説明

制御された水溶性流動体の吸収をともなうイオン性ヒドロゲル

たとえば皮膚のような哺乳動物の身体組織に使用するのに適切な可塑性の架橋性重合体ヒドロゲルであって、一またはそれ以上のペンダントアニオン性基を含む第1のモノマーと、一またはそれ以上のペンダントカチオン性基を含む第2のモノマーとから形成された架橋性共重合体を含み、前記共重合体に含まれる前記モノマーの相対量は、アニオン性基とカチオン性基とが実質的に等モル量になるような量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体のヒドロゲルに関し、特に、たとえば皮膚または肉のような哺乳動物の身体組織に接触させるための架橋性高分子ヒドロゲルに関する。
【0002】
上述のヒドロゲルは、たとえば、化粧用品の当て布、検知電極、刺激電極、活性物質のイオン浸透送達装置、受動薬物送達装置、傷の手当用品、足の手当用品、人用失禁のための凝固促進製品、医療器具(たとえば、カテーテル、カニューレ)、造孔術用品、補綴術用品(たとえば、胸部、手足)のような医療用、健康用、個人用介護製品等と関連して使用されることがある。
【背景技術】
【0003】
架橋性導電性高分子ヒドロゲルは、刺激または検知する目的で、器具と皮膚の間で安定して電気的に接続させるために哺乳動物の皮膚に器具を接着させる際に、生体臨床医学用の電極などの医療器具に使用されている。
【0004】
よく知られている組成物としては、事実上イオン性の高分子マトリクスをベースとするものである。類似した組成物としては、一般に傷の手当用品として有効であることも知られている。イオン性基の存在は、ヒドロゲルに高分子電解質の挙動を与える。しかしながら、確かな実用性においては、高分子電解質の性質を有する既知のヒドロゲルの組成は、重大な欠陥をもつことがわかっている。
【0005】
US特許3929741(参照によりこの特許文献の開示を本出願に組み込む。)は、コンタクトレンズや傷の手当用品に使用するための、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)およびこれらの塩をベースとしたアニオン性ヒドロゲルを開示している。
【0006】
US特許4391278(参照によりこの特許文献の開示を本出願に組み込む。)は、生体臨床医学用の電極に使用するための、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)およびこれらの塩を主成分とするアニオン性ヒドロゲルを開示している。
【0007】
US特許5800685(参照によりこの特許文献の開示を本出願に組み込む。)は、生体臨床医学用の電極に使用するための、アクリル酸エステルの第4級塩化物またはアクリル酸エステルの硫酸塩もしくはアクリルアミドの第4級塩化物を主成分とするカチオン性ヒドロゲルを開示している。カチオン性モノマーおよびアニオン性モノマーの共重合体は、一般的なものが記載されているが、具体例は示されていない。ヒドロゲルは、高分子電解質であることが記載されている。
【0008】
上記刊行物上で開示されているゲルは、一般に高分子電解質の挙動を有すると考えられている。高分子電解質のゲルは、大量の水溶液を吸収することが可能であり、これにより構造上の完全性が失われて、有用性が失われることがある。哺乳動物の皮膚接触製品において、水溶性の液体は、たとえば、汗、傷口からの分泌物やバッチングメディア(batching media)から生じる可能性がある。
【0009】
WO−A−91/15250(参照によりこの特許文献の開示を本出願に組み込む。)は、たとえば、スルホン酸のようなペンダント強酸基を有するモノマーと、たとえば少なくとも1のモノマーがN−置換アクリルアミドである第4級アンモニウム塩のような強塩基の基を有するモノマーの共重合反応により形成される両性のヒドロゲルについて開示している。例示されたゲルの多くは、全体的なイオンバランスの結果、両性高分子の特性を示すことが期待されている。ペンダントスルホン酸を有するモノマーが塩として存在する実施例において、ヒドロゲルは、イオン調整されておらず、その結果、高分子電解質の挙動を示すものと思われる。
【0010】
US特許5846558(参照によりこの特許文献の開示を本出願に組み込む。)は、両性イオン性モノマーの重合体および共重合体をベースとしたヒドロゲルを開示している。陰イオンおよび陽イオンは、これらのモノマーの同一分子上にとどまる。この特許文献には、水溶性流動体の吸収については、開示されていない。
