対向面に水を供給する水供給手段とを少なくとも備えることを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、ワークは保持部材により外周縁を保持されるため、従来の上記吸着パッドによるワーク保持機構と異なり、両面ともが露出した状態に保持される。そして、水供給手段から水が供給されることにより、ワークは常に水で濡れた状態で搬送することができ、乾燥することを防止することができる。したがって、上述の研削加工装置におけるチャックテーブルから洗浄部にウェーハを搬送する搬送機構に、本発明のワーク保持機構を適用すれば、乾燥によって汚れが落ちにくいといったことが起こらず、洗浄部でウェーハを十分に洗浄することができるといった効果を得る。
【0012】
本発明の具体的構成については、以下の形態が挙げられる。
上記案内部は、支持プレートに形成された放射方向に延びる長孔で構成されており、保持部材は、ワークの外周縁に係合する係合凹部を備えた係合部と、該係合部に設けられ、長孔に挿通される被案内支持部とを備えている。
【0013】
また、上記保持部材は、係合凹部に連続し、かつ、該係合凹部に外周縁が係合するワークと支持プレートとの間に形成され、該ワークの外周縁を係合凹部に案内するテーパ状のワーク受け面を有している。
【0014】
また、上記移動手段は、支持プレートの略中心に回動軸を介して回動自在に取り付けられた回動プレートと、各保持部材ごとに設けられ、一端部が該保持部材に、他端部が回動プレートに、それぞれ回動自在に連結されたリンクと、回動プレートを回動させる回動駆動手段とを備えている。
【0015】
本発明のワーク保持機構は、所定の載置面に載置されているワークを上記保持部材で保持するといった使用方法が挙げられる。この場合には、上記支持プレートの、保持部材に保持されたワークへの対向面に、該対向面と載置面との間に一定の間隔を確保する複数のスペーサピンが突設されている形態が好ましい。すなわちこの形態では、スペーサピンが載置面に当接することで、該載置面と支持プレートとが平行になるとともに、スペーサピンによってワークが載置面と平行な方向に移動することが規制されるため、保持部材にワークを導いて保持させることが容易となる。また、保持部材が載置面に接触することが回避されて保持部材の損傷が防がれる。
【0016】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ等の上記半導体ウェーハや、セラミック、ガラス、サファイア、シリコン系の基板等のミクロンオーダーの精度が要求される各種加工材料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、円板状のワークの外周縁を保持部材で保持するとともに、水供給手段によってワークに水を供給することができるため、ウェーハ等のワークを乾燥させることなく搬送することができ、これによって、例えばワークを十分に洗浄することができるなど、乾燥していないことによる効果を適確に得ることができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係るワーク保持機構が適用されたウェーハ研削加工装置を説明する。
[1]半導体ウェーハ
まずはじめに、図1に示す一実施形態に係る半導体ウェーハを説明する。この半導体ウェーハ1(以下、ウェーハ1)はシリコンウェーハ等であって、加工前の厚さは例えば700μm程度のものである。ウェーハ1の表面(図1ではウェーハ1の裏面側を上にしている)には格子状の分割予定ライン2によって複数の矩形状のチップ3が区画されている。これらチップ3の表面には、ICやLSI等の図示せぬ電子回路が形成されている。また、ウェーハ1の周面の所定箇所には、半導体の結晶方位を示すV字状の切欠き(ノッチ)4が形成されている。
【0019】
ウェーハ1は、図2に示すウェーハ研削加工装置10によって裏面が研削されて、例えば50〜100μm程度の厚さに薄化される。ウェーハ研削加工装置10に供されるウェーハ1は、薄化されて剛性が低下した当該ウェーハ1を本実施形態のワーク保持機構で確実に保持して搬送可能にするために、図1に示すように、サブストレート5が表面(図1で下面)に貼着される。サブストレート5は、例えば半導体ウェーハの材料であるシリコン、あるいはガラス等により、外径がウェーハ1と同程度の円板状で、かつ、撓みが生じない程度の厚さに形成されたものが用いられ、適宜な粘着材によってウェーハ1の表面に貼着される。サブストレート5が貼着されたことにより、ウェーハ1は、裏面研削されて薄化されても撓みが生じることなく平らな状態が維持され、その状態で搬送が可能とされる。以下の説明では、図1に示したウェーハ1にサブストレート5が貼着されたものを、本実施形態における搬送対象物であるワーク9と呼ぶ。
【0020】
[2]ウェーハ研削加工装置
図2に示すウェーハ研削加工装置10は、上記ワーク9を真空吸着式のチャックテーブル30に吸着して保持し、2台の研削ユニット(粗研削用と仕上げ研削用)40A,40Bによってウェーハ1の裏面に対し粗研削と仕上げ研削を順次行うものである。以下、この装置10の構成ならびに動作を説明する。
【0021】
図2の符号11はウェーハ1に研削加工を施す加工ステージであり、この加工ステージ11のY方向手前側には、加工ステージ11に研削前のウェーハ1を備えたワーク9を供給し、かつ、研削後のウェーハ1を備えたワーク9を回収する供給/回収ステージ12が併設されている。
【0022】
供給/回収ステージ12のY方向手前側の端部には、X方向に並ぶ2つのエレベータ13A,13Bが設置されている。これらエレベータ13A,13Bのうち、X方向手前側のエレベータ13Aには、裏面研削前のウェーハ1を備えた複数のワーク9を収納する供給カセット14Aがセットされる。また、X方向奥側のエレベータ13Bには、裏面研削後のウェーハ1を備えた複数のワーク9を収納する回収カセット14Bがセットされる。これらカセット14A,14Bは同一構成であって、ワーク9を1枚ずつ積層状態で収納するトレーを備えている。
【0023】
供給カセット14Aに収納されたワーク9は、エレベータ13Aの昇降によって所定の取り出し高さ位置に位置付けられる。そしてそのワーク9は、搬送ロボット15によって供給カセット14Aから取り出され、ウェーハ1の裏面を上に向けた状態で、供給/回収ステージ12に設けられた仮置きテーブル16上に一時的に載置される。仮置きテーブル16に載置されたワーク9は、一定の搬送開始位置に位置決めされる。
【0024】
加工ステージ11上には、R方向に回転駆動されるターンテーブル17が設けられている。そしてこのターンテーブル17上の外周部には、複数(この場合、3つ)の円板状のチャックテーブル30が、周方向に等間隔をおいて配設されている。図7に示すように、チャックテーブル30は枠体31の上面に多孔質材料でできた吸着部32が嵌合されたもので、真空運転されると、吸着部32の上側の空気を吸引し、ワーク9を吸着部32の水平な上面(載置面)32aに吸着、保持する。また、吸着部32は、真空運転時とは逆に、空気が供給されて吸着部32の上方に向けて空気を吹き上げるブロー運転もなされるようになっている。各チャックテーブル30はターンテーブル17に回転自在に支持されており、図示せぬ回転駆動機構によって一方向あるいは両方向に回転させられる。
【0025】
仮置きテーブル16上で位置決めがなされたワーク9は、供給手段20によって仮置きテーブル16から取り上げられ、ワーク着脱位置に位置付けれられた真空運転状態の1つのチャックテーブル30の上方まで搬送される。そしてワーク9は、そのチャックテーブル30上にウェーハ1の裏面を上に向けた状態で同心状に載置される。この場合のワーク着脱位置は、チャックテーブル30が最も供給/回収ステージ12に近接した位置であり、ターンテーブル17の回転によってチャックテーブル30はワーク着脱位置に位置付けられる。供給手段20は、供給/回収ステージ12の、ワーク着脱位置に近接した位置に設けられている。
【0026】
供給手段20は、回転可能、かつ、上下動可能に設けられたZ方向に延びる回転軸21に、水平に延びるアーム22が固定され、このアーム22の先端に、真空吸着式の吸着パッド23が設けられたものである。この供給手段20によれば、回転軸21を回転させてアーム22を旋回させることにより吸着パッド23を仮置きテーブル16上のワーク9の上方に位置付けてから、回転軸21を下降させ、下方に向いた吸着パッド23の吸着面から空気を吸引する真空運転を行うことにより、ワーク9がその吸着面に吸着、保持される。仮置きテーブル16上のワーク9が吸着パッド23で保持されたら、回転軸21が上昇し、アーム22が旋回してワーク9が上記ワーク着脱位置まで搬送され、ここで回転軸21が下降し、真空運転が停止される。これによって、ワーク9は真空運転されているチャックテーブル30に載置される。
