説明

低位相ノイズ電圧制御発振器

本発明の形態は、消費電力を低減し位相ノイズ性能を向上させるために、電流再使用技術を用いた低位相ノイズ発振器回路を含み、発振器回路は、第2のVCOに結合されている第1のVCOを備え、第1及び第2のVCOの出力は、コンデンサ等の受動素子に結合されている。第1及び第2のVCO両方の全体の消費電力は、単一のVCOの消費電力と略同じである。また、位相ノイズは、約3dBほど低減される。このため、発振器回路の消費電力を増加させることなしに、位相ノイズ性能が向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の1つ以上の形態は、電子回路及びシステムの分野、特に、電圧制御発振器回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧制御発振器(VCO)は、制御電圧を受け取り、制御電圧に応じた周波数を有する出力信号を生成する回路である。VCOの出力信号における変動は、システムにとって好ましくない位相ノイズをもたらす。
【0003】
高直線性無線レシーバにおいて、相互ミキシングは、信号対ノイズ比(SNR)に影響を与え、レシーバの感度を低下させる。相互ミキシングは、50MHz以上の位相ノイズが、外部ソースからの不要大信号であるブロッカーと混合したときに発生し得る。これらのブロッカーは、SNRを低下させ、その結果、レシーバの感度を制限する。
【0004】
一般的に、VCOにおける遠方位相ノイズは、負荷抵抗を下げると同時にDC電力/電流をダブリングすることによって低減することができる。この結果、SNRは、理想条件下において、電力をダブリングする毎に3dB向上する。しかしながら、これにより、VCOの消費電力は増加する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明の1つの実施形態における電圧制御発振器回路を示す概略図である。
【図2】本発明の別の実施形態における電圧制御発振器回路を示す概略図である。
【図3】本発明の更なる別の実施形態における電圧制御発振器回路を示す概略図である。
【図4】本発明の1つの実施形態における、レギュレーションモジュールに結合されている電圧制御発振器回路を示すブロック図である。
【図5】本発明の1つの実施形態における、無線デバイスのフロントエンド部分を示すブロック図である。
【図6】本発明の1つの実施形態における、複数のインダクタの配置を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の記載において、本発明の1つ以上の形態の十分な理解を提供する目的で、多くの特定の詳細を説明する。他の例では、当詳細の説明の記載を不必要に不明確にしない目的で、周知の電子デバイスの機能及び特性は、特別に詳細には記載しない。
【0007】
本発明の複数の形態においては、消費電力及び位相ノイズを低減する、電流再利用技術を利用した電圧制御発振器(VCO)回路を記載する。VCO回路は、第2のVCOに結合されている第1のVCOを備える。第1及び第2のVCOの出力は、コンデンサ等の受動素子に結合されている。第1のVCOと第2のVCOとを直列に結合することによって、第2のVCOは、第1のVCOを流れる供給電流と略同じ電流量を受け取る。その結果、第1及び第2のVCO両方の全体消費電力量が、単一のVCOの消費電力量と略同じになる。さらに、位相ノイズが約3dB低減される。従って、VCO回路の消費電力量を増加させることなく、位相ノイズ性能が向上される。
【0008】
図1に、電圧制御発振器(VCO)回路100の概略図を示す。本発明の1つの形態においては、消費電力を低減する目的で、電流再利用のために、VCO回路100は、第2のVCO120に直列に結合されている第1のVCO110を備える。さらに、位相ノイズがまた低減される。
【0009】
