説明

制御装置

【課題】外乱成分による制御信号の変動を抑制できるとともに、当該制御信号の変動抑制によるフィードバック制御系の応答特性の変動を抑制できる制御装置が求められる。
【解決手段】制御対象の出力が目標値に近づくように制御信号を変化させるフィードバック制御部を備えた制御装置であって、目標値に対して目標値応答予測部の処理を行って第一演算値を算出し、出力に対してノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値を算出し、目標値に対して目標値応答予測部及びノイズ除去フィルタの処理を行って第三演算値を算出し、第二演算値に第一演算値を加算し第三演算値を減算した制御用出力値を算出する処理と数学的に等価な処理を行い、制御用出力値を制御対象の出力として前記フィードバック制御部に入力する制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象の出力が目標値に近づくように制御信号を変化させるフィードバック制御部を備えた制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような制御装置に関して、例えば下記の特許文献1には、制御対象を回転電機とした技術が開示されている。
特許文献1に記載されているような回転電機の制御装置では、回転電機に印加する電圧をパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により制御しており、パルス幅変調の方式には、正弦波PWM、過変調PWM、及び1パルスの同期PWMなどの各種方式がある。
パルス幅変調方式では、回転電機の回転速度が高くなり、1つの交流周期(回転周期)中のPWM周期の数や、フィードバック制御を実行する制御周期の数が少なくなってくると、回転周期と、PWM周期、制御周期のずれに起因する外乱成分としての振動成分が大きくなる。また、1パルスの同期PWMや、過変調PMMの方式の場合には、電圧指令の波形の正弦波からのずれが大きくなるために、回転電機を流れる電流に重畳される外乱成分としての高調波成分が大きくなる。
【0003】
このような、高調波成分の重畳された実電流に基づいて、フィードバック制御を行うと、フィードバック制御部により算出される電圧指令信号にもこの高調波成分が生じる。この電圧指令信号に含まれる高調波成分により、フィードバック制御系が不要な電圧指令信号の変動を発生し、更なる電流振動の原因となり、制御系の安定性を低下させる恐れがある。
【0004】
一方、実電流に対して高調波成分を低減するノイズ除去フィルタ処理を行って、フィルタ後の実電流に基づいてフィードバック制御を行うように構成した場合は、フィルタ処理により、フィードバック制御系の応答特性が変化し、制御系の応答性が悪化する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−81287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、フィードバック制御系に外乱が入力される場合でも、外乱成分による制御信号の変動を抑制できるとともに、当該制御信号の変動抑制によるフィードバック制御系の応答特性の変化を抑制できる制御装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係わる、制御対象の出力が目標値に近づくように制御信号を変化させるフィードバック制御部を備えた制御装置の特徴構成は、前記目標値に対する前記制御対象の出力の応答特性を有する目標値応答予測部を備え、前記目標値に対して前記目標値応答予測部の処理を行って第一演算値を算出し、前記制御対象の出力に対してノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値を算出し、前記目標値に対して前記目標値応答予測部の処理及びノイズ除去フィルタ処理を行って第三演算値を算出し、前記第二演算値に対して第一演算値を加算すると共に第三演算値を減算した値である制御用出力値を算出する処理と数学的に等価な処理である非干渉ノイズ除去フィルタ処理を行い、前記制御用出力値を制御対象の出力として前記フィードバック制御部に入力する点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、制御装置は、目標値に対する制御対象の出力の応答特性を有する目標値応答予測部を備えており、目標値に対する制御対象の出力の予測値を算出可能に構成されている。よって、目標値応答予測部は、制御対象に外乱が入力されず、ノイズ除去フィルタを備えていない状態での、目標値に対する制御対象の予測出力を算出可能である。よって、目標値応答予測部は、外乱が入力されず、ノイズ除去フィルタによる応答特性の変化のない、理想的な状態における制御対象の出力挙動を予測可能である。
非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、制御対象の出力に含まれる外乱成分をノイズ除去フィルタ処理により除去しつつ、目標値応答予測部の演算値を用いることにより、ノイズ除去フィルタによる理想的な出力挙動の位相遅れ及び減衰が生じないようにした制御用出力値を算出することができる。
よって、制御装置は、外乱成分による制御信号の変動を抑制しつつ、ノイズ除去フィルタにより理想的な出力挙動までが位相遅れ及び減衰を生じないようにすることができ、理想的な制御挙動を維持することができる。従って、制御装置は、制御信号の不要な変動により、制御系の安定性が低下することを抑制しつつ、制御信号の変動抑制によるフィードバック制御系の応答特性の変化を抑制できる。
【0009】
また、前記非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、前記目標値に対して前記目標値応答予測部の処理を行って第一演算値を算出し、前記制御対象の出力から前記第一演算値を減算した値に対して、ノイズ除去フィルタ処理を行って第四演算値を算出し、前記第一演算値に第四演算値を加算した値を前記制御用出力値として算出する処理としても好適である。
【0010】
この構成によれば、目標値に対して目標値応答予測部の処理を行って第一演算値を算出しているので、目標値応答予測部は、外乱が入力されず、ノイズ除去フィルタによる応答特性の変化のない、理想的な状態における制御対象の出力挙動を予測することができる。
また、上記の構成によれば、制御対象の出力から理想的な出力挙動となる第一演算値を減算した値に対してノイズ除去フィルタ処理を行っているので、フィルタ処理が行われる値には、理想的な出力挙動が含まれず、外乱などによる理想的な出力挙動からの変動成分が主に含まれる。よって、ノイズ除去フィルタにより、当該変動成分を減衰することができる。
【0011】
そして、上記の構成によれば、ノイズ除去フィルタの出力と理想的な出力挙動となる第一演算値とを加算した値を、制御対象の出力としてフィードバック制御部に入力している。よって、制御装置は、外乱成分による制御信号の変動を抑制しつつ、ノイズ除去フィルタにより理想的な出力挙動までが位相遅れ及び減衰を生じないようにすることができ、理想的な制御挙動を維持することができる。従って、制御装置は、制御信号の不要な変動により、制御系の安定性が低下することを抑制しつつ、制御信号の変動抑制によるフィードバック制御系の応答特性の変化を抑制できる。