【0027】
チャックテーブル30に保持されたワーク9は、ターンテーブル17がR方向へ所定角度回転することにより、粗研削用研削ユニット40Aの下方の一次加工位置に送り込まれ、この位置で該研削ユニット40Aによりウェーハ1の裏面が粗研削される。次いでワーク9は、再度ターンテーブル17がR方向へ所定角度回転することにより、仕上げ研削用研削ユニット40Bの下方の二次加工位置に送り込まれ、この位置で該研削ユニット40Bによりウェーハ1の裏面が仕上げ研削される。
【0028】
加工ステージ11のY方向奥側の端部には、X方向に並ぶ2つのコラム50A,50Bが立設されており、これらコラム50A,50Bの前面に、各研削ユニット40A,40Bが、それぞれZ方向(鉛直方向)に昇降自在に設置されている。各研削ユニット40A,40Bは、各コラム50A,50Bの前面に設けられたZ方向に延びるガイド51にスライダ52を介して摺動自在に装着されており、サーボモータ53によって駆動されるボールねじ式の送り機構54により、スライダ52を介してZ方向に昇降するようになっている。
【0029】
各研削ユニット40A,40Bは同一構成であり、装着される砥石が粗研削用と仕上げ研削用と異なることで、区別される。研削ユニット40A,40Bは、軸方向がZ方向に延びる円筒状のスピンドルハウジング41を有しており、このスピンドルハウジング41内には、スピンドルモータ42によって回転駆動される図示せぬスピンドルシャフトが支持されている。そしてこのスピンドルシャフトの下端に、フランジ43を介して砥石ホイール44が取り付けられている。
【0030】
砥石ホイール44の下面には、複数の砥石45が環状に配列されている。それら砥石45の下面で形成される研削加工面は、上記スピンドルシャフトの軸方向に直交する水平に設定される。したがってその研削加工面は、チャックテーブル30の上面と平行である。砥石45は、例えば、ガラス質のボンド材中にダイヤモンド砥粒を混合して成形し、焼結したものが用いられる。
【0031】
粗研削用の研削ユニット40Aに取り付けられる砥石45は、例えば♯330〜♯400程度の比較的粗い砥粒を含むものが用いられる。また、仕上げ研削用の研削ユニット40Bに取り付けられる砥石45は、例えば♯3000〜♯8000程度の比較的細かい砥粒を含むものが用いられる。各研削ユニット40A,40Bには、被研削面の冷却や潤滑あるいは研削屑の排出のための研削水を供給する研削水供給機構(図示略)が設けられている。
【0032】
砥石ホイール44は上記スピンドルシャフトとともに一体回転し、回転する砥石45の研削外径は、ウェーハ1の直径よりも大きく設定されている。また、ターンテーブル17が所定角度回転して定められるウェーハ1の加工位置は、砥石45の下面である刃先がウェーハ1の回転中心を通過し、チャックテーブル30が回転することによって自転するウェーハ1の裏面全面が研削され得る位置に設定される。
【0033】
ウェーハ1の裏面は、粗研削および仕上げ研削の各加工位置において、各研削ユニット40A,40Bにより研削される。裏面研削は、チャックテーブル30が回転してワーク9を自転させ、送り機構54によって研削ユニット40A(40B)を下方に送りながら、回転する砥石ホイール44の砥石45を、ウェーハ1の露出している裏面に押し付けることによりなされる。
【0034】
粗研削から仕上げ研削を経てウェーハ1は目的厚さまで薄化されるが、厚さの測定は、各加工位置の近傍に設けられた図示せぬ厚さ測定ゲージによってなされる。ウェーハ1の裏面研削は、その厚さ測定ゲージによってウェーハ1の厚さを測定しながら行われ、その測定値に基づいて、送り機構54による砥石ホイール44の送り量が制御される。なお、粗研削では、仕上げ研削後の目的厚さの例えば30〜40μm手前まで研削され、残りが仕上げ研削で研削される。
【0035】
粗研削から仕上げ研削を経てウェーハ1が目的厚さまで薄化されたら、次のようにしてワーク9の回収に移る。まず、仕上げ研削ユニット40Bが上昇してウェーハ1から退避し、次いでターンテーブル17がR方向へ所定角度回転することにより、ワーク9は上記ワーク着脱位置に戻される。次いでチャックテーブル30の真空運転が停止し、この後、ワーク9は供給/回収ステージ12に設けられた回収手段70によってスピンナ式洗浄装置60に搬送される。
【0036】
スピンナ式洗浄装置60では、真空吸着式のスピンナテーブル61に保持して回転させたワーク9のウェーハ1に洗浄水を供給してウェーハ1を洗浄した後、スピンナテーブル61を回転させたまま洗浄水の供給を停止してウェーハ1を乾燥させるといった処理がなされる。スピンナテーブル61は上記チャックテーブル30と同様の構成であって、図12に示すように、枠体62と、上面63aがワーク9の吸着面とされた多孔質材料からなる吸着部63とを備えており、図示せぬ回転駆動機構によって所定速度で回転するものである。
【0037】
以上の工程が、供給カセット14A内のワーク9に対して連続的に繰り返し行われ、ウェーハ1の裏面が研削されて目的厚さに薄化された複数のワーク9が回収カセット14B内に収納される。この後、薄化されたウェーハ1を備えたワーク9は回収カセット14Bごと次の工程に運搬され、最終的にはサブストレート5が剥離された後、ウェーハ1の分割予定ライン2が切断され、複数のチップ3にダイシングされる。
【0038】
[3]回収手段
上記回収手段70は本発明に係るワーク保持機構80を備えており、以下、この回収手段70を詳述する。
図2に示すように、回収手段70は上記供給手段20のX方向奥側に隣接して配設されており、供給手段20と同様の、上下動可能とされた回転軸71と、この回転軸71に固定された水平なアーム72を備えている。アーム72の先端は下方に直角に屈曲しており、その先端にはフランジ73が設けられている。そしてこのフランジ73に、ワーク保持機構80が装着されている。
【0039】
ワーク保持機構80は、図3〜図5に示すように、ワーク9の外周縁を保持する複数(この場合、3個)の保持部材81と、これら保持部材81を放射方向に移動可能に支持する支持プレート91を備えている。保持部材81は、図4および図5に示すように、下方に向かうにつれて径が縮小する円錐状部材の外周面全周に断面略V字状の係合凹部82が形成された滑車状を呈する係合部83と、この係合部83の上面の中心に突設されて上方に延びる円柱状の軸部(被案内支持部)84とから構成されている。
【0040】
図5に示すように、係合部83の外周面は、周溝状の係合凹部82の上方および下方に、それぞれ円錐状のテーパ面82a,82bが形成されたものとなっている。この場合、上側のテーパ面(ワーク受け面)82aの方が下側のテーパ面82bよりも径が大きく外周側に突出している。一方、軸部84には上方に開口するねじ孔84aが形成されている。この保持部材81は、フッ素樹脂等の低摩擦材料によって形成されている。
【0041】
支持プレート91は、ワーク9よりも外径が大きな円板状のもので、外周部に、径方向(放射方向)に延びる複数(この場合、3個)の長孔92が形成されている。そしてこれら長孔92に、保持部材81の軸部84が、長孔92に沿って移動可能に下側から挿通される。また、支持プレート91の上面中心には、大径部93aと小径部93bを有し、中心にねじ孔93cが貫通形成された段付きナット(回動軸)93が同心状に固定されている。保持部材81の係合部83は支持プレート91の下側に配設されており、上側のテーパ面82aは、外周側に向かうにつれて上方の支持プレート91に近付くように傾斜している。
【0042】
上記保持部材81は、支持プレート91に設けられた移動手段100により長孔92に沿って往復動させられる。移動手段100は、回動プレート101と、リンク110と、エアシリンダ(回動駆動手段)120とから構成されている。回動プレート101は、円板部102を主体としており、円板部102の外周縁には、径方向に延びる複数(この場合、3個)のアーム部103が、周方向に等間隔をおいて形成されている。また、円板部102の外周部の、アーム部103の間に当たる箇所には、周方向に沿った円弧孔104が形成されている。円板部102の中心には孔105が形成されており、この孔105が、上記段付きナット93の小径部93bに回転自在に嵌め込まれている。段付きナット93には、回動プレート101の抜け止めをなすねじ94がねじ込まれる。
【0043】
