説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】この発明は、PMフィルタの再生時にCOの排出を抑制し、排気エミッションを向上させることを目的とする。
【解決手段】排気通路12には、上流側から下流側に向けて酸化触媒14、DPF16、オゾン発生器18を順次配置する。また、排気通路12には、触媒還流通路22と触媒排気通路24とを接続し、これらの接続部に切換弁26,28,30を配置する。そして、PM酸化制御に適した状況において、温度センサ32の出力により酸化触媒14が活性状態であると判定したときには、切換弁26,28,30を制御用位置に切換えると共に、DPF16にオゾンを供給する。これにより、DPF16内のPMとオゾンとの酸化反応により生じたガスを、触媒還流通路22により酸化触媒14に導入し、ガス中のCOを酸化触媒14により浄化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に好適に用いられる排気浄化装置に関し、特に、活性酸素を利用する構成とした内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば特許文献1(特開2007−77971号公報)に開示されているように、DPF(Diesel Particulate Filter)と、オゾン供給装置とを備えた内燃機関の排気浄化装置が知られている。この排気浄化装置によれば、DPFに捕集された粒子状物質(PM:Particulate Matter)をオゾンにより酸化し、DPFを再生させることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−77971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術では、DPFにオゾンを供給することにより、PMを酸化する構成としている。しかしながら、DPFにオゾンを供給すると、PMの不完全燃焼により一酸化炭素(CO)が発生し易くなる。また、オゾンの供給量が比較的多い場合などには、一部のオゾンがPMと反応せずに残留することがある。このため、従来技術では、PMの再生処理を行うときに、COの発生や残留オゾンにより排気エミッションが悪化するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、PMフィルタの再生時にCOの排出を抑制することができ、排気エミッションを向上させることが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、内燃機関の排気ガスが流通する排気通路に設けられ、排気ガス中の未浄化成分を酸化により浄化する酸化触媒と、
前記酸化触媒の下流側で前記排気通路に設けられ、排気ガス中の粒子状物質を捕集するPMフィルタと、
前記PMフィルタに活性酸素を供給するための活性酸素供給手段と、
前記PMフィルタから前記酸化触媒に向けてガスが逆方向に流通するように、ガスの流路または流通方向を通常時に対して切換えることが可能な切換手段と、
前記酸化触媒の活性状態に対応する温度パラメータを取得するパラメータ取得手段と、
少なくとも前記温度パラメータに基いて前記酸化触媒が活性状態であると判定したときに、前記活性酸素供給手段により前記PMフィルタに活性酸素を供給し、かつ前記切換手段により前記PMフィルタから前記酸化触媒に向けてガスを流通させるPM酸化制御を実行する再生制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、前記PMフィルタの上流側と下流側の圧力差を検出する圧力検出手段を備え、
前記再生制御手段は、排気ガスの温度と前記圧力差とに応じて前記PM酸化制御を実行するか否かを判定する構成としている。
【0008】
第3の発明によると、前記再生制御手段は、排気ガスの温度が前記活性酸素の熱分解温度よりも低く、かつ前記圧力差が所定の基準判定値よりも大きいときに、前記PM酸化制御を実行する構成としている。
【0009】
第4の発明によると、前記再生制御手段は、内燃機関が停止状態となったときに、前記PM酸化制御を実行する構成としている。
【0010】
第5の発明によると、前記切換手段は、
前記酸化触媒と前記PMフィルタとをバイパスする位置で前記排気通路に接続され、前記PMフィルタから流出したガスを前記酸化触媒の上流側に還流させる触媒還流通路と、
前記PMフィルタをバイパスする位置で前記排気通路に接続され、前記酸化触媒から流出したガスを前記PMフィルタよりも上流側で外部に排出する触媒排気通路と、
通常時は前記酸化触媒の上流側を内燃機関に接続し、前記PM酸化制御の実行時には前記酸化触媒の上流側を前記触媒還流通路に接続する触媒上流切換弁と、
通常時は前記酸化触媒の下流側を前記PMフィルタに接続し、前記PM酸化制御の実行時には前記酸化触媒の下流側を前記触媒排気通路に接続する触媒下流切換弁と、
通常時は前記排気通路を開放し、前記PM酸化制御の実行時には前記排気通路を遮断して前記PMフィルタから流出したガスを前記触媒還流通路に流入させる排気切換弁と、
を備える構成としている。
【0011】
第6の発明によると、前記切換手段は、
前記PMフィルタの下流側で前記排気通路を開,閉する排気遮断弁と、
前記酸化触媒の上流側を外部に対して開放,遮断する逆流開放弁と、
を備える構成としている。
【0012】
第7の発明によると、前記切換手段は、
前記酸化触媒と前記PMフィルタとをバイパスする位置で前記排気通路に接続されたバイパス通路と、
前記酸化触媒の上流側に接続する対象を内燃機関と前記バイパス通路との間で切換えるバイパス上流切換弁と、
前記PMフィルタの下流側と前記バイパス通路の下流側のうち、何れか一方の部位を外部に対して切換可能に開放し、他方の部位を遮断するバイパス下流切換弁と、