【0012】
また、上記の構成によれば、非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、1つの制御用出力値を算出するために、目標値応答予測部の処理及びノイズ除去フィルタ処理をそれぞれ1回ずつ行うだけとされているので、演算負荷を低減することができる。
【0013】
また、前記非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、前記目標値に対して前記目標値応答予測部の処理を行って第一演算値を算出し、前記制御対象の出力に対してノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値を算出し、前記第一演算値から、前記第一演算値に対してノイズ除去フィルタ処理を行った値を減算して第五演算値を算出し、前記第二演算値に第五演算値を加算した値を前記制御用出力値として算出する処理としても好適である。
【0014】
この構成によれば、第二演算値に、第五演算値を加算して制御用出力値を算出することにより、制御対象の出力に含まれる理想的な出力挙動の成分に位相遅れ及び減衰が生じた第二演算値に対して、理想的な出力挙動の成分を抽出した第五演算値を加算して補償することができる。従って、非干渉ノイズ除去フィルタ処理では、制御対象の出力から、ノイズ除去フィルタにより外乱成分を除去しつつ、ノイズ除去フィルタにより位相遅れ及び減衰を生じた理想的な出力挙動を補償して、制御用出力値を算出することができる。すなわち、非干渉ノイズ除去フィルタ処理では、ノイズ除去フィルタ処理により制御対象の出力に含まれる外乱成分を除去しつつ、ノイズ除去フィルタにより理想的な出力挙動までが位相遅れ及び減衰を生じないようにした制御用出力値を算出することができる。
【0015】
また、前記非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、前記制御対象の出力に対してノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値を算出し、前記目標値から、前記目標値に対してノイズ除去フィルタ処理を行った値を減算した第六演算値を算出し、前記第六演算値に対して前記目標値応答予測部の処理を行って第七演算値を算出し、前記第二演算値に第七演算値を加算した値を前記制御用出力値として算出する処理としても好適である。
【0016】
この構成によれば、第二演算値に、第七演算値を加算して制御用出力値を算出することにより、制御対象の出力に含まれる理想的な出力挙動の成分に位相遅れ及び減衰が生じた第二演算値に対して、理想的な出力挙動の成分を抽出した第七演算値を加算して補償することができる。従って、非干渉ノイズ除去フィルタ処理では、制御対象の出力から、ノイズ除去フィルタにより外乱成分を除去しつつ、ノイズ除去フィルタにより位相遅れ及び減衰を生じた理想的な出力挙動を補償して、制御用出力値を算出することができる。すなわち、非干渉ノイズ除去フィルタ処理では、ノイズ除去フィルタ処理により制御対象の出力に含まれる外乱成分を除去しつつ、ノイズ除去フィルタにより理想的な出力挙動までが位相遅れ及び減衰を生じないようにした制御用出力値を算出することができる。
【0017】
また、前記制御対象の出力が、回転電機を流れる実電流であり、前記目標値が、目標電流であり、前記フィードバック制御部は、前記制御信号として前記回転電機に印加する電圧の指令信号である電圧指令信号を変化させると好適である。
【0018】
なお、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0019】
上記の構成によれば、制御対象が回転電機である場合において、目標値応答予測部は、目標電流に対する回転電機を流れる実電流の予測値を算出可能に構成されている。よって、目標値応答予測部は、回転電機に高調波の外乱が入力されず、ノイズ除去フィルタを備えていない状態での、目標電流に対する実電流の予測電流を算出可能である。よって、目標値応答予測部は、高調波の外乱が入力されず、ノイズ除去フィルタによる応答特性の変化のない、理想的な状態における回転電機の実電流の挙動を予測することができる。
非干渉ノイズ除去フィルタ処理では、実電流に含まれる高調波の外乱成分をノイズ除去フィルタ処理により除去しつつ、目標値応答予測部の演算値を用いることにより、ノイズ除去フィルタによる理想的な実電流の挙動の位相遅れ及び減衰が生じないようにした制御用実電流値を算出することができる。
よって、制御装置は、高調波の外乱成分による電圧指令信号の変動を抑制しつつ、ノイズ除去フィルタにより理想的な実電流挙動までが位相遅れ及び減衰を生じないようにすることができ、理想的な実電流挙動を維持することができる。従って、制御装置は、制御信号の不要な変動により、制御系の安定性が低下することを抑制しつつ、電圧指令信号の変動抑制によるフィードバック制御系の応答特性の変化を抑制できる。
【0020】
ここで、前記フィードバック制御部は、前記目標電流と前記実電流との偏差に基づいて、比例演算及び積分演算を行って前記電圧指令信号を算出する比例積分制御器を有し、前記比例積分制御器の比例ゲインは、所定のカットオフ周波数に、前記回転電機のインダクタンスを乗算した値に設定され、前記比例積分制御器の積分ゲインは、前記カットオフ周波数に、前記回転電機の抵抗を乗算した値に設定され、前記目標値応答予測部が有する応答特性は、前記カットオフ周波数の逆数を時定数とする一次遅れ特性であると好適である。
【0021】
この構成によれば、比例ゲイン及び積分ゲインは、回転電機の応答特性に影響するインダクタンス及び抵抗に基づいて設定されているので、フィードバック制御系の応答特性を容易に設計及び管理することができる。また、目標値応答予測部の応答特性は、カットオフ周波数の逆数を時定数とする一次遅れ特性に設定されているので、目標値応答予測部の処理は、所定の時定数の一次遅れ処理とすることができ、目標値応答予測部の処理負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る制御装置の処理を説明するためのブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る制御装置の制御対象を回転電機とした場合の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る回転電機の制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図5のフィードバック制御部の構成の具体例を説明するためのブロック図である。
【図7】本発明の実施形態とは異なる比較例に係わる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態とは異なる比較例を説明するタイムチャートである。
【図9】本発明の実施形態とは異なる比較例を説明するタイムチャートである。
【図10】本発明の実施形態に係わる制御装置の制御挙動を説明するタイムチャートである。
【図11】本発明のその他の実施形態に係わる制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】本発明のその他の実施形態に係わる制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。制御装置30は、制御対象35の出力Cが目標値Rに近づくように制御信号Uを変化させるフィードバック制御部31を備えている。
