説明

内燃機関及び内燃機関の燃料噴射制御装置

【課題】適正な燃焼状態を実現することができる内燃機関及び内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】燃料と空気との混合気が燃焼可能な燃焼室1aに空気を供給する吸気通路5内に燃料を噴射可能な吸気通路噴射手段6及び燃焼室1a内に燃料を直接噴射可能な筒内噴射手段7を制御すると共に、燃料に混合されているアルコールの濃度に応じて変化する要求噴射量と、基準となる濃度に応じた要求噴射量である基準要求噴射量との差分の差分噴射量に基づいて、吸気通路噴射手段6による燃料の噴射量を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関及び内燃機関の燃料噴射制御装置に関し、特に、吸気通路内に燃料を噴射可能な吸気通路噴射手段と燃焼室内に燃料を直接噴射可能な筒内噴射手段とが設けられた、いわゆる、デュアル噴射式の内燃機関及び内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気分岐管や吸気ポートなどの吸気通路内に燃料を噴射可能な吸気通路噴射用インジェクタ(吸気通路噴射手段)と、筒内の燃焼室内に燃料を直接噴射可能な筒内噴射用インジェクタ(筒内噴射手段)とが設けられた、いわゆる、デュアル噴射式の内燃機関が知られている。デュアル噴射式の内燃機関では、運転状態に応じてインジェクタを切り替えて使用することができ、例えば、1噴射行程における全燃料噴射量をそれぞれのインジェクタで分担する噴き分けを行うなどして、その時々の運転状態に適した好ましい特性を得るようにしている。
【0003】
一方、近年の車両に搭載される内燃機関では、ガソリンに加えて代替燃料としてアルコールを同時に使用可能なシステムが実用化されている。例えば、このようなシステムを搭載した車両であるFFV(Flexible Fuel Vehicle)では、ガソリンのみや、ガソリンとアルコールとの混合燃料、あるいはアルコールのみで走行可能になっている。このようなFFVでは、使用する燃料のアルコール濃度を0パーセント〜100パーセントの間で変化させて使用することができる。
【0004】
このようなアルコールを含む燃料を使用可能なデュアル噴射式の従来の内燃機関及び内燃機関の燃料噴射制御装置として、例えば、特許文献1に記載されているアルコールエンジンの燃料噴射制御装置は、スロットル開度、エンジン回転数、アルコール濃度などに基づいて、吸気系に設けられたインジェクタ又は気筒内に設けられたインジェクタのいずれか一方を選択し駆動させている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−61642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般にアルコールは、ガソリンと比較して、例えば、低温で気化しにくい、蒸気圧が低い、気化潜熱が高い、引火点が高い等の特性を有すると共に、ガソリンと比較して相対的に酸素濃度が高い等の特性を有している。このため、上述した特許文献1に記載されているアルコールエンジンの燃料噴射制御装置では、例えば、ガソリンとアルコールとの混合燃料、あるいはアルコールのみを燃料として用いる場合、ガソリンのみを燃料として用いる場合と比較して、同等の運転状態を実現するために要求される燃料噴射量が多くなる傾向にあり、このため、ガソリン100パーセントの燃料を前提として各インジェクタから燃料噴射を行うと、例えば、燃料の噴射期間が相対的に長くなるなどにより、混合気の燃焼状態が必ずしも最適な燃焼状態とはならないおそれがあった。
【0007】
そこで本発明は、適正な燃焼状態を実現することができる内燃機関及び内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による内燃機関は、燃料と空気との混合気が燃焼可能な燃焼室に空気を供給する吸気通路内に前記燃料を噴射可能な吸気通路噴射手段と、前記燃焼室内に前記燃料を直接噴射可能な筒内噴射手段と、前記吸気通路噴射手段及び前記筒内噴射手段を制御すると共に、前記燃料に混合されているアルコールの濃度に応じて変化する要求噴射量と、基準となる前記濃度に応じた前記要求噴射量である基準要求噴射量との差分の差分噴射量に基づいて、前記吸気通路噴射手段による前記燃料の噴射量を補正する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明による内燃機関では、前記制御手段は、前記筒内噴射手段による前記燃料の噴射量を前記基準要求噴射量に応じた基準筒内要求噴射量に基づいて制御する一方、前記吸気通路噴射手段による前記燃料の噴射量を前記基準要求噴射量に応じた基準吸気通路要求噴射量と前記差分噴射量とに基づいて制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明による内燃機関では、前記制御手段は、前記濃度が0パーセントである場合の前記要求噴射量を前記基準要求噴射量に設定し、前記濃度が0パーセントよりも高い場合には、前記濃度に基づいて前記吸気通路噴射手段による前記燃料の噴射量を増量することを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項4に係る発明による内燃機関の燃料噴射制御装置は、燃料と空気との混合気が燃焼可能な燃焼室に空気を供給