を備える構成としている。
【0013】
第8の発明によると、前記活性酸素供給手段は、前記活性酸素としてオゾンを供給する構成としている。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、少なくとも酸化触媒が活性状態であると判定したときには、PMフィルタに活性酸素を供給しつつ、切換手段によりPMフィルタから酸化触媒に向けてガスを逆方向に流通させることができる。これにより、フィルタ内のPMが活性酸素と反応することにより生じたガスを、酸化触媒に流入させることができるので、ガス中に含まれるCOを酸化触媒により確実に浄化することができる。従って、PMフィルタの再生時にCOの排出を抑制することができ、排気エミッションを向上させることができる。
【0015】
しかも、第1の発明によれば、通常時の排気ガスを浄化するための酸化触媒を利用して、PMの酸化時に生じるCOを浄化することができる。このため、酸化処理専用の浄化機器等を搭載する必要がないので、システムの構造を簡略化することができ、その小型化やコストダウンを図ることができる。また、PM酸化制御の実行時には、仮りにPMフィルタに余分な活性酸素が供給されたとしても、この活性酸素を酸化触媒によって分解することができる。従って、第1の発明によれば、COの排出だけでなく、余分な活性酸素が外部に排出されるのも防止することができる。
【0016】
第2の発明によれば、PMフィルタの上流側と下流側との圧力差は、フィルタ内に捕集されたPMの量が増えるにつれて増大する。また、排気ガスの温度が高いと、PMを酸化するために供給した活性酸素が熱により分解し易くなる。このため、再生制御手段は、前記圧力差と排気ガスの温度とに応じて、PM酸化制御を適切なタイミングで実行することができる。
【0017】
第3の発明によれば、再生制御手段は、例えばPMフィルタ内に処理が必要な量のPMが捕集されたことを、前記圧力差と基準判定値との比較により判定することができる。そして、この判定が成立し、かつ活性酸素が熱分解しない温度環境であるときには、PM酸化制御を実行することができる。これにより、PMフィルタを効率よく再生することができる。
【0018】
第4の発明によれば、内燃機関が停止した状態では、PMフィルタから酸化触媒に向けてガスを逆方向に流通させることができ、これによりPM酸化制御を容易に実行することができる。また、例えば内燃機関が停止する毎にPM酸化制御を行う構成とした場合には、始動時にPMフィルタを常に再生した状態で使用することができる。これにより、フィルタ内に溜まったPMの捕集量等を検出、推定しなくても、PM酸化制御を的確なタイミングで行うことができる。さらに、例えば内燃機関と電動モータとを併用するハイブリッド車等では、電動モータにより走行するときに、内燃機関を停止させることがある。従って、この停止期間を利用してPM酸化制御を円滑に行うことができる。
【0019】
第5の発明によれば、PM酸化制御の実行時には、触媒上流切換弁により酸化触媒の上流側を触媒還流通路に接続することができる。このとき、触媒下流切換弁は、酸化触媒の下流側を触媒排気通路に接続することができ、排気切換弁は、PMフィルタの下流側で排気通路を遮断することができる。これにより、活性酸素の供給時には、PMフィルタから流出したガスを触媒還流通路によって酸化触媒に流入させつつ、酸化触媒から流出したガスを触媒排気通路により外部に排出することができる。
【0020】
第6の発明によれば、PM酸化制御の実行時には、排気遮断弁によりPMフィルタの下流側で排気通路を遮断することができる。このとき、逆流開放弁は、酸化触媒の上流側を大気開放することができる。これにより、活性酸素の供給時には、PMフィルタから流出したガスを酸化触媒に対して下流側から流入させつつ、酸化触媒の上流側から流出したガスを逆流開放弁により外部に排出することができる。
【0021】
このように、第6の発明によれば、ガスの流通方向を切換えることにより、排気通路だけを用いて通常の排気制御とPM酸化制御とを容易に実行することができる。即ち、PM酸化制御の実行時にガスを逆方向に流通させるための分岐通路、バイパス通路等が必要ない上に、処理したガスを上流側で排気することにより余分な通路等を下流側に引回す必要がない。従って、第6の発明によれば、システムの配管構造、弁構造等を簡略化し、省スペース化を図ることができる。
【0022】
第7の発明によれば、PM酸化制御の実行時には、バイパス上流切換弁により酸化触媒の上流側にバイパス通路を接続することができる。このとき、バイパス下流切換弁は、バイパス通路の下流側を大気開放し、PMフィルタの下流側を遮断することができる。これにより、活性酸素の供給時には、PMフィルタから流出したガスを酸化触媒に対して下流側から流入させつつ、酸化触媒の上流側から流出したガスをバイパス通路により外部に排出することができる。
【0023】
第8の発明によれば、活性酸素としてオゾンを用いることにより、上記第1乃至第7の発明の効果をより顕著に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
以下、図1乃至図5を参照しつつ、本発明の実施の形態1について説明する。まず、図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図である。図1に示すように、本実施の形態のシステムは、例えばディーゼルエンジンからなる内燃機関10を備えている。また、内燃機関10は、気筒内に吸入空気を吸込む吸気通路(図示せず)と、気筒から排出された排気ガスが流れる排気通路12とを備えている。
【0025】
