説明

内燃機関

【課題】インジェクタの搭載個数の増大を抑えてコストを低減可能な内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関1Aは、吸気開口部3が2つずつ設けられ互いに隣接する一対の気筒2と、気筒2毎の一つの吸気開口部2同士が共通に接続された二股通路14と、気筒2毎の残りの吸気開口部2に一つずつ接続された単通路13と、単通路13に設けられた第1インジェクタ15と、二股通路13に設けられた第2インジェクタ16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気開口部が2つずつ設けられた複数の気筒を備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
一つの気筒に対して2つずつ吸気ポートが設けられ、各吸気ポートに一つずつインジェクタが設けられた内燃機関が知られている(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献2〜5が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−262995号公報
【特許文献2】実開昭63−154727号公報
【特許文献3】特開2000−257533号公報
【特許文献4】特開平5−296127号公報
【特許文献5】特開2008−202463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の内燃機関は、吸気ポート毎に設けられたインジェクタの噴射角を調整することによって吸気ポートの壁面への燃料付着を抑制できるが、一つの気筒に対して2つずつインジェクタを設けることになるのでコストが悪化する。
【0005】
そこで、本発明は、インジェクタの搭載個数の増大を抑えてコストを低減可能な内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関は、吸気開口部が2つずつ設けられ互いに隣接する一対の気筒と、前記気筒毎の一つの前記吸気開口部同士が共通に接続された二股通路と、前記気筒毎の残りの前記吸気開口部に一つずつ接続された単通路と、前記二股通路及び前記単通路のそれぞれに一つずつ設けられたインジェクタと、を備えたものである(請求項1)。
【0007】
この内燃機関によれば、一対の気筒で共用する二股通路に対して一つのインジェクタが設けられるとともに、各気筒に設けられた単通路に対して一つずつインジェクタが設けられているため、吸気開口部毎に通路を設けて各通路に一つずつインジェクタを設ける場合に比べてインジェクタの搭載個数を削減できる。従って、インジェクタの搭載個数に関するコストを低減できる。
【0008】
本発明の内燃機関の一態様において、前記二股通路に設けられた前記インジェクタにて吸気行程と非同期の吸気非同期噴射が、前記単通路に設けられた前記インジェクタにて吸気行程と同期する吸気同期噴射がそれぞれ行われるように前記各インジェクタを制御する噴射制御手段を更に備えてもよい(請求項2)。二股通路は、一対の気筒の一方の吸気開口部と、一対の気筒の他方の吸気開口部とに分岐しているため、インジェクタから各吸気開口部までの距離が長くなって通路壁面に燃料噴霧が付着し易い。その付着を抑制するには、二股通路に設けるインジェクタの噴射角を小さくして燃料噴霧を絞る必要があるが、燃料噴霧を絞るとその粒子径が大きくなり気化が悪化する。そのため、二股通路に設けられたインジェクタの燃料噴射時期を吸気行程と同期させると気筒の内壁への燃料付着が増加し、燃料の気化潜熱を利用した冷却効果が十分に得られずに体積効率が向上し難くなる。この態様によれば、二股通路に設けられたインジェクタによって吸気行程と非同期の吸気非同期噴射が行われるため、気筒の内壁への燃料付着を抑制することができる。
【0009】
この態様においては、前記単通路に設けられた前記インジェクタは、前記二股通路に設けられた前記インジェクタに比べて、燃料噴霧が気化し易い特性を有していてもよい(請求項3)。この場合には、単通路に設けられたインジェクタからの燃料噴霧が気化し易くなるので、そのインジェクタによって吸気同期噴射が行われることによって、燃料の気化潜熱を利用した冷却効果を十分に得ることができ体積効率が向上する。なお、単通路に設けられたインジェクタに対して燃料噴霧が気化し易い特性を与えるために例えば次の具体的な方法がある。即ち、単通路に設けられたインジェクタを二股通路に設けられたインジェクタに比べて、(1)吸気開口部に近づけて配置する、(2)噴射角(噴霧角)を拡大させる、(3)噴霧粒径を小さくする、(4)噴射時における燃料の流量を少なくする、(5)噴孔の個数を多くする、(6)噴孔の孔径を小さくする、(7)ニードルのリフト量を小さくする、等を例示できる。
