説明

光送受信装置

【課題】小型化、低コスト化を実現することが可能な光送受信装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、光ファイバ20から出射される受信光を受光する第1のフォトダイオード16と、第1のフォトダイオード16の受光面42aと同一面を形成する受光面42bを有する第2のフォトダイオード17と、第1のフォトダイオード16と第2のフォトダイオード17とに向かって、光ファイバ20に入射される送信光を出射するレーザダイオード14と、第1のフォトダイオード16の受光面42a上に設けられ、レーザダイオード14が出射する送信光の一部を光ファイバ20に向かって反射させ、且つ光ファイバ20から出射される受信光を透過する薄膜18と、を具備し、第2のフォトダイオード17は、レーザダイオード14が出射する送信光の他の一部を受光する光送受信装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一心双方向型光通信に用いられる光送受信装置の開発が盛んに行われており、例えば、BIDI(bi-directional)型光送受信モジュールが知られている。BIDI型光送受信型モジュールは、送信用TO−CANと、受信用TO−CANと、波長分岐フィルタとが個別に筐体に搭載された構造をしている。このため、BIDI型光送受信モジュールは部品点数が多い。
【0003】
BIDI型光送受信モジュールに対して、部品点数を削減した光送受信モジュールとして、レーザダイオードと、フォトダイオードと、波長分岐フィルタとを1つのTO−CANに搭載した光送受信モジュールが知られている(例えば、非特許文献1)。この構造の光送受信モジュールによれば、BIDI型光送受信モジュールでは2個必要としたTO−CANおよびレンズを1個に削減できる。
【0004】
また、レーザダイオードは温度特性を有するため、温度が変化した場合でもレーザダイオードの光出力が一定になるよう、レーザダイオードが出射する光の一部をモニタ用フォトダイオードで受光し、駆動電流にフィードバックをかける方法が知られている。例えば、非特許文献1に係る光送受信モジュールのように、光ファイバから出射される受信光を受光するフォトダイオードの他に、レーザダイオードの背面側にレーザダイオードの光出力をモニタリングするためのモニタ用フォトダイオードを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“新しい送信/受信集積実装技術を用いて開発した一心双方向小型光通信モジュール(TO−BOSA)”、2007年12月12日、日本電信電話株式会社、[平成22年3月25日検索]、インターネット<URL http://www.phlab.ecl.ntt.co.jp/theme/2007/2007_13_02.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に係る光送受信モジュールは、レーザダイオードとフォトダイオードの他に、波長分岐フィルタやモニタ用フォトダイオードを備えている。波長分岐フィルタは、レーザダイオードの前面側且つフォトダイオードの上方側に配置され、モニタ用フォトダイオードは、レーザダイオードの背面側に配置されている。このような波長分岐フィルタやモニタ用フォトダイオードを備えると、これらを搭載するための領域が必要となり、また部品点数も増加する。したがって、非特許文献1に係る光送受信モジュールでは、小型化、低コスト化を図ることが難しい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、小型化、低コスト化を実現することが可能な光送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光ファイバから出射される受信光を受光する第1のフォトダイオードと、前記第1のフォトダイオードの受光面と同一面を形成する受光面を有する第2のフォトダイオードと、前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードとに向かって、前記光ファイバに入射される送信光を出射するレーザダイオードと、前記第1のフォトダイオードの受光面上に設けられ、前記レーザダイオードが出射する前記送信光の一部を前記光ファイバに向かって反射させ、且つ前記光ファイバから出射される前記受信光を透過する薄膜と、を具備し、前記第2のフォトダイオードは、前記レーザダイオードが出射する前記送信光の他の一部を受光することを特徴とする光送受信装置である。本発明によれば、一心双方向型光通信が可能であると共に、レーザダイオードの光出力のモニタリングが可能な光送受信装置の、小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0009】