上記リンク110は真っ直ぐな板状部材であって、通常は支持プレート91の径方向に沿って延びており、外周側の一端部と内周側の他端部には、それぞれ孔111,112が形成されている。そして、外周側の孔111が、上記長孔92に挿通されて上方に突出する保持部材81の軸部84に回動自在に嵌め込まれ、軸部84のねじ孔84aには、ねじ113がねじ込まれている。なお、孔111を軸部84に嵌め込む前に、軸部84にはワッシャ114が嵌め込まれている。一方、リンク110の内周側の孔112は、回動プレート101のアーム部103の先端に形成された孔103aに挿通されたピン115に回動自在に嵌め込まれている。すなわちリンク110は、外周側の端部が軸部84を介して保持部材81に回動自在に連結され、内周側の端部がピン115を介して回動プレート101のアーム部103の先端に回動自在に連結されている。
【0044】
上記エアシリンダ120は、シリンダ本体121に対するエアの供給/排出作用によってピストンロッド122が伸縮する構成のもので、ピストンロッド122の先端にはリング123が形成されている。このエアシリンダ120は、シリンダ本体121が支持プレート91上に固定され、ピストンロッド122のリング123が、回動プレート101の1つのアーム部103の中間部分に形成されたピン106に、回動自在に嵌め込まれている。
【0045】
図6(a)に示すように、保持部材81が長孔92の外周側の端部にある時、リンク110および回動プレート101のアーム部103は長孔92と一直線状の平行状態となる。この時、ピストンロッド122は縮小状態であって、アーム部103に直交する。そしてこの状態からピストンロッド122が伸びると、図6(b)に示すように、アーム部103が押されて回動プレート101が回動する。すると、リンク110が内周側に引っ張られ、保持部材81が長孔92を内周側の端部まで移動する。また、この状態からピストンロッド122が縮小すると逆に作動し、図6(a)に示すように、保持部材81は長孔92の外周側の端部まで移動する。
【0046】
このように回動プレート101が回動することにより、各保持部材81は同期して長孔92に沿って往復動させられる。すなわち、エアシリンダ120のピストンロッド122が伸びると、各保持部材81は互いに近付くように内周側に移動し、ピストンロッド122が縮小すると、各保持部材81は互いに離れて広がるように外周側に移動する。なお、保持部材81の往復動をより円滑にする観点から、支持プレート91とアーム部103との間に介在する上記ワッシャ114は、低摩擦部材でできたものが好ましい。
【0047】
上記支持プレート91の下面の外周部には、下方に突出する複数のスペーサピン95が周方向に等間隔をおいて形成されている。この場合、スペーサピン95は、長孔92の間に当たる位置にそれぞれ1個ずつ、計3個が形成されている。スペーサピン95は支持プレート91の下面に直交して突設されており、その長さは、下端が保持部材81の下面よりも下方に位置する寸法に設定されている。ワーク保持機構80は支持プレート91が上記チャックテーブル30の直上に位置付けられて保持部材81によりワーク9を保持するものであるが、その際にスペーサピン95がチャックテーブル30の上面に当接し、これによって保持部材81がチャックテーブル30に接触するこことが起こらないようになされている。なお、スペーサピン95の長さは、保持部材81の下端から、例えば0.5mm程度突出する程度に設定される。
【0048】
支持プレート91の上面の、上記段付きナット93の周囲には、上方に延びる3個の支持柱96が周方向に等間隔をおいて立設されている。各支持柱96は、回動プレート101の各円弧孔104と、アーム72の先端のフランジ73に形成された孔73aにそれぞれ挿通されている。支持柱96の上端面にはねじ孔96aが形成されており、これらねじ孔96aに、フランジ73の上方からねじ97がねじ込まれている。支持柱96はフランジ73の孔73aに対して遊嵌状態で挿通されている。また、支持柱96には、フランジ73と支持プレート91との間に挟まれて圧縮状態とされたコイルばね98が外装されており、このコイルばね98は、円弧孔104に対して遊嵌状態で挿通されている。
【0049】
このような構成により、保持部材81が取り付けられた支持プレート91は、通常時には、コイルばね98によって常に下方に弾性的に付勢されており、ねじ97によって落下が防がれている。そして、支持プレート91に上方へ移動させる応力(このコイルばね98の付勢力よりも大きい)がかかった場合には、コイルばね98が縮小して支持プレート91がフランジ73に近付くように上方に変位することが可能となっている。
【0050】
図5に示すように、アーム72の中心には、弾性材料でできたチューブ(水供給手段)130が通されている。このチューブ130は、アーム72の先端から先端部が出されて、フランジ73の中心に形成された孔73b、段付きナット93にねじ込まれたねじ94に形成された孔94aおよび支持プレート91の中心に形成された孔91aを貫通して配設されている。チューブ130は水供給源に接続され、上記回転軸71内からアーム72内に通されており、支持プレート91の下方に開口する先端から、水が吐出されるようになっている。
【0051】
[4]回収手段の動作
以上の構成からなる回収手段70により、裏面研削されたウェーハ1を備えたワーク9はチャックテーブル30からスピンナ式洗浄装置60に移送される。以下、その動作を図7〜図13(これら図は構成要素を一部省略した概要図としている)を参照して説明する。
【0052】
図7に示すように、上記ワーク着脱位置において、裏面研削されたウェーハ1を備えたワーク9がチャックテーブル30上に吸着、保持されている。回収手段70の回転軸71が上昇した状態でアーム72を旋回させ、ワーク保持機構80をワーク9の上方に位置付ける。ワーク保持機構80は、支持プレート91がワーク9と略同心状になるように位置付けられる。ワーク保持機構80の各保持部材81は外周側に移動させられている。なお、図示例では、アーム72が若干傾倒してフランジ73も傾斜した状態となっており、したがってワーク保持機構80も傾斜している。これは、例えば供給/回収ステージ12への回転軸71の組み付け誤差、あるいは回転軸71へのアーム72の組み付け誤差に基づく。
【0053】
次いで、回転軸71を下降させて、図8に示すように、全てのスペーサピン95がチャックテーブル30の上面に当接するまでワーク保持機構80を下降させる。ワーク保持機構80がアーム72とともに斜めの姿勢になっていても、そのまま下降させることにより、コイルばね98が縮小して全てのスペーサピン95の先端がチャックテーブル30の上面に当接し、これによって支持プレート91はチャックテーブル30と平行になる。この状態で、保持部材81はチャックテーブル30の直上に位置し、また、周囲のスペーサピン95に囲まれる。
【0054】
次に、チャックテーブル30の真空運転を上記ブロー運転に切り替える。すると、ワーク9は図9に示すように浮上し、外周縁が各保持部材81の係合部83の上側テーパ面82aに当接するか、あるいは上側テーパ面82aの直下の高さで停止した状態となる。続いて、チャックテーブル30のブロー運転を停止させると同時に、エアシリンダ120のピストンロッド122を伸ばして回動プレート101を回動させ、図10に示すように各保持部材81を内周側に移動させる。これにより、ワーク9の外周縁に係合部83の係合凹部82が嵌り込み、ワーク9が3つの保持部材81の係合部83に係合し、保持される。ウェーハ1はサブストレート5に貼着されて剛性が確保されているため、撓むことなくほぼ水平な状態で各保持部材81で保持される。
【0055】
各保持部材81でワーク9が保持されたら、図11に示すように回転軸71を上昇させてワーク9を持ち上げるとともに、チューブ130から水Wを吐出させる。水Wは、ワーク9の支持プレート91への対向面である上面、すなわち研削されたウェーハ1の裏面に供給される。このように水を供給しながらアーム72を旋回させて、ワーク保持機構80で保持したワーク9をスピンナ式洗浄装置60に移送する。ワーク9はスピンナテーブル61の上方に同心状に位置付けられた後、回転軸71が下降する。
【0056】
次いで、図12に示すように、全てのスペーサピン95がスピンナテーブル61の上面に当接するまでワーク保持機構80を下降させた後、エアシリンダ120のピストンロッド122を縮小させる。すると、図13に示すように保持部材81が外周側に移動し、ワーク9は係合部83の下側のテーパ面82bを滑り落ちてスピンナテーブル61上に載置される。スピンナテーブル61は、予め真空運転されており、ワーク9はスピンナテーブル61上に吸着、保持される。この後、チューブ130からの水の供給を停止させ、回収手段70をチャックテーブル30からワーク9を取り上げるワーク着脱位置まで戻す。一方、スピンナテーブル61上のワーク9のウェーハ1が洗浄、乾燥処理される。
