説明

光配線部品及び光電気複合モジュール

【課題】熱歪による不具合を低減して信頼性を高めることができ、長寿命化を図ることが可能な光配線部品及び光電気複合モジュールを提供する。
【解決手段】ガラスファイバ15が挿入される光ファイバ挿通孔14を有し、ガラスファイバ15の挿入方向前方側の固定面12aに電極13が設けられたフェルール12と、光ファイバ挿通孔14へ挿入されたガラスファイバ15と、電極13と導通接続された状態にフェルール12の固定面12aに取り付けられた受発光素子16とを備え、ガラスファイバ15は、受発光素子16に対向する端面以外の箇所でフェルール12に接着剤25で接着されて固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送等に用いられる光配線部品及び光電気複合モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
LSI間信号の高速化に伴い、電気による伝送ではノイズ、消費電力増加を解消することが困難となってきている。そこで、近年、LSI間を、電磁障害や周波数依存性損失が殆どない光通信で伝送する試みがなされている。
この光伝送に用いられる光配線部品として、光ファイバ等の光導波体と、該光導波体の光入出力端が素子搭載面から少なくとも一部突出するように該光導波体を保持し位置決めするフェルールと、このフェルールの少なくとも素子搭載面に設けられた電気配線と、前記フェルールの素子搭載面に搭載され且つ前記電気配線に電気接続された面型光素子とを具備したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−59867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなフェルールを用いた光配線部品の作製においては、光ファイバの固定および面型光素子である受発光素子とフェルールの接合強度を向上させるため、アンダーフィル材と呼ばれる樹脂からなる接着剤が使用され、この接着剤を硬化させるために100℃〜150℃程度の熱処理が行われる。また、受発光素子に電力を供給するために、受発光素子とドライバICとを金ワイヤーで接続するが、そのワイヤー保護のためにポッティング材と呼ばれる樹脂でワイヤー周辺が樹脂封止される。
【0005】
ところが、受発光素子と接着剤の熱膨張係数は1〜2桁程度も異なるため、熱処理後の降温時に大きな熱歪(応力)が発生する。すると、その熱歪により、受発光素子とフェルールの電気配線であるリードフレームを接続しているバンプが外れて断線が生じるおそれがある。また、受発光素子にかかる熱歪により受発光素子の寿命が短くなるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、熱歪による不具合を低減して信頼性を高めることができ、長寿命化を図ることが可能な光配線部品及び光電気複合モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の光配線部品は、光ファイバが挿入される光ファイバ挿通孔を有し、前記光ファイバの挿入方向前方側の固定面に電極が設けられたフェルールと、
前記光ファイバ挿通孔へ挿入された光ファイバと、
前記電極と導通接続された状態に前記フェルールの前記固定面に取り付けられた受発光素子とを備え、
前記光ファイバは、前記受発光素子に対向する端面以外の箇所で前記フェルールに接着剤で接着されて固定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の光電気複合モジュールは、上記の光配線部品が回路基板に固定され、前記フェルールの前記電極が前記回路基板に固定された電子デバイスに導通されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の光電気複合モジュールは、光ファイバが挿入される光ファイバ挿通孔を有し、前記光ファイバの挿入方向前方側の固定面に電極が設けられたフェルールと、前記光ファイバ挿通孔へ挿入された光ファイバと、前記電極と導通接続された状態に前記フェルールの前記固定面に取り付けられた受発光素子とを備えた光配線部品が回路基板に固定され、前記フェルールの前記電極が前記回路基板に固定された電子デバイスに導通され、前記フェルールの固定面側の端部に封止材が充填される光電気複合モジュールであって、
