説明

不揮発性半導体記憶装置および不揮発性半導体記憶装置の製造方法

【課題】プロセス中における高誘電体膜の構成原子の飛散を防止することでデバイス特性の劣化を回避する。
【解決手段】メモリセル110とトランジスタ120とがシリコン基板101に形成された不揮発性半導体記憶装置100において、トランジスタ120を構成する積層膜120Tの側面に、少なくとも高誘電体膜124の側面を覆うサイドウォール127を下部ゲート122からシリコンゲート126にかけて形成する。サイドウォール127の材料としては、例えばSiGeなどのような高誘電体膜124の構成原子が飛散することを防止可能な導電体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体記憶装置および不揮発性半導体記憶装置の製造方法に関し、例えばメモリセルおよび周辺回路が同一基板に形成された不揮発性半導体記憶装置および不揮発性半導体記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NAND型フラッシュメモリなどの不揮発性半導体記憶装置においては、小型化および高集積化を実現するために、MONOS(Metal−Oxide−Nitride−Oxide−Semiconductor)構造のメモリセルが採用されるようになってきた。また近年では、メモリセル部の更なる微細化を目的として、電荷蓄積膜である窒化膜上の絶縁膜を従来のシリコン酸化膜よりも高誘電率を有する材料(High−k材料)で形成することが検討されている。
【0003】
上記のような不揮発性半導体記憶装置では、メモリセルとトランジスタなどの周辺回路とが同一の半導体基板に作り込まれることが一般的であった。この際、メモリセルと周辺回路との層構造を同様の構造とすることで、一括した加工が可能となるため、製造工程の煩雑化を回避することが可能である(例えば以下に示す特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、製造プロセスにおける例えば熱処理の際に高誘電体膜がチャンバ内雰囲気中に露出していると、その構成原子が飛散して酸化膜などの他の層に入り込み、これに固定電荷を形成してしまう場合がある。特にトランジスタなどの周辺回路においては、高精度のしきい値制御が要求されるため、上記のようにゲート絶縁膜に固定電荷が形成されてしまうと、しきい値制御が困難となり、デバイス特性が劣化してしまうという問題が発生する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−136416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、プロセス中における高誘電体膜の構成原子の飛散を防止することでデバイス特性の劣化を回避できる不揮発性半導体記憶装置および不揮発性半導体記憶装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の一形態による不揮発性半導体記憶装置は、第1領域と第2領域とを含む半導体基板と、窒化膜と、該窒化膜上の第1高誘電体膜と、該第1高誘電体膜上の制御ゲートとを含み、前記半導体基板における前記第1領域上に第1絶縁膜を介して形成された第1積層膜と、下部ゲートと、該下部ゲート上の第2高誘電体膜と、該第2高誘電体膜上の上部ゲートとを含み、前記半導体基板における前記第2領域上に第2絶縁膜を介して形成された第2積層膜と、前記第2積層膜の側面における少なくとも前記第2高誘電体膜の側面を覆うように前記下部ゲートから前記上部ゲートにかけて形成された導電性を有するサイドウォールと、を備えたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の一形態による不揮発性半導体記憶装置の製造方法は、第1および第2領域を備えた半導体基板上面に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、窒化膜と、該窒化膜上の第1高誘電体膜と、該第1高誘電体膜上の制御ゲートとを含む第1積層膜を半導体基板の前記第1領域上における前記絶縁膜上に形成し、下部ゲートと、該下部ゲート上の第2窒化膜と、該第2窒化膜上の第2高誘電体膜と、該第2高誘電体膜上の上部ゲートとを含む第2積層膜を前記半導体基板の前記第2領域上における前記絶縁膜上に形成する積層膜形成工程と、前記第2積層膜の側面における少なくとも前記第2高誘電体膜の側面を覆うように前記下部ゲートから前記上部ゲートにかけて導電性を有するサイドウォールを形成するサイドウォール形成工程と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プロセス中における高誘電体膜の構成原子の飛散を防止することでデバイス特性の劣化を回避できる不揮発性半導体記憶装置および不揮発性半導体記憶装置の製造方法を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の説明において、各図は本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。さらに、後述において例示する数値は一例に過ぎず、従って、本発明は例示された数値に限定されるものではない。