本発明の1つの形態においては、第1のVCO110は、第2のトランジスタM2に結合されている第1のトランジスタM1を備える。1つの形態では、第1及び第2のトランジスタM1及びM2は、PMOSトランジスタである。第1及び第2のトランジスタM1及びM2のソース端子は、低供給電圧Vddを受け取るために、電圧供給端子180に結合されている。1つの形態では、低供給電圧Vddは、1.0〜1.5Vの範囲であり、好ましくは、約1.2Vである。1つの形態では、第1のインダクタL1は、第1のトランジスタM1のソース端子を電圧供給端子180に結合している。同様に、第2のインダクタL2は、第2のトランジスタM2のソース端子を電圧供給端子180に結合している。
【0010】
1つの形態では、第1のコンデンサC1は、第1のVCO110をバイアスするために、第1のトランジスタM1のソース端子を調整電圧ノード170に結合している。第2のコンデンサC2は、第2のトランジスタM2のソース端子を調整電圧ノード170に結合している。1つの形態では、第1及び第2のコンデンサC1及びC2は、バラクタとしても知られている、可変容量を有するコンデンサを含む。
【0011】
第1のトランジスタM1のドレイン端子は、第2のトランジスタM2のゲート端子に結合されている。1つの形態では、第3のコンデンサC3は、第1のトランジスタM1のドレイン端子を第2のトランジスタM2のゲート端子に結合している。第1のトランジスタM1のゲート端子は、第2のトランジスタM2のドレイン端子に結合されている。1つの形態では、第4のコンデンサC4は、第1のトランジスタM1のゲート端子を第2のトランジスタM2のドレイン端子に結合している。
【0012】
1つの形態では、第5のコンデンサC5は、第1のトランジスタM1のドレイン端子を第1のトランジスタM1のソース端子に結合している。同様に、第6のコンデンサC6は、第2のトランジスタM2のドレイン端子を第2のトランジスタM2のソース端子に結合している。
【0013】
1つの形態では、第1及び第2のトランジスタM1及びM2のドレイン端子は、コモンドレインノード161において互いに結合されている。1つの形態では、第3のインダクタL3は、第1のトランジスタM1のドレイン端子をコモンドレインノード161に結合している。第4のインダクタL4は、第2のトランジスタM2のドレイン端子をコモンドレインノード161に結合している。本発明の1つの形態においては、第7のコンデンサC7は、コモンドレインノード161をグランド端子に結合している。1つの形態では、第7のコンデンサは、バイパスコンデンサである。
【0014】
本発明の1つの形態では、第1及び第2のトランジスタM1及びM2のゲート端子は、バイアス電圧を受け取るバイアスノード190に結合されている。1つの形態では、第1の抵抗R1は、第1のトランジスタM1のゲート端子をバイアスノード190に結合している。第2の抵抗R2は、第2のトランジスタM2のゲート端子をバイアスノード190に結合している。
【0015】
第1のVCO110はさらに、第1の出力111及び第2の出力112を有する差動出力を備える。1つの形態では、第1及び第2のトランジスタのドレイン端子は、第1の出力111及び第2の出力112の役割を果たす。
【0016】
第2のVCO120は、第1のVCO110と同様の構成を有しているので、詳細には説明しない。簡潔には、第2のVCO120もまた、第2のトランジスタM2に結合されている第1のトランジスタM1を備える。第2のVCO120の第1及び第2のトランジスタM1及びM2のソース端子は、互いに結合されている。1つの形態では、第2のVCO120の第1及び第2のトランジスタM1及びM2のソース端子は、第1のVCO110のコモンドレインノード161に結合されている。第1のトランジスタM1のゲート端子は、第2のトランジスタM2のドレイン端子に結合されている。同様に、第2のトランジスタM2のゲート端子は、第1のトランジスタM1のドレイン端子に結合されている。
【0017】
第2のVCO120は、第1の出力121及び第2の出力122を有する差動出力を備える。1つの形態では、第2のVCO120の第1及び第2のトランジスタM1及びM2のドレイン端子は、第2のVCO120の第1の出力121及び第2の出力122の役割を果たす。
【0018】
