説明

内燃機関の制御装置

【課題】この発明は、低温始動時でも気化燃料を筒内に速やかに供給し、始動性を向上させることを目的とする。
【解決手段】エンジン10は、通常の燃料タンク34、気化燃料タンク42、タンク内噴射弁44、気化燃料供給弁48、大気導入弁50等を備える。ECU70は、エンジンの運転中に気化燃料タンク42内に蓄えておいた気化燃料を、始動時にサージタンク20に供給する。このとき、ECU70は、気化燃料の始動時要求流量に基いてスロットルバルブ18を駆動し、スロットル開度に応じて気化燃料の供給流量を制御する。これにより、気化燃料供給弁48や大気導入弁50として、例えば2位置切換型の単純な電磁弁を用いた場合でも、既存のスロットルバルブ18を利用して気化燃料の供給量を円滑に制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルコール燃料のように揮発性が低い燃料を用いる内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば特許文献1(特開2007−224878号公報)に開示されているように、アルコール燃料を用いる内燃機関の制御装置が知られている。アルコール燃料は、特に低温時に気化し難いため、従来技術の内燃機関には、始動時に燃料を気化させるための気化室が設けられている。この気化室は、外部から遮断された密閉構造を有し、絞り通路を介して吸気通路に接続されている。また、気化室には、その内部に燃料を噴射する始動用燃料噴射弁と、噴射燃料を加熱するためのヒータとが設けられている。
【0003】
そして、内燃機関の始動時には、まず、内燃機関に対して始動信号が出力された時点でヒータを作動させ、その後に適宜時間が経過した時点で、始動用燃料噴射弁から気化室内に燃料を噴射する。燃料が噴射されるときに、気化室は、クランキングによる吸気負圧が作用することによって減圧状態となる。この結果、噴射燃料は、減圧状態の気化室内でヒータの熱を受けることにより気化し、吸気通路を介して各気筒に供給される。このように、従来技術では、始動時に燃料を気化室内で気化させることにより、冷間始動時等の始動性を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−224878号公報
【特許文献2】特開2002−195083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来技術では、始動時にヒータを作動させてから気化室内に燃料を噴射し、気化燃料を生成するようにしている。しかしながら、この場合には、内燃機関に対して始動信号が出力された後に、ヒータの昇温、噴射燃料の加熱及び気化室の減圧が行われ、その結果として気化燃料が生成される。このため、従来技術では、始動時に気化燃料を生成するのに時間がかかり、気化燃料を筒内に速やかに供給することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、低温始動時等の燃料が気化し難い状況でも、気化燃料を筒内に速やかに供給することができ、始動性を向上させることが可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、燃料を貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンク内の燃料を吸気通路及び/又は燃焼室に噴射する燃料噴射弁と、
前記吸気通路に接続され、前記燃料が気化した気化燃料を蓄える気化燃料タンクと、
前記燃料タンク内の燃料を前記気化燃料タンクに供給するタンク内燃料供給手段と、
前記気化燃料タンクと前記吸気通路との接続部を開,閉する常閉の気化燃料供給弁と、
前記気化燃料タンク内に大気を導入するために、前記気化燃料タンクの内部と外部空間とを連通可能な位置に設けられた常閉の大気導入弁と、
前記気化燃料供給弁の上流側で前記吸気通路に設けられ、前記吸気通路の流路面積を調整するスロットルバルブと、
内燃機関の運転中に前記気化燃料供給弁と前記大気導入弁とを閉弁した状態で前記タンク内燃料供給手段を駆動し、前記気化燃料タンク内に気化燃料を生成する気化燃料生成手段と、
内燃機関の始動時に前記気化燃料供給弁と前記大気導入弁とを開弁し、運転中に前記気化燃料タンク内に蓄えられた気化燃料を前記吸気通路に供給する気化燃料供給手段と、
気化燃料の供給時に前記スロットルバルブを駆動し、前記スロットルバルブの開度によって気化燃料の供給量を制御する供給量制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、始動時の温度環境または当該温度環境により決定される気化燃料の始動要求流量に基いて、前記スロットルバルブの目標開度を可変に設定する目標開度設定手段を備え、
前記供給量制御手段は、前記スロットルバルブの開度が前記目標開度となるように制御する構成としている。
【0009】
第3の発明は、吸気バルブの位相と作用角のうち少なくとも一方のパラメータを可変に設定する吸気バルブ可変手段と、
前記吸気バルブ可変手段を駆動し、前記供給量制御手段により実現される前記スロットルバルブの開度に基いて前記パラメータを制御する吸気バルブ制御手段と、を備える。
【0010】
第4の発明によると、前記吸気バルブ制御手段は、前記スロットルバルブの開度が大きいほど、前記吸気バルブの位相を遅角させる構成としている。
【0011】
第5の発明によると、前記吸気バルブ制御手段は、前記スロットルバルブの開度が大きいほど、前記吸気バルブの作用角を減少させる構成としている。
