光ファイバを用いる集積光デバイスのためのチャネル付基板
光ファイバ及び少なくとも1つの能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスを形成するためのチャネル付基板が開示される。チャネル付基板は1本以上の溝が形成されている上表面を有する基板部材及び透明シートを有する。薄ガラスでつくられていることが好ましい透明シートは、1本以上の溝と組み合わされて1本以上のチャネルを定めるように、基板部材の上表面に定結される。チャネルはそれぞれ、光ファイバを収めて透明シートを介する能動光コンポーネントと光ファイバの間の光通信を可能にするような大きさにつくられる。モールド成形により、及び延伸により、形成されるチャネル付基板も提示される。チャネル付基板を用いる集積光デバイスも開示される。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2009年9月30日に出願された、名称を「光ファイバを用いる集積光デバイスのためのチャネル付基板(Channeled Substrates For Integrated Optical Devices Employing Optical Fibers)」とする、米国非仮特許出願第12/570523号の恩典を主張し、その優先権を主張する。本明細書は上記出願の明細書の内容に依存し、上記出願の明細書の内容は本明細書に参照として含まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は集積光デバイスに関し、特に、光ファイバを用いる集積光デバイスを形成するために用いられる基板に関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかのタイプの集積光デバイスでは、能動光コンポーネント、能動電気コンポーネント及び、光ファイバの形態の、受動導波路が組み合わされている。そのような集積光デバイスの例には、光トランシーバ及び能動ケーブルアセンブリ(ACA)がある。
【0004】
光ファイバの能動光コンポーネントへの能動位置合せは集積光デバイスの最適性能を保証するが、位置合せは、コストを下げ、複雑さを減じるため、受動であることが好ましい。さらに、集積光デバイスを形成するためには技術上既知の標準パッケージング技術が用いられることが好ましい。
【0005】
実用集積光デバイスはコストを最小限に抑えるために標準パッケージング技術を用いて作製される。一般に、能動光コンポーネントは基板上に能動面を上にしてマウントされ、ワイアボンディングを用いて電気的に相互接続される。この場合、能動光コンポーネントの光路は、いくつかの実施形態において、基板から離れるように上に向けられる。別の手法では、能動光コンポーネントは基板上にフリップチップ態様でマウントされ、よって、能動光コンポーネントの光路は、基板に入るように下方に向けられるかまたはガラス窓のような透明媒体を通して上方に向けられる。
【0006】
これらの2つの選択肢の内、フリップチップマウント手法は、周囲環境から保護される能動光コンポーネントと光ファイバの間の界面のような、いくつかの利点を有する。また、光インターフェースが支持基板によって機械的に安定化され、他のデバイスへの電気的リンクが短く、高周波数動作が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、フリップチップマウント手法の主要な課題には、能動光コンポーネントの下で光ファイバの受動位置合せを行い、光ファイバへの低損失結合を得なければならないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は1本以上の光ファイバ及び少なくとも1つの能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスを形成するためのチャネル付基板である。チャネル付基板は1本以上の溝が形成されている上表面を有する基板部材を含む。基板は、基板部材の上表面に定結され、1本以上の溝と組み合わされて、1本以上のチャネルを定める、透明シートも含み、1本以上のチャネルはそれぞれ、1本以上の光ファイバの内の1本を収めて、透明シートを介する光通信を可能にする能動光コンポーネントと1本以上の光ファイバの間の光通信を可能にするような大きさにつくられる。
【0009】
本開示の別の態様は1本以上の光ファイバ及び能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスを形成するためのチャネル付基板である。チャネル付基板は平上表面を有する基板部材を含む。チャネル付基板は1本以上の溝が形成されている透明シートも含み、透明シートは、平基板上表面と組み合わされて、それぞれが1本以上の光ファイバの内の1本を収め、透明シートを介する能動光コンポーネントと1本以上の光ファイバの間の光通信を可能にするような大きさにつくられる、1本以上のチャネルを定めるために基板上表面に定結される。
【0010】
本開示の別の態様は1本以上の光ファイバ及び能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスを形成するためのチャネル付基板を形成する方法である。本方法は上表面を有する基板部材を提供する工程及び表裏をなす表面を有する透明シートを提供する工程を含む。本方法はさらに、透明シートの一方の表面に1本以上の溝を形成する工程も含む。本方法はさらに、それぞれが1本以上の光ファイバの内の1本を収める大きさにつくられて能動光コンポーネントと1本以上の光ファイバの間の透明シートを介する光通信を可能にする、1本以上のチャネルを定めるために、溝付透明シート表面を基板部材上表面と結合させる工程を含む。
【0011】
本開示の別の態様は、光ファイバ及び能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスのためのチャネル付基板を形成する方法である。本方法は、実質的に長方形につくられた断面を有し、複数本のチャネルが形成されている、柱状ガラスプリフォームを形成する工程を含む。本方法は、プリフォームより小さく、プリフォームと実質的に同じ相対寸法を有する、柱状ロッド部分を形成するためにプリフォームを延伸する工程も含み、ロッド部分のチャネルは光ファイバを収める大きさにつくられる。本方法はさらに、チャネル付基板を得るためにロッド部分を短尺品に割断する工程を含む。
【0012】
本開示の上記及びその他の利点は、以下に記述される明細、特許請求の範囲及び添付図面を参照することで、当業者にはさらに深く理解され、認められるであろう。
【0013】
以下の詳細な説明の参照が添付図面とともになされれば、本発明のさらに完全な理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、形成された精密溝を示す、基板部材の一例の斜視図である。
【図2】図2は、図1と同様であるが、チャネル付基板の一例を形成するために溝付基板部材の上に配される過程にある透明シートも示す。
【図3】図3は図2で形成されたチャネル付基板の斜視図である。
【図4】図4は、導電コンタクトが透明シートの上表面上に形成されていることを除き、図3と同じである。
【図5】図5は、ハンダボールが導電コンタクト上に形成されていて、能動光コンポーネント及び能動電気コンポーネントが導電コンタクト及びハンダボールの上に配される過程にあることを除き、図4と同じである。
【図6】図6は、能動光コンポーネント及び能動電気コンポーネントがチャネル付基板上にフリップチップマウントされていることを除き、図5と同様である。
【図7】図7は、裏返しにされ、プリント回路基板(PCB基板)の形態のさらに大きな基板にマウントされる過程にある、図6のチャネル付基板を示し、PCB基板上に動作可能な態様でマウントされる支援チップも示す。
【図8】図8は、図7と同様であるが、PCB基板上の所定の位置にあるチャネル付基板及び支援チップを示す。
【図9】図9は、図8と同様であるが、チャネル付基板のチャネルに挿入される過程にある光ファイバアレイを示す。
【図10】図10は、ファイバアレイがチャネル付基板内の所定の位置にあることを除き、図9と同じである。
【図11】図11は、図10と同じであるが、丸い定結材小塊によりチャネル付基板及びPCB基板に保持されているファイバアレイを示す。
【図12】図12は透明シートの両面上にある能動光コンポーネント及び光ファイバの拡大図であり、能動光コンポーネントからの光ビームが透明シートを通行する際の光ビームの発散を示す。
【図13】図13はウエハスケール基板部材の斜視図であり、鋸によって切り込まれている溝を示す。
【図14】図14は図13の溝付基板部材の上に配される過程にあるウエハスケール透明シートを示す斜視図である。
【図15】図15は、図13の溝付基板部材の上の所定の位置にあってウエハスケールチャネル付基板を形成している図14の透明シートを示す、図14と同様の斜視図である。
【図16】図16は、図15と同様の斜視図であるが、透明シートの上表面上に形成された導電コンタクトを示す。
【図17】図17は、図16と同様であるが、集積光デバイスの形成においてチャネル付基板にフリップチップマウントされた能動光コンポーネント及び能動電気コンポーネントを示す。
【図18】図18は、ウエハスケールチャネル付基板がダイシングされて個々の集積光デバイスに分割された後であることを除き、図17と同様である。
【図19】図19は溝が形成されているモールド成形基板部材の斜視図であり、溝は端から端まで貫通せずに基板部材内で終端している。
【図20】図20は図19のモールド成形基板部材を使用するチャネル付基板を採用している集積光デバイスの一例の断面図である。
【図21】図21は、図20と同じであるが、傾斜ファイバ端の角度より小さい角度を有する傾斜チャネル端を示す。
【図22】図22は、図21と同様であるが、傾斜ファイバ端の角度より大きい角度を有する傾斜チャネル端を示す。
【図23】図23は、図3に示されるチャネル付基板と同様であるが、一体構造を有するチャネル付基板を形成するために延伸されるガラスプリフォームの一例である。
【図24】図24は、チャネルの形状及びプリフォームの相対スケールを維持しながら小寸ロッドに延伸されている柱状プリフォームの加熱端を示す、円筒ヒーター内の図23のプリフォームの斜視破断図である。
【図25】図25は、形成されたチャネルアレイを示す、延伸後のチャネル付基板の斜視図である。
【図26】図26は、図25と同じであるが、チャネル付基板の下表面上の導電コンタクトを示す。
【図27】図27は、図26と同様であり、基板チャネルに挿入される過程にあるファイバアレイを示す。
【図28】図28は、図27と同様であるが、基板チャネル内の所定の位置にあるファイバアレイを示す。
【図29】図29は光ファイバ端が、能動光コンポーネントからの光の光ファイバ内への結合を容易にし、同時に光の一部の検出も可能にする、2つのファセット面を有する実施形態の一例の拡大図である。
【図30】図30は、図28と同様の斜視図であるが、チャネル付基板の送信器能動光コンポーネントとは反対側の表面上の、受信器能動光コンポーネントを示す。
【図31】図31は溝付透明シートの一例の斜視図である。
【図32】図32は、図31と同様であり、溝付表面上に配された支持材料を示す。
【図33】図33は、図32と同様であり、プレーナ化後の支持材料を示し、支持材料を通過するダイシング線も示す。
【図34】図34は、図33と同様であるが、支持材料を通過しないダイシング線を示す。
【図35】図35は鋸によって溝が形成されている薄透明シートの斜視図である。
【図36】図36は、形成された溝の湾曲形状を示す、図35の透明シートの断面図である。
【図37】図37は図36と同様の断面図であり、後にチャネルを定めるために透明シートの溝に嵌合する形状につくられたリッジを有する、モールド成形基板部材をさらに示す。
【図38】図38は、透明シートの溝に嵌合するリッジを示す、図37のモールド成形基板の底面図である。
【図39】図39は透明シートに嵌め込まれたモールド成形基板を示し、それにより形成されたチャネルを示す。
【図40】図40は、図39と同様であるが、モールド成形基板のリッジと透明シートの溝によって定められたチャネル内の光ファイバを示す。
【図41】図41はチャネル付基板のための溝の構成の別の例の断面図である。
【図42】図42はチャネル付基板のための溝の構成のまた別の例の断面図である。
【図43】図43はチャネル付基板のための溝の構成のまた別の例の断面図である。
【図44】図44はチャネル付基板のための溝の構成のまた別の例の断面図である。
【図45】図45は、図44と同様であり、V溝の頂角の一例及び、この角度が送信器能動光コンポーネントとチャネル内の光ファイバの間の光結合にどのように影響するかを示す。
【図46】図46は、図44と同様であり、V溝の頂角の別の例及び、この角度が送信器能動光コンポーネントとチャネル内の光ファイバの間の光結合にどのように影響するかを示す。
【図47】図47は、図44及び図46と同様であり、透明基板の溝の底における散乱が送信器能動光コンポーネントからの光をチャネル内の光ファイバに結合するために用いられる実施形態の一例を示す。
【図48】図48は、図44及び図46と同様であり、透明基板の溝の底における散乱が送信器能動光コンポーネントからの光をチャネル内の光ファイバに結合するために用いられる実施形態の別の例を示す。
【図49】図49は、送信器アセンブリの一部である送信器能動光コンポーネントと組み合わせて構成された集積光デバイススタックを有する、プリント回路基板(PCB)アセンブリの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の現在好ましい実施形態をここで詳細に参照する。そのような実施形態の例が添付図面に示されている。可能であれば必ず、全図面にわたって同様の参照数字及び記号が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。
【0016】
本開示の例は様々な基板及び、光ファイバのアレイを低コスト光電子トランシーバ及びACAのような集積光デバイスと受動的に位置合せするために、そのような基板を用いる方法に向けられる。本開示の基板を用いる集積光デバイスの例も説明される。
【0017】
能動光コンポーネントは光源の形態にあることができ、例えば、端面発光源(例えば、ファブリ-ペロ型レーザ、分布帰還型レーザ、リングレーザ、等)または、縦型キャビティ表面発光レーザ(VCSEL)のような、表面発光源のような市販のアレイ型半導体レーザ源を含む。発光する能動光コンポーネントは「送信器能動光コンポーネント」と以下で称される。能動光コンポーネントは能動光変調器の形態にあることができ、例えば、空間光変調器、光位相変調器、電界吸収型変調器、注入同期光変調器、光トランジスタ、自由キャリア吸収変調器、液晶変調器及び半導体光増幅器を含み、一般に「光変調器」と以下で称される。能動光コンポーネントは検出器または受信器の形態にあることもでき、例えばPINフォトダイオードのような検出器アレイを含み、一般に「受信器能動光コンポーネント」と以下で称される。
【0018】
以下の議論において、「ウエハスケール」は、(半導体ウエハのような)単一の基板上に複数の部材、デバイスまたはアセンブリを作製し、次いでダイシングして、個々の部材、デバイスまたはアセンブリに戻すに十分な大きさを意味する。
【0019】
図1は、上表面12,下表面14,前端面16及び後端面18を有する、一例の基板部材10の斜視図である。X軸及びY軸が基板部材10の平面にあり、Z軸がその平面から外に向かう、直交座標が参考のために示されている。基板部材10は、シリコン、InP及びその合金、GaAs及びその合金、GaN及びその合金、GaP及びその合金、石英、サファイア、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化インジウムを含む導電性透明酸化物、ガラス、セラミック、プラスチック、金属及び、光電子デバイス用途及び集積光電子デバイス用途での使用に適する、その他の寸法的に安定な材料のような、多くの材料の内の少なくとも1つで作製することができる。
【0020】
基板部材10には、上表面12に1本以上の溝30が形成されている。溝30は底31及び側壁32を有する。溝30は光ファイバに対するガイドとしてはたらくことが目的とされ、よって光ファイバの直径に適合する(例えば光ファイバの直径より若干大きい)幅及び深さを有するように形成される。溝30は、精密鋸引きプロセス、等方性または異方性のエッチング(例えば、反応性イオンエッチング、化学エッチングまたは光-化学エッチング)プロセスまたはモールド成形プロセスを含む、様々なプロセスによって形成することができる。溝30(または以下で論じられる溝30')の断面プロファイルは、矩形、V字形、U字形またはこれらの組合せで形成される何か他のプロファファイル及び/または別のプロファイルとすることができる。溝30は、図示されるように基板部材10の全長に沿って延びるだけでなく、以下で論じられるように、基板部材内のどこかの場所で終端することもできる。