前記封止材の前記受発光素子への付着を阻止する阻止部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の光電気複合モジュールにおいて、前記阻止部は、前記フェルールの前記受発光素子が取り付けられた固定面における前記回路基板と反対側に設けられたひさしを有することが好ましい。
【0011】
本発明の光電気複合モジュールにおいて、前記阻止部は、前記受発光素子の周囲を覆うカバーを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光配線部品及び光電気複合モジュールによれば、受発光素子に対向する端面以外の箇所で光ファイバをフェルールに接着剤で接着して固定した構造であるので、受発光素子に接着剤が付着したものと比較して、接着剤を硬化させるための熱処理後の降温時に、接着剤と受発光素子との線膨張係数の違いから生じる熱歪(応力)をなくすことができる。これにより、熱歪によって受発光素子とフェルールの電極との導通接続箇所での断線や受発光素子の短寿命化を抑制することができ、熱歪による不具合のない信頼性に優れた長寿命な光配線部品及び光電気複合モジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る光配線部品の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る光電気複合モジュールの一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る光電気複合モジュールの製造工程の一実施形態を示す図であって、(a)〜(d)は、それぞれ断面図である。
【図4】ポッティング材が塗布された光電気複合モジュールの断面図である。
【図5】ポッティング材が塗布された光電気複合モジュールの断面図である。
【図6】光電気複合モジュールの通電試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る光配線部品及び光電気複合モジュールの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る光配線部品11は、フェルール12を備えている。このフェルール12は、一方の端面が固定面12aとして形成されており、この固定面12aには、複数の電極13が設けられている。このフェルール12は、例えば、熱可塑性樹脂から形成されたものであり、複数の電極13とともに一体成形されたLFI(Lead Frame Inserted)フェルールである。
【0015】
このフェルール12には、光ファイバ挿通孔14が形成されており、この光ファイバ挿通孔14には、光ファイバ心線の端部から露出されたガラスファイバ(光ファイバ)15が後端側から挿入されている。このガラスファイバ15は、コア15aの外周をクラッド15bによって覆った構造とされている。光ファイバとしては、ガラスファイバの他、クラッドが樹脂のものなども使用できる。
【0016】
受発光素子16は、フェルール12の固定面12aに取り付けられる取り付け面である素子面16aに、素子部17と端子部18とを有している。
この受発光素子16は、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)などの発光素子やフォトダイオード(Photo Diode)などの受光素子である。受発光素子16の素子部17は、受発光素子16が発光素子である場合は発光部であり、受発光素子16が受光素子である場合は受光部である。
【0017】
この受発光素子16は、その端子部18が、フェルール12に設けられた電極13に対して、例えば、金(Au)からなるバンプ21によって導通接続されている。このバンプ21による接続は、超音波振動あるいは熱によって端子部18と電極13とを接続するフリップチップ接続で行われる。
このようにフェルール12に取り付けられた受発光素子16は、その素子部17が、フェルール12の光ファイバ挿通孔14の対向位置に配置されている。
【0018】
また、フェルール12には、後端12b側における一側面に、切欠き部23が形成されている。これにより、光ファイバ挿通孔14が切り欠かれて露出されている。この切欠き部23には、接着剤25が充填されている。この接着剤25は、切欠き部23からガラスファイバ15と光ファイバ挿通孔14との間にも入り込んでおり、この接着剤25によって、光ファイバ挿通孔14に挿入されたガラスファイバ15が接着されて固定されている。
【0019】