制御装置30は、更に、目標値応答予測部33と、当該目標値応答予測部33を含む非干渉ノイズ除去フィルタ部34と、を備えている。目標値応答予測部33は、目標値Rに対する制御対象の出力Cの応答特性を有する。非干渉ノイズ除去フィルタ部34は、目標値Rに対して目標値応答予測部33の処理を行って第一演算値Y1を算出し、制御対象の出力Cに対してノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値Y2を算出し、目標値Rに対して目標値応答予測部33の処理及びノイズ除去フィルタ処理を行って第三演算値Y3を算出し、第二演算値Y2に対して第一演算値Y1を加算すると共に第三演算値Y3を減算した値である制御用出力値Cfを算出する処理と数学的に等価な処理である非干渉ノイズ除去フィルタ処理を行い、制御用出力値Cfを制御対象の出力Cとしてフィードバック制御部31に入力する。
【0024】
この制御用出力値Cfを算出する処理は、周波数領域(s領域)では、次式(1)の数式で表せる。

ここで、sは、ラプラス演算子であり、Ge(s)は、目標値応答予測部33の応答特性(伝達関数)であり、Gf(s)は、ノイズ除去フィルタ処理の応答特性(伝達関数)である。
式(1)の制御用出力値Cfを算出する処理と数学的に等価な非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、式(1)の処理の他、以下の式(2)、式(3)、式(4)で表せる処理となる。



なお、非干渉ノイズ除去フィルタ部34が、式(1)で表せる非干渉ノイズ除去フィルタ処理である場合は、図1に示すようになる。
すなわち、非干渉ノイズ除去フィルタ部34は、目標値Rに対して目標値応答予測部33の処理を行って第一演算値Y1を算出し、制御対象の出力Cに対してノイズ除去フィルタ部32によるノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値Y2を算出し、目標値Rに対して目標値応答予測部33の処理及びノイズ除去フィルタ部32によるノイズ除去フィルタ処理を行って第三演算値Y3を算出し、第二演算値Y2に対して第一演算値Y1を加算すると共に第三演算値Y3を減算した値である制御用出力値Cfを算出する。
ここで、二つのノイズ除去フィルタ部32は、同じ応答特性、及び同じフィルタ周波数帯域を有し、二つの目標値応答予測部33は、同じ応答特性、及び同じフィルタ周波数帯域を有する。
【0025】
以下で説明する実施形態は、式(2)で表せる非干渉ノイズ除去フィルタ処理について説明する。
すなわち、式(2)で表せる非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、図2に示すように、目標値Rに対して目標値応答予測部33の処理を行って第一演算値Y1(以下、予測出力Ceと称す)を算出し、制御対象の出力Cから予測出力Ceを減算した値(出力偏差ΔCと称す)に対して、ノイズ除去フィルタ部32によりノイズ除去フィルタ処理を行って第四演算値Y4(以下、フィルタ後出力偏差ΔCfと称す)を算出し、予測出力Ceにフィルタ後出力偏差ΔCfを加算した値を制御用出力値Cfとして算出する処理である。
すなわち、以下で説明する実施形態では、非干渉ノイズ除去フィルタ部34は、目標値応答予測部33と、ノイズ除去フィルタ部32と、を備えている。目標値応答予測部33は、目標値Rに対する制御対象の出力Cの応答特性を有し、目標値Rに対する制御対象の出力Cの予測値である予測出力Ceを算出する。ノイズ除去フィルタ部32は、制御対象の出力Cから予測出力Ceを減算した出力偏差ΔCに対して、ノイズ除去のフィルタ処理を行う。そして、ノイズ除去フィルタ部32の出力であるフィルタ後出力偏差ΔCfと予測出力Ceとを加算した制御用出力値Cf(以下、制御用出力Cfと称す)が、制御対象の出力としてフィードバック制御部31に入力される。
フィードバック制御系には、制御信号Uに対する外乱Dh1や、制御対象に内在する外乱Dh2などの外乱が加わる。
以下、本実施形態に係る制御装置30について、詳細に説明する。
【0026】
1.フィードバック制御部31
フィードバック制御部31は、制御対象の出力Cが目標値Rに近づくように制御信号Uを変化させるフィードバック制御を行う。フィードバック制御部31は、PID制御などの各種のフィードバック制御を用いることができる。制御信号Uは、制御対象を制御するための制御信号である。制御信号Uは、制御対象に直接入力されてもよく、或いは、アクチュエータ等を介して制御対象に入力されてもよい。すなわち、制御信号Uは、アクチュエータに入力され、アクチュエータによる操作量が制御対象に入力されてもよい。
【0027】
2.非干渉ノイズ除去フィルタ部34
非干渉ノイズ除去フィルタ部34は、目標値応答予測部33及びノイズ除去フィルタ部32を備えており、制御対象の出力C及び目標値Rに基づいて、制御用出力Cfを算出する。
2−1.目標値応答予測部33
目標値応答予測部33は、目標値Rに対する制御対象の出力Cの応答特性を有している。より詳細には、目標値応答予測部33は、図3に示すように、フィードバック制御部31と制御対象35とを合せた応答特性を有している。すなわち、目標値応答予測部33は、フィードバック制御部31及び制御対象35からなるフィードバック制御系において、目標値Rに対する制御対象の出力Cの応答である目標値応答に相当する応答特性を有している。ここで、図3に示す目標値応答予測部33に係わるフィードバック制御系は、図2に示す現実のフィードバック制御系とは異なり、外乱が入力されず、外乱によるノイズ成分を除去するノイズ除去フィルタを備えていない。
目標値応答予測部33の応答特性は、フィードバック制御部31及び制御対象35からなるフィードバック制御系の応答特性を、モデル化した応答特性であり、図3に示すように、フィードバック制御部31及び制御対象35のそれぞれの応答特性を表したフィードバック制御部のモデル31a及び制御対象のモデル35aからなる応答特性であってもよいし、低次元化した応答特性であってもよい。
【0028】
目標値応答予測部33は、フィードバック制御系の目標値応答に相当する応答特性を用いて、目標値Rに対する制御対象の出力Cの予測値である予測出力Ceを算出する。
目標値応答予測部33は、図3に示すように、外乱が入力されず、ノイズ除去フィルタを備えていない状態で、目標値Rに対する制御対象の予測出力Ceを算出する。よって、目標値応答予測部33により算出される予測出力Ceは、外乱が入力されず、ノイズ除去フィルタによる応答特性の変化のない、理想的な状態における制御対象の出力挙動となる。
【0029】
2−2.ノイズ除去フィルタ部32
ノイズ除去フィルタ部32は、制御対象の出力Cから予測出力Ceを減算した出力偏差ΔCに対して、ノイズ除去のフィルタ処理を行う。
図2に示すフィードバック制御系に対して外乱Dh1、Dh2が入力されると、制御対象の出力Cに外乱Dh1、Dh2による変動成分が含まれる。一方、予測出力Ceは、外乱の影響のない理想的な出力挙動となるため、制御対象の出力Cから予測出力Ceを減算することにより、制御対象の出力Cから、外乱による変動成分を取り出すことができる。また、外乱による影響以外に、制御対象の出力Cが、予測出力Ceから変動した場合でも、変動成分を取り出すことができる。
