説明

先行車両検出装置

【課題】路面を先行車両と誤認識することのない先行車両検出装置を提供すること。
【解決手段】自車両から照射した照射波の反射波を受信して先行車両の有無を検出する先行車両検出装置において、照射波が路面に照射される走行状態を検出する走行状態検出手段と、走行状態検出手段により照射波が路面に照射される走行状態であることが検出されたとき、反射波の波形に基づいて照射波を反射した物体が先行車両か路面かを判定する判定手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両から発した照射波の反射波から、先行車両を検出する先行車両検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、マイクロ波やレーザ光を照射し、その反射波強度から自車両と先行車両との相対速度や車間距離を算出するレーダ装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3125496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術にあっては、例えば、先行車両追従中に自車両が急減速した際に、自車両前方が減速Gにより下がる(ピッチングが生じる)結果レーダ装置から照射される照射波も下向きに照射されて先行車両後方の路面からの反射波により自車両前方に存在する物体と認識さてしまう。さらに自車両の車体が水平状態に戻る前に追従していた先行車両が加速等を行って検出範囲外になっても、路面からの反射波により路面を自車両と同じ速度で走行する先行車両と誤認識してしまうことがあるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、路面を先行車両と誤認識することのない先行車両検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、自車両から照射した照射波の反射波を受信して先行車両の有無を検出する先行車両検出装置において、照射波が路面に照射される走行状態を検出する走行状態検出手段と、走行状態検出手段により照射波が路面に照射される走行状態であることが検出されたとき、反射波の波形に基づいて照射波を反射した物体が先行車両か路面かを判定する判定手段と、を備えた。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、先行車両検出装置にあっては、先行車両追従中に路面からの反射波を、先行車両からの反射波と誤認識することを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の先行車両検出装置を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
【0009】
図1は本実施例1の制御装置12と先行車両検出装置13と画像処理部17とを備えた走行制御装置を搭載した車両の全体システム図である。
【0010】
走行制御装置搭載車は、エンジン1と、エンジン出力を走行状態に応じて変速する自動変速機2と、燃料噴射制御装置5による燃料噴射制御、及び変速機制御装置6による変速制御を利用した駆動力制御(場合によりエンジンブレーキ制御)と、制動流体圧制御装置8を利用した制動力制御と、後述の車間距離の制御を行う制御装置12と、車間距離制御を行うために自車両前方の障害物の検出や先行車両との距離や相対速度を検出する先行車両検出装置13と、前方道路に対する自車両の傾きを検出する画像処理部17とを備えている。
【0011】
エンジン1はガソリンエンジンやディーゼルエンジン等からなり、エンジン1からの出力は自動変速機2に入力される。なお、エンジン1は内燃機関にかかわらず、電気モータなど駆動力を発生するものであれば良く、特に限定しない。
【0012】
自動変速機2は、制御装置12からの変速信号に応じて変速機制御装置6内の電磁ソレノイド弁を切り替えてクラッチ、ブレーキを締結、解放することにより、入出力間で変速を行い、自動変速機2からの出力された駆動力を減速機3を介して、駆動輪4a、4bへ伝達する。
【0013】
制動流体圧制御装置8はブレーキペダル10により操作されるマスタシリンダ11からの制動流体圧を、制御装置12から制御信号により調圧して、各車輪のホイールシリンダ7a〜7dへ供給する。
【0014】
制御装置12は、制動流体圧センサ9、先行車両検出装置13、車輪速センサ14、アクセル開度センサ15、手動スイッチ16等の各種検出装置から検出信号が入力され、これらの検出信号を基に演算を行って、燃料噴射制御装置5、変速機制御装置6、制動流体圧制御装置8等に制御信号を出力する。
