説明

光並列伝送モジュール及び光並列伝送システム

【課題】実装時の歩留まりを高くすることにより、安定して生産することを可能とした光並列伝送モジュール及び光並列伝送システムを提供する。
【解決手段】光並列伝送モジュール1は、発光素子アレイ10を気密的に封止したカンパッケージ11と、光ファイバアレイ20を保持固定した光ファイバコネクタ21と、光素子アレイ10と光ファイバアレイ20とを光学的に結合する単一の球レンズ30を保持固定した鏡筒31とにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光素子アレイと光ファイバアレイとを光学的に結合させる光並列伝送モジュール及び光並列伝送システムに係わり、特に、実装時における歩留まりの向上を図ることができるとともに、安定して生産することができる光並列伝送モジュール及び光並列伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光通信分野においても、必要とされるデータ伝送容量の増大、及び通信の高速化などに伴い光並列データ伝送技術が要求されてきている。
【0003】
この光並列データ伝送技術においては、一般に、システム全体の小型化を図るため、アレイ状の光素子とリボン光ファイバのようなアレイ状の導光路とにより光並列伝送モジュールが構成されている。この光並列伝送モジュールでは、光素子アレイと導光路アレイとの間で高い光結合効率を得ることと、湿気などによって劣化し易い光素子アレイを気密封止することが必要となる。
【0004】
この種の従来の光並列伝送モジュールとして、例えば、半導体レーザアレイと光ファイバアレイとをレンズアレイを介して結合させた構造の光半導体モジュールが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
上記特許文献1に記載された光半導体モジュールは、半導体レーザアレイとレンズアレイとを同一のパッケージ内に配置固定している。レンズアレイは、パッケージの端部窓材として使用されており、レンズアレイ外周部とパッケージの接合部を、はんだあるいは低融点ガラス等の気密封止材で固定している。このような半導体レーザアレイ及びレンズアレイを組み込んだパッケージと、光ファイバアレイを組み込んだパッケージとが光伝達関係にあるように脱着自在に固定されている。
【特許文献1】特開平5−323159号公報(図1〜図4及びその説明箇所)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載された光半導体モジュールは、レンズアレイのピッチが半導体レーザアレイのピッチと同一の寸法に設定されており、半導体レーザアレイ1ピッチごとに1個のレンズで集光させるようになっている。
【0007】
そのレンズ1個の大きさは、約250μm程度である。このため、高い精度で接続して光結合効率を高めるのには、半導体レーザアレイ及びレンズアレイ間の間隔を約200〜300μm程度の間隔寸法に設定することが必要となる。これに伴い、光素子アレイとリード端子とを電気的に接続するワイヤボンディングのループ高さを低くしなければならなくなるという実装に対する制約が増えるという問題点がある。
【0008】
また、レンズアレイのレンズの光軸と水平な方向に数μm以下の配列精度(実装密度)で半導体レーザアレイを実装する必要があり、実装時の歩留まりを低下させるという問題点がある。
【0009】
また、この従来の光半導体モジュールでは、半導体レーザアレイ及びレンズアレイ間の間隔が狭くなり、光出力の有無を検出するモニタPD等をレンズアレイと同一のパッケージ内に収納することが困難になるという問題点をも有している。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解消するためになされたものであり、実装時の歩留まりを高くすることにより、安定して生産することを可能とした光並列伝送モジュール及び光並列伝送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の光並列伝送モジュール及び光並列伝送システムを提供する。
【0012】
[1]光素子アレイと、光ファイバアレイと、前記光素子アレイの各素子に共通に設けられ、前記光素子アレイと前記光ファイバアレイとを光学的に結合するレンズとを備えたことを特徴とする光並列伝送モジュール。
【0013】
上記構成によると、光並列伝送モジュールの組立時間の短縮と歩留まりを向上させ、安定して生産することができる。歩留まりと生産性を向上させることで、光並列伝送モジュールの低コスト化や光接続機構の小型化を容易にかつ確実に達成することができる。
【0014】
[2]上記[1]記載の構成にあって、前記光素子アレイは、密閉容器に収容され、前記レンズは、前記密閉容器に嵌合する鏡筒内に保持されてなることを特徴としている。上記[1]の作用効果に加えて、光素子アレイを湿気などにより劣化することを防止することができる。