排気通路12は、上流部12a、中流部12bおよび下流部12cにより構成されている。上流部12aは、内燃機関の本体から後述する触媒上流切換弁26までの部位である。また、中流部12bは、触媒上流切換弁26から触媒下流切換弁28までの部位である。さらに、下流部12bは、触媒下流切換弁28よりも下流側の部位であり、排気通路12の開放端側となっている。また、本実施の形態のシステムは、排気通路12の上流部12aに設けられた酸化触媒14と、中流部12bに設けられたDPF16と、オゾン発生器18とを備えている。
【0026】
酸化触媒14は、排気ガス中の未燃成分(不完全燃焼成分)である一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を酸化してCO2やH2O等とすることにより、これらの未燃成分を浄化する機能を有している。この酸化触媒14の触媒成分としては、例えば遷移金属を担持した酸化物担体などが用いられる。触媒成分の具体例を挙げれば、Pt/CeO2、Mn/CeO2、Fe/CeO2、Ni/CeO2、Cu/CeO2等である。DPF16は、本実施の形態のPMフィルタを構成しており、酸化触媒14の下流側に配置されている。そして、DPF16は、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集し、これを燃焼(酸化)させることによりPMを浄化する。
【0027】
オゾン発生器18は、本実施の形態の活性酸素供給手段を構成しており、例えばDPF16の上流側で排気通路12の中流部12bに接続されたオゾン供給口20を備えている。そして、オゾン発生器18は、例えばDPF16に対して上流側からオゾン(O)を供給する。このオゾンは、後述のように、DPF16に捕集されたPMを低温でも浄化することができる。また、オゾン発生器18としては、高電圧を印加可能な放電管内に、原料となる乾燥した空気または酸素を流しつつオゾンを発生させる形態や、他の任意の形式のものを用いることができる。この場合、原料となる乾燥した空気または酸素は、排気通路12の外部から取込まれる外気等の気体である。
【0028】
一方、本実施の形態のシステムは、触媒還流通路22、触媒排気通路24および切換弁26,28,30を備えており、これらの部材は本実施の形態の切換手段を構成している。これらの部材によれば、排気通路12内のガスがDPF16から酸化触媒14に向けて逆方向に流通するように、ガスの流路を通常時に対して切換えることができる。以下、個々の部材について説明すると、まず、触媒還流通路22は、酸化触媒14とDPF16とをバイパスする位置で排気通路12に接続されており、後述のPM酸化制御中にDPF16から流出したガスを酸化触媒14の上流側に還流させるものである。即ち、触媒還流通路22の一端側は、酸化触媒14の上流側で排気通路12の上流部12aに接続されており、触媒還流通路22の他端側は、DPF16の下流側で中流部12bに接続されている。
【0029】
触媒排気通路24は、PM酸化制御中に酸化触媒14から流出したガスを、DPF16よりも上流側で(DPF16に流入させずに)外部に排出するものである。触媒排気通路24は、DPF16をバイパスする位置(中流部12bと並列な位置)で排気通路12に接続されている。一方、切換弁26,28,30は、後述のECU40により駆動される電磁駆動式の三方弁等からなり、それぞれポートA,B,Cを有している。
【0030】
これらの弁について説明すると、まず、触媒上流切換弁26は、排気通路12の上流部12aと触媒還流通路22との接続部に設けられている。そして、触媒上流切換弁26は、酸化触媒14の上流側に接続する対象を、内燃機関10と触媒還流通路22との間で切換えるものである。即ち、触媒上流切換弁26は、図1に示すように、通常時(PM酸化制御の非実行時)において、酸化触媒14の上流側を内燃機関10に接続している。また、PM酸化制御の実行時には、図4に示すように、酸化触媒14の上流側を触媒還流通路22に接続し、DPF16から流出したガスを酸化触媒14に流入させる。
【0031】
次に、触媒下流切換弁28は、排気通路12の上流部12a、中流部12bおよび触媒排気通路24の接続部に設けられている。そして、触媒下流切換弁28は、酸化触媒14の下流側に接続する対象を、DPF16と触媒排気通路24との間で切換えるものである。即ち、触媒下流切換弁28は、通常時において、酸化触媒14の下流側をDPF16に接続している。また、PM酸化制御の実行時には、酸化触媒14の下流側を触媒排気通路24に接続し、当該触媒から流出したガスを外部に排出させる。
【0032】
さらに、排気切換弁30は、排気通路12の中流部12b、下流部12cおよび触媒排気通路24の接続部に設けられている。そして、排気切換弁30は、排気通路12の中流部12bと触媒排気通路24の何れかを、下流部12cに対して切換可能に接続するものである。即ち、排気切換弁30は、通常時において、DPF16の下流側を排気通路12の下流部12cに接続し、排気通路12を開放している。また、PM酸化制御の実行時には、DPF16の下流側で排気通路12を遮断し、DPF16から流出したガスを触媒還流通路22に流入させる。
【0033】
なお、本実施の形態では、排気切換弁30を三方弁により構成したが、本発明はこれに限らず、排気切換弁は、少なくともDPF16(および触媒還流通路22)の下流側で排気通路12を開,閉することができればよい。即ち、本発明では、排気切換弁を開閉弁により構成し、触媒排気通路24の下流側は大気開放する構成としてもよい。このような構成でも、排気切換弁の閉弁時には、DPF16から流出したガスを触媒還流通路22に流入させることができる。また、触媒排気通路24は、触媒下流切換弁28により開,閉することができる。
【0034】