上記構成において、前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードとは同じ基板上に形成されている構成とすることができる。この構成によれば、第1のフォトダイオードと第2のフォトダイオードとを同時に製造することができるため、より低コスト化を実現することができる。
【0010】
上記構成において、前記第1のフォトダイオードの受光面上に設けられた前記薄膜は、前記レーザダイオードが出射する前記送信光の光軸上に配置されている構成とすることができる。この構成によれば、レーザダイオードが出射する送信光の大部分を薄膜で反射させて光ファイバに入射させることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1のフォトダイオードは、前記光ファイバの光軸上に配置されている構成とすることができる。この構成によれば、光ファイバから出射される受信光を第1のフォトダイオードで効率よく受光することができる。
【0012】
上記構成において、前記薄膜で反射される前記送信光の光軸と前記光ファイバの光軸とは一致する構成とすることができる。この構成によれば、レーザダイオードが出射する送信光を光ファイバに効率よく入射させることができる。
【0013】
上記構成において、前記レーザダイオードは、前記光ファイバの光軸に対して垂直な面上に設けられていて、前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードとは、前記光ファイバの光軸に対して斜めに傾いた面上に設けられている構成とすることができる。この構成によれば、レーザダイオード、第1のフォトダイオード、第2のフォトダイオードの実装を容易に行なうことができる。
【0014】
上記構成において、前記レーザダイオードが出射する前記送信光の光軸と前記光ファイバから出射される前記受信光の光軸とが鋭角に交わる構成とすることができる。この構成によれば、光ファイバから出射される受信光の第1のフォトダイオードによる受光効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一心双方向型光通信が可能であると共に、LDの光出力のモニタリングが可能な光送受信装置の、小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は、実施例1に係る光送受信装置の上面模式図の例であり、図1(b)は、図1(a)のA−A間の断面模式図の例である。
【図2】図2は、第1のフォトダイオードおよび第2のフォトダイオードの上面模式図の例である。
【図3】図3(a)は、送信光の光強度分布の例であり、図3(b)は、受信光の光強度分布の例である。図3(c)は、第2のフォトダイオードの受光面に入射する送信光の光強度分布の例である。
【図4】図4(a)は、第1のフォトダイオードと第2のフォトダイオードとの上面模式図の例であり、図4(b)は、図4(a)のA−A間の断面模式図の例である。
【図5】図5は、第1のフォトダイオードの受光面に設けられた薄膜の光学特性を説明するシミュレーション結果である。
【図6】図6は、実施例1に係る光送受信装置による送受信光の伝搬を説明する概念図の例である。
【図7】図7(a)は実施例2に係る光送受信装置の上面模式図の例であり、図7(b)は、図7(a)のA−A間の断面模式図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る光送受信装置の実施例としてCANパッケージを採用した光送受信装置について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1(a)は実施例1に係る光送受信装置100の上面模式図の例であり、図1(b)は図1(a)のA−A間の断面模式図の例である。なお、図1(a)は、薄膜18、キャップ24、ガラスボールレンズ22、および封止ガラス46を透視した上面模式図である。図1(a)および図1(b)のように、光送受信装置100は、主として、ステム12と、レーザダイオード(以下、LDと称す)14と、第1のフォトダイオード(以下、第1PDと称す)16と、第2のフォトダイオード(以下、第2PDと称す)17と、薄膜18と、ガラスボールレンズ22と、キャップ24と、から構成される。