【0021】
次いで図2及び図3を参照すれば、基板溝作製完了後、上表面52,下表面54,前端面56,後端面58及び厚さT50を有する薄い透明シート50が基板部材10の溝付上表面12上に配される。一実施形態例において、透明シート50はガラスでつくられる。透明シート50は定結材料62,例えば、接合剤、接着剤またはエポキシ樹脂のような、様々な手法の1つを用いて上表面12に定結される。例えば、定結材料62は、スクリーン印刷プロセスを用いて透明シートの下表面54の選ばれた領域に、あるいは基板部材の上表面の上に透明シート50をおく前に基板部材の上表面の部分部分に、塗布することができる。基板部材10がシリコンでつくられていれば、一実施形態例において、透明シート50を基板部材の上表面12に定結するために陽極接合が用いられる。
【0022】
基板部材10が透明シート50の熱膨張係数(CTE)にほぼ一致するCTEを有しており、基板部材が高温(例えば>850℃)に耐えることができる場合、別の例において、透明シートは基板部材に融着接合される。この例においてはさらに、融着接合は透明シート50に印加される追加の下向き圧力の下で実施される。別の実施形態例において、透明シート50は選ばれた場所において基板部材10にレーザ融着される。
【0023】
透明シート50のための材料の一例は、広い波長範囲にわたって光学的に透明であり、導電コンタクトを、また導電性透明酸化物も、支持することができ、パッケージングプロセス及び組立プロセスに適合し、厚さが制御された薄いシートを低コストで作製できることから、ガラスである。さらに、ガラスは、シリコンまたは、GaAS,InP,GaN,GaP及びこれらの合金のような、集積光デバイスに用いられるIII-V族光電半導体材料のCTEに一致するように組成を工学処理できる低CTE材料である。加えて、ガラスはガラス内のビーム伝搬の回折を制限するために比較的高くすることができる屈折率を有する。これにより、以下で説明されるように、能動光コンポーネントと光ファイバアレイの許容間隔が拡がる。屈折率は、ガラス光学インターフェースにおける後方反射を低減するため、比較的低くすることもできる。透明シート50に適する別の材料には、様々な光学特性、熱特性、化学特性及び機械特性から、サファイア及び石英がある。
【0024】
透明シート50に対する厚さT50の範囲の一例は、多モード光ファイバへの波長λ=1.55μmの光の低損失結合に対して、約75μmと約125μmの間である。一実施形態例において、透明シート50は上表面52及び下表面54の一方または両方の上に少なくとも1層の無反射コーティング(図示せず)を有する。少なくとも1層の無反射コーティングは、透明シート50が基板部材の上表面12に結合される前またはされた後に施すことができる。
【0025】
透明シート50及び基板部材の上表面12は溝30及び透明シートがチャネル66を定めるアセンブリを形成し、以降の処理を通して、単一の、チャネル付一体基板として扱うことができる。したがって透明シート50と溝付基板部材10の複合構造体は以降「チャネル付基板」70と称される。溝付基板部材10は、透明シート50にかけられる後続のプロセス工程に耐えるには柔軟すぎ、及び/または脆弱すぎる、透明シート50に対する頑健な機械的支持体としてはたらく。
【0026】
図4を参照すれば、透明シート50の上表面52に導電コンタクト80が付加されている。導電コンタクト80は、例えばスクリーン印刷プロセス、電気化学メッキプロセス、光化学エッチングプロセスまたはその他の既知のプロセスを用いて、与えることができる。コンタクト形成プロセス中、導電コンタクト80は、後にマウントされる能動光コンポーネントが溝30の中心と位置合せされるように、基板部材の溝30と位置合せされる。
【0027】
導電コンタクト80は能動コンポーネントへの電気コンタクトを提供する。導電コンタクト80のタイプの一例はパターン化形状を有するが、別の例の導電コンタクトはコンタクトパッドであるかまたは導電パッドを有する。図4の導電コンタクト80は比較的細いワイア区画によって接続された2つの広幅パッドを有するとして示される。一実施形態例において、導電パッド80は、金、クロム、スズ、チタン、銀及びインジウムのような金属を、単独でまたは組み合わせて用いてつくられる。導電コンタクト80を通して光ビームを伝搬させることが望ましい場合に有用な別の実施形態例において、導電コンタクトは酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化スズのような、導電性透明材料で作製される。いくつかの実施形態において、基板部材10は導電性透明材料の厚膜またはシートでつくられ、この場合は基板部材と導電コンタクト80の両者が一体として複合される。この構成は、例えば、能動コンポーネントの共通リードの全てを同じ電気接地面に終端させることが望ましい場合に有用である。
【0028】
図5及び図6を次に参照すれば、ハンダボール82が導電コンタクト80を選択するために与えられる。次いで、能動光コンポーネント100(例えば、VCSELのような光源、広域アレイ検出器のような光検出器、自由キャリア光変調器のような光変調器、等)及び能動電子コンポーネント102(例えば、ドライバチップ、受信器チップ、等)がハンダボール82上にフリップチップマウントされる。図5及び図6はチャネル66のアレイに重ねてマウントされた1つの能動光コンポーネント100を示すが、一般に、1つ以上の能動光コンポーネントを同じチャネル付基板70上に配置することができる。一実施形態例において、VCSELアレイの形態の送信器能動光コンポーネント100がチャネル66の1つのセットに重ねて配置され。検出器アレイの形態の受信器能動光コンポーネントがチャネルの別のセットに重ねて配置される。
【0029】
能動光コンポーネント100が光変調器の形態にあり、特に、自体が本質的に光反射性ではなく光透過性である種類の変調器である場合、光が能動光コンポーネントを通過し続けるための実質的に透明な経路を、光ビームのその部分をさらに用いることができるように、設けることが好ましい。さらに、一実施形態例において、電子ドライバチップまたは電子受信器チップの形態の能動電子コンポーネント102もチャネル付基板70上に動作可能な態様で配置される。図6は能動光コンポーネント100及び能動電子コンポーネント102のフリップチップマウント後のチャネル付基板70を示す。図6の構成は「集積光デバイス」202とも称される。
【0030】
能動光コンポーネント100には、チャネル付基板70の平面に平行な方向の光を発するかまたは受け取る、端面発光レーザ、プレーナ型導波路及びファイバアレイのようなデバイスが含まれることに注意されたい。そのような能動光コンポーネント100に対し、光直角方向変換構造または素子(図示せず)がそのようなデバイス内に、またはそのようなデバイスに隣接して、設けられる。例えば、プレーナ型光波回路(PLC)の端面を、PLC基板対して公称上垂直方向に光を向けるために、45°またはその近くの角度に面取りすることができる。あるいは、個別の直角ミラー構造を、能動光コンポーネントに隣接させて付加するか、または鋸引きまたはその他の表面プロファイル形成法によって透明層のどこかの領域に形成することができる。
【0031】
能動光コンポーネント100は、VCSEL光源と同様の態様で透明シートを通過する垂直方向光放射経路に光がしたがうように、チャネル付基板に対して垂直方向に(詳しくは、透明シート50の上表面52対して垂直方向に)配位することもできる。
【0032】
図7を参照すれば、次のプロセス工程において、図6の集積光デバイス202が裏返しにされて、プリント回路基板(PCB)のような、大寸基板120(以降、「PCB基板」120)にマウントされる。PCB基板120は、チャネル付基板がPCB基板内またはPCB基板上にマウントされるときの、フリップチップマウントされた能動光コンポーネント100及び能動電子コンポーネント102との機械的干渉を防止する穴またはリセス126が必要に応じて形成されている、上表面122を有する。PCB基板の上表面122は、穴またはリセス126の周縁を囲んで、PCB基板と集積光デバイス202の間に必要な様々な電気接続を与える電気コンタクト80及びハンダボール82を有する。一実施形態例において、マウントプロセスはPCB基板120上への補助チップまたは支援チップ150のフリップチップマウントも含むことができる。この結果が図8に示されるようなPCBアセンブリ204である。
【0033】
図9を参照すれば、外装部221を有し、それぞれが外表面223,コア224及び劈開(例えばレーザ劈開)端226を有する光ファイバ222によって構成される、光ファイバアレイ220が提供され、チャネル付基板40のチャネル66に挿入される。一実施形態例において、光ファイバアレイ220は、リボンファイバケーブルのような、光ファイバケーブルを構成する。一実施形態例において、ファイバ端226は傾けられ、したがって傾斜端面228を有し、端面角は光ファイバ軸A1に対して、45°ないしその近くに、または向上した光性能(例えば、低減された後方反射、多モードファイバにおける拡張された帯域幅、等)を提供する他の角度に、形成することができる。傾斜ファイバ端226の尖端形状により、チャネル66へのファイバ222の挿入が容易になる。一実施形態例において、チャネル66の露出(開放)端は、チャネル66へのファイバアレイ220の挿入及びチャネル66内のファイバアレイ220の位置合せをさらに容易にするため、末広がりにつくられる。
【0034】
図10は、ファイバアレイ220がチャネル66に挿入されることで組み込まれた後の、PCBアセンブリを示す。ファイバアレイ220は、傾斜ファイバ端226が能動光コンポーネント100に位置合せされるまで、チャネル66に挿入される。VCSELまたはその他の光源の形態の送信器能動光コンポーネント100に対しては、一例の方法において、ファイバアレイ220を位置合せするために能動光フィードバックが用いられる。この位置合せ方法は、能動光コンポーネント100を作動させる工程及び光ファイバアレイ220の遠端におけるパワーが最大になるまで、チャネル66内の光ファイバアレイの位置を調節する工程を含む。受信器能動光コンポーネント100に対しては、光ファイバあれ離220の遠端に光を入射させ、チャネル66内でファイバアレイの位置を調節しながら受信器パワーを能動的にモニタする。別の実施形態例において、チャネル付基板70を通して見えるようなコンポーネントまたは基準を認識するように構成されたビジョンシステムにより、困難な能動光コンポーネント100のパワー増大を要求せずに、光ファイバアレイ220を能動光コンポーネント100と位置合せすることが可能になる。
【0035】
光ファイバの外表面223と、チャネル66を定める、側壁32及び/または透明シートの下表面54の間の界面において、後方反射またはエタロン効果がおこり得る。一実施形態例において、そのような効果は、光ファイバの外表面223,チャネル壁32及び透明シートの下表面54の内の少なくとも1つの上の無反射コーティングを用いて低減される。あるいは、屈折率整合エポキシ樹脂または屈折率整合液(図示せず)をこの界面に与えることができる。屈折率整合エポキシ樹脂は、界面領域におけるファイバ外直径の小さな変動を補償するためにもはたらく。後方反射は、与えられた動作波長における透明シート50の屈折率の適切な選択によっても、低減することができる。
【0036】
最終組立工程において、光ファイバ222がチャネル66内で動かないように、ファイバアレイ220を機械的に拘束することが必要になり得る。図11は図10と同様の略図であるが、基板端18に定結材料62が(例えば接合材料の小塊として)ファイバアレイ220を覆って与えられている実施形態例を示す。解決策の他の例には、光ファイバ222がPCBアセンブリ204に対して固定されるような、PCB基板120へのファイバアレイ保護外装221のクランプ止めがある。
【0037】
透明シートの上表面52上にマウントされた送信器能動光コンポーネント100からの光と透明シートの下表面54の近くにマウントされた光ファイバ222の低損失結合のためには、透明シートの厚さT50が厚すぎないことが最善である。例えば、図12を参照すれば、送信器能動光コンポーネント100から投射された光ビーム100Lは透明シート50を通過する。回折効果のため、光ビーム100Lの直径は光ビーム100Lが伝搬するにつれて大きくなる。透明シート50が厚すぎると、光ビーム100Lの直径が光ファイバコア224の直径より実質的に大きくなり、この結果、光ファイバ222への光の結合効率が低くなるであろう。アパーチャが約8μmのVCSEL光源を用いて、直径が30μmのコア224を有する多モード光ファイバ22に結合させるとしたときの、屈折率がn=1.45のガラスでつくられた透明シート50内のビーム発散の評価から、厚さT50はλ=850nmに対して約250μmをこえるべきではなく、λ=1.55μmに対して約130μmをこえるべきではないことが示される。
【0038】
さらに、VCSEL送信器能動光コンポーネント100とファイバ端面との間隔の関数としての、300mより短い短多モード光ファイバリンクに対する帯域幅の測定により、空気中の離隔が約80μmと約100μmの間であるときに最適性能が最善になることが示される。この離隔は、λ=1.55μmに対して約150μmのガラス厚T50に相当する。フージョンドロープロセスを用いる低コストガラス作製法によって、下は少なくとも100μmの厚さT50までは厚さが精密な(例えば±1μmの)透明ガラスシート50を形成することができる。厚さT50が少なくとも100μmの薄い透明ガラスシート50は十分な剛性があり、比較的取り扱いやすい。したがって、透明ガラスシート50についての厚さT50に対する範囲の一例は、λ=850nmで動作しているVCSELの形態の能動光コンポーネントを用いる場合には約200μmと約250μmの間であり、λ=1.55μmで動作しているVCSELに対しては約100μmと約150μmの間である。
【0039】
チャネル付基板アセンブリのウエハスケール作製
チャネル付基板70を作製するためのプロセスは大寸(例えば「ウエハスケール」)の基板部材10及び透明シートまで拡張可能であり、よって、多数の個別のチャネル付基板70及び集積光デバイス202の、同じ基板部材上への作製及び後の相互の分離(ダイシング)が可能になる。大寸基板部材10の使用により、様々なプロセス工程(例えば、鋸引き、導電コンタクト形成、チップマウント及び個別基板のダイシング)を単一の構造体に並行して実施できるから、作製コストが低減される。チャネル付基板70の形状及び厚さは既存の標準寸法のウエハ及び透明シートにしたがうように選ぶことができる。これにより、大寸基板部材10に既存のプロセス装置を、基板特性(例えば、チャネル構造付ガラス)がそのプロセス装置で通常扱われる基板と非常に異なっているとしても、修正無しで利用することが可能になる。
【0040】
図13から図18は、大寸基板部材10までスケールが拡張されたときの、チャネル付基板アセンブリ70を、また集積光デバイス202及びPCBアセンブリ204も、形成するためのプロセス工程の様々な例を示す。図13は鋸刃302を有する鋸300を用いて基板部材10上に溝を形成する方法の一例の斜視図である。精密鋸引き作業により、形状寸法が十分に制御された溝30が形成される。例えば、セラミック材料及びガラス材料における精密V溝鋸引き作業によって、ピッチ及び深さが約1μmの範囲内で制御された溝30を作製することができる。精度が低い他の鋸引き作業によっても、より緩いが許容できる(例えば約3μmから5μmの許容範囲内の)溝構造の形状寸法制御を、一層経済的なコストで得ることができる。そのような許容範囲は一般に多モード光ファイバ220への能動光コンポーネント100の位置合せに対して受け入れることができる。
【0041】
図14は溝付基板部材の上表面12上に配される過程にある透明シート50の斜視図である、図15は、所定の場所にあってチャネル付基板70を形成している透明シートを示す、同様の斜視図である。この段階において、実施形態の一例では、チャネル付基板70の全体の寸法及び形状が所望の形状に合わせてトリミングされる。
【0042】