【0011】
本発明の目的は、0から高イオン強度を有する水溶性の流動体の吸収に対して少なくともいくらかの耐性を有するイオン性重合体ヒドロゲルを提供することにある。
【0012】
本発明の詳細な説明では、ヒドロゲルを使用することにより、純水の吸収量および含イオン水(たとえば食塩水)の吸収量を望ましい値に調整することができる。
【0013】
本発明の目的は、さらに、少なくともいくつかの実施形態において、所定の種類の水溶性流動体の吸収量が相対的に少なく、水蒸気の透過率が相対的に高いイオン性のヒドロゲルを提供することにある。
【0014】
本発明の目的は、さらに、少なくともいくつかの実施形態において、たとえば生体臨床医学用電極、造孔術用品、失禁用品、投薬用皮膚接触装置、足の手当用品、および補綴術用品を含む医療用品のような多様な用途に使用することのできるイオン性重合体ヒドロゲルを提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、さらに、少なくともいくつかの実施形態において、フィルム形状において、水溶性流動体の吸収量が少ない重合体ヒドロゲル、より好ましくは、公知の重合体ヒドロゲルフィルムと比べて水溶性流動体の吸収量が著しく減少した重合体ヒドロゲルを提供することにある。
【0016】
本発明の目的は、さらに、少なくともいくつかの実施形態において、泡形状および泡/フィルム複合形状における公知の重合体ヒドロゲルと比べて、水溶性流動体の吸収量が著しく減少した泡および泡/フィルム複合形状における重合体ヒドロゲルを提供することにある。
【発明の開示】
【0017】
〔発明の簡単な説明〕
本発明によれば、たとえば皮膚のような哺乳動物の身体組織に使用するのに適切な架橋性重合体ヒドロゲルを提供する。本発明にかかる架橋性重合体ヒドロゲルは、一またはそれ以上のペンダントアニオン性基を含む第1のモノマーと、一またはそれ以上のペンダントカチオン性基を含む第2のモノマーとから形成された架橋性共重合体を含み、前記共重合体に含まれる前記モノマーの相対量は、アニオン性基とカチオン性基とが実質的に等モル量になるような量である。
【0018】
本発明にかかるヒドロゲルは、一またはそれ以上の有機可塑剤を有効量適切に含んだ可塑性のヒドロゲルであることが好ましい。グリセリンのような一またはそれ以上の重合性または非重合性の多価アルコールは、有機可塑剤として好ましい。他の有機可塑剤としては、たとえば、重合性アルコール、多価アルコールのエステル、多価アルコールとホウ酸のエステル(たとえばグリセロール/ホウ酸エステル)を挙げることができる。
【0019】
本発明にかかるヒドロゲルは、さらなる成分として水を適切に含む。さらに、以下に列挙するような成分を、相対的に少量含んでもよい。
【0020】
一実施形態としては、前記アニオン性およびカチオン性基は、酸性基の塩の群と塩基性基の塩の群とから選択されることができる。
【0021】
前記共重合体は、モノマーの架橋反応と共重合反応とが同時に起こることにより形成され、前記共重合体中のアニオン性基のカチオン性基に対するモル比率が実質的に単一に調節されていることが好ましい。
【0022】
本発明にかかるヒドロゲルにおいて、この特性を付与するために、イオン(たとえば重合反応混合物またはヒドロゲルに添加された塩からのイオン)を付加する必要なく良好なイオン移動度が得られた。本発明によれば、ヒドロゲル組成物において、付加的な成分が存在していてもよい。そのような付加的な成分は、たとえば、薬物(たとえば防腐剤、抗菌剤、抗生物質、鎮痛剤、麻酔薬)、湿潤剤(たとえばグリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、端部にメチルエーテルを有するポリエチレングリコール)のような、一またはそれ以上のイオン性および/または非イオン性の化合物を含み、ビタミン、増粘剤(たとえばビニルアセテート−ジオクチルマレアート共重合体)、pH緩衝剤、クエン酸、サリチル酸、界面活性剤、および水溶性高分子(たとえば多糖や合成高分子)であってもよい。
【0023】
第1のモノマーに含まれるペンダント基としては、カルボン酸、リン酸、および/またはスルホン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、および/またはアンモニウム(単独で、もしくは一またはそれ以上の組み合わせ)塩が好ましく、スルホン酸の塩が最も好ましい。第2のモノマーに含まれるペンダント基としては、ハロゲン化物、(たとえば塩化物)、硫酸化物、および/または水酸化物の第4級アンモニウム塩が好ましい。塩化物および硫酸化物が最も好ましい。
