説明

円筒形状部材の表面検査方法

【課題】現像ローラや感光体ドラム、帯電ローラ等の電子写真方式の画像形成装置に使用される円筒形状部材の表面を作業者が円筒形状部材に触れずに検査することが可能な表面検査方法を提供する。
【解決手段】電子写真方式の画像形成装置に搭載される円筒形状部材の周面に有彩色トナーを付着させた後、有彩色トナーを保持させた状態で円筒形状部材の周面を非接触で検査する円筒形状部材の表面検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラムや現像剤担持体(現像ローラ)、帯電ローラ等の電子写真方式の画像形成装置に使用される円筒形状を有する部材の表面状態を検査する円筒形状部材の表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザプリンタ等の電子写真方式の画像出力装置には、たとえば、感光体ドラム、現像剤担持体(現像ローラ)、帯電ローラ、熱定着ローラ等、円筒形状を有する部材が多く用いられている。これら円筒形状部材は、たとえば金属製基体に樹脂層を形成させた構造等を有し、その表面は画像品質に大きな影響を与えるものである。したがって、画像形成装置の生産工程では、キズや異物付着、汚れ、樹脂層の厚みムラ等がある不良品の使用を回避するために、これら部材を検査してから画像形成装置に供する必要があった。
【0003】
円筒形状部材の表面検査方法としては、たとえば、目視による検査がある。目視による検査は、マニュアル等により作業内容を作業者に提示することで簡便に行うことができるが、作業者の熟練度や個人差、作業疲労等の影響を受け易く、作業効率と信頼性の観点から必ずしも効率的な検査方法とはいえなかった。そこで、目視検査に代わる検査方法が検討される様になり、たとえば、CCDカメラやセンサ等の素子を利用して被検査体表面を非接触で検査する検査方法が提案される様になった。
【0004】
CCDカメラを用いた検査方法としては、たとえば、被検査体に帯状光束の照明光を照射して、照明光の正反射光と散乱反射光を各別の一次元型CCDカメラで受光し、該CCDカメラの信号を画像処理することにより被検査体表面の欠陥を検知する方法がある(たとえば、特許文献1参照)。また、センサによる検査方法には、円筒形状の被検査体表面に平行光を斜め照射し、被検査体からの反射光を偏光レンズに通過させて、通過光を光電変換センサに受光させて得られる信号により被検査体表面を検査する方法がある(たとえば、特許文献2参照)。さらに、円筒形状の被検査体の全検査領域にライン状平行光を照射し、被検査体表面からの正反射光のみをセンサで受光させて得られる信号を処理することにより被検査体表面の欠陥を検出する表面欠陥検査方法がある(たとえば、特許文献3参照)。
【0005】
ところで、電子写真方式の画像形成装置に搭載される円筒形状部材の表面検査には高い精度が要求されている。たとえば、静電潜像が形成された感光体ドラムにトナーを供給する現像ローラは、その表面に数10μmレベルの均一なトナー層を形成することが求められるので、表面に微細な凹凸を有する様なものは画像形成に使用できない。また、感光体ドラム表面では、所定レベルの潜像形成や現像、転写後不要になるトナー除去等の機能が安定して行えることが求められ、これら機能を発現する所定規格を満たす感光体ドラムが画像形成装置に供給されなくてはならない。さらに、感光体表面を均一に帯電させる帯電ローラや、感光体表面を確実に除電させる除電ローラもそれぞれ高度の表面性能が求められている。
【0006】
すなわち、画像形成装置の生産工程におかれては、所定性能を発現する規格に合格した円筒形状部材を確実に供給するとともに、所定性能を発現できない規格不合格の部材を搭載するわけにはいかなかった。前述した特許文献1の技術は、被検査体を回転させたときに生ずる表面の位置変動により受光系の合焦が乱されることがあり、部材の表面状態を常時高精度に検査することが難しく、定常的に高精度の検査が求められる生産ラインで使用することができなかった。また、特許文献2と3の技術も被検査体を回転させながら光を照射する構成であるため、受光系の合焦が乱れ易く、電子写真方式の画像形成装置に使用する円筒形状部材表面の検査には不向きなものといわざるを得なかった。
【0007】
この様な状況から、これらの光学的検査方法も十分な検査方法でないため、また、画像形成に支障をきたす様な欠陥を有する部材を製品に搭載させない様にするため、被検査物を画像出力装置に取り付けて実際に検査画像を作製しできた画像を検査する方法を光学的検査方法に加えて行っているのが現状である。このため検査に時間がかかり、かつ、検査要員を多く必要にする等の課題を有することから、検査画像を作製しできた画像を検査する方法をとらずに、精度の高い表面検査方法の実現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−137844号公報
【特許文献2】特開2004−144612号公報
【特許文献3】特開2005−172643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、たとえば、現像ローラや感光体ドラム、帯電ローラ等の電子写真方式の画像形成装置に使用される円筒形状部材の表面状態を、作業者が当該円筒形状部材に触れることなく検査することが可能な表面検査方法を提供することを目的とするものである。具体的には、現像ローラ表面を検査する場合には数十μmレベルの均一なトナー層形成に支障をきたすレベルの欠陥の検知が可能な表面検査方法を提供することを目的とする。また、感光体ドラム表面を検査する場合には、所定帯電を行った後に所定レベルの潜像形成が行え、形成された潜像上に所定量のトナー保持を行うのに支障を来すレベルの欠陥を検知することが可能な表面検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題が下記に記載のいずれかの構成により達成されるものであることを見出した。すなわち、請求項1に記載の発明は、
『電子写真方式の画像形成装置に搭載される円筒形状部材の周面を非接触で検査する表面検査方法であって、
前記円筒形状部材周面に有彩色トナーを付着させた後、
前記有彩色トナーを前記周面に保持させた状態で前記周面の検査を非接触で行うことを特徴とする円筒形状部材の表面検査方法。』というものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
『前記円筒形状部材が、現像ローラであることを特徴とする請求項1に記載の円筒形状部材の表面検査方法。』というものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
『前記現像ローラを検査するときに、
マイナスに帯電させた前記有彩色トナーを使用するとともに、
前記現像ローラにマイナスの電圧を印加させた状態にして、
前記現像ローラの周面の検査を行うことを特徴とする請求項2に記載の円筒形状部材の表面検査方法。』というものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、
『前記円筒形状部材が、感光体ドラムであることを特徴とする請求項1に記載の円筒形状部材の表面検査方法。』というものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、
『前記有彩色トナーがイエロートナーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の円筒形状部材の表面検査方法。』というものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表面検査方法によれば、たとえば、現像ローラや感光体ドラム、帯電ローラ等の電子写真方式の画像形成装置に使用される円筒形状部材の表面状態を、作業者が円筒形状部材表面に触れずに検査することができる様になった。また、本発明によれば検査を行うときに検査部材を画像形成装置に装填して画像を出力し、出力した画像から部材の品質を評価する手間をなくすことができる様になった。
【0016】
したがって、キズ等により所定性能を発現できない現像ローラや感光体ドラム等の円筒形状部材を画像形成装置に搭載して出荷する様なことは起こらなくなり、製品である画像形成装置の品質と信頼性を出荷段階で大幅に向上させることができる様になった。また、本発明によれば、検査画像を用いて部材の品質評価を行う手間をなくし、検査を行う作業者に高い熟練度を要求することなく表面検査を効率よく行える様にするとともに、表面検査の精度を高いレベルに維持したまま行える様にした。
【0017】
特に、本発明の好ましい形態の1つに、本発明の構成により現像ローラの表面検査を行うものがある。そして、現像ローラの表面検査を行う場合、マイナスに帯電させた有彩色トナーを使用するとともに、現像ローラにマイナスの電圧を印加させた状態にすることにより、現像ローラ表面にトナー層を薄く均一に形成できる様になった。その結果、現像ローラ表面に欠陥部分が存在する場合には、その部分の陰影が際立つ様になって欠陥部分の存在を確認し易くなり検知精度が向上する様になった。したがって、検知精度の向上により回転状態の現像ローラ表面より欠陥部分を確実に検知することができるので、検査工程における作業効率を大幅に向上させることができる様になった。この様に、本発明によれば、現像ローラの表面検査を行う場合により好ましい効果が得られることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】感光体ドラム、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラを搭載した画像形成装置の断面図である。
【図2】感光体ドラムの層構成を示す模式図である。
【図3】現像ローラの層構成を示す模式図である。
【図4】帯電ローラの層構成を示す模式図である。
【図5】円筒形状部材表面を非接触検査することが可能な表面検査装置の概略斜視図である。
【図6】複数のCCDカメラを備えた表面検査装置の概略図である。
【図7】複数のCCDカメラを備えた表面検査装置の概略図である。
【図8】トナー付着保持装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、感光体ドラムや現像ローラ、帯電ローラや除電ローラ等の電子写真方式の画像形成装置に使用される円筒形状部材の表面を検査する表面検査方法に関する。本発明でいう「円筒形状部材」とは、一般にドラムあるいはローラ等と呼ばれ、画像形成装置に装填されて回転運動により部材を構成する曲面で所定作業を行うことにより所期の目的が達成される様に設計された円筒形状を有する部材のことである。
【0020】
ここで、電子写真方式の画像形成装置について具体例を挙げて説明する。図1は、本発明でいう円柱形状部材の範疇に含まれる感光体ドラム、現像ローラ、帯電ローラ、及び、転写ローラを搭載する画像形成装置の一例を示す断面図である。
【0021】
図1の画像形成装置1では、本発明でいう円柱形状部材の1つである帯電ローラ102により帯電された同じく本発明でいう円柱形状部材の1つである感光体ドラム101上に露光光Lが照射されて静電潜像が形成される。感光体ドラム101上に形成された静電潜像は、感光体ドラム101の近傍に配置された現像装置21の現像剤担持体である現像ローラ104より供給されるトナーにより現像されてトナー画像となる。なお、現像ローラ104は本発明でいう円柱形状部材の1つである。
【0022】
次に、除電ランプ22により感光体ドラム101上の電荷が除電されると、トナー画像は感光体ドラム101と本発明でいう円柱形状部材の1つである転写ローラ103とが近接する転写部で転写紙P上に転写される。転写紙Pは、給紙カセットより搬送ローラ23によって搬送されてきたもので、転写ローラ103によりトナーと逆極性の電荷が付与され、この逆極性の電荷の静電作用により転写紙P上にトナー画像が転写される。
【0023】
トナー画像が転写された転写紙Pは、感光体ドラム101より分離された後、搬送ベルト24により図示しない定着装置へ搬送される。定着装置はたとえば加熱ローラと押圧ローラ等の定着手段を有し、転写紙P上のトナー画像を溶融後、転写紙Pに定着させる。
【0024】
以上の手順を経て画像形成装置1の感光体ドラム101上に形成された静電潜像はトナー画像に顕像化され、形成されたトナー画像が転写紙P上に転写、定着されてプリント物が作製される。
【0025】
