説明

交通情報配信システム

【課題】交通情報における方向の間違いを抑制することができる交通情報配信システムを提供すること。
【解決手段】車両の位置を示す座標、速度、方向を含むプローブデータを送信するナビゲーション装置1と、複数のナビゲーション装置1からプローブデータを収集して道路の渋滞の程度を示す交通情報を生成し、生成した交通情報を複数のナビゲーション装置1に配信する情報センター2とを含む交通情報配信システムであって、情報センター2は、交通情報に基づいて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されているか否かを判定し、渋滞が緩和されていると判定した場合は、交通情報の方向を逆転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の車両から位置、速度等のプローブデータを収集して道路の渋滞の程度を示す交通情報を生成し、生成した交通情報を車両に配信する交通情報配信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、センターが走行中の車両から位置、速度等のプローブデータを収集して道路の渋滞の程度を示す交通情報を生成し、生成した交通情報を車両に配信する交通情報配信システムがあった。また、特許文献1に記載されるナビゲーションシステムは、情報を表示手段や音声出力手段にて使用者に提示するために、緯度、経度を含む地点情報コードを用いるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−14384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、交通情報配信システムにおいて、配信される交通情報の位置を示す情報として座標(緯度、経度)を用いる場合、センター側と車両側とで交通情報のリンクの定義方向が異なると、方向が全て逆転した交通情報となってしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、交通情報における方向の間違いを抑制することができる交通情報配信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の交通情報配信システムは、
車両に搭載されるものであり車両の位置を示す座標、速度、方向を含むプローブデータを送信する車載機器と、複数の車載機器からプローブデータを収集して道路の渋滞の程度を示す交通情報を生成し、生成した交通情報を複数の車載機器に配信する情報センターとを含む交通情報配信システムであって、
交通情報は、交通情報が示す渋滞の端の位置を示す座標と、座標に対して渋滞が生じている方向に関する情報を含むものであり、
交通情報に基づいて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されているか否かを判定する判定手段と、
判定手段にて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されていると判定された場合、交通情報の方向を逆転する方向変換手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【0007】
通常、渋滞は、交差点、車両が道路から退出する地点、車両が道路に流入する地点などの混雑が予測される地点に向かって発生するものである。換言すると、上述のような混雑が予測される地点に対して下流側(進行方向の反対側)に発生するものである。従って、混雑が予測される地点に向かって渋滞が緩和されることを示す交通情報の場合、方向が逆転(間違っている)している可能性が高い。
【0008】
そこで、交通情報に基づいて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されていると判定された場合、交通情報の方向を逆転することによって、交通情報における方向の間違いを抑制することができる。
【0009】
また、上記目的を達成するために請求項2に記載の交通情報配信システムは、
車両に搭載されるものであり車両の位置を示す座標、速度、進行方向を含むプローブデータを送信する車載機器と、複数の車載機器からプローブデータを収集して道路の渋滞の程度を示す交通情報を生成し、生成した交通情報を複数の車載機器に配信する情報センターとを含む交通情報配信システムであって、
交通情報は、交通情報が示す渋滞の端の位置を示す座標と、座標に対して渋滞が生じている方向に関する情報を含むものであり、
プローブデータに基づいて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されているか否かを判定する判定手段と、