VCO回路100はさらに、第1のVCO110の第1の出力111を第2のVCO120の第1の出力121に結合している第1の受動素子610を備える。1つの特定の形態では、第1の受動素子610は、第1のVCO110の第1のトランジスタM1のドレイン端子を第2のVCO120の第1のトランジスタM1のドレイン端子に結合しているコンデンサを含む。
【0019】
第2の受動素子620は、第1のVCO110の第2の出力112を第2のVCO120の第2の出力122に結合している。1つの特定の形態では、第2の受動素子620は、第1のVCO110の第2のトランジスタM2のドレイン端子を第2のVCO120の第2のトランジスタM2のドレイン端子に結合しているコンデンサを含む。第1及び第2の受動素子610及び620の容量値は、寄生容量を増加させることなしに、位相ノイズを低減するために十分な範囲から選択される。1つの形態では、第1及び第2の受動素子611及び612の容量値は、VCO回路100が約10〜12GHzの動作周波数を有する場合、1pF以下である。1つの特定の形態では、第1及び第2の受動素子611及び612の容量値は、約200〜600fFである。
【0020】
本発明の1つの形態では、第1のVCO110の第1及び第2の出力111及び112は、全体のVCO回路100の差動出力としての役割を果たす。あるいは、第2のVCO120の第1及び第2の出力121及び122が、VCO回路100の差動出力としての役割を果たす。
【0021】
VCO回路100の1つの利点は、信号対ノイズ比(SNR)を向上させると同時に、低消費電力を達成できることである。VCO回路100において、第1のVCO110及び第2のVCO120は、電圧供給端子180において低供給電圧Vddからの供給電流Iddを共有する。つまり、第2のVCO120は、第1のVCO110を流れる供給電流Iddと略同じ電流量を受け取る。この結果、第1及び第2のVCO110及び120両方の全体の消費電力は、単一のVCOの消費電力量と略同じになる。さらに、第1のVCO110が第2のVCO120に結合されていることによって、位相ノイズは、約3dB低減される。従って、VCO回路100の消費電力を増加させることなく、SNRは3dB向上する。第1及び第2のVCO110及び120はそれぞれ、非常に小さい位相ノイズで、約0.5〜0.6Vで動作するように設計される。これに対して、従来のVCOでは、より大きい電圧が必要とされ、及び/又は、供給電圧を低減するために線形レギュレータが用いられる。
【0022】
VCO回路100は、大きいダイ面積を必要とする複数のインダクタL1、L2、L3及びL4を用いる。1つの形態では、上記ダイ面積を減らす目的で、主要周波数設定インダクタ範囲で、より臨界的でないインダクタが設けられる。図6に、1つの基板510上に形成された複数のインダクタL1、L2、L3及びL4の上面図を示す。本発明の1つの形態では、インダクタL3及びL4は、インダクタL1及びL2の周りに形成されている。
【0023】
第1のVCO110又は第2のVCO120内の第1及び第2のトランジスタM1及びM2は、PMOSトランジスタを使用することに限定されないことに留意されたい。他の形態では、第1及び第2のトランジスタM1及びM2として、これらに限定されないが、例えば、NMOSトランジスタ、バイポーラ接合トランジスタ又はそれらの組み合わせ等のその他の種類のトランジスタが用いられる。
【0024】
VCO回路100は、2つだけの発振器(すなわち第1及び第2のVCO110及び120)には限定されないことに留意されたい。位相ノイズ性能をさらに向上させる目的で、追加の発振器が、VCO回路100に付加されてもよい。例えば、追加の発振器が、第2の発振器120に直列に結合されていてもよい。追加の発振器及び第2のVCO120の出力は、図1に示された第1及び第2のVCO110及び120と同じ方法で、結合されてもよい。その結果、供給電圧Vddは、追加の発振器を動作させるために十分になるように増加され得る。
【0025】
本発明の他の形態では、位相ノイズをさらに低減する目的で、追加のVCO回路は、図1のVCO回路100に結合される。図2は、もう1つのVCO回路101に結合されているVCO回路100を示す概略図である。VCO回路101は、VCO回路100と同様の構成を有している。