この接着剤25は、ガラスファイバ15の受発光素子16に対向する端面には付着されておらず、よって、ガラスファイバ15は、受発光素子16に対向する端面以外の箇所でフェルール12に接着剤25で接着されて固定されている。なお、接着剤25としては、例えば、エポキシ樹脂等が使用されている。
【0020】
図2に示すように、上記構造の光配線部品11は、フェルール12が回路基板32に、例えば、エポキシ樹脂等からなるダイボンド材33によって固定されて光電気複合モジュール30とされている。
【0021】
回路基板32には、電子デバイス31が実装されている。この電子デバイス31は、その端子が、例えば、金(Au)からなるボンディングワイヤ34によってフェルール12の電極13及び回路基板32の回路パターンに導通接続されている。なお、電子デバイス31は、例えば、ドライバ、トランスインピーダンスアンプなどの光素子駆動ICである。
【0022】
上記の光電気複合モジュール11では、受発光素子16とガラスファイバ15との間で光伝送が行われる。
発光素子からなる受発光素子16からガラスファイバ15へ光伝送が行われる場合では、受発光素子16の素子部17から発光された光がガラスファイバ15のコア15aへ入射することとなる。
【0023】
また、ガラスファイバ15から受光素子からなる受発光素子16へ光伝送が行われる場合では、ガラスファイバ15のコア15aから出射した光が受発光素子16の素子部17へ入射することとなる。
【0024】
上記の光配線部品11及び光電気複合モジュール30によれば、受発光素子16に対向する端面以外の箇所でガラスファイバ15をフェルール12に接着剤25で接着して固定した構造であるので、受発光素子16を接着剤25でフェルール12に固定するために受発光素子16に接着剤25を付着させたものと比較して、接着剤25を硬化させるための熱処理後の降温時に、接着剤25と受発光素子16との線膨張係数の違いから生じる熱歪(応力)をなくすことができる。これにより、熱歪によって受発光素子16とフェルール12の電極13とのバンプ21による導通接続箇所での断線や受発光素子16の短寿命化を抑制することができ、熱歪による不具合のない信頼性に優れた長寿命なものとすることができる。
【0025】
そして、上記の光配線部品及び光電気複合モジュールは、例えば、長距離機器配線用の光DVIケーブル、光USBケーブル、携帯電話用光配線、家庭用電化製品のネットワーク用の光HDMI、データサーバ間通信用の光InfiniBandケーブルあるいは車載情報機器通信用の車載用光ハーネスなどの様々なアクティブオプティカルケーブルや光配線部品として用いることができる。
【0026】
上記の光電気複合モジュール30を製造するには、まず、図3(a)に示すように、フェルール12の固定面12aと、金のバンプ21を有する面発光型半導体レーザ(VCSEL)またはフォトダイオードからなる受発光素子16とを用意し、温度200℃で超音波フリップチップにより実装する。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、フェルール12の光ファイバ挿通孔14に、機械的に位置決めするパッシブアライメントで位置決めしながらガラスファイバ15を挿し込むとともに、図3(c)に示すように、切欠き部23に接着剤25を充填し、仮固定用の接着剤でガラスファイバ15を所定位置に仮固定する。このとき、接着剤25の充填量を少なくし、接着剤25がフェルール12内に留まり、受発光素子16の表面に付着しないようにする。
【0028】
次いで、図3(d)に示すように、例えば、エポキシ系樹脂からなるダイボンド材33によってフェルール12を、ガラスエポキシ基板からなる回路基板32上にダイボンドして実装し、ダイボンド材33を硬化させるために、温度120℃で30分間の熱処理を行う。
【0029】
さらに、金からなるボンディングワイヤ34によって電子デバイス31の端子とフェルール12の電極13及び回路基板32の回路パターンとを導通接続させる(図2参照)。
【0030】
最後に、接着剤25を硬化させるために、温度150℃で30分間の熱処理を行う。なお、接着剤25として紫外線硬化型の樹脂を用いた場合は、この接着剤25を硬化させるために、室温で紫外線を照射する。
【0031】
ところで、上記の光電気複合モジュール30では、ボンディングワイヤ34が露出されている構造であるが、ボンディングワイヤ34の保護のため、ボンディングワイヤ34が完全に埋まるようにポッティング材を塗布しても良い。