【0057】
[5]ワーク保持機構の作用効果
上記本実施形態のワーク保持機構80は、ワーク9の外周縁を保持してウェーハ1の被研削面である裏面が上方に露出した状態を保ちつつ、そのウェーハ1の裏面にチューブ130から水を供給しながら、ワーク9をチャックテーブル30からスピンナ式洗浄装置60まで移送する。ウェーハ1は裏面が常に水で濡れた状態でスピンナ式洗浄装置60まで搬送されるので、乾燥が防止される。すなわち、ウェーハ1の裏面は水洗によって汚れが落ちやすい状態が維持され、このため、スピンナ式洗浄装置60においてウェーハ1は十分に洗浄される。
【0058】
また、支持プレート91の下面に突設したスペーサピン95の先端をチャックテーブル30の上面に当接させることにより、支持プレート91をチャックテーブル30と平行にすることができる。また、ワーク9の水平方向の移動をスペーサピン95によって規制することができる。このため、保持部材81にワーク9を導いて保持させることが容易となり、また、保持部材81がチャックテーブル30に接触することが回避されて保持部材81の損傷が防がれる。
【0059】
なお、複数(3個)の保持部材81を往復動させる駆動機構としては、上記実施形態の回動プレート101を1つのエアシリンダ120で回動させる構成に限定はされず、保持部材81個々を独自に駆動するものであってもかまわない。しかしながら、上記実施形態によれば、各保持部材81を個々に往復動させる場合と比べると、部品点数が増加せず、構造を簡素とすることができるため、コスト上昇を抑えられるといった利点がある。
【0060】
なお、上記実施形態は、本発明のワーク保持機構をウェーハ研削加工装置10の回収手段70に適用したものであるが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、他の加工装置におけるワークの搬送手段等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係るウェーハ研削加工装置で裏面研削される半導体ウェーハの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るウェーハ研削加工装置の斜視図である。
【図3】同ウェーハ研削加工装置が備える回収手段の斜視図である。
【図4】同回収手段の分解斜視図である。
【図5】同回収手段の断面図である。
【図6】同回収手段が備える移動手段の作用を示す平面図であって、(a)保持部材を外周側に移動させている状態、(b)保持部材を内周側に移動させている状態である。
【図7】同回収手段によるワーク搬送過程を示す一部断面側面図であって、初期の状態(チャックテーブル上方への位置付け)である。
【図8】同搬送過程を示す一部断面側面図であって、支持プレートのスペーサピンをチャックテーブルに当接させた状態である。
【図9】同搬送過程を示す一部断面側面図であって、ワークを浮上させた状態である。
【図10】同搬送過程を示す一部断面側面図であって、保持部材でワークを保持した状態である。
【図11】同搬送過程を示す一部断面側面図であって、ウェーハ上面に水を供給しながらワークを搬送している状態である。
【図12】同搬送過程を示す一部断面側面図であって、スピンナ式洗浄装置のスピンナテーブル上にワークを搬送した状態である。
【図13】同搬送過程の最後段階を示す一部断面側面図であって、ワークをスピンナテーブル上に保持させた状態である。
【符号の説明】
【0062】
1…ウェーハ
9…ワーク
10…ウェーハ研削加工装置
30…チャックテーブル
32a…チャックテーブルの上面(載置面)
80…ワーク保持機構
81…保持部材
82…係合凹部
82a…上側テーパ面(ワーク受け面)
83…係合部
84…軸部(被案内支持部)
91…支持プレート
92…長孔(案内部)
93…段付きナット(回動軸)
95…スペーサピン
100…移動手段
101…回動プレート
110…リンク
120…エアシリンダ(回動駆動手段)
130…チューブ(水供給手段)
W…水
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の円板状のワークを保持して搬送するためのワーク保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、円板状の半導体ウェーハ(以下、ウェーハ)の表面に格子状の分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、これら矩形領域の表面にICやLSI等の電子回路を形成した後、全ての分割予定ラインを切断する、すなわちダイシングして、1枚のウェーハから多数の半導体チップを得ている。このようにして得られた半導体チップは、樹脂封止によりパッケージングされて、携帯電話やPC(パーソナル・コンピュータ)等の各種電気・電子機器に広く用いられている。
【0003】
このような製造工程において、ウェーハは、多数の半導体チップにダイシングされるに先立ち、電子回路が形成された表面とは反対側の裏面が研削され、所定の厚さに薄化されている。ウェーハの薄化は、機器のさらなる小型化や軽量化の他、熱放散性を向上させることなどを目的としてなされており、例えば、当初厚さの700μm前後から、50〜100μm程度の厚さまで薄化することが行われる。
【0004】
ウェーハを裏面研削する研削加工装置としては、研削前の多数のウェーハが収納される収納カセット、収納カセットから取り出された研削前のウェーハが一時的に載置され、搬送系の位置決めを行うための仮置きテーブル、仮置きテーブルから移されたウェーハを裏面が露出する状態に保持するチャックテーブル、チャックテーブルに保持されたウェーハの裏面を研削するグラインダ等の研削手段、裏面研削されたウェーハがチャックテーブルから移され、ウェーハを洗浄する洗浄部、洗浄部で洗浄されたウェーハが収納されるカセット等を備えたものが知られている(特許文献1,2参照)。
【0005】
ウェーハは、上記工程順にしたがって搬送されるが、上記特許文献1,2に記載の研削加工装置では、上記仮置きテーブルから上記チャックテーブルへのウェーハの移送と、チャックテーブルから上記洗浄部へのウェーハの移送を、真空吸着式のウェーハ保持機構を備えた搬送手段で行っている。この搬送手段は、先端にウェーハ保持機構を備えたアームが旋回することによってウェーハを搬送するものである。ウェーハ保持機構は、下方に向いた吸着パッドの吸着面から空気を吸引する真空運転を行ってウェーハをその吸着面に吸着、保持し、真空運転を停止することでウェーハを吸着パッドから離脱する。
【0006】
【特許文献1】特開2004−91196号公報
【特許文献2】特開2006−344778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記真空吸着式のウェーハ保持機構では、吸着パッドの吸着面が、空気を吸引しながらウェーハの裏面に吸着してウェーハを保持する。このため、ウェーハの裏面は、水分があった場合、その水分が吸引されて乾燥することになる。実際、裏面研削時においてはウェーハの裏面に研削液が供給されるため、裏面研削後のウェーハがウェーハ保持機構に保持されて取り上げられる際には、ウェーハの裏面は研削液で濡れた状態となっており、洗浄部まで搬送される際には、研削液が吸引されて乾燥するといったことが起こっていた。
【0008】
ウェーハの裏面に残る研削液は、裏面研削によって生じた粉状の研削屑等が混じって汚れており、洗浄部はその汚れを除去するところである。しかしながら、ウェーハ保持機構の吸着パッドが吸着することによってウェーハの裏面が乾燥してしまうと、洗浄部で裏面を洗浄しても汚れが落ちにくく、十分に洗浄されないといった不具合が生じていた。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、研削液などによって濡れた状態のウェーハ等のワークを乾燥させることなく目的の場所まで搬送することができ、これによって、例えばワークを十分に洗浄することができるなど、乾燥していないことによる効果を適確に得ることができるワーク保持機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のワーク保持機構は、円板状のワークの外周縁を保持する3個以上の保持部材と、該保持部材で外周縁が保持されるワークに対向して位置付けられ、該保持部材を放射方向に案内する案内部を有し、該案内部に沿って保持部材を移動可能に支持する支持プレートと、保持部材を案内部に沿って移動させる移動手段と、保持部材に保持されたワークの支持プレートへの対向面に水を供給する水供給手段とを少なくとも備えることを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、ワークは保持部材により外周縁を保持されるため、従来の上記吸着パッドによるワーク保持機構と異なり、両面ともが露出した状態に保持される。そして、水供給手段から水が供給されることにより、ワークは常に水で濡れた状態で搬送することができ、乾燥することを防止することができる。したがって、上述の研削加工装置におけるチャックテーブルから洗浄部にウェーハを搬送する搬送機構に、本発明のワーク保持機構を適用すれば、乾燥によって汚れが落ちにくいといったことが起こらず、洗浄部でウェーハを十分に洗浄することができるといった効果を得る。