【0026】
第1のVCO110の第1及び第2の出力111及び112は、同様に、第2のVCO120の第1及び第2の出力121及び122に結合されている。本発明の1つの形態では、第1のVCO110の第1の出力111は、第1の受動素子610に結合されている。第3の受動素子630は、第2のVCO120の第1の出力121を第1の受動素子610に結合している。第1のVCO110の第2の出力112は、第2の受動素子620に結合されている。第4の受動素子640は、第2のVCO120の第2の出力122を第2の受動素子620に結合している。
【0027】
1つの形態では、第1、第2、第3及び第4の受動素子610、620、630及び640はそれぞれ、寄生容量を増加させることなしに、位相ノイズを低減するのに十分な容量範囲を有するコンデンサを備える。1つの特定の形態では、第1、第2、第3及び第4の受動素子610、620、630及び640の容量値は、VCO回路100が約10〜12GHzの動作周波数を有する場合、1pF以下である。
【0028】
追加のVCO回路101は、第4のVCO140に直列に結合されている第3のVCO130を備える。第3のVCO130及び第4のVCO140は、第1のVCO110及び第2のVCO120と同様の構成を有するので、ここでは詳細に説明しない。本発明の1つの形態では、第3のVCO130は、第1の出力131及び第2の出力132を備える。1つの形態では、第3のVCO130の第1及び第2のトランジスタM1及びM2のドレイン端子は、第1及び第2の出力131及び132の役割を果たす。
【0029】
第3のVCO130の第1の出力131は、第1及び第2のVCO110及び120の第1の出力111及び121に結合されている。1つの形態では、第5の受動素子650は、第3のVCO130の第1の出力131を第1及び第3の受動素子610及び630に結合している。同様に、第6の受動素子660は、第3のVCO130の第2の出力132を第2及び第4の受動素子620及び640に結合している。
【0030】
第4のVCO140は、第1の出力141及び第2の出力142を備える。1つの形態では、第4のVCO回路140の第1及び第2のトランジスタM1及びM2のドレイン端子は、第1及び第2の出力141及び142の役割を果たす。
【0031】
第4のVCO140の第1の出力141は、第1、第2及び第3のVCO110、120及び130の第1の出力111、121及び131に結合されている。1つの形態では、第7の受動素子670は、第4のVCO140の第1の出力141を第1、第3及び第5の受動素子610、630及び650に結合している。同様に、第8の受動素子680は、第4のVCO140の第2の出力142を第2、第4及び第6の受動素子620、640及び660に結合している。従って、VCO回路100及び101の出力は、並列に結合されている。つまり、第1、第2、第3及び第4のVCO110、120、130及び140の第1の出力111、121、131及び141は、互いに結合されており、また、第2の出力112、122、132及び142は互いに結合されている。
【0032】
本発明の1つの形態では、第5、第6、第7及び第8の受動素子650、660、670及び680はそれぞれ、寄生容量を増加させることなしに、位相ノイズを低減するのに十分な容量範囲を有するコンデンサを備える。1つの特定の形態では、第5、第6、第7及び第8の受動素子650、660、670及び680の容量値は、VCO回路101が約10〜12GHzの動作周波数を有する場合、1pF以下である。
【0033】
2つのVCO回路100及び101を結合する利点は、SNRの向上である。追加のVCO回路101がVCO回路100に結合されていることによって、SNRは、さらに約3dB減少される。
【0034】