【0030】
よって、ノイズ除去のフィルタ処理が行われる出力偏差ΔCには、理想的な出力挙動が含まれず、理想的な出力挙動からの変動成分が主に含まれる。すなわち、出力Cに含まれる理想的な出力挙動成分に対しては、ノイズ除去のフィルタ処理が行われないようにすることができ、外乱の影響などにより理想的な出力挙動から変動した出力Cの成分に対して、ノイズ除去のフィルタ処理を行うようにすることができる。
【0031】
本実施形態では、ノイズ除去フィルタ部32は、ローパスフィルタや、バンドストップフィルタなど、所定の周波数帯域(以下、フィルタ周波数帯域と称す)の信号成分を減衰するフィルタを備えている。
例えば、フィルタ周波数帯域は、外乱に含まれる周波数成分のうち、除去したい周波数帯域に設定される。これにより、フィードバック制御系に反映させたくない周波数帯域の外乱成分をフィルタし、それ以外の周波数帯域の外乱成分をフィルタせずに、フィードバック制御系に反映させることができる。よって、理想的な出力挙動から変動した出力Cの成分の内、除去したい周波数帯域の変動成分を減衰させ、それ以外の変動成分を残すことができる。
なお、ノイズ除去フィルタ部32は、複数のフィルタを備え、各フィルタに異なるフィルタ周波数帯域が設定されるように構成されてもよい。
【0032】
2−3.制御用出力Cfの算出
非干渉ノイズ除去フィルタ部34は、ノイズ除去フィルタ部32の出力ΔCfと予測出力Ceとを加算して制御用出力Cfを算出する。制御用出力Cfは、制御対象の出力としてフィードバック制御部31に入力される。
すなわち、出力Cから理想的な出力挙動を減算した後ノイズ除去した値に対して、再び理想的な出力挙動が加算されて、フィードバック制御部31に入力される。
【0033】
よって、出力Cに含まれる理想的な出力挙動成分に対しては、ノイズ除去のフィルタ処理が行われずに、外乱などによる理想的な出力挙動からの出力変動成分に対して、ノイズ除去のフィルタ処理が行われるようにすることができる。従って、フィードバック制御部31は、ノイズ除去フィルタにより、除去したい周波数帯域の外乱成分の影響を低減しつつ、ノイズ除去フィルタにより、理想的な出力挙動が応答遅れを生じ、減衰されるなど影響を受けないようにすることができ、理想的な制御挙動を維持することができる。
このため、ノイズ除去フィルタのフィルタ周波数帯域及びフィードバック制御系の応答性を互いに分離して設定することができる。従って、フィードバック制御系の応答性を、外乱成分の応答性よりも低く設定するだけでなく、フィードバック制御系の応答性を、外乱成分の応答性よりも高くすることも可能になる。
【0034】
また、理想的な出力挙動からの出力変動成分の内、除去したい周波数帯域の変動成分以外の変動成分をフィードバック制御部31に入力させることができる。従って、出力Cが、除去したい周波数帯域以外の外乱成分によって変動した場合には、当該変動を検出し、目標値Rに近づけるようにフィードバックを行うことができる。よって、除去を意図していない外乱に対してのフィードバック性能を確保できる。
【0035】
3.回転電機の制御装置
次に、制御対象を回転電機MGとし、フィードバック制御系を、回転電機を流れる電流をフィードバック制御する系とする場合の例について説明する。この場合は、制御対象の出力Cが、回転電機MGを流れる実電流Icであり、目標値Rが、目標電流Irであり、フィードバック制御部31は、制御信号Uとして回転電機MGに印加する電圧の指令信号である電圧指令信号Vuを変化させる。すなわち、フィードバック制御部31は、回転電機を流れる実電流Icが目標電流Irに近づくように回転電機に印加する電圧の指令信号である電圧指令信号Vuを変化させる。
【0036】
以下では、制御対象を回転電機MGとし、図2で示した場合と同様に、式(2)で表せる非干渉ノイズ除去フィルタ処理を行う場合を説明する。
すなわち、制御対象を回転電機MGとした場合の、式(2)で表せる非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、図4に示すように、目標電流Irに対して目標値応答予測部33の処理を行って第一演算値Y1(以下、予測電流Iceと称す)を算出し、回転電機MGを流れる実電流Icから予測電流Iceを減算した値ΔIc(以下、電流偏差ΔIcと称す)に対して、ノイズ除去フィルタ部32によりノイズ除去フィルタ処理を行って第四演算値Y4(以下、フィルタ後の電流偏差ΔIcfと称す)を算出し、予測電流Iceにフィルタ後の電流偏差ΔIcfを加算した値を制御用実電流Icfとして算出する処理である。
【0037】
すなわち、以下で説明する実施形態では、目標値応答予測部33は、目標電流Irに対する回転電機MGを流れる実電流Icの応答特性を有し、目標電流Irに対する回転電機を流れる実電流の予測値である予測電流Iceを算出する。ノイズ除去フィルタ部32は、実電流Icから予測電流Iceを減算した値ΔIcに対してノイズ除去のフィルタ処理を行う。そして、ノイズ除去フィルタ部32の出力ΔIcfと予測電流Iceとを加算した値Icfを、回転電機を流れる実電流としてフィードバック制御部31に入力する。この場合でも、目標値応答予測部33及びノイズ除去フィルタ部32を備え、実電流Ic及び目標電流Irに基づいて、制御用実電流Icfを算出する機能部を、非干渉ノイズ除去フィルタ部34とする。
フィードバック制御系には、電圧指令信号Vuに対する高調波の外乱Dh1や、回転電機に内在する高調波の外乱Dh2などの外乱が加わる。
以下、回転電機の制御装置30について、詳細に説明する。
【0038】
3−1.回転電機MG
回転電機MGは、ステータとロータを有している。図5に示すように、回転電機MGは、直流交流変換を行うインバータINを介して蓄電装置に電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。インバータINは、蓄電装置の直流電力を交流電力に変換して回転電機MGを駆動するため、或いは回転電機MGが発電した交流電力を直流電力に変換して蓄電装置に充電するための複数のスイッチング素子を備えている。
本実施形態に係わる回転電機MGは、三相交流により動作する同期電動機である。本実施形態では、回転電機MGは、ロータに永久磁石を備え、ステータにコイルを備えた、永久磁石同期電動機とされている。なお、永久磁石の代わりに、電磁石が備えられていてもよい。
【0039】
3−2.回転電機の制御装置30
図5に示すように、回転電機の制御装置30は、目標電流Ird、Irqに対して、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行うように構成されている。
ベクトル制御では、ロータに備えられた磁石のN極の向き(磁極位置)にd軸を定め、これより電気角でπ/2進んだ方向にq軸をとり、ロータの電気角での回転に同期して回転するd軸及びq軸からなるdq軸回転座標系を設定する。ここで、U相コイルを基準にd軸(磁極位置)の進み角(電気角)が磁極位置θreとして定義されている。そして、ベクトル制御では、目標電流Ird、Irqをdq軸回転座標系で設定し、各相のコイルに流れる三相実電流Icu、Icv、Icwを、磁極位置θreに基づき、dq軸回転座標系で表した二相実電流Icd、Icqに変換し、二相実電流Icd、Icqが二相目標電流Ird、Irqに近づくように回転電機MGに印加する電圧を制御する電流フィードバック制御を行う。