【0012】
本発明の具体的構成については、以下の形態が挙げられる。
上記案内部は、支持プレートに形成された放射方向に延びる長孔で構成されており、保持部材は、ワークの外周縁に係合する係合凹部を備えた係合部と、該係合部に設けられ、長孔に挿通される被案内支持部とを備えている。
【0013】
また、上記保持部材は、係合凹部に連続し、かつ、該係合凹部に外周縁が係合するワークと支持プレートとの間に形成され、該ワークの外周縁を係合凹部に案内するテーパ状のワーク受け面を有している。
【0014】
また、上記移動手段は、支持プレートの略中心に回動軸を介して回動自在に取り付けられた回動プレートと、各保持部材ごとに設けられ、一端部が該保持部材に、他端部が回動プレートに、それぞれ回動自在に連結されたリンクと、回動プレートを回動させる回動駆動手段とを備えている。
【0015】
本発明のワーク保持機構は、所定の載置面に載置されているワークを上記保持部材で保持するといった使用方法が挙げられる。この場合には、上記支持プレートの、保持部材に保持されたワークへの対向面に、該対向面と載置面との間に一定の間隔を確保する複数のスペーサピンが突設されている形態が好ましい。すなわちこの形態では、スペーサピンが載置面に当接することで、該載置面と支持プレートとが平行になるとともに、スペーサピンによってワークが載置面と平行な方向に移動することが規制されるため、保持部材にワークを導いて保持させることが容易となる。また、保持部材が載置面に接触することが回避されて保持部材の損傷が防がれる。
【0016】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ等の上記半導体ウェーハや、セラミック、ガラス、サファイア、シリコン系の基板等のミクロンオーダーの精度が要求される各種加工材料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、円板状のワークの外周縁を保持部材で保持するとともに、水供給手段によってワークに水を供給することができるため、ウェーハ等のワークを乾燥させることなく搬送することができ、これによって、例えばワークを十分に洗浄することができるなど、乾燥していないことによる効果を適確に得ることができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係るワーク保持機構が適用されたウェーハ研削加工装置を説明する。
[1]半導体ウェーハ
まずはじめに、図1に示す一実施形態に係る半導体ウェーハを説明する。この半導体ウェーハ1(以下、ウェーハ1)はシリコンウェーハ等であって、加工前の厚さは例えば700μm程度のものである。ウェーハ1の表面(図1ではウェーハ1の裏面側を上にしている)には格子状の分割予定ライン2によって複数の矩形状のチップ3が区画されている。これらチップ3の表面には、ICやLSI等の図示せぬ電子回路が形成されている。また、ウェーハ1の周面の所定箇所には、半導体の結晶方位を示すV字状の切欠き(ノッチ)4が形成されている。
【0019】
ウェーハ1は、図2に示すウェーハ研削加工装置10によって裏面が研削されて、例えば50〜100μm程度の厚さに薄化される。ウェーハ研削加工装置10に供されるウェーハ1は、薄化されて剛性が低下した当該ウェーハ1を本実施形態のワーク保持機構で確実に保持して搬送可能にするために、図1に示すように、サブストレート5が表面(図1で下面)に貼着される。サブストレート5は、例えば半導体ウェーハの材料であるシリコン、あるいはガラス等により、外径がウェーハ1と同程度の円板状で、かつ、撓みが生じない程度の厚さに形成されたものが用いられ、適宜な粘着材によってウェーハ1の表面に貼着される。サブストレート5が貼着されたことにより、ウェーハ1は、裏面研削されて薄化されても撓みが生じることなく平らな状態が維持され、その状態で搬送が可能とされる。以下の説明では、図1に示したウェーハ1にサブストレート5が貼着されたものを、本実施形態における搬送対象物であるワーク9と呼ぶ。
【0020】
[2]ウェーハ研削加工装置
図2に示すウェーハ研削加工装置10は、上記ワーク9を真空吸着式のチャックテーブル30に吸着して保持し、2台の研削ユニット(粗研削用と仕上げ研削用)40A,40Bによってウェーハ1の裏面に対し粗研削と仕上げ研削を順次行うものである。以下、この装置10の構成ならびに動作を説明する。
【0021】
図2の符号11はウェーハ1に研削加工を施す加工ステージであり、この加工ステージ11のY方向手前側には、加工ステージ11に研削前のウェーハ1を備えたワーク9を供給し、かつ、研削後のウェーハ1を備えたワーク9を回収する供給/回収ステージ12が併設されている。
【0022】
供給/回収ステージ12のY方向手前側の端部には、X方向に並ぶ2つのエレベータ13A,13Bが設置されている。これらエレベータ13A,13Bのうち、X方向手前側のエレベータ13Aには、裏面研削前のウェーハ1を備えた複数のワーク9を収納する供給カセット14Aがセットされる。また、X方向奥側のエレベータ13Bには、裏面研削後のウェーハ1を備えた複数のワーク9を収納する回収カセット14Bがセットされる。これらカセット14A,14Bは同一構成であって、ワーク9を1枚ずつ積層状態で収納するトレーを備えている。
【0023】
供給カセット14Aに収納されたワーク9は、エレベータ13Aの昇降によって所定の取り出し高さ位置に位置付けられる。そしてそのワーク9は、搬送ロボット15によって供給カセット14Aから取り出され、ウェーハ1の裏面を上に向けた状態で、供給/回収ステージ12に設けられた仮置きテーブル16上に一時的に載置される。仮置きテーブル16に載置されたワーク9は、一定の搬送開始位置に位置決めされる。
【0024】
加工ステージ11上には、R方向に回転駆動されるターンテーブル17が設けられている。そしてこのターンテーブル17上の外周部には、複数(この場合、3つ)の円板状のチャックテーブル30が、周方向に等間隔をおいて配設されている。図7に示すように、チャックテーブル30は枠体31の上面に多孔質材料でできた吸着部32が嵌合されたもので、真空運転されると、吸着部32の上側の空気を吸引し、ワーク9を吸着部32の水平な上面(載置面)32aに吸着、保持する。また、吸着部32は、真空運転時とは逆に、空気が供給されて吸着部32の上方に向けて空気を吹き上げるブロー運転もなされるようになっている。各チャックテーブル30はターンテーブル17に回転自在に支持されており、図示せぬ回転駆動機構によって一方向あるいは両方向に回転させられる。
【0025】
仮置きテーブル16上で位置決めがなされたワーク9は、供給手段20によって仮置きテーブル16から取り上げられ、ワーク着脱位置に位置付けれられた真空運転状態の1つのチャックテーブル30の上方まで搬送される。そしてワーク9は、そのチャックテーブル30上にウェーハ1の裏面を上に向けた状態で同心状に載置される。この場合のワーク着脱位置は、チャックテーブル30が最も供給/回収ステージ12に近接した位置であり、ターンテーブル17の回転によってチャックテーブル30はワーク着脱位置に位置付けられる。供給手段20は、供給/回収ステージ12の、ワーク着脱位置に近接した位置に設けられている。
【0026】
供給手段20は、回転可能、かつ、上下動可能に設けられたZ方向に延びる回転軸21に、水平に延びるアーム22が固定され、このアーム22の先端に、真空吸着式の吸着パッド23が設けられたものである。この供給手段20によれば、回転軸21を回転させてアーム22を旋回させることにより吸着パッド23を仮置きテーブル16上のワーク9の上方に位置付けてから、回転軸21を下降させ、下方に向いた吸着パッド23の吸着面から空気を吸引する真空運転を行うことにより、ワーク9がその吸着面に吸着、保持される。仮置きテーブル16上のワーク9が吸着パッド23で保持されたら、回転軸21が上昇し、アーム22が旋回してワーク9が上記ワーク着脱位置まで搬送され、ここで回転軸21が下降し、真空運転が停止される。これによって、ワーク9は真空運転されているチャックテーブル30に載置される。