【0019】
ステム12は、例えば普通鋼(SPCC)のような鉄系の合金で形成され、円柱形状をした基部26と、基部26の基準面28で垂直方向に突出した突起部30と、を有する。基準面28は、光ファイバ20の光軸に対して垂直な面であり、この面を基準に、LD14、第1PD16、およびガラスボールレンズ22までの距離などを設定する。突起部30の先端には、基準面28に対して平行な面(以下、第1実装面32と称す)と斜めに傾いた面(以下、第2実装面34と称す)とを有する。第2実装面34は、第1実装面32に対して、例えば45°の傾きを有する。ステム12には、リードピン36が、例えばガラスなどの絶縁物38を介して固定され取り付けられている。リードピン36は、例えば4本設けられていて、その内の1本はワイヤ39によりLD14に接続され、他の2本は夫々第1PD16と第2PD17とに夫々接続され、残りの1本はグランドに接続されている。なお、図1(a)においては、グランドに接続されたリードピンについての図示は省略している。また、リードピン36の本数は、4本に限られるわけではなく、5本など、他の本数の場合でもよい。
【0020】
LD14は、例えば窒化アルミニウム(AlN)で形成されたヒートシンク40上にマウントされている。LD14がマウントされたヒートシンク40は、突起部30の先端の第1実装面32に実装されている。第1PD16および第2PD17は、突起部30の先端の第2実装面34に実装されている。これにより、第1PD16の受光面42aと第2PD17の受光面42bとは、LD14の光軸に対して45°傾いて配置される。第1PD16上には、受光面42aを含むように薄膜18がコーティングされている。
【0021】
LD14は、例えば量子井戸レーザである。LD14は、第1PD16および第2PD17に向かって送信光を出射する。LD14が出射する送信光の一部は、第1PD16上にコーティングされた薄膜18で光ファイバ20側に反射される。薄膜18で反射された送信光は、ガラスボールレンズ22で集光され、光ファイバ20に入射する。LD14が出射する送信光の他の一部は、第2PD17の受光面42bに入射する。また、光ファイバ20から出射される受信光は、ガラスボールレンズ22で集光され、薄膜18を透過して、第1PD16の受光面42aに入射する。このように、薄膜18は、LD14が出射する送信光に対しては高反射膜として機能し、光ファイバ20から出射される受信光に対しては低反射膜として機能する。
【0022】
ここで、図2を用いて、第1PD16および第2PD17について説明する。図2は、第1PD16および第2PD17の上面模式図の例である。図2のように、第1PD16と第2PD17とは隣り合って配置され、第1PD16の受光面42aと第2PD17の受光面42bとは同一面を形成している。第1PD16上には、受光面42aを含むように薄膜18が設けられている。一方、第2PD17上には薄膜18は設けられていない。例えば、第1PD16は、500μm×350μmの長方形であり、第2PD17は、500μm×150μmの長方形である。
【0023】
次に、図3(a)および図3(b)を用いて、第1PD16および第2PD17に入射する際の送信光と受信光との光強度分布について説明する。図3(a)は、図2のA−A間における送信光の光強度分布の例であり、図3(b)は、図2のA−A間における受信光の光強度分布の例である。また、図3(c)は、第2PD17の受光面42bに入射する送信光の光強度分布の例である。図3(a)から図3(c)の横軸はA−A間の中心を0とした場合の中心からの距離(mm)であり、縦軸は相対強度である。つまり、横軸が−0.1mmから0.25mmの間は第1PD16であり、−0.25mmから−0.1mmの間は第2PD17である。
【0024】
図3(a)のように、LD14が出射する送信光は、第1PD16および第2PD17に亘り広範囲の領域に入射する。これは、LD14が出射する送信光は、ある程度の大きさの拡がり角を有するためである。例えば、LD14が出射する送信光は、半値全角で垂直方向が40°水平方向が20°の拡がり角を有する。
【0025】
一方、図3(b)のように、光ファイバ20から出射される受信光は、第1PD16に局所的に入射する。これは、光ファイバ20から出射される受信光はNA(開口数)が小さいためである。例えば、光ファイバ20から出射される受信光のNAは0.16である。
【0026】