【0012】
第6の発明は、前記燃料としてアルコール燃料を用いる構成としている。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、内燃機関の運転中に気化燃料を生成し、この気化燃料を機関停止後の自然減圧を利用して気化燃料タンク内に蓄えておくことができる。これにより、始動時に気化燃料を生成する必要がないので、低温始動時でも、気化燃料を筒内に速やかに供給することができる。また、気化燃料の供給時には、スロットルバルブを駆動し、スロットル開度に応じて気化燃料の供給量(流量)を制御することができる。これにより、気化燃料の消費量を適度に抑制しつつ、始動性を確保することができる。従って、気化燃料供給弁や大気導入弁として、例えば2位置切換型の単純な電磁弁を用いた場合でも、既存のスロットルバルブを利用して気化燃料の供給量を円滑に制御することができる。即ち、システムのコストダウンと性能アップを両立させることができる。
【0014】
第2の発明によれば、目標開度設定手段は、始動時の温度環境または当該温度環境により決定される気化燃料の始動要求流量に基いて、スロットルバルブの目標開度を適切に設定することができる。これにより、気化燃料の消費量を抑制しつつ、始動性を確保することができる。
【0015】
第3の発明によれば、吸気バルブ制御手段は、供給量制御手段により実現されるスロットルバルブの開度に基いて、吸気バルブの位相及び/又は作用角を適切に制御することができる。これにより、スロットル開度の制御に伴って筒内への流入空気量が変動しても、この変動を位相や作用角の制御により補償することができる。従って、気化燃料の供給量を制御しつつ、筒内への流入空気量を安定させることができる。
【0016】
第4の発明によれば、吸気バルブ制御手段は、スロットルバルブの開度が大きいほど、吸気バルブの位相を遅角させることができる。これにより、スロットル開度を増大させた場合には、吸気バルブの閉弁時期を吸気下死点から遅角させ、筒内への流入空気量を抑制することができる。
【0017】
第5の発明によれば、吸気バルブ制御手段は、スロットルバルブの開度が大きいほど、吸気バルブの作用角を減少させることができる。これにより、スロットル開度を増大させた場合には、吸気バルブの開弁期間を短くして、筒内への流入空気量を抑制することができる。
【0018】
第6の発明によれば、低温時に気化し難いアルコール燃料を用いる場合でも、内燃機関の運転中に気化燃料タンク内に気化燃料を蓄えておき、この気化燃料を始動時に供給することにより、始動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるシステムの制御系統を示す構成図である。
【図3】始動時の水温と気化燃料の始動要求流量との関係を示す特性線図である。
【図4】気化燃料の供給流量とスロットル開度との関係を示す特性線図である。
【図5】本発明の実施の形態1において、ECUにより実行される気化燃料生成制御を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1において、ECUにより実行される気化燃料供給制御を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2において、スロットル開度と吸気バルブの位相との関係を示す特性線図である。
【図8】本発明の実施の形態2において、スロットル開度と吸気バルブの作用角との関係を示す特性線図である。
【図9】本発明の実施の形態2において、ECUにより実行される気化燃料供給制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
以下、図1乃至図6を参照しつつ、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図である。本実施の形態のシステムは、FFV(Flexible Fuel Vehicle)に搭載される内燃機関としてのエンジン10を備えている。なお、図1には、4気筒エンジンを例示したが、本発明は、4気筒の内燃機関に限定されるものではない。エンジン10は、各気筒の燃焼室に吸入空気を吸込む吸気通路12と、燃焼室から排気ガスが排出される排気通路14とを備えている。
【0021】
吸気通路12には、上流側から順にエアクリーナ16、スロットルバルブ18及びサージタンク20が設けられている。スロットルバルブ18は、電子制御式のバタフライ弁により構成されている。そして、スロットルバルブ18は、後述のECU70により全閉位置と全開位置との間で開,閉され、その開度(スロットル開度)に応じて吸気通路12の流路面積及び吸入空気量を調整する。サージタンク20は、吸気脈動を減衰するために、吸気通路12の途中に一定の広がりをもつ空間を形成している。サージタンク20の下流側は、複数の吸気管からなる吸気マニホールド22を介して各気筒の吸気ポート24に接続されている。なお、サージタンク20、吸気マニホールド22及び吸気ポート24は、吸気通路12の一部を構成している。
【0022】
また、エンジン10の各気筒には、吸気ポート24に燃料を噴射する吸気ポート噴射弁26と、燃焼室内(筒内)に燃料を直接噴射する筒内噴射弁28とが設けられている。これらの噴射弁26,28は、一般的な電磁駆動式の燃料噴射弁により構成されている。さらに、各気筒には、筒内に流入した混合気に点火する点火プラグ30(図2参照)と、吸気ポート24を開,閉する吸気バルブ32と、排気ポートを開,閉する排気バルブ(図示せず)とが設けられている。また、上述した噴射弁26,28には、車両の燃料タンク34内に液化状態で貯留されたアルコール燃料が燃料ポンプ等により供給される。