図16は図15のチャネル付基板70の斜視図であるが、複数の場所に導電コンタクト80が与えられている。導電コンタクト80を形成するためのプロセス(例えばパッド金属膜形成)は、例えば、チャネル付基板70の全体に対して1回のマスク及びパターン形成処理を用いるか、あるいはチャネル付基板の相異なる部分に複数の処理を用いることによって、実施される。パッド金属膜またはパターニングされた導電性透明酸化物(すなわちPTCO)は、溝30の形成前または形成後に与えることができる。いずれの場合にも、光ファイバ222がチャネル内に置かれたときに、導電コンタクト80上にフリップチップマウントされた能動光デバイス100と正しく位置合せされることを保証するため、マスクとその下のチャネル66の間で精密位置合せがなされる。透明シート50の透明性により、この位置合せプロセスが容易になる。透明シート50により、PCBアセンブリ204の表面と埋込構造がμmスケールの許容範囲内で位置合せされていることの保証も容易になる。導電コンタクト80の形成後、ハンダボール82が導電コンタクト上におかれる。次いで、図17を参照すれば、能動光コンポーネント100及び関連する能動電子コンポーネント102が異なるパッド金属膜(またはPTCO)の場所の上でチャネル付基板70上にフリップチップマウントされる。ハンダボール配置、フリップチップマウント及びハンダリフロープロセスはウエハスケールで実施されるから、この手法によりかなりのコスト低減が得られる。
【0043】
フリップチップマウント工程後、図18を参照すれば、個々の集積光ファイバデバイス202に分割するために大審議作業が実施される。集積光デバイス202は次いで、必要に応じて、PCB基板のようなさらに大きい光サブアセンブリ(図示せず)内にマウントされる。次いで、上述したように(例えば図7を見よ)、集積光デバイス202またはPCBアセンブリ204を完成させるため、ファイバアレイ220がそれぞれのチャネル付基板70のチャネル66に挿入される。
【0044】
モールド成形チャネル付基板
精密溝30は様々な基板材料にモールド成形作業を用いて形成することもできる。一実施形態例において、μmスケールの位置精度を有する構造をもつV溝30がモールド成形プラスチック基板部材10に形成される。別の実施形態例において、許容範囲が約3μmから約5μmの間で寸法及び位置が変化する溝30を形成するため、金型へのガラスのホットプレスが用いられる。これらの手法は溝付基板部材10を形成するために用いることができる。
【0045】
図19は図1の基板部材10と同様の基板部材10の略図であるが、モールド成形作業によって形成された溝30を示す。鋸引き溝30とは異なり、モールド成形溝は、前端面16から後端面18にかけて延びるのではなく、基板部材内に端壁34を有するように容易に作製することができる。一実施形態例において、端壁34は溝30を90°で終端させる成形ストップによって確立される。したがって端壁34はチャネル端壁としてはたらき、光ファイバがチャネル66に挿入されたときのファイバ止めとして作用する。別の実施形態例において、基板部材の上表面12上の様々な場所に成形基準350がモールド成形で形成され、基準はモールド成形溝30に精密位置合せされる。基準350は、例えば、透明シート50及び、引き続いて、導電コンタクト80の溝30への位置合せの補助に用いられる。
【0046】
図20は、モールド成形基板部材10を有するチャネル付基板70を用いる、集積光デバイス202の断面図である。光ファイバ222は、ファイバ軸A1に対して概ね垂直な方向で、すなわち上方の能動光コンポーネント100の方向で、光ファイバにまたは光ファイバから光を誘導する、傾斜ファイバ端226を有する。集積光デバイス202の形成中、上述したようにファイバアレイ220がチャネル66に挿入される。しかし、テーパ付ファイバ端226が90°端壁34に接触し、傾斜ファイバ端が能動光コンポーネント100と位置合せされる位置で停まる。90°端壁34が傾斜ファイバ端面228に接触することはなく、光ファイバ222で誘導されて傾斜ファイバ端面228に入射する光が全反射(TIR)を受け、能動光コンポーネント100に向けて上方に反射されることが保証される。最適位置合せは光コンポーネント100と(1本または複数本の)光ファイバ222の間の最適光結合に対応する。
【0047】
チャネル端壁34の角度は、図21に示されるような、90°より小さい角度をサポートするために調節することができる。この点に関し、モールド成形傾斜端壁34について2つの一般的構成が考えられる。第1の構成において、端壁34の角度は、図21に示されるように、ファイバ端226の傾斜ファセット面228より若干大きい。光ファイバ222がチャネル66に完全に挿入されると、ファイバ端226の先端は端壁34の上部で端壁34に接触する。図22に示される第2の構成において、端壁34の角度はファイバ端226の傾斜ファセット面228より若干小さい。光ファイバ222がチャネル66に完全に挿入されると、ファイバ端226の先端は端壁34の下部で端壁34に接触する。
【0048】
いずれの場合にも、傾斜チャネル端壁34は光ファイバ端226の傾斜面228に直接接触することなく、能動光コンポーネント100の直下の光ファイバ端226を位置合せするためにはたらく。傾斜端面34は光ファイバ端226を上方に向けさせて透明シート50の下表面54と堅く接触させるためにもはたらく。これにより、能動光コンポーネント100と光ファイバ222の間に制御された距離が維持されることが保証される。傾斜チャネル端壁34の上向きくさび止め機能により、溝30の深さを溝30内にある光ファイバ222の直径より若干大きくすることも可能になり、これにより光ファイバアレイ222をチャネル付基板70に組み込むプロセスが簡易化される。別の実施形態において、端壁34の面は、端壁34がファイバ端面228にほぼ平行であるように、斜めにされる。この場合、端壁34はファイバコア224に対応する場所に僅かなリセスを与える。このリセスにより、ファイバ端面228の一箇所に小さな空隙が設けられることでファイバ222内の光の全反射が可能になる。一実施形態例において、端壁34の他の部分はファイバ端228に接触し、ファイバを上方に向けて透明シート50に接触させるように構成される。
【0049】
延伸によって形成されたチャネル付基板
一実施形態例において、チャネル付基板70は適する形状につくられたプリフォームを延伸することによって形成される。図23は、内部に多くのチャネル384が形成されている、矩形断面の柱状体382を有するガラスプリフォーム380の斜視図である。プリフォーム380は両側に端386及び388を有する。プリフォーム380は、例えば、ガラスブロックを選ばれた寸法に機械加工し、端386及び388の一方においてガラスブロックの精確な場所にドリルで穴を開けることによって、形成される。プリフォーム380は本質的にチャネル付基板70の拡大版である。
【0050】
代表的なガラスプリフォームは、最終品の形状にほとんど全く一致するが、何倍も(例えば10倍から1000倍)大きい、形状寸法に作製される。プリフォームは一般に一端で吊され、ガラスが軟化するまで加熱される。重力及び/またはプリフォームの自由端に印加される制御された張力により、ガラスは引き伸ばされて細いストランドまたは狭幅品にされる。この狭幅品の断面は一般に元のプリフォームの形状を維持するが、寸法はかなり小さい。この手法を用いれば、延伸品の最小寸法を下はサブミクロンの分解能まで制御することができる。
【0051】
すなわち、図24を参照すれば、ガラスプリフォーム380を用いるチャネル付基板70の形成において、プリフォーム端386が保持され、自由端388においてガラスプリフォームの少なくとも一部分390が円筒ヒーター400内に入れられて、部分390のガラスが軟化するまで加熱される。軟化したプリフォーム部分390のガラスは、プリフォーム形状及び前内部チャネル384が下方に向けてテーパが付けられて小寸形状になるように、下方に引かれる(延伸される)。延伸プロセス中にチャネル384の相対寸法及び位置並びにその他のプリフォーム形状は実質的に維持され、この結果、寸法が縮小されたチャネル付ロッド410が得られる。チャネル付ロッド410は次いで多くの、図25に示されるような、チャネル66を有するチャネル付基板70に割断される。図25のチャネル付基板70はガラスでつくられているから、対象となる波長(例えば880nm及び1550nmの遠距離通信波長)において透明であり、したがって基板表面と内部チャネルの間の光通信が可能になる。上述した基板部材10と透明シート50で形成されたチャネル付基板の実施形態と参照数字を合わせておくため、図25の一体型チャネル付基板70の上表面には参照数字52が付され、下表面には参照数字14が付される。
【0052】
引き続いて図25のチャネル付基板70に施されるプロセス工程により、図26に示されるように、チャネル付基板の下表面上に導電コンタクト80が形成される。能動光コンポーネント100及び能動電子コンポーネント102のフリップチップマウントが次いで実施され、この結果、図27に示されている、対応する集積光デバイス202が形成される。上述したように、また図28に示されるように、傾斜ファイバ端230を有するファイバ222をもつファイバアレイ220が次いでチャネル66に挿入され、能動光コンポーネント100と位置合せされる。
【0053】
別の組立シーケンスにおいて、チャネル付ロッド410は、多くのチャネル付基板70が1本の長いロッドからほぼ上で論じた「ウエハスケール」作製態様で作製され得るように、より長寸に割断される。上述した組立プロセスに続いて、チャネル付ロッド410を用いて複数の集積回路光デバイス202を形成するため、パッド金属膜形成、ハンダボール取付け及びコンポーネントのフリップチップマウントが、長寸「チャネル付基板」70上の別々の場所に実施される。フリップチップマウントに続き、チャネル付ロッド410は次いで個々の集積光デバイス202を形成するためにダイシングされ、個々の集積光デバイス202は次いで、上述したように、必要に応じてより大きな光サブアセンブリに組み込むことができる。チャネル付ロッド410の1つ以上の表面の精密研磨のような、別の作業を実施することもできる。
【0054】
両面に能動光コンポーネントがマウントされたチャネル付透明基板
いくつかの用途において、能動光コンポーネント100及び能動電子コンポーネント102はチャネル付基板部材70の表側及び裏側にマウントされる。例えば、VCSELのような送信器能動光コンポーネント100については、光出力パワーを送信器の寿命にわたり受信器能動光コンポーネントのよってモニタする必要があり得る。一実施形態例において、受信器能動光コンポーネント100を送信機能動光コンポーネントに概ね対向させてフリップチップマウントするために光学的に透明なチャネル付基板70が用いられる。
【0055】
図29は光ファイバ222及び、光ファイバコア224と近傍の光検出器能動光コンポーネント100の間で光ビーム100Lから光を分割するためにはたらく上部劈開ファセット面228U及び下部劈開ファセット面228Lを有する傾斜面228を有する、ファイバ端226の拡大図である。下部ファセット面228Lは、光ファイバ端226の下方に配置されたVCSEL能動光コンポーネント100からの光100Lが全反射されてファイバコア224に入るように、(図29において水平線に対し)比較的急峻な角度に形成される。上部ファセット面228Uは、光100Lの一部がこの面で屈折して光ファイバ端226の上方に配置された受信器能動光コンポーネント100上に向かうように、比較的浅い角度に形成される。
【0056】
図30に示される一実施形態例において、二重ファセット面付ファイバ222のアレイ220がチャネル付基板70のチャネル66に挿入されている。光ファイバアレイ220内の光ファイバ222のファイバ端226は、送信器能動光コンポーネント100の対応するアレイの直上で、受信器能動光コンポーネントの第2のアレイの下に、配置される。送信器能動光コンポーネント100のアレイからの光100Lはそれぞれのファイバ端226に向けられ、光100Lの一部は反射されて光ファイバコア224に入り、一部は受信器能動光コンポーネント100に向けて上方に屈折される。
【0057】
本明細書では、能動光コンポーネント100が全てチャネル付基板70の一方の面上にフリップチップマウントされているような、チャネル付基板70対する別の用途が考えられる。例えば、そのような用途の1つにおいて、送信器能動光コンポーネント100から放射される光100Lの一部がチャネル付基板70の一部分を通って伝搬し、次いで1つ以上の内部または外部の表面(または機械加工されたファセット面)で反射されてから、送信器能動光コンポーネントでバイスに隣接してマウントされた受信器能動光コンポーネントに向けられる。
【0058】
光減衰
VCSELベース送信器の形態にある光源のような、いくつかの送信器能動光コンポーネント100については、多くの場合、コンポーネントを高光出力パワーレベルで動作させることが望ましい。眼に対する安全要件が光リンク内を伝送される最大光パワーに制限を課すから、光ファイバ222に入射される光パワーの減衰が必要になることがある。光パワーの制御は、一例において、能動光コンポーネント100と光ファイバ222の間に既知の光減衰を与えることによるか、あるいは能動光コンポーネントによって出力される光の一部だけを捕捉するように光ファイバの位置を定める(すなわち、選択的に位置合せする)ことによって、達成される。
【0059】
基板部材10,透明シート50及びプリフォーム380は全て低損失光学ガラスで作製することができるが、これらの品々はドープトガラスで作製することもでき、ドーパントは、ガラスの光吸収特性は変えるが、CTE、熱伝導度及び導電度のようなその他の関連ガラス特性は実質的に変えないことが好ましい量で、ガラスに添加される。一実施形態例において、基板部材10,透明シート50及び/またはプリフォーム380は、与えられた用途に望ましい光減衰を達成するため、様々なドープトガラスの内の1つを用いて作製される。
【0060】
一実施形態例において、透明シート50は、光ファイバ222と能動光コンポーネント100の間の制御された挿入損失量の導入を可能にするに相当する所望の減衰を有する、選ばれた厚さT50を有する。この手法にともなう問題の1つは、光ビーム100Lは透明シート50を通行している間に発散するから、隣接する光ファイバ222との間に実質的な光クロストークがあるか否かである。光ファイバ222のアレイ220は一般に127μmまたは250μmのピッチで配列されるから、1つの能動光コンポーネント100からの発散する光ビーム100Lが横方向にこのピッチの約1/2より大きくは拡がらないことが最善である。控えめな値として62.5μmの横方向拡がり(すなわち125μmのビーム直径)をとれば、8μm径VCSELによって発生される、波長λ=850nmの光ビーム100Lに対して、約1.4mmのガラスを通って伝搬した後にビームは125μmまで拡がるであろう。30μm径多モード光ファイバ222への結合にともなう推定挿入損失は1.4mm厚ガラスにおいて約10dBである。
【0061】
波長λ=1.55μm及び8μm径VCSELに対して、光ビーム100Lは約0.75μmのガラスを通って伝搬した後に125μmまで拡がるであろう。30μm径多モード光ファイバ222への結合にともなう推定挿入損失は0.75mm厚ガラスにおいて同じく10dBである。
【0062】
したがって、一般に用いられるλ=1.55μm及びλ=850nmに対しては、光ファイバ222間に実質的な信号クロストークを生じさせずに、かなりの信号減衰を導入することが可能である。それでも信号クロストークが問題になれば、基板チャネル66のピッチを、250μmまたは500μmのような、さらに大きな値にすることができる。チャネル付基板70内の余分な反射による不要なクロストークを消すかまたは減じるため、一実施形態例においては、無反射コーティング、吸光コーティングまたは散乱面処理が、(溝付基板が不透明である場合は)溝付基板、あるいは(溝付基板または延伸チャネル付基板が透明である場合は)チャネル付基板対向面に施される。
【0063】
薄ガラスシート上のチャネル及びその他の構造
チャネル付基板70を作製するための別の実施形態例において、プロセス中の透明シート50も機械的安定性を高めるために若干厚い(例えば0.7mmから約1.1mmの)透明シート50が用いられる。さらに、図31に示されるように、上表面52に平行溝30'のアレイを形成するために、基板部材10に関して上述した態様と同じかまたは同様の態様で透明機シート50が処理される。一手法において、溝30'は、上述したように基板10への溝30の形成に用いられたような、精密鋸引きによって透明シート50に形成される。溝30'の形成の結果、溝底31'と下表面54の間に薄化領域17が形成される。本実施形態例において、基板部材10には溝が形成されず、溝30'と基板上表面12がチャネル66'を定める。基板部材10にも溝が形成される実施形態例が以下に説明される。