前述したように、薄膜18は、LD14が出射する送信光に対しては高反射膜として機能し、光ファイバ20から出射される受信光に対しては低反射膜として機能する。このため、図2に示すように、第1PD16上に受光面42aを含むように薄膜18を設けることで、光ファイバ20から出射される受信光は薄膜18を透過して第1PD16の受光面42aで受光でき、LD14が出射する送信光の一部は、薄膜18で光ファイバ20側に反射させることができる。
【0027】
また、第2PD17上には薄膜18が設けられていないため、LD14が出射する送信光の他の一部は、第2PD17の受光面42bに入射する(図3(c)参照)。このため、第2PD17の受光面42bで、LD14が出射する送信光の他の一部を受光できる。第2PD17の受光面42bに入射する送信光は、ファーフィールド領域のものであるため、仮に、第2PD17上に薄膜18が設けられていたとしても、薄膜18で反射されて光ファイバ20に入射され得るものではない。したがって、第2PD17上に薄膜18を設けずに、受光面42bで送信光の一部を受光したとしても、送信時の結合効率の低下を招くものではない。
【0028】
このように、第1PD16の受光面42aと第2PD17の受光面42bとが同一面を形成するように隣り合って配置され、受光面42a上には薄膜18を設け、受光面42b上には薄膜18を設けない構造とすることで、送信光の一部を光ファイバ20に入射させ、送信光の他の一部を第2PD17の受光面42bで受光でき、かつ受信光を第1PD16の受光面42aで受光できる。このような効果を容易に得るために、第1PD16の受光面42aと第2PD17の受光面42bとは、LD14が出射する送信光のFFP(Far Field Pattern)における幅広方向に隣り合って配置されている場合が好ましい。
【0029】
図1(a)および図1(b)に戻り、第1PD16の受光面42aは、光ファイバ20の光軸上に配置され且つLD14が出射する送信光の光軸上に配置されている。即ち、第1PD16の受光面42a上に設けられた薄膜18は、LD14が出射する送信光の光軸上に配置されていることとなる。薄膜18で反射される送信光の光軸と光ファイバ20の光軸とは一致している。これにより、LD14が出射する送信光を光ファイバ20に効率よく入射させることができる。また、光ファイバ20から出射される受信光を効率よく第1PD16で受光することができる。なおこの場合、薄膜18で反射される送信光の光軸と光ファイバ20から出射される受信光の光軸とが一致することにもなる。
【0030】
キャップ24は、例えば金属製であり、円筒形状をしている。キャップ24の上面44には、孔部が設けられていて、孔部にガラスボールレンズ22が嵌め込まれている。キャップ24の上面44には、ガラスボールレンズ22の周囲で孔部を覆うように封止ガラス46が設けられており、封止ガラス46とガラスボールレンズ22により孔部がシールされている。これにより、キャップ24の下部48をステム12に溶接固定することで、LD14、第1PD16および第2PD17をキャップ24で密閉し、封止することができる。キャップ24内部は大気が充満している場合でもよいが、LD14、第1PD16および第2PD17の劣化を抑制するなどの目的から窒素ガスが充満している場合が好ましい。
【0031】
ここで、実施例1に係る光送受信装置100がFTTH(Fiber To The Home)システムに用いられる場合を想定する。FTTHでは、一般的に上りは1.31μmの波長帯域を、下りは1.49μmの波長帯域を用いることから、光送受信装置100が有するLD14は、1.31μm波長帯の送信光を出射し、第1PD16は、光ファイバ20から出射される1.49μm波長帯の受信光を受光し、第2PD17は、LD14が出射する1.31μm波長帯の送信光を受光する。したがって、第1PD16上にコーティングされる薄膜18は、1.31μm波長帯の光を反射し、且つ、1.49μm波長帯の光を透過する光学特性を有することが求められる。
【0032】
1.31μm波長帯の送信光を出射するLD14は、例えば、n型InP層からなる下部クラッド層と、InGaAsP−MQW(Multiple Quantum Wells)層からなる活性層と、p型InP層からなる上部クラッド層と、を含む量子井戸レーザを用いることができる。
【0033】
次に、1.49μm波長帯の受信光を受光し、受光面42aを含むように薄膜18がコーティングされた第1PD16と、1.31μm波長帯の送信光を受光する第2PD17と、を説明する。図4(a)は、第1PD16と第2PD17との上面模式図の例であり、図4(b)は、図4(a)のA−A間の断面模式図の例である。
【0034】