【0032】
ただし、熱硬化型樹脂からなるポッティング材を塗布した場合、ポッティング材を硬化させるために、温度150℃で30分間の熱処理を行う必要がある。したがって、このポッティング材が受発光素子16に付着していると、ポッティング材を硬化するための熱処理後の降温時に、線膨張係数の違いから受発光素子16に熱歪が生じる恐れがある。
このため、ポッティング材を塗布する場合、受発光素子16にポッティング材が付着しないようにする必要がある。
【0033】
次に、ボンディングワイヤ34を保護すべく、ポッティング材を塗布した光電気複合モジュールについて説明する。
図4に示すように、光電気複合モジュール40では、フェルール12の受発光素子16が取り付けられた固定面12aにおける回路基板32と反対側に、板状のひさし(阻止部)41が設けられている。このひさし41は、フェルール12を成形する際に一体に形成されたものであり、フェルール12の固定面12aから前方側へ延在されている。
【0034】
このひさし41を有する光電気複合モジュール40では、フェルール12の固定面12a側の端部に、上方側からポッティング材(封止材)43が塗布されている。このポッティング材43は、例えば、エポキシ樹脂等からなるもので、高い粘度の樹脂が用いられている。
【0035】
そして、このポッティング材43を上方から塗布すると、ポッティング材43は、ひさし41によってフェルール12の固定面12a側への回り込みが阻止され、フェルール12の固定面12a及びこの固定面12aに固定された受発光素子16への付着が阻止される。
【0036】
このように、この光電気複合モジュール40によれば、受発光素子16へのポッティング材43の付着がひさし41によって阻止されるので、受発光素子16にポッティング材43が付着したものと比較して、ポッティング材43を硬化させるための熱処理後の降温時に、ポッティング材43と受発光素子16との線膨張係数の違いから生じる熱歪(応力)をなくすことができる。これにより、熱歪によって受発光素子16とフェルール12の電極13とのバンプ21による導通接続箇所での断線や受発光素子16の短寿命化を抑制することができ、熱歪による不具合のない信頼性に優れた長寿命なものとすることができる。
【0037】
なお、ひさし41に、受発光素子16の固定面12aと反対側を覆う端面板を設けても良く、このようにすると、フェルール12の固定面12a側へのポッティング材43の回り込みをさらに良好に阻止することができる。
【0038】
また、ひさし41はフェルール12と別体であっても良く、この場合、受発光素子16を固定したフェルール12を回路基板32に実装した後、別体のひさし41を接着して固定すれば良い。
【0039】
また、図5に示す形態の光電気複合モジュール50では、フェルール12の受発光素子16が取り付けられた固定面12aにカバー(阻止部)51が設けられている。このカバー51は、合成樹脂等から形成されたものであり、ボンディングワイヤ34の配線の妨げにならないように、フェルール12の上面よりも下側に装着されている。このカバー51は、受発光素子16の上部を覆う上面板51a、受発光素子16の固定面12aと反対側を覆う端面板51b及び受発光素子16の両側部を覆う側面板(図示略)を有しており、これらの上面板51a、端面板51b及び側面板によって受発光素子16の周囲が覆われている。
【0040】
このカバー51を有する光電気複合モジュール50においても、ポッティング材43を上方から塗布すると、ポッティング材43は、カバー51によってフェルール12の固定面12a及びこの固定面12aに固定された受発光素子16への付着が阻止される。
【0041】
そして、この光電気複合モジュール50の場合も、ポッティング材43を硬化させるための熱処理後の降温時に、ポッティング材43と受発光素子16との線膨張係数の違いから生じる熱歪(応力)をなくすことができる。これにより、熱歪によって受発光素子16とフェルール12の電極13とのバンプ21による導通接続箇所での断線や受発光素子16の短寿命化を抑制することができ、熱歪による不具合のない信頼性に優れた長寿命なものとすることができる。
【0042】
なお、カバー51は、フェルール12の固定面12aに受発光素子16を固定した後に取り付ける必要がある。また、このカバー51は最終的にはポッティング材43で固定されるため、ポッティング材43の塗布前に、フェルール12または回路基板32の少なくとも一方に対して接着剤で仮固定しておけば良い。
【実施例】