【0015】
[3]上記[2]記載の構成にあって、前記鏡筒は、前記光ファイバアレイを保持するコネクタを位置決めする位置決め部を有してなることを特徴としている。上記[2]の作用効果に加えて、光素子アレイ及び光ファイバアレイ間の光の接続を簡単にかつ確実に行うことができるようになる。
【0016】
[4]上記[1]記載の構成にあって、前記光素子アレイと前記光ファイバアレイは、結像関係となるように保持されてなることを特徴としている。上記[1]の作用効果に加えて、発光素子アレイの放射角を小さくすることができるようになり、光結合損失を低減することができるとともに、安定して高い光伝送効率を得ることができるようになる。
【0017】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の光並列伝送モジュールを送受信器として用いてなることを特徴とする光並列伝送システムにある。
【0018】
上記構成によると、結合損失の増加(結合効率の低下)を防止することを可能とし、複数の光素子アレイがユニット化された光並列伝送システムを構成することができる。
【0019】
[6]上記[5]記載の構成にあって、光素子アレイが発光素子アレイであり、光ファイバアレイに対する結像関係を拡大光学系とした構成を有し、光素子アレイが受光素子アレイであり、光ファイバアレイに対する結像関係を縮小光学系とした構成を有してなることを特徴としている。上記[5]の作用効果に加えて、発光素子アレイにおける各素子のコア径よりも受光素子アレイの各素子の受光面でのビーム径を小さくすることができるようになり、受光素子アレイにおける受光径の小さい素子に対しても、高い光結合効率が得られる。また、位置ずれに対するトレランスを向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、実装時の歩留まりを高くすることにより、安定して生産することを可能とした光並列伝送モジュール及び光並列伝送システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0022】
[第1の実施の形態]
(送信側の光並列伝送モジュールの構成)
図1は、本発明に係わる第1の実施の形態である単一のレンズを用いた送信側の光並列伝送モジュールの一構成例を概略的に示す断面図、図2は、光並列伝送モジュールの光出射側のパッケージを概略的に示す平面図であり、図3は、光並列伝送モジュールの光結合状態を示す模式図である。なお、この第1の実施の形態にあっては、送信側の光並列伝送モジュールを例示して説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば受信側の光並列伝送モジュールに好適に使用することができることは勿論である。
【0023】
図1において、符号1は、送信側の光並列伝送モジュールを示している。この光並列伝送モジュール1の基本構成は、図1に示すように、送信側の光素子アレイである発光素子アレイ10と、複数本の光ファイバを内包する光リボンファイバアレイ(光ファイバアレイ)20と、発光素子アレイ10及び光ファイバアレイ20を光学的に結合する単一の球レンズ30とを有している。
【0024】
また、送信側の光並列伝送モジュール1は、発光素子アレイ10を気密的に封止したカンパッケージ11と、単一の球レンズ30を保持固定した鏡筒31と、光ファイバアレイ20を保持固定した光ファイバコネクタ21とからなる3つの構成部品により構成されている。
【0025】
次に、カンパッケージ11、鏡筒31及び光ファイバコネクタ21について具体的に説明する。
【0026】
(カンパッケージ)
カンパッケージ11は、図1に示すように、円板状の金属ステム12と、金属ステム12上に図示しないマウントを介して位置決め固定された発光素子アレイ10とを有している。この第1の実施の形態にあっては、発光素子アレイ10としては、250μmピッチの1×4VCSELアレイ(表面発光型半導体レーザ)が使用されている(以下「VCSELアレイ10」という。)。なお、送信側の光素子アレイとしては、例えば発光ダイオード(LED)、端面発光LED、共振器形LED、端面発光型レーザダイオードなどを使用することができる。
【0027】
カンパッケージ11の一構成部品である金属ステム12上には、円筒状の金属キャップ13が外方に突出する円環状のフランジを介して気密に固着されている。金属ステム12と金属キャップ13とにより囲まれた内部には、密閉空間3が形成されている。その密閉空間3内には、例えば、窒素ガス等の不活性ガスが封入された状態で封止されている。金属キャップ13の筒部内には、鏡筒31の筒部と同心円状に形成された開口部13aを有している。
【0028】