図4(a)のように、第1PD16用のアノード電極76と第2PD17用のアノード電極80とは共に第1PD16上に設けられている。第1PD16用のアノード電極76は配線78を介して、第1PD16の受光面42aに接続している。第2PD17用のアノード電極80は配線79を介して、第2PD17の受光面42bに接続している。アノード電極76には、例えばワイヤを介して、トランスインピーダンスアンプ(TIA)が接続されている。トランスインピーダンスアンプは、第1PD16が光ファイバ20から出射される受信光を受光することにより発生する電流を電圧に変換する。アノード電極80には、例えばワイヤを介して、APC(Auto Power Control)回路が接続されている。APC回路は、LD14の光出力を一定に保つために、検出した光出力に基づいてLD14の駆動電流にフィードバックをかける。
【0035】
図4(b)のように、第1PD16と第2PD17とは同じ基板56上に形成されている。基板56は、例えばn型InP基板である。基板56上には、n型InPバッファ層58とn型InGaAs層60とが順次形成されている。基板56の裏面にはカソード電極77が設けられている。n型InPバッファ層58、n型InGaAs層60、およびカソード電極77は、第1PD16と第2PD17とで共通である。
【0036】
第1PD16において、n型InGaAs層60上に、n型InPにp型キャリアを導入したp型領域64が形成され、n型InGaAs層60とp型領域64との間にはpn接合66が形成される。p型領域64の周囲には拡散遮断領域68が形成されている。受光面42aであるp型領域64上面を覆うように、多層膜である薄膜18がコーティングされている。
【0037】
第2PD17において、n型InGaAs層60上に、n型InPにp型キャリアを導入したp型領域64が形成され、n型InGaAs層60とp型領域64との間にはpn接合66が形成される。p型領域64の周囲には拡散遮断領域68が形成されている。拡散遮断領域68により、第1PD16と第2PD17との分離が図られている。受光面42bであるp型領域64上面には薄膜18は設けられていない。
【0038】
第1PD16と第2PD17とは、同一工程で同時に製造される。このため、第1PD16のp型領域64上面と第2PD17のp型領域64上面とは同一平面を形成する。したがって、第1PD16の受光面42aと第2PD17の受光面42bとは同一平面を形成することになる。
【0039】
表1は、多層膜である薄膜18の構造の例であり、多層膜それぞれの層の材料、膜厚、および屈折率を示している。表1のように、薄膜18は、例えば酸化アルミニウム層(Al層)上にシリコン層(Si層)と酸化シリコン層(SiO層)とが繰り返し設けられた構造をしている。具体的には、膜厚58.0nmで屈折率1.58の酸化アルミニウム層上に、膜厚53.5nmで屈折率3.56のシリコン層、膜厚348.0nmで屈折率1.45の酸化シリコン層、膜厚36.9nmで屈折率3.56のシリコン層、膜厚182.3nmで屈折率1.45の酸化シリコン層が順次積層されている。その上にはさらに、膜厚73.7nmで屈折率3.56のシリコン層と膜厚182.3nmで屈折率1.45の酸化シリコン層とが5回繰り返して形成されている。最上層には、膜厚36.9nmで屈折率3.56のシリコン層が形成されている。
【表1】

【0040】
図5は、屈折率3.42のGaAs基板上に、表1に示す構造の薄膜18を形成し、薄膜18に対して45°の入射角で光を入射させた場合における薄膜18の反射特性、透過特性、および損失特性を計算したシミュレーション結果である。図5の横軸は薄膜18に入射する光の波長(nm)を、縦軸は薄膜18による光の反射率(%)・透過率(%)・損失率(%)を表している。図5のように、薄膜18の反射特性と透過特性とは波長に依存している。薄膜18は、1300nm波長帯の光に対しては高反射率で反射する高反射膜として機能し、1500nm波長帯の光に対してはほとんど反射せずに高透過率で透過する低反射膜として機能する。損失特性に関しては、1150nmから1650nmの波長帯において0%である。このように、表1に示した構造の薄膜18は、LD14が出射する1.31μm波長帯の送信光に対して高反射膜として機能し、光ファイバ20から出射される1.49μm波長帯の受信光に対して低反射膜として機能する。
【0041】