判定手段にて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されていると判定された場合、プローブデータの方向を逆転する方向変換手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【0010】
通常、渋滞は、交差点、車両が道路から退出する地点、車両が道路に流入する地点などの混雑が予測される地点に向かって発生するものである。換言すると、上述のような混雑が予測される地点に対して下流側(進行方向の反対側)に発生するものである。従って、混雑が予測される地点に向かって渋滞が緩和されることを示すプローブデータの場合、方向が逆転(間違っている)している可能性が高い。また、方向が逆転しているプローブデータから生成された交通情報も方向が逆転(間違っている)している可能性が高い。
【0011】
そこで、プローブデータに基づいて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されていると判定された場合、プローブデータの方向を逆転することによって、交通情報における方向の間違いを抑制することができる。
【0012】
また、請求項3及び請求項4に示すように、判定手段及び方向変換手段は、情報センターに設けるようにしてもよいし、車載機器に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における交通情報配信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における情報センターの概略構成を示すブロック図である。
【図3】交通状況の一例を示すイメージ図である。
【図4】比較例における交通情報配信システムで交通情報を表示した場合のイメージ図である。
【図5】本発明の実施の形態における交通情報配信システムで交通情報を表示した場合のイメージ図である。
【図6】本発明の変形例における情報センターの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
本実施の形態における交通情報配信システムは、車両Mに搭載される車載機器としてのナビゲーション装置1と、車両外部に設けられた情報センター2とを含むものである。ナビゲーション装置1と情報センター2は、移動通信網を介して通信可能に構成されている。また、情報センター2は、複数のナビゲーション装置1と通信可能に構成されている。つまり、情報センター2とナビゲーション装置1とは、1対N(N:2以上)の関係を有するものである。
【0016】
交通情報配信システムにおいては、ナビゲーション装置1が車両Mの位置を示す座標、速度、方向を含むプローブデータを送信し、情報センターが複数のナビゲーション装置1からプローブデータを収集して道路の渋滞の程度を示す交通情報を生成し、生成した交通情報を複数のナビゲーション装置1に配信するものである。
【0017】
まず、ナビゲーション装置1(本発明の車載機器に相当)に関して説明する。図1に示すように、ナビゲーション装置1は、位置検出器4、地図データ入力器5、操作スイッチ群6、送受信機7、外部メモリ8、表示装置9、音声コントローラ10、音声認識装置11、リモコンセンサ12、スピーカ13、マイク14、リモートコントロール端末(図面、及び以下の説明ではリモコンとも称する)15、車速センサ16と、これら各装置が接続された制御部3を備えている。なお、本発明のナビゲーション装置1は、操作スイッチ群6などから入力された目的地を示す信号に基づいて経路案内を行なうなどの従来のナビゲーション機能に加えて、プローブデータを情報センター2に送信したり、情報センター2から送信された交通情報(渋滞の程度)を表示装置9に表示したりするものである。
【0018】
制御部3は、通常のマイコンとして構成されており、内部には周辺のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスライン(いずれも不図示)が備えられている。制御部3は、位置検出器4、地図データ入力器5、操作スイッチ群6、外部メモリ8、送受信機7、音声コントローラ10、リモコンセンサ12、車速センサ16から入力された各種信号、データに基づき、各種処理(例えば、地図縮尺変更処理、メニュー表示選択処理、目的地設定処理、経路探索実行処理、経路案内開始処理、現在位置修正処理、画像表示処理、音量調整処理、目的地候補探索処理、現在位置特定処理、速度取得処理等)を実行する。
【0019】