【0015】
図2に示すように、制御装置12に組み込まれた車間距離制御装置100は、自車両の車速に応じ自車両と先行車両との車間距離から目標車速を算出決定する車間制御部101と、設定車速と車間制御部101で決定された目標走行速度との一方を選択して速度指令値とする車速指令値選択部102と、速度指令値によりエンジン等の駆動力やブレーキ等の制動力を制御する車速制御部103と、を備えている。
【0016】
手動スイッチ16は、たとえばボタンスイッチで構成され、ドライバがボタンスイッチを操作することにより希望の車速(追従走行における上限車速)や車間時間を設定できる。設定車速は、例えば50km/hから100km/hの間でボタンスイッチの操作により5km/hごとに入力設定できる。また設定車間距離は、例えば「長」、「中」、「短」といった3段階の車間距離をボタンスイッチを押すごとに切り替え設定ができる。手動スイッチ16で設定された設定車速や設定車間距離は、車間制御部101と車速指令値選択部102と車速制御部103とに入力される。
【0017】
先行車両検出装置13は、図3に示すように車両20の車体前部に設けられ、反射波から自車両の前方に先行車両があるか否かの判定や、自車両と先行車両との車間距離及び相対速度を演算処理により求め、ここで生成した車両有無の判定情報、車間距離情報や相対速度情報を車間制御部101と車速制御部103とに出力する。この先行車両検出装置13は、図4に示すようにCPU201からの指令により照射波としてレーザを発光するレーザ発光素子203と、レーザ発光素子203を制御するレーザ発光回路202と、レーザを先行車両検出装置13の外へ照射するための投光窓205と、照射波を走査するための反射ミラー204と、反射ミラー204を上下左右に回転させるステッピングモータ207と、ステッピングモータ207を駆動するためのモータ駆動回路206と、反射波を受光するための受光窓208と、反射波を検出するレーザ受光素子209と、レーザ受光素子209からの信号を増幅する受光信号増幅回路210とを有する。
【0018】
画像処理部17は、図3に示すように車両20の車内にフロントガラス上部中央から車両前方の路面画像を取得できるように取り付けられており、図5に示すように、路面画像を取得するためのCCDやCMOSイメージセンサ等の撮像手段(以下、カメラと記す)301と、カメラ301で取得した画像を格納する画像メモリ302と、画像処理によりカメラ301が取得した画像から、自車両のピッチング量を測定するプロセッサ303とを備え、測定したピッチング量を先行車両検出装置13に入力する。
【0019】
車輪速センサ14は、車輪速度Vwjを検出する。車輪速度Vwjにより自車両の車速を算出し、この車速情報を車間制御部101及び車速制御部103に出力する。
【0020】
車間制御部101は、車間距離情報、相対速度情報、設定車速情報、設定車間時間情報等が入力されて、これらの情報から車速に応じた車間距離を設定し、併せて目標車速を算出する。
【0021】
車速指令値選択部102は、設定車速と目標車速とを比べて小さい方の車速を車速指令値として車速制御部103へ出力する。
【0022】
車速制御部103は、設定車速情報、設定車間時間情報、先行車両車間距離情報、相対速度情報、及び車速情報等が入力されて、車間距離制御に応じて決定したエンジントルク指令値Tengを燃料噴射制御装置5に、また車間距離制御に応じて決定したブレーキトルク指令値Tbkを制動流体圧制御装置8にそれぞれ出力する。
【0023】
燃料噴射制御装置5は、車速制御部103から入力されたエンジントルク指令値Tengに応じ、燃料噴射量FIを制御する。
【0024】
制動流体圧制御装置8は、車速制御部103から入力されたブレーキトルク指令値Tbkに応じ、例えば、ABSアクチュエータを用い、車輪に制動力を付与するブレーキ液圧Pbkを作り出す。
【0025】
エンジン1及びホイールシリンダ7a〜7dは、燃料噴射制御装置5による燃料噴射量FIと、制動流体圧制御装置8によるブレーキ液圧Pbkとに応じ、車両を定速走行させたり加速したり減速したりして、車両が設定車間時間や設定車速となるように制御される。
【0026】
次に、作用を説明する。
【0027】
[先行車両検出]