さらに、本実施の形態のシステムは、温度センサ32,34、圧力センサ36等を含むセンサ系統と、内燃機関10を運転制御するECU(Electronic Control Unit)40とを備えている。触媒温度センサ32は、本実施の形態のパラメータ取得手段を構成しており、酸化触媒14の活性状態に対応する温度パラメータを取得するものである。この温度パラメータとは、触媒の温度(床温)に限らず、床温と相関関係がある排気ガスの温度等も含んでいる。即ち、本発明では、触媒温度センサ32により酸化触媒14の床温を直接検出する構成としてもよく、または排気ガスの温度等を検出する構成としてもよい。これにより、ECU40は、触媒温度センサ32の出力に基いて酸化触媒14が活性化しているか否かを判定することができる。
【0035】
フィルタ温度センサ34は、例えばDPF16の下流側(内部でもよい)で排気ガスの温度を検出する。これにより、ECU40は、フィルタ温度センサ34の出力に基いてDPF16内の雰囲気温度がオゾンの熱分解温度よりも低いか否かを判定することができる。一方、圧力センサ36は、本実施の形態の圧力検出手段を構成しており、DPF16の上流側と下流側との間で排気圧の圧力差を検出する。この圧力差は、DPF16内に捕集されたPMの量が増えるにつれて増大する。なお、DPF16の上流側における排気圧もPMの捕集量に応じて増大するので、本発明では、この上流側の排気圧を圧力センサ36により検出する構成としてもよい。
【0036】
また、センサ系統には、これらのセンサ32,34,36以外にも、内燃機関10のクランク角を検出するクランク角センサ、吸入空気量を検出するエアフロメータ、冷却水の温度を検出する水温センサ等が含まれている。一方、内燃機関10は、燃料噴射弁、点火プラグ、オゾン発生器18、切換弁26,28,30等を含む各種のアクチュエータを備えている。そして、ECU40は、センサ系統により内燃機関の運転状態を検出しつつ、各アクチュエータを制御する。この制御には、以下に述べる通常の排気制御と、PM酸化制御とが含まれている。
【0037】
(通常の排気制御)
通常の排気制御は、前記PM酸化制御が不要なときに実施される。この制御では、図1に示すように、触媒上流切換弁26、触媒下流切換弁28および排気切換弁30をそれぞれ通常位置(ポートA→Bが流路となる位置)に保持する。これにより、排気ガスは、排気通路12内を順方向に流通する。このとき、排気ガス中のHC、CO等は、酸化触媒14により酸化され、また排気ガス中のPMはDPF16により捕集されるので、排気ガスを浄化することができる。また、本実施の形態では、酸化触媒14をDPF16の上流側に配置している。これにより、酸化触媒14を排気熱によって可能な限り早期に活性化させることができる。
【0038】
(PM酸化制御)
PM酸化制御は、DPF16内に捕集されたPMをオゾンにより酸化、除去し、その性能を再生するものである。本実施の形態では、所定の制御条件が成立したときに、PM酸化制御を行う。この条件の一例を挙げれば、(1)内燃機関が停止状態である、(2)内燃機関の運転中におけるDPF16の上流側と下流側との圧力差が所定の基準判定値よりも大きい、(3)酸化触媒14が活性状態であり、かつ排気ガスの温度がオゾンの熱分解温度よりも低い、などである。
【0039】
本実施の形態では、PM酸化制御を行うときに、DPF16から酸化触媒14に向けてガスを逆方向に流通させる。このため、PM酸化制御は、上記条件(1)の成立時、即ち、内燃機関の停止中に行う必要がある。なお、内燃機関が運転中でも、触媒還流通路22等によりガスを逆方向に流通させることが可能な構成とすれば、PM酸化制御を行うことができる。このため、本発明では、条件(1)の成立を必須要件とするものではない。
【0040】
また、PM酸化制御は、DPF16内のPM捕集量が酸化処理を必要とするレベルに達したとき、即ち、上記条件(2)が成立したときに行う必要がある。条件(2)における圧力差の基準判定値とは、酸化処理が必要なレベルのPM捕集量に対応した圧力差として予め求められており、ECU40に記憶されている。なお、ECU40は、内燃機関の運転中に検出した前記圧力差を、機関の停止後にも記憶しておく機能を有している。
【0041】
さらに、PM酸化制御では、熱分解し易いオゾンによりPMを酸化しつつ、この酸化により生じたCOを酸化触媒14によって浄化する。このため、PM酸化制御の実行時には、上記条件(3)が成立している必要がある。ここで、図2は、酸化触媒によるCO浄化率と、触媒温度との関係を示す特性線図である。この図に示すように、触媒の温度が低くなるにつれて、CO浄化率は低下する。そこで、本実施の形態では、酸化触媒14が活性化しているか否かを判定する上で分岐点となる温度(活性温度)を、例えば200℃(CO浄化率が40%となる温度)として設定している。なお、この活性温度は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
また、図3は、オゾンの分解率と温度との関係を示す特性線図である。この図に示すように、例えば雰囲気温度が250℃よりも高くなると、オゾンの熱分解率が上昇し、PMの酸化効率が低下する。なお、250℃という温度の具体値は、本実施の形態で採用した一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
以上のことから、本実施の形態では、触媒温度センサ32による検出温度が200℃以上となり、かつフィルタ温度センサ34による検出温度が250℃以下であるときに、前記条件(3)が成立したものと判定する。そして、ECU40は、上記の条件(1),(2),(3)の全てが成立したときに、PM酸化制御を実行するものである。
【0044】
図4は、本発明の実施の形態1において、PM酸化制御を実行した状態を示す動作説明図である。この制御では、まず、図4に示すように、触媒上流切換弁26をポートC→Bが流路となる位置(制御用位置)に切換える。また、触媒下流切換弁28をポートA→Cが流路となる制御用位置に切換え、さらに排気切換弁30をポートC→Bが流路となる制御用位置に切換える。そして、オゾン発生器18を作動させ、DPF16の上流側にオゾンを供給すると、このオゾンは、排気通路12の上流部12aが触媒下流切換弁28により遮断されているために、DPF16に流入し、その内部でPMを酸化する。