【0011】
〔構成〕
図1は、本実施の形態にかかる不揮発性半導体記憶装置100の構成の一例を模式的に示す断面図である。なお、図1では、基板(シリコン基板101)と垂直な面であってメモリセル110およびトランジスタ120それぞれをチャネル長方向に沿った面で切断した際の断面を示す。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態で例示する不揮発性半導体記憶装置100は、半導体基板としてのシリコン基板101におけるメモリセル形成領域110A(例えば第1領域)上に形成されたメモリセル110と、同じくシリコン基板101における周辺回路形成領域120A(例えば第2領域)上に形成されたトランジスタ120とを備える。シリコン基板101には、例えばしきい値調整のために所定の不純物がドーピングされている。また、シリコン基板101には1つ以上のメモリセル形成領域110Aおよび周辺回路形成領域120Aが配列されている。各メモリセル形成領域110Aおよび周辺回路形成領域120A間は、適宜、素子分離絶縁膜102により電気的に分離されている。
【0013】
(メモリセルの構成)
図1におけるメモリセル110は、シリコン基板101上にトンネル酸化膜111(例えば第1絶縁膜)を介して形成されたメサ状の積層膜110T(例えば第1積層膜)と、シリコン基板101の上層部分であって積層膜110T下の領域を挟む対の領域に形成されたソース118sおよびドレイン118dとを有する。また、積層膜110Tは、下層から順に、例えば電荷蓄積膜113(例えば窒化膜)と高誘電体膜114(例えば第1高誘電体膜)とメタルゲート115およびシリコンゲート116(例えば制御ゲート)とを含んで構成されている。
【0014】
上記のメモリセル110において、シリコン基板101上面に形成されたトンネル酸化膜111は、シリコン基板101と上層の電荷蓄積膜113とを電気的に分離するための絶縁膜であり、例えばシリコン酸化(SiO)膜などで構成することができる。その膜厚は、例えば4〜5nm程度とすることができる。
【0015】
トンネル酸化膜111上の電荷蓄積膜113は、いわゆる浮遊ゲートとして機能する膜であり、データの書き込み時にトンネル酸化膜111を通過して注入されたトンネル電子をトラップすることでデータを保持する膜である。電荷蓄積膜113は、例えばシリコン酸化(SiN)膜で形成することができ、その膜厚は例えば5nm程度とすることができる。
【0016】
電荷蓄積膜113上の高誘電体膜114は、電荷蓄積膜113と上層の制御ゲートとを電気的に分離するための膜であり、例えばハフニウム酸化物(HfO)やハフニウム珪化酸化窒化物(HfSiON)やアルミナ(Al)やジルコニウム酸化物(ZrO)など、トンネル酸化膜111に用いられているシリコン酸化物(SiO)よりも比誘電率の大きい高誘電体(High−k)材料を用いて形成される。このように、電荷蓄積膜113(浮遊ゲート)と制御ゲートとの間に高誘電体膜114を配置することで、従来のようにシリコン酸化膜を配置した場合よりも、電荷蓄積膜113(浮遊ゲート)と制御ゲートとの間の容量結合を増大させることが可能となる。この結果、高誘電体膜114の薄膜化が可能となり、不揮発性半導体記憶装置100の更なる微細化が可能となる。本実施の形態では、高誘電体膜114を例えばHfOで形成し、その膜厚を例えば10〜17nm程度とする。
【0017】
高誘電体膜114上のメタルゲート115は、高誘電体膜114と上層のシリコンゲート116とが直接接触することを防止するための膜である。本実施の形態によるシリコンゲート116は例えば不純物を含むことで導電性を備えたポリシリコンなどで形成することができるが、一般的にポリシリコン膜と高誘電体膜とを接触させると、これらの界面で不具合が生じ、結果的に半導体装置の動作電圧が上昇してしまう場合がある。さらに、ポリシリコン膜の内部でいわゆるフォノン振動が発生し、電子の流れが阻害されてしまう場合もある。そこで本実施の形態のように、高誘電体膜114とシリコンゲート116(ポリシリコン膜)との間に金属製の膜であるメタルゲート115を設けることで、高誘電体膜114とシリコンゲート116(ポリシリコン膜)とが直接接触することを回避できる。この結果、高誘電体膜114の特性を十分に発揮させ、高性能の不揮発性半導体記憶装置100を実現することが可能となる。本実施の形態では、メタルゲート115を例えばタンタル窒化物(TaN)とタングステン(W)とタングステン窒化物(WN)との積層膜で形成し、その合計の膜厚を例えば10〜13nm程度とする。ただし、本発明ではこれに限定されず、例えばチタン窒化物(TiN)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、銀(Ag)またはWなどで形成された単層膜、もしくはこれらのうちいずれかを含む多層膜など、メタルゲートとして使用可能な種々の膜を適用することができる。