先行車両検出装置13は、レーザ発光回路202を介してCPU201により制御されるレーザ発光素子203により反射ミラー204方向にレーザを発光する。レーザ発光素子203の前方には図示しないレンズが設けられ、レーザは所定の角度に広げられる。反射ミラー204は、モータ駆動回路206を介してCPU201により制御されるステッピングモータ207により上下左右に駆動しレーザ発光素子203から発光されたレーザを、上下左右の所定角度範囲で走査する。レーザは投光窓205に設けられたレンズを介して照射される。上記の所定の角度は照射波を走査する範囲の広さ、分解能、ステッピングモータ207の性能、先行車両検出装置13の要求サイズの設計要因等により決定される。投光窓205から照射されるレーザは図6(a)に示すように所定の面積をもつレーザとなるが、レーザ発光素子203の構造上レーザの強度分布は図6(b)に示すように、中心部の強度が最も強く、中心部から離れるにしたがって強度が弱くなる。照射波が照射された物体からの反射波は、受光窓208に設けられたレンズにより集光されてレーザ受光素子209で受光される。レーザ受光素子209からの信号は受光信号増幅回路210で増幅されて、CPU201へ入力される。
【0028】
CPU201は、受光信号から受光した反射波が、先行車両からの反射波か、静止物体からの反射波か、路面からの反射波かを判断し、先行車両からの反射波であれば、自車両と先行車両との距離や相対速度を演算し、車間距離制御装置100へ送信する。
【0029】
受光した反射波が先行車両からの反射波か、静止物体からの反射波か、路面からの反射波かの判定は次の方法により判定される。
【0030】
CPU201で演算される相対速度が、自車両の車速と同じであれば静止物体と判定する。
【0031】
路面に照射されたレーザは、路面が完全散乱面と仮定すると、観測される反射波強度IはLambertの余弦則により、
I=Kd×Ii×cosα・・・(1)
で表される。ここでKdは散乱反射率、Iiは路面入射光強度、αは路面の法線とレーザが成す入射角度である。また、完全散乱面とは反射光をどの方向から見ても輝度の等しい表面のことを言う。
【0032】
図6に示すように、自車両に対し最も手前側の位置R1に入射するレーザの角度をα1とし、最も奥側の位置R2に入射するレーザの角度をα2とすると、レーザは一定の角度で広がって路面に照射されるので、α1<α2である。よって、cosα1>cosα2なので、路面の散乱反射率Kdと路面入射光強度Iiとの積Kd×Iiが位置R1と位置R2とで同様であるとすると、位置R1での反射波強度I1と位置R2での反射波強度I2との大きさの関係はI1>I2になる。またレーザ受光素子209には位置R1で反射した反射波の方が、位置R2で反射した反射波より早く到達する。さらに、路面に入射するレーザの強度は図7に示すように、中心部の強度が強く、周辺部ほど強度が弱くなる強度分布なので、レーザ受光素子209において観測される反射波の反射強度と時間の関係は、図8の点線で示すようにピークが左側によった反射波波形となる。なお、図8の実線はレーザ発光素子203におけるレーザ波形を示す。式1に示すように、反射波強度Iはレーザの入射強度とcosαとの積に関係するので、必ずしもレーザの強度が最大の位置で反射強度が最大になるわけではなく、図8の点線のようにピークが左側によっている反射波強度が観測される。
【0033】
レーザが先行車両のような高さを持つものに反射された反射波は図9の点線が示すように強い反射強度が短時間に集中して観測される。なお、図9の実線は図8と同様にレーザ発光素子203におけるレーザ波形を示す。
【0034】
先行車両からの反射波と路面からの反射波とは波形が異なるので、波形の相似度から先行車両と路面とを判定できる。相似度の判定は、図8、図9に示すように路面からの反射波ピーク強度Iaの高さLfと、強度Ibの位置の幅Ltとの比により判定する。強度Ibは所定強度、またはピーク強度Iaの所定割合の強度である。相似度の判定は、他の方法(例えば、単に幅Ltのみによる判定)でも良く特に本実施形態に限定しない。
【0035】
[定速走行]
車両の車間距離制御装置100は、先行車両検出装置13により先行車両が検出されなかった場合には、手動スイッチ16でドライバが設定した設定車速を保つようにエンジン1の駆動力及びホイールシリンダ7a〜7dによる制動力を制御する。例えば、ドライバが手動スイッチ16にて設定車速を100km/hに設定したとすると、車間制御部101では、先行車両が検出されていないので目標車速は出力されず、この結果、車速指令値選択部102では、手動スイッチ16から入力された設定車速情報の100km/hを選択して、100km/hを車速指令値として車速制御部103に出力する。その後、車速制御部103はドライバの設定車速100km/hを保つように車速情報等を監視しながら燃料噴射制御装置5を介して、エンジン1を制御する。
【0036】
[減速走行]