また、制御部3は、現在位置を示す座標、方向(車両Mの進行方向)、速度(車速)及び車両IDを1単位とするプローブデータを送受信機7から移動通信網を介して情報センター2に定期的に送信させると共に、情報センター2から配信された交通情報を送受信機7を介して受信する。なお、制御部3は、受信した交通情報を地図データ入力器5から取得した地図データの道路リンク上に重畳して表示する。また、制御部3は、情報センター2送信するプローブデータを生成するために、位置検出器4から入力される信号から周知のマップマッチング等の技術を用いて周期的に車両Mの現在位置や方向を特定する(現在位置特定処理)と共に、車速センサ16からの検出信号を取得する(速度取得処理)。なお、プローブデータは、換言すると、車両Mの現在の状況を示す情報(現況情報)である。
【0020】
位置検出器4は、いずれも周辺の地磁気センサ4a、ジャイロスコープ4b、距離センサ4c、及び衛星からの電波に基づいて車両Mの現在位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機4dを有している。これらのセンサ等4a〜4dは各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては上述した内の一部で構成してもよく、更にステアリングの回転センサ、各転動輪の車両センサ等を用いてもよい。
【0021】
地図データ入力器5は、記憶媒体(不図示)が装着され、記憶媒体に格納されている位置検出の精度向上のためのマップマッチング用データ、地図データ(リンクデータ、ノードデータを含む)、目印データ、及び施設データなどを含む各種データを入力するための装置である。なお、これらの各種データの記憶媒体としては、例えば、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカード、HDD等を用いることができる。
【0022】
操作スイッチ群6は、例えば表示装置9と一体になったタッチスイッチ、もしくはメカニカルなスイッチ等を採用することができる。操作スイッチ群6は、そのスイッチが操作されると、制御部3へ各種処理(例えば、地図縮尺変更処理、メニュー表示選択処理、目的地設定処理、経路探索実行処理、経路案内開始処理、現在位置修正処理、画像表示処理、音量調整処理、目的地候補探索処理、現在位置特定処理、速度取得処理等)の実行を指示したり、各種情報を入力したりする。また、リモコン15は、複数の操作スイッチ(不図示)が設けられ、そのスイッチが操作されると、リモコンセンサ12を介して制御部3へ各種機能の実行を指示したり、各種情報を入力したりする。つまり、操作スイッチ群6及びリモコン15(リモコンセンサ12)は、スイッチ操作に応じて、各種機能の実行を指示する信号、各種情報を示す信号を制御部3に入力する。なお、操作スイッチ群6とリモコン15は、何れのスイッチ操作によっても制御部3に同じ機能を実行させたり、同じ情報を入力したりすることが可能である。
【0023】
例えば、リモコン15を介してリモコンセンサ12から、あるいは操作スイッチ群6から目的地を示す信号、及び目的地設定、経路探索の指示を示す信号が入力されると、制御部3は、位置検出器4からの信号と地図データ入力器5からのデータを用いて、目的地を設定すると共に現在位置を検出して、その現在位置から目的地までの最適な経路を自動的に探索して案内経路を設定する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。なお、設定された案内経路は、地図データ入力器5のデータに基づき表示装置9に表示されている地図上に、位置検出器4により検出された現在位置を示す現在位置マークと共に重畳して表示される。また、表示装置9には、表示地図には、現在位置マーク、案内経路のほかに、上述のように交通情報など他の情報を表示することもできる。
【0024】
外部メモリ8は、HDD等の書き込み可能な大容量記憶装置を採用することができる。外部メモリ8には、大量のデータや電源をオフしても消去してはいけないデータを記憶したり、頻繁に使用するデータを地図データ入力器5からコピーして利用したりする等の用途がある。なお、外部メモリ8は、比較的記憶容量の小さいリムーバルなメモリであってもよい。
【0025】
表示装置9は、制御部3からの信号に基づいて、車両Mの走行を案内するための地図、案内経路、及び交通情報等を表示するナビゲーション画面表示などを行うものであって、フルカラー表示が可能なものであり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等を用いて構成することができる。
【0026】
送受信機7は、外部に設けられた情報センター2から配信される交通情報等を受信し、また情報センター2へプローブデータ等を送信する装置である。送受信機7は、交通情報等を受信すると、それらを制御部3に入力する。