【0045】
これにより、DPF16内では、オゾンとPMとの反応によりCO2、CO、O2等のガスが生じ、このガスはDPF16の下流側に流出する。このとき、排気通路12の下流部12cは触媒下流切換弁28により遮断されている。また、触媒還流通路22の上流側は触媒上流切換弁26を介して排気通路12の上流部12aに接続されている。このため、DPF16から流出したガスは、触媒還流通路22によって上流部12aに還流され、酸化触媒14に流入する。この結果、ガス中のCOは酸化触媒14により酸化され、酸化触媒14からは浄化されたガスが流出する。そして、この浄化ガスは、排気切換弁30により大気開放された触媒排気通路24に流入し、外部に排出される。
【0046】
[実施の形態1を実現するための具体的な処理]
図5は、本発明の実施の形態1において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。図5に示すルーチンでは、まず、通常走行時において、触媒上流切換弁26(上流切換弁)、触媒下流切換弁28(下流切換弁)および排気切換弁30を前述した通常位置に保持する(ステップ100)。この状態において、触媒温度センサ32とフィルタ温度センサ34の出力は、250℃以上となっている。なお、内燃機関が運転中の場合には、ステップ100の処理を実行しつつ待機する。
【0047】
次に、ステップ102で内燃機関が停止したことを検出した場合には、ステップ104において、PMの捕集量が基準レベル以上か否か、即ち、前述した条件(2)が成立しているか否かを判定する。具体的には、運転中に記憶しておいた圧力差が前記基準判定値を超えているか否かを判定する。この判定が不成立のときには、PM酸化制御を実行せずに、そのまま終了する。
【0048】
一方、ステップ104の判定成立時には、前述した条件(3)が成立しているか否かを判定する(ステップ106)。この判定成立時には、PM燃焼制御を実行する。即ち、各切換弁26,28,30を前述した制御用位置に切換え(ステップ108)、オゾン発生器18を作動させる(ステップ110)。
【0049】
また、ステップ106の判定が不成立のときには、触媒温度センサ32による検出温度が酸化触媒14の活性温度以下であるか否かを判定する(ステップ112)。この判定成立時には、内燃機関が停止してから時間が経過し、触媒14が不活性となる温度まで冷えたので、PM燃焼制御を終了する。具体的には、オゾン発生器18によるオゾンの供給を停止し(ステップ114)、各切換弁26,28,30を通常位置に戻す(ステップ116)。なお、ステップ112の判定が不成立のときには、そのまま終了する。
【0050】
かくして、本実施の形態によれば、PM酸化制御の実行条件が成立したときには、DPF16にオゾンを供給しつつ、DPF16から酸化触媒14に向けてガスを逆方向に流通させることができる。このとき、触媒上流切換弁26は、酸化触媒14の上流側を触媒還流通路22に接続することができる。また、触媒下流切換弁28は、酸化触媒14の下流側を触媒排気通路24に接続することができ、排気切換弁30は、DPF16の下流側で排気通路12を遮断することができる。これにより、DPF16内のPMがオゾンと反応することにより生じたガスを、触媒還流通路22によって酸化触媒14に流入させることができる。また、酸化触媒14から流出したガスを、触媒排気通路24によって外部に排出することができる。
【0051】
従って、本実施の形態によれば、PMの酸化により生じたガス中のCOを、活性化した酸化触媒14により確実に浄化することができる。このため、COの排出を抑制することができ、排気エミッションを向上させることができる。しかも、本実施の形態では、通常時の排気ガスを浄化するための酸化触媒14を利用して、PMの酸化時に生じるCOを浄化することができる。このため、酸化処理専用の浄化機器等を搭載する必要がないので、システムの構造を簡略化することができ、その小型化やコストダウンを図ることができる。また、PM酸化制御の実行時には、仮りにDPF16に余分なオゾンが供給されたとしても、このオゾンを酸化触媒14によって分解することができる。従って、COの排出だけでなく、余分なオゾンが外部に排出されるのも防止することができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、例えばDPF16内に処理が必要な量のPMが捕集されたことを、DPF16の圧力差と基準判定値との比較により容易に判定することができる。そして、PMの捕集量が多くなり、かつオゾンが熱分解しない温度環境であるときに、PM酸化制御を実行することができる。これにより、DPF16を効率よく再生することができる。
【0053】
しかも、本実施の形態では、内燃機関が停止しているときに、PM酸化制御を実行するようにしている。この構成によれば、内燃機関が停止した状態では、DPF16から酸化触媒14に向けてガスを逆方向に流通させることができ、これによりPM酸化制御を容易に実行することができる。また、例えば内燃機関が停止する毎にPM酸化制御を行う構成とした場合には、始動時にDPF16を常に再生した状態で使用することができる。これにより、DPF内に溜まったPMの捕集量等を検出、推定しなくても、PM酸化制御を的確なタイミングで行うことができる。さらに、例えば内燃機関と電動モータとを併用するハイブリッド車等では、電動モータにより走行するときに、内燃機関を停止させることがある。従って、この停止期間を利用してPM酸化制御を円滑に行うことができる。
【0054】
実施の形態2.