【0064】
チャネル付透明シート50が無チャネル基板部材10と組み合わされてチャネル付基板70が形成された後、透明シートの下表面54上にマウントされている能動光コンポーネント100とチャネル66'内に配置された光ファイバ端226の間には損失結合が必要である。薄化領域17の厚さは、能動光コンポーネントの波長λ及びその他の光特性に、また(多モード)光ファイバコア224の直径にも、明示的に依存して、約150μmないし250μmをこえるべきではない。得られる透明シート50は僅かな機械的変形の下であっても薄化領域17において破断し易い。例えば、透明シートを破断させずにダイシングするに一般に用いられる粘着バッキングシート(図示せず)から溝付透明シート50を取り外すことは一般に困難である。
【0065】
透明シート50が薄化領域17において破断する傾向を軽減するため、一実施形態例において、図32に示されるように、溝30'の選ばれた部分に小量の、エポキシ樹脂、接合材または接着剤のような、支持材料150を与えることによって薄化領域が補強される。支持材料450は、透明シートの上表面から圧力が印加されたときに溝30'内に流れ落ちるには十分に薄いが、溝に沿って流れるに逆らうには十分に厚いことが好ましい。一実施形態例において、支持材料450は、米国ニューヨーク州コーニング(Corning)のコーニング社(Corning, Inc.)から入手できるCorning MCA-xxファミリーにある充填CTE整合熱硬化エポキシ樹脂を含む。
【0066】
一実施形態例において、支持材料450は、粘着バッキングシート(図示せず)に貼り付けられたままの、透明シート50の上(溝付)表面52に与えられる。これにより、透明シート50のバッキングシート除去及び以降のプロセス工程の間のハンドリングに耐え抜くに十分な補強が可能になる。支持材料450の流動は、スクリーン印刷、自動化注入器計量分配あるいはその他のマスク遮蔽法または計量分配法を用いることで、特定の溝場所に限定されることが好ましい。この手法により、同じ透明シート50上に多くのパーツを形成することが可能になり、よって総パーツコストの低減が可能になる。一実施形態例において、支持材料450をプレーナ化するために砥粒研磨及び/またはラッピング工程がさらに用いられ、よって図33に示されるように支持材料450が透明シートの上表面52から上に盛り上がることはない。
【0067】
大寸溝付透明シート50がどのようにして個々の透明シートに分割されるかの一例を示すため、ダイシング線460も図33に示されている。ダイシング作業は透明シート50に直ちに実施することができ、あるいは基板部材10が透明シートに貼り付けられてチャネル付基板70が形成された後まで先送りすることができる。基板部材10が透明シート50に貼り付けられると、薄化領域17への機械的補強が与えられる。したがってダイシング作業は、図34に示されるダイシング線460に沿うように、ダイシング後にチャネルが露出される態様で実施することができる。これにより、以降、図7から図11に示される工程と同様に処理して、集積光デバイス202の実施形態に至ることができる。
【0068】
ダイシング前の溝付透明シート50への基板部材10の貼り付けによって十分な補強が得られれば、上述した溝補強工程を無くすことができる。しかし、以降のパッド金属膜形成及びフリップチップマウントの間、薄化領域70に過剰な機械的荷重がかからないことを保証するため、薄化領域17に注意を払う必要がある。
【0069】
別の実施形態例において、溝30'は透明シート50の前端面56と後端58面の間に延びていない。むしろ、例えば、図35に示されるように、透明シートの中心近傍のような、1つ以上の場所において透明シートの上表面52に鋸を入れることにより短寸溝30'が形成される。この手法は、透明シートの鋸で除去されない部分が以降のプロセス中の透明シートへの十分な機械的支持を与えるように、上述した、約0.7mmから1.1mmの厚さを有する厚い透明シート50に実施されることが好ましい。
【0070】
図36は、直径50mmの鋸刃302を用いてプランジ鋸入れされた、幅が10mmで厚さが0.7mmの透明シート50の、簡略な、拡大断面図である。鋸歯302は薄化領域17の厚さが約0.2mmになるまで降ろされる。この深さにおいて、鋸歯302は前端面56及び後端面58において透明シート50の上表面52にちょうど触れる。
【0071】
一実施形態例において、モールド成形基板部材10は、図37に示されるように、プランジ鋸入れ作業により形成された溝30'に嵌り込む形状につくられ、さらに光ファイバアレイ220を適切な場所に誘導するためのチャネル66を定めるためにはたらく、リッジ470を有する。リッジ470は、傾斜ファイバ止め472及び、チャネル66への光ファイバアレイ220の挿入を簡易化するために拡張された(例えば末広がりにされた)、ファイバ入口474を有する。
【0072】
図38は、ガラス基板のプランジ鋸入れされた溝30'に嵌め込まれる隆起リッジ470を示す、図37のモールド成形基板部材10の底面側の斜視図である。ファイバアレイ挿入前のモールド成形基板部材10と透明シート50の組立後断面図が図39に示される。モールド成形基板部材10と透明シート50が(例えば接着剤を用いて)接合された後、図40に示されるように、光ファイバアレイ220がチャネル66に挿入される。傾斜ファイバ止め472により、傾斜ファイバ端226が正しい場所に配置されて、透明シート50に接触させられる。
【0073】
上に論じた作製法の多くは基板部材10または透明シート50からの材料の除去を含む。他の実施形態例においては、板部材10及び透明シート50のいずれからも材料が除去されて溝30及び30'の両者によってチャネル66が形成される。
【0074】
図41から図44は基板部材10及び透明シート50に対する形状の例を示す。図41は基板部材10だけから材料を除去することで形成されたチャネル66を示す。図42は、透明シート50だけから材料が除去され、透明シートの溝内に嵌るリッジ11を有するモールド成形基板部材10と組み合わされて形成される、チャネル66を示す。図43は基板部材10及び透明シート50のいずれからも材料が除去されることで形成されるチャネル66を示す。図44は、溝30'がV溝であることを除き、図43と同様である。
【0075】
V字形チャネル66は、「V」字の頂点によって正確な位置決めが可能になるから、光ファイバの位置合せに対して魅力的な選択肢である。しかし、V字形チャネル66は、光ファイバ220の傾斜端面236への、及び傾斜端236面からの、光の効率的結合にも関係する。図45及び図46はチャネル66に対する2つの異なるV字形状の2つの異なる断面図を示し、V字形チャネル66は、例として、V字形溝30'と基板部材10の平坦な上表面12によって定められる。溝30'の「V」字部分は頂角θを有する。送信器能動光コンポーネント100は透明シート50の下表面54に隣接する光ファイバ222の直上に配置される(ここでは上表面に溝が形成されているから下表面54がチャネル付基板70の上になっていることに注意されたい)。送信器能動光コンポーネント100からの光は薄化領域17を通って下方に伝搬し、光ファイバ222の直上の傾斜V溝側壁32に当たる。
【0076】
V溝側壁32の方位により、送信器能動光コンポーネント100からの光はV溝を通過するにつれて発散される。この発散により光ビーム100Lは横方向に拡がり、光ビームの一部が光ファイバコア224に入り損なう。光ビーム100Lの発散の大きさは頂角θに依存する。図45において、V溝30'は比較的小さな頂角θを有し、よって光ビーム100Lは比較的大きい入射角でV溝側壁32に当たる。このため、スネルの法則によりさらに一層大きな入射角での屈折がおきる。V溝の頂角θは小さいから、光が入射するV溝側壁32の部分と光ファイバ外表面223の間の距離は大きい。距離が長くなることは光ビーム100Lが発散する機会が増えることを意味し、これは光ビームの少なくとも一部が光ファイバコア224に入らないであろう尤度を大きくする。
【0077】
図46において、V溝30'は図45に示されるθより大きな頂角θを有する。これによりV溝側壁32を通過する光の入射角は小さくなり、よって図45の形状と比較して光ビーム発散率が小さくなる。V溝頂角θは図45に示されるθより大きいから、光ビーム100Lが入射するV溝側壁32の部分と光ファイバ外表面223の間の距離が減じる。距離が短くなることは光ビーム100Lが発散する機会が減ることを意味し、これは光ビームの少なくとも一部が光ファイバコア224に入らないであろう尤度を小さくする。
【0078】
光ビーム100Lが傾斜ファイバ端226から透明シート50の下表面54に隣接してマウントされた受信器能動光コンポーネント100に投射されたときに、同様の光ビーム発散状況がおこる。ビーム発散を修正するためにV溝の頂角θを用いることができ、この形状に対してビーム発散を最小限に抑えるためにはV溝の頂角θをより大きくすることが好ましい。
【0079】
一実施形態例において、光ビーム100Lの発散は、多モード光ファイバリンクにおけるリンク帯域幅を最大にするように制御される。多モード光ファイバにおけるモード分散は導波モードまたは導波モード群の限定されたセットを優先的に励起することによって低減することができる。特に、高次導波モードの励起は、光ファイバ軸A1に対して大きい角度で多モード光ファイバコア224内に光を入射させることで達成することができる。入射角が光ファイバの遮断角より小さい限り、光は限定された数の高次モードで光ファイバ内を誘導され、この結果、長い(例えば>200mの)リンクに対して低減されたモード分散及び拡張されたリンク帯域幅が得られる。
【0080】
一実施例において、光ビーム100Lからの光は、図44に示されるV溝30'を用いて光ファイバコア224内に優先的に大角入射される。いくつかの場合、光ビーム100Lの大分散部分は光ファイバコア224を外れることが多そうであるから、透明シート厚T50を薄くする必要があり得る。
【0081】
一実施形態例において、溝30'のV字形状は、V溝30'にともなう光ビーム100Lの発散が角度フィルタとしてはたらいて、高次モード光だけの伝搬及びフォトダイオード(図示せず)への到達を可能にする、光リンクの受信器端において用いられる。傾斜面228に到達するまでは光ファイバ軸A1に概ね平行に伝搬する低次モード光は、傾斜V溝側壁表面によって、フリップチップマウントされた受信器能動光コンポーネント100以外の場所に向けられる傾向がある。
【0082】
別の実施形態例において、光ビーム100Lからの光は、送信器能動光コンポーネント100と光ファイバ222の間に配された散乱面を用いて光ファイバ222の高次モードに送り込まれる。溝30'が鋸を用いて形成される場合、溝30'の底表面31'は、鋸歯302の分散による、ある程度の粗さを有する。図47及び図48は、誇張された底粗面31'を示す。光ビーム100Lが送信器能動光コンポーネント100によって送り込まれると、光ビーム100Lは粗面31'に当たり、初めの光ビーム伝搬方向に対してある範囲の散乱角ψにかけて散乱する。光ビーム100Lの大部分が中庸の散乱角ψで散乱されれば、散乱部分は光ファイバ222の高次モードを励起する傾向を有し、向上したリンク帯域幅性能をもたらすであろう。
【0083】
一実施形態例において、溝底表面31'の粗さは、鋸歯302の材料を変える、及び、切込みの前に、刃表面を処理またはドレッシングすることによって、改変される。一実施形態例において、光入射条件及び散乱角ψをさらに強めるため、凸形または凹形のプロファイルのような、複雑な鋸刃プロファイルが用いられる。
【0084】
上述した実施形態例は二次元チャネル付基板構成に拡張可能である。図49は、送信器アセンブリ512の一部である、送信器能動光コンポーネント100と組み合わされて構成された二次元(積重ね)集積光デバイス202を含むPCBアセンブリ204の一例の断面図である。送信器アセンブリ512は隣接するチャネル付基板70との電気接続を与える導電コンタクト80及びハンダボール82を有し、隣接チャネル付基板70も導電コンタクトを有する。
【0085】
一実施形態例において、複数の溝付透明シート50(またはチャネル付基板70)が積み重ねられて、1つ以上のフリップチップマウントされた基板アセンブリ上の能動光コンポーネント100の二次元アレイに二次元光ファイバアレイ220を位置合せするために用いられる。溝付基板70の一方または両方の側面に溝30を形成し、積み重ねて、適切な場所で薄ガラスシート50で覆うことができる。ファイバ-能動デバイス間相互接続において大きくなったビーム回折を補償するため、レンズ520のようなレンズが、必要に応じて、光路に沿って設けられる。図49は、最上層のチャネル付基板70に付帯するレンズ520を示す。レンズ520は、下層のチャネル付基板70の光ファイバ222に光ビーム100Lを結合するためにも用いることができる。レンズ520はマイクロモールド成形またはレーザ成形によって形成することができる。レンズ520には回折格子構造を含めることもできる。様々な積重ねファイバアレイ面におけるレンズ520の焦点距離は個々のファイバアレイに対する光結合性能を最適化するために合わせ込まれることが好ましい。
【0086】
添付される特許請求の範囲に定められるような本開示の精神または範囲を逸脱することなく、本明細書に説明されるような本開示の好ましい実施形態に様々な改変がなされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本開示の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価物の範囲内に入れば、本開示はそのような改変及び変形を包含するとされる。
【符号の説明】
【0087】
10 基板部材
12 基板部材上表面
14 基板部材下表面
16 基板部材前端面
18 基板部材後端面
30 溝
31 溝底
32 溝側壁
50 透明シート
66 チャネル
70 チャネル付基板
80 導電コンタクト
100 能動光コンポーネント
102 能動電子コンポーネント
120 PCB基板
150 支援チップ
202 集積光デバイス
204 PCBアセンブリ
220 光ファイバアレイ
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2009年9月30日に出願された、名称を「光ファイバを用いる集積光デバイスのためのチャネル付基板(Channeled Substrates For Integrated Optical Devices Employing Optical Fibers)」とする、米国非仮特許出願第12/570523号の恩典を主張し、その優先権を主張する。本明細書は上記出願の明細書の内容に依存し、上記出願の明細書の内容は本明細書に参照として含まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は集積光デバイスに関し、特に、光ファイバを用いる集積光デバイスを形成するために用いられる基板に関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかのタイプの集積光デバイスでは、能動光コンポーネント、能動電気コンポーネント及び、光ファイバの形態の、受動導波路が組み合わされている。そのような集積光デバイスの例には、光トランシーバ及び能動ケーブルアセンブリ(ACA)がある。
【0004】
光ファイバの能動光コンポーネントへの能動位置合せは集積光デバイスの最適性能を保証するが、位置合せは、コストを下げ、複雑さを減じるため、受動であることが好ましい。さらに、集積光デバイスを形成するためには技術上既知の標準パッケージング技術が用いられることが好ましい。
【0005】
実用集積光デバイスはコストを最小限に抑えるために標準パッケージング技術を用いて作製される。一般に、能動光コンポーネントは基板上に能動面を上にしてマウントされ、ワイアボンディングを用いて電気的に相互接続される。この場合、能動光コンポーネントの光路は、いくつかの実施形態において、基板から離れるように上に向けられる。別の手法では、能動光コンポーネントは基板上にフリップチップ態様でマウントされ、よって、能動光コンポーネントの光路は、基板に入るように下方に向けられるかまたはガラス窓のような透明媒体を通して上方に向けられる。
【0006】