【0027】
スピーカ13は、制御部3や音声認識装置11からの信号に基づいて音声コントローラ10が出力する音声データ(例えば、経路案内時の案内音声や目的地候補及び目的地候補の設定確認、または交通情報など)を発声(音声出力)する。
【0028】
マイク14は、操作者が発声した音声を電気信号として音声認識装置11に入力する。音声認識装置11は、マイク14を介し発声された操作者の入力音声と、内部に記憶する認識辞書(不図示)中の語彙データ(比較対象パターン)とを照合し、最も一致度の高いものを認識結果として音声コントローラ10に入力する。
【0029】
音声コントローラ10は、音声認識装置11を制御すると共に、音声入力のあった操作者に対し、スピーカ13を通じてトークバック出力制御(音声出力)する。また、音声認識装置11の認識結果を制御部3に入力する処理なども行う。音声コントローラ10を介して音声認識装置11の認識結果が入力された制御部3は、その認識結果に基づき、操作者の発声に対する各種処理(例えば、地図縮尺変更処理、メニュー表示選択処理、目的地設定処理、経路探索実行処理、経路案内開始処理、現在位置修正処理、画像表示処理、音量調整処理、目的地候補探索処理、現在位置特定処理、速度取得処理等)を実行する。
【0030】
車速センサ16は、車両Mの各転動輪の回転速度から速度を検出して、その速度を示す検出信号を制御部3に入力する。
【0031】
次に、図2に基づいて、情報センター2に関して説明する。
【0032】
情報センター2は、上述のように複数のナビゲーション装置1からプローブデータを収集して道路の渋滞の程度を示す交通情報を生成し、生成した交通情報を複数のナビゲーション装置1に配信するものであり、プローブデータの収集系と交通情報の配信系とに区分けすることができる。
【0033】
情報センター2の収集系は、複数の車両Mに搭載されたナビゲーション装置1からプローブデータを収集して、交通情報を生成する収集サーバと、その交通情報を配信系に送信する送信サーバなどを備えるものである。この情報センター2の収集系を機能ブロックで示すと、データ収集部21a、推定補完処理部21b、現況DB(現況データベース)21c、統計DB(統計データベース)21d、予測処理部21e、交通情報記憶部21f、情報送信部21gなどを備えるものである。
【0034】
一方、情報センター2の配信系は、収集系から送信された交通情報を受信する受信サーバと、交通情報の方向の判定処理、必要に応じて方向を逆転する方向変換処理など施した交通情報を配信する配信サーバなどを備えるものである。この情報センター2の配信系を機能ブロックで示すと、情報受信部22a、方向変換処理部22b、情報配信部22cなどを備えるものである。
【0035】
なお、情報センター2のいずれかのサーバ(例えば、収集サーバ)は、図示は省略するがマップマッチング用データ、地図データ(リンクデータ、ノードデータを含む)、目印データ、及び施設データなどを含む各種データを記憶する記憶部を備えるものである。また、この記憶部は、交通情報の渋滞の方向が正しいか否かを判定するための渋滞予測地点に関する位置データが記憶される。この渋滞予測地点とは、渋滞が予測される地点である。例えば、交差点などの車両Mが右左折する位置、施設(スーパー、駐車場など)の出入口、駅のロータリー、インターチェンジの出入口、トンネルの入口、サグ部(下り坂から上り坂にさしかかる凹部)などでは渋滞が発生しやすい。つまり、このような地点(位置)では、渋滞が発生すると予測できる。したがって、本実施の形態においては、このような渋滞が予測される地点の位置データを渋滞予測地点として記憶部に記憶しておく。なお、上述の地点の中から、渋滞、混雑の割合が多い地点の位置データだけを渋滞予測地点として記憶するようにしてもよい。
【0036】
ここで、このような構成を有する情報センター2による交通情報の作成処理の一例に関して説明する。
【0037】
情報センター2における収集系の収集サーバは、複数のナビゲーション装置1から送信されたプローブデータをデータ収集部21aで受信すると、推定補完処理部21bにて受信したプローブデータに対して推定補完処理などをおこない、現在の状況における渋滞の程度を示す現況情報を生成し現況DB21cに記憶する。また、プローブデータに含まれる座標、方向、速度を統計的に処理してデータベース化された統計DB21dを用いて、予測処理部21eにて渋滞の予測処理を行い、予測される渋滞の程度を示す予測情報を生成する。つまり、現況情報は、現在の状況における渋滞の程度を示す交通情報であり、予測情報は、予測される渋滞の程度を示す交通情報である。
【0038】