【0010】
本発明の内燃機関の一態様において、排気系から取り出した排気を吸気系に還流させる排気還流装置を更に備え、前記排気還流装置は、前記単通路に比べて前記二股通路への排気の還流量を多くすることにより、排気の層と混合気の層とを前記気筒内に形成する成層運転を実行できるように構成されてもよい(請求項4)。この態様によれば、各気筒の一方の吸気開口部からの排気の導入が支配的となって各気筒に排気の層と混合気の層とを形成可能となるので成層運転を実行できるようになる。
【0011】
単通路に比べて二股通路への排気の還流量を多くする方法には格別の制限はない。例えば、排気の還流量を調整可能な調整手段を通路毎に設け、各調整手段を調整することによって、単通路に比べて二股通路への還流量を多くすることができる。なお、二股通路への排気の還流量を多くすることには、二股通路だけに排気を還流させ、単通路へは排気を還流させないことも含まれる。例えば、前記排気還流装置は、前記排気系から取り出した排気を前記吸気系に導くための排気還流通路と、前記排気還流通路から分岐して前記二股通路へ限定的に排気を導く排気導入通路とを有していてもよい(請求項5)。この場合には排気導入通路によって二股通路だけに排気を還流させることが可能となる。
【0012】
これらの態様においては、前記成層運転が実行される場合、前記二股通路に導かれるガスに含まれる空気量に応じた燃料噴射量にて前記二股通路に設けられた前記インジェクタから燃料が噴射され、かつ前記単通路に導かれるガスに含まれる空気量に応じた燃料噴射量にて前記単通路に設けられたインジェクタから燃料が噴射されるように前記各インジェクタを制御する噴射制御手段を更に備えてもよい(請求項6)。この場合、二股通路への排気還流量が単通路に比べて多くなる結果、導入ガスに含まれる空気量が単通路に比べて少なくなるため、二股通路に設けられたインジェクタの燃料噴射量が単通路に設けられたインジェクタに比べて少なくなる。これにより、二股通路の壁面や気筒の内壁面に付着する燃料を減らすことができるため、燃料付着に伴う未燃炭化水素の排出量の増加を抑えることができる。
【0013】
本発明の一態様においては、前記二股通路に設けられて、前記二股通路を経由して前記気筒に導かれる吸気流に変化を与えることが可能な吸気流制御弁を更に備えてもよい(請求項7)。この態様によれば、気筒内に導かれたガスに流動を促すことができるため気筒内の混合気の均質化を向上させることができる。また、吸気流制御弁が二股通路に設けられていて、2つの気筒に一つの吸気流制御弁で上記効果を得ることができるため、吸気流制御弁を気筒毎に一つずつ設ける場合と比べて部品点数を削減できる。
【0014】
吸気流制御弁によって気筒内に形成し得る流れは気筒の縦方向に旋回するタンブルの他、横方向に旋回するスワールなどがある。タンブルを形成する場合には吸気流制御弁を弁体の上部に切り欠きを設けたタンブル制御弁として構成することができる。また、前記吸気流制御弁として、前記二股通路を開閉するスワール制御弁が設けられてもよい(請求項8)。この場合には、二股通路がスワール制御弁にて閉鎖されることにより、各気筒には単通路のみから混合気が流入するので、気筒内にスワールを形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の内燃機関によれば、一対の気筒で共用する二股通路に対して一つのインジェクタが設けられるとともに、各気筒に設けられた単通路に対して一つずつインジェクタが設けられているため、吸気開口部毎に通路を設けて各通路に一つずつインジェクタを設ける場合に比べてインジェクタの搭載個数を削減できる。従って、インジェクタの搭載個数に関するコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の形態に係る内燃機関の要部を模式的に示した図。
【図2】第1の形態に係る制御ルーチンの一例を示したフローチャート。
【図3】本発明の第2の形態に係る内燃機関の要部を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の形態)
