凹凸パターン形成シートおよびその製造方法、光拡散体、光拡散体製造用工程シート原版ならびに光拡散体の製造方法
【課題】光拡散体として利用される凹凸パターン形成シートを簡便に製造できる凹凸パターン形成シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂製の基材11と、該基材の片面に設けられた樹脂製の硬質層12とを備え、該硬質層の表面に一方向に沿った凹凸パターン12aが形成された凹凸パターン形成シート10であって、硬質層を、基材を構成する樹脂よりガラス転移温度が10℃以上高い樹脂で構成し、凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え20μm以下、凹凸パターンの底部12bの平均深さが前記最頻ピッチを100%とした際の10%以上である凹凸パターン形成シート。
【解決手段】樹脂製の基材11と、該基材の片面に設けられた樹脂製の硬質層12とを備え、該硬質層の表面に一方向に沿った凹凸パターン12aが形成された凹凸パターン形成シート10であって、硬質層を、基材を構成する樹脂よりガラス転移温度が10℃以上高い樹脂で構成し、凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え20μm以下、凹凸パターンの底部12bの平均深さが前記最頻ピッチを100%とした際の10%以上である凹凸パターン形成シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散体に備えられる凹凸パターン形成シートおよびその製造方法に関する。また、凹凸パターン形成シートが使用された光拡散体に関する。また、凹凸パターンが表面に形成された光拡散体を製造するための型として用いられる光拡散体製造用工程シート原版に関する。さらに、光拡散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光拡散体として、波状の凹凸パターンが表面に形成された凹凸パターン形成シートが利用されている。
例えば、特許文献1には、凹凸パターンが形成された光拡散体として、光透過性基材の少なくとも片面に突起体が複数形成され、突起体の高さが2〜20μm、突起体の頂点の間隔が1〜10μm、突起体のアスペクト比が1以上のものが開示されている。また、特許文献1には、突起体を形成する方法として、光透過性基材の表面を、KrFエキシマレーザー等のエネルギービームの照射により加工する方法が開示されている。
特許文献2には、波状の凹凸からなる異方性拡散パターンが片面に形成された光拡散体が開示されている。また、特許文献2には、異方性拡散パターンを形成する方法として、感光性樹脂のフィルムにレーザー光を照射して露光し、現像して、片面に凹凸が形成されたマスターホログラムを形成し、そのマスターホログラムを金型に転写し、その金型を用いて樹脂を成形する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−123307号公報
【特許文献2】特開2006−261064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1,2に記載の光拡散体は充分な光拡散性を有するものである。しかしながら、特許文献1に記載の、エネルギービームの照射による加工方法、特許文献2に記載の、感光性樹脂のフィルムをレーザーにより露光し、現像する方法は煩雑であるという問題を有していた。また、特許文献1,2の光拡散体は、拡散の異方性が充分とはいえなかった。
【0004】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、光拡散体として利用でき、簡便に製造できる凹凸パターン形成シートを提供することを目的とする。また、光拡散体として利用される凹凸パターン形成シートを簡便に製造できる凹凸パターン形成シートの製造方法を提供することを目的とする。また、拡散の異方性に優れた光拡散体を提供することを目的とする。さらには、凹凸パターン形成シートと同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが形成された光拡散体を簡便にかつ大量に製造できる光拡散体製造用工程シートおよび光拡散体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 樹脂製の基材と、該基材の片面に設けられた樹脂製の硬質層とを備え、該硬質層の表面に一方向に沿った凹凸パターンが形成された凹凸パターン形成シートであって、
硬質層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg2と、基材を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)が10℃以上であり、
凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え20μm以下、凹凸パターンの底部の平均深さが前記最頻ピッチを100%とした際の10%以上であることを特徴とする凹凸パターン形成シート。
[2] 樹脂製の基材の片面に、表面が平滑で厚さが0.05μmを超え5.0μm以下の樹脂製の硬質層を設けて積層シートを形成する工程と、前記積層シートの少なくとも硬質層を折り畳むように変形させる工程とを有し、
硬質層を、基材を構成する樹脂よりガラス転移温度が10℃以上高い樹脂で構成することを特徴とする凹凸パターン形成シートの製造方法。
[3] 樹脂製の基材として一軸方向加熱収縮性フィルムを用い、硬質層を折り畳むように変形させる工程では、積層シートを加熱して一軸方向加熱収縮性フィルムを収縮させる[2]に記載の凹凸パターン形成シートの製造方法。
[4] [1]に記載の凹凸パターン形成シートを備え、該凹凸パターン形成シートの基材および硬質層が透明である光拡散体。
[5] [1]に記載の凹凸パターン形成シートを備え、該凹凸パターン形成シートと同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが表面に形成された光拡散体を製造するための型として用いられる光拡散体製造用工程シート原版。
[6] [5]に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、未硬化の硬化性樹脂を塗工する工程と、
該硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シート原版から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
[7] [5]に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、
該シート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、
冷却したシート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
[8] [5]に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、凹凸パターン転写用材料を積層する工程と、
凹凸パターンに積層した凹凸パターン転写用材料を前記工程シート原版から剥離して2次工程用成形物を作製する工程と、
該2次工程用成形物の、前記工程シート原版の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の硬化性樹脂を塗工する工程と、
該硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
[9] [5]に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、凹凸パターン転写用材料を積層する工程と、
凹凸パターンに積層した凹凸パターン転写用材料を前記工程シート原版から剥離して2次工程用成形物を作製する工程と、
該2次工程用成形物の、前記工程シート原版の凹凸パターンと接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、
該シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、
冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の凹凸パターン形成シートは、光拡散体として利用でき、簡便に製造できるものである。
本発明の凹凸パターン形成シートの製造方法によれば、光拡散体として利用される凹凸パターン形成シートを簡便に製造できる。
本発明の光拡散体は、拡散の異方性に優れる。
本発明の光拡散体製造用工程シートおよび光拡散体の製造方法によれば、凹凸パターン形成シートと同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが形成された光拡散体を簡便にかつ大量に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(凹凸パターン形成シート)
本発明の凹凸パターン形成シートの一実施形態について説明する。
図1及び図2に、本実施形態の凹凸パターン形成シートを示す。本実施形態の凹凸パターン形成シート10は、基材11と、基材11の片面に設けられた硬質層12とを備え、硬質層12が凹凸パターン12aを有するものである。
【0008】
凹凸パターン形成シート10の凹凸パターン12aは、略一方向に沿った波状の凹凸を有し、その波状の凹凸が蛇行しているものである。また、本実施形態の凹凸パターン12aの凸部の先端は丸みを帯びている。
【0009】
硬質層12を構成する樹脂(以下、第2の樹脂という。)のガラス転移温度Tg2と、基材11を構成する樹脂(以下、第1の樹脂という。)のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)は10℃以上であり、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。(Tg2−Tg1)の差が10℃以上であることにより、Tg2とTg1の間の温度で容易に加工できる。Tg2とTg1の間の温度を加工温度とすると、基材11のヤング率が硬質層12のヤング率より高くなる条件で加工でき、その結果、硬質層12に凹凸パターン12aを容易に形成できる。
また、Tg2が400℃を超えるような樹脂を使用することは経済性の面から必要に乏しく、Tg1が−150℃より低い樹脂は存在しないことから、(Tg2−Tg1)は550℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。
凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度における基材11と硬質層12とのヤング率の差は、凹凸パターン12aを容易に形成できることから、0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。
ここでいう加工温度は、例えば、後述する凹凸パターン形成シートの製造方法における熱収縮時の加熱温度のことである。また、ヤング率は、JIS K 7113−1995に準拠して測定した値である。
【0010】
第1の樹脂のガラス転移温度Tg1は−150〜300℃であることが好ましく、−120〜200℃であることがより好ましい。ガラス転移温度Tg1が−150℃より低い樹脂は存在せず、第1の樹脂のガラス転移温度Tg1が300℃以下であれば、凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度(Tg2とTg1の間の温度)に容易に加熱することができるためである。
【0011】
凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度における第1の樹脂のヤング率は0.01〜100MPaであることが好ましく、0.1〜10MPaであることがより好ましい。第1の樹脂のヤング率が0.01MPa以上であれば、基材11として使用可能な硬さであり、100MPa以下であれば、硬質層12が変形する際に同時に追従して変形可能な軟らかさである。
【0012】
第1の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンなどの樹脂が挙げられる。
【0013】
第2の樹脂のガラス転移温度Tg2は40〜400℃であることが好ましく、80〜250℃であることがより好ましい。第2の樹脂のガラス転移温度Tg2が40℃以上であれば、凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度を室温またはそれ以上にすることができて有用であり、ガラス転移温度Tg2が400℃を超えるような樹脂を第2の樹脂として使用することは経済性の面から必要性に乏しいためである。
【0014】
凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度における第2の樹脂のヤング率は0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。第2の樹脂のヤング率が0.01GPa以上であれば、第1の樹脂の加工温度におけるヤング率より充分な硬さが得られ、凹凸パターン12aが形成された後、凹凸パターンを維持するのに充分な硬さであり、ヤング率が300GPaを超えるような樹脂を第2の樹脂として使用することは経済性の面から必要性に乏しいためである。
【0015】
第1の樹脂の種類にもよるが、第2の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などを使用することができる。これらの中でも、防汚機能を兼ね備えた点で、フッ素樹脂が好ましい。
第2の樹脂は単独でも併用でもよく、配向度を高めるためには樹脂を2種以上併用することが好ましい。
【0016】
基材11の厚みは0.3〜500μmであることが好ましい。基材11の厚みが0.3μm以上であれば、凹凸パターン形成シート10が破れにくくなり、500μm以下であれば、凹凸パターン形成シート10を容易に薄型化できる。
また、基材11を支持するために、厚さ5〜500μmの樹脂製の支持体を設けてもよい。また、光拡散体として用いる場合には、光拡散性をより高くするために、微細気泡を含有させたフィルムを基材11に貼付してもよい。
【0017】
凹凸パターン形成シート10を光拡散体として使用する場合には、基材11には、より光拡散効果を高める目的で、光透過率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、無機化合物からなる光拡散剤、有機化合物からなる有機光拡散剤を含有させることができる。
無機光拡散剤としては、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス、マイカ等が挙げられる。
有機光拡散剤としては、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子等が挙げられる。これらの光拡散剤はそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