本発明の1つの形態では、第1のVCO及び第3のVCOは、略同一のDC電位で動作するので、第1のVCO110及び第3のVCO130の出力はともに、容量結合される代わりに互いにDC結合される。つまり、図3に示されたとおり、第1のVCO110の出力111及び112は、受動素子610、620、650及び660を介さずに第3のVCO130の出力131及び132に直接結合されている。この場合、第3の受動素子630は、第2のVCO120の第1の出力121を第1のVCO110の第1の出力111に直接結合している。第4の受動素子640は、第2のVCO120の第2の出力122を第1のVCO110の第2の出力112に直接結合している。同様に、第7の受動素子670は、第4のVCOの第1の出力141を第3のVCO130の第1の出力131に直接結合している。第8の受動素子680は、第4のVCO140の第2の出力142を第3のVCO130の第2の出力132に直接結合している。
【0035】
あるいは、第2のVCO120及び第4のVCO140は、略同一のDC電位(図示せず)で動作するので、第2のVCO120及び第4のVCO140の出力は、受動素子を用いずに、互いに直接結合されてもよい。この場合、出力121は、受動素子630及び670を介さずに出力141に直接結合され、出力122は、受動素子640及び680を介さずに出力142に直接結合される。
【0036】
本発明の1つの形態では、VCO回路100の出力電圧は、位相ノイズ性能を向上又は安定化するためにレギュレートされる。動作時の、トランジスタ特性における温度の変動又は変化は、VCO回路100の出力電圧振幅に影響を与え得る。これは、安定性のない位相ノイズ性能の原因となる。1つの形態では、VCO回路100が受け取る供給電圧Vddを変化させることによって、一定の出力電圧振幅が実現できる。
【0037】
図4は、一定の出力電圧振幅を達成するために、VCO回路100の差動出力をレギュレートするレギュレーションモジュール300に結合されているVCO回路100を示すブロック図である。本発明の1つの形態では、レギュレーションモジュール300は、VCO回路100に結合されているピーク検出器310を備える。1つの形態では、VCO回路100の差動出力111及び121は、ピーク検出器310に結合されている。ピーク検出器310は、VCO回路100の出力電圧振幅を検出又は感知し、対応したピーク電圧をコンパレータ330に送る。1つの形態では、コンパレータ330は、演算増幅器を備える。コンパレータ330は、ピーク検出器310のピーク電圧と基準電圧320とを比較し、低ドロップアウトレギュレータ(LDO)340の出力電圧をレギュレートするために制御信号をLCD340に送る。
【0038】
一般的に、LDO340は、システム内において、高効率スイッチングレギュレータを用いて、未調整の1.5V供給電圧から動作する。コンパレータ330からの制御信号に応じて、LDO340は、VCO回路100に送られるその出力電圧を変更又は調整する。VCO回路100が、約1.2Vの供給電圧Vddで動作する場合には、VCO回路100に送られるLDO340の出力電圧は、約1.1Vから1.3Vまで変動する。従って、供給電圧Vddは、VCO回路100の比較的一定の出力電圧振幅を維持するために、1.1Vから1.3Vまでの範囲にわたって増加又は減少する。これにより、略一定の位相ノイズ性能を実現できる。
【0039】
図4に示されたレギュレーションモジュール300は、出力電圧振幅を継続的に検出するためにピーク検出器310を利用することによって、連続時間方法でVCO回路100の出力電圧をレギュレートする。別の形態では、レギュレーションモジュール300は、ステートマシンと、VCO回路100に送られる出力電圧の離散変化を連続化するデジタルアナログ変換器(DAC)とを備える。これにより、VCO回路100のノイズは少なくなり、及び/又は、より少ない消費電力で満足のできるノイズレベルがもたらされる。
【0040】
無線デバイスの動作時には、位相ノイズとブロッカーとのミキシングによる、相互ミキシングが起こり得る。ここで、ブロッカーとは、隣接チャンネルからの又は他の無線ソースからのチャンネル信号からの干渉を指す。この結果、相互ミキシングは、信号対ノイズ比(SNR)に影響を与え、無線デバイスの感度を低下させる。本発明の1つの形態では、ブロッカー感知手段が、ブロッカーが検出されたときにVCO回路100を作動させるために用いられる。本発明の1つの形態では、ブロッカー感知手段は、例えば、50MHz又は望まれる信号から大きく離れた高周波に存在するブロッカーを検出するために用いられる。