【0018】
メタルゲート115上のシリコンゲート116は、上述したように、例えば所定の不純物を含むことで導電性を備えたポリシリコン膜で形成される。その膜厚は、例えば100nm程度とすることができる。このシリコンゲート116とその下層のメタルゲート115との二層が、メモリセル110における制御ゲートを形成する。
【0019】
また、シリコン基板101の上層部分であって積層膜110T下の領域を挟む対の領域には、ソース118sおよびドレイン118dが形成されている。ソース118sおよびドレイン118dは、所定の不純物を注入し、これを拡散および活性化させることで低抵抗化された不純物拡散領域である。本実施の形態において、所定の不純物としては、例えばリン(P)イオンやヒ素(As)イオンなどのようなn型の導電性を有するドーパント、あるいは、ボロン(B)イオンなどのようなp型の導電性を有するドーパントを適用することができる。なお、シリコン基板101上層におけるソース118sおよびドレイン118dで挟まれた領域は、書き込み時または動作時にチャネルが形成される、いわゆるチャネル形成領域として機能する。
【0020】
(トランジスタの構成)
また、図1におけるトランジスタ120は、シリコン基板101上にゲート酸化膜121(例えば第2絶縁膜)を介して形成されたメサ状の積層膜120T(例えば第2積層膜)と、積層膜120Tの側面に形成されたサイドウォール127と、シリコン基板101の上層部分であって積層膜120Tおよびサイドウォール127下の領域を挟む対の領域に形成されたソース128sおよびドレイン128dとを有する。また、積層膜120Tは、下層から順に、例えば下部ゲート122と絶縁膜123と高誘電体膜124(例えば第2高誘電体膜)とメタルゲート125およびシリコンゲート126(例えば上部ゲート)とを含んで構成されている。
【0021】
上記のトランジスタ120において、シリコン基板101上面に形成されたゲート酸化膜121は、上層の下部ゲート122とシリコン基板101とを電気的に分離するための膜であり、例えばメモリセル110におけるトンネル酸化膜111と同じ膜(シリコン酸化膜)で形成することができる。その膜厚も、例えば4〜5nm程度とすることができる。
【0022】
ゲート酸化膜121上の下部ゲート122は、トランジスタ120を駆動する際の実効ゲートであり、例えば所定の不純物を含むことで導電性を備えたポリシリコン膜などで形成することができる。また、その膜厚は、例えば20nm程度とすることができる。
【0023】
下部ゲート122上の絶縁膜123、高誘電体膜124、メタルゲート125およびシリコンゲート126は、それぞれメモリセル110における電荷蓄積膜113、高誘電体膜114、メタルゲート125およびシリコンゲート116と同一工程で形成された膜である。よって、説明の簡略化のため、これらの詳細についての説明は省略する。なお、このような積層膜120T中のシリコンゲート126とメタルゲート125との二層が、トランジスタ120における上部ゲートを形成する。
【0024】
また、積層膜120Tにおける少なくとも高誘電体膜124の側面には、周辺回路形成領域120A上に形成された高誘電体膜124がプロセス中の例えば熱処理中において露出することを防止するためのサイドウォール127が形成されている。本実施の形態では、例えば積層膜120Tにおける下部ゲート122からシリコンゲート126にかけての側面にサイドウォール127が形成されている。
【0025】
サイドウォール127は、高誘電体膜124の構成原子の特に金属元素がプロセス中の例えば熱処理中に飛散することを防止するための膜である。これにより、高誘電体膜124の構成原子がプロセス中に飛散して例えばゲート酸化膜121内に入り込み、これに固定電荷を形成することを防止できる。この結果、不揮発性半導体記憶装置100におけるトランジスタ120のしきい値制御が困難となることを回避できる。
【0026】
また、本実施の形態では、高誘電体膜124の構成原子と反応することでシリケートやシリサイドなどの反応物を形成することが可能な材料を用いてサイドウォール127を形成することが好ましい。これにより、高誘電体膜124から拡散した構成原子と反応して高誘電体膜124とサイドウォール127との界面に反応膜127aが形成されるように構成されるため、高誘電体膜124から拡散した構成原子をサイドウォール127内部に封じ込めることがより確実に達成される。すなわち、サイドウォール127が、物理的に構成原子の飛散を防止する膜として機能するだけでなく、化学的に構成原子の飛散を防止する膜としても機能するため、高誘電体膜124を構成する原子の飛散防止効果をより高めることが達成される。