【0023】
また、エンジン10は、始動時にクランク軸を回転駆動するスタータモータ36を備えている。車両の運転者がスタータスイッチをONにした場合には、ECU70に対してエンジンの始動要求が発生する。これにより、ECU70は、スタータモータ36を起動してクランク軸を回転させる動作(クランキング)を実行する。そして、エンジンが始動した時点、即ち、自立運転に移行した時点でクランキングを停止する。
【0024】
さらに、エンジン10は、後述の図2に示すように、VVT(Variable Valve Timing system)38と、可変動弁機構40とを備えており、これらは本実施の形態の吸気バルブ可変手段を構成している。VVT38は、吸気バルブ32の位相を可変に設定するもので、可変動弁機構40は、吸気バルブ32の作用角(開弁期間)及びリフト量を可変に設定するものである。これらの機器の構成を説明するにあたり、まず、吸気バルブ32の動弁系統について説明すると、動弁系統は、吸気カムが設けられたカムシャフトと、このカムシャフトに設けられたタイミングプーリとを備えている。タイミングプーリは、タイミングチェーンを介してエンジン10のクランク軸に連結されている。このため、エンジンの運転中には、クランク軸の回転がタイミングチェーンを介してタイミングプーリに伝達され、タイミングプーリによりカムシャフト(吸気カム)が回転駆動される。これにより、吸気カムの入力がロッカーアームを介して吸気バルブ32に伝達され、吸気バルブ32がカムシャフトの回転角に応じて所定のタイミングで開,閉するようになっている。
【0025】
このように構成された動弁系統において、VVT38は、例えば特開2000−87769号公報に開示されているような公知の構成を有している。即ち、VVT38は、カムシャフトとタイミングプーリとを相対回転させるアクチュエータを備えており、両者の相対回転角に応じて吸気バルブ32の位相を可変に設定することができる。一方、可変動弁機構40は、例えば特開2007−107404号公報に開示されているような公知の構成を有している。即ち、可変動弁機構40は、吸気カムとロッカーアームとの間に介在する2つの揺動部材と、これらの揺動部材の相対位置を変化させるアクチュエータとを備えている。吸気カムの入力は、これらの揺動部材を介してロッカーアームに伝達されるが、その伝達量及び伝達のタイミングは、揺動部材の相対位置に応じて変化する。これにより、可変動弁機構40は、吸気バルブ32の開弁時期(IVO)を進角させつつ閉弁時期(IVC)を遅角させ、バルブの作用角を増大させることができる。また、IVOを遅角させつつIVCを進角させ、バルブの作用角を減少させることができる。なお、VVT38と可変動弁機構40とは、後述する実施の形態2の制御で用いられるもので、本発明において、実施の形態1の制御のみを行う場合には、エンジンへの搭載を省略してもよい。
【0026】
次に、エンジン10に搭載された燃料気化系統について説明する。本実施の形態では、エンジンの運転中に生成した気化燃料をタンクに蓄えておき、この気化燃料を次回の始動時に使用することを特徴としている。そして、燃料気化系統は、以下に述べる気化燃料タンク42、タンク内噴射弁44、気化燃料供給弁48、大気導入弁50、リリーフ弁52等を備えている。
【0027】
気化燃料タンク42は、密閉構造を有する耐圧容器として形成され、燃料タンク34内のアルコール燃料が気化した気化燃料を蓄えるように構成されている。また、気化燃料タンク42は、例えばエンジンルーム内において、エンジン10から熱が伝導し易い位置に設置されている。タンク内噴射弁44は、燃料タンク34に貯留された燃料を気化燃料タンク42内に噴射(供給)するもので、本実施の形態のタンク内燃料供給手段を構成している。タンク内噴射弁44は、例えば噴射弁26,28と同様の一般的な燃料噴射弁により構成され、その燃料噴射量は制御信号に応じて制御される。タンク内噴射弁44から噴射された燃料は、気化燃料タンク42内で気化することにより気化燃料となる。
【0028】
気化燃料タンク42は、燃料供給配管46を介してサージタンク20と接続されており、この接続部は、吸気通路12においてスロットルバルブ18の下流側に設定されている。燃料供給配管46には、常閉(ノーマル・クローズ)の電磁弁等により構成された気化燃料供給弁48が設けられている。気化燃料供給弁48の閉弁時には、気化燃料タンク42とサージタンク20との間が遮断され、気化燃料タンク42内に気化燃料を蓄えることが可能となる。また、気化燃料供給弁48の開弁時には、前記タンク20,42が燃料供給配管46を介して相互に連通された状態となり、気化燃料タンク42に蓄えられた気化燃料がサージタンク20に供給される。
【0029】
また、気化燃料タンク42には、タンク内部と外部空間とを連通可能な位置に大気導入弁50が設けられている。大気導入弁50は常閉の電磁弁等により構成され、開弁時には気化燃料タンク42を大気解放するようになっている。気化燃料の供給時には、気化燃料供給弁48と大気導入弁50とが多少の時間差をもって一緒に開弁され、気化燃料を供給した分だけ大気導入弁50から気化燃料タンク42内に大気が導入される。なお、これらの弁48,50は、気化燃料の供給時を除いて閉弁状態に保持される。また、大気導入弁50は、エアクリーナ16とスロットルバルブ18との間で吸気通路12に接続されている。このため、大気導入弁50の開弁時には、エアクリーナ16より清浄化され、かつ吸気負圧の影響を受けない空気が気化燃料タンク42に導入される。