【0027】
チャックテーブル30に保持されたワーク9は、ターンテーブル17がR方向へ所定角度回転することにより、粗研削用研削ユニット40Aの下方の一次加工位置に送り込まれ、この位置で該研削ユニット40Aによりウェーハ1の裏面が粗研削される。次いでワーク9は、再度ターンテーブル17がR方向へ所定角度回転することにより、仕上げ研削用研削ユニット40Bの下方の二次加工位置に送り込まれ、この位置で該研削ユニット40Bによりウェーハ1の裏面が仕上げ研削される。
【0028】
加工ステージ11のY方向奥側の端部には、X方向に並ぶ2つのコラム50A,50Bが立設されており、これらコラム50A,50Bの前面に、各研削ユニット40A,40Bが、それぞれZ方向(鉛直方向)に昇降自在に設置されている。各研削ユニット40A,40Bは、各コラム50A,50Bの前面に設けられたZ方向に延びるガイド51にスライダ52を介して摺動自在に装着されており、サーボモータ53によって駆動されるボールねじ式の送り機構54により、スライダ52を介してZ方向に昇降するようになっている。
【0029】
各研削ユニット40A,40Bは同一構成であり、装着される砥石が粗研削用と仕上げ研削用と異なることで、区別される。研削ユニット40A,40Bは、軸方向がZ方向に延びる円筒状のスピンドルハウジング41を有しており、このスピンドルハウジング41内には、スピンドルモータ42によって回転駆動される図示せぬスピンドルシャフトが支持されている。そしてこのスピンドルシャフトの下端に、フランジ43を介して砥石ホイール44が取り付けられている。
【0030】
砥石ホイール44の下面には、複数の砥石45が環状に配列されている。それら砥石45の下面で形成される研削加工面は、上記スピンドルシャフトの軸方向に直交する水平に設定される。したがってその研削加工面は、チャックテーブル30の上面と平行である。砥石45は、例えば、ガラス質のボンド材中にダイヤモンド砥粒を混合して成形し、焼結したものが用いられる。
【0031】
粗研削用の研削ユニット40Aに取り付けられる砥石45は、例えば♯330〜♯400程度の比較的粗い砥粒を含むものが用いられる。また、仕上げ研削用の研削ユニット40Bに取り付けられる砥石45は、例えば♯3000〜♯8000程度の比較的細かい砥粒を含むものが用いられる。各研削ユニット40A,40Bには、被研削面の冷却や潤滑あるいは研削屑の排出のための研削水を供給する研削水供給機構(図示略)が設けられている。
【0032】
砥石ホイール44は上記スピンドルシャフトとともに一体回転し、回転する砥石45の研削外径は、ウェーハ1の直径よりも大きく設定されている。また、ターンテーブル17が所定角度回転して定められるウェーハ1の加工位置は、砥石45の下面である刃先がウェーハ1の回転中心を通過し、チャックテーブル30が回転することによって自転するウェーハ1の裏面全面が研削され得る位置に設定される。
【0033】
ウェーハ1の裏面は、粗研削および仕上げ研削の各加工位置において、各研削ユニット40A,40Bにより研削される。裏面研削は、チャックテーブル30が回転してワーク9を自転させ、送り機構54によって研削ユニット40A(40B)を下方に送りながら、回転する砥石ホイール44の砥石45を、ウェーハ1の露出している裏面に押し付けることによりなされる。
【0034】
粗研削から仕上げ研削を経てウェーハ1は目的厚さまで薄化されるが、厚さの測定は、各加工位置の近傍に設けられた図示せぬ厚さ測定ゲージによってなされる。ウェーハ1の裏面研削は、その厚さ測定ゲージによってウェーハ1の厚さを測定しながら行われ、その測定値に基づいて、送り機構54による砥石ホイール44の送り量が制御される。なお、粗研削では、仕上げ研削後の目的厚さの例えば30〜40μm手前まで研削され、残りが仕上げ研削で研削される。
【0035】
粗研削から仕上げ研削を経てウェーハ1が目的厚さまで薄化されたら、次のようにしてワーク9の回収に移る。まず、仕上げ研削ユニット40Bが上昇してウェーハ1から退避し、次いでターンテーブル17がR方向へ所定角度回転することにより、ワーク9は上記ワーク着脱位置に戻される。次いでチャックテーブル30の真空運転が停止し、この後、ワーク9は供給/回収ステージ12に設けられた回収手段70によってスピンナ式洗浄装置60に搬送される。
【0036】
スピンナ式洗浄装置60では、真空吸着式のスピンナテーブル61に保持して回転させたワーク9のウェーハ1に洗浄水を供給してウェーハ1を洗浄した後、スピンナテーブル61を回転させたまま洗浄水の供給を停止してウェーハ1を乾燥させるといった処理がなされる。スピンナテーブル61は上記チャックテーブル30と同様の構成であって、図12に示すように、枠体62と、上面63aがワーク9の吸着面とされた多孔質材料からなる吸着部63とを備えており、図示せぬ回転駆動機構によって所定速度で回転するものである。
【0037】
以上の工程が、供給カセット14A内のワーク9に対して連続的に繰り返し行われ、ウェーハ1の裏面が研削されて目的厚さに薄化された複数のワーク9が回収カセット14B内に収納される。この後、薄化されたウェーハ1を備えたワーク9は回収カセット14Bごと次の工程に運搬され、最終的にはサブストレート5が剥離された後、ウェーハ1の分割予定ライン2が切断され、複数のチップ3にダイシングされる。
【0038】
[3]回収手段
上記回収手段70は本発明に係るワーク保持機構80を備えており、以下、この回収手段70を詳述する。
図2に示すように、回収手段70は上記供給手段20のX方向奥側に隣接して配設されており、供給手段20と同様の、上下動可能とされた回転軸71と、この回転軸71に固定された水平なアーム72を備えている。アーム72の先端は下方に直角に屈曲しており、その先端にはフランジ73が設けられている。そしてこのフランジ73に、ワーク保持機構80が装着されている。
【0039】
ワーク保持機構80は、図3〜図5に示すように、ワーク9の外周縁を保持する複数(この場合、3個)の保持部材81と、これら保持部材81を放射方向に移動可能に支持する支持プレート91を備えている。保持部材81は、図4および図5に示すように、下方に向かうにつれて径が縮小する円錐状部材の外周面全周に断面略V字状の係合凹部82が形成された滑車状を呈する係合部83と、この係合部83の上面の中心に突設されて上方に延びる円柱状の軸部(被案内支持部)84とから構成されている。
【0040】
図5に示すように、係合部83の外周面は、周溝状の係合凹部82の上方および下方に、それぞれ円錐状のテーパ面82a,82bが形成されたものとなっている。この場合、上側のテーパ面(ワーク受け面)82aの方が下側のテーパ面82bよりも径が大きく外周側に突出している。一方、軸部84には上方に開口するねじ孔84aが形成されている。この保持部材81は、フッ素樹脂等の低摩擦材料によって形成されている。
【0041】
支持プレート91は、ワーク9よりも外径が大きな円板状のもので、外周部に、径方向(放射方向)に延びる複数(この場合、3個)の長孔92が形成されている。そしてこれら長孔92に、保持部材81の軸部84が、長孔92に沿って移動可能に下側から挿通される。また、支持プレート91の上面中心には、大径部93aと小径部93bを有し、中心にねじ孔93cが貫通形成された段付きナット(回動軸)93が同心状に固定されている。保持部材81の係合部83は支持プレート91の下側に配設されており、上側のテーパ面82aは、外周側に向かうにつれて上方の支持プレート91に近付くように傾斜している。
【0042】
上記保持部材81は、支持プレート91に設けられた移動手段100により長孔92に沿って往復動させられる。移動手段100は、回動プレート101と、リンク110と、エアシリンダ(回動駆動手段)120とから構成されている。回動プレート101は、円板部102を主体としており、円板部102の外周縁には、径方向に延びる複数(この場合、3個)のアーム部103が、周方向に等間隔をおいて形成されている。また、円板部102の外周部の、アーム部103の間に当たる箇所には、周方向に沿った円弧孔104が形成されている。円板部102の中心には孔105が形成されており、この孔105が、上記段付きナット93の小径部93bに回転自在に嵌め込まれている。段付きナット93には、回動プレート101の抜け止めをなすねじ94がねじ込まれる。
【0043】