【0041】
図5に、本発明の1つの形態に準じた、無線デバイスのフロントエンド部分を示す。1つの形態では、無線デバイスは、低ノイズ増幅器(LNA)420に結合されているアンテナ410を備える。ブロッカー電力センサ430は、ブロッカー、又はLNA420の出力からの干渉信号の存在を検出するためにLNA420に結合されている。1つの形態では、ブロッカー電力センサ430は、ブロッカーを検出するために当技術分野では周知のピーク検出器又はスペクトラムアナライザを備える。
【0042】
ブロッカー電力センサ430は、VCO回路100と、VCO回路100よりも低電力で動作する低電力発振器200とを含む周波数合成器モジュール440に結合されている。動作時には、ブロッカー電力センサ430は、ブロッカーが検出されていないときに、低電力発振器200を作動させる。一方で、ブロッカー電力センサ430が、相互ミキシングをもたらし得る不十分な振幅のブロッカーを検出したときに、ブロッカー電力センサ430は、VCO回路100を作動させる。つまり、無線デバイスの消費電力を低減するために、ブロッカーが存在しない場合には、VCO回路100は、作動されない。
【0043】
無線デバイスはさらに、ブロッカー電力センサ430と、VCO回路100と、低電力発振器200とに結合されている低ノイズマルチプレクサ(MUX)450を備える。ミキサ460は、低ノイズMUX450及びLNA420に結合されている。
【0044】
一般的な無線レシーバは、高周波における不要な信号を減衰させる、予め選択された複数のフィルタを用いる。これらの予め選択されたフィルタは、スペースを占拠し、高価であり、約2dBの挿入損失を有する。挿入損失により、無線レシーバの感度は低減される。無線デバイスにVCO回路100を実装する1つの利点は、位相ノイズを低減することであり、これにより、高直線性無線デバイスにおいて予め選択された複数のフィルタを使用しなくてもすむ。
【0045】
本発明の1つの形態では、VCO回路100及びブロッカー電力センサ430は、連続時間(CT)シグマ・デルタアナログデジタル変換器(ADC)のための低ジッタクロックのために用いられ得る。CTシグマ・デルタADCは、概して、クロックジッタに対して敏感である。CTシグマ・デルタADCは、低消費電力で、且つ、離散時間シグマ・デルタADCと比べてより小さいダイ面積で、高いダイナミックレンジを達成できる利点を有する。
【0046】
本発明の幾つかの形態を、ここに記載した。しかしながら、本発明は記載された形態に限定されずに、以下の添付の請求項の範囲内での改良及び変更を行なえることは当業者には理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の出力と第2の出力とを有し、供給電圧を受け取る第1の電圧制御発振器(VCO)と、
前記第1のVCOに結合されていて、第1の出力と第2の出力とを有し、前記供給電圧の供給電流を受け取る第2のVCOと、
前記第1のVCOの前記第1の出力を前記第2のVCOの前記第1の出力に結合している第1の受動素子と、
前記第1のVCOの前記第2の出力を前記第2のVCOの前記第2の出力に結合している第2の受動素子と、
前記第1のVCOの前記第1及び第2の出力又は前記第2のVCOの前記第1及び第2の出力を有する差動出力と
を備える発振器回路。
【請求項2】
前記第1のVCOはさらに、第1のトランジスタと第2のトランジスタとを有し、
前記第1及び第2のトランジスタのソース端子は、前記供給電圧を受け取る電源供給端子に結合されており、
前記第1のトランジスタのゲート端子は、前記第2のトランジスタのドレイン端子に結合されており、
前記第2のトランジスタのゲート端子は、前記第1のトランジスタのドレイン端子に結合されており、
前記第1及び第2のトランジスタの前記ドレイン端子は、コモンドレインノードに結合されている