【0024】
本発明にかかるヒドロゲルは、水溶液中において、任意には付加的なモノマーとともに、第1および第2のモノマーの重合反応によって適切に生成されることができる。付加的なモノマーは、たとえば、非イオン性モノマーであってもよい。上記の付加的なモノマーの性質および割合は、実質的に等モル量のアニオン性およびカチオン性モノマーから得られる最終的なヒドロゲルの両性重合体の特徴が、実質的に妨害されないようなものであることが必要である。適切な付加的モノマーの非制限的な例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロイルモルホリン、アクリル酸、ビニルピロリドン(N−ビニルピロリドン)、ポリエチレンアクリレート、ポリエチレンメタクリレート、アクリルアミド、N−置換アクリルアミド、大豆エポキシアクリレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、適切な付加的非イオン性モノマーとしては、二官能性、三官能性、多官能性架橋性物質、たとえば、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量約100から約10000)およびメチレンビスアクリルアミドならびにこれらの混合物も含む。
【0025】
必要に応じて、初期重合(プレゲル)混合物は、一またはそれ以上の界面活性剤を含んでもよい。適当な界面活性剤の詳細については、PCT特許出願番号WO−A−00/46319の17〜19ページ「界面活性剤」という見出しがついたセクションを参照されたい。参照によりこの特許文献に記載されている内容は、本発明の開示の一部として組み込まれるものとする。
【0026】
適切な重合触媒を用いた通常のラジカル重合反応によって、水溶液中でモノマーの重合と架橋を同時に行うことにより、本発明のヒドロゲルを生成することができる。上述したラジカル重合反応は、たとえば、加熱、酸化還元、紫外線照射、ガンマ線照射、電子ビーム照射といった当業者にとって公知の開始方法によって開始することができる。紫外線照射による重合開始が好ましい。重合反応混合物は、反応開始過程を補助するために適切な量の一またはそれ以上の重合開始剤を含んでもよい。適当な架橋剤および重合成分ならびに重合条件の詳細については、PCT特許出願番号WO−A−00/46319、特に8ページから11ページに記載されている「架橋および重合」という見出しがついたセクションを参照されたい。参照によりこの特許文献に記載されている内容は、本発明の開示の一部として組み込まれるものとする。
【0027】
本発明にかかるヒドロゲルは、好ましくは層として硬化前のプレゲル混合物を最初に沈殿させることによって、たとえば合成材料、天然材料、またはこれらの混合物から生成された多孔性または非多孔性フィルム、ネット、もしくは不織布のような適切な部材上に成型することにより、形成されることができる。沈殿させたプレゲルは、連続的なフィルム、もしくは島状のような、もしくは泡の層またはかたまりのような形状で適切に存在してもよい。また、不織布やネットなどの多孔性または微細小孔性の材料を封入するように、硬化させたヒドロゲルを形成することもできる。
【0028】
ヒドロゲルの成分、およびより具体的には存在する有機可塑剤とモノマーの相対量を適切に調整することによって、ヒドロゲルによって示される食塩水と比較して純水の相対的な吸収量を調整することができる。この方法では、両性重合体の特性をもつヒドロゲル(優先的に食塩水を吸収)を、たとえば個々の用途のために準備することができる。このように、たとえば、純水より食塩水に強い優先性をもつ両性重合体ヒドロゲルは、雨、淡水中のスポーツ、入浴またはシャワーの耐性の傷または火傷の手当用品(淡水と比べて相対的に少量では、塩分を含んだ体の滲出物は、一般にヒドロゲルを攻撃する)に、有効な生体粘着物質として役立つことができる。
【0029】