する吸気通路内へ前記燃料を噴射可能な吸気通路噴射手段と、前記燃焼室内へ前記燃料を直接噴射可能な筒内噴射手段とが設けられた内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料に混合されているアルコールの濃度に応じて変化する要求噴射量と、基準となる前記濃度に応じた前記要求噴射量である基準要求噴射量との差分の差分噴射量に基づいて、前記吸気通路噴射手段による前記燃料の噴射量を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る内燃機関によれば、燃料に混合されているアルコールの濃度に応じて変化する要求噴射量と、基準となる濃度に応じた要求噴射量である基準要求噴射量との差分の差分噴射量に基づいて、吸気通路噴射手段による燃料の噴射量を補正する制御手段を備えるので、筒内噴射手段による燃料噴射をアルコール濃度に依存せずに実行することができ、常に適正な燃焼状態を実現することができる。
【0013】
本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、燃料に混合されているアルコールの濃度に応じて変化する要求噴射量と、基準となる濃度に応じた要求噴射量である基準要求噴射量との差分の差分噴射量に基づいて、吸気通路噴射手段による燃料の噴射量を補正するので、筒内噴射手段による燃料噴射をアルコール濃度に依存せずに実行することができ、常に適正な燃焼状態を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る内燃機関及び内燃機関の燃料噴射制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンを表す概略構成図、図2は、本発明の実施形態に係るエンジンにおける要求噴射量を説明するための線図、図3は、本発明の実施形態に係るエンジンにおける燃料噴射制御を説明するためのフローチャートである。なお、図2では、縦軸を要求噴射量、横軸をアルコール濃度としている。
【0016】
なお、以下で説明する実施形態では、図1に示すように、本発明の内燃機関の燃料噴射制御装置100をECU30に組み込んで構成する場合で説明する。すなわち、以下で説明する実施形態では、燃料噴射制御装置100をECU30により兼用する場合で説明する。ただし、本発明の内燃機関の燃料噴射制御装置は、ECU30とは別個に構成され、これをECU30に接続するようにして構成してもよい。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、複数の気筒毎に吸気通路5内に燃料を噴射可能な吸気通路噴射手段としてのポート噴射用インジェクタ6と、筒内の燃焼室1a内に燃料を直接噴射可能な筒内噴射手段としての筒内噴射用インジェクタ7とが設けられた、いわゆる、デュアル噴射式の内燃機関である。このデュアル噴射式のエンジン1では、運転状態に応じてポート噴射用インジェクタ6と筒内噴射用インジェクタ7とを切り替えて使用することができ、例えば、1噴射行程における全燃料噴射量をそれぞれのインジェクタで分担する噴き分けを行うなどして、その時々の運転状態に適した好ましい特性を得ることができる。
【0018】
また、本実施形態に係るエンジン1は、ガソリンに加えて代替燃料としてアルコールを同時に使用可能なFFV(Flexible Fuel Vehicle)用のデュアル噴射式内燃機関である。本実施形態のエンジン1は、使用する燃料に混合されるアルコールの濃度を0パーセント〜100パーセントの間で変化させて使用することができる。なお、本実施形態では、エンジン1は、4気筒の内燃機関を示したが、気筒数に特に制限はない。
【0019】
このエンジン1は、燃焼室1aと、エアクリーナ2と、電子スロットル弁3と、サージタンク4と、吸気通路5と、ポート噴射用インジェクタ6と、筒内噴射用インジェクタ7と、点火プラグ8と、排気通路9と、触媒10と、燃料タンク11と、燃料供給系12とを備えている。
【0020】
燃焼室1aは、燃料と空気との混合気が燃焼可能なものであり、本実施形態では4つ設けられている。エンジン1の各気筒において燃焼室1aには、エアクリーナ2から電子スロットル弁3の制御を受けて、サージタンク4および吸気通路5を介して空気が吸入される。なお、この電子スロットル弁3は、必ずしも電子制御可能なものでなくてもよい。
【0021】
吸気通路5は、エンジン1のシリンダヘッドに気筒毎に形成された吸気ポートと、これら吸気ポートに連通してシリンダヘッドに取り付けられる吸気マニホールドとを含んでいる。
【0022】
ポート噴射用インジェクタ6は、吸気通路5に燃料を噴射可能なように気筒毎(燃焼室1a毎)に吸気通路5に設けられている。ポート噴射用インジェクタ6は、電磁式のインジェクタであり、制御手段としての電子制御ユニット(以下、ECU(ECU:Electronic Control Unit)と称す)30から出力されるオン信号により開弁して燃料を噴射し、ECU30から出力されるオフ信号により閉弁して燃料噴射を停止する。ポート噴射用インジェクタ6から噴射された燃料は空気と混合して筒内の燃焼室1aに比較的均質な混合気を形成する。なお、このポート噴射用インジェクタ6は、気筒毎のものに限定されたものではなく、例えば、吸気マニホールドの集合部に設けられたものであってもよい。
【0023】