図6は、実施例1に係る光送受信装置100をFTTHシステムに用いた場合の光の送受信について説明する概念図の例である。なお、図を明瞭にする目的から、送信光の光軸と受信光の光軸とをずらして図示しているが、実際は、送信光の光軸と受信光の光軸とは一致している。実施例1に係る光送受信装置100に、1.31μmの波長の送信光を出射するLD14と、1.49μmの波長の受信光を受光する第1PD16と、1.31μmの波長の送信光を受光する第2PD17と、第1PD16の受光面42a上に表1に示す構造の薄膜18と、を用いる。図6のように、LD14が出射する1.31μm波長帯の送信光の一部は、第1PD16上にコーティングされた薄膜18で反射され、ガラスボールレンズ22で集光された後、光ファイバ20に入射する。また、LD14が出射する1.31μm波長帯の送信光の他の一部は、第2PD17の受光面42bに入射する。一方、光ファイバ20から出射される1.49μm波長帯の受信光は、ガラスボールレンズ22で集光され、薄膜18を透過して第1PD16の受光面42aに入射する。
【0042】
以上説明してきたように、実施例1に係る光送受信装置100によれば、図1および図6のように、LD14は、第1PD16の受光面42aと第2PD17の受光面42bとに向かって送信光を出射する。第1PD16の受光面42a上には、薄膜18が設けられている。薄膜18は、LD14が出射する送信光に対して高反射膜として機能する。このため、薄膜18は、LD14が出射する送信光の一部を光ファイバ20に向かって反射させる。また、薄膜18は、光ファイバ20から出射される受信光に対しては低反射膜として機能する。このため、薄膜18は、光ファイバ20から出射される受信光を透過する。これにより、LD14が出射する送信光の一部を光ファイバ20に入射させ、光ファイバ20から出射される受信光を第1PD16で受光できる。よって、波長分岐フィルタを別途個別に搭載することなく、一心双方向型光通信が可能となる。
【0043】
また、第2PD17の受光面42bは、第1PD16の受光面42aと同一面を形成している。そして、第2PD17の受光面42bには薄膜18は設けられていない。このため、図3(c)で説明したように、第2PD17は、LD14が出射する送信光の一部を受光することができる。これにより、第2PD17は、LD14の光出力をモニタリングすることが可能となる。また、第2PD17の受光面42bが第1PD16の受光面42aと同一面を形成していることにより、LD14が送信光を出射する方向に第1PD16と第2PD17とを設けることができ、非特許文献1に記載された構造に比べて、小型化を図ることができる。
【0044】
このように、実施例1に係る光送受信装置100によれば、一心双方向型光通信が可能であると共に、LDの光出力のモニタリングが可能な光送受信装置の、小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0045】
また、図4(b)で示したように、第1PD16と第2PD17とは同じ基板56上に形成されている。これにより、第1PD16と第2PD17とを同時に製造することができるため、より低コスト化を実現することができる。
【0046】
図1および図6のように、第1PD16の受光面42aに設けられた薄膜18は、LD14が出射する送信光の光軸上に配置されていることが好ましい。これにより、LD14が出射する送信光の大部分を薄膜18で反射させて光ファイバ20に入射させることができる。
【0047】
図1および図6のように、第1PD16は、光ファイバ20の光軸上に配置されている場合が好ましい。これにより、光ファイバ20から出射される受信光を第1PD16で効率よく受光することができる。また、薄膜18で反射された送信光の光軸と光ファイバ20の光軸とは一致している場合が好ましい。これにより、LD14が出射する送信光を光ファイバ20に効率よく入射させることができる。
【0048】
図1のように、LD14は、光ファイバ20の光軸に対して垂直な面である第1実装面32上に設けられていて、第1PD16と第2PD17とは、光ファイバ20の光軸に対して斜めに傾いた面である第2実装面34上に設けられている。LD14を光ファイバ20の光軸に垂直な第1実装面32上に実装し、第1PD16と第2PD17とを光ファイバ20の光軸に対して斜めに傾いた第2実装面34上に実装することは、後述する実施例2のようにLD14と第1PD16および第2PD17とを光ファイバ20の光軸に対して斜めに傾いた面に実装する場合に比べて容易に実装できる。また、基準面28と第1実装面32とは互いに平行であり、第2実装面34だけが斜めに傾いている構造のステム12は、後述する実施例2の場合に比べて容易に製造することができる。
【0049】