図1は本発明の第1の形態に係る内燃機関の要部を模式的に示している。内燃機関1Aは走行用動力源として車両に搭載可能な火花点火式内燃機関として構成されている。内燃機関1Aは4つの気筒2を備えており、各気筒2には吸気開口部3及び排気開口部4がそれぞれ2つずつ設けられている。内燃機関1Aは各気筒2の等間隔燃焼が実現できるように構成されている。気筒2の並び方向の一端から他端に向かって♯1〜♯4の気筒番号を付して各気筒2を区別すると、内燃機関1Aの燃焼順序は♯1→♯2→♯4→♯3に設定されている。各吸気開口部3は各気筒2の中心を通る直線と平行な一方向に並んでいる。なお、各気筒2には不図示の点火プラグが一つずつ設けられている。
【0018】
各吸気開口部3は吸気通路6に接続されていて吸気弁7にて開閉される。各排気開口部4は排気通路8に接続されていて排気弁9にて開閉される。吸気通路6は取り込んだ空気の脈動を緩和する吸気マニホルド10と、吸気マニホルド10から分岐する分岐部11とを備えている。吸気通路6には吸入空気量を調整するスロットル弁5が設けられている。分岐部11は吸気開口部3に接続された単通路13と、互いに隣接する気筒2の吸気開口部3同士が共通に接続された二股通路14とを含む。本形態では、互いに隣接する♯1の気筒2と♯2の気筒2との間に、♯3の気筒2と♯4の気筒2との間にそれぞれ二股通路14が設けられており、各二股通路14は互いに隣接する吸気開口部3に繋がっている。なお、図示されていないが、各単通路13はシリンダヘッドに形成された吸気ポートと、その吸気ポートと吸気マニホルド10とを接続する接続通路とを含む。同様に、二股通路14はシリンダヘッドに形成された二股の吸気ポートと、その吸気ポートと吸気マニホルド10とを接続する接続通路とを含む。
【0019】
単通路13には第1インジェクタ15が、二股通路14には第2インジェクタ16がそれぞれ一つずつ設けられている。各インジェクタ15、16は電磁駆動式のインジェクタとして構成されている点で共通するが、図1の矢印線で示したように第1インジェクタ15が1方向に燃料を噴射するように構成されているのに対して第2インジェクタ16が2方向に燃料を噴射するように構成されている点で相違している。また、第1インジェクタ15が第2インジェクタ16に比べて燃料噴霧が気化し易い特性を有している点で、各インジェクタ15、16には燃料噴霧の気化に関する特性に相違がある。第1インジェクタ15から吸気開口部3までの距離は第2インジェクタ16の当該距離よりも短くなっている。そして、詳細な図示を略したが、第1インジェクタ15はその噴射角(噴霧角)が第2インジェクタ16の噴射角よりも大きくなっている。従って、各インジェクタ15、16から同量の燃料を噴射させた場合、第1インジェクタ15の燃料噴霧の方が第2インジェクタ16の燃料噴霧に比べて気化し易い。なお、第1インジェクタ15に対して気化し易い特性を付与するため、上記に代えて又は上記とともに、(a)噴霧粒径を小さくする、(b)噴射時における燃料の流量を少なくする、(c)噴孔の個数を多くする、(d)噴孔の孔径を小さくする、(e)ニードルのリフト量を小さくする等の各種手法のうちのいずれか一つ又はこれらの任意の組み合わせを採用することも可能である。
【0020】
内燃機関1Aには、排気系から取り出した排気を吸気系に還流させる排気還流装置20が設けられている。排気還流装置20は排気系から取り出した排気を吸気系に導くための排気還流通路21と、排気還流通路21に設けられて排気の還流量を調整する排気還流弁22と、排気還流通路21から分岐した排気導入通路23とを有している。排気還流通路21は排気通路8と吸気通路6とを接続する。排気導入通路23は二股通路14の内部に開口していて、二股通路14に限定的に排気を導入することができる。そのため、排気還流弁22が開かれると二股通路14だけに排気が導かれるので気筒2内に排気が偏在し各気筒2内には排気の層Aと混合気の層Bとが形成される。これにより、内燃機関1Aにて気筒2内に排気を偏在させる成層運転が実施されることになる。
【0021】