また、筒内噴射用インジェクタ7は、筒内の燃焼室1aに直接燃料を噴射可能なように気筒毎(燃焼室1a毎)にシリンダヘッドに設けられている。この筒内噴射用インジェクタ7は、吸気行程および圧縮行程のいずれか一方または両方で燃料噴射を行うものである。
【0024】
例えば、圧縮行程噴射の場合、上昇してくるピストンの頂部の凹部(図示せず)に向けて燃料を噴射し、凹部内面に沿うタンブル状の流れを生成する過程で燃料と空気とを混合させ、点火プラグ8付近に比較的リッチな混合気層を形成するように構成されている。
【0025】
この筒内噴射用インジェクタ7もポート噴射用インジェクタ6と同様に、電磁式のインジェクタであり、ECU30から出力されるオン信号により開弁して燃料を噴射し、ECU30から出力されるオフ信号により閉弁して燃料噴射を停止する。
【0026】
このような二つの噴射形態の一方または両方により、燃焼室1aに形成された混合気は、ECU30からの点火信号に基づき、点火プラグ8により点火されて燃焼する。エンジン1の燃焼室1aからの排気は、排気通路9を通じて排出される。
【0027】
排気通路9は、エンジン1のシリンダヘッドに気筒毎に形成された排気ポートと、これら排気ポートに連通してシリンダヘッドに取り付けられる排気マニホールドとが含まれる。
【0028】
この排気通路9の排気マニホールドの下流側には、排気浄化用の触媒10が配設され、触媒10の下流側には排気管が接続されている。また、排気通路9の触媒10の下流には、空燃比を検出する空燃比センサ9aが設けられている。この空燃比センサ9aの出力値に基づき、ECU30により空燃比がフィードバック制御される。なお、吸気通路5の吸気ポートの出口および排気通路9の排気ポートの入口は、それぞれ図示しない吸気弁および排気弁により開閉される。
【0029】
また、各ポート噴射用インジェクタ6及び各筒内噴射用インジェクタ7には、燃料タンク11に貯留された燃料が燃料供給系12を介して供給される。エンジン1は、燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独でまたは混合して使用可能となっており、このため、燃料タンク11には、所定のアルコール濃度を有する燃料が貯留される。この燃料は、ガソリン100パーセントの場合や、メタノール、エタノール等のアルコールがガソリンに混合された混合燃料の場合、更にはアルコール100パーセントの場合もある。
【0030】
燃料供給系12は、各筒内噴射用インジェクタ7に共通に接続された筒内側デリバリパイプ13と、各ポート噴射用インジェクタ6に共通に接続された吸気側デリバリパイプ17と、これらデリバリパイプ13,17に燃料タンク11内の燃料を供給するための燃料供給管16と、燃料供給管16に燃料タンク11内の燃料を送り込むための低圧燃料ポンプ14とを備えている。
【0031】
燃料供給管16は、途中で分岐されて各デリバリパイプ13,17に接続され、この分岐部と筒内側デリバリパイプ13との間の位置に高圧燃料ポンプ15が設けられている。筒内側デリバリパイプ13には、その内部にある燃料の圧力を検出する燃料圧力センサ23が設けられている。
【0032】
高圧燃料ポンプ15は、低圧燃料ポンプ14により送られてきた燃料を筒内側デリバリパイプ13に圧送し、筒内側デリバリパイプ13内の燃料圧、すなわち、筒内噴射用インジェクタ7の噴射圧を比較的高圧になるまで高める。
【0033】
この高圧燃料ポンプ15は、制御弁を有し、その吐出流量がECU30により制御されることにより筒内噴射の噴射圧が制御されることになる。なお、筒内側デリバリパイプ13内の燃料を燃料タンク11に積極的に回収するために、燃料回収系18も設けられている。この燃料回収系18には、リリーフバルブ20が設けられ、リリーフバルブ20はECU30により開閉制御され、エンジン1の運転時には通常閉とされる。なお、リリーフバルブ20は、ECU30によって制御されるものに限らず、例えば、所定圧力以上で開弁する機械式のものであってもよい。また、リリーフバルブ20は、筒内側デリバリパイプ13に設けられるものに限らず、例えば、高圧燃料ポンプ15に直接内蔵されていてもよい。
【0034】
燃料供給系12には、燃料に混合されているアルコールの濃度、すなわち、アルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段としてのアルコール濃度センサ21が設けられている。このアルコール濃度センサ21は、例えば、燃料の誘電率に基づいてアルコール濃度を検出する静電容量式のものを用いることができるが、燃料の屈折率に基づいてアルコール濃度を検出する光学式のものを使用してもよく、その検出原理には限定されない。
【0035】
このアルコール濃度センサ21は、燃料供給管16の分岐部の上流側に設けられている。なお、空燃比センサ9aからの出力信号に基づいた排気空燃比の学習によりアルコール濃度を推定してもよく、この推定手段をアルコール濃度検出手段としてもよい。その場合には、上記アルコール濃度センサ21を設けなくてもよい。
【0036】
ECU30は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器および入出力インターフェイス等を含んで構成されるマイクロコンピュータを備え、各種センサ類からの入力信号を受け、これに基づいて所定の演算処理を行い、筒内噴射用インジェクタ7、ポート噴射用インジェクタ6、点火プラグ8、電子スロットル弁3の駆動モータ19、低圧燃料ポンプ14、高圧燃料ポンプ15、リリーフバルブ20等を制御する。