また、帯電ローラ102は、以下の手順により感光体ドラム101を帯電する。すなわち、図1に示す様に、帯電ローラ102は電源27より直流(DC)成分と交流(AC)成分からなるバイアス電圧の印加を受けて感光体ドラム101の帯電が行える。帯電ローラ102を用いるいわゆる接触方式の帯電は、オゾンの発生が極めて少ない状態で感光体ドラム101を帯電させることができる。帯電ローラ102に印加されるバイアス電圧は、通常、直流成分である±500〜1000VのDCバイアスと、交流成分である100Hz〜10kHz、200〜3500V(p−p)のACバイアスとを重畳させてなるものである。
【0026】
なお、図1中の転写ローラ103も帯電ローラ102と同様、電源28より直流(DC)成分と交流(AC)成分からなるバイアス電圧の印加を受け、転写部位でトナー画像の転写紙Pへの転写を行っている。転写ローラ103に印加されるバイアス電圧も帯電ローラ102に印加されるバイアス電圧と同様、通常、直流成分の±500〜1000VのDCバイアスと、交流成分の100Hz〜10kHz、200〜3500V(p−p)のACバイアスとを重畳させたものである。
【0027】
帯電ローラ102と転写ローラ103は、感光体ドラム101に圧接した状態で従動あるいは強制回転している。これらのローラの感光体ドラム101への押圧力は、通常、9.8×10−2〜9.8×10−1N/cmであり、また、ローラの回転速度は、通常、感光体ドラム101の周速の1〜8倍とされる。なお、前記ローラの感光体ドラム101への押圧力は、帯電ローラ102の両端に1.0N〜10.0N程度の押圧力を加えることで実現される。
【0028】
なお、転写紙Pへのトナー画像の転写を終えた感光体ドラム101は、クリーニング装置25に設けられたクリーニングブレード26によりクリーニングされて、次の画像形成に供せられる。
【0029】
図1に示す電子写真方式の画像形成装置1では、感光体101と帯電ローラ102、像露光ユニット、現像装置21等の構成要素をユニット化したいわゆるプロセスカートリッジ、あるいは、イメージングカートリッジと呼ばれるユニット構造物としてもよい。この様に、複数の構成物をユニット化し、これを画像形成装置本体に対し着脱自在に構成することが可能になる。また、像露光ユニット、現像装置23、転写ローラ103あるいは分離手段の少なくとも1つを感光体ドラム101とともに一体に支持したユニット構造物として、装置本体に着脱自在の単一ユニットとすることも可能である。この様な単一ユニットを装置本体にレール等の案内手段を設けることにより、着脱自在の構成にすることも可能である。
【0030】
次に、電子写真方式の画像形成装置に使用される円筒形状部材として代表的な部材である感光体ドラム、現像ローラ、帯電ローラについて説明するが、本発明でいう円筒形状部材はこれら3つの部材に限定されるものではない。
【0031】
本発明でいう円筒形状部材の1つである電子写真感光体(以下、感光体、感光体ドラムともいう)について図2を用いて説明する。なお、図2は感光体の層構成を示す模式図である。図2において、10は本発明でいう円筒形状部材に該当する感光体ドラム、11は支持体、12は中間層、13は感光層、14は電荷発生層、15は電荷輸送層、16は保護層、18は表面層を示す。
【0032】
図2(a)は、支持体11の外周上に中間層12を設けその上に感光層13を設けた構造のもので、表面層18を構成する感光層13は公知の方法により形成されたものである。(b)は支持体11の外周上に中間層12を設け、その上に電荷発生層14と電荷輸送層15を設けたもので、表面層18となる電荷輸送層15を公知の方法で形成したものである。(c)は支持体11の外周上に中間層12を設け、その上に電荷発生層14、電荷輸送層15、保護層16を設けたもので、表面層18となる保護層16を公知の方法で形成したものである。
【0033】
図2(a)〜(c)に挙げた感光体ドラム10は、いずれのものも最表面に静電潜像を形成し、静電潜像が形成された後、トナーが供給されて潜像が顕像化される。これらの中でも、支持体の外周に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層、保護層を設けた(c)の構造のものは保護層の存在により高い耐久性が得られる様に設計されている。
【0034】
次に、図2(c)を用いて感光体を構成する各層について説明する。図2(c)に示す感光体ドラム10は、支持体11の外周上に、中間層12、電荷発生層14、電荷輸送層15、保護層16を有するものである。
【0035】
最初に、支持体11について説明する。感光体に使用可能な支持体11は、円筒形状を有するとともに、比抵抗がたとえば10Ωcm以下のものが好ましく用いられる。具体的には、切削加工処理を行った後、表面を洗浄処理した円筒形状のアルミニウム管が挙げられる。
【0036】
感光体ドラムを作製する際、支持体11上に、以下に説明する中間層12、電荷発生層14、電荷輸送層15、保護層16を形成するための塗布液を順次塗布し、乾燥処理していく。これらの層を形成する塗布液の塗布方法については後述する。
【0037】
次に、中間層12について説明する。中間層12は、バインダ、無機粒子、分散溶媒等から構成される中間層用塗布液を支持体11上に塗布、乾燥して形成することが可能である。中間層の膜厚は、0.2〜40μmが好ましく、0.3〜20μmがより好ましい。
【0038】
中間層12のバインダとして使用可能な樹脂としては、たとえば、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、これらの樹脂を繰り返し単位とする共重合体樹脂が挙げられる。これら樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いたものが好ましく、ポリアミド樹脂の存在により画像形成を繰り返し行ったときに発生しがちな残留電位の増加を小さく抑えることができる。
【0039】
中間層形成用塗布液を作製する際に使用可能な溶媒としては、ポリアミド樹脂をはじめとするバインダ用の樹脂を溶解するものであって、かつ、添加する無機粒子を良好に分散するものが好ましい。具体的には、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数が2〜4のアルコール類がポリアミド樹脂への溶解性と塗布性能に優れていることから好ましい。これらの溶媒は、全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、さらに50〜100質量%含有させることが好ましい。また、前記溶媒と併用することが可能な溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0040】
次に、電荷発生層14について説明する。感光層13を構成する電荷発生層14は、電荷発生物質(CGM)を含有するもので、電荷発生物質の他に必要によりバインダ樹脂、その他添加剤を含有することが可能である。また、電荷発生層の膜厚は0.01〜2μmが好ましい。
【0041】
電荷発生物質(CGM)としては、公知の電荷発生物質(CGM)を使用することが可能で、たとえば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料等が挙げられる。
【0042】
電荷発生層14に電荷発生物質の分散媒としてバインダを用いる場合、公知の樹脂をバインダとして使用することが可能である。バインダ樹脂として好ましい樹脂としては、たとえば、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。また、バインダ樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダ樹脂100質量部に対し電荷発生物質を20〜600質量部とすることが好ましい。これらの樹脂を用いることにより、画像形成を繰り返し行ったときに発生しがちな残留電位の増加を最も小さく抑えることができる。
【0043】
次に、電荷輸送層15について説明する。感光層13を構成する電荷輸送層15は、電荷輸送物質(CTM)及びバインダ樹脂から形成されるもので、必要により酸化防止剤等の添加剤を添加して形成することも可能である。電荷輸送層の膜厚は5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。バインダ樹脂と電荷輸送物質の割合は、バインダ樹脂100質量部に対し電荷輸送物質を10〜200質量部とすることが好ましい。
【0044】
電荷輸送物質(CTM)としては、公知の電荷輸送物質(CTM)を使用することが可能で、たとえば、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物等が使用可能である。
【0045】
また、電荷輸送層15に使用可能なバインダ樹脂としては、たとえば、以下の絶縁性樹脂が挙げられる。すなわち、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等がある。また、前述した樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂も使用できる。さらに、前述した絶縁性樹脂の他に、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体も使用できる。これら電荷輸送層15用のバインダ樹脂として最も好ましいものは、ポリカーボネート樹脂であり、ポリカーボネート樹脂は電荷輸送物質(CTM)の分散性や良好な電子写真特性を実現する上で最も好ましいものである。
【0046】
また、電荷輸送層15に使用可能な酸化防止剤としては、公知の化合物を使用することが可能であるが、たとえば、「Irganox1010(日本チバガイギー社製)」等が挙げられる。
【0047】
次に、保護層16について説明する。保護層16は、たとえば光照射による硬化反応等の公知の方法で形成することができる。保護層16を光照射による硬化反応を用いて形成する場合、硬化性アクリルモノマーまたはオリゴマー等公知の前駆体材料と重合開始剤を用いて形成することができる。また、保護層16は、前駆体材料と重合開始剤の他に、必要に応じ電荷輸送物質、酸化防止剤、電気抵抗調整剤、無機微粒子、有機微粒子を添加して形成することも可能である。なお、硬化後の保護層の膜厚は、0.2〜5μmが好ましく、0.3〜4μmがより好ましい。
【0048】
保護層16は、保護層用塗布液を電荷輸送層15上に前述した様にスプレー塗布等の公知の方法で塗膜を形成し、塗膜の流動性が無くなる程度まで1次乾燥した後、光照射を行って前駆体材料を重合させて硬化することにより形成される。さらに、硬化処理を行った後、希釈溶剤等の不要物を除去する目的で2次乾燥を行うことも可能である。
【0049】
また、保護層形成用塗布液は、たとえば、硬化性アクリルモノマーまたはオリゴマー等の前駆体材料と重合開始剤を溶解させて作製するものの他に、以下に挙げる無機微粒子や有機微粒子を分散させたものもある。
【0050】
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス等の各種金属酸化物、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの無機微粒子を1種類もしくは2種類以上混合して使用することが可能である。これら無機微粒子の平均粒径は、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。
【0051】
有機微粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及び、これらの共重合体が挙げられる。これらの有機微粒子を1種類もしくは2種類以上混合して使用することが可能である。これら有機微粒子の平均粒径は、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。
【0052】
保護層形成用塗布液を作製する際に、硬化アクリルモノマーまたはオリゴマー等の前駆体材料と重合開始剤を溶解する希釈溶剤を添加することが可能である。希釈溶剤は、前駆体材料と重合開始剤の溶解が可能なものであれば特に限定されるものではなく、たとえば、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0053】
保護層16の硬度は、前駆体材料の種類やその組成比、重合開始剤の種類と量、層の厚さ、光照射条件の他、必要に応じて保護層中に電荷輸送物質、酸化防止剤、電気抵抗調整剤を添加する場合にはこれらの種類や量等の影響を受けることになる。