この開口部13aの底部の一部には、内周面から中心に向かう円形状の開口窓部13bが形成されている。この開口窓部13bには、円板形をなすカバーガラス15が低融点ガラス、エポキシ樹脂などにより固着されている。この開口窓部13bは、VCSELアレイ10から照射されたレーザ光を透過する透過窓としての機能を有している。
【0029】
金属ステム12のVCSELアレイ10と反対側の面には、図示しない外部装置と電気的に接続する5リードピン14,…,14が突設されている。各リードピン14は、所定の間隔をおいて電気的に絶縁された状態で配されている。各リードピン14の一端は、VCSELアレイ10のp側もしくはn側の電極にボンディングワイヤなどにより電気的に接続されている。1×4 VCSELアレイの構成として、p側を個別電極とし、n側を共通電極とした場合は、最低でもアレイ数+1の外部電極が必要となる。
【0030】
なお、カンパッケージ11としては、例えば、金属ステム12と金属キャップ13とを一体に形成した密閉容器であってもよいことは勿論である。
【0031】
(鏡筒)
金属ステム12の金属キャップ13に外嵌固定された鏡筒31は、図1及び図2に示すように、絶縁性の樹脂材からなる筒状の直方体形状をなしており、金属ステム12の金属キャップ13に接着剤にて固着されている。なお、鏡筒31が金属材料からなる場合は、YAG溶接により固着することができる。
【0032】
鏡筒31の筒部内は、金属ステム12の金属キャップ13を内嵌固定する大径の円形開口部31aと、この円形開口部31aの内周面から中心に向かう小径の円形開口部31bとを有する段部形状をなしている。鏡筒31の大径の円形開口部31aは、球レンズ30及びVCSELアレイ10間の位置関係を調整することができる深さ寸法に設定されている。鏡筒31の小径の円形開口部31bの内部には、球レンズ30が保持固定されている。鏡筒31の金属ステム12と反対側の端部開口面には、光ファイバコネクタ21を位置決め固定する位置決め部である一対のガイド孔31c,31cが穿設されている。ガイド孔31cは、球レンズ30及び光ファイバコネクタ21間の位置関係を調整することができる深さ寸法に設定されている。
【0033】
球レンズ30は、図1及び図2に示すように、VCSELアレイ10の各素子に対して共通のレンズとして設けられており、金属ステム12の軸心と一致させた状態で配されている。球レンズ30は、VCSELアレイ10のピッチ、ビット数及び放射角などに応じてレンズによるケラレが生じない大きさに設定することが肝要である。図示例にあっては、直径が4mmであり、焦点距離が3mmである単一の球レンズ30が使用されている。単一の球レンズ30に収差の問題がある場合は、単一の球レンズ30に代えて、非球面レンズや複合レンズ系などの他のレンズを使用することができる。
【0034】
(光ファイバコネクタ)
鏡筒31に取り付けられる光ファイバコネクタ21の一端側には、図1及び図2に示すように、一対のガイドピン21a,21aが鏡筒31のガイド孔31cと対応する位置に突設されている。
【0035】
光ファイバコネクタ21の他端側には、複数本の250μmピッチの光ファイバを内包する光リボンファイバ20が接続されている。光リボンファイバ20は、VCSELアレイ10の発光面が光ファイバの光軸と略同一方向となるように配される。この第1の実施の形態では、光リボンファイバ20の複数本の光ファイバは、光ファイバコネクタ21の一端側の結合面に露出されており、250μmピッチの間隔をもって一列状態で保持されている。
【0036】
(光学素子の位置関係)
次に、VCSELアレイ10、光ファイバアレイ20及び単一の球レンズ30の光学素子の位置関係について、図3を参照して具体的に説明する。
【0037】
図3は、光並列伝送モジュールの光結合状態を示す模式図である。
【0038】
鏡筒31の筒部内に保持固定された球レンズ30の設置位置は、図3に示すように、鏡筒31に取り付けた光ファイバコネクタ21の光ファイバアレイ20の入射端面から球レンズ30の主点Oまでの間の距離(X2+f)、及びカンパッケージ11に収納したVCSELアレイ10から球レンズ30の主点Oまでの間の距離(X1+f)を、球レンズ30の焦点距離fの2倍の距離(例えば、6mm)にそれぞれ設定されている。球レンズ30の物体側焦点からVCSELアレイ10までの間の距離X1は、球レンズ30の焦点距離fと同一の間隔寸法に設定されている。VCSELアレイ10からの出射光の結像位置の像側焦点から光ファイバアレイ20の入射端面までの間の距離X2も球レンズ30の焦点距離fと等しい間隔寸法に設定されている。光ファイバアレイ20の入射端面は、球レンズ30の結像位置に配されている。
【0039】