【0030】
さらに、気化燃料タンク42には、例えばチェック弁、リード弁等により構成された常閉のリリーフ弁52が設けられている。リリーフ弁52は、気化燃料タンク42内の圧力が所定の作動圧を超えたときに、この圧力を外部(例えば、吸気通路12)に解放するもので、リリーフ弁52の作動圧は、例えば大気圧程度の圧力か、または大気圧よりも数十kPa程度高い圧力に設定されている。この設定は、例えば気化燃料タンク42が常温程度かそれよりも少し高い温度に保持され、燃料の飽和蒸気圧がこの温度領域に対応した圧力となることを前提としている。これにより、リリーフ弁52は、気化燃料タンク42内に噴射された燃料が気化するときに、タンク内の空気を外部に逃がすように構成されている。また、リリーフ弁52は、気化燃料タンク42が密閉された状態において、タンク内の圧力が過大となるのを防止する安全弁としての機能も備えている。
【0031】
次に、図2を参照しつつ、エンジン10の制御系統について説明する。図2は、本発明の実施の形態1におけるシステムの制御系統を示す構成図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、複数のセンサ54〜66を含むセンサ系統と、エンジン10の運転状態を制御するECU(Electronic Control Unit)70とを備えている。
【0032】
まず、センサ系統について説明すると、クランク角センサ54は、エンジン10のクランク軸の回転に同期した信号を出力するもので、ECU70は、この出力に基いてエンジン回転数及びクランク角を検出する。また、エアフローセンサ56は吸入空気量を検出し、水温センサ58はエンジンの冷却水温を検出する。吸気温センサ60は、吸入空気の温度を検出する。一方、タンク圧センサ62は気化燃料タンク42内の圧力を検出し、タンク温度センサ64は気化燃料タンク42内の温度を検出する。また、燃料性状センサ66は、燃料の性状として、燃料中のアルコール濃度を検出する。
【0033】
センサ系統には、上記センサ54〜66の他にも、車両やエンジンの制御に必要な各種のセンサ(例えば排気空燃比を検出する空燃比センサ、スロットル開度を検出するスロットルセンサ、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ等)が含まれており、これらのセンサはECU70の入力側に接続されている。なお、本発明は、必ずしもタンク温度センサ64を必要とするものではない。即ち、タンク温度センサ64を使用せず、エンジンの温度や運転履歴、気化燃料タンク42への熱伝導特性等に基いてタンク内温度を推定してもよい。
【0034】
一方、ECU70の出力側には、スロットルバルブ18、噴射弁26,28,44、点火プラグ30、スタータモータ36、VVT38、可変動弁機構40、気化燃料供給弁48、大気導入弁50等を含む各種のアクチュエータが接続されている。そして、ECU70は、センサ系統によりエンジンの運転情報を検出し、その検出結果に基いて各アクチュエータを駆動することにより、運転制御を行う。具体的には、クランク角センサ54の出力に基いてエンジン回転数とクランク角とを検出し、エアフローセンサ56により吸入空気量を検出する。また、以下に述べる通常の燃料噴射制御を実行しつつ、クランク角に基いて点火時期を決定し、点火プラグ30を駆動する。
【0035】
通常の燃料噴射制御は、後述の気化燃料供給制御が実行される場合を除いて、エンジン10の運転中に実行されるもので、始動時の燃料噴射制御も含んでいる。この燃料噴射制御では、吸入空気量、エンジン回転数、エンジン冷却水の温度等に基いて燃料噴射量を算出し、クランク角に基いて燃料噴射時期を決定した後に、噴射弁26,28の何れか一方または両方を駆動する。この場合、吸気ポート噴射弁26と筒内噴射弁28の噴射量の比率は、エンジンの運転状態や燃料の性状に応じて可変に設定される。さらに、ECU70は、燃料気化系統の制御として、以下に述べる気化燃料生成制御と、気化燃料供給制御とを実行する。
【0036】
[実施の形態1の動作]
(気化燃料生成制御)
気化燃料生成制御は、エンジン10の運転中(好ましくは、暖機終了後の運転中)に、気化燃料タンク42内で燃料を気化させ、気化燃料を生成するものである。具体的に述べると、気化燃料生成制御では、気化燃料供給弁48と大気導入弁50とを閉弁した状態で、タンク内噴射弁44から燃料を噴射する。このとき、燃料の噴射量は、噴射燃料の全てが気化し、かつ気化した燃料の蒸気圧が飽和蒸気圧となるように算出される。
【0037】
そして、タンク内噴射弁44から噴射された燃料は、タンク内の空気をリリーフ弁52から追い出しつつ、速やかに気化して気化燃料となる。このとき、リリーフ弁52は、タンク内の空気圧により燃料の気化が抑制されるのを回避し、気化燃料の生成を促進することができる。この結果、燃料の気化が完了すると、タンク内の空気は殆ど排出され、気化燃料タンク42内には、気化燃料が飽和蒸気圧に近い圧力状態で充満した状態となる。
【0038】
上述した気化燃料生成制御により、気化燃料タンク42内には、エンジンの運転中に気化燃料を蓄えることができる。そして、気化燃料タンク42は、タンク内で生じる自然減圧を利用して、エンジン停止後の冷間時にも、気化燃料の少なくとも一部を気相状態に保持することができる。なお、気化燃料生成制御は、気化燃料タンク42内の温度が気化燃料を生成し得る所定の判定温度以上の場合にのみ実行するのが好ましい。