次に、図6乃至図8を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。なお、本実施の形態では、前記実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0055】
[実施の形態2の特徴]
図6は、本発明の実施の形態2のシステム構成を説明するための全体構成図である。本実施の形態のシステムは、実施の形態1とほぼ同様に、排気通路12、酸化触媒14、DPF16、オゾン発生器18、触媒還流通路22、触媒排気通路24、切換弁26,28,50、センサ32,34,36等を備えている。しかし、本実施の形態では、実施の形態1に対して排気切換弁50の配置を変更している。即ち、排気切換弁50は、排気通路12と触媒排気通路24との接続部ではなく、排気通路12と触媒還流通路22との接続部に配置されており、この点で実施の形態1と構成が異なるものである。
【0056】
そして、通常の排気制御では、図6に示すように、排気切換弁50がポートA→Bを流路とする通常位置に保持される。一方、図7は、本発明の実施の形態2において、PM酸化制御を実行した状態を示す動作説明図である。この図に示すように、PM酸化制御の実行時には、排気切換弁50がポートA→Cを流路とする制御用位置に切換えられる。これにより、DPF16から流出したガスは、触媒還流通路22を介して酸化触媒14の上流側に還流される。なお、これらの制御において、他の切換弁26,28は、実施の形態1と同様に作動する。このように構成される本実施の形態でも、実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
[実施の形態2を実現するための具体的な処理]
図8は、本発明の実施の形態2において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。この図に示すように、本実施の形態のステップ200〜216では、実施の形態1のステップ100〜116とほぼ同様の制御を行う。ただし、ステップ208では、前述したように、排気切換弁50の制御用位置が実施の形態1と異なる位置となる。
【0058】
実施の形態3.
次に、図9乃至図11を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。なお、本実施の形態では、前記実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0059】
[実施の形態3の特徴]
図9は、本発明の実施の形態3のシステム構成を説明するための全体構成図である。本実施の形態のシステムは、実施の形態1とほぼ同様に、排気通路12、酸化触媒14、DPF16、オゾン発生器18、センサ32,34,36等を備えている。そして、排気通路12には、上流側から下流側に向けて酸化触媒14、DPF16およびオゾン供給口20が順次配置されている。しかし、本実施の形態では、PM酸化制御の実行時に排気通路12内でガスを逆方向に流通させることにより、実施の形態1の触媒還流通路22、触媒排気通路24等を用いなくてもよい構成を実現している。
【0060】
本実施の形態のシステムは、ECU40により制御される排気遮断弁60と逆流開放弁62と備えている。これらの弁は、本実施の形態の切換手段であり、電磁駆動式の開閉弁等により構成されている。そして、排気遮断弁60は、DPF16およびオゾン供給口20の下流側で排気通路12に設けられており、この位置で排気通路12を開,閉する。また、逆流開放弁62は、酸化触媒14の上流側で排気通路12に配置または接続されており、この位置で排気通路12を外部に対して開放,遮断するものである。
【0061】
(通常の排気制御)
このように構成されたシステムにおいて、通常の排気制御では、図9に示すように、排気遮断弁60が開弁状態に保持され、逆流開放弁62が閉弁状態に保持される。これにより、排気ガスは、酸化触媒14からDPF16に向けて排気通路12内を順方向に流通し、これらの機器により順次浄化される。
【0062】
(PM酸化制御)
図10は、本発明の実施の形態3において、PM酸化制御を実行した状態を示す動作説明図である。この図に示すように、PM酸化制御の実行時には、排気遮断弁60を閉弁し、排気通路12を下流側で遮断すると共に、逆流開放弁62を開弁し、酸化触媒14の上流側を大気開放する。そして、オゾン発生器18を作動させ、DPF16の下流側にオゾンを供給すると、このオゾンはDPF16に流入し、その内部でPMを酸化する。この酸化反応により生じたガスは、DPF16の上流側から酸化触媒14に向けて逆方向に流出し、酸化触媒14に流入する。この結果、ガス中のCOは酸化触媒14により酸化され、酸化触媒14からは浄化されたガスが流出する。そして、この浄化ガスは、逆流開放弁62により外部に排出される。
【0063】
[実施の形態3を実現するための具体的な処理]
図11は、本発明の実施の形態3において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。この図に示すように、本実施の形態のステップ300〜316では、実施の形態1のステップ100〜116とほぼ同様の制御を行う。この場合、通常排気制御の実行中(ステップ300)には、排気遮断弁60を開弁し、逆流開放弁62を閉弁する。また、PM燃焼制御の実施中(ステップ308)には、排気遮断弁60を閉弁し、逆流開放弁62を開弁する。そして、PM燃焼制御の終了時(ステップ316)には、これらの弁を通常時の位置に戻すようになっている。
【0064】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、実施の形態1,2とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、ガスの流通方向を切換えることにより、排気通路12だけを用いて通常の排気制御とPM酸化制御とを容易に実行することができる。即ち、PM酸化制御の実行時には、排気遮断弁60によりDPF16の下流側で排気通路12を遮断することができる。このとき、逆流開放弁62は、酸化触媒14の上流側を大気開放することができる。
【0065】
そして、オゾンの供給時には、DPF16から流出したガスを酸化触媒14に対して下流側から流入させつつ、酸化触媒14の上流側から流出したガスを逆流開放弁62により外部に排出することができる。従って、本実施の形態では、PM酸化制御の実行時にガスを逆方向に流通させるための分岐通路、バイパス通路等が必要ない上に、処理したガスを上流側で排気することにより余分な通路等を下流側に引回す必要がない。このため、システムの配管構造、弁構造等を簡略化し、省スペース化を図ることができる。
【0066】
実施の形態4.