先行車両検出装置13によって、自車両の進行方向に自車両の現在車速より遅い先行車両が検出されたときには、車間時間を保つように減速する。したがって、ドライバの設定車速(例えば100km/h)より遅い先行車両(例えば80km/h)を検出したときは、車間制御部101ではドライバの設定車間時間情報を基に速度に応じた車間距離と、自車両と先行車両との相対速度とから算出した目標車速を車速指令値選択部102に出力する。車速指令値選択部102では、手動スイッチ16からの設定車速情報(ここでは100km/h)と、車間制御部101からの目標車速情報(ここでは80km/h)とが入力されるが、車速の小さい方の目標車速を車速指令値(ここでは80km/h)として車速制御部103へ出力する。車速制御部103では入力された車速指令値に基づき、設定車間時間を達成するように燃料噴射制御装置5及び制動流体圧制御装置8を制御して、エンジン1の駆動力及びホイールシリンダ7a〜7dによる制動力を制御する。
【0037】
[追従走行]
ドライバが設定した設定車間時間を基に速度に応じて算出した車間時間保って、先行車両検出装置13によって検出された先行車両に追従して走行するように車両を制御する。車間制御部101では、入力された車速情報、車間距離情報、相対車速情報、設定車間時間情報基づいて、車速に応じた車間距離を設定し、目標車速を算出する。車速指令値選択部102では、ドライバの設定車速情報と車間制御部101からの目標車速とから、車速の小さいものを選択し指令車速値として車速制御部103に出力する。車速制御部103では、車速指令値等により燃料噴射制御装置5及び制動流体圧制御装置8を介して、自車両の加減速制御を行う。なお、このときの車速はドライバが設定した設定車速を上限とし、車速が設定車速を超えると追従走行をやめて、定速走行を行う。
【0038】
[加速走行]
自車両の進行方向にいる先行車両が走行レーンを変更するなどしてそれまでの走行レーンからいなくなったときには、ドライバの設定車速を上限に加速をする。このとき、車速指令値選択部102では、車間制御部101では目標車速が設定されないのでドライバの設定車速を車速指令値として車速制御部103へ入力する。車速制御部103では、燃料噴射制御装置5よる燃料噴射量を増やして、自車両を車速指令値まで加速させる。
【0039】
[先行車再判定]
先行車両追従走行時に、自車両前方の路面を先行車両と誤認識した可能性がある場合には、検知している反射波が先行車両からか、路面からかを判定し、路面からのであれば先行車両を探索して、先行車両を再検出した場合には検出した先行車両に対して追従走行を行い、先行車両を検出できなかった場合には定速走行を行う。
【0040】
自車両前方路面を先行車両と誤認識する可能性がある状況を判断する手段について説明する。図5のカメラ301が自車両前方の路面の画像を取得し、画像メモリ302に格納する。画像メモリ302に格納された画像は、プロセッサ303の白線検出部304により、図10のような走行路面脇にある白線L1、L2が検出され、図11に示すように画面の左上を原点として、横にX軸、縦にY軸の座標が設定される。
【0041】
車両進行方向推定部305では、白線検出部304において検出された白線に対する自車両の向きや道路曲率を推定する。図11に示すように、Y=Ya、Ybの位置にY軸に対して垂直な直線La、Lbと白線L1、L2との交点a1、a2及び交点b1、b2間の幅Xa、Xbを算出し、幅Xaの中点と幅Xbの中点とを結ぶ中心線L12を設定する。この中心線L12とY軸との傾きが一定範囲内であれば車両が白線に対して傾いて走行をしている、又は道路が曲がっていると判断され、画像処理により白線の傾きや道路曲率を補正して、自車両進行方向に平行な白線画像を作り出す。
【0042】
車両挙動推定部306では、上記車両進行方向推定部305から得た白線の座標情報を基に路面に対する自車両のピッチング量を推定する。図12の実線が、ピッチングの生じていないとき(例えば車両停止時)に得られた白線の画像であるとすると、ピッチングが生じて車両前方が下がるとき(例えば減速時)には、2点鎖線で示す白線画像よりY軸負方向が開いた白線画像が得られ、車両前方が上がるとき(例えば加速時)には、1点鎖線で示す白線画像よりY軸負方向が閉じた白線画像が得られる。プロセッサ303ではピッチングが生じていないときのY軸に対する白線の傾きを保持し、検出された白線のY軸に対する傾きの変化量が大きいときには、路面を先行車と誤認識する可能性がある判定する。
【0043】
図13は先行車両再検出処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。
【0044】