請求項1に記載の発振器回路。
【請求項3】
前記第2のVCOはさらに、第1のトランジスタと第2のトランジスタとを有し、
前記第2のVCOの前記第1及び第2のトランジスタのソース端子は、前記第1のVCOの前記コモンドレインノードに結合されており、
前記第2のVCOの前記第1のトランジスタのゲート端子は、前記第2のVCOの前記第2のトランジスタのドレイン端子に結合されており、
前記第2のVCOの前記第2のトランジスタの前記ゲート端子は、前記第2のVCOの前記第1のトランジスタのドレイン端子に結合されている
請求項2に記載の発振器回路。
【請求項4】
前記第1の受動素子は、前記第1のVCOの前記第1のトランジスタの前記ドレイン端子を前記第2のVCOの前記第1のトランジスタの前記ドレイン端子に結合しているコンデンサを有し、
前記第2の受動素子は、前記第1のVCOの前記第2のトランジスタの前記ドレイン端子を前記第2のVCOの前記第2のトランジスタの前記ドレイン端子に結合しているコンデンサを有する
請求項3に記載の発振器回路。
【請求項5】
前記第1のVCOはさらに、
前記第1のトランジスタの前記ソース端子を電圧供給端子に結合している第1のインダクタと、
前記第2のトランジスタの前記ソース端子を前記電圧供給端子に結合している第2のインダクタと、
前記第1のトランジスタの前記ドレイン端子を前記コモンドレインノードに結合している第3のインダクタと、
前記第2のトランジスタの前記ドレイン端子を前記コモンドレインノードに結合している第4のインダクタと
を備える請求項2に記載の発振器回路。
【請求項6】
前記第1のVCOの前記第1、第2、第3及び第4のインダクタは、1つの基板上に形成されており、
前記第3及び第4のインダクタは、前記第1及び第2のインダクタの周りに形成されている
請求項5に記載の発振器回路。
【請求項7】
前記第2のVCOはさらに、
前記第1のトランジスタの前記ソース端子を前記第1のVCOの前記コモンドレインノードに結合している第1のインダクタと、
前記第2のトランジスタの前記ソース端子を前記第1のVCOの前記コモンドレインノードに結合している第2のインダクタと、
前記第1のトランジスタの前記ドレイン端子をグランド端子に結合している第3のインダクタと、
前記第2のトランジスタの前記ドレイン端子を前記グランド端子に結合している
請求項5に記載の発振器回路。
【請求項8】
前記第2のVCOの前記第1、第2、第3及び第4のインダクタは、1つの基板上に形成されており、
前記第3及び第4のインダクタは、前記第1及び第2のインダクタの周りに形成されている
請求項7に記載の発振器回路。
【請求項9】
第1の出力と第2の出力とを有し、前記供給電圧を受け取る第3のVCOと、
前記第3のVCOに結合されていて、第1の出力と第2の出力とを有し、前記供給電圧の前記供給電流を受け取る第4のVCOと
をさらに備える請求項1に記載の発振器回路。
【請求項10】
前記第2のVCOの前記第1の出力を前記第1の受動素子に結合している第3の受動素子と、
前記第2のVCOの前記第2の出力を前記第2の受動素子に結合している第4の受動素子と
をさらに備える請求項9に記載の発振器回路。
【請求項11】
前記第3のVCOの前記第1の出力を前記第4のVCOの前記第1の出力に結合しており、前記第3のVCOの前記第1の出力を前記第1の受動素子に結合している第5の受動素子と、
前記第3のVCOの前記第2の出力を前記第4のVCOの前記第2の出力に結合しており、前記第3のVCOの前記第2の出力を前記第2の受動素子に結合している第6の受動素子と
をさらに備える請求項9に記載の発振器回路。
【請求項12】
前記第4のVCOの前記第1の出力を前記第5の受動素子に結合している第7の受動素子と、
前記第4のVCOの前記第2の出力を前記第6の受動素子に結合している第8の受動素子と
をさらに備える請求項11に記載の発振器回路。
【請求項13】
前記供給電圧は、前記差動出力において、一定の出力電圧振幅を維持するためにレギュレートされる
請求項1に記載の発振器回路。
【請求項14】
アンテナと、
前記アンテナに結合されている低ノイズ増幅器と、