【0037】
燃料噴射制御装置100としてのこのECU30は、エンジン1の運転状態に基づいて、基本的には、所定の運転状態を実現するために要求される燃料噴射量である要求噴射量を算出すると共に、この要求噴射量に基づいて、筒内噴射用インジェクタ7による燃料の噴射量である筒内要求噴射量、及び、ポート噴射用インジェクタ6による燃料の噴射量であるポート要求噴射量(吸気通路要求噴射量)を算出する要求噴射量算出手段として機能するものである。
【0038】
また、上記センサ類には、上述のアルコール濃度センサ21および燃料圧力センサ23が含まれる。また、これら以外に以下のものも含まれる。すなわち、エンジン1にはそのクランク位相を検出するためのクランクセンサ24が設けられる。クランクセンサ24は、所定のクランク位相間隔でパルス信号を出力する。ECU30は、このパルス信号に基づいてエンジン1の実際のクランク位相を検知するとともに、回転速度を演算する。
【0039】
また、吸気温を検出する吸気温センサ26、アクセルペダルの踏込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ27、電子スロットル弁3の開度を検出するスロットルポジションセンサ28、エンジン1の冷却水温(以下、単に水温と称する)を検出する水温センサ29、および電子スロットル弁3下流の吸気通路5内の圧力を検出する吸気圧センサ25が上記センサ類に含まれる。ここで、吸気圧センサ25の出力値は、吸入空気量やエンジン負荷の算出等に利用されるが、このような算出を行うために、吸気圧センサ25に代わって空気量センサを設けたり、両者を併用したりすることができる。
【0040】
次に、以上の構成からなるエンジン1及び燃料噴射制御装置100に関し、ECU30により行なわれる制御を以下に説明する。先ず、ベースとなる制御について説明する。
【0041】
通常運転時の燃料噴射制御に関し、ECU30のメモリ(ROM)には、エンジン1の運転状態(ここでは、エンジンの回転速度と負荷)に関連付けられた要求噴射量、及び、ポート噴射用インジェクタ6と筒内噴射用インジェクタ7との噴射割合(噴き分け率)のマップが予め記憶されている。ECU30は、基本的には、クランクセンサ24の出力信号に基づき演算された実際の回転速度(エンジン回転数)と、吸気圧センサ25の出力信号に基づき演算された実際の吸入空気量、負荷とから、上記マップを参照して要求噴射量、及び、その噴射割合を算出する。そして、ECU30は、この要求噴射量と噴射割合とに基づいて、筒内噴射用インジェクタ7による燃料の噴射量である筒内要求噴射量、及び、ポート噴射用インジェクタ6による燃料の噴射量であるポート要求噴射量を算出する。
【0042】
こうして各ポート噴射用インジェクタ6、筒内噴射用インジェクタ7の燃料噴射量等が決定されたら、ECU30は、これら燃料噴射量を各ポート噴射用インジェクタ6、筒内噴射用インジェクタ7の通電時間に換算する。そして、ECU30は、エンジン1の運転状態に応じて定まる目標噴射時期の到来と同時に、当該通電時間だけ、対応するポート噴射用インジェクタ6、筒内噴射用インジェクタ7をオンする。これにより、ポート噴射用インジェクタ6、筒内噴射用インジェクタ7が開弁され、要求噴射量相当の燃料が噴射される。
【0043】
目標噴射時期は、上述の噴射量マップと同様の噴射時期マップを参照して上記と同様の要領で決定される。また目標点火時期も同様に決定され、この目標点火時期に一致させて点火プラグ8による点火が実行される。筒内側デリバリパイプ13内の燃料圧、すなわち筒内噴射の噴射圧は、上述の噴射量マップと同様の噴射圧マップを参照してフィードバック制御される。
【0044】
すなわち、検出されたエンジン1の運転状態(本実施形態では回転速度と負荷)に対応する噴射圧の目標値がマップから算出され、燃料圧力センサ23の検出値がこの目標値に一致するように高圧燃料ポンプ15が制御される。電子スロットル弁3の開度制御は、基本的には、スロットルポジションセンサ28の出力値がアクセル開度センサ27の出力値に応じた値となるように駆動モータ19を制御するフィードバック制御である。
【0045】
なお、吸気側デリバリパイプ17内の燃料圧は基本的に制御されず一定である。したがって、ポート噴射用インジェクタ6による噴射圧も基本的には一定である。この吸気通路噴射圧は筒内噴射圧よりも低い。
【0046】
ここで、本実施形態のエンジン1は、燃料としてアルコールとガソリンとをそれぞれ単独でまたは混合して使用可能であることから、上記要求噴射量を燃料中のアルコール濃度に応じて補正する必要がある。
【0047】
すなわち、一般にアルコールは、ガソリンと比較して、例えば、低温で気化しにくい、蒸気圧が低い、気化潜熱が高い、引火点が高い等の特性を有すると共に、ガソリンと比較して相対的に酸素濃度が高い等の特性を有している。このため、ガソリンとアルコールとの混合燃料、あるいはアルコールのみを燃料として用いる場合は、ガソリンのみを燃料として用いる場合と比較して、同等の運転状態を実現するために要求される燃料噴射量が多くなる傾向にある。つまり、図2に示すように、上述の要求噴射量は、燃料に混合されているアルコール濃度に応じて変化し、すなわち、燃料中のアルコール濃度が高くなるほど増加する。
【0048】