上述したスロットル弁5、各インジェクタ15、16及び排気還流弁22の各制御は内燃機関1Aの運転状態を適正に制御するコンピュータとして構成されたエンジンコントロールユニット(ECU)30にて行われる。ECU30には内燃機関1Aの運転状態を検出するため各種センサからの信号が入力される。本発明に関連するセンサとしては内燃機関1Aの回転数(回転速度)に応じた信号を出力するクランク角センサ31及び吸入空気量に応じた信号を出力するエアフローメータ32がそれぞれ設けられており、これらの出力信号はECU30に入力される。ECU30は上述した制御の他にも点火プラグの操作による点火時期制御等の様々な制御を行っている。
【0022】
図2は本発明に関連してECU30が実行する制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。図2に示したルーチンのプログラムはECU30に保持されており所定間隔で繰り返し実行される。これにより、ECU30は本発明に係る噴射制御手段として機能する。
【0023】
ステップS1では、内燃機関1Aの運転状態として機関回転数Neと吸入空気量Gatotal-とを、クランク角センサ31及びエアフローメータ32の各信号に基づいて取得する。次に、ステップS2では、上述した成層運転を実施すべき条件として定められた成層運転実施領域に該当するか否かをステップS1で取得した各パラメータに基づいて判定する。その判定の結果、成層運転実施領域に該当する場合はステップS3に進み、そうでない場合はステップS12に進む。
【0024】
ステップS3では、目標EGR率Regrを算出する。この目標EGR率Regrの算出は、回転数Ne及び吸入空気量Gatotalを変数として目標EGR率Regrを0から1までの範囲で与える目標EGR率マップ(不図示)をECU30に記憶させておき、ECU30がこのマップを参照することにより実現される。続くステップS4では、排気還流の実行による吸入空気量の低下分を考慮して、スロットル弁5の開度を開き側に補正する。次に、ステップS5では、ステップS3で算出した目標EGR率Regrを達成できる開度にて排気還流弁22を開弁させる。
【0025】
ステップS6では、単通路13に導かれるガスに含まれる空気量Gainj1を次の式1にて算出する。
【0026】
Gainj1=Gatotal×0.5/(1−Regr) ………1
【0027】
ステップS7では、二股通路14に導かれるガスに含まれる空気量Gainj2を次の式2にて算出する。
【0028】
Gainj2=Gatotal×(0.5−Regr)/(1−Regr) …2
【0029】
ステップS8では、単通路13に設けられた第1インジェクタ15による燃料の噴射時期ainj1を算出する。この噴射時期ainj1は、成層運転時用に準備された噴射時期算出マップ(不図示)に基づいて算出される。この噴射時期算出マップはECU30に予め記憶されていて、回転数Ne及び吸入空気量Gatotalを変数として噴射時期ainj1を与える構造となっている。このマップでは、噴射時期ainj1として吸気行程と同期する値(クランク角)が設定されている。
【0030】
ステップS9では、二股通路14に設けられた第2インジェクタ16による燃料の噴射時期ainj2を算出する。この噴射時期ainj2も上記と同様に、成層運転時用に準備された噴射時期算出マップ(不図示)に基づいて算出される。但し、第2インジェクタ16は2つの気筒2で共用されるので、図2のルーチン実行時に処理対象となる気筒2を特定する必要がある。そのため、この噴射時期算出マップは回転数Ne及び吸入空気量Gatotalを変数とする他に、気筒番号も変数として設定されていて、噴射時期ainj2を与える構造となっている。このマップでは、噴射時期ainj2として吸気行程と非同期の値(クランク角)が設定されている。
【0031】
ステップS10では、第1インジェクタ15の燃料噴射量TAUinj1と、第2インジェクタ16の燃料噴射量TAUinj2とをそれぞれ次の式3及び式4にて算出する。
【0032】
TAUinj1=Kinj1×Gainj1 ………3
TAUinj2=Kinj2×Gainj2 ………4
【0033】
ここで、Kinj1,Kinj2は、目標空燃比(例えば理論空燃比)を実現する燃料噴射量を空気量に応じて算出するための噴射量算出係数であり、インジェクタ毎に予め設定されている。
【0034】
ステップS11では、上記処理で算出された噴射時期ainj1及び燃料噴射量TAUinj1にて第1インジェクタ15から、噴射時期ainj2及び燃料噴射量TAUinj2にて第2インジェクタ16からそれぞれ燃料が噴射されるように各インジェクタ15、16を操作する。そして、今回のルーチンを終了する。