【0054】
次に、感光体ドラムの作製方法について説明する。本発明でいう円筒形状部材の1つである感光体ドラムは、公知の方法により、支持体11上に、中間層形成用塗布液、電荷発生層形成用塗布液、電荷輸送層形成用塗布液、保護層形成用塗布液を順次塗布することにより作製することができる。
【0055】
各層形成用の塗布液を塗布する方法は、公知の塗布方法が利用できる。具体的には、浸漬塗布法、スプレイ塗布法、量規制塗布法(塗布量をコントロールして各塗布層の厚さを制御しながら塗布を行う塗布方法で円形スライドホッパに代表される)等の公知の塗布方法を使用することができる。このうち、各塗布層の厚さを正確に制御して均一な塗布層を形成する上で有利なものとしては、スプレイ塗布法または量規制塗布法を用いるのが好ましい。なお、スプレイ塗布については、たとえば特開平3−269238号公報に、量規制塗布法については、たとえば特開昭58−189061号公報に詳細な記載がある。
【0056】
量規制塗布装置には、前述した円形スライドホッパ型塗布ヘッドの他に押し出し型塗布ヘッドを用いた塗布装置等がある。これらの中でも、後述する円形スライドホッパ型塗布ヘッドを有する塗布装置(以後、円形スライドホッパ型塗布装置またはスライド型塗布装置ともいう)が好ましい。この様な円形形状の塗布ヘッドを有する塗布装置は、円筒形状の導電性支持体のほとんど全体(上端の一部を除く程度)を塗布液に浸漬して塗布する浸漬塗布法に比べて塗布装置内で分散液を滞留させずにワンウエイで層を形成することができる。
【0057】
また、感光体ドラムの最表面を構成する保護層16を形成する保護層形成用塗布液では、含有される粒子が塗布液中で凝集シェアを繰り返し受けることがなく、また、保護層形成用塗布液は溶媒に比べて粒子の比重が高く沈降し易い状態にありがちなのに塗布液中で粒子が沈降しない様に状態を維持することが可能である。したがって、粒子を均一分散させた構造の保護層を形成する上で最適である。
【0058】
また、浸漬塗布法の様に塗布液を大量に作製して感光体ドラム作製作業後、塗布液を保管するという手間がないので、保存により塗布液中の成分が経時で凝集したり沈降することによる塗布液の性能低下の問題を懸念する必要がない。さらに、一回の塗布で複数の層を形成することができるので、たとえば、保護層16を形成する際、円筒状の支持体11上に既に形成した下層を溶解してから塗布を行う様な手間がなくなる。
【0059】
また、塗布膜厚は塗布装置から吐出される塗布液流量で正確に制御することができるので、膜厚のバラツキが少なく、保護層を形成するにあたっては光学的に均一な層を形成することができる。
【0060】
次に、本発明でいう円筒形状部材の1つである現像ローラについて図3を用いて説明する。現像ローラは、帯電部材や現像ローラ自身の作用でトナーの摩擦帯電を行い、摩擦帯電させたトナーを飛翔させて感光体表面に供給するものである。現像ローラには、シャフトの外周にゴム状の弾性層を設けた上に樹脂層を設ける構成のものの他に、ゴム状の弾性層を設けずにシャフトの外周に樹脂層を直接設けた構成のものもある。図3に示す現像ローラは、シャフトの外周に弾性層17、表面層18等を配置させた構造のものである。
【0061】
図3(a)に示すものは、弾性層17の上に中間層12を形成したもので、その上に樹脂層である表面層18を積層形成した構造を有するものであり、図3(b)に示すものは、弾性層17の上に表面層18を直接形成した構造のものである。さらに、図3(c)に示すものは、中間層12を図3(a)のものよりも厚くしたものである。
【0062】
シャフト11は、導電性の部材で構成され、具体的には、SUS304等のステンレス鋼、鉄、アルミニウム、ニッケル、アルミニウム合金、ニッケル合金等の金属材料が好ましい。また、前述した金属の粉体物やカーボンブラック等の導電性材料を樹脂中に充填させた導電性樹脂も使用可能である。
【0063】
シャフト11の外径は、5mm〜30mmが好ましく、10mm〜20mmがより好ましい。特に、画像形成装置のコンパクト化対応等の視点から、小径の現像ローラがあるが、像担持体へのトナー供給を行う際に現像ローラを複数回連続回転させてトナー供給を行う大きさのシャフトもある。また、シャフト11は、現像ローラ表面に蓄積した残留電荷を円滑に除去させる視点から、比抵抗を1×10Ω・cm以下が好ましい。
【0064】
弾性層17は、発泡材料やゴム材料中にカーボンブラック等の導電性付与剤を含有した構造のもので、導電性と弾性を発現するものである。つまり、弾性層17は帯電ローラ10が感光体に対して良好な帯電付与性能を発現する上で低抵抗であり、感光体との間に適度な密着性を発現する上で弾性を有する様に設計されている。また、弾性を有することで画像形成時に振動が発生してもこれを吸収して安定した帯電性能を感光体に付与する。
【0065】
弾性層17を形成する発泡材料はスポンジ構造を形成するもので、オイルや加硫剤等を使用せずに弾性を発現することができることから、弾性層形成に必要な材料数を減らすことができる。弾性層17の形成に使用可能な発泡材料は公知のものが使用でき、たとえば、特開平7−295331号公報に記載の様な発泡剤をポリウレタン樹脂等に混合したもの等が挙げられる。
【0066】
また、弾性層17を公知のゴム材料で形成することも可能であり、ゴム材料はその種類が発泡材料に比べると多いので材料の選択幅が広くなる。また、オイルや加硫剤等を添加することにより硬度の調整が自由に行える。具体的には、ポリノルボルネンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらのゴム組成物は、単独で使用する他に、2種以上のゴム組成物を混合して混合ゴムとして使用することも可能である。
【0067】
さらに、弾性層17には、アセチレンブラックやファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉末等の金属粉末、酸化アルミニウムや酸化チタン等の金属酸化物粉末等が導電性付与剤として含有されている。この中でもカーボンブラックは良好な分散性を発現し、弾性層中に含まれる添加物の影響を受けにくいことから、安定した導電性を発現し易いものである。
【0068】
次に、中間層12は、たとえば公知のゴム材料等で形成され、その中に導電剤や帯電防止剤等が含有することができる。中間層12により現像ローラ104中に電気的に抵抗の高い領域が形成され、現像ローラ104の耐リーク性の制御を可能にしている。また、中間層12は、弾性層17と表面層18の双方に対して適度な接着性を有することにより現像ローラ104の耐久性を向上させている。
【0069】
中間層12に使用可能なゴム材料には、たとえば、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム等が挙げられる。また、導電剤には、前述のカーボンブラックや過塩素酸塩等のイオン導電剤が挙げられる。帯電防止剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、リン酸エステル、脂肪族アルコールサルフェート塩、脂肪族多価アルコール等が挙げられる。これらは、それぞれ適宜に選択され、公知技術に基づく適度な配合比率で用いられる。
【0070】
また、中間層12は、弾性層17からのオイルの浸み出しを防止し、弾性層17表面における抵抗調整を行うことで現像ローラ104表面の電気抵抗の均一化に寄与している。さらに、中間層12に使用するゴム材料を選択することにより現像ローラ104の硬度を調整することも可能である。
【0071】
樹脂層を構成する表面層18は、その表面にトナー層を形成させて、摩擦帯電によりトナーの帯電を行うものである。また、表面層18は、トナーの帯電や像担持体への供給、さらには、残留電荷の除去等を円滑に行える様にするために、弾性層17と強固に接着していることが好ましい。また、表面層18中には図示しないが粗さ付与粒子を含有させることも可能で、粗さ付与粒子の添加により、現像ローラ表面におけるトナー搬送性を向上させることが可能である。
【0072】
表面層18に含有可能な粗さ付与粒子としては、平均1次粒径が5μm〜30μmのもので、現像ローラ104の表面に粗さを付与することにより、トナー搬送性を向上させるものである。粗さ付与粒子は、スチレン樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂より構成されるものが好ましい。
【0073】
表面層18は、弾性層17上に公知の樹脂を溶剤に溶解させてなる表面層形成用溶液を塗布し、乾燥処理することにより形成することが可能である。表面層18を構成する樹脂は、特に限定されるものではないが、たとえば、表面層形成用溶液の形態にしたとき弾性層17表面に均一に塗布することが可能な樹脂であればよい。
【0074】
本発明でいう円筒形状部材の1つである現像ローラは、公知の方法で作製することが可能であるが、たとえば、以下の様な手順で作製することができる。
【0075】
先ず、ベースとなる弾性層17を構成する各成分をニーダ等の混練機で混練して、弾性層形成材料を作製する。次いで、円筒状金型の中空部にシャフト11をセットし、円筒状金型とシャフト11との間に形成される空隙部に上記弾性層形成材料を注型した後、金型を蓋い、加熱して、弾性層形成材料を架橋させる。架橋反応終了後、上記円筒状金型より脱型することにより、シャフト11の外周面に弾性層17が形成される。
【0076】
次に、上記弾性層17の外周面に、上記樹脂層である表面層形成用溶液を塗布する。この塗布方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、ディッピング法、スプレイ法、ロールコート法等の公知の方法を適用することができる。そして、塗布後、乾燥及び加熱処理(たとえば、温度120〜200℃、処理時間20〜90分)を行って、樹脂層形成用溶液中の溶剤を除去して表面層18を形成する。また、必要により無機あるいは有機の粗さ付与粒子を含有させた表面層18を形成することも可能で、この場合、公知の方法により粗さ付与粒子が表面層形成用溶液中で分散状態を維持する様に表面層形成用溶液を調製しながら表面層18を形成することが好ましい。
【0077】
一方、弾性層17と表面層18の間に中間層12を形成する場合は、中間層12の構成材料を溶剤とともに混合、溶解させて、中間層形成用溶液をつくる。この中間層形成用溶液を前述した公知の方法により、弾性層17の外周面に塗布し、乾燥処理することにより中間層12を形成することができる。以上の様な手順をとることにより図3に示す構造の現像ローラを作製することができる。
【0078】
なお、現像ローラにおいては、弾性層17の厚みはたとえば1〜10mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは2〜6mmである。また、中間層12と表面層18の合計厚みは3〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜20μmである。また、現像ローラを構成する各層の厚みは、現像ローラより表面層18、中間層12及び弾性層17を含む断面試料を採取して、顕微鏡写真撮影を行い、当該写真画像に基づいて算出することが可能である。
【0079】
次に、本発明でいう円筒形状部材の1つである帯電ローラについて図4を用いて説明する。帯電ローラは、回転状態で感光体に接触して感光体表面を帯電するもので、具体的には、シャフト上に弾性部材を用いて形成したベース層より構成された帯電ローラを感光体に接触させ、帯電ローラに電圧を印加して行うものである。
【0080】
帯電ローラによる接触帯電には、直流電圧をローラに印加して帯電を行う直流帯電方式と、交流電圧をローラに印加して帯電を行う誘導帯電方式の2つの方法が代表的なものであり、いずれの方式でも感光体表面を帯電することができる。帯電ローラによる接触帯電は、磁気ブラシやブレード等の他の接触帯電手段に比べ、感光体表面との間に大きな接触面が得られることから、感光体表面に均一な帯電を行い易い構造を有している。
【0081】
図4は、帯電ローラの層構造を示す概略図で、帯電ローラ102が導電性のシャフト11と、シャフト11上に弾性層17が設けられ、最表面には硬化処理により形成された表面層18が存在する。ここで、図4(a)に示すものは、弾性層17の上に中間層12が形成され、その上に表面層18が順番に積層形成された構造を有しており、図4(b)に示すものは、弾性層17の上に表面層18を直接形成した構造のものである。さらに、図4(c)に示すものは、中間層12を図4(a)のものよりも厚くしたものである。