これらの2つの選択肢の内、フリップチップマウント手法は、周囲環境から保護される能動光コンポーネントと光ファイバの間の界面のような、いくつかの利点を有する。また、光インターフェースが支持基板によって機械的に安定化され、他のデバイスへの電気的リンクが短く、高周波数動作が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、フリップチップマウント手法の主要な課題には、能動光コンポーネントの下で光ファイバの受動位置合せを行い、光ファイバへの低損失結合を得なければならないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は1本以上の光ファイバ及び少なくとも1つの能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスを形成するためのチャネル付基板である。チャネル付基板は1本以上の溝が形成されている上表面を有する基板部材を含む。基板は、基板部材の上表面に定結され、1本以上の溝と組み合わされて、1本以上のチャネルを定める、透明シートも含み、1本以上のチャネルはそれぞれ、1本以上の光ファイバの内の1本を収めて、透明シートを介する光通信を可能にする能動光コンポーネントと1本以上の光ファイバの間の光通信を可能にするような大きさにつくられる。
【0009】
本開示の別の態様は1本以上の光ファイバ及び能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスを形成するためのチャネル付基板である。チャネル付基板は平上表面を有する基板部材を含む。チャネル付基板は1本以上の溝が形成されている透明シートも含み、透明シートは、平基板上表面と組み合わされて、それぞれが1本以上の光ファイバの内の1本を収め、透明シートを介する能動光コンポーネントと1本以上の光ファイバの間の光通信を可能にするような大きさにつくられる、1本以上のチャネルを定めるために基板上表面に定結される。
【0010】
本開示の別の態様は1本以上の光ファイバ及び能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスを形成するためのチャネル付基板を形成する方法である。本方法は上表面を有する基板部材を提供する工程及び表裏をなす表面を有する透明シートを提供する工程を含む。本方法はさらに、透明シートの一方の表面に1本以上の溝を形成する工程も含む。本方法はさらに、それぞれが1本以上の光ファイバの内の1本を収める大きさにつくられて能動光コンポーネントと1本以上の光ファイバの間の透明シートを介する光通信を可能にする、1本以上のチャネルを定めるために、溝付透明シート表面を基板部材上表面と結合させる工程を含む。
【0011】
本開示の別の態様は、光ファイバ及び能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスのためのチャネル付基板を形成する方法である。本方法は、実質的に長方形につくられた断面を有し、複数本のチャネルが形成されている、柱状ガラスプリフォームを形成する工程を含む。本方法は、プリフォームより小さく、プリフォームと実質的に同じ相対寸法を有する、柱状ロッド部分を形成するためにプリフォームを延伸する工程も含み、ロッド部分のチャネルは光ファイバを収める大きさにつくられる。本方法はさらに、チャネル付基板を得るためにロッド部分を短尺品に割断する工程を含む。
【0012】
本開示の上記及びその他の利点は、以下に記述される明細、特許請求の範囲及び添付図面を参照することで、当業者にはさらに深く理解され、認められるであろう。
【0013】
以下の詳細な説明の参照が添付図面とともになされれば、本発明のさらに完全な理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、形成された精密溝を示す、基板部材の一例の斜視図である。
【図2】図2は、図1と同様であるが、チャネル付基板の一例を形成するために溝付基板部材の上に配される過程にある透明シートも示す。
【図3】図3は図2で形成されたチャネル付基板の斜視図である。
【図4】図4は、導電コンタクトが透明シートの上表面上に形成されていることを除き、図3と同じである。
【図5】図5は、ハンダボールが導電コンタクト上に形成されていて、能動光コンポーネント及び能動電気コンポーネントが導電コンタクト及びハンダボールの上に配される過程にあることを除き、図4と同じである。
【図6】図6は、能動光コンポーネント及び能動電気コンポーネントがチャネル付基板上にフリップチップマウントされていることを除き、図5と同様である。
【図7】図7は、裏返しにされ、プリント回路基板(PCB基板)の形態のさらに大きな基板にマウントされる過程にある、図6のチャネル付基板を示し、PCB基板上に動作可能な態様でマウントされる支援チップも示す。
【図8】図8は、図7と同様であるが、PCB基板上の所定の位置にあるチャネル付基板及び支援チップを示す。
【図9】図9は、図8と同様であるが、チャネル付基板のチャネルに挿入される過程にある光ファイバアレイを示す。
【図10】図10は、ファイバアレイがチャネル付基板内の所定の位置にあることを除き、図9と同じである。
【図11】図11は、図10と同じであるが、丸い定結材小塊によりチャネル付基板及びPCB基板に保持されているファイバアレイを示す。
【図12】図12は透明シートの両面上にある能動光コンポーネント及び光ファイバの拡大図であり、能動光コンポーネントからの光ビームが透明シートを通行する際の光ビームの発散を示す。
【図13】図13はウエハスケール基板部材の斜視図であり、鋸によって切り込まれている溝を示す。
【図14】図14は図13の溝付基板部材の上に配される過程にあるウエハスケール透明シートを示す斜視図である。
【図15】図15は、図13の溝付基板部材の上の所定の位置にあってウエハスケールチャネル付基板を形成している図14の透明シートを示す、図14と同様の斜視図である。
【図16】図16は、図15と同様の斜視図であるが、透明シートの上表面上に形成された導電コンタクトを示す。
【図17】図17は、図16と同様であるが、集積光デバイスの形成においてチャネル付基板にフリップチップマウントされた能動光コンポーネント及び能動電気コンポーネントを示す。
【図18】図18は、ウエハスケールチャネル付基板がダイシングされて個々の集積光デバイスに分割された後であることを除き、図17と同様である。
【図19】図19は溝が形成されているモールド成形基板部材の斜視図であり、溝は端から端まで貫通せずに基板部材内で終端している。
【図20】図20は図19のモールド成形基板部材を使用するチャネル付基板を採用している集積光デバイスの一例の断面図である。
【図21】図21は、図20と同じであるが、傾斜ファイバ端の角度より小さい角度を有する傾斜チャネル端を示す。
【図22】図22は、図21と同様であるが、傾斜ファイバ端の角度より大きい角度を有する傾斜チャネル端を示す。
【図23】図23は、図3に示されるチャネル付基板と同様であるが、一体構造を有するチャネル付基板を形成するために延伸されるガラスプリフォームの一例である。
【図24】図24は、チャネルの形状及びプリフォームの相対スケールを維持しながら小寸ロッドに延伸されている柱状プリフォームの加熱端を示す、円筒ヒーター内の図23のプリフォームの斜視破断図である。
【図25】図25は、形成されたチャネルアレイを示す、延伸後のチャネル付基板の斜視図である。
【図26】図26は、図25と同じであるが、チャネル付基板の下表面上の導電コンタクトを示す。
【図27】図27は、図26と同様であり、基板チャネルに挿入される過程にあるファイバアレイを示す。
【図28】図28は、図27と同様であるが、基板チャネル内の所定の位置にあるファイバアレイを示す。
【図29】図29は光ファイバ端が、能動光コンポーネントからの光の光ファイバ内への結合を容易にし、同時に光の一部の検出も可能にする、2つのファセット面を有する実施形態の一例の拡大図である。
【図30】図30は、図28と同様の斜視図であるが、チャネル付基板の送信器能動光コンポーネントとは反対側の表面上の、受信器能動光コンポーネントを示す。
【図31】図31は溝付透明シートの一例の斜視図である。
【図32】図32は、図31と同様であり、溝付表面上に配された支持材料を示す。
【図33】図33は、図32と同様であり、プレーナ化後の支持材料を示し、支持材料を通過するダイシング線も示す。
【図34】図34は、図33と同様であるが、支持材料を通過しないダイシング線を示す。
【図35】図35は鋸によって溝が形成されている薄透明シートの斜視図である。
【図36】図36は、形成された溝の湾曲形状を示す、図35の透明シートの断面図である。
【図37】図37は図36と同様の断面図であり、後にチャネルを定めるために透明シートの溝に嵌合する形状につくられたリッジを有する、モールド成形基板部材をさらに示す。
【図38】図38は、透明シートの溝に嵌合するリッジを示す、図37のモールド成形基板の底面図である。
【図39】図39は透明シートに嵌め込まれたモールド成形基板を示し、それにより形成されたチャネルを示す。
【図40】図40は、図39と同様であるが、モールド成形基板のリッジと透明シートの溝によって定められたチャネル内の光ファイバを示す。
【図41】図41はチャネル付基板のための溝の構成の別の例の断面図である。
【図42】図42はチャネル付基板のための溝の構成のまた別の例の断面図である。
【図43】図43はチャネル付基板のための溝の構成のまた別の例の断面図である。
【図44】図44はチャネル付基板のための溝の構成のまた別の例の断面図である。
【図45】図45は、図44と同様であり、V溝の頂角の一例及び、この角度が送信器能動光コンポーネントとチャネル内の光ファイバの間の光結合にどのように影響するかを示す。
【図46】図46は、図44と同様であり、V溝の頂角の別の例及び、この角度が送信器能動光コンポーネントとチャネル内の光ファイバの間の光結合にどのように影響するかを示す。
【図47】図47は、図44及び図46と同様であり、透明基板の溝の底における散乱が送信器能動光コンポーネントからの光をチャネル内の光ファイバに結合するために用いられる実施形態の一例を示す。
【図48】図48は、図44及び図46と同様であり、透明基板の溝の底における散乱が送信器能動光コンポーネントからの光をチャネル内の光ファイバに結合するために用いられる実施形態の別の例を示す。
【図49】図49は、送信器アセンブリの一部である送信器能動光コンポーネントと組み合わせて構成された集積光デバイススタックを有する、プリント回路基板(PCB)アセンブリの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の現在好ましい実施形態をここで詳細に参照する。そのような実施形態の例が添付図面に示されている。可能であれば必ず、全図面にわたって同様の参照数字及び記号が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。
【0016】
本開示の例は様々な基板及び、光ファイバのアレイを低コスト光電子トランシーバ及びACAのような集積光デバイスと受動的に位置合せするために、そのような基板を用いる方法に向けられる。本開示の基板を用いる集積光デバイスの例も説明される。
【0017】
能動光コンポーネントは光源の形態にあることができ、例えば、端面発光源(例えば、ファブリ-ペロ型レーザ、分布帰還型レーザ、リングレーザ、等)または、縦型キャビティ表面発光レーザ(VCSEL)のような、表面発光源のような市販のアレイ型半導体レーザ源を含む。発光する能動光コンポーネントは「送信器能動光コンポーネント」と以下で称される。能動光コンポーネントは能動光変調器の形態にあることができ、例えば、空間光変調器、光位相変調器、電界吸収型変調器、注入同期光変調器、光トランジスタ、自由キャリア吸収変調器、液晶変調器及び半導体光増幅器を含み、一般に「光変調器」と以下で称される。能動光コンポーネントは検出器または受信器の形態にあることもでき、例えばPINフォトダイオードのような検出器アレイを含み、一般に「受信器能動光コンポーネント」と以下で称される。
【0018】
以下の議論において、「ウエハスケール」は、(半導体ウエハのような)単一の基板上に複数の部材、デバイスまたはアセンブリを作製し、次いでダイシングして、個々の部材、デバイスまたはアセンブリに戻すに十分な大きさを意味する。
【0019】
図1は、上表面12,下表面14,前端面16及び後端面18を有する、一例の基板部材10の斜視図である。X軸及びY軸が基板部材10の平面にあり、Z軸がその平面から外に向かう、直交座標が参考のために示されている。基板部材10は、シリコン、InP及びその合金、GaAs及びその合金、GaN及びその合金、GaP及びその合金、石英、サファイア、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化インジウムを含む導電性透明酸化物、ガラス、セラミック、プラスチック、金属及び、光電子デバイス用途及び集積光電子デバイス用途での使用に適する、その他の寸法的に安定な材料のような、多くの材料の内の少なくとも1つで作製することができる。
【0020】
基板部材10には、上表面12に1本以上の溝30が形成されている。溝30は底31及び側壁32を有する。溝30は光ファイバに対するガイドとしてはたらくことが目的とされ、よって光ファイバの直径に適合する(例えば光ファイバの直径より若干大きい)幅及び深さを有するように形成される。溝30は、精密鋸引きプロセス、等方性または異方性のエッチング(例えば、反応性イオンエッチング、化学エッチングまたは光-化学エッチング)プロセスまたはモールド成形プロセスを含む、様々なプロセスによって形成することができる。溝30(または以下で論じられる溝30')の断面プロファイルは、矩形、V字形、U字形またはこれらの組合せで形成される何か他のプロファファイル及び/または別のプロファイルとすることができる。溝30は、図示されるように基板部材10の全長に沿って延びるだけでなく、以下で論じられるように、基板部材内のどこかの場所で終端することもできる。
【0021】
次いで図2及び図3を参照すれば、基板溝作製完了後、上表面52,下表面54,前端面56,後端面58及び厚さT50を有する薄い透明シート50が基板部材10の溝付上表面12上に配される。一実施形態例において、透明シート50はガラスでつくられる。透明シート50は定結材料62,例えば、接合剤、接着剤またはエポキシ樹脂のような、様々な手法の1つを用いて上表面12に定結される。例えば、定結材料62は、スクリーン印刷プロセスを用いて透明シートの下表面54の選ばれた領域に、あるいは基板部材の上表面の上に透明シート50をおく前に基板部材の上表面の部分部分に、塗布することができる。基板部材10がシリコンでつくられていれば、一実施形態例において、透明シート50を基板部材の上表面12に定結するために陽極接合が用いられる。
【0022】
基板部材10が透明シート50の熱膨張係数(CTE)にほぼ一致するCTEを有しており、基板部材が高温(例えば>850℃)に耐えることができる場合、別の例において、透明シートは基板部材に融着接合される。この例においてはさらに、融着接合は透明シート50に印加される追加の下向き圧力の下で実施される。別の実施形態例において、透明シート50は選ばれた場所において基板部材10にレーザ融着される。
【0023】
透明シート50のための材料の一例は、広い波長範囲にわたって光学的に透明であり、導電コンタクトを、また導電性透明酸化物も、支持することができ、パッケージングプロセス及び組立プロセスに適合し、厚さが制御された薄いシートを低コストで作製できることから、ガラスである。さらに、ガラスは、シリコンまたは、GaAS,InP,GaN,GaP及びこれらの合金のような、集積光デバイスに用いられるIII-V族光電半導体材料のCTEに一致するように組成を工学処理できる低CTE材料である。加えて、ガラスはガラス内のビーム伝搬の回折を制限するために比較的高くすることができる屈折率を有する。これにより、以下で説明されるように、能動光コンポーネントと光ファイバアレイの許容間隔が拡がる。屈折率は、ガラス光学インターフェースにおける後方反射を低減するため、比較的低くすることもできる。透明シート50に適する別の材料には、様々な光学特性、熱特性、化学特性及び機械特性から、サファイア及び石英がある。
【0024】
透明シート50に対する厚さT50の範囲の一例は、多モード光ファイバへの波長λ=1.55μmの光の低損失結合に対して、約75μmと約125μmの間である。一実施形態例において、透明シート50は上表面52及び下表面54の一方または両方の上に少なくとも1層の無反射コーティング(図示せず)を有する。少なくとも1層の無反射コーティングは、透明シート50が基板部材の上表面12に結合される前またはされた後に施すことができる。
【0025】