【0043】
(1)信頼性試験について
(断線試験)
各種の光電気複合モジュールをそれぞれ100個作製し、それぞれの光電気複合モジュールに対して温度125℃、電流10mAで500時間の通電試験を実施し、通電後の金スタッドバンプの外れ状況(断線状況)を調査した。
【0044】
(通電試験)
受発光素子に加わる応力により信頼性低下が懸念されるため、上記の断線試験で断線が生じなかった試料を用いて長期通電試験を行い、受発光素子の信頼性の比較を行った。試料は各条件で1個のみ用い、通電条件は温度125℃、電流10mAとした。
【0045】
(2)試料の作製について
(実施例1)
フェルール12の固定面12aに金のバンプ21を有する1チャンネル面発光型半導体レーザ(VCSEL)からなる発光素子16を温度200℃で超音波フリップチップにより実装する。
フェルール12の光ファイバ挿通孔14に、エポキシ樹脂からなる接着剤25と一緒にガラスファイバ15を挿入し、仮固定用の接着剤でガラスファイバ15を所定位置に仮固定する。このとき、接着剤25の充填量を少なくし、接着剤25がフェルール12内に留まり、発光素子16に付着しないようにする。
【0046】
次に、エポキシ系樹脂からなるダイボンド材33によってフェルール12を、ガラスエポキシ基板からなる回路基板32上にダイボンドして実装し、ダイボンド材33を硬化させるために、温度120℃で30分間の熱処理を行う。
さらに、金からなるボンディングワイヤ34によって電子デバイス31の端子とフェルール12の電極13及び回路基板32の回路パターンとを導通接続させる。
最後に、接着剤25を硬化させるために、温度150℃で30分間の熱処理を行う。
【0047】
(実施例2)
フェルール12の固定面12aに金のバンプ21を有する1チャンネル面発光型半導体レーザ(VCSEL)からなる発光素子16を温度200℃で超音波フリップチップにより実装する。
フェルール12の光ファイバ挿通孔14に、エポキシ樹脂からなる接着剤25と一緒にガラスファイバ15を挿入し、仮固定用の接着剤でガラスファイバ15を所定位置に仮固定する。このとき、光ファイバ挿通孔14から浸み出た接着剤25によって発光素子16の表面が覆われるようにする。
【0048】
次に、エポキシ系樹脂からなるダイボンド材33によってフェルール12を、ガラスエポキシ基板からなる回路基板32上にダイボンドして実装し、ダイボンド材33を硬化させるために、温度120℃で30分間の熱処理を行う。
さらに、金からなるボンディングワイヤ34によって電子デバイス31の端子とフェルール12の電極13及び回路基板32の回路パターンとを導通接続させる。
その後、ボンディングワイヤ34が完全に埋まるようにポッティング材43を塗布する。
このとき、フェルール12の固定面12aにおける回路基板32と反対側に、板状のひさし41を設けておき、ひさし41によってフェルール12の固定面12a側へのポッティング材43の回り込みを阻止し、フェルール12の固定面12a及びこの固定面12aに固定された発光素子16へのポッティング材43の付着を阻止する。
最後に、接着剤25及びポッティング材43を硬化させるために、温度150℃で30分間の熱処理を行う。
【0049】
(比較例1)
フェルール12の固定面12aに金のバンプ21を有する1チャンネル面発光型半導体レーザ(VCSEL)からなる発光素子16を温度200℃で超音波フリップチップにより実装する。
フェルール12の光ファイバ挿通孔14に、エポキシ樹脂からなる接着剤25と一緒にガラスファイバ15を挿入し、仮固定用の接着剤でガラスファイバ15を所定位置に仮固定する。このとき、光ファイバ挿通孔14から浸み出たアンダーフィル材によって発光素子16の表面が覆われるようにする。
【0050】
次に、エポキシ系樹脂からなるダイボンド材33によってフェルール12を、ガラスエポキシ基板からなる回路基板32上にダイボンドして実装し、ダイボンド材33を硬化させるために、温度120℃で30分間の熱処理を行う。
さらに、金からなるボンディングワイヤ34によって電子デバイス31の端子とフェルール12の電極13及び回路基板32の回路パターンとを導通接続させる。
その後、ボンディングワイヤ34が完全に埋まるようにポッティング材43を塗布する。
最後に、接着剤25及びポッティング材43を硬化させるために、温度150℃で30分間の熱処理を行う。
【0051】
(3)試験結果について
(断線試験)