その結果、本発明は、皮膚のような哺乳動物の身体組織に接着するための製品に適合する生体粘着部をもつ医療用、健康用、または個人用介護製品として上記に定義されたものと同様にヒドロゲルの使用を有効にする。上述した製品は、装置、検知電極、刺激電極、活性物質のイオン浸透送達装置、受動薬物送達装置、傷の手当用品、足の手当用品、人用失禁のための凝固促進製品、医療器具(たとえば、カテーテル、カニューレ)、造孔術用品、補綴術用品(たとえば、胸部、手足)のような医療用、健康用、個人用介護製品から選択してもよい。製品の主要部は、それらの製品において、一般的にありふれた構造である。生体粘着部は、フィルムまたはシートであってもよく、生体粘着効果が有効利用できるように便利な形態をとってもよい。生体粘着部は、通常の材料を用いた除去可能な解放シート(たとえばシリコン化された紙またはプラスチック)によって、使用前には保護されている。上述した使用および製品は、本発明のさらなる態様を構成する。
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、哺乳動物の皮膚との接触を含む様々な用途に使用するための伝導性および粘着性ヒドロゲルに関する。これらのヒドロゲルは、従来技術と比べて、水溶性流動体の吸収量の著しい減少を与えるものである。
【0030】
アニオン性モノマーとしては、3−スルホプロピルアクリレート(SPA)またはその塩またはその類似体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)またはその塩またはその類似体、もしくはこれらの混合物が好ましい。この文脈で「類縁体」という用語は、特にSPAまたは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)またはこれらの塩の置換誘導体をいうものとする。アニオン性モノマーとしては、SPAまたは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のアルカリ金属(たとえばナトリウムまたはカリウム)塩が好ましく、たとえばAMPSのナトリウム塩が挙げられる。
【0031】
カチオン性モノマーとしては、アクリル酸の第4級アンモニウム塩誘導体またはN−置換アクリルアミドの第4級アンモニウム塩誘導体、もしくはこれらの組み合わせのいずれかであることが好ましい。好ましい例としては、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(たとえば、DMAEA−Q、Kohjin)、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸エステル(たとえば、Aldrichから入手可能)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(たとえば、Kohjinから入手可能)が挙げられる。
【0032】
一般に、ヒドロゲル中のカチオン性モノマーのアニオン性モノマーに対する重量比率がおよそ0.85:1から1.2:1の間にあることができると言われている。
【0033】
特に、ヒドロゲルは、高分子電解質の挙動より、むしろ両性重合体の挙動を示す方が好ましい。高分子電解質の挙動によれば、一般に流動体吸収特性は、食塩水より容易に吸収される純水の存在に特徴があるといわれる。両性重合体の挙動によれば、一般に流体吸収特性は、純水より容易に吸収される食塩水の存在に特徴があるといわれる。
【0034】
イオンバランスのとれた本発明のヒドロゲルにおける両性重合体の挙動は、一般に、ヒドロゲル中のカチオン性モノマーおよびアニオン性モノマーの全含有量が、ヒドロゲル重量の約42%以上の水準であり、および/または、ヒドロゲル中の全モノマー(カチオン性モノマーおよびアニオン性モノマー)に対する有機可塑剤の重量比がおよそ1:3以上(たとえば、およそ1:2以上またはおよそ3:4以上)の水準であることが必要であることが明かになっている。
【0035】
フィルムを形成するための重合反応前のヒドロゲル混合物に含まれるイオン性モノマーの全量は、全組成の重量の約0.2〜60%であり、たとえば、約1〜60%、好ましくは約10〜45%、より好ましくは20〜45%である。よって、アニオン性モノマーのカチオン性モノマーに対するモル比は、約0.8から約1.2までが好ましく、約0.9から約1.1までがより好ましく、約0.95から約1.05までがさらに好ましく、約1が最も好ましい。組成比としては、約10から約80%、より好ましくは約15から約40%の水と、0から約50%、約10から約40%の多価アルコールと、約0.04%から約2%、好ましくは約0.06%から約0.3%の架橋剤と、約0.001%から約0.1%の光開始剤(たとえば、ダラカー(Darocure)1173またはイルガキュア(Irgacure)184またはこれらの混合物)と、好ましくは0〜約10%の薬剤、粘性促進剤などの付加的な添加物とが含まれる。ここで、多価アルコールとしてはグリセロールが好ましく(たとえば、Aldrichから入手可能)、架橋物質としては、ポリエチレングリコールジアクリレート(たとえば、Aldrichから入手可能)が好ましい。