実施例1において、薄膜18は、表1に示すような構造の酸化アルミニウム層とシリコン層と酸化シリコン層との多層膜である場合を例に示したが、これに限られるわけではない。LD14が出射する送信光を反射し、光ファイバ20から出射される受信光を透過する性質を有する薄膜であれば、その他の膜構造や材料からなる場合でもよい。特に、実施例1に係る光送受信装置100をFTTHシステムに用いる場合、薄膜18は、LD14が出射する1.31μmの波長帯の送信光を反射し、光ファイバ20から出射される1.49μmの波長帯の受信光を透過する光学特性を有する場合が好ましい。また、FTTHシステムでは、上りに1.31μmの波長帯を、下りに1.55μmの波長帯を用いる場合や、上りに1.49μmまたは1.55μmの波長帯を、下りに1.31μmの波長帯を用いる場合もある。したがって、薄膜18は、1.31μmの波長帯の送信光を反射し、1.55μmの波長帯の受信光を透過する光学特性を有する場合や、1.49μmまたは1.55μmの波長帯の送信光を反射し、1.31μmの波長帯の受信光を透過する光学特性を有する場合でもよい。
【0050】
LD14の光出力をモニタリングするために、第2PD17は、LD14が出射する送信光の総出力に対して5%程度の光出力を受光する場合が好ましい。したがって、LD14が出射する送信光のうち5%程度の光量が第2PD17に入射されるように、LD14が出射する光軸に対して第1PD16および第2PD17の位置が定まっている場合が好ましい。
【0051】
LD14は量子井戸レーザである場合を例に示したが、例えば量子ドットレーザなどの他の半導体レーザである場合でもよい。また、DFB(Distributed Feedback)型レーザであってもファブリペロ型レーザであってもよい。
【0052】
第2PD17上には受光面42bを含むように例えば保護膜が設けられている場合が好ましい。保護膜は、第2PD17でLD14が出射する送信光を受光できるように、LD14が出射する送信光に対して低反射膜となる光学特性を有する場合が好ましい。
【0053】
第2実装面34が第1実装面32に対して45°傾いていることで、第1PD16の受光面42aがLD14の光軸に対して45°傾いている場合を例に示した。この場合は、受光面42aにコーティングされた薄膜18で反射される送信光の光軸と光ファイバ20の光軸とを一致させることができ、LD14が出射する送信光を光ファイバ20に効率よく入射させることができる。しかしながら、傾きは45°の場合に限られず、LD14が出射する送信光が薄膜18で反射して光ファイバ20に入射される範囲内でその他の傾きを有する場合でもよい。例えば30°から60°の範囲内の傾きを有する場合でもよい。
【実施例2】
【0054】
図7(a)は実施例2に係る光送受信装置200の上面模式図の例であり、図7(b)は図7(a)のA−A間の断面模式図の例である。なお、図7(a)は、薄膜18、キャップ24、ガラスボールレンズ22、および封止ガラス46を透視した上面模式図である。図7(a)および図7(b)のように、ステム12が有する突起部30の先端は、くの字型になっており、基準面28に対して斜めに傾いた面である第3実装面82と第4実装面84とを有する。つまり、第3実装面82と第4実装面84とは、光ファイバ20の光軸に対して斜めに傾いた面である。第3実装面82と第4実装面84とは共に、基準面28に対して、例えば、30°の傾きを有する。
【0055】
LD14がマウントされたヒートシンク40は、突起部30の先端の第3実装面82に実装されている。これにより、LD14が出射する送信光の光軸と光ファイバ20から出射された受信光の光軸とが交わる角θは60°と鋭角になる。第1PD16および第2PD17は、突起部30の第4実装面84に実装されている。これにより、第1PD16の受光面42aおよび第2PD17の受光面42bは、LD14の光軸に対して斜めに配置されている。その他の構成については、実施例1と同じであり、図1に示しているので、ここでは説明を省略する。
【0056】
このように、実施例2に係る光送受信装置200によれば、図7(a)および図7(b)のように、LD14は、光ファイバ20の光軸に対して斜めに傾いた面である第3実装面82上に設けられていて、LD14が出射する送信光の光軸と光ファイバ20から出射される受信光の光軸とは鋭角に交わっている。これにより、実施例1に比べて、第1PD16の受光面42aは光ファイバ20の光軸に対して垂直に近づくことになる。よって、光ファイバ20から出射される受信光は、第1PD16の受光面42a上に設けられた薄膜18を透過しやすくなり、受光面42aに入射される受信光の強度が大きくなる。つまり、第1PD16による受信光の受光効率が向上する。