そして、情報センター2の収集サーバは、況DB21に記憶された現況情報と、予測処理部21eにて生成された予測情報と、位置を示す座標(渋滞の端の位置を示す座標)と、方向(座標に対して渋滞が生じている方向)とを含む交通情報を生成して交通情報記憶部21fに記憶する。
【0039】
なお、上述の渋滞の程度は、渋滞の程度が大きいことを表す「渋滞」、渋滞の程度が中間であることを表す「混雑」、渋滞の程度が小さいことを表す「空き道」などであらわすことができる。また、この渋滞の程度を特定する場合、プローブデータから抽出した車速が「時速10km未満」であれば、そのプローブデータから抽出した座標を含む道路を「渋滞」と特定する。プローブデータから抽出した車速が「時速20km未満」であれば、そのプローブデータから抽出した座標を含む道路を「混雑」と特定する。プローブデータから抽出した車速が「時速20km以上」であれば、そのプローブデータから抽出した座標を含む道路を「空き道」と特定する。
【0040】
また、ナビゲーション装置1では、表示装置9に交通情報を表示する際に、この渋滞の程度が視覚的にわかるようにするために、渋滞の程度(「渋滞」「混雑」「空き道」)に応じて表示形態をかえて表示する。例えば、渋滞の程度に応じて、表示する矢印の色及び/又は矢印の太さをかえたりして表示する。表示する矢印の色をかえる場合、例えば、渋滞は赤色、混雑は黄色、空き道は矢印なし。表示する矢印の太さをかえる場合、例えば、渋滞は太線、混雑は細線、空き道は矢印なし。また、表示する矢印の色と太さをかえる場合、例えば、渋滞は赤色で太線、混雑は黄色で細線、空き道は矢印なし。
【0041】
一方、情報センター2おける配信系の受信サーバは、情報受信部22aにて所定のタイミングで収集系の送信サーバから交通情報を取りに行く。つまり、情報センター2の受信サーバは、収集系の送信サーバに対して、交通情報の送信要求を行なう。収集系の送信サーバは、この送信要求に応答して、生成した交通情報を配信系の受信サーバに送信する。
【0042】
次に、情報センター2の受信サーバは、方向変換処理部22bにて受信した交通情報が示す渋滞の方向が正しいか否かを判定して、正しくない場合は方向を変換(逆転)する方向変換処理を行う。換言すると、受信した交通情報が示す渋滞の方向が実際の状況と合致するか否かを判定して、合致しない場合は方向を変換(逆転)する方向変換処理を行う。
【0043】
本実施の形態における交通情報は、上述のように、現況情報と予測情報に加えて、位置を示す座標(渋滞の端の位置を示す座標)と、方向(座標に対して渋滞が生じている方向)とを含むものである。換言すると、本実施の形態においては、所謂ロケーションリファレンス方式(位置参照方式)を採用している。従って、ナビゲーション装置1側と情報センター2とで座標、方向の定義が異なる場合、交通情報が示す渋滞の方向が逆転してしまう。つまり、情報センター2から、現況情報と予測情報に加えて、座標と方向を送信するが、ナビゲーション装置1側では、その方向が上流方向なのか下流方向なのか、その座標が、交通情報の起点なのか終点なのかが識別できない。
【0044】
例えば、図3に示すような状況を一例にあげて説明する。図3に示す場所は、道路Aと道路Bとが交差している。道路Aは、渋滞していない。一方、道路Bは、道路Aとの交差点を基点として両方向ともに渋滞している。このように、多くの渋滞は、交差点などの渋滞予測地点を起点にして発生する。
【0045】
このような状況の交通情報(現況情報、予測情報、座標、方向)をナビゲーション装置1に配信する。なお、ナビゲーション装置1側では、受信した交通情報に含まれる座標は終点(矢印の先端)、方向は下流方向と定義されているとする。
【0046】
このとき、ナビゲーション装置1は、受信した交通情報を変換せず、そのまま表示装置9に出力した場合、図4に示すように、交差点に向かって渋滞が緩和されて表示されてしまう。上述のように、多くの渋滞は、交差点などの渋滞予測地点を起点にしている。ところが、この交通情報では、交差点が終点になっている。
【0047】
例えば、座標は始点と定義した場合、その始点は渋滞の起点(矢印の先端)と定義するか、表示装置9に表示される渋滞情報の始点(矢印の後端)と定義するかによって交通情報が示す渋滞の方向が変わってくる。また、逆に、座標は終点と定義した場合、その終点は渋滞の終わり(矢印の後端)と定義するか、表示装置9に表示される渋滞情報の終点(矢印の先端)と定義するかによっても交通情報が示す渋滞の方向が変わってくる。また、方向は上流方向と定義した場合、上流方向は座標に対して車両Mの進行方向側なのか、進行方向の逆側なのかによっても渋滞の方向が変わってくる。
【0048】