この第1の実施の形態によれば、物体と像の倍率mは、m=f/X=f/f=1(等倍結像)となるように構成されている。これにより、VCSELアレイ10のピッチP1と、VCSELアレイ10からの出射光の結像位置でのビームスポットのピッチP2とが等しくなるとともに、VCSELアレイ10の発光スポット径と、VCSELアレイ10からの出射光の結像位置でのビームスポットのビーム径とは等しくなる。光ファイバアレイ10の入射端面は、上述したように、球レンズ30の結像位置に配されているので、光ファイバアレイ10と光接続されることとなる。
【0040】
(光学素子の位置調整)
VCSELアレイ10の各素子の光軸調整を行う際に、各素子の光出力をファイバ端でモニタしながら、あるいは受信側の光並列伝送モジュールの各素子の光電流をモニタしながら行うアクティブアライメントにより、カンパッケージ11に鏡筒31を固着することができる。この場合は、VCSELアレイ10をカンパッケージ11に実装する位置精度を、一般的なダイボンド工程において実装した場合に実現できる精度である±50μm程度の実装位置のずれに緩和することができる。
【0041】
なお、上記のごとく構成された光並列伝送モジュール1の構造、形状及び構成部材は、図示例に限定されるものではないことは勿論である。
【0042】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
(イ)光並列伝送モジュール1の組立時間の短縮と歩留まりを向上させ、安定して生産することができるようになり、光並列伝送モジュール1の低コスト化や光接続機構の小型化を達成することができる。
(ロ)VCSELアレイ10を湿気などにより劣化することを防止することができる。
(ハ)VCSELアレイ10及び光ファイバアレイ20間の光の接続を簡単にかつ確実に行うことができるようになる。
【0043】
[第2の実施の形態]
(送信側の光並列伝送モジュールの構成)
図4は、本発明に係わる第2の実施の形態である光並列伝送モジュールの一構造例を示している。図4(a)は、送信側の光並列伝送モジュールの構成を概略的に示す断面図、図4(b)は、光並列伝送モジュールの光出射側のパッケージを概略的に示す平面図、図4(c)は、図4(a)のIVa−IVa線の矢視断面図である。
【0044】
これらの図において上記第1の実施の形態と大きく異なるところは、球レンズ30に代えて、中心軸に対して垂直な平面部32a,32aが形成された部分加工球レンズ32を有する点、カンパッケージ11に代えて、セラミックパッケージ16を有している点にある。なお、これらの図において上記第1の実施の形態と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付している。従って、これらの部材に関する詳細な説明は省略する。
【0045】
図4において、符号32は、屈折率が略均一なガラス製の部分加工球レンズを示している。セラミックパッケージ16に外嵌固定された鏡筒31の大径の開口部31b内には、単一の部分加工球レンズ32が保持固定されている。この第2の実施の形態にあっても、単一の部分加工球レンズ32をVCSELアレイ10の各素子に共通のレンズとして使用することができる。
【0046】
鏡筒31は、図4(a)〜図4(c)に示すように、樹脂材からなる細長い扁平筒状の直方体形状をなしている。鏡筒31のセラミックパッケージ16と反対側の端部開口面には、図示しない光ファイバコネクタを位置決め固定する一対のガイド孔31c,31cが形成されている。セラミックパッケージ16内には、図示しないマウントを介して位置決め固定されたVCSELアレイ10が配されている。この第2の実施の形態にあっては、250μmピッチの1×12VCSELアレイが使用されている。セラミックパッケージ16とVCSELアレイ10から照射されたレーザ光を透過する細長いカバーガラス15とにより囲まれた密閉空間3内には、例えば、窒素ガスが充填される。
【0047】
セラミックパッケージ16のVCSELアレイ10と反対側の面には、図4(a)に示すように、外部装置と電気的に接続するための例えば14個(共通電極を2箇所とった場合)の電極17,…,17が設けられている。各電極17は、所定の間隔をもって電気的に絶縁された状態で配されている。各電極17の一端は、VCSELアレイ10のp側もしくはn側の電極にボンディングワイヤなどにより電気的に接続されている。
【0048】
鏡筒31の大径の開口部31b内に保持固定された部分加工球レンズ32は、図4(a)〜図4(c)に示すように、VCSELアレイ10の出射端面(発光点)と略同一方向となるように配された円弧面部と、中心軸に対して垂直な平面部32a,32aとを有している。部分加工球レンズ32の各平面部32aは、VCSELアレイ10の出射端面の配列方向と直交する方向にそれぞれ形成されている。部分加工球レンズ32の外郭形態は、VCSELアレイ10の各素子の配列方向に対して、水平方向よりも垂直方向の長さを短い寸法に設定されている。VCSELアレイ10の発光点の配列方向に対しては、VCSELアレイ10のピッチ及びビット数などに応じて、レンズによるケラレが発生しないような大きさに設定することが肝要である。この第2の実施の形態においては、VCSELアレイ10の発光点の配列方向と垂直な方向については、ビット数に関わらず1ビットの放射光に対するレンズのケラレが発生しないように構成することができる。