【0027】
さらに、本実施の形態では、図示しない上層配線などと電気的に接続される上部ゲートとトランジスタ120の実効ゲートである下部ゲート122とを電気的に接続するための構成としてもサイドウォール127を使用する。これにより、例えばトランジスタ120の積層膜120Tにおける絶縁性の膜(絶縁膜123、高誘電体膜124など)にスルーホールを形成し、これに導電性の材料を埋め込むことで上部ゲートと下部ゲート122とを電気的に接続するという煩雑な構成および製造工程が不要となるため、結果的に不揮発性半導体記憶装置100の構成および製造方法が複雑化することを回避できる。なお、本実施の形態では、サイドウォール127を下部ゲート122からシリコンゲート126にかけて形成しているが、サイドウォール127は下部ゲート122から少なくとも上部ゲートの一部であるメタルゲート125にかけて形成されればよい。
【0028】
以上のような高誘電体膜124の構成原子の飛散防止効果と導電性とを兼ね備えた材料としては、例えばシリコンゲルマニウム(SiGe)が存在する。ただし、これに限定されず、例えば高誘電体膜124の構成原子のうちの金属元素を含有することなく導電性を有するポリシリコン膜、チタン(Ti)またはTi合金膜、銅(Cu)またはCu合金膜、モリブデン(Mo)またはMo合金膜、金(Au)またはAu合金膜、白金(Pt)またはPt合金膜、銀(Ag)またはAg合金膜、および、タングステン(W)またはW合金膜などのような導電性を有する単層膜、もしくはこれらのうちいずれかを含むような導電性の多層膜など、高誘電体膜124(114)の構成原子が飛散することを防止可能な膜であって導電性を有する膜であれば如何なる膜を用いてサイドウォール127を形成しても良い。なお、本実施の形態では、SiGeを用いてサイドウォール127を形成した場合を例に挙げる。また、そのゲート長方向における最も肉厚な部分の膜厚は、例えば5〜10nm程度とすることができる。
【0029】
また、シリコン基板101の上層部分であって積層膜120T下の領域を挟む対の領域には、ソース128sおよびドレイン128dが形成されている。ソース128sおよびドレイン128dは、メモリセル110におけるソース128sおよびドレイン128dと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、シリコン基板101上層におけるソース128sおよびドレイン128dで挟まれた領域は、動作時にチャネルが形成される、いわゆるチャネル形成領域として機能する。
【0030】
〔製造方法〕
次に、本実施の形態による不揮発性半導体記憶装置100の製造方法を、図面を用いて詳細に説明する。図2(a)から図6は、本実施の形態による不揮発性半導体記憶装置100の製造方法における各プロセス段階での断面構造を模式的に示す図である。なお、図2(a)から図6では、図1に示す断面に対応する断面を示す。
【0031】
本製造方法では、まず、しきい値調整用に所定の不純物がドーピングされたシリコン基板101(例えば半導体基板)を準備し、これの上面に、例えばLOCOS(Local Oxidation Of Silicon)法を用いてシリコン酸化膜よりなる素子分離絶縁膜102(図2(a)参照)を形成する。これにより、シリコン基板101上層が、メモリセル形成領域110A(例えば第1領域)と周辺回路形成領域120A(例えば第2領域)とを含む複数の素子形成領域に区画される。続いて、例えば熱酸化法を用いることで、図2(a)に示すように、シリコン基板101上面に、膜厚が例えば4〜5nm程度のシリコン酸化膜111A(例えば絶縁膜)を形成する(例えば絶縁膜形成工程)。なお、素子分離法には、上記のLOCOS法に限らず、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法など、種々の素子分離技術を適用することが可能である。
【0032】