光拡散剤の含有量は、光透過性を損ないにくいことから、第1の樹脂100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
【0018】
また、凹凸パターン形成シート10を光拡散体として使用する場合には、基材11には、より拡散効果を高める目的で、光透過率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、微細気泡を含有させることができる。微細気泡は、光の吸収が少なく光透過率を低下させにくい。
微細気泡の形成方法としては、基材11に発泡剤を混入する方法(例えば、特開平5−212811号公報、特開平6−107842号公報に開示された方法)や、アクリル系発泡樹脂を発泡処理させて微細気泡を含有する方法(例えば、特開2004−2812号公報に開示された方法)などを適用できる。さらに微細気泡は、より均一な面照射が可能となる点では、特定の位置に不均一に発泡させる方法(例えば、特開2006−124499号公報に開示された方法)が好ましい。
なお、前記光拡散剤と微細発泡を併用することもできる。
【0019】
硬質層12の厚みは、0.05μmを超え5μm以下であることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。硬質層の厚みが0.05μmを超え5μm以下であれば、後述のように凹凸パターン形成シートを容易に製造できる。
また、基材11と硬質層12との間には、密着性の向上やより微細な構造を形成することを目的として、プライマー層を形成してもよい。
【0020】
凹凸パターン形成シート10の凹凸パターン12aの最頻ピッチAは1μmを超え20μm以下、好ましくは1μmを超え10μm以下である。最頻ピッチAが1μm未満であると、光が透過してしまい、20μmを超えると、光拡散性が低くなる。
【0021】
凹凸パターン12aの底部12bの平均深さBは最頻ピッチAを100%とした際の10%以上(すなわち、アスペクト比0.1以上)であり、30%以上(すなわち、アスペクト比0.3以上)であることが好ましい。平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の10%未満であると、凹凸パターン形成シート10を光拡散体製造用工程シート原版として用いても、光拡散性の高い光拡散体を得ることが困難になる。
また、平均深さBは、凹凸パターン12aを容易に形成できる点から、好ましくは最頻ピッチAを100%とした際の300%以下(すなわち、アスペクト比3.0以下)であり、より好ましくは200%以下(すなわち、アスペクト比2.0以下)である。
ここで、底部12bとは、凹凸パターン12aの凹部の変曲点であり、平均深さBは、凹凸パターン形成シート10を長さ方向に沿って切断した断面(図2参照)を見た際の、凹凸パターン形成シート10全体の面方向と平行な基準線L1から各凸部の頂部までの長さB1,B2,B3・・・の平均値(BAV)と、基準線L1から各凹部の底部までの長さb1,b2,b3・・・の平均値(bAV)との差(bAV−BAV)のことである。前記凸部の頂部および前記凹部の底部は、硬質層12における基材11側と反対側の面に接するものである。
平均深さBを測定する方法としては、原子間力顕微鏡により撮影した凹凸パターンの断面の画像にて各底部の深さを測定し、それらの平均値を求める方法などが採られる。
【0022】
光拡散の異方性の高い光拡散体が得られるようになる点では、凹凸パターン12aがある程度蛇行して、隣り合った凸部同士のピッチが凹凸パターン12aの方向に沿ってばらついていることが好ましい。ここで、凹凸パターン12aの配向のばらつきのことを配向度という。配向度が大きいほど、配向がばらついている。この配向度は、以下の方法で求められる。
まず、表面光学顕微鏡により凹凸パターンの上面を撮影し、その画像をグレースケールのファイル(例えば、tiff形式等)に変換する。グレースケールのファイルの画像(図3参照)では、白度が低いところ程、凹部の底部が深い(白度が高いところ程、凸部の頂部が高い)ことを表している。次いで、グレースケールのファイルの画像をフーリエ変換する。図4にフーリエ変換後の画像を示す。図4の画像の中心から両側に広がる白色部分は凹凸パターン12aのピッチおよび向きの情報が含まれる。
次いで、図4の画像の中心から水平方向に補助線L2を引き、その補助線上の輝度をプロット(図5参照)する。図5のプロットの横軸はピッチを、縦軸は頻度を表し、頻度が最大となる値Xが凹凸パターン12aの最頻ピッチを表す。
次いで、図4において、補助線L2と値Xの部分にて直交する補助線L3を引き、その補助線L3上の輝度をプロット(図6参照)する。ただし、図6の横軸は、各種の凹凸構造との比較を可能にするため、Xの値で割った数値とする。図6の横軸は、凹凸の形成方向(図3における上下方向)に対する傾きの程度を示す指標(配向性)を、縦軸は頻度を表す。図6のプロットにおけるピークの半値幅W1(頻度が最大値の半分になる高さでのピークの幅)が凹凸パターンの配向度を表す。半値幅W1が大きい程、蛇行してピッチがばらついていることを表す。
【0023】
上記配向度は0.3〜1.0であることが好ましい。配向度が0.3〜1.0であれば、凹凸パターン12aのピッチのばらつきが大きいため、該凹凸パターン形成シートおよび該凹凸パターン形成シートを工程シート原版として用いて得た光拡散体の光拡散性がより高くなる。配向度が1.0を超えると、凹凸パターンの方向がある程度ランダムになるため、光拡散性は高くなるが、異方性が低くなる傾向にある。
配向度を0.3〜1.0にするためには、凹凸パターン形成シート製造の際に必要な圧縮応力の作用のさせ方を適宜選択すればよい。
【0024】
なお、上記のようにフーリエ変換を利用して求めた凹凸パターンの最頻ピッチは平均ピッチと同等となる。
【0025】
硬質層12を構成する第2の樹脂のガラス転移温度Tg2と、基材11を構成する第1の樹脂のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)が10℃以上である本発明の凹凸パターン形成シート10は、後述する凹凸パターン形成シートの製造方法により得られるため、簡便に製造できる。
また、本発明者が調べた結果、基材11および硬質層12が共に透明である場合には、凹凸パターン12aの最頻ピッチAが1μmを超え20μm以下、凹凸パターン12aの底部12bの平均深さBが前記最頻ピッチAを100%とした際の10%以上である本発明の凹凸パターン形成シート10は、充分な光拡散性を有するため、光拡散体として利用できることが判明した。
【0026】
なお、本発明の凹凸パターン形成シートは、上述した実施形態に限定されない。例えば、本発明の凹凸パターン形成シートの凹凸パターンの凸部の先端が尖っていても構わない。しかし、凹凸パターンの凸部の形状は拡散の異方性がより高くなる点から、先端が丸みを帯びていることが好ましい。
【0027】
(凹凸パターン形成シートの製造方法)
本発明の凹凸パターン形成シートの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の凹凸パターン形成シートの製造方法は、図7に示すように、樹脂製の基材である加熱収縮性フィルム11aの片面に、表面が平滑な樹脂製の硬質層13(以下、表面平滑硬質層13という。)を設けて積層シート10aを形成する工程(以下、第1の工程という。)と、加熱収縮性フィルム11aを加熱収縮させて、積層シート10aの少なくとも表面平滑硬質層13を折り畳むように変形させる工程(以下、第2の工程という。)とを有する方法である。
ここで、表面平滑硬質層13とは、JIS B0601に記載の中心線平均粗さ0.1μm以下の層である。
【0028】
[第1の工程]
第1の工程にて、加熱収縮性フィルム11aの片面に表面平滑硬質層13を設けて積層シート10aを形成する方法としては、例えば、加熱収縮性フィルム11aの片面に、第2の樹脂の溶液または分散液をスピンコーターやバーコーター等により塗工し、溶媒を乾燥させる方法、加熱収縮性フィルム11aの片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層13を積層する方法などが挙げられる。
【0029】
加熱収縮性フィルム11aとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルムなどを用いることができる。
シュリンクフィルムの中でも、50〜70%収縮するものが好ましい。50〜70%収縮するシュリンクフィルムを用いれば、変形率を50%以上でき、凹凸パターン12aの最頻ピッチAが1μmを超え20μm以下、凹凸パターン12aの底部12bの平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の10%以上の凹凸パターン形成シート10を容易に製造できる。さらには、凹凸パターン12aの底部12bの平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の100%以上の凹凸パターン形成シート10も容易に製造できる。
ここで、変形率とは、(変形前の長さ−変形後の長さ)/(変形前の長さ)×100(%)のことである。あるいは、(変形した長さ)/(変形前の長さ)×100(%)のことである。
また、以下の工程により凹凸パターン12aの平均深さBを、最頻ピッチAを100%とした際の300%にすることができる。
加熱収縮性フィルム11aに加熱収縮性フィルム11aよりガラス転移温度が低いプライマー樹脂層を塗工し、該プライマー樹脂層の上に表面硬質平滑層13を設けた積層シートを形成する。該積層シートを加熱収縮させることにより凹凸パターン形成シートを形成する。
加熱収縮後の加熱収縮性フィルム11aを積層シートから剥離し、別の加熱収縮性フィルムを貼り合せ、積層シートを形成する。この積層シートを加熱収縮させることにより、加熱収縮性フィルム1枚分を加熱収縮させた場合より、平均深さBを大きくすることが可能である。この工程を複数回繰り返すことで、凹凸パターン12aの平均深さBを、最頻ピッチAを100%とした際の300%にすることができる。
【0030】
本発明では、表面平滑硬質層13の厚さを、0.05μmを超え5.0μm以下、好ましくは0.1〜1.0μmとする。表面平滑硬質層13の厚さを前記範囲にすることにより、凹凸パターン12aの最頻ピッチAを、確実に1μmを超え20μm以下にできる。しかし、表面平滑硬質層13の厚さが0.05μm以下であると最頻ピッチAが1μm以下になることがあり、5.0μmを超えると、最頻ピッチAが20μmを超えることがある。
また、本発明では、表面平滑硬質層13を、加熱収縮性フィルムを構成する樹脂(第1の樹脂)よりガラス転移温度が10℃以上高い樹脂(第2の樹脂)で構成する。第1の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度が前記関係にあることにより、凹凸パターン12aの最頻ピッチAを、確実に1μmを超え20μm以下にできる。
表面平滑硬質層13の厚さは連続的に変化していても構わない。表面平滑硬質層13の厚さが連続的に変化している場合には、圧縮後に形成される凹凸パターン12aのピッチおよび深さが連続的に変化するようになる。
【0031】
この製造方法では、より容易に凹凸パターン12aを形成できることから、表面平滑硬質層13のヤング率を0.01〜300GPaにすることが好ましく、0.1〜10GPaにすることがより好ましい。
【0032】
[第2の工程]
第2の工程にて、加熱収縮性フィルム11aを熱収縮させることにより、表面平滑硬質層13に、収縮方向に対して垂直方向に波状の凹凸パターン12aを形成させて、硬質層12を得る。
加熱収縮性フィルム11aを加熱収縮させる際の加熱方法としては、熱風、蒸気または熱水中に通す方法等が挙げられ、中でも、均一に収縮させることができることから、熱水に通す方法が好ましい。
加熱収縮性フィルム11aを熱収縮させる際の加熱温度は、使用する加熱収縮性フィルムの種類および目的とする凹凸パターン12aのピッチならびに底部12bの深さに応じて適宜選択することが好ましい。
【0033】
この製造方法では、表面平滑硬質層13の厚さが薄いほど、表面平滑硬質層13のヤング率が低いほど、凹凸パターン12aの最頻ピッチAが小さくなり、基材の変形率が高いほど、平均深さBが深くなる。したがって、凹凸パターン12aを所定の最頻ピッチA、平均深さBにするためには、前記条件を適宜選択する必要がある。
【0034】
以上説明した凹凸パターン形成シートの製造方法では、表面平滑硬質層13を構成する第2の樹脂が加熱収縮性フィルム11aを構成する第1の樹脂よりガラス転移温度が10℃以上高いため、第1の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度の間の温度では、表面平滑硬質層13のヤング率が加熱収縮性フィルム11aより高くなる。その上、表面平滑硬質層13の厚さを0.05μmを超え5.0μm以下としているため、第1の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度の間の温度で加工した際には、表面平滑硬質層13は厚みを増すよりも、折り畳まれるようになる。さらに、表面平滑硬質層13は加熱収縮性フィルム11aに積層されているため、加熱収縮性フィルム11aの収縮による応力が全体に均一にかかる。したがって、本発明によれば、表面平滑硬質層13を折り畳むように変形させて、光拡散体として性能に優れた凹凸パターン形成シート10を簡便に、かつ、大面積で製造できる。
しかも、この製造方法によれば、容易に、凹凸パターン12aの最頻ピッチAを、1μmを超え20μm以下、凹凸パターン12aの底部12bの平均深さBを、最頻ピッチAを100%とした際の10%以上にできる。
【0035】
また、凹凸パターン形成シートの製造方法としては、下記(1)〜(4)の方法を適用することもできる。
(1)基材11の片面の全部に、表面平滑硬質層13を設けて積層シート10aを形成し、積層シート10a全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材11のガラス転移温度が室温未満の場合、積層シート10aの圧縮は室温で行い、基材11のガラス転移温度が室温以上の場合、積層シート10aの圧縮は、基材11のガラス転移温度以上、平面平滑硬質層13のガラス転移温度未満で行う。
(2)基材11の片面の全部に、表面平滑硬質層13を設けて積層シート10aを形成し、積層シート10aを一方向に延伸し、延伸方向に対する直交方向を収縮させて、表面平滑硬質層13を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材11のガラス転移温度が室温未満の場合、積層シート10aの延伸は室温で行い、基材11のガラス転移温度が室温以上の場合、積層シート10aの延伸は、基材11のガラス転移温度以上、平面平滑硬質層13のガラス転移温度未満で行う。