【0049】
図5は、部分加工球レンズ32の作製方法を説明するための概略説明図である。同図において、図示を省略した回転する研削ホイールが、同じく図示しない加工装置に対して垂直方向に上下動可能に配される。部分加工球レンズ32を作製するにあたっては、球レンズの一部を研削する。定法に従い加工装置に回転駆動可能に把持された球レンズを回転させ、回転する球レンズの両側面を研削ホイールにて、図5に示す斜線部分を研削する。そして、一対の研削面を光が散乱しない鏡面に研磨することにより、中心軸に対して垂直な一対の平面部32a,32aを有する部分加工球レンズ32を作製することができる。
【0050】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態の作用効果に加えて、以下の効果が得られる。
(イ)光並列伝送モジュールの小型化や薄型化を達成することができる。
【0051】
[第3の実施の形態]
(送信側の光並列伝送モジュールの構成)
図6は、本発明に係わる第3の実施の形態である光並列伝送モジュールの一構造例を示している。図6は、送信側の光並列伝送モジュールの構成を概略的に示す断面図である。同図において上記各実施の形態と大きく異なるところは、光入出力の有無を検出するモニタPD18をカンパッケージ11内に収納している点にある。なお、同図において上記各実施の形態と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付している。従って、これらの部材に関する詳細な説明は省略する。
【0052】
図6において、符号18はモニタPDを示している。この第3の実施の形態にあっても、カンパッケージ11の円板状の金属ステム12上には、サブマウント19を介して位置決め固定されたVCSELアレイ10が搭載されている。金属ステム12上には、円筒状の金属キャップ13が外方に突出する円環状のフランジを介して気密に固着されている。
【0053】
この金属キャップ13の頂部は、図6に示すように、鏡筒31の筒部と同心円状に形成されており、軸線に対して斜めに横断して切断した開口窓部13bを有している。この開口窓部13bの開口端面は、開口窓部13bの対面方向から見てほぼ楕円形状をなしている。この開口窓部13bには、楕円形状をなすカバーガラス15がエポキシ樹脂などにより固着されている。このカバーガラス15には、図示しない50%の透過率を有するフィルタがコーティングされている。
【0054】
金属ステム12の金属キャップ13に外嵌固定された鏡筒31の筒部内には、図6に示すように、単一の球レンズ30が保持固定されている。この球レンズ30は、VCSELアレイ10の各素子に共通に設けられている。金属ステム12のVCSELアレイ10と反対側の面には、図示しない外部装置と電気的に接続するための6本(モニタPDの出力端子が最低一本は必要となる)のリードピン14,…,14が所定の間隔をおいて電気的に絶縁された状態で配されている。各リードピン14の一端は、VCSELアレイ10のp側もしくはn側の電極にボンディングワイヤなどにより電気的に接続されている。
【0055】
(第3の実施の形態の効果)
第3の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態の作用効果に加えて、以下の効果が得られる。
(イ)VCSELアレイ10及びカバーガラス15間の間隔を大きい寸法に設定することができるようになり、カバーガラス15による反射光をモニタPD18へ入射させ易くすることができる。
(ロ)金属キャップ13の頂部が、軸線に対して斜めに横断して切断した斜め金属キャップとして形成されているので、モニタPD18への入射光量を増加させることができる。
(ハ)カバーガラス15にコーティングしたフィルタは、モニタPD18への入射光量を増加させることができるとともに、送信側の光並列伝送モジュール1からの光出力を抑えることができるようになり、レーザの安全性を確保するとともにレーザーの安定動作を行うことが可能となる。
【0056】
[第4の実施の形態]
(受信側の光並列伝送モジュールの構成)
図7は、本発明に係わる第4の実施の形態である光並列伝送モジュールの一構造例を示している。図7は、受信側の光並列伝送モジュールの構成を概略的に示す断面図である。同図において上記各実施の形態と大きく異なるところは、中心軸に対して垂直な一対の平面部32a,32aが形成された部分加工球レンズ32と光接続する光素子アレイを受信側の光並列伝送モジュールに適用している点にある。なお、同図において上記各実施の形態と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付している。