【0035】
成層運転を実施しない場合、即ち本形態では排気還流を行わない場合には、ステップS12にて単通路13に導かれる空気量Gainj1を次の式5にて算出し、続くステップS13にて二股通路14に導かれる空気量Gainj2を次の式6にて算出する。
【0036】
Gainj1=Gatotal×0.5 ………5
Gainj2=Gatotal×0.5 ………6
【0037】
ステップS14では、単通路13に設けられた第1インジェクタ15による燃料の噴射時期ainj1を算出する。この噴射時期ainj1は、非排気還流時用に準備された噴射時期算出マップ(不図示)に基づいて算出される。この噴射時期算出マップは、上記と同様にECU30に予め記憶されていて、回転数Ne及び吸入空気量Gatotalを変数として噴射時期ainj1を与える構造となっている。このマップでは、噴射時期ainj1として吸気行程と非同期の値(クランク角)が設定されている。つまり、非排気還流時には第1インジェクタ15にて吸気非同期の燃料噴射が行われる。非排気還流時に第1インジェクタ15にて吸気同期噴射を行うと、混合気の層と空気の層とが気筒2内に形成される混合気成層状態となるが、この場合の燃費は吸気非同期噴射時に比べて悪化するためである。そのため、非排気還流時には第1インジェクタ15にて吸気非同期噴射が行われている。
【0038】
その後、ステップS9に進み、上記と同様に第2インジェクタ16の噴射時期ainj2を算出し、ステップS10で燃料噴射量TAUinj1,TAUinj2を算出し、ステップS11で各インジェクタ15、16の噴射操作を行う。
【0039】
図2の制御ルーチンによれば、ステップS9にて第2インジェクタ16の噴射時期が吸気行程と非同期となる値に算出されるので、二股通路14での燃料噴射が吸気非同期噴射となり、気筒2の内壁への燃料付着を抑制できる。また、成層運転の実施時に、ステップS8にて第1インジェクタ15の噴射時期が吸気行程と同期する値に算出されて単通路13での燃料噴射が吸気同期噴射となる。上述のように、第1インジェクタ15は第2インジェクタ16よりも燃料噴霧が気化し易い特性を有しているため、第1インジェクタ15にて吸気同期噴射が行われることによって、燃料の気化潜熱を利用した冷却効果を十分に得ることができ体積効率が向上する。
【0040】
また、成層運転の実施時には、各通路13、14に導かれる導入ガスに含まれる空気量が相違するため、第2インジェクタ16の燃料噴射量が第1インジェクタ15の燃料噴射量に比べて少なくなる。これにより、二股通路14の壁面や気筒2の内壁面に付着する燃料を減らすことができるため、燃料付着に伴う未燃炭化水素の排出量の増加を抑えることができる。
【0041】
(第2の形態)
次に、本発明の第2の形態を図3を参照しながら説明する。図3は第2の形態に係る内燃機関の要部を模式的に示している。以下、第1の形態との共通部分については同一の参照符号を図3に示して重複する説明を省略する。内燃機関1Bは、各二股通路14に一つずつ吸気流制御弁としてのスワール制御弁40が設けられている。スワール制御弁40は気筒2内にスワールを形成すべきときに二股通路14を閉鎖する。これにより、各気筒2には単通路13のみから混合気が流入するので気筒2には横方向に旋回するスワールFswが形成される。スワール制御弁40は電磁駆動弁として構成されており、その動作はECU30にて制御される。ECU30は所定の制御ルーチンに従って、スワールの形成の必要性を判断し、スワールの形成が必要な場合には、各気筒2の吸気行程に合わせてスワール制御弁40を開閉制御する。
【0042】
第2の形態によれば、二股通路14は2つの気筒2で共用されるものであるので、各気筒2にスワール制御弁40を設ける場合と比べて部品点数を削減できる利点がある。
【0043】
本発明は上記各形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。第1の形態では、二股通路に限定的に排気を還流させる排気還流装置を設けて成層運転を実施するようにしているが、例えば、排気の還流量を調整可能な調整弁等の調整手段を通路毎に設け、各調整手段を調整することによって単通路よりも二股通路の還流量を多くしたり、或いは第1の形態と同様に二股通路に限定的に排気を還流させることも可能である。また、この場合には単通路及び二股通路のそれぞれに均等に排気を還流させることにより非成層状態の排気還流を行うことも可能である。