実施例1では、100個の試料のうちの断線が5個であった。また、実施例2では、100個の試料のうちの断線が35個であった。これに対して、比較例1では、100個の試料のうちの断線が66個であった。
【0052】
このことから、実施例1のように、発光素子16に接着剤25及びポッティング材43の両方とも付着させないようにすれば、バンプ21に加わる熱歪(応力)が抑えられて断線不良率が低下するものと考えられる。また、実施例2のように、少なくとも発光素子16にポッティング材43を付着させないようにすれば、バンプ21に加わる熱歪(応力)が抑えられて断線不良率が低下するものと考えられる。この応力フリーとなる作製技術を用いることによって、光電気複合モジュールならびに光配線部品の高信頼性化が可能であることがわかった。
【0053】
(通電試験)
光出力が2dB低下するまで(光出力が初期値の63%となるまで)の時間を寿命とする通常の定義に基づくと、図6に示すように、発光素子16の寿命は、実施例1では、約3000時間であり、実施例2では、約1000時間であった。これに対して、比較例1では、約500時間であった。
【0054】
モジュールにしないベアチップ状態での発光素子16の平均寿命が約3500時間であることを考慮すると、発光素子16に接着剤25及びポッティング材43の両方とも付着させないようにした実施例1では、モジュール化による発光素子16の信頼性への影響はかなり低いと考えられる。また、発光素子16にポッティング材43を付着させないようにした実施例2の場合も、モジュール化による発光素子16の信頼性への影響が抑えられると考えられる。この応力フリーとなる作製技術を用いることによって、光電気複合モジュールならびに光配線部品の長寿命化が可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0055】
11:光配線部品、12:フェルール、12a:固定面、13:電極、14:光ファイバ挿通孔、15:ガラスファイバ(光ファイバ)、16:受発光素子、25:接着剤、30,40,50:光電気複合モジュール、32:回路基板、41:ひさし(阻止部)、43:ポッティング材(封止材)、51:カバー(阻止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバが挿入される光ファイバ挿通孔を有し、前記光ファイバの挿入方向前方側の固定面に電極が設けられたフェルールと、
前記光ファイバ挿通孔へ挿入された光ファイバと、
前記電極と導通接続された状態に前記フェルールの前記固定面に取り付けられた受発光素子とを備え、
前記光ファイバは、前記受発光素子に対向する端面以外の箇所で前記フェルールに接着剤で接着されて固定されていることを特徴とする光配線部品。
【請求項2】
請求項1に記載の光配線部品が回路基板に固定され、前記フェルールの前記電極が前記回路基板に固定された電子デバイスに導通されていることを特徴とする光電気複合モジュール。
【請求項3】
光ファイバが挿入される光ファイバ挿通孔を有し、前記光ファイバの挿入方向前方側の固定面に電極が設けられたフェルールと、前記光ファイバ挿通孔へ挿入された光ファイバと、前記電極と導通接続された状態に前記フェルールの前記固定面に取り付けられた受発光素子とを備えた光配線部品が回路基板に固定され、前記フェルールの前記電極が前記回路基板に固定された電子デバイスに導通され、前記フェルールの固定面側の端部に封止材が充填される光電気複合モジュールであって、
前記封止材の前記受発光素子への付着を阻止する阻止部を有することを特徴とする光電気複合モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の光電気複合モジュールであって、
前記阻止部は、前記フェルールの前記受発光素子が取り付けられた固定面における前記回路基板と反対側に設けられたひさしを有することを特徴とする光電気複合モジュール。
【請求項5】
請求項3に記載の光電気複合モジュールであって、
前記阻止部は、前記受発光素子の周囲を覆うカバーを有することを特徴とする光電気複合モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137532(P2012−137532A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288137(P2010−288137)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】