(3)未硬化の電離放射線硬化性樹脂により形成された基材11に、表面平滑硬質層13を積層して積層シート10aを形成し、電離放射線を照射して基材11を硬化させることにより収縮させて、基材11に積層された表面平滑硬質層13を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(4)溶媒を膨潤させて膨張させた基材11に、表面平滑硬質層13を積層して積層シート10aを形成し、基材11中の溶媒を乾燥し、除去することにより収縮させて、基材11に積層された表面平滑硬質層13を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
【0036】
(1)の方法において、積層シート10aを形成する方法としては、例えば、基材11の片面に、樹脂の溶液または分散液をスピンコーターやバーコーター等により塗工し、溶媒を乾燥させる方法、基材11の片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層13を積層する方法などが挙げられる。
【0037】
積層シート10a全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法としては、例えば、積層シート10aの一端部とその反対側の端部とを、万力等により挟んで圧縮する方法などが挙げられる。
【0038】
(2)の方法において、積層シート10aを一方向に延伸する方法としては、例えば、積層シート10aの一端部とその反対側の端部とを、引っ張って延伸する方法などが挙げられる。
(3)の方法において、電離放射線硬化性樹脂としては紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などが挙げられる。
(4)の方法において、溶媒は第1の樹脂の種類に応じて適宜選択される。溶媒の乾燥温度は溶媒の種類に応じて適宜選択される。
(2)〜(4)の方法における表面平滑硬質層13においても、(1)の方法で用いるものと同様の成分を用いることができ、同様の厚さとすることができる。また、積層シート10aの形成方法は、(1)の方法と同様に、基材11の片面に樹脂の溶液または分散液を塗工し、溶媒を乾燥させる方法、基材11の片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層13を積層する方法を適用できる。
【0039】
(光拡散体)
本発明の光拡散体は、上述した凹凸パターン形成シート10を備えたものである。
本発明の光拡散体においては、凹凸パターン形成シート10の片面または両面に他の層を備えてもよい。例えば、凹凸パターン形成シート10の、凹凸パターン12aが形成されている側の面に、その面の汚れを防止するために、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂を主成分として含有する厚さ1〜5nm程度の防汚層を備えてもよい。
また、光拡散体の基材11側の面には、透明樹脂製あるいはガラス製の支持体が備えられていてもよい。
さらに、基材11側の面に粘着剤層が形成されていてもよく、機能性を適宜持たせるために色素を含んでもよい。
【0040】
上述した凹凸パターンが表面に形成された凹凸パターン形成シート10を備えた本発明の光拡散体は、充分な光拡散性を有する。
【0041】
(光拡散体製造用工程シート原版および光拡散体の製造方法)
本発明の光拡散体製造用工程シート原版(以下、工程シート原版という。)は、上述した凹凸パターン形成シート10を備えるものであり、凹凸パターン12aを、以下に示すような方法で他の素材に転写させることにより、該工程シート原版と同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが表面に形成された光拡散体として使用可能な凹凸パターン形成シートを大面積で大量に製造するための型として用いられるものである。
工程シート原版には、凹凸パターン形成シート10を支持するための樹脂製または金属製の支持体をさらに備えてもよい。
【0042】
工程シート原版を用いて光拡散体を製造する具体的な方法としては、例えば、下記(a)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を塗工する工程と、電離放射線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シート原版から剥離する工程とを有する方法。ここで、電離放射線とは、通常、紫外線または電子線のことであるが、本発明では、可視光線、X線、イオン線等も含む。
(b)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱して前記液状熱硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シート原版から剥離する工程とを有する方法。
(c)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版から剥離する工程とを有する方法。
【0043】
また、工程シート原版を用いて2次工程用成形物を作製し、その2次工程用成形物を用いて光拡散体を製造することもできる。2次工程用成形物としては、例えば、2次工程シートが挙げられる。また、2次工程用成形物としては、工程シート原版を丸めて円筒の内側に貼り付け、その円筒の内側にロールを挿入した状態でめっきし、円筒からロールを取り出して得ためっきロールが挙げられる。
2次工程用成形物を用いる具体的な方法としては、下記(d)〜(f)の方法が挙げられる。
【0044】
(d)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、ニッケル等の金属めっきを行って、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を工程シート原版から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、次いで、2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を塗工する工程と、電離放射線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(e)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を工程シート原版から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、該2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱により該樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(f)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を工程シート原版から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、該2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
【0045】
(a)の方法の具体例について説明する。図8に示すように、まず、ウェブ状の工程シート原版110の凹凸パターン112aが形成された面に、コーター120により未硬化の液状電離放射線硬化性樹脂112cを塗工する。次いで、該硬化性樹脂を塗工した工程シート原版110を、ロール130を通すことにより押圧して、前記硬化性樹脂を工程シート原版110の凹凸パターン112a内部に充填する。その後、電離放射線照射装置140により電離放射線を照射して、硬化性樹脂を架橋・硬化させる。そして、硬化後の電離放射線硬化性樹脂を工程シート原版110から剥離させることにより、ウェブ状の光拡散体150を製造することができる。
【0046】
(a)の方法において、工程シート原版の凹凸パターンが形成された面には、離型性を付与する目的で、未硬化の電離放射線硬化性樹脂塗工前に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等からなる層を1〜10nm程度の厚さで設けてもよい。
工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を塗工するコーターとしては、Tダイコーター、ロールコーター、バーコーター等が挙げられる。
未硬化の電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。未硬化の電離放射線硬化性樹脂は溶媒等で希釈することが好ましい。
また、未硬化の電離放射線硬化性樹脂には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。
未硬化の電離放射線硬化性樹脂を紫外線により硬化する場合には、未硬化の電離放射線硬化性樹脂にアセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
【0047】
未硬化の液状電離放射線硬化性樹脂を塗工した後には、樹脂、ガラス等からなる基材を貼り合わせてから電離放射線を照射してもよい。電離放射線の照射は、基材、工程シート原版の電離放射線透過性を有するいずれか一方から行えばよい。
【0048】
硬化後の電離放射線硬化性樹脂のシートの厚みは0.1〜100μm程度とすることが好ましい。硬化後の電離放射線硬化性樹脂のシートの厚みが0.1μm以上であれば、充分な強度を確保でき、100μm以上であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0049】
上記図8に示す方法では、工程シート原版がウェブ状であったが、枚葉のシートであってもよい。枚葉のシートを用いる場合、枚葉のシートを平板状の型として使用するスタンプ法、枚葉のシートをロールに巻きつけて円筒状の型として使用するロールインプリント法等を適用できる。また、射出成形機の型の内側に枚葉の工程シート原版を配置させてもよい。
しかし、これら枚葉のシートを用いる方法において、光拡散体を大量生産するためには、凹凸パターンを形成する工程を多数回繰り返す必要がある。電離放射線硬化性樹脂と工程シート原版との離型性が低い場合には、多数回繰り返した際に凹凸パターンに目詰まりが生じ、凹凸パターンの転写が不完全になる傾向にある。
これに対し、図8に示す方法では、工程シート原版がウェブ状であるため、大面積で連続的に凹凸パターンを形成させることができるため、凹凸パターン形成シートの繰り返し使用回数が少なくても、必要な量の光拡散体を短時間に製造できる。
【0050】
(b),(e)の方法において、液状熱硬化性樹脂としては、例えば、未硬化の、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、(b)の方法における硬化温度は、工程シート原版のガラス転移温度より低いことが好ましい。硬化温度が工程シート原版のガラス転移温度以上であると、硬化時に工程シート原版の凹凸パターンが変形するおそれがあるからである。
【0051】
(c),(f)の方法において、熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。
シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧する際の圧力は1〜100MPaであることが好ましい。押圧時の圧力が1MPa以上であれば、凹凸パターンを高い精度で転写させることができ、100MPa以下であれば、過剰な加圧を防ぐことができる。
また、(c)の方法における熱可塑性樹脂の加熱温度は、工程シート原版のガラス転移温度より低いことが好ましい。加熱温度が工程シート原版のガラス転移温度以上であると、加熱時に工程シート原版の凹凸パターンが変形するおそれがあるからである。
加熱後の冷却温度としては、凹凸パターンを高い精度で転写させることができることから、熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましい。
【0052】
(a)〜(c)の方法の中でも、加熱を省略でき、工程シート原版の凹凸パターンの変形を防止できる点で、電離放射線硬化性樹脂を使用する(a)の方法が好ましい。
【0053】
(d)〜(f)の方法においては、金属製の2次工程用成形物の厚さを50〜500μm程度とすることが好ましい。金属製の2次工程用成形物の厚さが50μm以上であれば、2次工程用成形物が充分な強度を有し、500μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
(d)〜(f)の方法では、熱による変形が小さい金属製シートを工程シートとして用いるため、凹凸パターン形成シート用の材料として、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用できる。
(a)〜(f)の方法で製造された凹凸パターン形成シートを光拡散体として使用する場合には、より光拡散効果を高める目的で、前記無機化合物からなる光拡散剤、有機化合物からなる有機光拡散剤あるいは微細気泡を含有させることができる。
【0054】
なお、(d)〜(f)では工程シート原版の凹凸パターンを金属に転写させて2次工程用成形物を得たが、樹脂に転写させて2次工程用成形物を得てもよい。その場合に使用できる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、(a)の方法で使用する電離放射線硬化性樹脂などが挙げられる。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、(a)の方法と同様に、電離放射線硬化性樹脂の塗工、硬化、剥離を順次行って、2次工程用成形物を得る。
【0055】
上述のようにして得た光拡散体には、凹凸パターンの形成された面と反対の面に粘着剤層を設けても構わない。また、凹凸パターンの形成された面と反対側の面に、さらに凹凸パターンを形成してもよい。
また、工程シート原版として用いた凹凸パターン形成シートあるいは2次工程用成形物を剥離せずに保護層として用い、光拡散体の使用直前に保護層を剥離してもよい。
【実施例】
【0056】
以下の例におけるヤング率は、引っ張り試験機(テスター産業社製TE−7001)を用い、JIS K 7113−1995に準拠して測定した値である。特に温度を記載していない場合には、23℃における値である。
【0057】
(実施例1)
一軸方向に熱収縮する厚さ50μmでヤング率3GPaのポリエチレンテレフタレート製加熱収縮性フィルム(三菱樹脂株式会社製ヒシペットLX−60S、ガラス転移温度70℃)の片面に、トルエンに希釈したポリメチルメタクリレート(ポリマーソース株式会社製P4831−MMA、ガラス転移温度100℃)を厚さが200nmになるようにバーコーターにより塗工し、硬質層を形成して積層シートを得た。
次いで、その積層シートを80℃で1分間加熱することにより、加熱前の長さの40%に熱収縮させ(すなわち、変形率60%で変形させ)、硬質層が、収縮方向に対して直交方向に沿って周期的を有する波状の凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シートを得た。
なお、ポリエチレンテレフタレート製加熱収縮性フィルムおよび該ポリメチルメタクリレートの80℃におけるヤング率はそれぞれ50MPa、1GPaであった。
【0058】
(実施例2)
トルエンに希釈したポリスチレン(ポリマーソース株式会社製PS、ガラス転移温度100℃)を塗工した以外は実施例1と同様にして凹凸パターン形成シートを得た。