次に、例えばリフトオフ法を用いることで、シリコン基板101の周辺回路形成領域120A上におけるシリコン酸化膜111A上に、所定の不純物を含むことで導電性を有するポリシリコン膜122A(例えば第1導電体膜)を選択的に形成する(例えば第1ステップ)。具体的には、シリコン基板101上のシリコン酸化膜111A表面全体に、例えばフォトレジスト液をスピン塗布し、これを露光および現像処理することで、周辺回路形成領域120A上におけるシリコン酸化膜111A上に開口を有するレジスト膜R1(図2(b)参照)を形成する。続いて、例えばスパッタリング法を用いることで、レジスト膜R1上およびこれの開口により露出されているシリコン酸化膜111A上に、ポリシリコンを堆積する。これにより、図2(b)に示すように、膜厚が例えば20nm程度のポリシリコン膜122Aがレジスト膜R1上および周辺回路形成領域120A上におけるシリコン酸化膜111A上に成膜される。その後、例えばアッシングにより、またはアセトンなどの剥離液を用いてレジスト膜R1を除去する。この結果、レジスト膜R1上のポリシリコン膜122Aがリフトオフにより除去されると共に、周辺回路形成領域120A上におけるシリコン酸化膜111A上にポリシリコン膜122Aが形成される。なお、ポリシリコン膜122Aに含まれる所定の不純物は、ポリシリコンの堆積時にドープされたものであっても、成膜後のイオン注入によりドープされたものであっても良い。
【0033】
次に、図2(c)に示すように、シリコン酸化膜111Aおよびポリシリコン膜122Aが形成されたシリコン基板101上全体に、シリコン窒化膜113Aと高誘電体膜114Aと金属膜115Aおよびポリシリコン膜116A(例えば第2導電体膜)とを順次成膜する(例えば第2〜第4ステップ)。具体的には、まず、例えばCVD法もしくはプラズマ窒化法を用いることで、シリコン基板101上面におけるシリコン酸化膜111Aおよびポリシリコン膜122A表面に、膜厚が例えば5nm程度のシリコン窒化膜113Aを形成する。続いて、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法を用いることで、シリコン窒化膜113A表面に、膜厚が例えば10〜17nm程度の例えばHfOよりなる高誘電体膜114Aを形成する。続いて、例えばMOCVD(Metal Organic CVD)法を用いることで、高誘電体膜114A表面に、例えばTaNとWとWNとの積層膜よりなる金属膜115Aを、合計の膜厚が例えば10〜13nm程度となるように形成する。続いて、例えばスパッタリング法を用いることで、金属膜115A表面に、膜厚が例えば100nm程度のポリシリコン膜116Aを形成する。なお、ポリシリコン膜116Aは所定の不純物を含むことで導電性を有する。この所定の不純物は、ポリシリコンの堆積時にドープされたものであっても、成膜後のイオン注入によりドープされたものであっても良い。
【0034】
以上のように、シリコン窒化膜113Aと高誘電体膜114Aと金属膜115Aとポリシリコン膜116Aとよりなる積層膜を形成すると、次に、例えばCVD法を用いることで、ポリシリコン膜116A表面に、膜厚が例えば300nm程度のシリコン酸化膜を形成する。続いて、形成したシリコン酸化膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることで、メモリセル110における積層膜110Tの上面形状およびトランジスタ120における積層膜120Tの上面形状と対応したパターンのマスク酸化膜M1(図3(a)参照)を形成する。続いて、マスク酸化膜M1をマスクとして用いつつ、例えばRIE(Reactive Ion Etching)などの異方性ドライエッチング技術を用いてポリシリコン膜116Aと金属膜115Aと高誘電体膜114Aとシリコン窒化膜113Aとを順次エッチングする(例えば第5ステップ)。これにより、図3(a)に示すように、シリコン基板101のメモリセル形成領域110A上におけるシリコン酸化膜111A上に、電荷蓄積膜113(例えば第1窒化膜)と高誘電体膜114(例えば第1高誘電体膜)とメタルゲート115およびシリコンゲート116(例えば制御ゲート)とよりなるメサ状の積層膜110t(例えば第1積層膜)が形成されると共に、シリコン基板101の周辺回路形成領域120A上におけるシリコン酸化膜111A上に、下部ゲート122と絶縁膜123(例えば第2窒化膜)と高誘電体膜124(例えば第2高誘電体膜)とメタルゲート125およびシリコンゲート126(例えば上部ゲート)とよりなるメサ状の積層膜120t(例えば第2積層膜)が形成される(例えば積層膜形成工程)。このように、本実施の形態では、メモリセル110と周辺回路であるトランジスタ120とが同様の積層膜構造を有しているため、メモリセル110とトランジスタ120とで区別すること無く、一括して加工することでメモリセル110の積層膜110tおよびトランジスタ120の積層膜120tを形成することが可能である。
【0035】
次に、例えばCVD法を用いることで、図3(b)に示すように、積層膜110tおよび120t並びにシリコン酸化膜111Aが形成されたシリコン基板101上全体に、膜厚が例えば5〜10nm程度のSiGe膜127Aを形成する。次に、例えばフッ素系ガスを用いたRIEによりSiGe膜127Aを異方性ドライエッチングすることで、図4(a)に示すように、積層膜110tおよび120tそれぞれの側面に、ゲート長方向における最も肉厚な部分の膜厚が5〜10nm程度のSiGe膜よりなるサイドウォール117および127を形成する(例えばサイドウォール形成工程)。なお、SiGe膜127Aの異方性ドライエッチングでは、三フッ化塩素(ClF)などのガスをエッチングガスとして用いることができる。