次に、図12乃至図14を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。なお、本実施の形態では、前記実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0067】
[実施の形態4の特徴]
図12は、本発明の実施の形態4のシステム構成を説明するための全体構成図である。本実施の形態のシステムは、実施の形態1とほぼ同様に、排気通路12、酸化触媒14、DPF16、オゾン発生器18、センサ32,34,36等を備えている。しかし、本実施の形態では、バイパス通路70と、2つの切換弁72,24とを備えており、これらは本実施の形態の切換手段を構成している。
【0068】
ここで、バイパス通路70は、酸化触媒14とDPF16とをバイパスする位置で排気通路12に接続されている。即ち、バイパス通路70の一端側は、酸化触媒14の上流側で排気通路12に接続され、バイパス通路70の他端側は、DPF16およびオゾン供給口20の下流側で排気通路12に接続されている。本実施の形態において、PM酸化制御の実行時には、排気通路12を逆方向に流通したガスが酸化触媒14の上流側から流出する。バイパス通路70は、このガスをDPF16に流入させずに外部に排出する。
【0069】
一方、切換弁72,74は、実施の形態1の切換弁26等と同様の三方弁等により構成され、それぞれ3つのポートA,B,Cを有している。これらの切換弁72,74のうち、バイパス上流切換弁72は、バイパス通路70の上流部と排気通路12との接続部に配置されている。そして、バイパス上流切換弁72は、酸化触媒14の上流側に接続する対象を、内燃機関10とバイパス通路70との間で切換えるものである。一方、バイパス下流切換弁74は、バイパス通路70の下流部と排気通路12との接続部に配置されている。そして、バイパス下流切換弁74は、DPF16の下流側とバイパス通路70の下流側のうち、何れか一方の部位を外部に対して切換可能に開放し、他方の部位を遮断するものである。
【0070】
(通常の排気制御)
本実施の形態において、通常の排気制御では、図12に示すように、2つの切換弁72,74を通常位置(ポートA→Bが流路となる位置)に保持する。これにより、排気ガスは、酸化触媒14からDPF16に向けて排気通路12内を順方向に流通する。
【0071】
(PM燃焼制御)
図13は、本発明の実施の形態4において、PM酸化制御を実行した状態を示す動作説明図である。この図に示すように、PM酸化制御の実行時には、バイパス上流切換弁72をポートB→Cが流路となる制御用位置に切換え、バイパス下流切換弁74をポートC→Bが流路となる制御用位置に切換える。これにより、排気通路12の下流側は、バイパス下流切換弁74の位置で遮断された状態となる。また、酸化触媒14の上流側は、バイパス通路70を介して大気開放された状態となる。このため、DPF16の下流側にオゾンを供給すると、このオゾンはDPF16内に流入し、PMを酸化する。そして、酸化反応により生じたガスは、実施の形態3とほぼ同様に、排気通路12内を逆方向に流通し、酸化触媒14に流入する。この結果、酸化触媒14によりCOが浄化されたガスは、バイパス通路70を介して外部に排出される。
【0072】
[実施の形態4を実現するための具体的な処理]
図14は、本発明の実施の形態3において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。この図に示すように、本実施の形態のステップ400〜416では、実施の形態1のステップ100〜116とほぼ同様の制御を行う。この場合、通常排気制御の実行中(ステップ400)には、バイパス上流切換弁72(上流切換弁)とバイパス下流切換弁74(下流切換弁)とを前述した通常位置に保持する。また、PM燃焼制御の実施中(ステップ408)には、これらの切換弁72,74を制御用位置に切換える。そして、PM燃焼制御の終了時(ステップ416)には、切換弁72,74を通常位置に戻すようになっている。
【0073】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、実施の形態1乃至3とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、本実施の形態では、PM酸化制御の実行時に、バイパス上流切換弁72により酸化触媒14の上流側にバイパス通路70を接続することができる。このとき、バイパス下流切換弁74は、バイパス通路70の下流側を大気開放し、DPF16の下流側を遮断することができる。これにより、オゾンの供給時には、DPF16から流出したガスを酸化触媒14に対して下流側から流入させつつ、、酸化触媒14の上流側から流出したガスを、バイパス通路70により外部に排出することができる。従って、本実施の形態でも、システムに必要な切換弁の個数を抑えることができる。
【0074】
また、図15は、本発明の実施の形態1乃至4におけるCOと残留オゾンの排出量を示す説明図である。図15中に示すシステム(1)〜(4)は、実施の形態1〜4のシステムに対応している。また、比較例とは、PMの酸化時に生じるCOや残留オゾンを浄化せずにそのまま排出した場合を示している。この図に示すように、何れの実施形態においても、PMの酸化時にCOの排出量と残留オゾンの排出量とを確実に低減することができ、DPF16の再生時に排気エミッションを向上させることができる。
【0075】
なお、前記実施の形態1では、図5中に示すステップ102,104,106,108,110が再生制御手段の具体例を示している。また、これと同様に、図8中に示すステップ202〜210、図11中に示すステップ302〜310および図14中に示すステップ402〜410は、実施の形態2乃至4における再生制御手段の具体例をそれぞれ示している。
【0076】
また、実施の形態では、DPF16の上流側と下流側の圧力差がPMの捕集量に応じて変化するのを利用し、前記圧力差に応じてPM酸化制御を実施するか否かを判定する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば内燃機関の運転状態等に応じてDPF16内に捕集されたPMの捕集量(蓄積量)を積算し、その積算値に応じてPM酸化制御を実施するか否かを判定する構成としてもよい。
【0077】
また、実施の形態では、排気ガス中に添加する活性酸素として、オゾンを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、オゾンに代えて、他の種類の活性酸素(例えば、O-,O2-,O2-,O3-,On-等で表される酸素マイナスイオン)を排気ガス中に添加するようにしてもよい。
【0078】
また、実施の形態では、オゾン発生器18を排気ガスの流路外に設け、DPF16とは別個に配置する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、オゾン発生器を排気ガスの流路中に配置したり、DPF16の内部に配置する構成としてもよい。そして、このような配置を採用した場合には、例えば排気ガスの流路中やDPFの内部で高電圧放電等によりプラズマを発生させ、これにより活性酸素(オゾン等)を生成する構成としてもよい。