【0039】
(気化燃料供給制御)
気化燃料供給制御は、エンジンの始動時に気化燃料供給弁48と大気導入弁50とを開弁し、気化燃料タンク42内に蓄えられていた気化燃料をサージタンク20に供給するものである。具体的に述べると、まず、ECU70は、スタータスイッチがONされたときに、始動要求が発生したことを検出する。そして、気化燃料供給弁48と大気導入弁50とを閉弁した状態で、スタータモータ36に通電し、クランキングを開始する。これにより、サージタンク20内には、クランキングによって吸気負圧が生じる。
【0040】
そして、ECU70は、サージタンク20内の吸気負圧が十分に増大したときに、気化燃料供給弁48と大気導入弁50とを開弁する。これにより、気化燃料タンク42内の気化燃料は、吸気負圧によってサージタンク20内に供給される。このとき、気化燃料タンク42内には、気化燃料が流出した分だけ大気導入弁50から空気が流入するので、気化燃料の供給はスムーズに行われる。また、気化燃料供給弁48と大気導入弁50とを開弁するときには、気化燃料タンク42内の圧力が大気圧以上であれば、先に気化燃料供給弁48を開弁する。一方、気化燃料タンク42内の圧力が大気圧よりも低ければ、先に大気導入弁50を開弁する。これにより、タンク内の気化燃料が大気中に流出したり、サージタンク20から気化燃料タンク42内に空気が逆流するのを防止することができる。
【0041】
気化燃料タンク42からサージタンク20に供給された気化燃料は、吸気ポート24を介して筒内に流入し、筒内で点火されて燃焼する。そして、ECU70は、エンジン回転数の上昇等により始動を確認した時点で、クランキングを停止する。また、気化燃料供給弁48と大気導入弁50とを閉弁し、気化燃料供給制御を終了する。そして、通常の燃料噴射制御を開始し、吸気ポート噴射弁26や筒内噴射弁28から燃料を噴射する。なお、気化燃料から通常の燃料噴射への切換は、必ずしもエンジンの始動を確認してから行う必要はない。一例を挙げれば、始動時に必要な量の気化燃料を供給した時点で、通常の燃料噴射に切換えてもよい。また、各気筒に対して1サイクル目の燃焼時のみ気化燃料を供給し、2サイクル目以降の燃焼時には通常の燃料噴射制御を実行してもよい。
【0042】
このように、エンジンの運転中に蓄えておいた気化燃料を使用すれば、始動要求が発生してから気化燃料を生成する必要がない。即ち、始動時に気化燃料を生成する場合と比較して、気化燃料を筒内に速やかに供給することができ、燃料が気化し難い低温始動時でも、始動性を向上させることができる。なお、気化燃料供給制御は、始動時の機関温度(例えば、エンジン冷却水の温度等)が気化燃料を必要とする所定の判定温度以下の場合にのみ実行するのが好ましい。
【0043】
ところで、上述した気化燃料の供給時には、始動時の温度環境(外気温やエンジンの温度)等に応じて気化燃料の必要量が変化する。このため、システムの設計時には、気化燃料の供給量が制御可能となる構成を採用するのが好ましい。この構成は、気化燃料供給弁48や大気導入弁50として、流量制御型の高機能な電磁弁等を用いることにより実現することができる。しかし、一方では、これらの弁48,50を含めてシステムの部品を出来るだけ簡素化し、部品コストを抑えることが要求される。
【0044】
このため、本実施の形態では、既存のスロットルバルブ18により気化燃料の供給量(供給流量)を制御し、上記の弁48,50としては、単純な開,閉動作のみを行う2位置切換型の電磁弁を用いる構成としている。また、本実施の形態では、気化燃料の供給流量に影響を与える気体流路の構成部品(燃料供給配管46、気化燃料供給弁48及び大気導入弁50)の最大流量を、始動時に必要な最大の供給流量が実現可能となるように適切に設計している。
【0045】
(供給流量の制御)
気化燃料の供給時には、気化燃料タンク42内の気化燃料が吸気負圧によってサージタンク20内に流入する。従って、気化燃料の供給流量は、供給流路の構造等に応じて定まる最大流量の範囲内において、吸気負圧が大きいほど増大することになる。このため、供給流量の制御では、スロットル開度によってサージタンク20内の吸気負圧(または、サージタンク20内に流入する新気の量)を調整し、これにより気化燃料の供給流量を制御する。
【0046】
具体的に述べると、供給流量の制御では、まず、エンジン冷却水の水温に基いて気化燃料の始動要求流量を算出する。ここで、始動要求流量とは、始動時に必要とされる気化燃料の流量であり、一例を挙げれば、点火可能な濃度の気化燃料を筒内に流入させるのに必要な最低限の流量として定義される。図3は、始動時の水温と気化燃料の始動要求流量との関係を示す特性線図である。図3に示すように、始動要求流量は、始動時の水温が低いほど増大する特性を有しており、この特性はマップデータとしてECU70に予め記憶されている。このため、ECU70は、始動時の水温に基いて前記マップデータを参照し、温度環境に適合した始動要求流量を算出することができる。なお、始動要求流量は、始動時に供給される気化燃料の濃度にも影響される。これに対し、本実施の形態では、前述したように、気化燃料タンク42内に気化燃料を飽和蒸気圧に近い規定の状態で蓄え、タンク内の空気を排出する構成としている。従って、始動要求流量は、規定の状態で蓄えられていた気化燃料が供給されることを前提として設定されている。
【0047】