【0057】
図7において、符号2は、受信側の光並列伝送モジュールを示している。この光並列伝送モジュール2の基本構成は、受光素子アレイであるフォトダイオード(PD)アレイ40と、図示しない光ファイバコネクタの光ファイバアレイとを光学的に結合する単一の部分加工球レンズ32とにより構成されている。この部分加工球レンズ32を収納した鏡筒31及び光ファイバコネクタの構成は、上記各実施の形態と変わるところはない。
【0058】
光入射側のPDパッケージ41内には、サブマウント42を介してフォトダイオード(PD)アレイ40が実装されるとともに、駆動用IC43が実装されている。PDアレイ40、駆動用IC43及びPDパッケージ41の各電極が、ボンディングワイヤなどにより電気的に接続されている。このPDアレイ40は、印加されたバイアス電圧に基づき受光面に対して照射された光の光量に応じた電気的な変換信号に変換する光電変換素子であり、単一の部分加工球レンズ32を介して光ファイバコネクタの光ファイバアレイからの入射光を受光するようになっている。PDの出力電流は、駆動用IC43に入力されて電気信号に変換され、複数の電極44,…,44から図示しない外部装置へと出力される。
【0059】
(第4の実施の形態の効果)
第4の実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
(イ)PDアレイ40及び駆動用IC43間の間隔寸法が短く設定できることで、SN比の改善、電磁波放射やイミュニティ耐性(電磁波妨害耐性)の改善、実装面積の縮小などを達成することができる。
【0060】
[第5の実施の形態]
(光並列伝送システムの構成)
図8は、本発明に係わる第5の実施の形態である光並列伝送モジュールを用いた光並列伝送システムの一構造例を示している。図8は、光並列伝送システムの構成を概略的に示す概略説明図である。この第5の実施の形態では、受信側の光並列伝送モジュール2のPDパッケージ41は、送信側の光並列伝送モジュール1のカンパッケージ11と同一の外郭形態をなしている。なお、同図において上記各実施の形態と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付している。
【0061】
図8において、符号100は、送信側の光並列伝送モジュール1と受信側の光並列伝送モジュール2とが光ファイバアレイ20を介して信号を送受信する光並列伝送システムを示している。
【0062】
この光並列伝送システム100では、送信側の光並列伝送モジュール1のリードピン14に電気信号を印加すると、カンパッケージ11内に実装されたVCSELアレイ10が光信号を出射し、鏡筒31内に実装された単一の球レンズ30により集光されて、光ファイバコネクタ21の光ファイバアレイ20を介して受信側の光並列伝送モジュール2へと導かれる。
【0063】
一方、PDパッケージ41内に実装されたPDアレイ40では、光ファイバアレイ20から入力した光信号を出射し、鏡筒31内の単一の球レンズ30により集光されて、PDパッケージ41内に実装された駆動用IC43に入力されて電気信号に変換され、リードピン14から図示しない外部装置へと出力される。
【0064】
(光学素子の位置関係)
次に、送信側の光並列伝送モジュール1と受信側の光並列伝送モジュール2との光結合について、図9を参照して具体的に説明する。
【0065】
図9は、送信側の光並列伝送モジュール1と受信側の光並列伝送モジュール2との光結合状態を示す模式図である。なお、同図において上記各実施の形態と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付している。
【0066】
一般に、レンズによる結像関係における物体と像の大きさの関係は、レンズの焦点距離をfとし、レンズの物体側焦点から物体までの間の距離をX1とし、像側焦点から像までの間の距離をX2とすると、X1×X2=f2の寸法関係が成り立つ。物体と像の倍率mは、m=(f/X1)=(f/X2)の寸法関係となっている。レンズの物体側焦点から物体までの間の距離X1がレンズの焦点距離fよりも短い場合には、像の大きさは、物体よりも大きくなる(m>1、拡大光学系)。これとは逆に、レンズの物体側焦点から物体までの間の距離X1がレンズの焦点距離fよりも長い場合には、像の大きさが、物体よりも小さくなる(m<1、縮小光学系)。
【0067】
ここで、光並列伝送システムの構成においては、VCSELアレイが物体側であり、PDアレイは像側であると見なすことができる。この第5の実施の形態によれば、光並列伝送システム100は、図9に示すように、送信側の光素子アレイであるVCSELアレイ10側に拡大光学系を形成しており、受信側の光素子アレイであるPDアレイ40側に縮小光学系を形成している。これにより、光ファイバアレイ20のピッチよりも小さいピッチの光素子アレイ10,40との結合が可能となる。