【0036】
泡を形成するための重合反応前のヒドロゲル混合物中において、全組成の重量におけるイオン性モノマーの全体量は、約0.2%〜約60%、たとえば約1%〜約60%、好ましくは約10%〜約45%、より好ましくは約20%〜約45%である。よって、カチオン性モノマーに対するアニオン性モノマーのモル比は、約0.8から約1.2までが好ましく、約0.9から約1.1までがより好ましく、約0.95から約1.05までがさらに好ましく、約1が最も好ましい。組成比としては、約10から約80%、より好ましくは約15から約40%の水と、0から約50%、約10から約40%の多価アルコールと、約0.04%から約2%、好ましくは約0.06%から約0.3%の架橋剤と、好ましくは約0.001%から約0.1%の光開始剤(たとえば、ダラカー1173またはイルガキュア184またはこれらの混合物)と、約0.001%から約10%の界面活性剤と、0〜約10%の薬剤、粘性促進剤などの付加的な添加物とが含まれる。ここで、多価アルコールとしてはグリセロールが好ましく(たとえば、Aldrichから入手可能)、架橋剤としては、ポリエチレングリコールジアクリレート(たとえば、Aldrichから入手可能)が好ましく、界面活性剤としては、たとえば、チバガイギー(Ciba Geigy)製のプルロニック(商標)(P65、L64)のような非イオン性のものが好ましい。
【0037】
一実施形態として、本発明にかかるヒドロゲルの組成は、本質的に、発明の簡単な説明で提示した発明の一般的な定義により明確化された架橋性共重合体からなり、合わせて一以上の水と、任意の一以上の界面活性剤および湿潤剤または可塑剤(たとえば多価アルコール)と、約10%以下、より典型的には約8%以下、より好ましくは約5%以下の一以上の粘性促進剤のようなその他の成分からなる。成分の比率は、上述したとおりである。
【0038】
成分の全てのパーセンテージは重量によって与えられる。
【0039】
ヒドロゲルの成分を混合する工程およびプレゲル混合物を硬化(重合)する工程については、当業者にとって十分理解できるだろう。WO−A−00/46319号のPCT特許出願を参照されたい。特に、より詳細については21ページ〜22ページの「重合条件」という見出しがついた箇所を参照されたい。参照により従来技術の参考文献のこの箇所は、本発明の開示として組み込まれるものとする。
【0040】
重合反応前の混合組成物から、連続的なフィルムは、天然材料および/または合成材料から作られたポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、紙またはネット、泡または不織布のような基板上に前記混合物を塗布することによって形成されることが好ましい。これらの材料は容易に剥がれるようにシリコーン処理されたものであることが好ましい。そして紫外線照射により組成物を硬化させる。硬化処理後、シリコーン皮膜は、ヒドロゲルの露出した表面の上部に配置される。ヒドロゲルフィルムの厚さは、約0.05mm〜約3mmであることができる。
【0041】
本発明の発泡させたヒドロゲルは、前もって混合された混合物を機械的に攪拌し、フィルムについて織布上に塗布することにより適切に形成される。形成された泡は、その膜厚保にわたって多孔性であることができ、泡を保持するフィルムの複合構造が形成されるように塗布されることができる。泡またはフィルム状の泡構造の膜厚は、約0.1mm〜約3mmであることが適切である。
【0042】
本発明にかかるヒドロゲルは、24時間後に、全流動体の重量が最大約2000%に増加し、より好ましくは約1000%に増加することが好ましい。これは、ヒドロゲルの初期重量%として明示された流動体に接触している規定時間に流動体が吸収された重量である。
【0043】
上述したように、本発明のヒドロゲルは、食塩水より純水を吸収するように形成されることができ、その逆も同じである。24時間以上かけて吸収される食塩水に対する純水の重量比は、本発明のヒドロゲルにおいて、約2:1から約1:2の範囲内である。
(実施例)