なお、ポリエチレンテレフタレート製加熱収縮性フィルムおよび該ポリスチレンの80℃におけるヤング率はそれぞれ、50MPa、1GPaであった。
【0059】
(実施例3)
ポリスチレンの塗工厚さを1μmにした以外は実施例2と同様にして凹凸パターン形成シートを得た。
【0060】
(実施例4)
積層シートを70℃で1分間加熱することにより、加熱前の長さの90%に熱収縮させた(すなわち、変形率10%で変形させた)以外は実施例2と同様にして凹凸パターン形成シートを得た。
【0061】
(実施例5)
実施例1により得た凹凸パターン形成シートを工程シート原版として用いて、以下のようにして光拡散体を得た。
すなわち、実施例1により得た工程シート原版の凹凸パターンが形成された面にエポキシアクリレート系プレポリマー、2−エチルヘキシルアクリレートおよびベンゾフェノン系光重合開始剤を含む未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物を塗工した。
次いで、未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜の工程シート原版と接していない面に、厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルムを重ね合わせ、押圧した。
次いで、トリアセチルセルロースフィルムの上から紫外線を照射し未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させ、その硬化物を工程シート原版から剥離することにより、光拡散体を得た。
【0062】
(実施例6)
実施例1により得た凹凸パターン形成シートを工程シート原版として用いて、以下のようにして光学素子を得た。
すなわち、実施例1により得た工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、ニッケルめっきを施し、そのニッケルめっきを剥離することにより、厚さ200μmの2次工程シートを得た。この2次工程シートの凹凸パターンが形成された面にエポキシアクリレート系プレポリマー、2−エチルヘキシルアクリレートおよびベンゾフェノン系光重合開始剤を含む未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物を塗工した。
次いで、未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜の2次工程シートと接していない面に厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルムを重ね合わせ、押圧した。
次いで、トリアセチルセルロースフィルムの上から紫外線を照射し未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させ、その硬化物を2次工程シートから剥離することにより、光拡散体を得た。
【0063】
(実施例7)
紫外線硬化性樹脂組成物の代わりに熱硬化性エポキシ樹脂を使用し、紫外線を照射する代わりに加熱により該熱硬化性樹脂を硬化させた以外は実施例6と同様にして光拡散体を得た。
【0064】
(実施例8)
実施例6と同様にして、厚さ200μmの2次工程シートを得た。この2次工程シートの凹凸パターンが形成された面に、厚さ50μmのポリアクリルアミドフィルムを重ね、加熱した。加熱により軟化したポリアクリルアミドフィルムと2次工程シート両側から押圧後、冷却・固化させ、2次工程シートから剥離することにより、光拡散体を得た。
【0065】
(比較例1)
ポリスチレンの塗工厚さを6μmにした以外は実施例2と同様にして凹凸パターン形成シートを得た。
【0066】
(比較例2)
ポリスチレンの塗工厚さを40nmにした以外は実施例2と同様にして凹凸パターン形成シートを得た。
【0067】
(比較例3)
三菱樹脂株式会社製ヒシペットLX−60Sの代わりに同ヒシペットLX−10S(ヤング率3GPa)を用いたこと、および、その積層シートを70℃で1分間加熱して、加熱前の長さの97%に収縮させた(すなわち、変形率3%に変形させた)以外は実施例1と同様にして、凹凸パターン形成シートを得た。
【0068】
(比較例4)
特許文献2に示される異方性拡散パターンの製造方法を用いて凹凸パターン形成シートを得た。
すなわち、レーザー光を拡散して透過する磨りガラスのような拡散板がはめ込まれた、幅1mm、長さ10cmのスリットを有する遮蔽板と、市販の感光性樹脂が100μmの厚さで塗布された感光性フィルム板を、互いの間隔が1mで、かつ板同士が平行になるように設置した。
次に、波長514nmのアルゴンレーザーを前記遮蔽板側から照射し、前記スリットを通り抜けてすりガラスにより拡散したアルゴンレーザー光により、感光性フィルム板上の感光性樹脂を露光した。
前記に示すような露光を繰り返し、感光性フィルム板全面の感光性樹脂を露光した。そして、露光された感光性フィルムを現像して、凹凸パターン形成シートを得た。
なお、比較例4におけるグレースケールファイル変換画像を図9に、グレースケールファイル画像のフーリエ変換画像を図10に示す。また、図10の画像の中心から水平方向に補助線L4を引き、その補助線上の輝度をプロットした図を図11に示す。さらに、図10において、補助線L4と値Yの部分にて直交する補助線L5を引き、その補助線L5上の輝度をプロットした図を図12に示す。
【0069】
(比較例5)
加熱収縮性フィルムの代わりに厚さ50μmでヤング率5GPaの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人株式会社製G2)を用いた以外は実施例1と同様にして、凹凸パターン形成シートを得ることを試みた。しかし、波状の凹凸パターンが形成されず、凹凸パターン形成シートが得られなかった。
【0070】
(比較例6)
一軸方向に熱収縮する厚さ50μmでヤング率3GPaのポリエチレンテレフタレート製加熱収縮性シュリンクフィルム(三菱樹脂株式会社製ヒシペットLX−10S、ガラス転移温度70℃)の片面に、ヤング率が2MPaのポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社KS847T、ガラス転移温度−120℃)と白金触媒(信越化学工業株式会社CAT−PL−50T)とをトルエンに希釈した分散液をスピンコート法により厚さが3nmになるように塗工し、硬質層を形成して積層シートを得た。
次いで、その積層シートを100℃で1分間加熱し、熱収縮させることにより、凹凸パターン形成シートを得ようとしたが、硬質層を折り畳むように変形させることができず、波状の凹凸パターンは形成されなかった。
【0071】
実施例1〜8および比較例1〜6の凹凸パターン形成シートの光拡散体の上面を、原子間力顕微鏡(日本ビーコ社製ナノスコープIII)により撮影した。
実施例1〜8および比較例1〜4の凹凸パターン形成シートでは、原子間力顕微鏡の画像にて凹凸パターンの深さを10箇所で測定し、それらを平均して平均深さを求めた。
また、凹凸パターンの配向度を以下のようにして求めた。
まず、表面光学顕微鏡により凹凸パターンの上面を撮影し、その画像をグレースケールのファイルに変換した(図3参照)。次いで、グレースケールのファイルの画像をフーリエ変換する。図4にフーリエ変換後の画像を示す。次いで、図4の画像の中心から水平方向に補助線L2を引き、その補助線上の輝度をプロット(図5参照)した。次いで、図5において、補助線L2と値X(最頻ピッチ)の部分にて直交する補助線L3を引き、その補助線L3上の輝度をプロット(図6参照)する。そして、図6のプロットにおけるピークの半値幅W1より凹凸パターンの配向度を求めた。それらの値を表1に示す。
【0072】
また、凹凸パターンの最頻ピッチおよび底部の平均深さより、光拡散体としての適性を以下の基準で評価した。その評価結果を表1に示す。
○:凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え20μm以下、平均深さが最頻ピッチを100%とした際の10%以上、配向度が0.3〜1.0であり、光拡散体として適している。
△:凹凸パターンの最頻ピッチが1μm以下あるいは20μmを超えており、あるいは、平均深さが最頻ピッチを100%とした際の10%未満であり、あるいは配向度が0.3未満で光拡散体として必ずしも適していない。
×:凹凸パターンが形成できない
【0073】
【表1】
【0074】
積層シートの表面平滑硬質層を折り畳むように変形させた実施例1〜8では、凹凸パターン形成シートを容易に製造できた。
さらに、実施例1〜8の凹凸パターン形成シートは、凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え20μm以下、底部の平均深さが前記最頻ピッチを100%とした際の10%以上になり、光拡散体として適したものであった。実施例1〜4にて、上記のような最頻ピッチおよび平均深さが得られたのは、表面平滑硬質層の厚みが0.05μmを超え5μm以下で、変形率を10%以上としたためである。
また、実施例1で得た凹凸パターン形成シートを工程シートとして用いた実施例5〜8の製造方法によれば、凹凸パターン形成シートと同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンを有する光拡散体を簡便に製造できた。
【0075】
これに対し、比較例1および2では、表面硬質平滑層の厚さが0.05μm以下あるいは5μmを超えていたため、得られた凹凸パターン形成シートは、凹凸パターンの最頻ピッチが1μm以下あるいは20μmを超えていた。また、比較例3では、変形率を3%としたため、得られた凹凸パターン形成シートは、凹凸パターンの底部の平均深さが最頻ピッチを100%とした際の10%未満であった。また、比較例4では配向度が0.3未満であった。これら比較例1〜4は、必ずしも光拡散体として適したものではない。
また、樹脂層として2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた比較例5、および第1の樹脂より第2の樹脂のガラス転移温度が低い積層シートを用いた比較例6の製造方法では、表面平滑硬質層が折り畳むように変形しなかったため、凹凸パターンが形成しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の凹凸パターン形成シートの一実施形態の一部を拡大して示す拡大斜視図である。
【図2】図1の凹凸パターン形成シートを、凹凸パターンの形成方向と直交方向に切断した際の断面図である。
【図3】凹凸パターンの表面を表面光学顕微鏡により撮影して得た画像の、グレースケール変換画像である。
【図4】図3の画像をフーリエ変換した画像である。
【図5】図4の画像における円環の中心からの距離に対する輝度をプロットしたグラフである。
【図6】図4の画像における補助線L3上の輝度をプロットしたグラフである。
【図7】本発明の凹凸パターン形成シートの製造方法の一実施形態における積層シートを示す断面図である。
【図8】本発明の凹凸パターン形成シートを用いた光拡散体の製造方法の一例を説明する図である。
【図9】比較例4における凹凸パターンの表面を表面光学顕微鏡により撮影して得た画像の、グレースケール変換画像である。
【図10】図9の画像をフーリエ変換した画像である。
【図11】図10の画像における円環の中心からの距離に対する輝度をプロットしたグラフである。
【図12】図10の画像における補助線L5上の輝度をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0077】
10 凹凸パターン形成シート
10a 積層シート
11 基材
11a 加熱収縮性フィルム
12 硬質層
12a 凹凸パターン
12b 底部
13 表面が平滑な樹脂製の硬質層(表面平滑硬質層)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散体に備えられる凹凸パターン形成シートおよびその製造方法に関する。また、凹凸パターン形成シートが使用された光拡散体に関する。また、凹凸パターンが表面に形成された光拡散体を製造するための型として用いられる光拡散体製造用工程シート原版に関する。さらに、光拡散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光拡散体として、波状の凹凸パターンが表面に形成された凹凸パターン形成シートが利用されている。
例えば、特許文献1には、凹凸パターンが形成された光拡散体として、光透過性基材の少なくとも片面に突起体が複数形成され、突起体の高さが2〜20μm、突起体の頂点の間隔が1〜10μm、突起体のアスペクト比が1以上のものが開示されている。また、特許文献1には、突起体を形成する方法として、光透過性基材の表面を、KrFエキシマレーザー等のエネルギービームの照射により加工する方法が開示されている。
特許文献2には、波状の凹凸からなる異方性拡散パターンが片面に形成された光拡散体が開示されている。また、特許文献2には、異方性拡散パターンを形成する方法として、感光性樹脂のフィルムにレーザー光を照射して露光し、現像して、片面に凹凸が形成されたマスターホログラムを形成し、そのマスターホログラムを金型に転写し、その金型を用いて樹脂を成形する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−123307号公報
【特許文献2】特開2006−261064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1,2に記載の光拡散体は充分な光拡散性を有するものである。しかしながら、特許文献1に記載の、エネルギービームの照射による加工方法、特許文献2に記載の、感光性樹脂のフィルムをレーザーにより露光し、現像する方法は煩雑であるという問題を有していた。また、特許文献1,2の光拡散体は、拡散の異方性が充分とはいえなかった。
【0004】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、光拡散体として利用でき、簡便に製造できる凹凸パターン形成シートを提供することを目的とする。また、光拡散体として利用される凹凸パターン形成シートを簡便に製造できる凹凸パターン形成シートの製造方法を提供することを目的とする。また、拡散の異方性に優れた光拡散体を提供することを目的とする。さらには、凹凸パターン形成シートと同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが形成された光拡散体を簡便にかつ大量に製造できる光拡散体製造用工程シートおよび光拡散体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 樹脂製の基材と、該基材の片面に設けられた樹脂製の硬質層とを備え、該硬質層の表面に一方向に沿った凹凸パターンが形成された凹凸パターン形成シートであって、
硬質層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg2と、基材を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)が10℃以上であり、
凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え20μm以下、凹凸パターンの底部の平均深さが前記最頻ピッチを100%とした際の10%以上であることを特徴とする凹凸パターン形成シート。
[2] 樹脂製の基材の片面に、表面が平滑で厚さが0.05μmを超え5.0μm以下の樹脂製の硬質層を設けて積層シートを形成する工程と、前記積層シートの少なくとも硬質層を折り畳むように変形させる工程とを有し、
硬質層を、基材を構成する樹脂よりガラス転移温度が10℃以上高い樹脂で構成することを特徴とする凹凸パターン形成シートの製造方法。
[3] 樹脂製の基材として一軸方向加熱収縮性フィルムを用い、硬質層を折り畳むように変形させる工程では、積層シートを加熱して一軸方向加熱収縮性フィルムを収縮させる[2]に記載の凹凸パターン形成シートの製造方法。
[4] [1]に記載の凹凸パターン形成シートを備え、該凹凸パターン形成シートの基材および硬質層が透明である光拡散体。
[5] [1]に記載の凹凸パターン形成シートを備え、該凹凸パターン形成シートと同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが表面に形成された光拡散体を製造するための型として用いられる光拡散体製造用工程シート原版。
[6] [5]に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、未硬化の硬化性樹脂を塗工する工程と、
該硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シート原版から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
[7] [5]に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、
該シート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、
冷却したシート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
[8] [5]に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、凹凸パターン転写用材料を積層する工程と、
凹凸パターンに積層した凹凸パターン転写用材料を前記工程シート原版から剥離して2次工程用成形物を作製する工程と、
該2次工程用成形物の、前記工程シート原版の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の硬化性樹脂を塗工する工程と、
該硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
[9] [5]に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、凹凸パターン転写用材料を積層する工程と、
凹凸パターンに積層した凹凸パターン転写用材料を前記工程シート原版から剥離して2次工程用成形物を作製する工程と、
該2次工程用成形物の、前記工程シート原版の凹凸パターンと接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、
該シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、
冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の凹凸パターン形成シートは、光拡散体として利用でき、簡便に製造できるものである。
本発明の凹凸パターン形成シートの製造方法によれば、光拡散体として利用される凹凸パターン形成シートを簡便に製造できる。
本発明の光拡散体は、拡散の異方性に優れる。
本発明の光拡散体製造用工程シートおよび光拡散体の製造方法によれば、凹凸パターン形成シートと同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが形成された光拡散体を簡便にかつ大量に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(凹凸パターン形成シート)
本発明の凹凸パターン形成シートの一実施形態について説明する。
図1及び図2に、本実施形態の凹凸パターン形成シートを示す。本実施形態の凹凸パターン形成シート10は、基材11と、基材11の片面に設けられた硬質層12とを備え、硬質層12が凹凸パターン12aを有するものである。
【0008】
凹凸パターン形成シート10の凹凸パターン12aは、略一方向に沿った波状の凹凸を有し、その波状の凹凸が蛇行しているものである。また、本実施形態の凹凸パターン12aの凸部の先端は丸みを帯びている。
【0009】
硬質層12を構成する樹脂(以下、第2の樹脂という。)のガラス転移温度Tg2と、基材11を構成する樹脂(以下、第1の樹脂という。)のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)は10℃以上であり、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。(Tg2−Tg1)の差が10℃以上であることにより、Tg2とTg1の間の温度で容易に加工できる。Tg2とTg1の間の温度を加工温度とすると、基材11のヤング率が硬質層12のヤング率より高くなる条件で加工でき、その結果、硬質層12に凹凸パターン12aを容易に形成できる。
また、Tg2が400℃を超えるような樹脂を使用することは経済性の面から必要に乏しく、Tg1が−150℃より低い樹脂は存在しないことから、(Tg2−Tg1)は550℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。
凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度における基材11と硬質層12とのヤング率の差は、凹凸パターン12aを容易に形成できることから、0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。
ここでいう加工温度は、例えば、後述する凹凸パターン形成シートの製造方法における熱収縮時の加熱温度のことである。また、ヤング率は、JIS K 7113−1995に準拠して測定した値である。
【0010】
第1の樹脂のガラス転移温度Tg1は−150〜300℃であることが好ましく、−120〜200℃であることがより好ましい。ガラス転移温度Tg1が−150℃より低い樹脂は存在せず、第1の樹脂のガラス転移温度Tg1が300℃以下であれば、凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度(Tg2とTg1の間の温度)に容易に加熱することができるためである。
【0011】
凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度における第1の樹脂のヤング率は0.01〜100MPaであることが好ましく、0.1〜10MPaであることがより好ましい。第1の樹脂のヤング率が0.01MPa以上であれば、基材11として使用可能な硬さであり、100MPa以下であれば、硬質層12が変形する際に同時に追従して変形可能な軟らかさである。
【0012】
第1の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンなどの樹脂が挙げられる。
【0013】
第2の樹脂のガラス転移温度Tg2は40〜400℃であることが好ましく、80〜250℃であることがより好ましい。第2の樹脂のガラス転移温度Tg2が40℃以上であれば、凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度を室温またはそれ以上にすることができて有用であり、ガラス転移温度Tg2が400℃を超えるような樹脂を第2の樹脂として使用することは経済性の面から必要性に乏しいためである。
【0014】
凹凸パターン形成シート10を製造する際の加工温度における第2の樹脂のヤング率は0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。第2の樹脂のヤング率が0.01GPa以上であれば、第1の樹脂の加工温度におけるヤング率より充分な硬さが得られ、凹凸パターン12aが形成された後、凹凸パターンを維持するのに充分な硬さであり、ヤング率が300GPaを超えるような樹脂を第2の樹脂として使用することは経済性の面から必要性に乏しいためである。
【0015】
第1の樹脂の種類にもよるが、第2の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などを使用することができる。これらの中でも、防汚機能を兼ね備えた点で、フッ素樹脂が好ましい。
第2の樹脂は単独でも併用でもよく、配向度を高めるためには樹脂を2種以上併用することが好ましい。
【0016】
基材11の厚みは0.3〜500μmであることが好ましい。基材11の厚みが0.3μm以上であれば、凹凸パターン形成シート10が破れにくくなり、500μm以下であれば、凹凸パターン形成シート10を容易に薄型化できる。
また、基材11を支持するために、厚さ5〜500μmの樹脂製の支持体を設けてもよい。また、光拡散体として用いる場合には、光拡散性をより高くするために、微細気泡を含有させたフィルムを基材11に貼付してもよい。
【0017】
凹凸パターン形成シート10を光拡散体として使用する場合には、基材11には、より光拡散効果を高める目的で、光透過率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、無機化合物からなる光拡散剤、有機化合物からなる有機光拡散剤を含有させることができる。
無機光拡散剤としては、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス、マイカ等が挙げられる。
有機光拡散剤としては、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子等が挙げられる。これらの光拡散剤はそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
光拡散剤の含有量は、光透過性を損ないにくいことから、第1の樹脂100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
【0018】
また、凹凸パターン形成シート10を光拡散体として使用する場合には、基材11には、より拡散効果を高める目的で、光透過率等の光学特性を大きく損なわない範囲内で、微細気泡を含有させることができる。微細気泡は、光の吸収が少なく光透過率を低下させにくい。
微細気泡の形成方法としては、基材11に発泡剤を混入する方法(例えば、特開平5−212811号公報、特開平6−107842号公報に開示された方法)や、アクリル系発泡樹脂を発泡処理させて微細気泡を含有する方法(例えば、特開2004−2812号公報に開示された方法)などを適用できる。さらに微細気泡は、より均一な面照射が可能となる点では、特定の位置に不均一に発泡させる方法(例えば、特開2006−124499号公報に開示された方法)が好ましい。
なお、前記光拡散剤と微細発泡を併用することもできる。
【0019】
硬質層12の厚みは、0.05μmを超え5μm以下であることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。硬質層の厚みが0.05μmを超え5μm以下であれば、後述のように凹凸パターン形成シートを容易に製造できる。
また、基材11と硬質層12との間には、密着性の向上やより微細な構造を形成することを目的として、プライマー層を形成してもよい。
【0020】
凹凸パターン形成シート10の凹凸パターン12aの最頻ピッチAは1μmを超え20μm以下、好ましくは1μmを超え10μm以下である。最頻ピッチAが1μm未満であると、光が透過してしまい、20μmを超えると、光拡散性が低くなる。
【0021】
凹凸パターン12aの底部12bの平均深さBは最頻ピッチAを100%とした際の10%以上(すなわち、アスペクト比0.1以上)であり、30%以上(すなわち、アスペクト比0.3以上)であることが好ましい。平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の10%未満であると、凹凸パターン形成シート10を光拡散体製造用工程シート原版として用いても、光拡散性の高い光拡散体を得ることが困難になる。
また、平均深さBは、凹凸パターン12aを容易に形成できる点から、好ましくは最頻ピッチAを100%とした際の300%以下(すなわち、アスペクト比3.0以下)であり、より好ましくは200%以下(すなわち、アスペクト比2.0以下)である。
ここで、底部12bとは、凹凸パターン12aの凹部の変曲点であり、平均深さBは、凹凸パターン形成シート10を長さ方向に沿って切断した断面(図2参照)を見た際の、凹凸パターン形成シート10全体の面方向と平行な基準線L1から各凸部の頂部までの長さB1,B2,B3・・・の平均値(BAV)と、基準線L1から各凹部の底部までの長さb1,b2,b3・・・の平均値(bAV)との差(bAV−BAV)のことである。前記凸部の頂部および前記凹部の底部は、硬質層12における基材11側と反対側の面に接するものである。
平均深さBを測定する方法としては、原子間力顕微鏡により撮影した凹凸パターンの断面の画像にて各底部の深さを測定し、それらの平均値を求める方法などが採られる。
【0022】
光拡散の異方性の高い光拡散体が得られるようになる点では、凹凸パターン12aがある程度蛇行して、隣り合った凸部同士のピッチが凹凸パターン12aの方向に沿ってばらついていることが好ましい。ここで、凹凸パターン12aの配向のばらつきのことを配向度という。配向度が大きいほど、配向がばらついている。この配向度は、以下の方法で求められる。
まず、表面光学顕微鏡により凹凸パターンの上面を撮影し、その画像をグレースケールのファイル(例えば、tiff形式等)に変換する。グレースケールのファイルの画像(図3参照)では、白度が低いところ程、凹部の底部が深い(白度が高いところ程、凸部の頂部が高い)ことを表している。次いで、グレースケールのファイルの画像をフーリエ変換する。図4にフーリエ変換後の画像を示す。図4の画像の中心から両側に広がる白色部分は凹凸パターン12aのピッチおよび向きの情報が含まれる。
次いで、図4の画像の中心から水平方向に補助線L2を引き、その補助線上の輝度をプロット(図5参照)する。図5のプロットの横軸はピッチを、縦軸は頻度を表し、頻度が最大となる値Xが凹凸パターン12aの最頻ピッチを表す。
次いで、図4において、補助線L2と値Xの部分にて直交する補助線L3を引き、その補助線L3上の輝度をプロット(図6参照)する。ただし、図6の横軸は、各種の凹凸構造との比較を可能にするため、Xの値で割った数値とする。図6の横軸は、凹凸の形成方向(図3における上下方向)に対する傾きの程度を示す指標(配向性)を、縦軸は頻度を表す。図6のプロットにおけるピークの半値幅W1(頻度が最大値の半分になる高さでのピークの幅)が凹凸パターンの配向度を表す。半値幅W1が大きい程、蛇行してピッチがばらついていることを表す。