【0040】
本実施形態では、回転電機の制御装置30は、目標電流演算部40、実電流演算部41、電流フィードバック制御部52、53、二相三相電圧変換部43、及びインバータ制御部44の機能部を備えており、各機能部が協働して、電流フィードバック制御を行うように構成されている。
また、本実施形態に係わる回転電機の制御装置30では、二相実電流Icd、Icqのそれぞれに対して非干渉ノイズ除去フィルタ部50、51が備えられている。
【0041】
3−2−1.目標電流演算部40
目標電流演算部40は、回転電機MGを流れる目標電流をdq軸回転座標系で表した二相目標電流Ird、Irqを演算する。二相目標電流Ird、Irqは、例えば、回転電機MGに出力させるトルクの目標値などに基づいて算出される。
【0042】
3−2−2.実電流演算部41
実電流演算部41は、回転電機MGを流れる実電流Icu、Icv、Icwに基づいて、dq軸回転座標系で表した二相実電流Icd、Icqを演算する。本実施形態では、実電流演算部41は、電流センサSe1の入力信号に基づいて各相のコイルを流れる三相実電流Icu、Icv、Icwを検出する。そして、実電流演算部41は、三相実電流Icu、Icv、Icwを、磁極位置θreに基づいて、三相二相変換及び回転座標変換を行って、dq軸回転座標系で表した二相実電流であるd軸実電流Icd及びq軸実電流Icqに変換する。
なお、制御装置30は、回転速度センサSe2の入力信号に基づいて、回転電機MGの磁極位置θre、磁極位置θreの回転速度(角速度)である磁極回転速度ωreを検出する。ここで、磁極位置θre及び磁極回転速度ωreは、ロータの回転角度及び回転速度(角速度)を電気角で表したものである。なお、入力軸回転速度センサSe2として、レゾルバ、又はロータリエンコーダなどが用いられる。
【0043】
3−2−3.二相三相電圧変換部43
二相三相電圧変換部43は、電流フィードバック制御部52、53が算出した二相電圧指令信号Vud、Vuqを、三相の電圧指令信号Vuu、Vuv、Vuwに変換する。すなわち、dq軸回転座標系で表した二相電圧指令信号Vud、Vuqを、磁極位置θreに基づいて、固定座標変換及び二相三相変換を行って、三相それぞれのコイルへの電圧指令信号である三相電圧指令信号Vuu、Vuv、Vuwに変換する。
【0044】
3−2−4.インバータ制御部44
インバータ制御部44は、三相電圧指令信号Vuu、Vuv、Vuwに基づき、インバータINが備える複数のスイッチング素子をオンオフ制御するインバータ制御信号Suvwを生成する。
本実施形態では、インバータ制御部44は、三相電圧指令信号Vuu、Vuv、Vuwとキャリア波との比較に基づく各種のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により、インバータ制御信号Suvwを生成する。インバータINが備える複数のスイッチング素子は、インバータ制御信号Suvwに基づきオンオフ制御される。
パルス幅変調の方式には、正弦波PWM、空間PWM、過変調PWM、1パルスの同期PWMなどがあり、各PWM方式が切り替え可能に構成されてもよい。
【0045】
3−2−5.電流フィードバック制御部52、53
電流フィードバック制御部52、53は、二相実電流Icd、Icqが二相目標電流Ird、Irqに近づくように、回転電機MGに印加する電圧の指令信号をdq軸回転座標系で表した二相電圧指令信号Vud、Vuqを変化させる。
本実施形態では、電流フィードバック制御部52、53は、次式(5)及び図6(a)に示すように、二相目標電流Ird、Irqと二相実電流Icd、Icqとの偏差に基づいて、比例演算及び積分演算を行って比例積分制御による二相電圧指令信号Vud_pi、Vuq_piを算出する比例積分制御器(PI制御器)を有している。

ここで、Kpdは、d軸比例ゲインであり、Kpqは、q軸比例ゲインであり、Kidは、d軸積分ゲインであり、Kiqは、q軸積分ゲインである。
本実施形態では、次式(6)に示すように、比例ゲインKpd、Kpqは、所定のカットオフ周波数ωfに、回転電機のd軸及びq軸のインダクタンスLd、Lqを乗算した値に設定され、積分ゲインKid、Kiqは、カットオフ周波数ωfに、回転電機の抵抗Rmを乗算した値に設定される。

また、本実施形態では、制御装置30に、次式(7)及び図6(a)に示すように、電流フィードバック制御部52、53に加えて非干渉器54、55、56が備えられており、非干渉器54、55、56の算出値ΔVud、ΔVuqが、比例積分制御による二相電圧指令信号Vud_pi、Vuq_piに加算されて、最終的な二相電圧指令信号Vud、Vuqが算出される。

ここで、Φは、磁石による鎖交磁束である。
【0046】
回転電機の応答特性、すなわち、二相電圧指令信号Vud、Vuqに対する二相実電流Icd、Icqの応答特性は、図6(a)及び次式(8)に示すように表せる。

図6(a)及び式(8)から、回転電機の応答特性において、d軸実電流Icd及びq軸実電流Icqが互いに干渉していることがわかる。また、q軸実電流Icqには、鎖交磁束Φの項が干渉している。制御装置30に備えられた非干渉器54、55、56により、二相実電流間Icd、Icq間の干渉及び鎖交磁束Φの干渉を打ち消して、非干渉化するように構成されている。
すなわち、式(7)に示すように、非干渉器54、55、56の算出値ΔVud、ΔVuqが比例積分制御による二相電圧指令信号Vud_pi、Vuq_piに加算されて、二相電圧指令信号Vud、Vuqが算出されることにより、式(8)の干渉項を打ち消すことができる。
【0047】
よって、非干渉器54、55、56を備えることにより、図6(b)に示すように、d軸実電流Icd及びq軸実電流Icqを、互いに干渉しない、独立した電流フィードバック制御系とすることができる。すなわち、図6(b)及び次式(9)に示すように、比例積分制御によるd軸電圧指令信号Vud_piに対するd軸実電流Icdの応答特性、及び比例積分制御によるq軸電圧指令信号Vuq_piに対するq軸実電流Icqの応答特性を、インダクタンスLd、Lq及び抵抗Rmを用いた一次遅れで表せる。

【0048】
また、本実施形態では、電流フィードバック制御部52、53は、比例積分制御器を有しており、比例ゲインKpd、Kpq及び積分ゲインKid、Kiqは、式(6)に示したように、インダクタンスLd、Lq、回転電機の抵抗Rm、カットオフ周波数ωfに基づいて設定されている。よって、各電流フィードバック制御部52、53と回転電機を合わせた応答特性は、図6(c)及び次式(10)で示すように、カットオフ周波数ωfのゲインを有する積分器で表せる。

【0049】
更に整理すると、二相目標電流Ird、Irqに対する二相実電流Icd、Icqの応答特性は、図6(d)及び次式(11)で示すように、カットオフ周波数ωfの逆数の時定数を有する一次遅れで表せる。

よって、目標値応答予測部33の処理は、所定の時定数の一次遅れ処理の簡単な演算で行うことができる。
【0050】
3−2−6.非干渉ノイズ除去フィルタ部50、51
図5に示すように、制御装置30は、d軸電流用の非干渉ノイズ除去フィルタ部50、及びq軸電流用の非干渉ノイズ除去フィルタ部51を備えている。各非干渉ノイズ除去フィルタ部50、51は、それぞれ図4に示す非干渉ノイズ除去フィルタ部34の構成、すなわち、d軸電流用及びq軸電流用の目標値応答予測部33及びノイズ除去フィルタ部32を備えている。