次に、供給流量の制御では、上述した始動要求流量が実現されるように、スロットル開度を制御する。図4は、気化燃料の供給流量とスロットル開度との関係を示す特性線図である。スロットル開度が小さい場合には、その分だけサージタンク20の内部が密閉状態に近くなる。この結果、クランキング時にサージタンク20内に発生する吸気負圧が増大し、これに伴って気化燃料タンク42から流出する気化燃料の流量が増大する。従って、気化燃料の供給流量は、図4に示すように、スロットル開度が小さいほど増大する特性を有しており、この特性はマップデータとしてECU70に予め記憶されている。このため、ECU70は、始動要求流量に基いて前記マップデータを参照し、スロットル開度の目標値(目標開度)を算出することができる。
【0048】
上記構成によれば、気化燃料の供給時には、スロットルバルブ18を駆動してスロットル開度を目標開度に一致させることにより、気化燃料の供給流量が始動要求流量となるように流量制御を行うことができる。これにより、気化燃料の消費量を適度に抑制しつつ、始動性を確保することができる。従って、本実施の形態によれば、気化燃料供給弁48や大気導入弁50として、2位置切換型の単純な電磁弁を用いた場合でも、既存のスロットルバルブ18を利用して気化燃料の流量を円滑に制御することができる。即ち、高機能な流量制御弁等を用いる必要がないので、システムのコストダウンと性能アップを両立させることができる。
【0049】
なお、上記制御では、図3及び図4のマップデータを参照することにより、始動時の水温に基いて始動要求流量、目標開度を順次算出する構成とした。しかし、図3及び図4に示すように、例えば始動時の水温T1である場合には、この水温T1に基いて始動要求流量f1が決定され、更に始動要求流量f1が供給流量となるスロットル開度θ1が決定される。従って、本発明では、図3及び図4のマップデータを一体化し、始動時の水温に基いてスロットル開度を算出する構成としてもよい。
【0050】
[実施の形態1を実現するための具体的な処理]
次に、図5及び図6を参照して、上述した制御を実現するための具体的な処理について説明する。まず、図5は、本発明の実施の形態1において、ECUにより実行される気化燃料生成制御を示すフローチャートである。この図に示すルーチンは、エンジンの運転中に繰返し実行されるものとする。
【0051】
図5に示すルーチンでは、まず、タンク温度センサ64により気化燃料タンク42内の温度Tを検出し(ステップ100)、このタンク内温度Tが判定温度T1よりも大きいか否かを判定する(ステップ102)。ここで、判定温度T1とは、気化燃料を生成し得る温度の下限値に対応して設定されるもので、タンク内での燃料噴射を許可するための判定温度である。ステップ102の判定成立時には、燃料が気化し易い温度状態なので、気化燃料タンク42内に噴射する燃料の噴射量を算出し、気化燃料供給弁48と大気導入弁50とを閉弁した状態でタンク内噴射弁44を駆動する(ステップ104)。これにより、気化燃料タンク42内には気化燃料が蓄えられる。
【0052】
次に、図6は、本発明の実施の形態1において、ECUにより実行される気化燃料供給制御を示すフローチャートである。この図に示すルーチンは、エンジンの運転中に繰返し実行されるものとする。図6に示すルーチンでは、まず、イグニッションスイッチ(IGSW)がONになったか否かを判定する(ステップ200)。この判定成立時には、水温センサ58により始動時の水温を検出し、この水温に基いて図3のマップデータを参照することにより、気化燃料の始動要求流量を算出する(ステップ202)。そして、始動要求流量に基いて図4のマップデータを参照し、スロットルバルブ18の目標開度を算出する(ステップ204)。次に、スロットルバルブ18を駆動し、スロットル開度が目標開度となるように制御する(ステップ206)。これにより、スロットル開度は、気化燃料の供給が開始される前に、目標開度に保持された状態となる。
【0053】
次の処理では、エンジンの始動要求が発生したか否かを判定し、この判定成立時には、スタータモータ36を起動する(ステップ208,210)。そして、クランキングによりサージタンク20内に吸気負圧が発生した状態において、気化燃料供給弁48と大気導入弁50とを開弁し、気化燃料の供給を開始する(ステップ212)。また、気化燃料の供給中には、例えばステップ206で設定したスロットル開度(目標開度)における気化燃料の供給流量と、供給を開始してからの経過時間とに基いて、気化燃料の総供給量を算出する。そして、この総供給量に基いて、始動時に必要な量の気化燃料が供給されたか否かを判定する(ステップ214)。この判定が不成立の場合には、必要な量の気化燃料が供給されるまで気化燃料の供給を継続する。
【0054】
また、ステップ214の判定が成立した場合には、スロットル開度を通常の始動時制御の開度に戻す(ステップ216)。そして、気化燃料供給弁48と大気導入弁50とを閉弁し、気化燃料の供給を停止する(ステップ218)。気化燃料の供給停止後には、前述した通常の燃料噴射制御(始動時噴射制御)を実行する。
【0055】
なお、前記実施の形態1では、図5中に示すステップ100〜104が請求項1における気化燃料生成手段の具体例を示している。また、図6中に示すステップ212は、請求項1における気化燃料供給手段の具体例を示し、ステップ206は、請求項1,2における供給量制御手段の具体例、ステップ202,204は、請求項2における目標開度設定手段の具体例をそれぞれ示している。
【0056】
実施の形態2.