上記リンク110は真っ直ぐな板状部材であって、通常は支持プレート91の径方向に沿って延びており、外周側の一端部と内周側の他端部には、それぞれ孔111,112が形成されている。そして、外周側の孔111が、上記長孔92に挿通されて上方に突出する保持部材81の軸部84に回動自在に嵌め込まれ、軸部84のねじ孔84aには、ねじ113がねじ込まれている。なお、孔111を軸部84に嵌め込む前に、軸部84にはワッシャ114が嵌め込まれている。一方、リンク110の内周側の孔112は、回動プレート101のアーム部103の先端に形成された孔103aに挿通されたピン115に回動自在に嵌め込まれている。すなわちリンク110は、外周側の端部が軸部84を介して保持部材81に回動自在に連結され、内周側の端部がピン115を介して回動プレート101のアーム部103の先端に回動自在に連結されている。
【0044】
上記エアシリンダ120は、シリンダ本体121に対するエアの供給/排出作用によってピストンロッド122が伸縮する構成のもので、ピストンロッド122の先端にはリング123が形成されている。このエアシリンダ120は、シリンダ本体121が支持プレート91上に固定され、ピストンロッド122のリング123が、回動プレート101の1つのアーム部103の中間部分に形成されたピン106に、回動自在に嵌め込まれている。
【0045】
図6(a)に示すように、保持部材81が長孔92の外周側の端部にある時、リンク110および回動プレート101のアーム部103は長孔92と一直線状の平行状態となる。この時、ピストンロッド122は縮小状態であって、アーム部103に直交する。そしてこの状態からピストンロッド122が伸びると、図6(b)に示すように、アーム部103が押されて回動プレート101が回動する。すると、リンク110が内周側に引っ張られ、保持部材81が長孔92を内周側の端部まで移動する。また、この状態からピストンロッド122が縮小すると逆に作動し、図6(a)に示すように、保持部材81は長孔92の外周側の端部まで移動する。
【0046】
このように回動プレート101が回動することにより、各保持部材81は同期して長孔92に沿って往復動させられる。すなわち、エアシリンダ120のピストンロッド122が伸びると、各保持部材81は互いに近付くように内周側に移動し、ピストンロッド122が縮小すると、各保持部材81は互いに離れて広がるように外周側に移動する。なお、保持部材81の往復動をより円滑にする観点から、支持プレート91とアーム部103との間に介在する上記ワッシャ114は、低摩擦部材でできたものが好ましい。
【0047】
上記支持プレート91の下面の外周部には、下方に突出する複数のスペーサピン95が周方向に等間隔をおいて形成されている。この場合、スペーサピン95は、長孔92の間に当たる位置にそれぞれ1個ずつ、計3個が形成されている。スペーサピン95は支持プレート91の下面に直交して突設されており、その長さは、下端が保持部材81の下面よりも下方に位置する寸法に設定されている。ワーク保持機構80は支持プレート91が上記チャックテーブル30の直上に位置付けられて保持部材81によりワーク9を保持するものであるが、その際にスペーサピン95がチャックテーブル30の上面に当接し、これによって保持部材81がチャックテーブル30に接触するこことが起こらないようになされている。なお、スペーサピン95の長さは、保持部材81の下端から、例えば0.5mm程度突出する程度に設定される。
【0048】
支持プレート91の上面の、上記段付きナット93の周囲には、上方に延びる3個の支持柱96が周方向に等間隔をおいて立設されている。各支持柱96は、回動プレート101の各円弧孔104と、アーム72の先端のフランジ73に形成された孔73aにそれぞれ挿通されている。支持柱96の上端面にはねじ孔96aが形成されており、これらねじ孔96aに、フランジ73の上方からねじ97がねじ込まれている。支持柱96はフランジ73の孔73aに対して遊嵌状態で挿通されている。また、支持柱96には、フランジ73と支持プレート91との間に挟まれて圧縮状態とされたコイルばね98が外装されており、このコイルばね98は、円弧孔104に対して遊嵌状態で挿通されている。
【0049】
このような構成により、保持部材81が取り付けられた支持プレート91は、通常時には、コイルばね98によって常に下方に弾性的に付勢されており、ねじ97によって落下が防がれている。そして、支持プレート91に上方へ移動させる応力(このコイルばね98の付勢力よりも大きい)がかかった場合には、コイルばね98が縮小して支持プレート91がフランジ73に近付くように上方に変位することが可能となっている。
【0050】
図5に示すように、アーム72の中心には、弾性材料でできたチューブ(水供給手段)130が通されている。このチューブ130は、アーム72の先端から先端部が出されて、フランジ73の中心に形成された孔73b、段付きナット93にねじ込まれたねじ94に形成された孔94aおよび支持プレート91の中心に形成された孔91aを貫通して配設されている。チューブ130は水供給源に接続され、上記回転軸71内からアーム72内に通されており、支持プレート91の下方に開口する先端から、水が吐出されるようになっている。
【0051】
[4]回収手段の動作
以上の構成からなる回収手段70により、裏面研削されたウェーハ1を備えたワーク9はチャックテーブル30からスピンナ式洗浄装置60に移送される。以下、その動作を図7〜図13(これら図は構成要素を一部省略した概要図としている)を参照して説明する。
【0052】
図7に示すように、上記ワーク着脱位置において、裏面研削されたウェーハ1を備えたワーク9がチャックテーブル30上に吸着、保持されている。回収手段70の回転軸71が上昇した状態でアーム72を旋回させ、ワーク保持機構80をワーク9の上方に位置付ける。ワーク保持機構80は、支持プレート91がワーク9と略同心状になるように位置付けられる。ワーク保持機構80の各保持部材81は外周側に移動させられている。なお、図示例では、アーム72が若干傾倒してフランジ73も傾斜した状態となっており、したがってワーク保持機構80も傾斜している。これは、例えば供給/回収ステージ12への回転軸71の組み付け誤差、あるいは回転軸71へのアーム72の組み付け誤差に基づく。
【0053】
次いで、回転軸71を下降させて、図8に示すように、全てのスペーサピン95がチャックテーブル30の上面に当接するまでワーク保持機構80を下降させる。ワーク保持機構80がアーム72とともに斜めの姿勢になっていても、そのまま下降させることにより、コイルばね98が縮小して全てのスペーサピン95の先端がチャックテーブル30の上面に当接し、これによって支持プレート91はチャックテーブル30と平行になる。この状態で、保持部材81はチャックテーブル30の直上に位置し、また、周囲のスペーサピン95に囲まれる。
【0054】
次に、チャックテーブル30の真空運転を上記ブロー運転に切り替える。すると、ワーク9は図9に示すように浮上し、外周縁が各保持部材81の係合部83の上側テーパ面82aに当接するか、あるいは上側テーパ面82aの直下の高さで停止した状態となる。続いて、チャックテーブル30のブロー運転を停止させると同時に、エアシリンダ120のピストンロッド122を伸ばして回動プレート101を回動させ、図10に示すように各保持部材81を内周側に移動させる。これにより、ワーク9の外周縁に係合部83の係合凹部82が嵌り込み、ワーク9が3つの保持部材81の係合部83に係合し、保持される。ウェーハ1はサブストレート5に貼着されて剛性が確保されているため、撓むことなくほぼ水平な状態で各保持部材81で保持される。
【0055】
各保持部材81でワーク9が保持されたら、図11に示すように回転軸71を上昇させてワーク9を持ち上げるとともに、チューブ130から水Wを吐出させる。水Wは、ワーク9の支持プレート91への対向面である上面、すなわち研削されたウェーハ1の裏面に供給される。このように水を供給しながらアーム72を旋回させて、ワーク保持機構80で保持したワーク9をスピンナ式洗浄装置60に移送する。ワーク9はスピンナテーブル61の上方に同心状に位置付けられた後、回転軸71が下降する。
【0056】
次いで、図12に示すように、全てのスペーサピン95がスピンナテーブル61の上面に当接するまでワーク保持機構80を下降させた後、エアシリンダ120のピストンロッド122を縮小させる。すると、図13に示すように保持部材81が外周側に移動し、ワーク9は係合部83の下側のテーパ面82bを滑り落ちてスピンナテーブル61上に載置される。スピンナテーブル61は、予め真空運転されており、ワーク9はスピンナテーブル61上に吸着、保持される。この後、チューブ130からの水の供給を停止させ、回収手段70をチャックテーブル30からワーク9を取り上げるワーク着脱位置まで戻す。一方、スピンナテーブル61上のワーク9のウェーハ1が洗浄、乾燥処理される。