【0023】
上記配向度は0.3〜1.0であることが好ましい。配向度が0.3〜1.0であれば、凹凸パターン12aのピッチのばらつきが大きいため、該凹凸パターン形成シートおよび該凹凸パターン形成シートを工程シート原版として用いて得た光拡散体の光拡散性がより高くなる。配向度が1.0を超えると、凹凸パターンの方向がある程度ランダムになるため、光拡散性は高くなるが、異方性が低くなる傾向にある。
配向度を0.3〜1.0にするためには、凹凸パターン形成シート製造の際に必要な圧縮応力の作用のさせ方を適宜選択すればよい。
【0024】
なお、上記のようにフーリエ変換を利用して求めた凹凸パターンの最頻ピッチは平均ピッチと同等となる。
【0025】
硬質層12を構成する第2の樹脂のガラス転移温度Tg2と、基材11を構成する第1の樹脂のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)が10℃以上である本発明の凹凸パターン形成シート10は、後述する凹凸パターン形成シートの製造方法により得られるため、簡便に製造できる。
また、本発明者が調べた結果、基材11および硬質層12が共に透明である場合には、凹凸パターン12aの最頻ピッチAが1μmを超え20μm以下、凹凸パターン12aの底部12bの平均深さBが前記最頻ピッチAを100%とした際の10%以上である本発明の凹凸パターン形成シート10は、充分な光拡散性を有するため、光拡散体として利用できることが判明した。
【0026】
なお、本発明の凹凸パターン形成シートは、上述した実施形態に限定されない。例えば、本発明の凹凸パターン形成シートの凹凸パターンの凸部の先端が尖っていても構わない。しかし、凹凸パターンの凸部の形状は拡散の異方性がより高くなる点から、先端が丸みを帯びていることが好ましい。
【0027】
(凹凸パターン形成シートの製造方法)
本発明の凹凸パターン形成シートの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の凹凸パターン形成シートの製造方法は、図7に示すように、樹脂製の基材である加熱収縮性フィルム11aの片面に、表面が平滑な樹脂製の硬質層13(以下、表面平滑硬質層13という。)を設けて積層シート10aを形成する工程(以下、第1の工程という。)と、加熱収縮性フィルム11aを加熱収縮させて、積層シート10aの少なくとも表面平滑硬質層13を折り畳むように変形させる工程(以下、第2の工程という。)とを有する方法である。
ここで、表面平滑硬質層13とは、JIS B0601に記載の中心線平均粗さ0.1μm以下の層である。
【0028】
[第1の工程]
第1の工程にて、加熱収縮性フィルム11aの片面に表面平滑硬質層13を設けて積層シート10aを形成する方法としては、例えば、加熱収縮性フィルム11aの片面に、第2の樹脂の溶液または分散液をスピンコーターやバーコーター等により塗工し、溶媒を乾燥させる方法、加熱収縮性フィルム11aの片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層13を積層する方法などが挙げられる。
【0029】
加熱収縮性フィルム11aとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルムなどを用いることができる。
シュリンクフィルムの中でも、50〜70%収縮するものが好ましい。50〜70%収縮するシュリンクフィルムを用いれば、変形率を50%以上でき、凹凸パターン12aの最頻ピッチAが1μmを超え20μm以下、凹凸パターン12aの底部12bの平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の10%以上の凹凸パターン形成シート10を容易に製造できる。さらには、凹凸パターン12aの底部12bの平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の100%以上の凹凸パターン形成シート10も容易に製造できる。
ここで、変形率とは、(変形前の長さ−変形後の長さ)/(変形前の長さ)×100(%)のことである。あるいは、(変形した長さ)/(変形前の長さ)×100(%)のことである。
また、以下の工程により凹凸パターン12aの平均深さBを、最頻ピッチAを100%とした際の300%にすることができる。
加熱収縮性フィルム11aに加熱収縮性フィルム11aよりガラス転移温度が低いプライマー樹脂層を塗工し、該プライマー樹脂層の上に表面硬質平滑層13を設けた積層シートを形成する。該積層シートを加熱収縮させることにより凹凸パターン形成シートを形成する。
加熱収縮後の加熱収縮性フィルム11aを積層シートから剥離し、別の加熱収縮性フィルムを貼り合せ、積層シートを形成する。この積層シートを加熱収縮させることにより、加熱収縮性フィルム1枚分を加熱収縮させた場合より、平均深さBを大きくすることが可能である。この工程を複数回繰り返すことで、凹凸パターン12aの平均深さBを、最頻ピッチAを100%とした際の300%にすることができる。
【0030】
本発明では、表面平滑硬質層13の厚さを、0.05μmを超え5.0μm以下、好ましくは0.1〜1.0μmとする。表面平滑硬質層13の厚さを前記範囲にすることにより、凹凸パターン12aの最頻ピッチAを、確実に1μmを超え20μm以下にできる。しかし、表面平滑硬質層13の厚さが0.05μm以下であると最頻ピッチAが1μm以下になることがあり、5.0μmを超えると、最頻ピッチAが20μmを超えることがある。
また、本発明では、表面平滑硬質層13を、加熱収縮性フィルムを構成する樹脂(第1の樹脂)よりガラス転移温度が10℃以上高い樹脂(第2の樹脂)で構成する。第1の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度が前記関係にあることにより、凹凸パターン12aの最頻ピッチAを、確実に1μmを超え20μm以下にできる。
表面平滑硬質層13の厚さは連続的に変化していても構わない。表面平滑硬質層13の厚さが連続的に変化している場合には、圧縮後に形成される凹凸パターン12aのピッチおよび深さが連続的に変化するようになる。
【0031】
この製造方法では、より容易に凹凸パターン12aを形成できることから、表面平滑硬質層13のヤング率を0.01〜300GPaにすることが好ましく、0.1〜10GPaにすることがより好ましい。
【0032】
[第2の工程]
第2の工程にて、加熱収縮性フィルム11aを熱収縮させることにより、表面平滑硬質層13に、収縮方向に対して垂直方向に波状の凹凸パターン12aを形成させて、硬質層12を得る。
加熱収縮性フィルム11aを加熱収縮させる際の加熱方法としては、熱風、蒸気または熱水中に通す方法等が挙げられ、中でも、均一に収縮させることができることから、熱水に通す方法が好ましい。
加熱収縮性フィルム11aを熱収縮させる際の加熱温度は、使用する加熱収縮性フィルムの種類および目的とする凹凸パターン12aのピッチならびに底部12bの深さに応じて適宜選択することが好ましい。
【0033】
この製造方法では、表面平滑硬質層13の厚さが薄いほど、表面平滑硬質層13のヤング率が低いほど、凹凸パターン12aの最頻ピッチAが小さくなり、基材の変形率が高いほど、平均深さBが深くなる。したがって、凹凸パターン12aを所定の最頻ピッチA、平均深さBにするためには、前記条件を適宜選択する必要がある。
【0034】
以上説明した凹凸パターン形成シートの製造方法では、表面平滑硬質層13を構成する第2の樹脂が加熱収縮性フィルム11aを構成する第1の樹脂よりガラス転移温度が10℃以上高いため、第1の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度の間の温度では、表面平滑硬質層13のヤング率が加熱収縮性フィルム11aより高くなる。その上、表面平滑硬質層13の厚さを0.05μmを超え5.0μm以下としているため、第1の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度の間の温度で加工した際には、表面平滑硬質層13は厚みを増すよりも、折り畳まれるようになる。さらに、表面平滑硬質層13は加熱収縮性フィルム11aに積層されているため、加熱収縮性フィルム11aの収縮による応力が全体に均一にかかる。したがって、本発明によれば、表面平滑硬質層13を折り畳むように変形させて、光拡散体として性能に優れた凹凸パターン形成シート10を簡便に、かつ、大面積で製造できる。
しかも、この製造方法によれば、容易に、凹凸パターン12aの最頻ピッチAを、1μmを超え20μm以下、凹凸パターン12aの底部12bの平均深さBを、最頻ピッチAを100%とした際の10%以上にできる。
【0035】
また、凹凸パターン形成シートの製造方法としては、下記(1)〜(4)の方法を適用することもできる。
(1)基材11の片面の全部に、表面平滑硬質層13を設けて積層シート10aを形成し、積層シート10a全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材11のガラス転移温度が室温未満の場合、積層シート10aの圧縮は室温で行い、基材11のガラス転移温度が室温以上の場合、積層シート10aの圧縮は、基材11のガラス転移温度以上、平面平滑硬質層13のガラス転移温度未満で行う。
(2)基材11の片面の全部に、表面平滑硬質層13を設けて積層シート10aを形成し、積層シート10aを一方向に延伸し、延伸方向に対する直交方向を収縮させて、表面平滑硬質層13を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材11のガラス転移温度が室温未満の場合、積層シート10aの延伸は室温で行い、基材11のガラス転移温度が室温以上の場合、積層シート10aの延伸は、基材11のガラス転移温度以上、平面平滑硬質層13のガラス転移温度未満で行う。
(3)未硬化の電離放射線硬化性樹脂により形成された基材11に、表面平滑硬質層13を積層して積層シート10aを形成し、電離放射線を照射して基材11を硬化させることにより収縮させて、基材11に積層された表面平滑硬質層13を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(4)溶媒を膨潤させて膨張させた基材11に、表面平滑硬質層13を積層して積層シート10aを形成し、基材11中の溶媒を乾燥し、除去することにより収縮させて、基材11に積層された表面平滑硬質層13を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
【0036】
(1)の方法において、積層シート10aを形成する方法としては、例えば、基材11の片面に、樹脂の溶液または分散液をスピンコーターやバーコーター等により塗工し、溶媒を乾燥させる方法、基材11の片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層13を積層する方法などが挙げられる。
【0037】
積層シート10a全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法としては、例えば、積層シート10aの一端部とその反対側の端部とを、万力等により挟んで圧縮する方法などが挙げられる。
【0038】
(2)の方法において、積層シート10aを一方向に延伸する方法としては、例えば、積層シート10aの一端部とその反対側の端部とを、引っ張って延伸する方法などが挙げられる。
(3)の方法において、電離放射線硬化性樹脂としては紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などが挙げられる。
(4)の方法において、溶媒は第1の樹脂の種類に応じて適宜選択される。溶媒の乾燥温度は溶媒の種類に応じて適宜選択される。
(2)〜(4)の方法における表面平滑硬質層13においても、(1)の方法で用いるものと同様の成分を用いることができ、同様の厚さとすることができる。また、積層シート10aの形成方法は、(1)の方法と同様に、基材11の片面に樹脂の溶液または分散液を塗工し、溶媒を乾燥させる方法、基材11の片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層13を積層する方法を適用できる。
【0039】
(光拡散体)
本発明の光拡散体は、上述した凹凸パターン形成シート10を備えたものである。
本発明の光拡散体においては、凹凸パターン形成シート10の片面または両面に他の層を備えてもよい。例えば、凹凸パターン形成シート10の、凹凸パターン12aが形成されている側の面に、その面の汚れを防止するために、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂を主成分として含有する厚さ1〜5nm程度の防汚層を備えてもよい。
また、光拡散体の基材11側の面には、透明樹脂製あるいはガラス製の支持体が備えられていてもよい。
さらに、基材11側の面に粘着剤層が形成されていてもよく、機能性を適宜持たせるために色素を含んでもよい。
【0040】
上述した凹凸パターンが表面に形成された凹凸パターン形成シート10を備えた本発明の光拡散体は、充分な光拡散性を有する。
【0041】
(光拡散体製造用工程シート原版および光拡散体の製造方法)
本発明の光拡散体製造用工程シート原版(以下、工程シート原版という。)は、上述した凹凸パターン形成シート10を備えるものであり、凹凸パターン12aを、以下に示すような方法で他の素材に転写させることにより、該工程シート原版と同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが表面に形成された光拡散体として使用可能な凹凸パターン形成シートを大面積で大量に製造するための型として用いられるものである。
工程シート原版には、凹凸パターン形成シート10を支持するための樹脂製または金属製の支持体をさらに備えてもよい。
【0042】
工程シート原版を用いて光拡散体を製造する具体的な方法としては、例えば、下記(a)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を塗工する工程と、電離放射線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シート原版から剥離する工程とを有する方法。ここで、電離放射線とは、通常、紫外線または電子線のことであるが、本発明では、可視光線、X線、イオン線等も含む。
(b)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱して前記液状熱硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シート原版から剥離する工程とを有する方法。
(c)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版から剥離する工程とを有する方法。
【0043】
また、工程シート原版を用いて2次工程用成形物を作製し、その2次工程用成形物を用いて光拡散体を製造することもできる。2次工程用成形物としては、例えば、2次工程シートが挙げられる。また、2次工程用成形物としては、工程シート原版を丸めて円筒の内側に貼り付け、その円筒の内側にロールを挿入した状態でめっきし、円筒からロールを取り出して得ためっきロールが挙げられる。