【0082】
シャフト11は、導電性の部材で構成され、具体的には、SUS304等のステンレス鋼、鉄、アルミニウム、ニッケル、アルミニウム合金、ニッケル合金等の金属材料が好ましい。また、前述した金属の粉体物やカーボンブラック等の導電性材料を樹脂中に充填させた導電性樹脂も使用可能である。
【0083】
弾性層17は、発泡材料やゴム材料中にカーボンブラック等の導電性付与剤を含有した構造のもので、導電性と弾性を発現するものである。つまり、弾性層17は帯電ローラ10が感光体に対して良好な帯電付与性能を発現する上で低抵抗であり、感光体との間に適度な密着性を発現する上で弾性を有する様に設計されている。また、弾性を有することで画像形成時に振動が発生してもこれを吸収して安定した帯電性能を感光体に付与する。
【0084】
弾性層17を形成する発泡材料はスポンジ構造を形成するもので、オイルや加硫剤等を使用せずに弾性を発現することができることから、弾性層形成に必要な材料数を減らすことができる。弾性層17の形成に使用可能な発泡材料は公知のものが使用でき、たとえば、特開平7−295331号公報に記載の様な発泡剤をポリウレタン樹脂等に混合したもの等が挙げられる。
【0085】
また、弾性層17を公知のゴム材料で形成することも可能であり、ゴム材料はその種類が発泡材料に比べると多いので材料の選択幅が広くなる。また、オイルや加硫剤等を添加することにより硬度の調整が自由に行える。具体的には、ポリノルボルネンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらのゴム組成物は、単独で使用する他に、2種以上のゴム組成物を混合して混合ゴムとして使用することも可能である。
【0086】
弾性層17には、アセチレンブラックやファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉末等の金属粉末、酸化アルミニウムや酸化チタン等の金属酸化物粉末等が導電性付与剤として含有されている。この中でもカーボンブラックは良好な分散性を発現し、弾性層中に含まれる添加物の影響を受けにくいことから、安定した導電性を発現し易いものである。
【0087】
次に、中間層12は、公知のゴム材料で形成され、その中に導電剤や帯電防止剤等が含有されている。中間層12により、帯電ローラ10中に電気的に抵抗の高い領域が形成され、帯電ローラ10の耐電圧性(耐リーク性)の制御を可能にしている。
【0088】
中間層12に使用可能なゴム材料には、たとえば、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム等が挙げられる。また、導電剤には、前述のカーボンブラックや過塩素酸塩等のイオン導電剤が挙げられる。帯電防止剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、リン酸エステル、脂肪族アルコールサルフェート塩、脂肪族多価アルコール等が挙げられる。これらは、それぞれ適宜に選択され、公知技術に基づく適度な配合比率で用いられる。
【0089】
また、中間層12は、弾性層17からのオイルの浸み出しを防止し、弾性層17表面における抵抗調整を行うことで帯電ローラ102表面の抵抗の均一化に寄与している。さらに、中間層12に使用するゴム材料を選択して帯電ローラ102の硬度を調整することも可能である。
【0090】
表面層18は、感光体表面に接触する領域で、体積抵抗率は1×10Ωcm〜1×1015Ωcmで、表面層18の体積抵抗率をこの範囲にすることで感光体表面を所定電位レベルに帯電し易くする。また、硬化処理を施すことにより感光体表面への接触を安定化させることができる。
【0091】
なお、帯電ローラは、前述した現像ローラの作製方法とほぼ同じ手順で作製することができるので、ここでは帯電ローラの作製方法の説明は省略する。
【0092】
次に、本発明で行われる非接触方式の表面検査方法について説明する。
【0093】
本発明では、感光体ドラムや現像ローラ等の円筒形状部材表面を検査する際、円筒形状部材周面に有彩色トナーを付着させて、部材表面を有彩色トナーが付着した状態にすることで部材表面の微小欠陥の有無を目視やCCDカメラ等により非接触で検知できることを見出したものである。
【0094】
本発明に係る表面検査方法では、円筒形状部材表面に有彩色トナーを担持させた状態にするが、円筒形状部材表面に有彩色トナーを担持させると、ちょうど、冬の日に地面に雪が積もった状態に似た状態が形成されると言える。すなわち、平らな地面には雪が均一に積もり陰影のない雪面が形成されるが、凹凸のある地面にはその凹凸に沿って雪が均一に積もるため雪面上に陰影が形成される。つまり、本発明では現像ローラ表面にトナーを担持したときに、円筒形状部材表面に凹凸に起因する欠陥が存在する場合には、その欠陥がトナーにより強調され、欠陥の有無をより検知し易くしているものといえる。
【0095】
本発明に係る表面検査方法は、画像形成装置に搭載される各種円筒形状部材の表面状態を検査することができるものであるが、特に、感光体ドラムや現像ローラの様に部材の周面にトナーを担持する機能を有する部材の表面状態を検査するのに有効である。これらの部材は周面上にトナーを担持するもので、形成された潜像を所定レベルに現像する様に周面でトナーを担持したり、所定レベルの現像を感光体ドラムで行える様にトナー供給するために周面全面に均一なトナー層をムラなく形成することが求められている。つまり、部材周面の品質が最終製品であるプリント物の画質に直接影響を与えるものであることから欠陥のないことが求められるからである。
【0096】
図5は、本発明でいう円筒形状部材表面を非接触で検査する表面検査装置50の概略斜視図である。図5では、円筒形状部材10表面(周面)に、たとえば、体積基準メディアン径が3μm〜9μmの有彩色トナーを電気的に付着させた状態にしている。円筒形状部材表面にトナー粒子を電気的に付着させる方法は後述する。
【0097】
図5に示す様に、本発明に係る表面検査方法が実施可能な表面検査装置50は、少なくとも、照明用光源51とCCDカメラ(ラインセンサ)58より構成される。照明用光源51は、周面に有彩色トナーを付着させた円筒形状部材10の上方より拡散光52を照射するもので、検査個所55を中心にして検査領域を明るくする。照明用光源51は、表面検査装置50によりスムーズな目視検査やCCDカメラ58で良好な撮像が行える様に設置され、検査個所で150lx以上、好ましくは300lx以上のムラのない均一な照度が得られるものであれば、光源の種類や照射条件は特に限定されるものではない。
【0098】
照明用光源51の具体例としては、電球や太陽光等の公知の光源からの直接光やスリット光等があり、たとえば、直径30mm、長さ500mm、出力20ワットの直管蛍光灯等は好ましい光源の代表例の1つである。また、照明用光源51は、円筒形状部材10上の検査箇所55からの距離をたとえば100mmに設定する等、照明条件を公知の情報に基づいて設定することができる。
【0099】
さらに、照明用光源51は、円筒形状部材10の軸心方向53に直交する線に対して平行になる様に配置することが好ましく、かかる配置により、円筒形状部材10の検査個所55の領域に良好な照明環境を形成する拡散光領域56を形成することができる。
【0100】
なお、円筒形状部材10表面への照射光は、円筒形状部材10の円周方向に対してほぼ均一にすることが好ましい。また、現像ローラ104や帯電ローラ102の様に、その曲率が小さい円筒形状部材10を検査する場合には、点光源やスリット光では好適な照射環境を形成することが困難になりがちなので、前述の直管蛍光灯を照明用光源51として用いることが好ましい。
【0101】
また、表面検査装置50を構成するラインセンサタイプのCCDカメラ58は、図5を上から見たときに、その受光光軸方向54が円筒形状部材10の軸心方向53に対してほぼ平行になる様に設置することが好ましい。また、図5を横からみたときに形成される受光光軸方向54と円筒形状部材10の軸心方向53との間で形成される角度57は、たとえば、特開平8−101131号公報にも記載の様に、10°±5°の範囲に設定することがより好ましく、10°近傍が特に好ましいものである。
【0102】
なお、CCDカメラ(ラインセンサ)58が検査を行う検査個所(受光視野)55は、円筒形状部材10の円周方向に沿って形成されるものであっても、円筒形状部材10の軸心方向53に沿って形成されるものであってもよい。図5に示す表面検査装置50の照明用光源51の照射条件及びCCDカメラ58の撮影条件を上記構成にすることにより、有彩色トナーを付着させた円筒形状部材10の表面状態が検査個所(受光視野)55を中心にしてCCDカメラ(ラインセンサ)58に忠実に撮影される。その結果、CCDカメラ(ラインセンサ)58より、円筒形状部材10の検査個所(受光視野)55を中心にした表面状態を忠実に反映させた出力信号が得られる。
【0103】
図5に示す表面検査装置50を用いることにより、円筒形状部材10上に凹凸に起因する欠陥を検知することができる。なお、本発明でいう「凹凸に起因する欠陥」としては、たとえば、異物の付着によるもの、気泡の発生によるもの、スジの発生によるもの、キズ等が挙げられる。
【0104】
また、本発明は、図6や図7に示す様に、照明用光源51からの照射光52が円筒形状部材10全体を照明し、この状態で円筒形状部材10の表面を複数のCCDカメラ58で撮像して検査を行うことも可能である。複数のCCDカメラ58を用いて表面を検査する場合は、各CCDカメラ58より出力されたカメラ信号を図示しないカメラ信号合成装置で合成し、合成された信号を図示しないアナログ信号処理装置や特徴量生成装置等の公知の信号処理装置を用いて検査用の画像信号に変換する。この際、端面寸法測定装置も併設しておくとカメラ信号合成装置より得られたデータに基づいて端面寸法等のデータも得られる等、より高精度の表面検査が行える様になる。
【0105】
なお、本発明に係る表面検査方法は、円筒状形状部材10の周面に有彩色トナーを付着させ、有彩色トナーが付着した状態を保持して表面検査を行うものであるので、円筒形状部材10に電圧を印加させておく必要がある。印加電圧の値は、当該円筒形状部材10を画像形成装置に搭載して実際に画像形成を行うときの値とする他、表面検査が支障なく行えるトナー付着量を実現する電圧値を予め算出しておき、これを表面検査実験時の印加電圧値として設定する方法もある。
【0106】
本発明に係る表面検査方法では、円筒形状部材10の周面に有彩色トナーがムラなく均一に付着する様に、円筒形状部材10を回転させた状態で有彩色トナーを供給、付着させることが好ましい。円筒形状部材10の回転速度は、円筒形状部材10の周面に有彩色トナーをムラなく均一に付着させる回転速度であれば特に限定されるものではない。また、表面観察時も観察を効率よく行う観点から、有彩色トナーを付着させた円筒形状部材10を回転させておくことが好ましく、観測者の観察、判定に支障を来さない程度の回転数に設定しておくことが好ましい。
【0107】
本発明に係る表面検査方法についてさらに説明する。本発明者は、現像ローラの表面観察を上記表面検査装置50を用いて行っていたとき、検査を行う現像ローラ表面には薄いトナー層が均一に形成されることが好ましいことに気がついた。すなわち、現像ローラ表面で欠陥部分の陰影を際立たせる様にして、欠陥部分の存在を確認し易い状態にすることで検知精度を向上させようと考え、検討の結果、現像ローラ表面へのトナー供給量を抑える手段を見出そうとした。
【0108】
そして、負帯電性のトナーを現像ローラに供給する際、現像ローラをマイナスに帯電させ、現像ローラへトナーを供給する供給ローラは相対的にプラス帯電した状態にすることで、欠陥部分の陰影を際立たせる様にトナー供給できることを見出したのである。すなわち、本発明者は、マイナスに帯電させた有彩色トナーを使用するとともに現像ローラにマイナスの電圧を印加させた状態にすることにより、欠陥部分の存在がより確認し易くなり検知精度が向上されることを見出したのである。
【0109】
上記構成により、トナー供給後、現像ローラ表面の正常領域には薄いトナー層が均一に形成されるとともに、欠陥部分にはトナーがあまり付着せず、欠陥部分の陰影を際立たせることができる様になった。その結果、目視観察やCCDカメラによる画像の観察のいずれの場合でも、欠陥部分の確認が容易に行える様になり、観察時間を大幅に短縮することができる様になった。とりわけ、表面観察を行うときには作業効率の観点から現像ローラを回転させた状態にして行うことが好ましい。本発明では、本発明者が見出した上記構成により、現像ローラをある程度の速度で回転させた状態にしても欠陥部分を確実に検知することが可能な表面検査方法を見出すことができたのである。