以下に示す実施例は、単に本発明の一例に含まれるに過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0044】
実施例1
NaAMPS(ルブリゾール)の58%水溶液40.84gを、DMAEA−Q(コージン)の79%水溶液25gおよびグリセロール34.16gと、30分間混合した。この混合物に、光開始剤であるダラカー1173(4重量部)を0.19gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(IRR280、UCB)(20重量部)溶液とを添加し、30分間攪拌した。この混合物を、シリコーン処理されたポリエステル製の裏材に塗布し、UVランプ下を通過させた。混合物は速やかに硬化し、良好な粘着力および接着力を有するゲルを形成した。ゲルの食塩水の吸収量は低かった。
【0045】
実施例2
NaAMPS(ルブリゾール)の58%水溶液20.42gおよび、SPA(カリウム塩)(Raschig)の58%水溶液20.44gを、DMAEA−Q(コージン)の79%水溶液25gと、グリセロール34.16gと、30分間混合した。この混合物に、光開始剤であるダラカー1173(4重量部)を0.19gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(IRR280、UCB)(20重量部)溶液とを添加し、30分間攪拌した。この混合物を、シリコーン処理されたポリエステル製の裏材に塗布し、UVランプ下を通過させた。混合物は速やかに硬化し、良好な粘着力および接着力を有するゲルを形成した。ゲルの食塩水の吸収量は低かった。
【0046】
実施例3
NaAMPS(ルブリゾール)の58%水溶液20.42gを、DMAEA−Q(コージン)の79%水溶液12.5gおよび、グリセロール67.08gと、30分間混合した。この混合物に、光開始剤であるダラカー1173(4重量部)を0.25gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(IRR280、UCB)(20重量部)溶液とを添加し、30分間攪拌した。この混合物を、シリコーン処理されたポリエステル製の裏材に塗布し、UVランプ下を通過させた。混合物は速やかに硬化し、良好な粘着力および接着力を有するゲルを形成した。ゲルの食塩水の吸収量は低かった。
【0047】
実施例4
SPA(カリウム塩)(Raschig)の58%水溶液40.84gを、DMAEA−Q(コージン)の79%水溶液25gおよび、グリセロール34.16gと、30分間混合した。この混合物に、光開始剤であるダラカー1173(4重量部)を0.19gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(IRR280、UCB)(20重量部)溶液とを添加し、30分間攪拌した。この混合物を、シリコーン処理されたポリエステル製の裏材に塗布し、UVランプ下を通過させた。混合物は速やかに硬化し、良好な粘着力および接着力を有するゲルを形成した。ゲルの食塩水の吸収量は低かった。
【0048】
実施例5
NaAMPS(ルブリゾール)の58%水溶液40.84gを、DMAEA−Q(コージン)の79%水溶液25gと、グリセロール34.16gと、プルロニックP65(Ciba Geigy)3gと、30分間混合した。この混合物に、光開始剤であるダラカー1173(4重量部)を0.19gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(IRR280、UCB)(20重量部)溶液とを添加し、30分間攪拌した。この混合物を、機械的に攪拌して発泡した液体を得、シリコーン処理されたポリエステル製の裏材に塗布し、UVランプ下を通過させた。混合物は速やかに硬化し、良好な粘着力および接着力を有するゲルを形成した。DMAEA−QをNaAMPSに置き換えて同様の方法を用いて形成されたゲルと比べて、ゲルの食塩水の吸収量は低かった。
【0049】
実施例6
種々の量のグリセロールを含む本発明のヒドロゲルのサンプルのそれぞれについて、淡水の吸収量と、0.9%食塩水の吸収量を比較するための試験を行った。24時間、淡水と塩水を吸収させ、初期のヒドロゲル100gあたりの吸収量(g)を測定することにより、水分吸収量を重量%にて測定した。
その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