3−2−6−1.目標値応答予測部33
上記したように、フィードバック制御部31及び回転電機からなるフィードバック制御系の目標値応答は、式(11)に示すような、カットオフ周波数ωfの逆数の時定数を有する一次遅れで表せる。
これに対応して、目標値応答予測部33が有する応答特性は、式(11)に示すような、カットオフ周波数ωfの逆数を時定数とする一次遅れ特性に設定されている。
すなわち、目標値応答予測部33は、d軸電流及びq軸電流のそれぞれについて、目標電流Irに対して、カットオフ周波数ωfの逆数を時定数とする一次遅れ処理を行った値を、予測電流Iceとして算出する。
よって、目標電流Irに対する一次遅れの実電流挙動が、理想的な出力挙動となる。
【0051】
3−2−6−2.ノイズ除去フィルタ部32
ノイズ除去フィルタ部32のフィルタ周波数帯域は、電圧指令信号Vuに対する高調波の外乱Dh1として、インバータ制御部44で生じる高調波の外乱の周波数帯域に設定されている。
インバータ制御部44は、回転電機の回転周期の交流信号となる三相電圧指令信号Vuu、Vuv、Vuwと、当該三相電圧指令信号の周波数より高い周波数(高調波)を有するキャリア波とを比較して、インバータINのスイッチング素子をオンオフ制御している。このため、キャリア波を用いたスイッチング素子のオンオフ制御により、電圧指令信号Vuに対してキャリア波の周波数(高調波)の外乱成分が付加され、実電流の高調波の外乱成分となって表れる。特に、回転電機の回転速度が高くなり、1つの交流周期(回転周期)中のPWM周期(キャリア波)の数や、フィードバック制御を実行する制御周期の数が少なくなってくると、回転周期と、PWM周期、制御周期のずれに起因する外乱成分としての高調波成分が大きくなる。
また、1パルスの同期PWMや、過変調PMMの方式の場合には、電圧指令の波形の正弦波からのずれが大きくなるために、回転電機を流れる電流に重畳される外乱成分としての高調波成分が大きくなる。
また、回転電機は、回転電機に内在する高調波の外乱Dh2として、回転に伴い、高調波のトルク変動(コギングトルク)を発生し、このトルク変動が、実電流の高調波の外乱成分となって表れる。
よって、ノイズ除去フィルタ部32のフィルタ周波数帯域は、これらの高調波の外乱成分の周波数帯域に設定されている。
従って、フィードバック制御部31は、高調波の周波数帯域の外乱成分の影響を低減しつつ、理想的な制御挙動を維持することができる。
【0052】
3−2−7.制御挙動
次に、図7から図10を参照して、制御挙動を説明する。
<本実施形態とは異なる挙動(比較例)>
まず、図7から図9を参照して、本実施形態とは異なる比較例に係わる制御装置60における比較例の制御挙動を説明する。
この比較例に係わる制御装置60は、図7に示すように、非干渉ノイズ除去フィルタ部34を備えず、実電流Icが、直接又はノイズ除去フィルタ部62のみを介してフィードバック制御部61に入力される。
【0053】
図8に、実電流Icが直接フィードバック制御部61に入力される場合の制御挙動の比較例を示す。
図8に示すような所定の周波数の高調波の外乱Dh1が、電圧指令信号Vuに付加されている。この外乱Dh1により、実電流Icに、外乱Dh1と同じ周波数の高調波の外乱成分が生じている。図8に示す比較例では、実電流Icが直接フィードバック制御部61に入力されているため、時刻t11で目標電流Irがステップ変化した後、実電流Icは、理想的な制御挙動に対して応答遅れを生じていない。一方、実電流Icにおける高調波の外乱成分も直接フィードバック制御部61に入力されているため、電圧指令信号Vuに不要な高調波成分が生じている。この不要な電圧指令信号Vuが、更なる電流振動の原因となり、制御系の安定性を低下させる恐れがある。なお、PI制御などの通常のフィードバック制御では、高調波の外乱のような周期的に変動する外乱に対して、外乱成分を十分に低減できない。
従って、図8に示す比較例では、制御挙動に応答遅れが生じることを抑制できるが、電圧指令信号Vuに無駄な高調波成分が生じ、制御系の安定性が低下することを抑制できていない。
【0054】
図9に、実電流Icがノイズ除去フィルタ部62を介してフィードバック制御部61に入力される場合の制御挙動の比較例を示す。
図8の場合と同じように、図9に示すような所定の周波数の高調波の外乱Dh1が、電圧指令信号Vuに付加されている。この外乱Dh1により、実電流Icに、外乱Dh1と同じ周波数の高調波の外乱成分が生じている。図9に示す比較例では、実電流Icがノイズ除去フィルタ部62を介してフィードバック制御部61に入力されているため、制御用実電流Icfは、実電流Icに対してなまされており、時刻t21で目標電流Irがステップ変化した後、電圧指令信号Vuの挙動に遅れが生じ、実電流Icは、理想的な制御挙動に対して応答遅れを生じている。図9に示す例では、フィードバック制御系の一次遅れ特性のカットオフ周波数(時定数の逆数)と、高調波の外乱成分の周波数が近い。このため、ノイズ除去フィルタのフィルタ周波数帯域と、フィードバック制御系の一次遅れ特性のカットオフ周波数が近くなり、理想的な出力挙動に対するノイズ除去フィルタの出力(制御用実電流Icf)の位相遅れが大きくなっている。
一方、実電流Icにおける高調波の外乱成分もノイズ除去フィルタ部62を介してフィードバック制御部61に入力されているため、電圧指令信号Vuの高調波成分が低減できている。
従って、図9に示す比較例では、電圧指令信号Vuに無駄な高調波成分が生じることを防止できるが、制御挙動に遅れが生じている。
【0055】
<本実施形態の挙動>
次に、本実施形態に係わる制御装置30の制御挙動について、図10に示すタイムチャートに従って説明する。すなわち、図4に示すように、実電流Icが非干渉ノイズ除去フィルタ部34を介してフィードバック制御部31に入力される場合の制御挙動を示す。
本例でも、図8及び図9の場合と同じように、図10に示すような所定の周波数の高調波の外乱Dh1が、電圧指令信号Vuに付加されている。この外乱Dh1により、実電流Icに、外乱Dh1と同じ周波数の高調波の外乱成分が生じている。図10に示す例では、実電流Icが非干渉ノイズ除去フィルタ部34を介してフィードバック制御部31に入力されているため、制御用実電流Icfは、実電流Icに含まれる高調波の外乱成分が減衰されているが、実電流Icに含まれる理想的な制御挙動の成分は位相遅れ及び減衰を生じていない。
また、図10に示す例のように、フィードバック制御系の一次遅れ特性のカットオフ周波数と、高調波の外乱成分の周波数が近い場合でも、ノイズ除去フィルタのフィルタ周波数帯域及びフィードバック制御系の応答性を互いに分離して設定することができている。
よって、時刻t31で目標電流Irがステップ変化した後、実電流Icは、理想的な制御挙動に対して応答遅れを生じていない。また、電圧指令信号Vuの高調波成分が低減できている。
【0056】
次に、非干渉ノイズ除去フィルタ部34のより詳細な制御挙動を説明する。
目標値応答予測部33は、目標電流Irに対する回転電機の実電流Icの予測値である予測電流Iceを算出する。図10に示す例では、目標値応答予測部33の応答特性は一次遅れ特性に設定されているため、予測電流Iceは、時刻t31の目標電流Irのステップ変化に対して、一次遅れ的に変化している。