そこで、情報センター2の受信サーバは、方向変換処理部22bにて方向変換処理を実施する。つまり、交通情報に基づいて、記憶部に記憶されている予め設定された渋滞予測地点(位置データ)に向かって渋滞が緩和されているか否かを判定する(判定手段)。そして、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されていると判定した場合、交通情報の方向を逆転する(方向変換手段)。なお、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されていないと判定した場合、交通情報の方向は逆転しない。このようにすることによって、交通情報が示す渋滞方向の間違いを抑制することができる。
【0049】
なお、交通情報に基づいて、記憶部に記憶されている予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されているか否かを判定する場合、例えば、渋滞予測地点を示す位置データに向かって渋滞が増す割合と緩和する割合との比で決めても良いし、全体の中での割合で決めても良い。
【0050】
そして、情報センター2の配信サーバは、方向変換処理部22bから出力された交通情報を複数の車両Mに配信する。
【0051】
ナビゲーション装置1は、このように方向変換処理部22bを経て配信された交通情報を受信して、その交通情報を表示装置9に出力した場合、図5に示すように、交差点に向かって渋滞が増加されて表示される。つまり、実際の交差点の状況と合致した交通情報を出力(表示)することができる。
【0052】
また、上述の実施の形態においては、交通情報に基づいて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されているか否かを判定したが本発明はこれに限定されるものではない。プローブデータにおける座標、方向の定義によっても、交通情報の場合と同様な理由によって、プローブデータに基づいて生成された交通情報が示す渋滞の方向が逆転する(実際の状況とは異なる)可能性がある。つまり、ナビゲーション装置1側と情報センター2側とでプローブデータにおける座標、方向の定義が異なる場合であっても、このプローブデータに基づいて生成される交通情報が示す方向が逆転する可能性がある。
【0053】
そこで、変形例として、プローブデータに基づいて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されているか否かを判定し、渋滞が緩和されていると判定された場合、プローブデータの方向を逆転するようにしてもよい。
【0054】
図6を用いて、変形例における情報センター2に関して説明する。
【0055】
情報センター2は、上述のように複数のナビゲーション装置1からプローブデータを収集して道路の渋滞の程度を示す交通情報を生成し、生成した交通情報を複数のナビゲーション装置1に配信するものであり、プローブデータの収集系と交通情報の配信系とに区分けすることができる。
【0056】
変形例における情報センター2の収集系は、複数の車両Mに搭載されたナビゲーション装置1からプローブデータを収集して、そのプローブデータを配信系に送信する送信サーバなどを備えるものである。この情報センター2の収集系を機能ブロックで示すと、データ収集部21a1、情報送信部21b1などを備えるものである。
【0057】
一方、情報センター2の配信系は、収集系から送信されたプローブデータを受信して、必要に応じて方向を逆転するプローブデータの方向の判定処理を行ったり、交通情報の生成を行なったりする受信サーバと、生成した交通情報を配信する配信サーバなどを備えるものである。この情報センター2の配信系を機能ブロックで示すと、情報受信部22a1、方向変換処理部22b1、推定補完処理部22c1、現況DB(現況データベース)22d1、統計DB(統計データベース)22e1、予測処理部22f1、交通情報記憶部22g1、情報配信部22h1などを備えるものである。
【0058】
なお、変形例と上述の実施の形態との本質的な相違点は、方向変換処理を行う対象の情報がプローブデータであるか交通情報であるかである。変形例1におけるデータ収集部21a1、情報送信部21b1、情報受信部22a1、推定補完処理部22c1、現況DB22d1、統計DB22e1、予測処理部22f1、交通情報記憶部22g1、情報配信部22h1は、上述の実施の形態のデータ収集部21a、推定補完処理部21b、現況DB21c、統計DB21d、予測処理部21e、交通情報記憶部21f、情報送信部21g、情報受信部22a、情報配信部22cと同等であるため説明を省略する。
【0059】