ステップS1では、先行車両に追従走行中か否かを判定し、追従走行中であればステップS2へ移行する。
【0045】
ステップS2では、ピッチング量の変化(前回検出した値との差)が所定値より大きいか否かを判定し、YESの場合はステップS3へ移行し、NOの場合はステップS4へ移行し、追従走行を継続する。なお、このステップS2は本発明の走行状態検出手段に相当する。
【0046】
ステップS3では、検出した反射波波形から反射波が先行車両からの反射波か路面からの反射波かを判定し、先行車両からの反射波の場合はステップS4へ移行し追従走行を継続し、路面からの反射波の場合にはステップS5へ移行する。なお、このステップS3は本発明の判定手段に相当する。
【0047】
ステップS5では、先行車両を探索し、再検出できた場合にはステップS6へ移行して再検出した先行車両に追従走行を行い、再検出できなかった場合にはステップS7へ移行して定速走行を行う。再検出した先行車両は以前に追従していた先行車両でも良いし、新たに検出した先行車両でも良い。
【0048】
ここでは、画像処理を用いて自車両のピッチング量の変化量により、先行車両検出装置13が路面を先行車両と誤認識する可能性を判定しているが、前方路面が上り坂になっている場合でも同様に路面を先行車両と誤認識する可能性がある。しかし、前方路面が上り坂になっている場合も本実施例と同様の処理で誤認識の可能性を判断できる。すなわち画像処理部17は、路面と自車両とが自車両の走行方向に対して相対的に傾いている状態を検出することができる。
【0049】
また、ここでは画像処理を用いて自車両のピッチング量の変化量によって誤認識した可能性を判断しているが、ブレーキ操作を検出するブレーキ操作センサを設け、ブレーキ操作を検出した際に誤認識をした可能性があると判断しても良いし、車両前後Gを検出する前後Gセンサを設け、自車両に所定値以上の減速Gが発生したことを検出した際に誤認識をした可能性があると判断しても良い。なお、ブレーキ操作センサは本発明のブレーキ操作検出手段に相当し、前後Gセンサは本発明の減速検出手段に相当する。
【0050】
次に、本実施例1の先行車両検出装置の効果を説明する。
【0051】
(1)路面を先行車両と誤認識する可能性があったときに、レーザの反射波が先行車両からの反射波か路面からの反射波かを判定するので、路面を先行車両と誤認識する可能性が低減し、正確な車間距離制御を行うことができる。
【0052】
(2)反射波の経時的な変化に基づいて照射波を反射した物体を判定するので、先行車両からの反射波か路面からの反射波かを正確に判別することができる。
【0053】
(3)自車両が路面に対して自車両の走行方向に相対的に傾いたことを検出したとき、反射波が先行車両からの反射波か、路面からの反射波かを判定するようにしたので、路面を先行車両と誤認識する可能性が低減できる。
【0054】
(4)画像処理部17において取得した白線の画像処理により先行車両検出装置13の誤認識の可能性があると判断するので、自車両が傾いたときのみでなく、前方に上り坂があるときにも、先行車両検出装置13の誤認識する可能性を判断できるので、誤認識の可能性を低減できる。
【0055】
(5)自車両が減速していることを検出したときに先行車両検出装置13の誤認識の可能性があると判断するので、誤認識の可能性を低減できる。
【0056】
(6)ブレーキ操作を検出したときに先行車両検出装置13の誤認識の可能性があると判断するので、路面上に白線等を検出できない場合でも誤認識の可能性を判断できる。
【0057】
以上、本発明の先行車両検出装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加は許容される。
【0058】
例えば、本実施例1の先行車両検出装置では、画像処理部17において白線を検出しているが、中央線の黄線を検出するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、自車両から照射した照射波の反射波を用いて検出した検出物の種類を特定し、先行車両に対して車間距離制御を行うだけでなく、路上の先行車両以外の障害物等を検出し、警報等をドライバに与える衝突防止装置など他の車両制御にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1に係る、走行制御装置搭載車の全体システム図である。
【図2】実施例1に係る、走行制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【図3】実施例1に係る、先行車両検出装置と画像処理部の取り付け位置を示す図である。
【図4】実施例1に係る、先行車両検出装置の構成を示すシステムブロック図である。