透明シート50及び基板部材の上表面12は溝30及び透明シートがチャネル66を定めるアセンブリを形成し、以降の処理を通して、単一の、チャネル付一体基板として扱うことができる。したがって透明シート50と溝付基板部材10の複合構造体は以降「チャネル付基板」70と称される。溝付基板部材10は、透明シート50にかけられる後続のプロセス工程に耐えるには柔軟すぎ、及び/または脆弱すぎる、透明シート50に対する頑健な機械的支持体としてはたらく。
【0026】
図4を参照すれば、透明シート50の上表面52に導電コンタクト80が付加されている。導電コンタクト80は、例えばスクリーン印刷プロセス、電気化学メッキプロセス、光化学エッチングプロセスまたはその他の既知のプロセスを用いて、与えることができる。コンタクト形成プロセス中、導電コンタクト80は、後にマウントされる能動光コンポーネントが溝30の中心と位置合せされるように、基板部材の溝30と位置合せされる。
【0027】
導電コンタクト80は能動コンポーネントへの電気コンタクトを提供する。導電コンタクト80のタイプの一例はパターン化形状を有するが、別の例の導電コンタクトはコンタクトパッドであるかまたは導電パッドを有する。図4の導電コンタクト80は比較的細いワイア区画によって接続された2つの広幅パッドを有するとして示される。一実施形態例において、導電パッド80は、金、クロム、スズ、チタン、銀及びインジウムのような金属を、単独でまたは組み合わせて用いてつくられる。導電コンタクト80を通して光ビームを伝搬させることが望ましい場合に有用な別の実施形態例において、導電コンタクトは酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化スズのような、導電性透明材料で作製される。いくつかの実施形態において、基板部材10は導電性透明材料の厚膜またはシートでつくられ、この場合は基板部材と導電コンタクト80の両者が一体として複合される。この構成は、例えば、能動コンポーネントの共通リードの全てを同じ電気接地面に終端させることが望ましい場合に有用である。
【0028】
図5及び図6を次に参照すれば、ハンダボール82が導電コンタクト80を選択するために与えられる。次いで、能動光コンポーネント100(例えば、VCSELのような光源、広域アレイ検出器のような光検出器、自由キャリア光変調器のような光変調器、等)及び能動電子コンポーネント102(例えば、ドライバチップ、受信器チップ、等)がハンダボール82上にフリップチップマウントされる。図5及び図6はチャネル66のアレイに重ねてマウントされた1つの能動光コンポーネント100を示すが、一般に、1つ以上の能動光コンポーネントを同じチャネル付基板70上に配置することができる。一実施形態例において、VCSELアレイの形態の送信器能動光コンポーネント100がチャネル66の1つのセットに重ねて配置され。検出器アレイの形態の受信器能動光コンポーネントがチャネルの別のセットに重ねて配置される。
【0029】
能動光コンポーネント100が光変調器の形態にあり、特に、自体が本質的に光反射性ではなく光透過性である種類の変調器である場合、光が能動光コンポーネントを通過し続けるための実質的に透明な経路を、光ビームのその部分をさらに用いることができるように、設けることが好ましい。さらに、一実施形態例において、電子ドライバチップまたは電子受信器チップの形態の能動電子コンポーネント102もチャネル付基板70上に動作可能な態様で配置される。図6は能動光コンポーネント100及び能動電子コンポーネント102のフリップチップマウント後のチャネル付基板70を示す。図6の構成は「集積光デバイス」202とも称される。
【0030】
能動光コンポーネント100には、チャネル付基板70の平面に平行な方向の光を発するかまたは受け取る、端面発光レーザ、プレーナ型導波路及びファイバアレイのようなデバイスが含まれることに注意されたい。そのような能動光コンポーネント100に対し、光直角方向変換構造または素子(図示せず)がそのようなデバイス内に、またはそのようなデバイスに隣接して、設けられる。例えば、プレーナ型光波回路(PLC)の端面を、PLC基板対して公称上垂直方向に光を向けるために、45°またはその近くの角度に面取りすることができる。あるいは、個別の直角ミラー構造を、能動光コンポーネントに隣接させて付加するか、または鋸引きまたはその他の表面プロファイル形成法によって透明層のどこかの領域に形成することができる。
【0031】
能動光コンポーネント100は、VCSEL光源と同様の態様で透明シートを通過する垂直方向光放射経路に光がしたがうように、チャネル付基板に対して垂直方向に(詳しくは、透明シート50の上表面52対して垂直方向に)配位することもできる。
【0032】
図7を参照すれば、次のプロセス工程において、図6の集積光デバイス202が裏返しにされて、プリント回路基板(PCB)のような、大寸基板120(以降、「PCB基板」120)にマウントされる。PCB基板120は、チャネル付基板がPCB基板内またはPCB基板上にマウントされるときの、フリップチップマウントされた能動光コンポーネント100及び能動電子コンポーネント102との機械的干渉を防止する穴またはリセス126が必要に応じて形成されている、上表面122を有する。PCB基板の上表面122は、穴またはリセス126の周縁を囲んで、PCB基板と集積光デバイス202の間に必要な様々な電気接続を与える電気コンタクト80及びハンダボール82を有する。一実施形態例において、マウントプロセスはPCB基板120上への補助チップまたは支援チップ150のフリップチップマウントも含むことができる。この結果が図8に示されるようなPCBアセンブリ204である。
【0033】
図9を参照すれば、外装部221を有し、それぞれが外表面223,コア224及び劈開(例えばレーザ劈開)端226を有する光ファイバ222によって構成される、光ファイバアレイ220が提供され、チャネル付基板40のチャネル66に挿入される。一実施形態例において、光ファイバアレイ220は、リボンファイバケーブルのような、光ファイバケーブルを構成する。一実施形態例において、ファイバ端226は傾けられ、したがって傾斜端面228を有し、端面角は光ファイバ軸A1に対して、45°ないしその近くに、または向上した光性能(例えば、低減された後方反射、多モードファイバにおける拡張された帯域幅、等)を提供する他の角度に、形成することができる。傾斜ファイバ端226の尖端形状により、チャネル66へのファイバ222の挿入が容易になる。一実施形態例において、チャネル66の露出(開放)端は、チャネル66へのファイバアレイ220の挿入及びチャネル66内のファイバアレイ220の位置合せをさらに容易にするため、末広がりにつくられる。
【0034】
図10は、ファイバアレイ220がチャネル66に挿入されることで組み込まれた後の、PCBアセンブリを示す。ファイバアレイ220は、傾斜ファイバ端226が能動光コンポーネント100に位置合せされるまで、チャネル66に挿入される。VCSELまたはその他の光源の形態の送信器能動光コンポーネント100に対しては、一例の方法において、ファイバアレイ220を位置合せするために能動光フィードバックが用いられる。この位置合せ方法は、能動光コンポーネント100を作動させる工程及び光ファイバアレイ220の遠端におけるパワーが最大になるまで、チャネル66内の光ファイバアレイの位置を調節する工程を含む。受信器能動光コンポーネント100に対しては、光ファイバあれ離220の遠端に光を入射させ、チャネル66内でファイバアレイの位置を調節しながら受信器パワーを能動的にモニタする。別の実施形態例において、チャネル付基板70を通して見えるようなコンポーネントまたは基準を認識するように構成されたビジョンシステムにより、困難な能動光コンポーネント100のパワー増大を要求せずに、光ファイバアレイ220を能動光コンポーネント100と位置合せすることが可能になる。
【0035】
光ファイバの外表面223と、チャネル66を定める、側壁32及び/または透明シートの下表面54の間の界面において、後方反射またはエタロン効果がおこり得る。一実施形態例において、そのような効果は、光ファイバの外表面223,チャネル壁32及び透明シートの下表面54の内の少なくとも1つの上の無反射コーティングを用いて低減される。あるいは、屈折率整合エポキシ樹脂または屈折率整合液(図示せず)をこの界面に与えることができる。屈折率整合エポキシ樹脂は、界面領域におけるファイバ外直径の小さな変動を補償するためにもはたらく。後方反射は、与えられた動作波長における透明シート50の屈折率の適切な選択によっても、低減することができる。
【0036】
最終組立工程において、光ファイバ222がチャネル66内で動かないように、ファイバアレイ220を機械的に拘束することが必要になり得る。図11は図10と同様の略図であるが、基板端18に定結材料62が(例えば接合材料の小塊として)ファイバアレイ220を覆って与えられている実施形態例を示す。解決策の他の例には、光ファイバ222がPCBアセンブリ204に対して固定されるような、PCB基板120へのファイバアレイ保護外装221のクランプ止めがある。
【0037】
透明シートの上表面52上にマウントされた送信器能動光コンポーネント100からの光と透明シートの下表面54の近くにマウントされた光ファイバ222の低損失結合のためには、透明シートの厚さT50が厚すぎないことが最善である。例えば、図12を参照すれば、送信器能動光コンポーネント100から投射された光ビーム100Lは透明シート50を通過する。回折効果のため、光ビーム100Lの直径は光ビーム100Lが伝搬するにつれて大きくなる。透明シート50が厚すぎると、光ビーム100Lの直径が光ファイバコア224の直径より実質的に大きくなり、この結果、光ファイバ222への光の結合効率が低くなるであろう。アパーチャが約8μmのVCSEL光源を用いて、直径が30μmのコア224を有する多モード光ファイバ22に結合させるとしたときの、屈折率がn=1.45のガラスでつくられた透明シート50内のビーム発散の評価から、厚さT50はλ=850nmに対して約250μmをこえるべきではなく、λ=1.55μmに対して約130μmをこえるべきではないことが示される。
【0038】
さらに、VCSEL送信器能動光コンポーネント100とファイバ端面との間隔の関数としての、300mより短い短多モード光ファイバリンクに対する帯域幅の測定により、空気中の離隔が約80μmと約100μmの間であるときに最適性能が最善になることが示される。この離隔は、λ=1.55μmに対して約150μmのガラス厚T50に相当する。フージョンドロープロセスを用いる低コストガラス作製法によって、下は少なくとも100μmの厚さT50までは厚さが精密な(例えば±1μmの)透明ガラスシート50を形成することができる。厚さT50が少なくとも100μmの薄い透明ガラスシート50は十分な剛性があり、比較的取り扱いやすい。したがって、透明ガラスシート50についての厚さT50に対する範囲の一例は、λ=850nmで動作しているVCSELの形態の能動光コンポーネントを用いる場合には約200μmと約250μmの間であり、λ=1.55μmで動作しているVCSELに対しては約100μmと約150μmの間である。
【0039】
チャネル付基板アセンブリのウエハスケール作製
チャネル付基板70を作製するためのプロセスは大寸(例えば「ウエハスケール」)の基板部材10及び透明シートまで拡張可能であり、よって、多数の個別のチャネル付基板70及び集積光デバイス202の、同じ基板部材上への作製及び後の相互の分離(ダイシング)が可能になる。大寸基板部材10の使用により、様々なプロセス工程(例えば、鋸引き、導電コンタクト形成、チップマウント及び個別基板のダイシング)を単一の構造体に並行して実施できるから、作製コストが低減される。チャネル付基板70の形状及び厚さは既存の標準寸法のウエハ及び透明シートにしたがうように選ぶことができる。これにより、大寸基板部材10に既存のプロセス装置を、基板特性(例えば、チャネル構造付ガラス)がそのプロセス装置で通常扱われる基板と非常に異なっているとしても、修正無しで利用することが可能になる。
【0040】
図13から図18は、大寸基板部材10までスケールが拡張されたときの、チャネル付基板アセンブリ70を、また集積光デバイス202及びPCBアセンブリ204も、形成するためのプロセス工程の様々な例を示す。図13は鋸刃302を有する鋸300を用いて基板部材10上に溝を形成する方法の一例の斜視図である。精密鋸引き作業により、形状寸法が十分に制御された溝30が形成される。例えば、セラミック材料及びガラス材料における精密V溝鋸引き作業によって、ピッチ及び深さが約1μmの範囲内で制御された溝30を作製することができる。精度が低い他の鋸引き作業によっても、より緩いが許容できる(例えば約3μmから5μmの許容範囲内の)溝構造の形状寸法制御を、一層経済的なコストで得ることができる。そのような許容範囲は一般に多モード光ファイバ220への能動光コンポーネント100の位置合せに対して受け入れることができる。
【0041】
図14は溝付基板部材の上表面12上に配される過程にある透明シート50の斜視図である、図15は、所定の場所にあってチャネル付基板70を形成している透明シートを示す、同様の斜視図である。この段階において、実施形態の一例では、チャネル付基板70の全体の寸法及び形状が所望の形状に合わせてトリミングされる。
【0042】
図16は図15のチャネル付基板70の斜視図であるが、複数の場所に導電コンタクト80が与えられている。導電コンタクト80を形成するためのプロセス(例えばパッド金属膜形成)は、例えば、チャネル付基板70の全体に対して1回のマスク及びパターン形成処理を用いるか、あるいはチャネル付基板の相異なる部分に複数の処理を用いることによって、実施される。パッド金属膜またはパターニングされた導電性透明酸化物(すなわちPTCO)は、溝30の形成前または形成後に与えることができる。いずれの場合にも、光ファイバ222がチャネル内に置かれたときに、導電コンタクト80上にフリップチップマウントされた能動光デバイス100と正しく位置合せされることを保証するため、マスクとその下のチャネル66の間で精密位置合せがなされる。透明シート50の透明性により、この位置合せプロセスが容易になる。透明シート50により、PCBアセンブリ204の表面と埋込構造がμmスケールの許容範囲内で位置合せされていることの保証も容易になる。導電コンタクト80の形成後、ハンダボール82が導電コンタクト上におかれる。次いで、図17を参照すれば、能動光コンポーネント100及び関連する能動電子コンポーネント102が異なるパッド金属膜(またはPTCO)の場所の上でチャネル付基板70上にフリップチップマウントされる。ハンダボール配置、フリップチップマウント及びハンダリフロープロセスはウエハスケールで実施されるから、この手法によりかなりのコスト低減が得られる。
【0043】
フリップチップマウント工程後、図18を参照すれば、個々の集積光ファイバデバイス202に分割するために大審議作業が実施される。集積光デバイス202は次いで、必要に応じて、PCB基板のようなさらに大きい光サブアセンブリ(図示せず)内にマウントされる。次いで、上述したように(例えば図7を見よ)、集積光デバイス202またはPCBアセンブリ204を完成させるため、ファイバアレイ220がそれぞれのチャネル付基板70のチャネル66に挿入される。
【0044】
モールド成形チャネル付基板
精密溝30は様々な基板材料にモールド成形作業を用いて形成することもできる。一実施形態例において、μmスケールの位置精度を有する構造をもつV溝30がモールド成形プラスチック基板部材10に形成される。別の実施形態例において、許容範囲が約3μmから約5μmの間で寸法及び位置が変化する溝30を形成するため、金型へのガラスのホットプレスが用いられる。これらの手法は溝付基板部材10を形成するために用いることができる。
【0045】
図19は図1の基板部材10と同様の基板部材10の略図であるが、モールド成形作業によって形成された溝30を示す。鋸引き溝30とは異なり、モールド成形溝は、前端面16から後端面18にかけて延びるのではなく、基板部材内に端壁34を有するように容易に作製することができる。一実施形態例において、端壁34は溝30を90°で終端させる成形ストップによって確立される。したがって端壁34はチャネル端壁としてはたらき、光ファイバがチャネル66に挿入されたときのファイバ止めとして作用する。別の実施形態例において、基板部材の上表面12上の様々な場所に成形基準350がモールド成形で形成され、基準はモールド成形溝30に精密位置合せされる。基準350は、例えば、透明シート50及び、引き続いて、導電コンタクト80の溝30への位置合せの補助に用いられる。
【0046】