【0079】
さらに、実施の形態では、ディーゼルエンジンからなる内燃機関10に適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばガソリンエンジン等を含めて各種の内燃機関に広く適用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図である。
【図2】酸化触媒によるCO浄化率と触媒温度との関係を示す特性線図である。
【図3】オゾンの分解率と温度との関係を示す特性線図である。
【図4】本発明の実施の形態1において、PM酸化制御を実行した状態を示す動作説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2のシステム構成を説明するための全体構成図である。
【図7】本発明の実施の形態2において、PM酸化制御を実行した状態を示す動作説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態3のシステム構成を説明するための全体構成図である。
【図10】本発明の実施の形態3において、PM酸化制御を実行した状態を示す動作説明図である。
【図11】本発明の実施の形態3において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態4のシステム構成を説明するための全体構成図である。
【図13】本発明の実施の形態4において、PM酸化制御を実行した状態を示す動作説明図である。
【図14】本発明の実施の形態4において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態1乃至4におけるCOと残留オゾンの排出量を示す説明図である。
【符号の説明】
【0081】
10 内燃機関
12 排気通路
12a 上流部
12b 中流部
12c 下流部
14 酸化触媒
16 DPF(PMフィルタ)
18 オゾン発生器(活性酸素供給手段)
20 オゾン供給口
22 触媒還流通路(切換手段)
24 触媒排気通路(切換手段)
26 触媒上流切換弁(切換手段)
28 触媒下流切換弁(切換手段)
30,50 排気切換弁(切換手段)
32 触媒温度センサ(パラメータ取得手段)
34 フィルタ温度センサ
36 圧力センサ(圧力検出手段)
40 ECU
60 排気遮断弁(切換手段)
62 逆流開放弁(切換手段)
70 バイパス通路(切換手段)
72 バイパス上流切換弁(切換手段)
74 バイパス下流切換弁(切換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスが流通する排気通路に設けられ、排気ガス中の未浄化成分を酸化により浄化する酸化触媒と、
前記酸化触媒の下流側で前記排気通路に設けられ、排気ガス中の粒子状物質を捕集するPMフィルタと、
前記PMフィルタに活性酸素を供給するための活性酸素供給手段と、
前記PMフィルタから前記酸化触媒に向けてガスが逆方向に流通するように、ガスの流路または流通方向を通常時に対して切換えることが可能な切換手段と、
前記酸化触媒の活性状態に対応する温度パラメータを取得するパラメータ取得手段と、
少なくとも前記温度パラメータに基いて前記酸化触媒が活性状態であると判定したときに、前記活性酸素供給手段により前記PMフィルタに活性酸素を供給し、かつ前記切換手段により前記PMフィルタから前記酸化触媒に向けてガスを流通させるPM酸化制御を実行する再生制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記PMフィルタの上流側と下流側の圧力差を検出する圧力検出手段を備え、
前記再生制御手段は、排気ガスの温度と前記圧力差とに応じて前記PM酸化制御を実行するか否かを判定する構成としてなる請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記再生制御手段は、排気ガスの温度が前記活性酸素の熱分解温度よりも低く、かつ前記圧力差が所定の基準判定値よりも大きいときに、前記PM酸化制御を実行する構成としてなる請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記再生制御手段は、内燃機関が停止状態となったときに、前記PM酸化制御を実行する構成としてなる請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記切換手段は、
前記酸化触媒と前記PMフィルタとをバイパスする位置で前記排気通路に接続され、前記PMフィルタから流出したガスを前記酸化触媒の上流側に還流させる触媒還流通路と、
前記PMフィルタをバイパスする位置で前記排気通路に接続され、前記酸化触媒から流出したガスを前記PMフィルタよりも上流側で外部に排出する触媒排気通路と、
通常時は前記酸化触媒の上流側を内燃機関に接続し、前記PM酸化制御の実行時には前記酸化触媒の上流側を前記触媒還流通路に接続する触媒上流切換弁と、
通常時は前記酸化触媒の下流側を前記PMフィルタに接続し、前記PM酸化制御の実行時には前記酸化触媒の下流側を前記触媒排気通路に接続する触媒下流切換弁と、
通常時は前記排気通路を開放し、前記PM酸化制御の実行時には前記排気通路を遮断して前記PMフィルタから流出したガスを前記触媒還流通路に流入させる排気切換弁と、
を備えてなる請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記切換手段は、
前記PMフィルタの下流側で前記排気通路を開,閉する排気遮断弁と、
前記酸化触媒の上流側を外部に対して開放,遮断する逆流開放弁と、
を備えてなる請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記切換手段は、
前記酸化触媒と前記PMフィルタとをバイパスする位置で前記排気通路に接続されたバイパス通路と、
前記酸化触媒の上流側に接続する対象を内燃機関と前記バイパス通路との間で切換えるバイパス上流切換弁と、
前記PMフィルタの下流側と前記バイパス通路の下流側のうち、何れか一方の部位を外部に対して切換可能に開放し、他方の部位を遮断するバイパス下流切換弁と、
を備えてなる請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記活性酸素供給手段は、前記活性酸素としてオゾンを供給する構成としてなる請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−84734(P2010−84734A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257504(P2008−257504)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】