【0110】
現像ローラをマイナスに帯電させ供給ローラを相対的にプラスに帯電させた状態にすることにより欠陥部分を検知し易くなったのは、現像ローラへのトナー供給量の低減に加えて欠陥部分で生じる電荷リークの作用を活用できる様になったことが考えられる。すなわち、欠陥部分ではそのリーク性によりもともと他よりもトナー付着しにくくなっていたところにマイナス帯電することにより、欠陥部分のリーク性が促進されて正常領域とのトナー付着性の差がより大きくなったと考えられる。また、現像ローラ表面にうすいトナー層を形成できる理由は、マイナス帯電しているほとんどのトナーは現像ローラに反発して付着しないが、その中でも摩擦力の作用で付着するトナーが存在し、わずかなトナーによりうすいトナー層を形成するものと考えられる。
【0111】
次に、本発明に係る表面検査方法で使用される有彩色トナーについて説明する。本発明でいう「有彩色トナー」とは、いわゆる色味を有するトナー、すなわち、色相、明度、彩度と呼ばれる色の3属性を有するトナーのことを言う。つまり、黒色トナーと呼ばれる無彩色のトナー以外のいわゆるカラートナーと呼ばれるものが該当し、具体的には、たとえば、イエロー、マゼンタ、シアンのトナーが代表的なものであり、その他にオレンジ、グリーン、ブルー、レッド等のトナーもある。
【0112】
また、本発明に使用可能な有彩色トナーは、その反射スペクトルに基づいて特定することが可能である。
【0113】
先ず、有彩色トナーの1つであるイエロートナーとは、その反射スペクトルを観察すると、500nm以上730nm未満の反射率が380nm以上500nm未満の反射率よりも相対的に高くなっているトナーのことをいう。具体的には、後述するイエロー色に着色させる着色剤を含有してなるトナーをいうものである。
【0114】
また、マゼンタトナーとは、その反射スペクトルを観察すると、380nm以上500nm未満及び600nm以上730nm未満の反射率が500nm以上600nm未満の反射率よりも相対的に高くなっているトナーのことをいう。具体的には、後述するマゼンタ色に着色させる着色剤を含有してなるトナーをいうものである。
【0115】
また、シアントナーとは、その反射スペクトルを観察すると、380nm以上600nm未満の反射率が600nm以上730nmの反射率よりも相対的に高くなっているトナーのことをいう。具体的には、後述するシアン色に着色させる着色剤を含有してなるトナーをいうものである。
【0116】
また、オレンジトナーとは、その反射スペクトルを観察すると、500nm以上730nm未満の反射率が380nm以上500nm未満の反射率よりも相対的に高く、しかも、600nm以上730nm未満の反射率が特に高いトナーのことをいう。具体的には、後述するオレンジ色に着色させる着色剤を含有してなるトナーをいうものである。
【0117】
更に、グリーントナーとは、その反射スペクトルを観察すると、500nm以上600nm未満の反射率が、380nm以上500nm未満及び600nm以上730nm未満の反射率よりも相対的に高くなっているトナーのことをいう。具体的には、後述する緑色に着色させる着色剤を含有してなるトナーをいうものである。
【0118】
本発明に使用される有彩色トナーの反射スペクトルは、以下の手順で測定することが可能である。先ず、測定用試料は以下の手順で作製する。
(1)白色度が80〜85%、坪量が80g/mの転写紙上に、加熱定着前トナー付着量が5g/mとなるように単色画像を形成する。
(2)次に、加熱ローラ温度が180℃、定着速度220mm/sec、加熱ローラ径φ65mm、加圧ローラ径φ55mmの定着条件下で、前記単色画像を加熱定着し、形成された定着画像を測定試料とする。
【0119】
この様にして作製した測定試料の反射スペクトルを測定する。
【0120】
反射スペクトルの測定装置としては、可視光領域(380nm〜780nm)での反射率波長特性が測定可能な反射分光測定装置(反射分光光度計、分光測色器ともいう)が使用される。具体的には、たとえば、Gretag Macbeth SpectroScan(Gretah Macbeth社製)などの測定装置が挙げられる。
【0121】
上記有彩色のトナーは、以下に示す着色剤をトナー中に含有させることにより作製することが可能である。具体的な着色剤について説明する。
【0122】
本発明に使用される有彩色トナーに使用可能な着色剤には以下のものが挙げられる。
【0123】
先ず、イエロートナー用の具体的な着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0124】
C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー61、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー190、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー194、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー173、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー153等
上記イエロートナー用の着色剤を用いることにより、イエローの色調を有するイエロートナーを作製することが可能である。
【0125】
次に、マゼンタトナー用の具体的な着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0126】
C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド13、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド212、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド181等
上記マゼンタトナー用の着色剤を使用することにより、マゼンタの色調を有するマゼンタトナーを作製することが可能である。
【0127】
次に、シアントナー用の具体的な着色剤としては、たとえば、C.I.ピグメントブルー15:3等が挙げられる。
【0128】
次に、オレンジトナー用の具体的な着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0129】
C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ2、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ22、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ148、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ62、C.I.ピグメントオレンジ15、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ44、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ66、C.I.ピグメントオレンジ69、C.I.ピグメントオレンジ65、C.I.ピグメントオレンジ68
さらに、グリーントナー用の具体的な着色剤としては、たとえば、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン36等が挙げられる。
【0130】
なお、本発明に使用可能な有彩色トナーを作製する際の上記着色剤の添加量は、トナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは、2〜20質量%の範囲に設定するのがよい。
【0131】
本発明では、これらの有彩色トナーの中でも特にイエロートナーが好ましい。本発明でイエロートナーが特に好ましい理由は現像ローラに代表される被検査物の色調が黒っぽいものが多いため、被検査物表面でトナーが付着しなかった部分と際立たせるのに都合がよいためである。特に、画像形成時にトナー層をムラなく均一に形成することが求められる現像ローラの表面検査を行う場合には、黒地のローラ表面にイエロートナーを付着させるので、仮に欠陥部が存在する場合にはその確認を容易に行うことができる。
【0132】
次に、本発明に使用可能な有彩色トナーの物性について説明する。
【0133】
なお、本発明に使用可能な有彩色トナーの体積基準メディアン径(D50)は、3μm以上8μm以下が好ましく、この範囲の体積基準メディアン径を有する小径トナーとすることで、デジタル対応の画像再現を配慮した表面検査が行える。即ち、近年のデジタル技術の進展に伴う微細なドット画像や高精細な線画像の高精度な再現や、写真画像の様な階調性の高い画像の形成を阻害するような欠陥を確実に探し出せる様に検査を行うことができる。
【0134】
なお、トナーの体積基準メディアン径(D50)は、マルチサイザ3(ベックマン・コールター社製)にデータ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することが可能である。
【0135】
マルチサイザ3を用いたトナーの体積基準メディアン径の測定は以下の手順で行う。
(1)トナーを0.02g用意し、これに界面活性剤溶液20mlを添加する。これは、トナーの分散を目的とするもので、界面活性剤溶液は、たとえば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈して調製したもの等が挙げられる。
(2)トナーを界面活性剤溶液で十分なじませた後、超音波分散処理を1分間行ってトナー分散液を作製する。
(3)このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカに、測定濃度5〜10%になるまでピペットで注入する。
(4)測定機カウントを2500個に設定して測定を開始する。なお、マルチサイザ3のアパチャー径は100μmのものを使用する。
【0136】
また、本発明に使用可能な有彩色トナーは、その平均円形度が0.940以上0.980以下であることが好ましく、0.945以上0.965以下であることがより好ましい。平均円形度を上記範囲とすることにより、トナー自体に適度な流動性が付与されるので、トナーを表面検査に繰りかえし使用してもトナーは破損、劣化しにくくなる。即ち、トナーに耐久性が付与されるので表面検査に繰り返し使用しても、壊れ難く、検査におけるトナー消費量を低減させることができる。
【0137】
トナーの平均円形度は、下記式で定義されるトナーの円形度を足し合わせた値を全トナー数で除して算出した値である。
【0138】
円形度=(トナー像と同じ投影面積を有する円の周囲長)/(トナー投影像の周囲長)
トナーの平均円形度は、たとえば「FPIA−2100(Sysmex社製)」に代表されるフロー式粒子像分析装置を用いて算出することができる。
【0139】
具体的には、トナーを界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散を1分行い分散した後、「FPIA−2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある同一測定値が得られる。
【0140】
また、本発明に使用可能な有彩色トナーは、その平均円形度の標準偏差(円形度SD)を0.035以上0.050以下、好ましくは、0.042以上0.048以下とするものである。トナーの平均円形度の標準偏差を上記範囲とすること、即ち、形状のばらつきがある程度揃えられたトナーで検査を行うことにより、微細なドット画像や高精細の線画像形成を行うデジタルの画像形成に対応した検査が行える。
【0141】
平均円形度の標準偏差は、各トナーの円形度と前述の式により算出される平均円形度との差の2乗和を求め、これを全トナー数で除して、その値の平方根をとったものである。
【0142】
次に、本発明に使用可能な有彩色トナーの製造方法について説明する。
【0143】