図20は、モールド成形基板部材10を有するチャネル付基板70を用いる、集積光デバイス202の断面図である。光ファイバ222は、ファイバ軸A1に対して概ね垂直な方向で、すなわち上方の能動光コンポーネント100の方向で、光ファイバにまたは光ファイバから光を誘導する、傾斜ファイバ端226を有する。集積光デバイス202の形成中、上述したようにファイバアレイ220がチャネル66に挿入される。しかし、テーパ付ファイバ端226が90°端壁34に接触し、傾斜ファイバ端が能動光コンポーネント100と位置合せされる位置で停まる。90°端壁34が傾斜ファイバ端面228に接触することはなく、光ファイバ222で誘導されて傾斜ファイバ端面228に入射する光が全反射(TIR)を受け、能動光コンポーネント100に向けて上方に反射されることが保証される。最適位置合せは光コンポーネント100と(1本または複数本の)光ファイバ222の間の最適光結合に対応する。
【0047】
チャネル端壁34の角度は、図21に示されるような、90°より小さい角度をサポートするために調節することができる。この点に関し、モールド成形傾斜端壁34について2つの一般的構成が考えられる。第1の構成において、端壁34の角度は、図21に示されるように、ファイバ端226の傾斜ファセット面228より若干大きい。光ファイバ222がチャネル66に完全に挿入されると、ファイバ端226の先端は端壁34の上部で端壁34に接触する。図22に示される第2の構成において、端壁34の角度はファイバ端226の傾斜ファセット面228より若干小さい。光ファイバ222がチャネル66に完全に挿入されると、ファイバ端226の先端は端壁34の下部で端壁34に接触する。
【0048】
いずれの場合にも、傾斜チャネル端壁34は光ファイバ端226の傾斜面228に直接接触することなく、能動光コンポーネント100の直下の光ファイバ端226を位置合せするためにはたらく。傾斜端面34は光ファイバ端226を上方に向けさせて透明シート50の下表面54と堅く接触させるためにもはたらく。これにより、能動光コンポーネント100と光ファイバ222の間に制御された距離が維持されることが保証される。傾斜チャネル端壁34の上向きくさび止め機能により、溝30の深さを溝30内にある光ファイバ222の直径より若干大きくすることも可能になり、これにより光ファイバアレイ222をチャネル付基板70に組み込むプロセスが簡易化される。別の実施形態において、端壁34の面は、端壁34がファイバ端面228にほぼ平行であるように、斜めにされる。この場合、端壁34はファイバコア224に対応する場所に僅かなリセスを与える。このリセスにより、ファイバ端面228の一箇所に小さな空隙が設けられることでファイバ222内の光の全反射が可能になる。一実施形態例において、端壁34の他の部分はファイバ端228に接触し、ファイバを上方に向けて透明シート50に接触させるように構成される。
【0049】
延伸によって形成されたチャネル付基板
一実施形態例において、チャネル付基板70は適する形状につくられたプリフォームを延伸することによって形成される。図23は、内部に多くのチャネル384が形成されている、矩形断面の柱状体382を有するガラスプリフォーム380の斜視図である。プリフォーム380は両側に端386及び388を有する。プリフォーム380は、例えば、ガラスブロックを選ばれた寸法に機械加工し、端386及び388の一方においてガラスブロックの精確な場所にドリルで穴を開けることによって、形成される。プリフォーム380は本質的にチャネル付基板70の拡大版である。
【0050】
代表的なガラスプリフォームは、最終品の形状にほとんど全く一致するが、何倍も(例えば10倍から1000倍)大きい、形状寸法に作製される。プリフォームは一般に一端で吊され、ガラスが軟化するまで加熱される。重力及び/またはプリフォームの自由端に印加される制御された張力により、ガラスは引き伸ばされて細いストランドまたは狭幅品にされる。この狭幅品の断面は一般に元のプリフォームの形状を維持するが、寸法はかなり小さい。この手法を用いれば、延伸品の最小寸法を下はサブミクロンの分解能まで制御することができる。
【0051】
すなわち、図24を参照すれば、ガラスプリフォーム380を用いるチャネル付基板70の形成において、プリフォーム端386が保持され、自由端388においてガラスプリフォームの少なくとも一部分390が円筒ヒーター400内に入れられて、部分390のガラスが軟化するまで加熱される。軟化したプリフォーム部分390のガラスは、プリフォーム形状及び前内部チャネル384が下方に向けてテーパが付けられて小寸形状になるように、下方に引かれる(延伸される)。延伸プロセス中にチャネル384の相対寸法及び位置並びにその他のプリフォーム形状は実質的に維持され、この結果、寸法が縮小されたチャネル付ロッド410が得られる。チャネル付ロッド410は次いで多くの、図25に示されるような、チャネル66を有するチャネル付基板70に割断される。図25のチャネル付基板70はガラスでつくられているから、対象となる波長(例えば880nm及び1550nmの遠距離通信波長)において透明であり、したがって基板表面と内部チャネルの間の光通信が可能になる。上述した基板部材10と透明シート50で形成されたチャネル付基板の実施形態と参照数字を合わせておくため、図25の一体型チャネル付基板70の上表面には参照数字52が付され、下表面には参照数字14が付される。
【0052】
引き続いて図25のチャネル付基板70に施されるプロセス工程により、図26に示されるように、チャネル付基板の下表面上に導電コンタクト80が形成される。能動光コンポーネント100及び能動電子コンポーネント102のフリップチップマウントが次いで実施され、この結果、図27に示されている、対応する集積光デバイス202が形成される。上述したように、また図28に示されるように、傾斜ファイバ端230を有するファイバ222をもつファイバアレイ220が次いでチャネル66に挿入され、能動光コンポーネント100と位置合せされる。
【0053】
別の組立シーケンスにおいて、チャネル付ロッド410は、多くのチャネル付基板70が1本の長いロッドからほぼ上で論じた「ウエハスケール」作製態様で作製され得るように、より長寸に割断される。上述した組立プロセスに続いて、チャネル付ロッド410を用いて複数の集積回路光デバイス202を形成するため、パッド金属膜形成、ハンダボール取付け及びコンポーネントのフリップチップマウントが、長寸「チャネル付基板」70上の別々の場所に実施される。フリップチップマウントに続き、チャネル付ロッド410は次いで個々の集積光デバイス202を形成するためにダイシングされ、個々の集積光デバイス202は次いで、上述したように、必要に応じてより大きな光サブアセンブリに組み込むことができる。チャネル付ロッド410の1つ以上の表面の精密研磨のような、別の作業を実施することもできる。
【0054】
両面に能動光コンポーネントがマウントされたチャネル付透明基板
いくつかの用途において、能動光コンポーネント100及び能動電子コンポーネント102はチャネル付基板部材70の表側及び裏側にマウントされる。例えば、VCSELのような送信器能動光コンポーネント100については、光出力パワーを送信器の寿命にわたり受信器能動光コンポーネントのよってモニタする必要があり得る。一実施形態例において、受信器能動光コンポーネント100を送信機能動光コンポーネントに概ね対向させてフリップチップマウントするために光学的に透明なチャネル付基板70が用いられる。
【0055】
図29は光ファイバ222及び、光ファイバコア224と近傍の光検出器能動光コンポーネント100の間で光ビーム100Lから光を分割するためにはたらく上部劈開ファセット面228U及び下部劈開ファセット面228Lを有する傾斜面228を有する、ファイバ端226の拡大図である。下部ファセット面228Lは、光ファイバ端226の下方に配置されたVCSEL能動光コンポーネント100からの光100Lが全反射されてファイバコア224に入るように、(図29において水平線に対し)比較的急峻な角度に形成される。上部ファセット面228Uは、光100Lの一部がこの面で屈折して光ファイバ端226の上方に配置された受信器能動光コンポーネント100上に向かうように、比較的浅い角度に形成される。
【0056】
図30に示される一実施形態例において、二重ファセット面付ファイバ222のアレイ220がチャネル付基板70のチャネル66に挿入されている。光ファイバアレイ220内の光ファイバ222のファイバ端226は、送信器能動光コンポーネント100の対応するアレイの直上で、受信器能動光コンポーネントの第2のアレイの下に、配置される。送信器能動光コンポーネント100のアレイからの光100Lはそれぞれのファイバ端226に向けられ、光100Lの一部は反射されて光ファイバコア224に入り、一部は受信器能動光コンポーネント100に向けて上方に屈折される。
【0057】
本明細書では、能動光コンポーネント100が全てチャネル付基板70の一方の面上にフリップチップマウントされているような、チャネル付基板70対する別の用途が考えられる。例えば、そのような用途の1つにおいて、送信器能動光コンポーネント100から放射される光100Lの一部がチャネル付基板70の一部分を通って伝搬し、次いで1つ以上の内部または外部の表面(または機械加工されたファセット面)で反射されてから、送信器能動光コンポーネントでバイスに隣接してマウントされた受信器能動光コンポーネントに向けられる。
【0058】
光減衰
VCSELベース送信器の形態にある光源のような、いくつかの送信器能動光コンポーネント100については、多くの場合、コンポーネントを高光出力パワーレベルで動作させることが望ましい。眼に対する安全要件が光リンク内を伝送される最大光パワーに制限を課すから、光ファイバ222に入射される光パワーの減衰が必要になることがある。光パワーの制御は、一例において、能動光コンポーネント100と光ファイバ222の間に既知の光減衰を与えることによるか、あるいは能動光コンポーネントによって出力される光の一部だけを捕捉するように光ファイバの位置を定める(すなわち、選択的に位置合せする)ことによって、達成される。
【0059】
基板部材10,透明シート50及びプリフォーム380は全て低損失光学ガラスで作製することができるが、これらの品々はドープトガラスで作製することもでき、ドーパントは、ガラスの光吸収特性は変えるが、CTE、熱伝導度及び導電度のようなその他の関連ガラス特性は実質的に変えないことが好ましい量で、ガラスに添加される。一実施形態例において、基板部材10,透明シート50及び/またはプリフォーム380は、与えられた用途に望ましい光減衰を達成するため、様々なドープトガラスの内の1つを用いて作製される。
【0060】
一実施形態例において、透明シート50は、光ファイバ222と能動光コンポーネント100の間の制御された挿入損失量の導入を可能にするに相当する所望の減衰を有する、選ばれた厚さT50を有する。この手法にともなう問題の1つは、光ビーム100Lは透明シート50を通行している間に発散するから、隣接する光ファイバ222との間に実質的な光クロストークがあるか否かである。光ファイバ222のアレイ220は一般に127μmまたは250μmのピッチで配列されるから、1つの能動光コンポーネント100からの発散する光ビーム100Lが横方向にこのピッチの約1/2より大きくは拡がらないことが最善である。控えめな値として62.5μmの横方向拡がり(すなわち125μmのビーム直径)をとれば、8μm径VCSELによって発生される、波長λ=850nmの光ビーム100Lに対して、約1.4mmのガラスを通って伝搬した後にビームは125μmまで拡がるであろう。30μm径多モード光ファイバ222への結合にともなう推定挿入損失は1.4mm厚ガラスにおいて約10dBである。
【0061】
波長λ=1.55μm及び8μm径VCSELに対して、光ビーム100Lは約0.75μmのガラスを通って伝搬した後に125μmまで拡がるであろう。30μm径多モード光ファイバ222への結合にともなう推定挿入損失は0.75mm厚ガラスにおいて同じく10dBである。
【0062】
したがって、一般に用いられるλ=1.55μm及びλ=850nmに対しては、光ファイバ222間に実質的な信号クロストークを生じさせずに、かなりの信号減衰を導入することが可能である。それでも信号クロストークが問題になれば、基板チャネル66のピッチを、250μmまたは500μmのような、さらに大きな値にすることができる。チャネル付基板70内の余分な反射による不要なクロストークを消すかまたは減じるため、一実施形態例においては、無反射コーティング、吸光コーティングまたは散乱面処理が、(溝付基板が不透明である場合は)溝付基板、あるいは(溝付基板または延伸チャネル付基板が透明である場合は)チャネル付基板対向面に施される。
【0063】
薄ガラスシート上のチャネル及びその他の構造
チャネル付基板70を作製するための別の実施形態例において、プロセス中の透明シート50も機械的安定性を高めるために若干厚い(例えば0.7mmから約1.1mmの)透明シート50が用いられる。さらに、図31に示されるように、上表面52に平行溝30'のアレイを形成するために、基板部材10に関して上述した態様と同じかまたは同様の態様で透明機シート50が処理される。一手法において、溝30'は、上述したように基板10への溝30の形成に用いられたような、精密鋸引きによって透明シート50に形成される。溝30'の形成の結果、溝底31'と下表面54の間に薄化領域17が形成される。本実施形態例において、基板部材10には溝が形成されず、溝30'と基板上表面12がチャネル66'を定める。基板部材10にも溝が形成される実施形態例が以下に説明される。
【0064】
チャネル付透明シート50が無チャネル基板部材10と組み合わされてチャネル付基板70が形成された後、透明シートの下表面54上にマウントされている能動光コンポーネント100とチャネル66'内に配置された光ファイバ端226の間には損失結合が必要である。薄化領域17の厚さは、能動光コンポーネントの波長λ及びその他の光特性に、また(多モード)光ファイバコア224の直径にも、明示的に依存して、約150μmないし250μmをこえるべきではない。得られる透明シート50は僅かな機械的変形の下であっても薄化領域17において破断し易い。例えば、透明シートを破断させずにダイシングするに一般に用いられる粘着バッキングシート(図示せず)から溝付透明シート50を取り外すことは一般に困難である。
【0065】
透明シート50が薄化領域17において破断する傾向を軽減するため、一実施形態例において、図32に示されるように、溝30'の選ばれた部分に小量の、エポキシ樹脂、接合材または接着剤のような、支持材料150を与えることによって薄化領域が補強される。支持材料450は、透明シートの上表面から圧力が印加されたときに溝30'内に流れ落ちるには十分に薄いが、溝に沿って流れるに逆らうには十分に厚いことが好ましい。一実施形態例において、支持材料450は、米国ニューヨーク州コーニング(Corning)のコーニング社(Corning, Inc.)から入手できるCorning MCA-xxファミリーにある充填CTE整合熱硬化エポキシ樹脂を含む。
【0066】
一実施形態例において、支持材料450は、粘着バッキングシート(図示せず)に貼り付けられたままの、透明シート50の上(溝付)表面52に与えられる。これにより、透明シート50のバッキングシート除去及び以降のプロセス工程の間のハンドリングに耐え抜くに十分な補強が可能になる。支持材料450の流動は、スクリーン印刷、自動化注入器計量分配あるいはその他のマスク遮蔽法または計量分配法を用いることで、特定の溝場所に限定されることが好ましい。この手法により、同じ透明シート50上に多くのパーツを形成することが可能になり、よって総パーツコストの低減が可能になる。一実施形態例において、支持材料450をプレーナ化するために砥粒研磨及び/またはラッピング工程がさらに用いられ、よって図33に示されるように支持材料450が透明シートの上表面52から上に盛り上がることはない。
【0067】
大寸溝付透明シート50がどのようにして個々の透明シートに分割されるかの一例を示すため、ダイシング線460も図33に示されている。ダイシング作業は透明シート50に直ちに実施することができ、あるいは基板部材10が透明シートに貼り付けられてチャネル付基板70が形成された後まで先送りすることができる。基板部材10が透明シート50に貼り付けられると、薄化領域17への機械的補強が与えられる。したがってダイシング作業は、図34に示されるダイシング線460に沿うように、ダイシング後にチャネルが露出される態様で実施することができる。これにより、以降、図7から図11に示される工程と同様に処理して、集積光デバイス202の実施形態に至ることができる。
【0068】