【0068】
この第5の実施の形態によると、送信側の光並列伝送モジュール1のVCSELアレイ10側では、球レンズ30の焦点距離fと、光ファイバアレイ20の端面から球レンズ30の像側焦点までの間の距離X2とが、図9(a)に示すように、X2=2fの関係を有している。球レンズ30の焦点距離fと、球レンズ30の物体側焦点からVCSELアレイ10までの間の距離X1とは、X1=f/2の関係を有している。
【0069】
送信側の光並列伝送モジュール1では、球レンズ30が、光ファイバアレイ20の端面から球レンズ30の像側焦点までの間の距離X2をX2=2fとなるように鏡筒31内に配置されるとともに、球レンズ30の物体側焦点からVCSELアレイ10までの間の距離X1をX1=f/2となるように鏡筒31内に配置されている。VCSELアレイ10からの出射光は、光ファイバアレイ20の端面と光結像されることとなる。物体と像の倍率m=(f/X1)=(f/X2)の寸法関係に基づき算出すると、このときの倍率mは、m=2となる。これにより、ピッチP1が125μmであるVCSELアレイ10で、ピッチP2が250μmである光ファイバアレイ20と光学的に接続することができる。
【0070】
一方、受信側の光並列伝送モジュール2のPDアレイ40側では、図9(b)に示すように、VCSELアレイ10側とは逆の関係となっており、球レンズ30の焦点距離fと、球レンズ30の物体側焦点からPDアレイ40までの間の距離X1とが、X1=2fの関係を有している。球レンズ30の焦点距離fと、球レンズ30の像側焦点からPDアレイ40の受光面までの間の距離X2とは、X2=f/2の関係を有している。
【0071】
受信側の光並列伝送モジュール2では、球レンズ30が、球レンズ30の物体側焦点からPDアレイ40までの間の距離X1をX1=2fとなるように鏡筒31内に配置されるとともに、球レンズ30の像側焦点からPDアレイ40の受光面までの間の距離X2をX2=f/2となるように鏡筒31内に配置されている。これにより、光ファイバアレイ20からの出射光は、PDアレイ40の受光面で結像される。物体と像の倍率m=(f/X1)=(f/X2)の寸法関係に基づき算出すると、このときの倍率mは、m=0.5となるので、ピッチP2が250μmである光ファイバアレイ20で、ピッチP1が125μmであるPDアレイ40に光学的に接続することができる。
【0072】
上記構成によると、VCSELアレイ10の1ビットの発光スポット径、放射角に対して光ファイバアレイ20の端面でのビーム径(コア径)、放射角は、それぞれ2倍、0.5倍となる。PDアレイ40の受光面でのビーム径は、光ファイバアレイ20の端面でのビーム径の0.5倍となる。
【0073】
ところで、光並列伝送では、コア径50μm、NA(開口数)=0.2(最大受光角θ=11.6°)のGIマルチモードファイバが一般的に用いられる。VCSELアレイ10の1ビットの発光スポット径は、5〜20μmであり、その放射角は、全角で10〜30°である。この第5の実施の形態に係わる光並列伝送システム100によると、光ファイバアレイ20の入射端面では、ビーム径は10〜40μmとなり、入射角は5〜15°となり、NAのミスマッチによる結合損失を改善することができる。倍率mを大きくし過ぎると、ビーム径の違いによる結合損失が増加することとなるので、倍率mは、m=1〜2を満足させることが好適である。
【0074】
また、1Gbps以上の伝送速度に用いられるPDアレイの受光径は、40〜100μmであり、PDアレイの受光面でのビーム径は、光ファイバアレイの出射端面でのビーム径(コア径)の1/2(25μm)であるので、この第5の実施の形態に係わる光並列伝送システム100によると、光結合効率あるいは位置ずれに対するトレランスを改善することができるようになる。PDアレイ40側では、倍率を小さく設定することが、光結合効率や位置ずれトレランスを向上させるという点では望ましいが、倍率を小さく設定するのには、光学系、すなわちモジュールサイズが大きくなるので、倍率mとしては、m=0.5〜1を満足させることが好適である。
【0075】
この第5の実施の形態に係わる光並列伝送システム100では、送信側の光ファイバアレイ20に対する結像関係を拡大光学系に形成することができる。拡大光学系の横倍率(像の高さ)は1〜2を満足させることが好適である。受信側の光ファイバアレイ20に対する結像関係を縮小光学系に形成することができる。縮小光学系の横倍率(像の高さ)としては、0.5〜1を満足させることが好適である。
【0076】
(第5の実施の形態の効果)
上記第5の実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
(イ)ピッチを小さくすることで材料費や加工費を低減することができるようになり、チップサイズの小さい光素子アレイ10,40を使用することができるようになる。