2次工程用成形物を用いる具体的な方法としては、下記(d)〜(f)の方法が挙げられる。
【0044】
(d)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、ニッケル等の金属めっきを行って、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を工程シート原版から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、次いで、2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を塗工する工程と、電離放射線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(e)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を工程シート原版から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、該2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱により該樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(f)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を工程シート原版から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、該2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
【0045】
(a)の方法の具体例について説明する。図8に示すように、まず、ウェブ状の工程シート原版110の凹凸パターン112aが形成された面に、コーター120により未硬化の液状電離放射線硬化性樹脂112cを塗工する。次いで、該硬化性樹脂を塗工した工程シート原版110を、ロール130を通すことにより押圧して、前記硬化性樹脂を工程シート原版110の凹凸パターン112a内部に充填する。その後、電離放射線照射装置140により電離放射線を照射して、硬化性樹脂を架橋・硬化させる。そして、硬化後の電離放射線硬化性樹脂を工程シート原版110から剥離させることにより、ウェブ状の光拡散体150を製造することができる。
【0046】
(a)の方法において、工程シート原版の凹凸パターンが形成された面には、離型性を付与する目的で、未硬化の電離放射線硬化性樹脂塗工前に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等からなる層を1〜10nm程度の厚さで設けてもよい。
工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を塗工するコーターとしては、Tダイコーター、ロールコーター、バーコーター等が挙げられる。
未硬化の電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。未硬化の電離放射線硬化性樹脂は溶媒等で希釈することが好ましい。
また、未硬化の電離放射線硬化性樹脂には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。
未硬化の電離放射線硬化性樹脂を紫外線により硬化する場合には、未硬化の電離放射線硬化性樹脂にアセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
【0047】
未硬化の液状電離放射線硬化性樹脂を塗工した後には、樹脂、ガラス等からなる基材を貼り合わせてから電離放射線を照射してもよい。電離放射線の照射は、基材、工程シート原版の電離放射線透過性を有するいずれか一方から行えばよい。
【0048】
硬化後の電離放射線硬化性樹脂のシートの厚みは0.1〜100μm程度とすることが好ましい。硬化後の電離放射線硬化性樹脂のシートの厚みが0.1μm以上であれば、充分な強度を確保でき、100μm以上であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0049】
上記図8に示す方法では、工程シート原版がウェブ状であったが、枚葉のシートであってもよい。枚葉のシートを用いる場合、枚葉のシートを平板状の型として使用するスタンプ法、枚葉のシートをロールに巻きつけて円筒状の型として使用するロールインプリント法等を適用できる。また、射出成形機の型の内側に枚葉の工程シート原版を配置させてもよい。
しかし、これら枚葉のシートを用いる方法において、光拡散体を大量生産するためには、凹凸パターンを形成する工程を多数回繰り返す必要がある。電離放射線硬化性樹脂と工程シート原版との離型性が低い場合には、多数回繰り返した際に凹凸パターンに目詰まりが生じ、凹凸パターンの転写が不完全になる傾向にある。
これに対し、図8に示す方法では、工程シート原版がウェブ状であるため、大面積で連続的に凹凸パターンを形成させることができるため、凹凸パターン形成シートの繰り返し使用回数が少なくても、必要な量の光拡散体を短時間に製造できる。
【0050】
(b),(e)の方法において、液状熱硬化性樹脂としては、例えば、未硬化の、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、(b)の方法における硬化温度は、工程シート原版のガラス転移温度より低いことが好ましい。硬化温度が工程シート原版のガラス転移温度以上であると、硬化時に工程シート原版の凹凸パターンが変形するおそれがあるからである。
【0051】
(c),(f)の方法において、熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。
シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧する際の圧力は1〜100MPaであることが好ましい。押圧時の圧力が1MPa以上であれば、凹凸パターンを高い精度で転写させることができ、100MPa以下であれば、過剰な加圧を防ぐことができる。
また、(c)の方法における熱可塑性樹脂の加熱温度は、工程シート原版のガラス転移温度より低いことが好ましい。加熱温度が工程シート原版のガラス転移温度以上であると、加熱時に工程シート原版の凹凸パターンが変形するおそれがあるからである。
加熱後の冷却温度としては、凹凸パターンを高い精度で転写させることができることから、熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましい。
【0052】
(a)〜(c)の方法の中でも、加熱を省略でき、工程シート原版の凹凸パターンの変形を防止できる点で、電離放射線硬化性樹脂を使用する(a)の方法が好ましい。
【0053】
(d)〜(f)の方法においては、金属製の2次工程用成形物の厚さを50〜500μm程度とすることが好ましい。金属製の2次工程用成形物の厚さが50μm以上であれば、2次工程用成形物が充分な強度を有し、500μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
(d)〜(f)の方法では、熱による変形が小さい金属製シートを工程シートとして用いるため、凹凸パターン形成シート用の材料として、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用できる。
(a)〜(f)の方法で製造された凹凸パターン形成シートを光拡散体として使用する場合には、より光拡散効果を高める目的で、前記無機化合物からなる光拡散剤、有機化合物からなる有機光拡散剤あるいは微細気泡を含有させることができる。
【0054】
なお、(d)〜(f)では工程シート原版の凹凸パターンを金属に転写させて2次工程用成形物を得たが、樹脂に転写させて2次工程用成形物を得てもよい。その場合に使用できる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、(a)の方法で使用する電離放射線硬化性樹脂などが挙げられる。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、(a)の方法と同様に、電離放射線硬化性樹脂の塗工、硬化、剥離を順次行って、2次工程用成形物を得る。
【0055】
上述のようにして得た光拡散体には、凹凸パターンの形成された面と反対の面に粘着剤層を設けても構わない。また、凹凸パターンの形成された面と反対側の面に、さらに凹凸パターンを形成してもよい。
また、工程シート原版として用いた凹凸パターン形成シートあるいは2次工程用成形物を剥離せずに保護層として用い、光拡散体の使用直前に保護層を剥離してもよい。
【実施例】
【0056】
以下の例におけるヤング率は、引っ張り試験機(テスター産業社製TE−7001)を用い、JIS K 7113−1995に準拠して測定した値である。特に温度を記載していない場合には、23℃における値である。
【0057】
(実施例1)
一軸方向に熱収縮する厚さ50μmでヤング率3GPaのポリエチレンテレフタレート製加熱収縮性フィルム(三菱樹脂株式会社製ヒシペットLX−60S、ガラス転移温度70℃)の片面に、トルエンに希釈したポリメチルメタクリレート(ポリマーソース株式会社製P4831−MMA、ガラス転移温度100℃)を厚さが200nmになるようにバーコーターにより塗工し、硬質層を形成して積層シートを得た。
次いで、その積層シートを80℃で1分間加熱することにより、加熱前の長さの40%に熱収縮させ(すなわち、変形率60%で変形させ)、硬質層が、収縮方向に対して直交方向に沿って周期的を有する波状の凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シートを得た。
なお、ポリエチレンテレフタレート製加熱収縮性フィルムおよび該ポリメチルメタクリレートの80℃におけるヤング率はそれぞれ50MPa、1GPaであった。
【0058】
(実施例2)
トルエンに希釈したポリスチレン(ポリマーソース株式会社製PS、ガラス転移温度100℃)を塗工した以外は実施例1と同様にして凹凸パターン形成シートを得た。
なお、ポリエチレンテレフタレート製加熱収縮性フィルムおよび該ポリスチレンの80℃におけるヤング率はそれぞれ、50MPa、1GPaであった。
【0059】
(実施例3)
ポリスチレンの塗工厚さを1μmにした以外は実施例2と同様にして凹凸パターン形成シートを得た。
【0060】
(実施例4)
積層シートを70℃で1分間加熱することにより、加熱前の長さの90%に熱収縮させた(すなわち、変形率10%で変形させた)以外は実施例2と同様にして凹凸パターン形成シートを得た。
【0061】
(実施例5)
実施例1により得た凹凸パターン形成シートを工程シート原版として用いて、以下のようにして光拡散体を得た。
すなわち、実施例1により得た工程シート原版の凹凸パターンが形成された面にエポキシアクリレート系プレポリマー、2−エチルヘキシルアクリレートおよびベンゾフェノン系光重合開始剤を含む未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物を塗工した。
次いで、未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜の工程シート原版と接していない面に、厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルムを重ね合わせ、押圧した。
次いで、トリアセチルセルロースフィルムの上から紫外線を照射し未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させ、その硬化物を工程シート原版から剥離することにより、光拡散体を得た。
【0062】
(実施例6)
実施例1により得た凹凸パターン形成シートを工程シート原版として用いて、以下のようにして光学素子を得た。
すなわち、実施例1により得た工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、ニッケルめっきを施し、そのニッケルめっきを剥離することにより、厚さ200μmの2次工程シートを得た。この2次工程シートの凹凸パターンが形成された面にエポキシアクリレート系プレポリマー、2−エチルヘキシルアクリレートおよびベンゾフェノン系光重合開始剤を含む未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物を塗工した。
次いで、未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜の2次工程シートと接していない面に厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルムを重ね合わせ、押圧した。
次いで、トリアセチルセルロースフィルムの上から紫外線を照射し未硬化の紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させ、その硬化物を2次工程シートから剥離することにより、光拡散体を得た。
【0063】
(実施例7)
紫外線硬化性樹脂組成物の代わりに熱硬化性エポキシ樹脂を使用し、紫外線を照射する代わりに加熱により該熱硬化性樹脂を硬化させた以外は実施例6と同様にして光拡散体を得た。
【0064】
(実施例8)
実施例6と同様にして、厚さ200μmの2次工程シートを得た。この2次工程シートの凹凸パターンが形成された面に、厚さ50μmのポリアクリルアミドフィルムを重ね、加熱した。加熱により軟化したポリアクリルアミドフィルムと2次工程シート両側から押圧後、冷却・固化させ、2次工程シートから剥離することにより、光拡散体を得た。
【0065】
(比較例1)
ポリスチレンの塗工厚さを6μmにした以外は実施例2と同様にして凹凸パターン形成シートを得た。
【0066】
(比較例2)
ポリスチレンの塗工厚さを40nmにした以外は実施例2と同様にして凹凸パターン形成シートを得た。
【0067】
(比較例3)
三菱樹脂株式会社製ヒシペットLX−60Sの代わりに同ヒシペットLX−10S(ヤング率3GPa)を用いたこと、および、その積層シートを70℃で1分間加熱して、加熱前の長さの97%に収縮させた(すなわち、変形率3%に変形させた)以外は実施例1と同様にして、凹凸パターン形成シートを得た。
【0068】
(比較例4)
特許文献2に示される異方性拡散パターンの製造方法を用いて凹凸パターン形成シートを得た。
すなわち、レーザー光を拡散して透過する磨りガラスのような拡散板がはめ込まれた、幅1mm、長さ10cmのスリットを有する遮蔽板と、市販の感光性樹脂が100μmの厚さで塗布された感光性フィルム板を、互いの間隔が1mで、かつ板同士が平行になるように設置した。
次に、波長514nmのアルゴンレーザーを前記遮蔽板側から照射し、前記スリットを通り抜けてすりガラスにより拡散したアルゴンレーザー光により、感光性フィルム板上の感光性樹脂を露光した。
前記に示すような露光を繰り返し、感光性フィルム板全面の感光性樹脂を露光した。そして、露光された感光性フィルムを現像して、凹凸パターン形成シートを得た。