実電流Icから予測電流Iceを減算した電流偏差ΔIcには、理想的な出力挙動が含まれず、高調波の外乱成分となっている。すなわち、実電流Icに含まれる理想的な出力挙動の成分に対しては、ノイズ除去のフィルタ処理が行われないようにでき、外乱の影響などにより理想的な出力挙動から変動した実電流Icの成分に対して、ノイズ除去のフィルタ処理を行うようにすることができている。
ノイズ除去フィルタ部32のフィルタ周波数帯域は、高調波の外乱成分の周波数帯域に設定されており、電流偏差ΔIcに含まれる高調波の外乱成分が減衰されて、フィルタ後の電流偏差ΔIcfが算出されている。
【0057】
非干渉ノイズ除去フィルタ部34は、フィルタ後の電流偏差ΔIcfと予測電流Iceとを加算して、制御用実電流Icfを算出している。従って、非干渉ノイズ除去フィルタ部34は、高調波の周波数帯域の外乱成分の影響を低減しつつ、ノイズ除去フィルタにより理想的な出力挙動が位相遅れ及び減衰を生じないようにすることができ、理想的な制御挙動を維持することができる。
【0058】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0059】
(1)上記の実施形態においては、非干渉ノイズ除去フィルタ部34は、式(2)、図2に示すような非干渉ノイズ除去フィルタ処理で構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、非干渉ノイズ除去フィルタ部34は、式(3)、図11、又は式(4)、図12に示すような、式(1)と数学的に等価な非干渉ノイズ除去フィルタ処理により構成にされてもよい。
【0060】
式(3)で表せる非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、図11に示すように、目標値Rに対して目標値応答予測部33の処理を行って第一演算値Y1を算出し、制御対象の出力Cに対してノイズ除去フィルタ部32によるノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値Y2を算出し、第一演算値Y1から、第一演算値Y1に対してノイズ除去フィルタ部32によるノイズ除去フィルタ処理を行った値を減算して第五演算値Y5を算出し、第二演算値Y2に第五演算値Y5を加算した値を制御用出力値Cfとして算出する処理である。ここで、二つのノイズ除去フィルタ部32は、同じ応答特性、及び同じフィルタ周波数帯域を有する。
【0061】
第二演算値Y2は、制御対象の出力Cに対してノイズ除去フィルタ処理を行って算出されるため、制御対象の出力Cに含まれる外乱成分だけでなく、理想的な出力挙動の成分にも位相遅れ及び減衰が生じる場合がある。
また、図11に示す、第一演算値Y1から、第一演算値Y1に対してノイズ除去フィルタ処理を行った値を減算して第五演算値Y5を演算する処理、すなわち式(3)における(1−Gf(s))の処理は、ノイズ除去フィルタのフィルタ周波数帯域の信号成分を通過するフィルタとなる。例えば、ノイズ除去フィルタがローパスフィルタである場合はハイパスフィルタとなり、ノイズ除去フィルタがバンドストップフィルタである場合はバンドパスフィルタとなる。このフィルタ処理により、第一演算値Y1に含まれるフィルタ周波数帯域の信号成分を通過させた値が第五演算値Y5として算出される。よって、第五演算値Y5は、理想的な出力挙動となる第一演算値Y1(予測出力)から、ノイズ除去フィルタにより位相遅れ及び減衰が生じる成分のみを取り出した値となる。
よって、第二演算値Y2に、第五演算値Y5を加算して制御用出力値Cfを算出することにより、制御対象の出力Cに含まれる理想的な出力挙動の成分に位相遅れ及び減衰が生じた第二演算値Y2に対して、理想的な出力挙動の成分を抽出した第五演算値Y5を加算して補償することができる。
従って、非干渉ノイズ除去フィルタ部34は、制御対象の出力Cから、ノイズ除去フィルタにより外乱成分を除去しつつ、ノイズ除去フィルタにより位相遅れ及び減衰を生じた理想的な出力挙動を補償して制御用出力値Cfを算出することができる。
【0062】
また、式(4)で表せる非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、図12に示すように、制御対象の出力Cに対してノイズ除去フィルタ部32によるノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値Y2を算出し、目標値Rから、目標値Rに対してノイズ除去フィルタ部32によるノイズ除去フィルタ部32によるノイズ除去フィルタ処理を行った値を減算した第六演算値Y6を算出し、第六演算値Y6に対して目標値応答予測部33の処理を行って第七演算値Y7を算出し、第二演算値Y2に第七演算値Y7を加算した値を制御用出力値Cfとして算出する処理である。ここで、二つのノイズ除去フィルタ部32は、同じ応答特性、及び同じフィルタ周波数帯域を有する。
【0063】
この図12に示す場合は、図11の場合と比べて、目標値応答予測部33の処理と、フィルタ周波数帯域の信号成分を通過するフィルタの処理との順序が入れ替わっているが、第七演算値Y7は、図11の第五演算値Y5と同様に、理想的な出力挙動から、ノイズ除去フィルタにより位相遅れ及び減衰が生じる成分のみを取り出した値となる。従って、図12に示す非干渉ノイズ除去フィルタ部34も、制御対象の出力Cから、ノイズ除去フィルタにより外乱成分を除去しつつ、ノイズ除去フィルタにより位相遅れ及び減衰を生じた理想的な出力挙動を補償して制御用出力値Cfを算出することができる。
【0064】
(2)上記の実施形態においては、制御対象を回転電機MGとした場合に、目標値応答予測部33は、式(11)及び図6(d)に示すような、一次遅れ特性を備えており、目標電流Irに対する実電流の予測値である予測電流Iceを算出するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、目標値応答予測部33は、フィードバック制御部31と回転電機とを合せた応答特性を有していればよく、例えば、目標値応答予測部33は、図6(c)(b)及び式(10)に示すような処理を行うように構成されてもよい。或いは、目標値応答予測部33は、図6(a)及び式(5)、式(7)、式(8)に示すような処理を行うように構成されてもよい。
【0065】
(3)上記の実施形態においては、制御対象を回転電機MGとした場合のフィードバック制御部31は、図6(a)、及び式(5)、式(6)に示すように、目標電流Irと実電流Icとの偏差に基づいた比例積分制御器(PI制御器)を有し、比例ゲインKpは、所定のカットオフ周波数ωfに、回転電機MGのインダクタンスLd、Lqを乗算した値に設定され、積分ゲインKiは、カットオフ周波数ωfに、回転電機MGの抵抗Rmを乗算した値に設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、制御対象を回転電機MGとした場合のフィードバック制御部31として、PI制御以外の各種のフィードバック制御を用いた制御器を用いることができる。或いは、フィードバック制御部31の比例ゲインKp及び積分ゲインKiを、式(6)以外の値に設定されてもよい。また、制御装置30は、非干渉器54、55、56を備えないように構成されてもよい。