ここでは、ECU30は、アルコール濃度が0パーセントである場合、すなわち、ガソリンが100パーセントの燃料である場合を基準とし、このガソリンが100パーセントの燃料である場合の要求噴射量を基準要求噴射量Q(図2参照)に設定する。この場合、上記のマップとして、基準要求噴射量Q、及び、ポート噴射用インジェクタ6と筒内噴射用インジェクタ7との噴射割合が予め記憶されている。ここでは、マップに入力されている基準要求噴射量Qは、例えば、燃料がガソリン100パーセント(E0燃料)でエンジン1が同一回転速度および負荷で定常運転されているときに排気空燃比が理論空燃比(=約14.6)となるような値である。そして、ECU30は、この基準要求噴射量Qに対して実際のアルコール濃度A(図2参照)に応じた補正を行い、実際のアルコール濃度Aに応じて実際の燃料噴射に適用される要求噴射量Q’(図2参照)を算出する。
【0049】
ECU30には、例えば、燃料のアルコール濃度Aとアルコール濃度補正係数Kとの関係で表されるマップをメモリ(ROM)に記憶している。このマップでは、例えば、燃料のアルコール濃度Aが0%のとき(即ち燃料がガソリン100%であるとき)、アルコール濃度補正係数Kが1であり、燃料のアルコール濃度が0%から大きくなるに従って(即ち燃料のうちのガソリンの割合が減少するに従って)、アルコール濃度補正係数Kが1から増大される。そして、アルコール濃度センサ21によって検出された実際の燃料のアルコール濃度Aに対応したアルコール濃度補正係数Kが当該マップから求められ、この補正係数Kを上記基準要求噴射量Qに乗じることにより、燃料中の実際のアルコール濃度Aに基づく燃料噴射量の補正が実行され、すなわち、実際のアルコール濃度Aに応じて実際の燃料噴射に適用される要求噴射量Q’が算出される。なお、本実施形態では、ECU30は、これに限らず種々の公知の方法で要求噴射量を燃料中のアルコール濃度に応じて補正すればよい。
【0050】
ところで、上述したようにガソリンとアルコールとの混合燃料、あるいはアルコールのみを燃料として用いる場合は、ガソリンのみを燃料として用いる場合と比較して、同等の運転状態を実現するために要求される燃料噴射量が多くなる傾向にあることから、例えば、燃料の噴射期間が相対的に長くなるおそれがある。また、ガソリンとアルコールとの混合燃料、あるいはアルコールのみを燃料として用いる場合は、噴射期間が相対的に長くなることから、結果的に、トルク変動、エミッション性、燃費、出力、対オイル希釈性などの排気エミッション特性や出力特性等が最適となる燃料噴射開始時期適合値もガソリンのみを燃料として用いる場合とは異なることなる。さらに、例えば、高負荷運転時や高回転運転時に短時間で多量の燃料を噴射させる必要がある場合は、ガソリンとアルコールとの混合燃料、あるいはアルコールのみを燃料として用いる場合に噴射期間が相対的に長くなることから、例えば、燃料の噴射期間が長くなりすぎてスモーク悪化のおそれもある。このため、本実施形態のようなFFV用のエンジン1は、例えば、ガソリン100パーセントの燃料を前提として各ポート噴射用インジェクタ6、筒内噴射用インジェクタ7から燃料噴射を行っても、混合気の燃焼状態が必ずしも最適な燃焼状態とはならないおそれがある。これに対し、アルコール濃度に応じて噴射圧、すなわち、燃圧を上げることで噴射期間を短くすることも可能であるが、この場合、燃圧が上昇することで、噴射される燃料のペネトレーション(貫徹力)も増大してしまい、この結果、シリンダボアに付着する燃料量が増加し、オイル希釈量も増加してしまうおそれがある。
【0051】
そこで、本実施形態に係るエンジン1は、燃料噴射制御装置100としてのECU30が燃料に混合されているアルコール濃度に応じて変化する実際の要求噴射量Q’と、基準となるアルコール濃度に応じた要求噴射量である基準要求噴射量Qとの差分の差分噴射量ΔQ(図2参照)に基づいて、ポート噴射用インジェクタ6による燃料の噴射量を補正することで、適正な燃焼状態の実現を図っている。
【0052】
すなわち、燃焼室1aにおける混合気の燃焼状態は、特に、燃焼室1aに直接燃料を噴射する筒内噴射用インジェクタ7による噴射時期、噴射期間の影響を受け易い傾向にある一方、吸気通路5の吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射用インジェクタ6による噴射時期、噴射期間の影響は比較的小さい。
【0053】
本実施形態に係るエンジン1は、この特性を利用して、筒内噴射用インジェクタ7による燃料噴射量を燃料中のアルコール濃度に依存しないよう設定する一方、燃焼室1aにおける混合気の燃焼状態に対する影響が小さいポート噴射用インジェクタ6によって、燃料中のアルコール濃度が変化することで増減する分の燃料噴射量を噴射する。これにより、燃焼室1aにおける混合気の燃焼状態に影響を与え易い筒内噴射用インジェクタ7による燃料噴射量、噴射時期、噴射期間を燃料中のアルコール濃度に依存せずに設定することができる。つまり、筒内噴射用インジェクタ7による燃料噴射は、アルコール濃度に依存せずに常に基準要求噴射量Qに基づいた燃料噴射とする一方、実際のアルコール濃度Aに応じた実際の要求噴射量Q’と基準要求噴射量Qとの差分噴射量ΔQをポート噴射用インジェクタ6によって噴射することで、実際のアルコール濃度Aに応じた実際の要求噴射量Q’の全量をポート噴射用インジェクタ6と筒内噴射用インジェクタ7とによって噴射することができると共に、燃料中のアルコール濃度にかかわらず常に適正な燃焼状態を実現することができる。