本発明に使用可能な有彩色トナーは、少なくとも樹脂と着色剤を含有してなる粒子より構成されるものである。トナーを構成する粒子は、その製造法が特に限定されるものではなく、従来のトナー製造方法に沿って作製することが可能である。すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕トナーの製造方法(粉砕法)や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合トナーの製造方法(たとえば、乳化重合法、懸濁重合法、ポリエステル伸長法等)を適用することにより作製可能である。
【0144】
この中でも、重合法によるトナー作製は、その製造工程で粒子の形状や大きさを制御しながら所望のトナーを形成することが可能で、微小なドット画像を忠実に再現することが可能な小径トナーの作製に最適である。とりわけ、近年のデジタル技術の進展により、フルカラーのグラビア写真等を作成することもあり、高精細で高画質画像を形成する上で、大きさと形状が揃った小径トナーは最適である。この様な視点からも、本発明に使用可能な有彩色トナーは重合法により作製することが好ましく、その中でも、乳化重合法や懸濁重合法により予め120nm前後の樹脂微粒子を形成し、この樹脂微粒子を凝集させる工程を経て粒子形成を行う乳化会合法は有効な作製方法の1つといえる。
【0145】
以下に、乳化会合法によるトナー作製の例を説明する。乳化会合法では概ね以下の様な手順を経てトナーを作製する。すなわち、
(1)樹脂微粒子分散液の作製工程
(2)着色剤微粒子分散液の作製工程
(3)樹脂微粒子の凝集・融着工程
(4)熟成工程
(5)冷却工程
(6)洗浄工程
(7)乾燥工程
(8)外添剤処理工程
以下、各工程について説明する。
【0146】
(1)樹脂微粒子分散液の作製工程
この工程は、樹脂微粒子を形成する重合性単量体を水系媒体中に投入して重合を行うことにより120nm程度の大きさの樹脂微粒子を形成する工程である。樹脂微粒子にワックスを含有させたものを形成することも可能で、この場合、ワックスを重合性単量体に溶解あるいは分散させておき、これを水系媒体中で重合させることにより、ワックスを含有してなる樹脂微粒子が形成される。
【0147】
(2)着色剤微粒子分散液の作製工程
水系媒体中に前述した着色剤を分散させ、110nm程度の大きさの着色剤微粒子分散液を作製する工程である。
【0148】
(3)樹脂微粒子の凝集・融着工程
この工程は、水系媒体中で樹脂微粒子と着色剤粒子を凝集させ、凝集させたこれらの粒子を融着させて粒子を得る工程である。この工程では、樹脂微粒子と着色剤粒子とが存在している水系媒体中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等を凝集剤として添加し、次いで、前記樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ前記混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱することで凝集を進行させると同時に樹脂微粒子同士の融着を行う。具体的には、前述の手順で作製した樹脂微粒子と着色剤粒子とを反応系に添加し、塩化マグネシウム等の凝集剤を添加することにより、樹脂微粒子と着色剤粒子とを凝集させると同時に微粒子同士を融着させて粒子形成を行う。そして、粒子の大きさが目標の大きさになった時に、食塩水等の塩を添加して凝集を停止させる。
【0149】
(4)熟成工程
この工程は、上記凝集・融着工程に引き続き、反応系を加熱処理することにより粒子の形状が所望の平均円形度になるまで熟成を行う工程である。
【0150】
(5)冷却工程
この工程は、前記粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
【0151】
(6)洗浄工程
この工程は、上記工程で所定温度まで冷却された粒子分散液から粒子を固液分離する工程と、固液分離されてウェットのケーキ状集合体にした粒子から界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去するための洗浄工程からなる。
【0152】
洗浄処理は、濾液の電気伝導度が10μS/cmになるまで水洗浄する。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法などがあり、特に限定されるものではない。
【0153】
(7)乾燥工程
この工程は、洗浄処理された粒子を乾燥処理し、乾燥された粒子を得る工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0154】
また、乾燥された粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。なお、乾燥処理された粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサ、コーヒーミル、フードプロセッサ等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0155】
(8)外添剤処理工程
この工程は、乾燥された粒子に必要に応じ外添剤を混合し、トナーを作製する工程である。外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサ、コーヒーミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
【0156】
乳化会合法によるトナー製造方法は、以上の工程を経て、トナー作製を行うものであり、前述した理由により、本発明に係る表面検査方法で使用される有彩色トナーは上記乳化会合法で作製することが好ましい。
【0157】
また、本発明に係る表面検査方法に使用される有彩色トナーは、前述した重合法で作製される他に、粉砕法により作製することも可能である。粉砕法によるトナー作製方法は、たとえば、以下に示す手順によるもの等が挙げられる。
【0158】
粉砕法によるトナー作製は、最初に、バインダ樹脂、荷電制御剤、及び、着色剤等のトナー構成物をヘンシェルミキサ等を用いて混合した後、混合物を2軸押出混練機等の混練機に投入して混練を行う(混練工程)。
【0159】
混練物を冷却後、フェザーミル、ハンマーミル等で疎粉砕し、さらに、クリプトロン等の機械式粉砕機やジェットミル等の気流式粉砕機で微粉砕する(粉砕工程)。
【0160】
次に、微粉砕処理したものを機械式あるいは気流式の分級機に投入し、分級処理を行って、所望の粒径を有する粒子を得る(分級工程)。分級機による分級は、トナーを搬送する風力と搬送の際にトナーに加わる遠心力や向心力とのバランスを利用したり、コアンダ効果と呼ばれる気流の性質を利用する等により行われる。
【0161】
さらに、上記工程を経て作製された粒子を加熱処理することにより、粒子の円形度を制御する。円形度を制御する装置としては、たとえば、粒子に熱風を接触させて円形度制御を行う「サフュージョンシステム(NPK社製)」等が代表的なものである。
【0162】
そして、上記手順を経て作製された粒子に、必要とあれば外添剤を添加してトナーを作製する。外添剤処理を施す装置としては、ヘンシェルミキサやコーヒーミル等の機械式の混合装置が挙げられる。
【0163】
次に、本発明に使用可能な有彩色トナーで使用可能な樹脂やワックス等の構成要素について、具体例を挙げて説明する。
【0164】
先ず、本発明に使用可能な有彩色トナーを構成する樹脂としては、下記(1)乃至(10)に示す様なビニル系単量体に代表される重合性単量体を重合して作製される重合体が代表的なものである。すなわち、本発明に使用可能な有彩色トナーに使用される樹脂としては、下記に示すビニル系単量体を単独あるいは複数種類組み合わせて重合を行って得られるものが挙げられる。
(1)スチレンあるいはスチレン誘導体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等
(2)メタクリル酸エステル誘導体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等
(3)アクリル酸エステル誘導体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等。
(4)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(5)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(6)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(7)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(8)N−ビニル化合物
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
(9)ビニル化合物類
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等
(10)アクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等。
【0165】
また、樹脂を構成する重合性単量体として、イオン性解離基を有する重合性単量体を組み合わせて使用することも可能である。イオン性解離基としては、たとえば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基が挙げられ、イオン性解離基を有する重合性単量体はこれらの置換基を有するものである。
【0166】
イオン性解離基を有する重合性単量体の具体例を以下に挙げる。
【0167】
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等。
【0168】
さらに、樹脂を構成する重合性単量体として、多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることも可能である。多官能性ビニル類の具体例を以下に挙げる。
【0169】
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等。
【0170】
次に、本発明に使用可能な有彩色トナーに使用可能なワックスについて説明する。本発明に係るトナーに使用可能なワックスとしては、従来公知のものが挙げられ、具体的には、以下のものが挙げられる。
(1)長鎖炭化水素系ワックス
ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等
(2)エステル系ワックス
トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等
(3)アミド系ワックス
エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等
(4)ジアルキルケトン系ワックス
ジステアリルケトン等
(5)その他
カルナウバワックス、モンタンワックス等。
【0171】
ワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。ワックスの融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保され、同時に、低温での定着を行う場合でもコールドオフセット等を発生させずに安定したトナー画像形成が行える。又、トナー中のワックス含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。
【0172】
次に、本発明に使用可能な有彩色トナーは、その製造工程で外部添加剤(=外添剤)として数平均一次粒径が40〜800nmの無機微粒子や有機微粒子等の粒子を添加して、トナー作製することが好ましい。
【0173】
外添剤の添加により、トナーの流動性や帯電性が改良されるので、本発明では、より実際の画像形成条件に対応した検査が行える様になる。外添剤の種類は特に限定されるものではなく、たとえば、以下に挙げる無機微粒子や有機微粒子、及び、滑剤が挙げられる。
【0174】
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することができる。具体的には、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等が好ましく用いることができる。これら無機微粒子としては必要に応じて疎水化処理したものを用いても良い。具体的なシリカ微粒子としては、たとえば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0175】