この場合でも、目標値応答予測部33は、フィードバック制御部31と回転電機とを合せた応答特性を有しているので、図3及び図6(a)に示すような、制御装置30の応答特性と回転電機MGの応答特性とを有するフィードバック制御系のモデルを用いて、目標電流Irに対する実電流の予測値である予測電流Iceを算出することができる。
【0066】
(4)上記の実施形態においては、目標値応答予測部33は、フィードバック制御部31と回転電機MGとを合せた応答特性を有している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、制御装置30が、フィードフォワード制御器などのフィードバック制御部31以外の制御器を備える場合は、目標値応答予測部33は、フィードバック制御部31以外の制御器の応答特性も備えるように構成されてもよい。
なお、上記の実施形態における非干渉器54、55、56は、フィードフォワード制御器に相等し、目標値応答予測部33は、非干渉器54、55、56の応答特性も備えている。
【0067】
(5)上記の実施形態においては、制御対象が回転電機MGである場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、制御対象を回転電機以外の対象としてもよく、例えば、制御装置30は、クラッチやボールベアリング機構などを制御対象としてサーボ制御を行う、或いは内燃機関などの回転体を制御対象として回転速度制御やトルク制御を行うように構成されてもよい。
【0068】
(6)上記の実施形態においては、制御装置30の応答特性が連続系である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、制御装置30は、上記の実施形態における連続系の応答特性が離散化された応答特性を備えるように構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、制御対象の出力が目標値に近づくように制御信号を変化させるフィードバック制御部を備えた制御装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
30 :制御装置
31 :フィードバック制御部
32 :ノイズ除去フィルタ部
33 :目標値応答予測部
34 :非干渉ノイズ除去フィルタ部
35 :制御対象
R :目標値
U :制御信号
C :制御対象の出力
Ce :予測出力
Cf :制御用出力(制御用出力値)
Dh1 :外乱
Dh2 :外乱
MG :回転電機
IN :インバータ
40 :目標電流演算部
41 :実電流演算部
43 :二相三相電圧変換部
44 :インバータ制御部
50 :d軸非干渉ノイズ除去フィルタ部
51 :q軸非干渉ノイズ除去フィルタ部
52 :d軸電流フィードバック制御部
53 :q軸電流フィードバック制御部
Ir :目標電流
Vu :電圧指令信号
Ic :実電流
Ice :予測電流
Icf :制御用実電流
Ird :d軸目標電流
Irq :q軸目標電流
Vud :d軸電圧指令信号
Vuq :q軸電圧指令信号
Vud_pi:比例積分制御によるd軸電圧指令信号
Vuq_pi:比例積分制御によるq軸電圧指令信号
Icd :d軸実電流
Icq :q軸実電流
Kid、Kiq :積分ゲイン
Kpd、Kpq :比例ゲイン
ωf :カットオフ周波数
Ld、Lq:インダクタンス
Rm :抵抗
Φ :鎖交磁束
Y1 :第一演算値
Y2 :第二演算値
Y3 :第三演算値
Y4 :第四演算値
Y5 :第五演算値
Y6 :第六演算値
Y7 :第七演算値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の出力が目標値に近づくように制御信号を変化させるフィードバック制御部を備えた制御装置であって、
前記目標値に対する前記制御対象の出力の応答特性を有する目標値応答予測部を備え、
前記目標値に対して前記目標値応答予測部の処理を行って第一演算値を算出し、
前記制御対象の出力に対してノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値を算出し、
前記目標値に対して前記目標値応答予測部の処理及びノイズ除去フィルタ処理を行って第三演算値を算出し、
前記第二演算値に対して第一演算値を加算すると共に第三演算値を減算した値である制御用出力値を算出する処理と数学的に等価な処理である非干渉ノイズ除去フィルタ処理を行い、
前記制御用出力値を制御対象の出力として前記フィードバック制御部に入力する制御装置。
【請求項2】
前記非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、
前記目標値に対して前記目標値応答予測部の処理を行って第一演算値を算出し、
前記制御対象の出力から前記第一演算値を減算した値に対して、ノイズ除去フィルタ処理を行って第四演算値を算出し、
前記第一演算値に第四演算値を加算した値を前記制御用出力値として算出する処理である請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、
前記目標値に対して前記目標値応答予測部の処理を行って第一演算値を算出し、
前記制御対象の出力に対してノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値を算出し、
前記第一演算値から、前記第一演算値に対してノイズ除去フィルタ処理を行った値を減算して第五演算値を算出し、
前記第二演算値に第五演算値を加算した値を前記制御用出力値として算出する処理である請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記非干渉ノイズ除去フィルタ処理は、
前記制御対象の出力に対してノイズ除去フィルタ処理を行って第二演算値を算出し、
前記目標値から、前記目標値に対してノイズ除去フィルタ処理を行った値を減算した第六演算値を算出し、
前記第六演算値に対して前記目標値応答予測部の処理を行って第七演算値を算出し、
前記第二演算値に第七演算値を加算した値を前記制御用出力値として算出する処理である請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御対象の出力が、回転電機を流れる実電流であり、前記目標値が、目標電流であり、前記フィードバック制御部は、前記制御信号として前記回転電機に印加する電圧の指令信号である電圧指令信号を変化させる請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記フィードバック制御部は、前記目標電流と前記実電流との偏差に基づいて、比例演算及び積分演算を行って前記電圧指令信号を算出する比例積分制御器を有し、
前記比例積分制御器の比例ゲインは、所定のカットオフ周波数に、前記回転電機のインダクタンスを乗算した値に設定され、前記比例積分制御器の積分ゲインは、前記カットオフ周波数に、前記回転電機の抵抗を乗算した値に設定され、
前記目標値応答予測部が有する応答特性は、前記カットオフ周波数の逆数を時定数とする一次遅れ特性である請求項5に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−247914(P2012−247914A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118025(P2011−118025)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】