DMAEA−Qは、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、塩化メチル第4級塩である。ゲル中のPI/XLレベルは0.1%4/20である。
【0052】
2つの傾向が現れた。まず第1に、グリセロールの含有量が増加するにつれて、水分吸収量が減少し、ゲルは、水分吸収率のとても低い非イオン性ゲルのような挙動を示すようにみえると思われる。第2の傾向は、グリセロール含有量が高い場合、食塩水の吸収量がきわめて低い間は、実際に水の吸収量より高いことである。グリセロール含有量が低い場合、食塩水の吸収量は、水分吸収量より低い。しかしながら、水分および塩分の吸収実験がより長時間をかけて行われていれば、水分吸収量はグリセロールを含むゲルへ塩分吸収量より高くなる。
【0053】
上述の記載は、本発明を明確にするものであり、これに限定されるものではない。当業者にとって容易に理解できる変形および改良は、この用途および後の特許の範囲内に含まれることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の身体組織に接触する応用製品に適用される架橋性重合体ヒドロゲルであって、
一またはそれ以上のペンダントアニオン性基を有する第1のモノマーおよび一以上のペンダントカチオン性基を有する第2のモノマーから形成された架橋性共重合体を含み、
前記共重合体中の前記モノマーの相対的な量は、アニオン性モノマーとカチオン性モノマーとが実質的に等モル量で存在する量である、ヒドロゲル。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、一またはそれ以上の有機可塑剤を有効量含む、ヒドロゲル。
【請求項3】
請求項2において、
前記有機可塑剤は、グリセロールを含む、ヒドロゲル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
水をさらに含む、ヒドロゲル。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
さらに、一またはそれ以上のその他の材料を、請求項1から請求項4で記載した成分と比べて少量含む、ヒドロゲル。
【請求項6】
請求項5において、
前記一またはそれ以上のその他の材料は、薬剤(たとえば防腐剤、抗菌剤、抗生物質、鎮痛剤、麻酔薬)、湿潤剤(たとえばグリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、端部にメチルエーテルを有するポリエチレングリコール)、ビタミン剤、増粘剤(たとえばビニルアセテート−ジオクチルマレアート共重合体)、pH緩衝剤、クエン酸、サリチル酸、界面活性剤、および水溶性高分子(たとえば多糖や合成高分子)のような、一またはそれ以上のイオン性および/または非イオン性化合物から選択される、ヒドロゲル。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記アニオン性基および前記カチオン性基は、酸性基の塩である基および塩基性基の塩である基から選択される、ヒドロゲル。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記共重合体は、モノマーの架橋反応と、共重合反応とが同時に起こることにより形成され、前記共重合体中のカチオン性基に対するアニオン性基のモル比は、実質的に単一に保たれている、ヒドロゲル。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記第1のモノマーに含まれる前記ペンダントアニオン性基は、カルボン酸、リン酸、および/またはスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、および/またはアンモニウム塩である、ヒドロゲル。
【請求項10】
請求項9において、
前記第1のモノマーは、3−スルホプロピルアクリレート(SPA)またはその塩またはそれらの類縁体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)またはその塩またはそれらの類縁体、またはこれらの混合物から選択される、ヒドロゲル。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1のモノマーは、3−スルホプロピルアクリレート(SPA)のアルカリ金属塩、または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)のアルカリ金属塩から選択される、ヒドロゲル。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかにおいて、