ダイシング前の溝付透明シート50への基板部材10の貼り付けによって十分な補強が得られれば、上述した溝補強工程を無くすことができる。しかし、以降のパッド金属膜形成及びフリップチップマウントの間、薄化領域70に過剰な機械的荷重がかからないことを保証するため、薄化領域17に注意を払う必要がある。
【0069】
別の実施形態例において、溝30'は透明シート50の前端面56と後端58面の間に延びていない。むしろ、例えば、図35に示されるように、透明シートの中心近傍のような、1つ以上の場所において透明シートの上表面52に鋸を入れることにより短寸溝30'が形成される。この手法は、透明シートの鋸で除去されない部分が以降のプロセス中の透明シートへの十分な機械的支持を与えるように、上述した、約0.7mmから1.1mmの厚さを有する厚い透明シート50に実施されることが好ましい。
【0070】
図36は、直径50mmの鋸刃302を用いてプランジ鋸入れされた、幅が10mmで厚さが0.7mmの透明シート50の、簡略な、拡大断面図である。鋸歯302は薄化領域17の厚さが約0.2mmになるまで降ろされる。この深さにおいて、鋸歯302は前端面56及び後端面58において透明シート50の上表面52にちょうど触れる。
【0071】
一実施形態例において、モールド成形基板部材10は、図37に示されるように、プランジ鋸入れ作業により形成された溝30'に嵌り込む形状につくられ、さらに光ファイバアレイ220を適切な場所に誘導するためのチャネル66を定めるためにはたらく、リッジ470を有する。リッジ470は、傾斜ファイバ止め472及び、チャネル66への光ファイバアレイ220の挿入を簡易化するために拡張された(例えば末広がりにされた)、ファイバ入口474を有する。
【0072】
図38は、ガラス基板のプランジ鋸入れされた溝30'に嵌め込まれる隆起リッジ470を示す、図37のモールド成形基板部材10の底面側の斜視図である。ファイバアレイ挿入前のモールド成形基板部材10と透明シート50の組立後断面図が図39に示される。モールド成形基板部材10と透明シート50が(例えば接着剤を用いて)接合された後、図40に示されるように、光ファイバアレイ220がチャネル66に挿入される。傾斜ファイバ止め472により、傾斜ファイバ端226が正しい場所に配置されて、透明シート50に接触させられる。
【0073】
上に論じた作製法の多くは基板部材10または透明シート50からの材料の除去を含む。他の実施形態例においては、板部材10及び透明シート50のいずれからも材料が除去されて溝30及び30'の両者によってチャネル66が形成される。
【0074】
図41から図44は基板部材10及び透明シート50に対する形状の例を示す。図41は基板部材10だけから材料を除去することで形成されたチャネル66を示す。図42は、透明シート50だけから材料が除去され、透明シートの溝内に嵌るリッジ11を有するモールド成形基板部材10と組み合わされて形成される、チャネル66を示す。図43は基板部材10及び透明シート50のいずれからも材料が除去されることで形成されるチャネル66を示す。図44は、溝30'がV溝であることを除き、図43と同様である。
【0075】
V字形チャネル66は、「V」字の頂点によって正確な位置決めが可能になるから、光ファイバの位置合せに対して魅力的な選択肢である。しかし、V字形チャネル66は、光ファイバ220の傾斜端面236への、及び傾斜端236面からの、光の効率的結合にも関係する。図45及び図46はチャネル66に対する2つの異なるV字形状の2つの異なる断面図を示し、V字形チャネル66は、例として、V字形溝30'と基板部材10の平坦な上表面12によって定められる。溝30'の「V」字部分は頂角θを有する。送信器能動光コンポーネント100は透明シート50の下表面54に隣接する光ファイバ222の直上に配置される(ここでは上表面に溝が形成されているから下表面54がチャネル付基板70の上になっていることに注意されたい)。送信器能動光コンポーネント100からの光は薄化領域17を通って下方に伝搬し、光ファイバ222の直上の傾斜V溝側壁32に当たる。
【0076】
V溝側壁32の方位により、送信器能動光コンポーネント100からの光はV溝を通過するにつれて発散される。この発散により光ビーム100Lは横方向に拡がり、光ビームの一部が光ファイバコア224に入り損なう。光ビーム100Lの発散の大きさは頂角θに依存する。図45において、V溝30'は比較的小さな頂角θを有し、よって光ビーム100Lは比較的大きい入射角でV溝側壁32に当たる。このため、スネルの法則によりさらに一層大きな入射角での屈折がおきる。V溝の頂角θは小さいから、光が入射するV溝側壁32の部分と光ファイバ外表面223の間の距離は大きい。距離が長くなることは光ビーム100Lが発散する機会が増えることを意味し、これは光ビームの少なくとも一部が光ファイバコア224に入らないであろう尤度を大きくする。
【0077】
図46において、V溝30'は図45に示されるθより大きな頂角θを有する。これによりV溝側壁32を通過する光の入射角は小さくなり、よって図45の形状と比較して光ビーム発散率が小さくなる。V溝頂角θは図45に示されるθより大きいから、光ビーム100Lが入射するV溝側壁32の部分と光ファイバ外表面223の間の距離が減じる。距離が短くなることは光ビーム100Lが発散する機会が減ることを意味し、これは光ビームの少なくとも一部が光ファイバコア224に入らないであろう尤度を小さくする。
【0078】
光ビーム100Lが傾斜ファイバ端226から透明シート50の下表面54に隣接してマウントされた受信器能動光コンポーネント100に投射されたときに、同様の光ビーム発散状況がおこる。ビーム発散を修正するためにV溝の頂角θを用いることができ、この形状に対してビーム発散を最小限に抑えるためにはV溝の頂角θをより大きくすることが好ましい。
【0079】
一実施形態例において、光ビーム100Lの発散は、多モード光ファイバリンクにおけるリンク帯域幅を最大にするように制御される。多モード光ファイバにおけるモード分散は導波モードまたは導波モード群の限定されたセットを優先的に励起することによって低減することができる。特に、高次導波モードの励起は、光ファイバ軸A1に対して大きい角度で多モード光ファイバコア224内に光を入射させることで達成することができる。入射角が光ファイバの遮断角より小さい限り、光は限定された数の高次モードで光ファイバ内を誘導され、この結果、長い(例えば>200mの)リンクに対して低減されたモード分散及び拡張されたリンク帯域幅が得られる。
【0080】
一実施例において、光ビーム100Lからの光は、図44に示されるV溝30'を用いて光ファイバコア224内に優先的に大角入射される。いくつかの場合、光ビーム100Lの大分散部分は光ファイバコア224を外れることが多そうであるから、透明シート厚T50を薄くする必要があり得る。
【0081】
一実施形態例において、溝30'のV字形状は、V溝30'にともなう光ビーム100Lの発散が角度フィルタとしてはたらいて、高次モード光だけの伝搬及びフォトダイオード(図示せず)への到達を可能にする、光リンクの受信器端において用いられる。傾斜面228に到達するまでは光ファイバ軸A1に概ね平行に伝搬する低次モード光は、傾斜V溝側壁表面によって、フリップチップマウントされた受信器能動光コンポーネント100以外の場所に向けられる傾向がある。
【0082】
別の実施形態例において、光ビーム100Lからの光は、送信器能動光コンポーネント100と光ファイバ222の間に配された散乱面を用いて光ファイバ222の高次モードに送り込まれる。溝30'が鋸を用いて形成される場合、溝30'の底表面31'は、鋸歯302の分散による、ある程度の粗さを有する。図47及び図48は、誇張された底粗面31'を示す。光ビーム100Lが送信器能動光コンポーネント100によって送り込まれると、光ビーム100Lは粗面31'に当たり、初めの光ビーム伝搬方向に対してある範囲の散乱角ψにかけて散乱する。光ビーム100Lの大部分が中庸の散乱角ψで散乱されれば、散乱部分は光ファイバ222の高次モードを励起する傾向を有し、向上したリンク帯域幅性能をもたらすであろう。
【0083】
一実施形態例において、溝底表面31'の粗さは、鋸歯302の材料を変える、及び、切込みの前に、刃表面を処理またはドレッシングすることによって、改変される。一実施形態例において、光入射条件及び散乱角ψをさらに強めるため、凸形または凹形のプロファイルのような、複雑な鋸刃プロファイルが用いられる。
【0084】
上述した実施形態例は二次元チャネル付基板構成に拡張可能である。図49は、送信器アセンブリ512の一部である、送信器能動光コンポーネント100と組み合わされて構成された二次元(積重ね)集積光デバイス202を含むPCBアセンブリ204の一例の断面図である。送信器アセンブリ512は隣接するチャネル付基板70との電気接続を与える導電コンタクト80及びハンダボール82を有し、隣接チャネル付基板70も導電コンタクトを有する。
【0085】
一実施形態例において、複数の溝付透明シート50(またはチャネル付基板70)が積み重ねられて、1つ以上のフリップチップマウントされた基板アセンブリ上の能動光コンポーネント100の二次元アレイに二次元光ファイバアレイ220を位置合せするために用いられる。溝付基板70の一方または両方の側面に溝30を形成し、積み重ねて、適切な場所で薄ガラスシート50で覆うことができる。ファイバ-能動デバイス間相互接続において大きくなったビーム回折を補償するため、レンズ520のようなレンズが、必要に応じて、光路に沿って設けられる。図49は、最上層のチャネル付基板70に付帯するレンズ520を示す。レンズ520は、下層のチャネル付基板70の光ファイバ222に光ビーム100Lを結合するためにも用いることができる。レンズ520はマイクロモールド成形またはレーザ成形によって形成することができる。レンズ520には回折格子構造を含めることもできる。様々な積重ねファイバアレイ面におけるレンズ520の焦点距離は個々のファイバアレイに対する光結合性能を最適化するために合わせ込まれることが好ましい。
【0086】
添付される特許請求の範囲に定められるような本開示の精神または範囲を逸脱することなく、本明細書に説明されるような本開示の好ましい実施形態に様々な改変がなされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本開示の改変及び変形が添付される特許請求項及びそれらの等価物の範囲内に入れば、本開示はそのような改変及び変形を包含するとされる。
【符号の説明】
【0087】
10 基板部材
12 基板部材上表面
14 基板部材下表面
16 基板部材前端面
18 基板部材後端面
30 溝
31 溝底
32 溝側壁
50 透明シート
66 チャネル
70 チャネル付基板
80 導電コンタクト
100 能動光コンポーネント
102 能動電子コンポーネント
120 PCB基板
150 支援チップ
202 集積光デバイス
204 PCBアセンブリ
220 光ファイバアレイ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本以上の光ファイバ及び少なくとも1つの能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスを形成するためのチャネル付基板において、
1本以上の溝が形成されている上表面を有する基板部材、及び
前記1本以上の溝と組み合わされて、1本以上のチャネルを定める、前記基板部材の前記上表面に定結された透明シート、
を有し、
前記1本以上のチャネルのそれぞれが、前記1本以上の光ファイバの内の1本を収めて、前記透明シートを介する前記能動光コンポーネントと前記1本以上の光ファイバの間の光通信を可能にするような大きさにつくられる、
ことを特徴とするチャネル付基板。
【請求項2】
前記透明シートがガラスを含むことを特徴とする請求項1に記載のチャネル付基板。
【請求項3】
前記基板部材が、シリコン、InP及びその合金、GaAs及びその合金、GaN及びその合金、GaP及びその合金、石英、サファイア、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化インジウムを含む導電性透明酸化物、ガラス、セラミック、プラスチック及び金属からなる材料の群から選ばれる少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項2に記載のチャネル付基板。
【請求項4】
前記透明シートがさらに、前記1本以上のチャネルを定めるための、前記1本以上の基板部材溝と位置合せされる1本以上の溝を有することを特徴とする請求項1に記載のチャネル付基板。
【請求項5】
集積光デバイスにおいて、
請求項1に記載の前記チャネル付基板、
前記透明シートの上表面上に形成された導電コンタクト、
前記導電コンタクトと電気的に接触するように動作可能な態様で配置された前記少なくとも1つの能動光コンポーネント、及び
前記1本以上のチャネルの対応するそれぞれに配された前記1本以上の光ファイバ、
を有し、
前記1本以上の光ファイバのそれぞれが、前記1本以上の光ファイバと前記少なくとも1つの能動光コンポーネントの間の光の伝導を可能にするように配置及び構成された、傾斜端面を有する、
ことを特徴とする集積光デバイス。
【請求項1】
1本以上の光ファイバ及び少なくとも1つの能動光コンポーネントを用いる集積光デバイスを形成するためのチャネル付基板において、
1本以上の溝が形成されている上表面を有する基板部材、及び
前記1本以上の溝と組み合わされて、1本以上のチャネルを定める、前記基板部材の前記上表面に定結された透明シート、
を有し、
前記1本以上のチャネルのそれぞれが、前記1本以上の光ファイバの内の1本を収めて、前記透明シートを介する前記能動光コンポーネントと前記1本以上の光ファイバの間の光通信を可能にするような大きさにつくられる、
ことを特徴とするチャネル付基板。
【請求項2】
前記透明シートがガラスを含むことを特徴とする請求項1に記載のチャネル付基板。
【請求項3】
前記基板部材が、シリコン、InP及びその合金、GaAs及びその合金、GaN及びその合金、GaP及びその合金、石英、サファイア、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化インジウムを含む導電性透明酸化物、ガラス、セラミック、プラスチック及び金属からなる材料の群から選ばれる少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項2に記載のチャネル付基板。
【請求項4】
前記透明シートがさらに、前記1本以上のチャネルを定めるための、前記1本以上の基板部材溝と位置合せされる1本以上の溝を有することを特徴とする請求項1に記載のチャネル付基板。
【請求項5】
集積光デバイスにおいて、
請求項1に記載の前記チャネル付基板、
前記透明シートの上表面上に形成された導電コンタクト、
前記導電コンタクトと電気的に接触するように動作可能な態様で配置された前記少なくとも1つの能動光コンポーネント、及び
前記1本以上のチャネルの対応するそれぞれに配された前記1本以上の光ファイバ、
を有し、
前記1本以上の光ファイバのそれぞれが、前記1本以上の光ファイバと前記少なくとも1つの能動光コンポーネントの間の光の伝導を可能にするように配置及び構成された、傾斜端面を有する、
ことを特徴とする集積光デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図45】
【図46】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
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【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図45】
【図46】
【公表番号】特表2013−506870(P2013−506870A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532197(P2012−532197)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/049918
【国際公開番号】WO2011/041196
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/049918
【国際公開番号】WO2011/041196
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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