【0044】
上記各形態では4気筒型の内燃機関を例示したが、気筒数には制限はなく、2つの吸気開口部が設けられて互いに隣接する一対の気筒を含む限りにおいて、本発明を3気筒や6気筒等の多気筒内燃機関として実施することもできる。また、本発明は多気筒のV型内燃機関として実施することもできる。
【0045】
上記各形態では、第1インジェクタ15と第2インジェクタ16とは同一のものではなく第1インジェクタ15が第2インジェクタ16よりも燃料の気化がし易い特性を有しているが、二股通路及び単通路のそれぞれに同一のインジェクタを設けて実施することも可能である。また、第1の形態と第2の形態とを組み合わせて、即ち、第1の形態の内燃機関1Aにスワール制御弁を第2の形態と同様に組み込んで実施することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1A、1B 内燃機関
2 気筒
3 吸気開口部
13 単通路
14 二股通路
15 第1インジェクタ(インジェクタ)
16 第2インジェクタ(インジェクタ)
20 排気還流装置
21 排気還流通路
23 排気導入通路
30 ECU(噴射制御手段)
40 スワール制御弁(吸気流制御弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気開口部が2つずつ設けられ互いに隣接する一対の気筒と、前記気筒毎の一つの前記吸気開口部同士が共通に接続された二股通路と、前記気筒毎の残りの前記吸気開口部に一つずつ接続された単通路と、前記二股通路及び前記単通路のそれぞれに一つずつ設けられたインジェクタと、を備えた内燃機関。
【請求項2】
前記二股通路に設けられた前記インジェクタにて吸気行程と非同期の吸気非同期噴射が、前記単通路に設けられた前記インジェクタにて吸気行程と同期する吸気同期噴射がそれぞれ行われるように前記各インジェクタを制御する噴射制御手段を更に備えた請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記単通路に設けられた前記インジェクタは、前記二股通路に設けられた前記インジェクタに比べて、燃料噴霧が気化し易い特性を有している請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
排気系から取り出した排気を吸気系に還流させる排気還流装置を更に備え、
前記排気還流装置は、前記単通路に比べて前記二股通路への排気の還流量を多くすることにより、排気の層と混合気の層とを前記気筒内に形成する成層運転を実行できるように構成されている請求項1に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記排気還流装置は、前記排気系から取り出した排気を前記吸気系に導くための排気還流通路と、前記排気還流通路から分岐して前記二股通路へ限定的に排気を導く排気導入通路とを有している請求項4に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記成層運転が実行される場合、前記二股通路に導かれるガスに含まれる空気量に応じた燃料噴射量にて前記二股通路に設けられた前記インジェクタから燃料が噴射され、かつ前記単通路に導かれるガスに含まれる空気量に応じた燃料噴射量にて前記単通路に設けられたインジェクタから燃料が噴射されるように前記各インジェクタを制御する噴射制御手段を更に備えた請求項4又は5に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記二股通路に設けられて、前記二股通路を経由して前記気筒に導かれる吸気流に変化を与えることが可能な吸気流制御弁を更に備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記吸気流制御弁として、前記二股通路を開閉するスワール制御弁が設けられている請求項7に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−220182(P2011−220182A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89032(P2010−89032)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】