チタニア微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0176】
アルミナ微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0177】
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
【0178】
また、有彩色トナーには滑剤を添加することも可能である。滑剤としては、たとえば、以下の様な高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。すなわち、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩が挙げられる。
【0179】
これら外添剤や滑剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。また、外添剤や滑剤の添加方法としては、タービュラミキサ、ヘンシェルミキサ、ナウターミキサ、V型混合機等の公知の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
【実施例】
【0180】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記文中に記載の「部」は「質量部」を表すものである。
【0181】
実施例その1(現像ローラの表面検査)
1.「現像ローラ1〜4」の作製
以下の手順により、図3(a)に示す構造を有する「現像ローラ1〜4」を作製した。
【0182】
(1)弾性層形成材料の調製
市販のシリコーンゴム「X−34−424(信越化学工業(株)製)」、「X−34−387(信越化学工業(株)製)」を各々100部を混合分散させ、さらにケッチェンブラック80部を添加することにより弾性層形成材料を調製した。
【0183】
(2)表面層用樹脂材料(ポリウレタン樹脂−シリカハイブリッド体樹脂)の調製
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応装置に、
市販のポリカーボネートジオール「プラクセルCD220(ダイセル化学(株)製、数平均分子量2,000)」 1000部
イソホロンジイソシアネート 278部
を投入し、窒素気流下、100℃で6時間反応処理することにより、遊離イソシアネート価3.44%のウレタンプレポリマーを作製した。引き続き、前記ウレタンプレポリマーにメチルエチルケトン548部を添加してウレタンプレポリマー溶液を調製した。
【0184】
次に、下記化合物より構成される混合物の存在下に、上記ウレタンプレポリマー溶液1000部を添加し、50℃で3時間反応させてポリウレタン樹脂を精製した。すなわち、
イソホロンジアミン 71.8部
ジ−n−ブチルアミン 4.0部
メチルエチルケトン 906部
イソプロピルアルコール 603部
上記手順で作製したポリウレタン樹脂溶液(以下、「ポリウレタン樹脂1A」という)は、樹脂固形分濃度30%、アミン価1.2KOH(mg/g)であった。
【0185】
一方、撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応装置に、
市販のグリシドール「エピオールOH(日本油脂(株)製)」 1400部
市販のテトラメトキシシラン部分縮合物「メチルシリケート51」(多摩化学社製、Si原子の平均個数4) 8957.9部
を投入し、窒素気流下、撹拌しながら90℃に昇温させた後、触媒としてジブチルスズジラウレート2.0部を添加して反応処理を行った。反応中、分水器を使ってメタノールを留去し、その量が約630部に達した時点で冷却した。昇温より冷却までの所要時間は5時間であった。さらに、反応容器内の圧力を13kPaにし、この状態を約10分間維持することにより、反応容器内に残存するメタノール約80部を減圧除去処理させた。以上の手順により、「エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物2A」を作製した。
【0186】
次に、上述した反応装置と同様の反応装置に、前記「ポリウレタン樹脂1A」500部を50℃に加温した後、前記「エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物2A」10.95部を添加し、窒素気流下、60℃で4時間反応処理を行った。この様にして、「アルコキシ基含有シラン変性ポリウレタン樹脂」を作製した。
【0187】
前述の「アルコキシ基含有シラン変性ポリウレタン樹脂」中の固形残分中のケイ素原子(Si)含有量はシリカ質量換算で3.3%であった。上記「アルコキシ基含有シラン変性ポリウレタン樹脂」100部とケッチェンブラック30部とを混合分散させて表面層18を形成するための「表面層形成材料1」を調製した。
【0188】
(3)「現像ローラ1」の作製
直径10mmのSUS303製シャフトを円筒状金型の中空部にセットし、前記シャフトと円筒状金型との間の空隙部に前記「弾性層形成材料1」を注型し、180℃で1時間加熱加硫処理を行った後、さらに200℃で4時間2次加硫処理を行った。2次加硫処理後、前記円筒状金型より脱型して厚み5mmの弾性層をシャフト外周に形成した。
【0189】
次に、前記弾性層の外周面に前記「表面層形成材料1」を処理後の厚さが15μmになる様に塗布し、100℃で1時間加熱処理することにより「ポリウレタン樹脂−シリカハイブリッド体」からなる表面層を形成させた。この様な手順により、図3(b)に示す構造を有する「現像ローラ1」を作製した。
【0190】
(4)「現像ローラ2〜4」の作製
上記「現像ローラ1」を作製する際、15分間窒素ガスによるバブリング処理を行った「表面層形成材料1」を用いて塗布を行った他は同じ手順で「現像ローラ2」を作製した。得られた「現像ローラ2」の表面層をルーペで観察すると0.5mm〜1.5mm程度の微細な気泡が形成されていることが確認された。
【0191】
また、上記「現像ローラ1」を作製する際、「表面層形成材料1」を塗布後、刷毛で塗布面をなでまわしてから100℃で1時間の加熱処理を行った。その他は同じ手順で「現像ローラ3」を作製した。
【0192】
さらに、上記「現像ローラ1」と全く同じ手順で現像ローラを作製後、市販のカッターを用いて表面層表面に長さ5mm、幅50μmのキズをつける処理を施して「現像ローラ4」を作製した。以上の処理により、気泡、スジ、キズを有する「現像ローラ2〜4」を作製した。
【0193】
2.イエロートナーの作製
(1)「樹脂微粒子分散液1」の調製
撹拌装置を取り付けたフラスコに下記化合物を添加し、80℃に加温して溶解させ単量体混合溶液を作製した。すなわち、
ペンタエリスリトールテトラステアリン酸エステル 72.0部
スチレン 115.1部
n−ブチルアクリレート 42.0部
メタクリル酸 10.9部
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDS)7.08部をイオン交換水2760部に溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を投入し、窒素気流下、230rpmの撹拌速度で撹拌しながら内温を80℃に昇温させた。
【0194】
次に、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記界面活性剤溶液(80℃)中に前記単量体混合溶液(80℃)を混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子(油滴)を分散させた分散液を調製した。
【0195】
前記分散液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)0.84部をイオン交換水200部に溶解させてなる開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて3時間にわたり加熱、撹拌処理しながら重合反応を行った。この反応溶液に、重合開始剤(KPS)7.73部をイオン交換水240部に溶解させた溶液を添加し、15分後、温度を80℃にした。
【0196】
次に、下記化合物よりなる混合液を用意し、前記反応溶液中に100分間かけて滴下した。すなわち、
スチレン 383.6部
n−ブチルアクリレート 140.0部
メタクリル酸 36.4部
n−オクチルメルカプタン 12部
前記混合液を滴下後、反応系を80℃で60分間にわたり加熱、撹拌処理した後40℃まで冷却した。この様にして、ワックス(ペンタエリスリトールテトラステアリン酸エステル)を含有してなる「樹脂微粒子分散液1」を調製した。
【0197】
(2)「イエロー着色剤分散液1」の調製
一方、n−ドデシル硫酸ナトリウム9.2部をイオン交換水160部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、着色剤として顔料「C.I.ピグメントイエロー74」20部を徐々に添加し、次いで、機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理を行うことにより、「イエロー着色剤微粒子分散液1」を調製した。「イエロー着色剤微粒子分散液1」における「イエロー着色剤微粒子」の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で120nmであった。
【0198】
(3)「着色粒子1Y」の調製
温度センサ、冷却管、撹拌装置、形状モニタリング装置を取り付けた反応容器に、
樹脂粒子分散液1 1250部(固形分換算)
イオン交換水 2000部
イエロー着色剤1 全量
を投入し、内部の温度を25℃にした後、この混合分散溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.0に調整した。次いで、塩化マグネシウム・6水和物52.6部をイオン交換水72部に溶解してなる水溶液を、撹拌下、25℃で10分間かけて添加した。その後、直ちに昇温を開始し、この系を5分間かけて95℃まで昇温(昇温速度14℃/分)させて樹脂微粒子の凝集、融着を開始した。
【0199】
この状態で「マルチサイザ3(ベックマン・コールター社製)」を用いて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準メディアン径が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム115部をイオン交換水700部に溶解させた水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、液の温度を90℃にして8時間にわたり加熱撹拌(撹拌回転数120rpm)して、融着を継続させて熟成処理を行った後、この系を10℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを3.0に調整して撹拌を停止させた。
【0200】
生成した粒子をろ過処理してイオン交換水による洗浄を繰り返し行った後、遠心分離装置により固液分離処理を行い、さらに、フラッシュジェットドライヤを用いて乾燥処理を行うことにより、含水率1.0%の「着色粒子1Y」を作製した。
【0201】
(4)「トナー1Y」の作製
上記「着色粒子1Y」に対し、数平均一次粒子径12nm、疎水化度65の疎水性シリカ0.8質量部、及び、数平均一次粒子径30nm、疎水化度55の疎水性チタニア0.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサで混合処理して「トナー1Y」を作製した。
【0202】
3.評価実験
(1)トナー付着保持装置
作製した現像ローラ表面に前述の「トナー1Y」を供給するとともに、供給したトナーを現像ローラ表面に保持させるトナー付着装置として、図8(a)に示す断面構造を有するトナー付着保持装置20を用意した。
【0203】
トナー付着保持装置20は、ホッパ23とバッファ室22を有し、評価用の現像ローラ104はバッファ室22に設けられたトナー規制部材であるブレード24と補助ブレード25、及び、供給ローラ26とそれぞれ圧接する様に装着される。また、「トナー1Y」はホッパ23に収容され、ホッパ23内に設けられた回転体27の回転により撹拌され、かつ、通路28を介してバッファ室22に搬送される。
【0204】