【0054】
具体的には、燃料噴射制御装置100としてのECU30は、筒内噴射用インジェクタ7による燃料の噴射量を基準要求噴射量Qと、この基準要求噴射量Qでの噴射割合とに応じた筒内要求噴射量である基準筒内要求噴射量に設定し、この基準筒内要求噴射量に基づいて筒内噴射用インジェクタ7を制御する。一方、燃料噴射制御装置100としてのECU30は、ポート噴射用インジェクタ6による燃料の噴射量を基準要求噴射量Qと、この基準要求噴射量Qでの噴射割合とに応じたポート要求噴射量である基準ポート要求噴射量(基準吸気通路要求噴射量)に、燃料中のアルコール濃度に応じた差分噴射量ΔQを加算した噴射量に設定し、この基準ポート要求噴射量に差分噴射量ΔQを加算した噴射量に基づいてポート噴射用インジェクタ6を制御する。
【0055】
この本実施形態では、上述したように、燃料噴射制御装置100としてのECU30は、アルコール濃度が0パーセントである場合の要求噴射量を基準要求噴射量Qに設定していることから、アルコール濃度が0パーセントよりも高い場合には、アルコール濃度に応じた差分噴射量ΔQに基づいてポート噴射用インジェクタ6による燃料の噴射量を増量補正する。
【0056】
これにより、燃焼室1aにおける混合気の燃焼状態に影響を与え難いポート噴射用インジェクタ6よる燃料噴射量を実際のアルコール濃度Aに応じた実際の要求噴射量Q’と基準要求噴射量Qとの差分噴射量ΔQによって補正、ここでは、基準要求噴射量Qに応じた基準ポート要求噴射量に差分噴射量ΔQを加算することで、燃焼室1aにおける混合気の燃焼状態に影響を与え易い筒内噴射用インジェクタ7による燃料噴射量を燃料中のアルコール濃度に依存せずに、常に基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量に設定することができると共に、要求噴射量Q’の全量をポート噴射用インジェクタ6と筒内噴射用インジェクタ7とによって噴射することができる。そして、筒内噴射用インジェクタ7による燃料噴射量を燃料中のアルコール濃度に依存せずに、常に基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量に設定することができることから、噴射期間もアルコール濃度に依存せず、ガソリンとアルコールとの混合燃料、あるいはアルコールのみを燃料として用いる場合の噴射期間がガソリンのみを燃料として用いる場合の噴射期間と比較して、相対的に長くなることも防止することができ、常に基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量に対応した噴射期間に設定することができる。この結果、トルク変動、エミッション性、燃費、出力、対オイル希釈性などの排気エミッション特性や出力特性等が最適となる筒内噴射用インジェクタ7の燃料噴射開始時期適合値もアルコール濃度に依存せず、常に基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量に対応した燃料噴射開始時期適合値に設定することができる。したがって、筒内噴射用インジェクタ7による燃料噴射をアルコール濃度に依存せずに常に基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量に基づいた燃料噴射とすることができることから、筒内噴射用インジェクタ7により燃焼室1aに直接燃料を噴射することによる利点を保持しながら燃料中のアルコール濃度にかかわらず常に適正な燃焼状態を実現することができる。
【0057】
また、筒内噴射用インジェクタ7の燃料噴射開始時期適合値がアルコール濃度に依存せず、常に基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量に対応した燃料噴射開始時期適合値を用いることができることから、アルコール濃度に応じた筒内噴射用インジェクタ7の燃料噴射開始時期適合値マップを別途用意しておく必要もないので、適合工数を低減することができ、燃焼室1aにおける混合気の燃焼状態に影響を与え易い筒内噴射用インジェクタ7の燃料噴射制御を簡単に効率よく行うことができる。
【0058】
さらに、筒内噴射用インジェクタ7による噴射期間がアルコール濃度に依存せず、ガソリンとアルコールとの混合燃料、あるいはアルコールのみを燃料として用いる場合の噴射期間がガソリンのみを燃料として用いる場合の噴射期間と比較して、相対的に長くなることを防止することができることから、例えば、高負荷運転時や高回転運転時に短時間で多量の燃料を噴射させる必要がある場合であっても、燃料の噴射期間が長くなりすぎてスモーク悪化を防止することができ、また、噴射期間が長くなることによるエミッション性の悪化も防止することができる。さらに、アルコール濃度に応じて噴射圧、すなわち、燃圧を上げることで噴射期間を短くする必要もないことから、噴射される燃料のペネトレーション(貫徹力)が増大することを防止することができ、この結果、シリンダボアに付着する燃料量が増加することを防止することができ、オイル希釈量が増加することを防止することができる。
【0059】
次に、図3のフローチャートを参照してエンジン1における燃料噴射制御を説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0060】