情報センター2の受信サーバは、方向変換処理部22b1にて方向変換処理を実施する。つまり、プローブデータに基づいて、記憶部に記憶されている予め設定された渋滞予測地点(位置データ)に向かって渋滞が緩和されているか否かを判定する(判定手段)。そして、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されていると判定した場合、プローブデータの方向を逆転する(方向変換手段)。なお、プローブデータに対して方向変換処理を行なう場合、プローブデータに含まれる速度によって渋滞が緩和されているか否かを判定することができる。また、予め設定されたプローブデータに向かって渋滞が緩和されていないと判定した場合、交通情報の方向は逆転しない。
【0060】
このようにすることによって、プローブデータに基づいて生成される交通情報が示す渋滞方向の間違いを抑制することができる。
【0061】
なお、上述の実施の形態、変形例においては、情報センター2で方向変換処理を行なう例を採用して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ナビゲーション装置1が、受信した交通情報に対して方向変換処理を行なってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 位置検出器、2 情報センター、3 制御部、4 位置検出器、5 地図データ入力器、6 操作スイッチ群、7 送受信機、8 外部メモリ、9 表示装置、10 音声コントローラ、11 音声認識装置、12 リモコンセンサ、13 スピーカ、14 マイク、15 リモコン、16 車速センサ、4a 地磁気センサ、4b ジャイロスコープ、4c 距離センサ、4d GPS受信機、21a データ収集部、21b 推定補完処理部、21c 現況DB(現況データベース)、21d 統計DB(統計データベース)、21e 予測処理部、21f 交通情報記憶部、21g 情報送信部、22a 情報受信部、22b 方向変換処理部、22c 情報配信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるものであり当該車両の位置を示す座標、速度、方向を含むプローブデータを送信する車載機器と、複数の前記車載機器から前記プローブデータを収集して道路の渋滞の程度を示す交通情報を生成し、生成した交通情報を複数の前記車載機器に配信する情報センターとを含む交通情報配信システムであって、
前記交通情報は、当該交通情報が示す渋滞の端の位置を示す座標と、当該座標に対して渋滞が生じている方向に関する情報を含むものであり、
前記交通情報に基づいて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段にて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されていると判定された場合、前記交通情報の方向を逆転する方向変換手段と、
を備えることを特徴とする交通情報配信システム。
【請求項2】
車両に搭載されるものであり当該車両の位置を示す座標、速度、進行方向を含むプローブデータを送信する車載機器と、複数の前記車載機器から前記プローブデータを収集して道路の渋滞の程度を示す交通情報を生成し、生成した交通情報を複数の前記車載機器に配信する情報センターとを含む交通情報配信システムであって、
前記交通情報は、当該交通情報が示す渋滞の端の位置を示す座標と、当該座標に対して渋滞が生じている方向に関する情報を含むものであり、
前記プローブデータに基づいて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段にて、予め設定された渋滞予測地点に向かって渋滞が緩和されていると判定された場合、前記プローブデータの方向を逆転する方向変換手段と、
を備えることを特徴とする交通情報配信システム。
【請求項3】
前記判定手段及び前記方向変換手段は、前記情報センターに設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の交通情報配信システム。
【請求項4】
前記判定手段及び前記方向変換手段は、前記車載機器に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の交通情報配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−237795(P2010−237795A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82677(P2009−82677)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】