【0057】
[5]ワーク保持機構の作用効果
上記本実施形態のワーク保持機構80は、ワーク9の外周縁を保持してウェーハ1の被研削面である裏面が上方に露出した状態を保ちつつ、そのウェーハ1の裏面にチューブ130から水を供給しながら、ワーク9をチャックテーブル30からスピンナ式洗浄装置60まで移送する。ウェーハ1は裏面が常に水で濡れた状態でスピンナ式洗浄装置60まで搬送されるので、乾燥が防止される。すなわち、ウェーハ1の裏面は水洗によって汚れが落ちやすい状態が維持され、このため、スピンナ式洗浄装置60においてウェーハ1は十分に洗浄される。
【0058】
また、支持プレート91の下面に突設したスペーサピン95の先端をチャックテーブル30の上面に当接させることにより、支持プレート91をチャックテーブル30と平行にすることができる。また、ワーク9の水平方向の移動をスペーサピン95によって規制することができる。このため、保持部材81にワーク9を導いて保持させることが容易となり、また、保持部材81がチャックテーブル30に接触することが回避されて保持部材81の損傷が防がれる。
【0059】
なお、複数(3個)の保持部材81を往復動させる駆動機構としては、上記実施形態の回動プレート101を1つのエアシリンダ120で回動させる構成に限定はされず、保持部材81個々を独自に駆動するものであってもかまわない。しかしながら、上記実施形態によれば、各保持部材81を個々に往復動させる場合と比べると、部品点数が増加せず、構造を簡素とすることができるため、コスト上昇を抑えられるといった利点がある。
【0060】
なお、上記実施形態は、本発明のワーク保持機構をウェーハ研削加工装置10の回収手段70に適用したものであるが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、他の加工装置におけるワークの搬送手段等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係るウェーハ研削加工装置で裏面研削される半導体ウェーハの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るウェーハ研削加工装置の斜視図である。
【図3】同ウェーハ研削加工装置が備える回収手段の斜視図である。
【図4】同回収手段の分解斜視図である。
【図5】同回収手段の断面図である。
【図6】同回収手段が備える移動手段の作用を示す平面図であって、(a)保持部材を外周側に移動させている状態、(b)保持部材を内周側に移動させている状態である。
【図7】同回収手段によるワーク搬送過程を示す一部断面側面図であって、初期の状態(チャックテーブル上方への位置付け)である。
【図8】同搬送過程を示す一部断面側面図であって、支持プレートのスペーサピンをチャックテーブルに当接させた状態である。
【図9】同搬送過程を示す一部断面側面図であって、ワークを浮上させた状態である。
【図10】同搬送過程を示す一部断面側面図であって、保持部材でワークを保持した状態である。
【図11】同搬送過程を示す一部断面側面図であって、ウェーハ上面に水を供給しながらワークを搬送している状態である。
【図12】同搬送過程を示す一部断面側面図であって、スピンナ式洗浄装置のスピンナテーブル上にワークを搬送した状態である。
【図13】同搬送過程の最後段階を示す一部断面側面図であって、ワークをスピンナテーブル上に保持させた状態である。
【符号の説明】
【0062】
1…ウェーハ
9…ワーク
10…ウェーハ研削加工装置
30…チャックテーブル
32a…チャックテーブルの上面(載置面)
80…ワーク保持機構
81…保持部材
82…係合凹部
82a…上側テーパ面(ワーク受け面)
83…係合部
84…軸部(被案内支持部)
91…支持プレート
92…長孔(案内部)
93…段付きナット(回動軸)
95…スペーサピン
100…移動手段
101…回動プレート
110…リンク
120…エアシリンダ(回動駆動手段)
130…チューブ(水供給手段)
W…水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状のワークの外周縁を保持する3個以上の保持部材と、
該保持部材で外周縁が保持される前記ワークに対向して位置付けられ、該保持部材を放射方向に案内する案内部を有し、該案内部に沿って前記保持部材を移動可能に支持する支持プレートと、
前記保持部材を前記案内部に沿って移動させる移動手段と、
前記保持部材に保持された前記ワークの前記支持プレートへの対向面に水を供給する水供給手段とを少なくとも備えることを特徴とするワーク保持機構。
【請求項2】
前記案内部は、前記支持プレートに形成された前記放射方向に延びる長孔で構成されており、
前記保持部材は、前記ワークの外周縁に係合する係合凹部を備えた係合部と、
該係合部に設けられ、前記長孔に挿通される被案内支持部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のワーク保持機構。
【請求項3】
前記保持部材は、前記係合凹部に連続し、かつ、該係合凹部に外周縁が係合する前記ワークと前記支持プレートとの間に形成され、該ワークの外周縁を前記係合凹部に案内するテーパ状のワーク受け面を有していることを特徴とする請求項2に記載のワーク保持機構。
【請求項4】
前記移動手段は、
前記支持プレートの略中心に回動軸を介して回動自在に取り付けられた回動プレートと、
前記各保持部材ごとに設けられ、一端部が該保持部材に、他端部が前記回動プレートに、それぞれ回動自在に連結されたリンクと、
前記回動プレートを回動させる回動駆動手段とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワーク保持機構。
【請求項5】
前記ワークは所定の載置面に載置されており、
前記支持プレートの、前記保持部材に保持された前記ワークへの対向面に、該対向面と前記載置面との間に一定の間隔を確保する複数のスペーサピンが突設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のワーク保持機構。
【請求項1】
円板状のワークの外周縁を保持する3個以上の保持部材と、
該保持部材で外周縁が保持される前記ワークに対向して位置付けられ、該保持部材を放射方向に案内する案内部を有し、該案内部に沿って前記保持部材を移動可能に支持する支持プレートと、
前記保持部材を前記案内部に沿って移動させる移動手段と、
前記保持部材に保持された前記ワークの前記支持プレートへの対向面に水を供給する水供給手段とを少なくとも備えることを特徴とするワーク保持機構。
【請求項2】
前記案内部は、前記支持プレートに形成された前記放射方向に延びる長孔で構成されており、
前記保持部材は、前記ワークの外周縁に係合する係合凹部を備えた係合部と、
該係合部に設けられ、前記長孔に挿通される被案内支持部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のワーク保持機構。
【請求項3】
前記保持部材は、前記係合凹部に連続し、かつ、該係合凹部に外周縁が係合する前記ワークと前記支持プレートとの間に形成され、該ワークの外周縁を前記係合凹部に案内するテーパ状のワーク受け面を有していることを特徴とする請求項2に記載のワーク保持機構。
【請求項4】
前記移動手段は、
前記支持プレートの略中心に回動軸を介して回動自在に取り付けられた回動プレートと、
前記各保持部材ごとに設けられ、一端部が該保持部材に、他端部が前記回動プレートに、それぞれ回動自在に連結されたリンクと、
前記回動プレートを回動させる回動駆動手段とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワーク保持機構。
【請求項5】
前記ワークは所定の載置面に載置されており、
前記支持プレートの、前記保持部材に保持された前記ワークへの対向面に、該対向面と前記載置面との間に一定の間隔を確保する複数のスペーサピンが突設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のワーク保持機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−56327(P2010−56327A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220195(P2008−220195)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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