(ロ)結合損失の増加(結合効率の低下)を防止することを可能とした光並列伝送モジュール100によって、複数の光素子アレイ10,40がユニット化された光並列伝送システムをも得ることができる。
【0077】
なお、本発明に係わる光並列伝送モジュール及び光並列伝送システムは、上記各実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、その発明の趣旨を逸脱しない範囲内で様々な設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係わる光並列伝送モジュール及び光並列伝送システムは、ホームネットワークやLANなどの短距離光通信、大中距離光通信、高速通信(ギガビット)などの各種の光通信機器や光通信システムに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態である単一のレンズを用いた送信側の光並列伝送モジュールの一構成例を概略的に示す断面図である。
【図2】光並列伝送モジュールの光出射側のパッケージを概略的に示す平面図である。
【図3】光並列伝送モジュールの光結合状態を示す模式図である。
【図4】(a)は、本発明の第2の実施の形態である送信側の光並列伝送モジュールの構成を概略的に示す断面図、(b)は、光並列伝送モジュールの光出射側のパッケージを概略的に示す平面図、(c)は、図4(a)のIVa−IVa線の矢視断面図である。
【図5】部分加工球レンズ32の作製方法を説明するための概略説明図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態である送信側の光並列伝送モジュールの構成を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態である受信側の光並列伝送モジュールの構成を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態である光並列伝送システムの構成を概略的に示す概略説明図である。
【図9】(a)、(b)はぞれぞれ図8に示す送信側の光並列伝送モジュール1と受信側の光並列伝送モジュール2との光結合状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0080】
1 送信側の光並列伝送モジュール
2 受信側の光並列伝送モジュール
3 密閉空間
10 VCSELアレイ
11 カンパッケージ
12 金属ステム
13 金属キャップ
13a 開口部
13b 開口窓部
14 リードピン
15 カバーガラス
16 セラミックパッケージ
17,44 電極
18 モニタPD
19,42 サブマウント
20 光ファイバアレイ
21 光ファイバコネクタ
21a ガイドピン
30 球レンズ
31 鏡筒
31a,31b 円形開口部
31c ガイド孔
32 部分加工球レンズ
32a 平面部
40 PDアレイ
41 PDパッケージ
43 駆動用IC
100 光並列伝送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子アレイと、
光ファイバアレイと、
前記光素子アレイの各素子に共通に設けられ、前記光素子アレイと前記光ファイバアレイとを光学的に結合するレンズとを備えたことを特徴とする光並列伝送モジュール。
【請求項2】
前記光素子アレイは、密閉容器に収容され、
前記レンズは、前記密閉容器に嵌合する鏡筒内に保持されてなることを特徴とする請求項1に記載の光並列伝送モジュール。
【請求項3】
前記鏡筒は、前記光ファイバアレイを保持するコネクタを位置決めする位置決め部を有してなることを特徴とする請求項2に記載の光並列伝送モジュール。
【請求項4】
前記光素子アレイと前記光ファイバアレイは、結像関係となるように保持されてなることを特徴とする請求項1に記載の光並列伝送モジュール。
【請求項5】
上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の光並列伝送モジュールを送受信器として用いてなることを特徴とする光並列伝送システム。
【請求項6】
前記光素子アレイは、発光素子アレイであり、前記光ファイバアレイに対する結像関係を拡大光学系とした構成を有し、
前記光素子アレイは、受光素子アレイであり、前記光ファイバアレイに対する結像関係を縮小光学系とした構成を有してなることを特徴とする請求項5に記載の光並列伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−304267(P2007−304267A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131468(P2006−131468)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】