【0036】
次に、積層膜110tおよび120t、サイドウォール117および127並びにシリコン酸化膜111Aが形成されたシリコン基板101上全体にフォトレジスト液をスピン塗布し、これを露光および現像処理することで、図4(b)に示すように、シリコン基板101の周辺回路形成領域120A上に形成された積層膜120tおよびサイドウォール127を覆うレジスト膜R2を形成する。次に、レジスト膜R2をマスクとして用いつつ、例えばメタン(CH)をエッチングガスとしたCDE(Chemical Dry Etching)によるドライエッチングを行なうことで、図5(a)に示すように、メモリセル形成領域110A上の積層膜110t側面に形成されたサイドウォール117を選択的に除去する。ただし、これに限定されず、例えばフッ化水素(HF)と過酸化水素水(H)と酢酸(CHCOOH)とを1:2:3の割合で混ぜた混合液をエッチャントとするウェットエッチングによっても、メモリセル形成領域110A上の積層膜110t側面に形成されたサイドウォール117を除去することが可能である。
【0037】
次に、アッシングにより、またはアセトンなどの剥離液を用いてレジスト膜R2を除去した後、例えばフッ素系ガスを用いたドライエッチングもしくはリン酸系水溶液を用いたウェットエッチングによって、露出しているシリコン酸化膜111Aを除去する。これにより、図5(b)に示すように、メモリセル形成領域110A上の積層膜110t下にトンネル酸化膜111が形成され、周辺回路形成領域120A上の積層膜120t下にゲート酸化膜121が形成される。そしてこの結果、図5(b)に示すように、シリコン基板101のメモリセル形成領域110A上に、トンネル酸化膜111を介して、電荷蓄積膜113と高誘電体膜114とメタルゲート115とシリコンゲート116とからなるメサ状の積層膜110Tが形成され、シリコン基板101の周辺回路形成領域120A上に、ゲート酸化膜121を介して、下部ゲート122と絶縁膜123と高誘電体膜124とメタルゲート125とシリコンゲート126とからなるメサ状の積層膜120Tが形成される。
【0038】
次に、例えばイオン注入法を用いることで、積層膜110T並びに積層膜120Tおよびサイドウォール127をマスクとして用いつつ、シリコン基板101上層に所定の不純物イオンを注入する。これにより、図6に示すように、シリコン基板101上層に、積層膜110T下の領域、並びに、積層膜120Tおよびサイドウォール127下の領域を相互に挟む不純物注入領域118aを形成する。次に、例えばアニール装置を用いて所定の不純物が注入されたシリコン基板101を熱処理することで、不純物注入領域118aに注入された不純物を拡散および活性化させる。これにより、図1に示すように、メモリセル形成領域110Aにおけるシリコン基板101上層に積層膜110T下の領域を挟む対のソース118sおよびドレイン118dが形成され、周辺回路形成領域120Aにおけるシリコン基板101上層に積層膜120Tおよびサイドウォール127下の領域を挟む対のソース128sおよびドレイン128dが形成される。また、例えばこの際の熱処理の工程において、高誘電体膜124の構成原子がサイドウォール127へ拡散し、サイドウォール127の構成原子と反応することで、高誘電体膜124とサイドウォール127との界面に反応膜127aが形成される。
【0039】
以上の工程を経ることで、図1に示す断面構造を有する本実施の形態による不揮発性半導体記憶装置100が製造される。なお、以上の工程の後、層間絶縁膜、ビアコンタクト並びに上層のメタル配線が形成されるが、本実施の形態では、説明の簡略化のため、これらの工程の説明を省略する。
【0040】
また、上記実施の形態は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、仕様等に応じて種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施の形態が可能であることは上記記載から自明である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態にかかる不揮発性半導体記憶装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態による不揮発性半導体記憶装置の製造方法における各プロセス段階での断面構造を模式的に示す図である(1)。
【図3】本発明の実施の形態による不揮発性半導体記憶装置の製造方法における各プロセス段階での断面構造を模式的に示す図である(2)。