次に、図7乃至図9を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1とほぼ同様の構成及び制御(図1、図2、図5)を採用しているものの、スロットル開度に基いて吸気バルブの位相や作用角を制御する構成としたことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0057】
[実施の形態2の特徴]
本実施の形態では、実施の形態1と同様に、スロットル開度に基いて気化燃料の供給流量を制御するものの、更にスロットル開度に基いて吸気バルブ32の位相や作用角を変化させ、筒内に流入する空気量を制御する構成としている。この構成は、VVT38または可変動弁機構40により実現されるもので、まず、図7を参照して、VVT38を用いる場合の制御について説明する。図7は、本発明の実施の形態2において、スロットル開度と吸気バルブの位相との関係を示す特性線図である。
【0058】
図7に示すように、本実施の形態では、気化燃料の供給時にスロットル開度を増大させるほど、VVT38により吸気バルブ32の位相(IVO及びIVO)を遅角させる。スロットル開度を増大させた場合には、気化燃料の供給流量を所望の値まで減少させることができるが、その一方で筒内に流入する空気量が増大する。このとき、IVCを吸気下死点から遅角させることにより、筒内に流入する空気量を抑制することができる。また、スロットル開度を減少させた場合には、その分だけIVCを吸気下死点に向けて進角させ、筒内への流入空気量を確保することができる。即ち、本実施の形態によれば、スロットル開度の制御に伴って筒内への流入空気量が変動しても、この変動をIVCの制御により補償することができる。従って、気化燃料の供給流量を制御しつつ、筒内への流入空気量を安定させることができる。
【0059】
また、VVT38による位相制御では、IVCを遅角させると、IVOも遅角されることになる。これにより、吸気損(ポンピングロス)を発生させ、筒内温度を上昇させることができる。従って、気化燃料の供給を停止した直後(例えば1サイクル目の燃焼だけで気化燃料の供給を停止する場合には、2〜3サイクル目の燃焼時)に、燃焼性を向上させることができる。
【0060】
次に、図8を参照して、可変動弁機構40を用いる場合の制御について説明する。図8は、スロットル開度と吸気バルブの作用角との関係を示す特性線図である。この図に示すように、可変動弁機構40を用いる場合には、気化燃料の供給時にスロットル開度を増大させるほど、可変動弁機構40により吸気バルブ32の作用角を減少させる。これにより、スロットル開度を大きくした場合には、その分だけ吸気バルブ32の開弁期間を短くして、筒内への流入空気量を抑制することができる。従って、可変動弁機構40を用いた場合にも、VVT38を用いた場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0061】
[実施の形態2を実現するための具体的な処理]
次に、図9を参照しつつ、上述した制御を実現するための具体的な処理について説明する。図9は、本発明の実施の形態2において、ECUにより実行される気化燃料供給制御を示すフローチャートである。この図に示すルーチンは、実施の形態1の図6に代えて、エンジンの運転中に繰返し実行されるものとする。また、以下の説明では、まず、VVT38を用いる場合の処理について説明する。
【0062】
図7に示すルーチンでは、まず、ステップ300〜310において、前記図6中に示すステップ200〜210と同様の処理を実行する。次に、ステップ312では、ステップ304で算出したスロットル開度(目標開度)に基いて図7のマップデータを参照し、吸気バルブ32の位相(開閉タイミング)の目標角度を算出する。そして、実際の位相が目標角度となるように、VVT38を駆動制御する。次に、ステップ314〜322では、前記図6中に示すステップ212〜218とほぼ同様の処理を実行するが、ステップ320では、気化燃料の供給が終了した後にVVT38を駆動し、吸気バルブ32の位相を通常の始動時制御の角度に戻す。
【0063】
一方、可変動弁機構40を用いる場合には、前記ステップ312において、スロットルバルブ18の目標開度に基いて図8のマップデータを参照し、吸気バルブ32の作用角の目標角度を算出する。そして、実際の作用角が目標角度となるように、可変動弁機構40を駆動制御する。また、ステップ320では、気化燃料の供給が終了した後に可変動弁機構40を駆動し、吸気バルブ32の作用角を通常の始動時制御の角度に戻す。
【0064】
なお、前記実施の形態2では、図9中に示すステップ314が請求項1における気化燃料供給手段の具体例を示している。また、ステップ306は、請求項1,2における供給量制御手段の具体例、ステップ302,304は、請求項2における目標開度設定手段の具体例をそれぞれ示している。さらに、ステップ312及び図7、図8は、請求項3,4,5における吸気バルブ制御手段の具体例を示している。
【0065】
また、実施の形態2では、VVT38と可変動弁機構40とをそれぞれ個別に用いる場合を例示したが、本発明はこれに限らず、スロットル開度に基いてVVT38と可変動弁機構40とを一緒に駆動する構成としてもよい。
【0066】
一方、実施の形態では、吸気通路12に対する気化燃料の供給部位として、サージタンク20を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、スロットルバルブ18の下流側であれば、吸気通路12の任意の部位に気化燃料タンク42を接続し、この部位に気化燃料を供給する構成としてよいものである。