まず、燃料噴射制御装置100としてのECU30は、クランクセンサ24、吸気圧センサ25などの出力信号に基づいて、エンジン回転数、吸入空気量、負荷などのエンジン1の運転状態を示すパラメータを取得する(S100)。
【0061】
次に、ECU30は、アルコール濃度センサ21の出力信号に基づいて、燃料のアルコール濃度Aを取得する(S102)。
【0062】
次に、ECU30は、エンジン回転数、負荷などに基づいて基準要求噴射量Qと、この基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量、基準ポート要求噴射量を算出すると共に、基準要求噴射量Q、アルコール濃度A、アルコール濃度補正係数Kなどに基づいて、実際のアルコール濃度Aに応じて実際の燃料噴射に適用される要求噴射量Q’を算出する(S104)。
【0063】
次に、ECU30は、基準要求噴射量Qと実際のアルコール濃度Aに応じて実際の燃料噴射に適用される要求噴射量Q’との差分である差分噴射量ΔQを算出する(S106)。
【0064】
そして、ECU30は、筒内噴射用インジェクタ7による燃料の噴射量を基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量に設定し、この基準筒内要求噴射量に基づいて最適な燃料噴射開始時期適合値で筒内噴射用インジェクタ7を制御する一方、ポート噴射用インジェクタ6による燃料の噴射量を基準要求噴射量Qに応じた基準ポート要求噴射量に差分噴射量ΔQを加算した噴射量に設定し、この基準ポート要求噴射量に差分噴射量ΔQを加算した噴射量に基づいて最適な燃料噴射開始時期適合値でポート噴射用インジェクタ6を制御して(S108)、終了する。
【0065】
以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン1によれば、燃料と空気との混合気が燃焼可能な燃焼室1aに空気を供給する吸気通路5の吸気ポート内に燃料を噴射可能なポート噴射用インジェクタ6と、燃焼室1a内に燃料を直接噴射可能な筒内噴射用インジェクタ7と、ポート噴射用インジェクタ6及び筒内噴射用インジェクタ7を制御すると共に、燃料に混合されているアルコール濃度に応じて変化する要求噴射量Q’と、基準となるアルコール濃度に応じた要求噴射量である基準要求噴射量Qとの差分の差分噴射量ΔQに基づいて、ポート噴射用インジェクタ6による燃料の噴射量を補正する燃料噴射制御装置100としてのECU30とを備える。
【0066】
したがって、燃焼室1aにおける混合気の燃焼状態に影響を与え難いポート噴射用インジェクタ6よる燃料噴射量を実際のアルコール濃度Aに応じた実際の要求噴射量Q’と基準要求噴射量Qとの差分噴射量ΔQによって補正することで、燃焼室1aにおける混合気の燃焼状態に影響を与え易い筒内噴射用インジェクタ7による燃料噴射量を燃料中のアルコール濃度に依存せずに設定することができると共に、要求噴射量Q’の全量をポート噴射用インジェクタ6と筒内噴射用インジェクタ7とによって噴射することができる。この結果、筒内噴射用インジェクタ7による燃料噴射をアルコール濃度に依存せずに実行することができ、燃焼室1aに直接燃料を噴射することによる利点を保持しながら燃料中のアルコール濃度にかかわらず常に適正な燃焼状態を実現することができる。
【0067】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン1、燃料噴射制御装置100によれば、燃料噴射制御装置100としてのECU30は、筒内噴射用インジェクタ7による燃料の噴射量を基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量に基づいて制御する一方、ポート噴射用インジェクタ6による燃料の噴射量を基準要求噴射量Qに応じた基準ポート要求噴射量と差分噴射量ΔQとに基づいて制御する。したがって、燃焼室1aにおける混合気の燃焼状態に影響を与え易い筒内噴射用インジェクタ7による燃料噴射量を燃料中のアルコール濃度に依存せずに、常に基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量に設定することができると共に、ポート噴射用インジェクタ6よる燃料噴射量を基準要求噴射量Qに応じた基準ポート要求噴射量と差分噴射量ΔQに基づいて設定することで要求噴射量Q’の全量をポート噴射用インジェクタ6と筒内噴射用インジェクタ7とによって噴射することができる。この結果、筒内噴射用インジェクタ7による燃料噴射をアルコール濃度に依存せずに常に基準要求噴射量Qに応じた基準筒内要求噴射量に基づいた燃料噴射とすることができることから、アルコール濃度に応じた筒内噴射用インジェクタ7の燃料噴射開始時期適合値マップを別途用意しておく必要もないので、適合工数を低減することができる。
【0068】
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン1、燃料噴射制御装置100によれば、燃料噴射制御装置100としてのECU30は、アルコール濃度が0パーセントである場合の要求噴射量を基準要求噴射量Qに設定し、アルコール濃度が0パーセントよりも高い場合には、アルコール濃度に基づいてポート噴射用インジェクタ6による燃料の噴射量を増量する。したがって、燃料に混合されているアルコール濃度に応じて変化する要求噴射量Q’と、基準となるアルコール濃度に応じた要求噴射量である基準要求噴射量Qとの差分の差分噴射量ΔQに基づいて、適正にポート噴射用インジェクタ6による燃料の噴射量を補正することができる。