【図5】実施例1に係る、画像処理部の構成を示すシステムブロック図である。
【図6】実施例1に係る、照射するレーザの強度分布を説明する図である。
【図7】実施例1に係る、路面にレーザが照射される場合を説明する図である。
【図8】実施例1に係る、路面からの反射波波形を示す図である。
【図9】実施例1に係る、先行車両からの反射波波形を示す図である。
【図10】実勢例1に係る、画像処理部において取得される路面上の白線の画像を示す図である。
【図11】実施例1に係る、自車両と白線の傾き又は道路曲率を演算する方法を説明する図である。
【図12】実施例1に係る、自車両の傾きによる白線の取得画像を示す図である。
【図13】実施例1に係る、先行車両再検出処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン
2 自動変速機
3 減速機
4 駆動輪
5 燃料噴射制御装置
6 変速機制御装置
7 ホイールシリンダ
8 制動流体圧制御装置
9 制動流体圧センサ
10 ブレーキペダル
11 マスタシリンダ
12 制御装置
13 先行車両検出装置
14 車輪速センサ
15 アクセル開度センサ
16 手動スイッチ
17 画像処理部
20 車両
100 車間距離制御装置
101 車間制御部
102 車速指令値選択部
103 車速制御部
202 レーザ発光回路
203 レーザ発光素子
204 反射ミラー
205 投光窓
206 モータ駆動回路
207 ステッピングモータ
208 受光窓
209 レーザ受光素子
210 受光信号増幅回路
301 カメラ
302 画像メモリ
303 プロセッサ
304 白線検出部
305 車両進行方向推定部
306 車両挙動推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両から照射した照射波の反射波を受信して先行車両の有無を検出する先行車両検出装置において、
前記照射波が路面に照射される走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記走行状態検出手段により前記照射波が路面に照射される走行状態であることが検出されたとき、前記反射波の波形に基づいて前記照射波を反射した物体が先行車両か路面かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする先行車両検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の先行車両検出装置において、
前記反射波の波形は、反射波の強度の経時的な変化であることを特徴とする先行車両検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の先行車両検出装置において、
前記走行状態検出手段は、前記照射波が路面に照射される走行状態として、自車両が路面に対して自車両の走行方向に相対的に傾く状態を検出することを特徴とする先行車両検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の先行車両検出装置において、
前記走行状態検出手段は、自車両前方を撮像する撮像手段を有し、前記撮像手段からの画像情報に基づいて、自車両が路面に対して自車両の走行方向に相対的に傾く状態を検出することを特徴とする先行車両検出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の先行車両検出装置において、
前記走行状態検出手段は、自車両が減速していることを検出する減速検出手段を有し、前記減速検出手段からの検出信号に基づいて、自車両が路面に対して自車両の走行方向に相対的に傾く状態を検出することを特徴とする先行車両検出装置。
【請求項6】
請求項3に記載の先行車両検出装置において、
前記走行状態検出手段は、運転者によるブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段を有し、前記ブレーキ操作検出手段からの検出信号に基づいて、自車両が路面に対して自車両の走行方向に相対的に傾く状態を検出することを特徴とする先行車両検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−98221(P2006−98221A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284905(P2004−284905)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】