トナー付着保持装置20は、評価用の現像ローラ104を矢印方向に回転駆動させるともに、供給ローラ26の回転によりバッファ室22の「トナー1Y」を現像ローラ104上に供給する様に駆動する。そして、現像ローラ104上に供給された「トナー1Y」は、ブレード24と補助ブレード25によりマイナスに帯電されるとともに、所定の厚さに薄層化される。また、トナー付着保持装置20には現像バイアス電源装置29が設けられ、現像ローラ104には現像バイアス電源装置29により出力される現像バイアス電圧により表1に示す様にマイナスの電圧が印加される。一方、現像ローラ104にトナーを供給する供給ローラ26にはアース接続を施して表面の電位が0Vになる様にした。この様に、マイナスに帯電させた「トナー1Y」を、現像ローラ104に対し相対的にプラスに帯電させた供給ローラ26を介して、マイナスに帯電させた状態の現像ローラ104に供給した。
【0205】
(2)表面検査装置
前述したトナー付着保持装置20により、「トナー1Y」を付着、保持させた現像ローラ表面を前述の図5に示す構成の表面検査装置50を用いて観察した。CCDカメラ58は、図8の破線矢印方向で示す様に、現像ローラ104がトナー付着保持装置20筐体より露出している個所を撮影する様に配置した。
【0206】
また、照明用光源51は以下の様に条件設定した。すなわち、
照明用光源の出力 :市販の20W直管蛍光灯
(直径30mm、長さ500mm)
照明条件 :現像ローラ表面より上方45cmより拡散照射
現像ローラ表面における照度:150lx
また、CCDカメラ58による撮像条件は以下の様に設定した。すなわち、
レンズ前面〜部材表面の距離:62mm
色調補正 :なし
フラッシュ :off
CCDカメラ :市販のラインセンサタイプ一次元型デジタルカメラ
表示手段 :市販の19インチ液晶モニタ
(3)評価
以下の手順で評価を行った。
【0207】
(a)現像ローラをトナー付着保持装置20に装填し、「トナー1Y」を付着させない状態でCCDカメラによる観察を行い、気泡、スジ、キズ等を検知できるかを確認する。このとき、現像ローラはモニタでの観察に支障をきたさぬ程度の回転数で回転させる
(b)表1に示す現像バイアス電圧値に設定して現像ローラを電圧印加した後、現像ローラを回転させながらトナーを供給する。このとき現像ローラの回転数は任意とする
(c)トナー供給後、現像バイアス電圧を印加した状態で現像ローラ表面の観察を行う。このとき、現像ローラはモニタでの観察に支障をきたさぬ程度の回転数で回転させる。
【0208】
トナー付着前の各「現像ローラ1〜4」における欠陥確認の状況を表1に、また、トナー付着後の評価結果を表2に示す。なお、上記(a)でモニタでの観察に支障をきたさぬ程度の現像ローラの回転数を測定したところ、回転数が25rpm以下のときモニタで支障なく観察できることを確認したので、本評価では現像ローラの回転数を25rpmに設定した。
【0209】
また、表中の「欠陥確認」の項で、「可能」は現像ローラを回転させた状態で欠陥確認が十分できるレベルであり、「ほぼ可能」は現像ローラの回転数を10%低減させることに回転状態で欠陥を確認することができるレベルである。さらに「なんとか可能」は現像ローラの回転数を50%に低減させた状態で欠陥を確認できるレベルであり、「不可」は回転状態の現像ローラより欠陥を確認することができないレベルである。
【0210】
【表1】

【0211】
【表2】

【0212】
表1に示す様に、意図的に欠陥を設けた「現像ローラ2〜4」は、トナーを付着する前は回転状態で欠陥を確認することが難しいものであった。ところが、表2に示す様に、現像ローラ表面にトナーを付着、保持した状態で観察することにより、表面に形成した欠陥をモニタで確認することができた。特に、現像ローラに−5V〜−50Vのマイナスの電圧を印加した状態でトナーを付着させたものでは、現像ローラの周面にトナー層を均一かつ薄く形成することができて欠陥の確認が行い易くなった。また、現像ローラにマイナスの電圧を印加しない場合(0V、+50V、+100V)も現像ローラ表面にトナーを付着させることができ、現像ローラ上に形成されている欠陥を検出できることを確認した。なお、現像ローラへマイナスの電圧を印加しなかった実験9〜11は、表2に示す様に、印加電圧の値が高くなるにつれて現像ローラ表面へのトナー付着量が増大して欠陥部分の検知が徐々に困難になる傾向が見られた。
【0213】
実施例その2(感光体ドラムの表面検査)
1.「感光体ドラム1〜4」の作製
以下の手順により、円筒状支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成してなる積層構造の「感光体1〜4」を作製した。
【0214】
先ず、円筒形状のアルミニウム支持体表面を切削加工して、十点表面粗さが1.5μm、直径が60mmの導電性支持体を用意した。
【0215】
(1)中間層の形成
上記導電性支持体上に、下記成分よりなる中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃の温度で30分間乾燥処理することで、乾燥膜厚が1.0μmの中間層を形成した。なお、下記中間層塗布液は、下記手順で調液を行った後、調液時に用いた混合溶媒と同じ混合溶媒で2倍に希釈し、一昼夜静置した後、ろ過を行って作製したものである。ろ過は、フィルタに公称ろ過精度が5μmの「リジメッシュフィルタ(日本ポール社製)」を用い、50kPaの圧力の下で行ったものである。
【0216】
バインダ樹脂(下記構造のポリアミド樹脂) 1.0部
【0217】
【化1】

【0218】
ルチル形酸化チタン(1次粒径35nm、;メチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとの共重合体(モル比1:1)を用い、酸化チタン全質量の5質量%の量で表面処理したもの) 3.5部
エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン混合液(質量比;45/20/30) 10.0部
上記成分を混合後、サンドミル分散機を用いて10時間、バッチ式の分散処理を行って分散液を作製した後、上述した手順で中間層塗布液を作製した。
【0219】
(2)電荷発生層の形成
電荷発生物質(下記構造のピランスロン化合物) 24.0部
【0220】
【化2】

【0221】
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1(積水化学社製)」
12.0部
2−ブタノン/シクロヘキサノン混合液(体積比;4/1) 300.0部
上記組成物を混合後、サンドミル分散機を用いて分散処理を行って電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を用いて乾燥時の膜厚が0.5μmとなる様に浸漬塗布法で前記中間層上に塗布して電荷発生層を形成した。
【0222】
(3)電荷輸送層の形成
電荷輸送物質(下記構造の化合物) 225.0部
【0223】
【化3】

【0224】
ポリカーボネート「Z300(三菱ガス化学社製)」 300.0部
酸化防止剤「Irganox1010(日本チバガイギー社製)」
6.0部
テトラヒドロフラン/トルエン混合液(体積比;3/1) 2000.0部
シリコンオイル「KF−54(信越化学社製)」 1.0部
上記組成物を混合後、サンドミル分散機を用いて分散処理を行って電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を用いて乾燥時の膜厚が20μmとなる様に浸漬塗布法で前記電荷発生層上に塗布を行って電荷輸送層を形成した。この様な手順により、図2(b)に示す積層構造を有する「感光体1」を作製した。
【0225】
(4)「感光体ドラム2〜4」の作製
上記「感光体ドラム1」を作製する際、25分間窒素ガスによるバブリング処理を行った「電荷輸送層塗布液」を用いて塗布を行った他は同じ手順をとることにより、表面に直径0.3〜1.0mmの微小な気泡を有する「感光体ドラム2」を作製した。得られた「感光体ドラム2」の表面観察を観察者の目より30cm離した状態で行ったところ気泡の存在を確認することができなかった。
【0226】
また、上記「感光体ドラム1」の作製で、「電荷輸送層塗布液」を塗布した後、電荷輸送層表面を局所的に刷毛でなでまわしてから乾燥処理を行った。その他は同じ手順をとることにより、表面に長さ10mmのスジが存在する「感光体ドラム3」を作製した。作製した「感光体ドラム3」の表面観察を観察者の目より30cm離した状態で目視観察で行ったところスジの存在を確認することができなかった。
【0227】
さらに、上記「感光体ドラム1」と全く同じ手順で感光体ドラムを作製後、市販のカッターを用いて表面に長さ5mm、幅50μmのキズをつける処理を施すことにより、表面に前記大きさのキズが存在する「感光体ドラム4」を作製した。作製した「感光体ドラム4」の表面観察を観察者の目より30cm離した状態で目視観察で行ったところキズの存在を確認することができなかった。以上の処理を行うことにより、表面に気泡、スジ、キズをそれぞれ有する「感光体ドラム2〜4」を作製した。
【0228】
2.評価実験
上記手順で作製した感光体ドラムを図8(b)に示す様にトナー付着保持装置20に配置させ、前述の実施例1と同じ条件で感光体ドラム表面の観察を行った。すなわち、トナー付着保持装置20では、現像ローラ104を介して「トナー1Y」を感光体ドラム101上に供給した。また、本評価では、感光体ドラム表面の表面電位が−700Vになる様に図示しないコロナ帯電器で帯電を行い、この電位を保持した状態でトナーを付着、保持させて観察を行った。
【0229】
結果を表3に示す。
【0230】
【表3】

【0231】
表3に示す様に、意図的に欠陥を設けてある「感光体ドラム2〜4」は、感光体ドラム表面にトナーを付着、保持した状態で観察することにより、表面に形成した欠陥の存在をモニタにて確認することができた。一方、トナーを付着する前は表面に形成した欠陥の存在をモニタで確認することはできなかった。
【符号の説明】
【0232】
1 画像形成装置
2 光源
3 反射手段
10 円筒形状部材(感光体ドラム、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ)
101 感光体ドラム
102 帯電ローラ
103 転写ローラ
104 現像ローラ
11 支持体、シャフト
12 中間層
13 感光層
14 電荷発生層
15 電荷輸送層
16 保護層
17 弾性層
18 表面層
20 トナー付着保持装置
22 バッファ室
23 ホッパ
24 ブレード(トナー規制部材)
25 補助ブレード(トナー規制部材)
26 供給ローラ
27 回転体
28 通路
29 現像バイアス電源装置
50 表面検査装置
51 照明用光源
52 拡散光
53 円筒形状部材の軸心方向
54 受光光軸方向
55 検査個所(受光視野)
56 拡散光領域
57 受光光軸方向と円筒形状部材の軸心方向53とがなす角度
58 CCDカメラ(ラインセンサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式の画像形成装置に搭載される円筒形状部材の周面を非接触で検査する表面検査方法であって、
前記円筒形状部材周面に有彩色トナーを付着させた後、
前記有彩色トナーを前記周面に保持させた状態で前記周面の検査を非接触で行うことを特徴とする円筒形状部材の表面検査方法。
【請求項2】
前記円筒形状部材が、現像ローラであることを特徴とする請求項1に記載の円筒形状部材の表面検査方法。
【請求項3】
前記現像ローラを検査するときに、
マイナスに帯電させた前記有彩色トナーを使用するとともに、
前記現像ローラにマイナスの電圧を印加させた状態にして、
前記現像ローラの周面の検査を行うことを特徴とする請求項2に記載の円筒形状部材の表面検査方法。
【請求項4】
前記円筒形状部材が、感光体ドラムであることを特徴とする請求項1に記載の円筒形状部材の表面検査方法。
【請求項5】
前記有彩色トナーがイエロートナーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の円筒形状部材の表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−181774(P2010−181774A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27153(P2009−27153)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】