第2のモノマーに含まれる前記ペンダントカチオン性基は、ハロゲン化物、硫酸エステル、および/または水酸化物の第4級アンモニウム塩から選択される、ヒドロゲル。
【請求項13】
請求項12において、
前記第2のモノマーは、アクリル酸誘導体の第4級アンモニウム塩またはN−置換アクリルアミド誘導体の第4級アンモニウム塩、もしくはこれらの組み合わせから選択される、ヒドロゲル。
【請求項14】
請求項13において、
前記第2のモノマーは、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸エステル、およびアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドから選択される、ヒドロゲル。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかにおいて、
ヒドロゲル中のカチオン性モノマーのアニオン性モノマーに対する重量比率は、約0.85:1から1.2:1の範囲内にある、ヒドロゲル。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかにおいて、
前記ヒドロゲルは、高分子電解質の挙動よりも両性高分子の挙動を示す、ヒドロゲル。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかにおいて、
前記ヒドロゲルにおいて、カチオン性モノマーおよびアニオン性モノマーの全含有量は、ヒドロゲルの重量の約42%より大きい、ヒドロゲル。
【請求項18】
請求項2ないし17のいずれかにおいて、
前記ヒドロゲルにおいて、カチオン性モノマーおよびアニオン性モノマーの全量に対する有機可塑剤の重量比率は、約1:3より大きい、ヒドロゲル。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかにおいて、
24時間後における吸収液体重量が最大約2000%であり、より好ましくは約1000%である、ヒドロゲル。
【請求項20】
請求項1ないし19のいずれかにおいて、
24時間後における塩水の重量に対する純水の吸収重量比率は、約2:1から約1:2の範囲内にある、ヒドロゲル。
【請求項21】
皮膚などの哺乳動物の身体組織に対する接着製品に適用される生体粘着部を有する医療用、健康用、または個人介護用製品の生体粘着部としての請求項1ないし20のいずれかに記載のヒドロゲルの使用。
【請求項22】
請求項21において、
前記製品は、検知電極、刺激電極、活性物質のイオン浸透送達装置、受動薬物送達装置、傷の手当用品、足の手当用品、人用失禁のための凝固促進製品、医療器具(たとえば、カテーテル、カニューレ)、造孔術用品、補綴術用品(たとえば、胸部、手足)から選択される、使用。
【請求項23】
皮膚のような哺乳動物の身体組織に対する接着製品に適用される生体粘着部および前記製品のために一般的な構造の部分を含む、医療用、健康用、または個人用介護製品であって、
前記生体粘着部は、請求項1ないし20のいずれかに記載されたヒドロゲルを含む、医療用、健康用、または個人用介護製品。
【請求項24】
請求項23において、
前記製品は、検知電極、刺激電極、活性物質のイオン浸透送達装置、受動薬物送達装置、傷の手当用品、足の手当用品、人用失禁のための凝固促進製品、医療器具(たとえば、カテーテル、カニューレ)、造孔術用品、補綴術用品(たとえば、胸部、手足)から選択される、医療用、健康用、または個人用介護製品。

【公表番号】特表2006−503118(P2006−503118A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−505111(P2004−505111)
【出願日】平成15年5月20日(2003.5.20)
【国際出願番号】PCT/GB2003/002218
【国際公開番号】WO2003/097116
【国際公開日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【出願人】(501044437)ファースト ウォーター リミテッド (1)
【Fターム(参考)】