【0069】
なお、上述した本発明の実施形態に係る燃料噴射弁及び内燃機関は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
以上の説明では、燃料噴射制御装置としての制御手段は、アルコール濃度が0パーセントである場合の要求噴射量を基準要求噴射量に設定し、アルコール濃度が0パーセントよりも高い場合には、アルコール濃度に基づいて吸気通路噴射手段による燃料の噴射量を増量することで、燃料に混合されているアルコールの濃度に応じて変化する要求噴射量と、基準となる濃度に応じた要求噴射量である基準要求噴射量との差分の差分噴射量に基づいて、吸気通路噴射手段による燃料の噴射量を補正するものとして説明したが、これに限らない。燃料噴射制御装置としての制御手段は、例えば、アルコール濃度が100パーセントである場合の要求噴射量を基準要求噴射量に設定し、アルコール濃度が100パーセントよりも低い場合には、アルコール濃度に基づいて吸気通路噴射手段による燃料の噴射量を減量することで、燃料に混合されているアルコールの濃度に応じて変化する要求噴射量と、基準となる濃度に応じた要求噴射量である基準要求噴射量との差分の差分噴射量に基づいて、吸気通路噴射手段による燃料の噴射量を補正するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明に係る内燃機関及び内燃機関の燃料噴射制御装置は、適正な燃焼状態を実現することができるものであり、種々の内燃機関及び内燃機関の燃料噴射制御装置に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンを表す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエンジンにおける要求噴射量を説明するための線図である。
【図3】本発明の実施形態に係るエンジンにおける燃料噴射制御を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 エンジン(内燃機関)
1a 燃焼室
2 エアクリーナ
3 電子スロットル弁
4 サージタンク
5 吸気通路
6 ポート噴射用インジェクタ(吸気通路噴射手段)
7 筒内噴射用インジェクタ(筒内噴射手段)
8 点火プラグ
9 排気通路
9a 空燃比センサ
10 触媒
11 燃料タンク
12 燃料供給系
13 筒内側デリバリパイプ
14 低圧燃料ポンプ
15 高圧燃料ポンプ
16 燃料供給管
17 吸気側デリバリパイプ
18 燃料回収系
19 駆動モータ
20 リリーフバルブ
21 アルコール濃度センサ
23 燃料圧力センサ
24 クランクセンサ
25 吸気圧センサ
26 吸気温センサ
27 アクセル開度センサ
28 スロットルポジションセンサ
29 水温センサ
30 ECU(制御手段)
100 燃料噴射制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気との混合気が燃焼可能な燃焼室に空気を供給する吸気通路内に前記燃料を噴射可能な吸気通路噴射手段と、
前記燃焼室内に前記燃料を直接噴射可能な筒内噴射手段と、
前記吸気通路噴射手段及び前記筒内噴射手段を制御すると共に、前記燃料に混合されているアルコールの濃度に応じて変化する要求噴射量と、基準となる前記濃度に応じた前記要求噴射量である基準要求噴射量との差分の差分噴射量に基づいて、前記吸気通路噴射手段による前記燃料の噴射量を補正する制御手段とを備えることを特徴とする、
内燃機関。
【請求項2】
前記制御手段は、前記筒内噴射手段による前記燃料の噴射量を前記基準要求噴射量に応じた基準筒内要求噴射量に基づいて制御する一方、前記吸気通路噴射手段による前記燃料の噴射量を前記基準要求噴射量に応じた基準吸気通路要求噴射量と前記差分噴射量とに基づいて制御することを特徴とする、
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記制御手段は、前記濃度が0パーセントである場合の前記要求噴射量を前記基準要求噴射量に設定し、前記濃度が0パーセントよりも高い場合には、前記濃度に基づいて前記吸気通路噴射手段による前記燃料の噴射量を増量することを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
燃料と空気との混合気が燃焼可能な燃焼室に空気を供給する吸気通路内へ前記燃料を噴射可能な吸気通路噴射手段と、前記燃焼室内へ前記燃料を直接噴射可能な筒内噴射手段とが設けられた内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記燃料に混合されているアルコールの濃度に応じて変化する要求噴射量と、基準となる前記濃度に応じた前記要求噴射量である基準要求噴射量との差分の差分噴射量に基づいて、前記吸気通路噴射手段による前記燃料の噴射量を補正することを特徴とする、
内燃機関の燃料噴射制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−24996(P2010−24996A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187709(P2008−187709)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】