前記低ノイズ増幅器に結合されていて、干渉信号を検出するブロッカー電力センサと、
前記ブロッカー電力センサに結合されていて、第1の発振器と、前記第1の発振器よりも低電力で動作する第2の発振器とを有する周波数合成器とを備え、
前記第1の発振器は、
第1の出力と第2の出力とを有する第1の電圧制御発振器(VCO)と、
第1の出力と第2の出力とを有する第2のVCOと、
前記第1のVCOの前記第1の出力を前記第2のVCOの前記第1の出力に結合している第1の受動素子と、
前記第1のVCOの前記第2の出力を前記第2のVCOの前記第2の出力に結合している第2の受動素子と、
前記第1のVCOの前記第1及び第2の出力又は前記第2のVCOの前記第1及び第2の出力を有する差動出力と
を含み、
前記ブロッカー電力センサは、前記干渉信号が検出された場合に、前記第1のVCOを作動させる
無線デバイス。
【請求項15】
前記ブロッカー電力センサは、前記干渉信号が検出されていない場合に、前記第2のVCOを作動させる
請求項14に記載の無線デバイス。
【請求項16】
前記ブロッカー電力センサ、前記第1の発振器、及び前記第2の発振器に結合されているマルチプレクサをさらに備える
請求項14に記載の無線デバイス。
【請求項17】
前記マルチプレクサ及び前記低ノイズ増幅器に結合されているミキサをさらに備える
請求項16に記載の無線デバイス。
【請求項18】
前記第1のVCOの前記差動出力に結合されていて、前記差動出力の出力電圧振幅を検出するピーク検出器と、
前記ピーク検出器に結合されていて、制御信号を送るために、前記差動出力の前記出力電圧振幅と基準電圧とを比較する演算増幅器と、
前記演算増幅器及び前記第1の発振器に結合されているレギュレータとを備え、
前記レギュレータは、前記演算増幅器から前記制御信号を受け取り、前記第1のVCOに送られる出力電圧を調整する
請求項14に記載の無線デバイス。
【請求項19】
前記第1のVCOはさらに、第1のトランジスタと第2のトランジスタとを有し、
前記第1及び第2のトランジスタのソース端子は、供給電圧を受け取る電源供給端子に結合されており、
前記第1のトランジスタのゲート端子は、前記第2のトランジスタのドレイン端子に結合されており、
前記第2のトランジスタのゲート端子は、前記第1のトランジスタのドレイン端子に結合されており、
前記第1及び第2のトランジスタの前記ドレイン端子は、コモンドレインノードに結合されている
請求項14に記載の無線デバイス。
【請求項20】
前記第2のVCOはさらに、第1のトランジスタと第2のトランジスタとを有し、
前記第2のVCOの前記第1及び第2のトランジスタのソース端子は、前記第1のVCOの前記コモンドレインノードに結合されており、
前記第2のVCOの前記第1のトランジスタのゲート端子は、前記第2のVCOの前記第2のトランジスタのドレイン端子に結合されており、
前記第2のVCOの前記第2のトランジスタのゲート端子は、前記第2のVCOの前記第1のトランジスタのドレイン端子に結合されている
請求項19に記載の無線デバイス。
【請求項21】
前記第1の受動素子は、前記第1のVCOの前記第1のトランジスタの前記ドレイン端子を前記第2のVCOの前記第1のトランジスタの前記ドレイン端子に結合しているコンデンサを有し、
前記第2の受動素子は、前記第1のVCOの前記第2のトランジスタの前記ドレイン端子を前記第2のVCOの前記第2のトランジスタの前記ドレイン端子に結合しているコンデンサを有する
請求項20に記載の無線デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−504251(P2013−504251A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527881(P2012−527881)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/044100
【国際公開番号】WO2011/031389
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】