なお、比較例4におけるグレースケールファイル変換画像を図9に、グレースケールファイル画像のフーリエ変換画像を図10に示す。また、図10の画像の中心から水平方向に補助線L4を引き、その補助線上の輝度をプロットした図を図11に示す。さらに、図10において、補助線L4と値Yの部分にて直交する補助線L5を引き、その補助線L5上の輝度をプロットした図を図12に示す。
【0069】
(比較例5)
加熱収縮性フィルムの代わりに厚さ50μmでヤング率5GPaの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人株式会社製G2)を用いた以外は実施例1と同様にして、凹凸パターン形成シートを得ることを試みた。しかし、波状の凹凸パターンが形成されず、凹凸パターン形成シートが得られなかった。
【0070】
(比較例6)
一軸方向に熱収縮する厚さ50μmでヤング率3GPaのポリエチレンテレフタレート製加熱収縮性シュリンクフィルム(三菱樹脂株式会社製ヒシペットLX−10S、ガラス転移温度70℃)の片面に、ヤング率が2MPaのポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社KS847T、ガラス転移温度−120℃)と白金触媒(信越化学工業株式会社CAT−PL−50T)とをトルエンに希釈した分散液をスピンコート法により厚さが3nmになるように塗工し、硬質層を形成して積層シートを得た。
次いで、その積層シートを100℃で1分間加熱し、熱収縮させることにより、凹凸パターン形成シートを得ようとしたが、硬質層を折り畳むように変形させることができず、波状の凹凸パターンは形成されなかった。
【0071】
実施例1〜8および比較例1〜6の凹凸パターン形成シートの光拡散体の上面を、原子間力顕微鏡(日本ビーコ社製ナノスコープIII)により撮影した。
実施例1〜8および比較例1〜4の凹凸パターン形成シートでは、原子間力顕微鏡の画像にて凹凸パターンの深さを10箇所で測定し、それらを平均して平均深さを求めた。
また、凹凸パターンの配向度を以下のようにして求めた。
まず、表面光学顕微鏡により凹凸パターンの上面を撮影し、その画像をグレースケールのファイルに変換した(図3参照)。次いで、グレースケールのファイルの画像をフーリエ変換する。図4にフーリエ変換後の画像を示す。次いで、図4の画像の中心から水平方向に補助線L2を引き、その補助線上の輝度をプロット(図5参照)した。次いで、図5において、補助線L2と値X(最頻ピッチ)の部分にて直交する補助線L3を引き、その補助線L3上の輝度をプロット(図6参照)する。そして、図6のプロットにおけるピークの半値幅W1より凹凸パターンの配向度を求めた。それらの値を表1に示す。
【0072】
また、凹凸パターンの最頻ピッチおよび底部の平均深さより、光拡散体としての適性を以下の基準で評価した。その評価結果を表1に示す。
○:凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え20μm以下、平均深さが最頻ピッチを100%とした際の10%以上、配向度が0.3〜1.0であり、光拡散体として適している。
△:凹凸パターンの最頻ピッチが1μm以下あるいは20μmを超えており、あるいは、平均深さが最頻ピッチを100%とした際の10%未満であり、あるいは配向度が0.3未満で光拡散体として必ずしも適していない。
×:凹凸パターンが形成できない
【0073】
【表1】
【0074】
積層シートの表面平滑硬質層を折り畳むように変形させた実施例1〜8では、凹凸パターン形成シートを容易に製造できた。
さらに、実施例1〜8の凹凸パターン形成シートは、凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え20μm以下、底部の平均深さが前記最頻ピッチを100%とした際の10%以上になり、光拡散体として適したものであった。実施例1〜4にて、上記のような最頻ピッチおよび平均深さが得られたのは、表面平滑硬質層の厚みが0.05μmを超え5μm以下で、変形率を10%以上としたためである。
また、実施例1で得た凹凸パターン形成シートを工程シートとして用いた実施例5〜8の製造方法によれば、凹凸パターン形成シートと同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンを有する光拡散体を簡便に製造できた。
【0075】
これに対し、比較例1および2では、表面硬質平滑層の厚さが0.05μm以下あるいは5μmを超えていたため、得られた凹凸パターン形成シートは、凹凸パターンの最頻ピッチが1μm以下あるいは20μmを超えていた。また、比較例3では、変形率を3%としたため、得られた凹凸パターン形成シートは、凹凸パターンの底部の平均深さが最頻ピッチを100%とした際の10%未満であった。また、比較例4では配向度が0.3未満であった。これら比較例1〜4は、必ずしも光拡散体として適したものではない。
また、樹脂層として2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた比較例5、および第1の樹脂より第2の樹脂のガラス転移温度が低い積層シートを用いた比較例6の製造方法では、表面平滑硬質層が折り畳むように変形しなかったため、凹凸パターンが形成しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の凹凸パターン形成シートの一実施形態の一部を拡大して示す拡大斜視図である。
【図2】図1の凹凸パターン形成シートを、凹凸パターンの形成方向と直交方向に切断した際の断面図である。
【図3】凹凸パターンの表面を表面光学顕微鏡により撮影して得た画像の、グレースケール変換画像である。
【図4】図3の画像をフーリエ変換した画像である。
【図5】図4の画像における円環の中心からの距離に対する輝度をプロットしたグラフである。
【図6】図4の画像における補助線L3上の輝度をプロットしたグラフである。
【図7】本発明の凹凸パターン形成シートの製造方法の一実施形態における積層シートを示す断面図である。
【図8】本発明の凹凸パターン形成シートを用いた光拡散体の製造方法の一例を説明する図である。
【図9】比較例4における凹凸パターンの表面を表面光学顕微鏡により撮影して得た画像の、グレースケール変換画像である。
【図10】図9の画像をフーリエ変換した画像である。
【図11】図10の画像における円環の中心からの距離に対する輝度をプロットしたグラフである。
【図12】図10の画像における補助線L5上の輝度をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0077】
10 凹凸パターン形成シート
10a 積層シート
11 基材
11a 加熱収縮性フィルム
12 硬質層
12a 凹凸パターン
12b 底部
13 表面が平滑な樹脂製の硬質層(表面平滑硬質層)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基材と、該基材の片面に設けられた樹脂製の硬質層とを備え、該硬質層の表面に一方向に沿った凹凸パターンが形成された凹凸パターン形成シートであって、
硬質層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg2と、基材を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)が10℃以上であり、
凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え20μm以下、凹凸パターンの底部の平均深さが前記最頻ピッチを100%とした際の10%以上であることを特徴とする凹凸パターン形成シート。
【請求項2】
樹脂製の基材の片面に、表面が平滑で厚さが0.05μmを超え5.0μm以下の樹脂製の硬質層を設けて積層シートを形成する工程と、前記積層シートの少なくとも硬質層を折り畳むように変形させる工程とを有し、
硬質層を、基材を構成する樹脂よりガラス転移温度が10℃以上高い樹脂で構成することを特徴とする凹凸パターン形成シートの製造方法。
【請求項3】
樹脂製の基材として一軸方向加熱収縮性フィルムを用い、硬質層を折り畳むように変形させる工程では、積層シートを加熱して一軸方向加熱収縮性フィルムを収縮させる請求項2に記載の凹凸パターン形成シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の凹凸パターン形成シートを備え、該凹凸パターン形成シートの基材および硬質層が透明である光拡散体。
【請求項5】
請求項1に記載の凹凸パターン形成シートを備え、該凹凸パターン形成シートと同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが表面に形成された光拡散体を製造するための型として用いられる光拡散体製造用工程シート原版。
【請求項6】
請求項5に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、未硬化の硬化性樹脂を塗工する工程と、
該硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シート原版から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、
該シート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、
冷却したシート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、凹凸パターン転写用材料を積層する工程と、
凹凸パターンに積層した凹凸パターン転写用材料を前記工程シート原版から剥離して2次工程用成形物を作製する工程と、
該2次工程用成形物の、前記工程シート原版の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の硬化性樹脂を塗工する工程と、
該硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
【請求項9】
請求項5に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、凹凸パターン転写用材料を積層する工程と、
凹凸パターンに積層した凹凸パターン転写用材料を前記工程シート原版から剥離して2次工程用成形物を作製する工程と、
該2次工程用成形物の、前記工程シート原版の凹凸パターンと接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、
該シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、
冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
【請求項1】
樹脂製の基材と、該基材の片面に設けられた樹脂製の硬質層とを備え、該硬質層の表面に一方向に沿った凹凸パターンが形成された凹凸パターン形成シートであって、
硬質層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg2と、基材を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)が10℃以上であり、
凹凸パターンの最頻ピッチが1μmを超え20μm以下、凹凸パターンの底部の平均深さが前記最頻ピッチを100%とした際の10%以上であることを特徴とする凹凸パターン形成シート。
【請求項2】
樹脂製の基材の片面に、表面が平滑で厚さが0.05μmを超え5.0μm以下の樹脂製の硬質層を設けて積層シートを形成する工程と、前記積層シートの少なくとも硬質層を折り畳むように変形させる工程とを有し、
硬質層を、基材を構成する樹脂よりガラス転移温度が10℃以上高い樹脂で構成することを特徴とする凹凸パターン形成シートの製造方法。
【請求項3】
樹脂製の基材として一軸方向加熱収縮性フィルムを用い、硬質層を折り畳むように変形させる工程では、積層シートを加熱して一軸方向加熱収縮性フィルムを収縮させる請求項2に記載の凹凸パターン形成シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の凹凸パターン形成シートを備え、該凹凸パターン形成シートの基材および硬質層が透明である光拡散体。
【請求項5】
請求項1に記載の凹凸パターン形成シートを備え、該凹凸パターン形成シートと同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが表面に形成された光拡散体を製造するための型として用いられる光拡散体製造用工程シート原版。
【請求項6】
請求項5に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、未硬化の硬化性樹脂を塗工する工程と、
該硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シート原版から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、
該シート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、
冷却したシート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、凹凸パターン転写用材料を積層する工程と、
凹凸パターンに積層した凹凸パターン転写用材料を前記工程シート原版から剥離して2次工程用成形物を作製する工程と、
該2次工程用成形物の、前記工程シート原版の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の硬化性樹脂を塗工する工程と、
該硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
【請求項9】
請求項5に記載の光拡散体製造用工程シート原版の、凹凸パターンが形成された面に、凹凸パターン転写用材料を積層する工程と、
凹凸パターンに積層した凹凸パターン転写用材料を前記工程シート原版から剥離して2次工程用成形物を作製する工程と、
該2次工程用成形物の、前記工程シート原版の凹凸パターンと接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、
該シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、
冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する光拡散体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−302591(P2008−302591A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151795(P2007−151795)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
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