【0057】
実施例2において、第3実装面82と第4実装面84とが、基準面28に対して30°傾いている場合を例に示したが、この場合に限られるわけではない。LD14が出射する送信光が薄膜18で反射して光ファイバ20に入射される範囲内でその他の傾きを有する場合でもよい。特に、薄膜18で反射される送信光の光軸と光ファイバ20の光軸とを一致させる場合、基準面28に対する第3実装面82の角度が大きくなり、LD14が出射する送信光の光軸と光ファイバ20から出射される受信光の光軸とのなす角θが小さくなる程、基準面28に対する第4実装面84の角度を小さくし、第1PD16の受光面42aを光ファイバ20の光軸に対して垂直に近づける必要がある。この場合、第1PD16による受信光の受光効率は向上する。したがって、基準面28に対する第3実装面82の傾きは大きく、第4実装面84の傾きは小さい場合が好ましい。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
12 ステム
14 レーザダイオード
16 第1のフォトダイオード
17 第2のフォトダイオード
18 薄膜
20 光ファイバ
22 ガラスボールレンズ
24 キャップ
26 基部
28 基準面
30 突起部
32 第1実装面
34 第2実装面
40 ヒートシンク
42a 受光面
42b 受光面
82 第3実装面
84 第4実装面
100 光送受信装置
200 光送受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバから出射される受信光を受光する第1のフォトダイオードと、
前記第1のフォトダイオードの受光面と同一面を形成する受光面を有する第2のフォトダイオードと、
前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードとに向かって、前記光ファイバに入射される送信光を出射するレーザダイオードと、
前記第1のフォトダイオードの受光面上に設けられ、前記レーザダイオードが出射する前記送信光の一部を前記光ファイバに向かって反射させ、且つ前記光ファイバから出射される前記受信光を透過する薄膜と、を具備し、
前記第2のフォトダイオードは、前記レーザダイオードが出射する前記送信光の他の一部を受光することを特徴とする光送受信装置。
【請求項2】
前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードとは同じ基板上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の光送受信装置。
【請求項3】
前記第1のフォトダイオードの受光面上に設けられた前記薄膜は、前記レーザダイオードが出射する前記送信光の光軸上に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の光送受信装置。
【請求項4】
前記第1のフォトダイオードは、前記光ファイバの光軸上に配置されていることを特徴とする請求項3記載の光送受信装置。
【請求項5】
前記薄膜で反射される前記送信光の光軸と前記光ファイバの光軸とは一致することを特徴とする請求項4記載の光送受信装置。
【請求項6】
前記レーザダイオードは、前記光ファイバの光軸に対して垂直な面上に設けられていて、前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードとは、前記光ファイバの光軸に対して斜めに傾いた面上に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の光送受信装置。
【請求項7】
前記レーザダイオードが出射する前記送信光の光軸と前記光ファイバから出射される前記受信光の光軸とが鋭角に交わることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の光送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−221249(P2011−221249A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89746(P2010−89746)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(506423051)株式会社QDレーザ (26)
【Fターム(参考)】