【0067】
また、実施の形態では、気化燃料タンク42をエンジン10からの熱が伝わり易い場所に配置する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、エンジン10で発生する熱により気化燃料タンク42を積極的に加熱する構成としてもよい。一例を挙げれば、エンジン10と気化燃料タンク42との間に冷却水配管を設け、エンジン冷却水により気化燃料タンク42を加熱する構成としてもよい。また、排気通路14と気化燃料タンク42との間にヒートパイプ等の熱伝導部材を設け、排気熱により気化燃料タンク42を加熱する構成としてもよい。これらの構成により、気化燃料タンク42内での燃料の飽和蒸気圧を高め、蓄えられる気化燃料の量を増やすことができる。
【0068】
また、実施の形態では、吸気ポート噴射弁26と筒内噴射弁28の両方を備えたエンジン10を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、噴射弁26,28のうち何れか一方を備えず、他方のみを備えた内燃機関に適用してもよい。
【0069】
さらに、実施の形態では、アルコール燃料を使用するエンジン10を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、通常のガソリンや、ガソリンにアルコール以外の成分を添加した各種の燃料に対しても適用し得るものである。
【符号の説明】
【0070】
10 エンジン(内燃機関)
12 吸気通路
14 排気通路
16 エアクリーナ
18 スロットルバルブ
20 サージタンク(吸気通路)
22 吸気マニホールド(吸気通路)
24 吸気ポート(吸気通路)
26 吸気ポート噴射弁(燃料噴射弁)
28 筒内噴射弁(燃料噴射弁)
30 点火プラグ
32 吸気バルブ
34 燃料タンク
36 スタータモータ
38 VVT(吸気バルブ可変手段)
40 可変動弁機構(吸気バルブ可変手段)
42 気化燃料タンク
44 タンク内噴射弁(タンク内燃料供給手段)
46 燃料供給配管
48 気化燃料供給弁
50 大気導入弁
52 リリーフ弁
54 クランク角センサ
56 エアフローセンサ
58 水温センサ
60 吸気温センサ
62 タンク圧センサ
64 タンク温度センサ
66 燃料性状センサ
70 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンク内の燃料を吸気通路及び/又は燃焼室に噴射する燃料噴射弁と、
前記吸気通路に接続され、前記燃料が気化した気化燃料を蓄える気化燃料タンクと、
前記燃料タンク内の燃料を前記気化燃料タンクに供給するタンク内燃料供給手段と、
前記気化燃料タンクと前記吸気通路との接続部を開,閉する常閉の気化燃料供給弁と、
前記気化燃料タンク内に大気を導入するために、前記気化燃料タンクの内部と外部空間とを連通可能な位置に設けられた常閉の大気導入弁と、
前記気化燃料供給弁の上流側で前記吸気通路に設けられ、前記吸気通路の流路面積を調整するスロットルバルブと、
内燃機関の運転中に前記気化燃料供給弁と前記大気導入弁とを閉弁した状態で前記タンク内燃料供給手段を駆動し、前記気化燃料タンク内に気化燃料を生成する気化燃料生成手段と、
内燃機関の始動時に前記気化燃料供給弁と前記大気導入弁とを開弁し、運転中に前記気化燃料タンク内に蓄えられた気化燃料を前記吸気通路に供給する気化燃料供給手段と、
気化燃料の供給時に前記スロットルバルブを駆動し、前記スロットルバルブの開度によって気化燃料の供給量を制御する供給量制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
始動時の温度環境または当該温度環境により決定される気化燃料の始動要求流量に基いて、前記スロットルバルブの目標開度を可変に設定する目標開度設定手段を備え、
前記供給量制御手段は、前記スロットルバルブの開度が前記目標開度となるように制御する構成としてなる請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
吸気バルブの位相と作用角のうち少なくとも一方のパラメータを可変に設定する吸気バルブ可変手段と、
前記吸気バルブ可変手段を駆動し、前記供給量制御手段により実現される前記スロットルバルブの開度に基いて前記パラメータを制御する吸気バルブ制御手段と、
を備えてなる請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記吸気バルブ制御手段は、前記スロットルバルブの開度が大きいほど、前記吸気バルブの位相を遅角させる構成としてなる請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記吸気バルブ制御手段は、前記スロットルバルブの開度が大きいほど、前記吸気バルブの作用角を減少させる構成としてなる請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記燃料としてアルコール燃料を用いてなる請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−220205(P2011−220205A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89574(P2010−89574)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】