【図4】本発明の実施の形態による不揮発性半導体記憶装置の製造方法における各プロセス段階での断面構造を模式的に示す図である(3)。
【図5】本発明の実施の形態による不揮発性半導体記憶装置の製造方法における各プロセス段階での断面構造を模式的に示す図である(4)。
【図6】本発明の実施の形態による不揮発性半導体記憶装置の製造方法における各プロセス段階での断面構造を模式的に示す図である(5)。
【符号の説明】
【0042】
100 不揮発性半導体記憶装置、101 シリコン基板、110 メモリセル、110A メモリセル形成領域、110T,110t,120T,120t 積層膜、111 トンネル酸化膜、111A シリコン酸化膜、113 電荷蓄積膜、113A シリコン窒化膜、114,114A,124 高誘電体膜、115,125 メタルゲート、115A 金属膜、116,126 シリコンゲート、116A,122A ポリシリコン膜、117,127 サイドウォール、118a 不純物注入領域、118d,128d ドレイン、118s,128s ソース、120 トランジスタ、120A 周辺回路形成領域、121 ゲート酸化膜、122 下部ゲート、123 絶縁膜、127A SiGe膜、127a 反応膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と第2領域とを含む半導体基板と、
窒化膜と、該窒化膜上の第1高誘電体膜と、該第1高誘電体膜上の制御ゲートとを含み、前記半導体基板における前記第1領域上に第1絶縁膜を介して形成された第1積層膜と、
下部ゲートと、該下部ゲート上の第2高誘電体膜と、該第2高誘電体膜上の上部ゲートとを含み、前記半導体基板における前記第2領域上に第2絶縁膜を介して形成された第2積層膜と、
前記第2積層膜の側面における少なくとも前記第2高誘電体膜の側面を覆うように前記下部ゲートから前記上部ゲートにかけて形成された導電性を有するサイドウォールと、
を備えたことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第2高誘電体膜と前記サイドウォールとの界面に、該第2高誘電体膜の構成原子と該サイドウォールの構成原子とが反応することで形成された反応膜を備えたことを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記サイドウォールは、SiGe膜、ポリシリコン膜、TiまたはTi合金膜、CuまたはCu合金膜、MoまたはMo合金膜、AuまたはAu合金膜、PtまたはPt合金膜、AgまたはAg合金膜、および、WまたはW合金膜のうち少なくともいずれか1つを含む単層または多層膜で形成されていることを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
第1および第2領域を備えた半導体基板上面に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
第1窒化膜と、該第1窒化膜上の第1高誘電体膜と、該第1高誘電体膜上の制御ゲートとを含む第1積層膜を半導体基板の前記第1領域上における前記絶縁膜上に形成し、下部ゲートと、該下部ゲート上の第2窒化膜と、該第2窒化膜上の第2高誘電体膜と、該第2高誘電体膜上の上部ゲートとを含む第2積層膜を前記半導体基板の前記第2領域上における前記絶縁膜上に形成する積層膜形成工程と、
前記第2積層膜の側面における少なくとも前記第2高誘電体膜の側面を覆うように前記下部ゲートから前記上部ゲートにかけて導電性を有するサイドウォールを形成するサイドウォール形成工程と、
を含むことを特徴とする不揮発性半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記積層膜形成工程は、
前記半導体基板の前記第2領域上における前記絶縁膜上に選択的に第1導電体膜を形成する第1ステップと、
前記半導体基板の前記第1領域上における前記絶縁膜上および前記第1導電体膜上に窒化膜を形成する第2ステップと、
前記窒化膜上に高誘電体膜を形成する第3ステップと、
前記高誘電体膜上に第2導電体膜を形成する第4ステップと、
前記第2導電体膜と前記高誘電体膜と前記窒化膜と前記第1導電体膜とを加工することで、前記第1領域上の前記絶縁膜上に前記第1積層膜を形成すると共に前記第2領域上の前記絶縁膜上に前記第2積層膜を形成する第5ステップと、
を含むことを特徴とする請求項4記載の不揮発性半導体記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−267216(P2009−267216A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117006(P2008−117006)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】