説明

加工条件設定装置

【課題】多品種少量生産にも容易に対応することができるようにした自動加工設備における加工条件設定装置を提供すること。
【解決手段】はんだペースト印刷機用ローダ1とはんだペースト印刷機2、はんだペースト印刷機用アンローダ3を備え、未処理のプリント回路基板Aにはんだペースト印刷処理を施して、ペースト印刷済プリント回路基板Bに加工処理するはんだペースト印刷ラインにおいて、はんだペースト印刷機2にはんだペースト印刷機用無線ICタグリーダ4を設け、プリント回路基板Aに添付してある無線ICタグTからデータを読み込み、はんだペースト印刷機2によるはんだペースト印刷処理に必要な加工条件が、無線ICタグTから無線ICタグリーダ4が読み込んだデータにより自動的に設定されるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動加工設備における加工条件の設定装置に係り、特に自動加工処理ラインによる多品種少量生産に適した加工条件設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば半導体回路基板の製造ラインなど、各種製造設備についての自動化は目覚ましく、しかも、このとき、加工対象部品が変更され、新たに異なった仕様の加工対象部品が加工工程に供給されたときにも、それに応じて加工条件が個々に新たに設定されるようにした自動加工設備も一般化されるようになっている。
【0003】
ところで、ここにいう加工とは、溶接処理やハンダ付けなどの各種の機械加工、部品の搭載や組立、検査などの処理のことであり、また、加工対象部品とは、加工対象となる回路基板などの部品又は製品のことであるが、このときの製造設備における加工条件の設定には、従来からバーコードラベルを加工対象部品に添付する方法が用いられている。
【0004】
この方法は、加工対象部品に、当該部品の特定に必要な製造番号や分割番号を情報として印刷したバーコードラベルを貼付し、当該部品が自動加工工程にもたらされたとき、それに貼付されているバーコードラベルをバーコードリーダで読み取り、自動加工工程に保有されているNCデータの中から、当該機器に対応したNCデータを選択し、加工条件として設定するようになっているのが一般的である。
【0005】
また、このようにバーコードラベルから与えられた製造番号や分割番号は、他の製造ラインにおいて、自動組立設備や自動検査設備、製作指示図面表示システムといった設備にも与えられ、処理すべき製品機種の特定にも使用されるようになっている。
【0006】
一方、近年、無線ICタグが実用化されるにつれ、これを用いて製造管理の効率化を図ることを狙いとしたシステムが幾つか提案されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
そして、この特許文献1では、無線ICを使用し、これを対象となる機器に付随させ、当該機器の製造から最終販売までの処理の履歴を確立し記録する方法について開示している。ここで、無線ICとは、RFID(Radio Frequency Identification)のことで、情報を記憶するためのICチップにアンテナを備え、電波による呼び掛けに応じて電波により応答するチップの総称である。
【特許文献1】特表2002−536726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術は、加工対象部品の多様化に配慮がされているとは言えず、自動加工設備の多品種少量生産対応が困難であるという問題がある。
【0009】
バーコードラベルから情報を得るためには、当該ラベルの読み取りを要する。従って、読み取りに際しては、それが貼付されている加工対象部品の予め決められている部分にバーコードリーダを移動させ、バーコードラベルに位置決めする必要があり、これに対応して、バーコードラベルが各加工対象部品において、その正しい位置に貼付されている必要がある。
【0010】
このとき、多品種少量生産対応の場合は、製品機種が多種多様に渡るので、バーコードラベルの貼付位置を同じに保つのが難しく、場合によっては、全く異なった位置になってしまう。このため、自動化された工程においては、加工対象部品が変更されると、それまでのバーコードリーダの位置のままでは読み取りができなくなってしまう場合があり、読み取り位置を変えなくはならないが、この場合、新たな読み取り位置を知ろうにも、そもそもバーコードが読み取れない。
【0011】
このためバーコードラベルによる従来技術では、バーコードラベルの貼付を製品機種毎に管理する必要があり、この場合、作業に多大の工数が掛ってしまう上、製品機種によっては、バーコードラベル自体の貼付ができない場合も生じてしまうことになり、従って、この従来技術では、多品種少量生産対応が困難になってしまうという問題が生じてしまうのである。
【0012】
また、このバーコードラベルによる従来技術の場合、バーコードラベルの貼付位置にズレがあったり、バーコードラベルに擦れがあった場合には、たとえ貼付位置が正しかったとしても、自動化された工程に備え付けのバーコードリーダでは読み取りできない場合があり、従って、バーコードラベルが貼付された加工対象部品の取り扱いに細心の管理が要求されることになり、この点でも多品種少量生産対応が困難になってしまう。
【0013】
本発明の目的は、多品種少量生産にも容易に対応することができるようにした自動加工設備における加工条件設定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、自動加工設備による加工対象部品の加工に必要な加工条件を、当該自動加工設備に設定するための加工条件設定装置において、前記加工対象部品に添付されている無線ICタグからデータを読み込むための無線ICタグリーダを前記自動加工設備に設け、前記自動加工設備は、前記加工対象部品が前記自動加工設備に搬入されたとき、前記無線ICタグから、前記無線ICタグリーダにより読み込んだデータを前記加工条件として設定するようにして達成される。
【0015】
このとき前記無線ICタグから読み込まれるデータに、前記加工条件を表わすデータと前記加工対象部品の製品機種を表わすデータの少なくとも2種が含まれているようにしても上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無線ICタグに製品機種固有の加工条件を書き込んでいるので、加工対象部品が自動化された工程にもたらされただけで、この工程で必要とする加工条件が、当該無線ICタグの加工対象部品に対する保持位置にかかわらず、個々に新たに設定できる。
【0017】
従って、本発明によれば、製品機種が突然変更されたとしても、当該加工対象部品の加工に必要な条件(加工条件)が常に正確確実に設定できることになり、多品種少量生産にも柔軟に、且つ容易に対応することができる。
【0018】
しかも、このとき、本発明によれば、無線ICタグが加工対象部品に添付されていさえすればよいので、取り付け位置についての管理はほとんど必要無く、また、無線ICタグリーダの位置についても同様であり、従って、この点でも多品種少量生産に容易に、且つ柔軟に対応することができる。
【0019】
また、本発明によれば、製品機種固有の加工条件が無線ICタグに書き込まれているので、工程には、複数の製品機種に対応して、予め扱う必要がある製品機種を想定し、それら製品機種固有の加工条件を多数保持させておく必要がなく、このため、いかなる製品機種の変更にも直ちに対応することができる。
【0020】
ここで、本発明で使用されている無線ICタグは、バーコードラベルの場合と異なり、製品に保持されていれば、その位置に関係なくアクセスすることができるので、バーコードラベルのように製品に貼り付けた座標を製品機種毎に管理する必要がなく、従って、工数を大幅に削減することができ、しかもバーコードラベルの場合は、データ読み取り時、製品をライン上で停止させる必要があったが、無線ICタグではラインを通過するだけで読み取りができるため、製品製作時間が短縮され、タクトタイムの向上につながる。
【0021】
また、バーコードラベルによる自動組立設備のNCデータ切替えの場合はデータ量に制限があるので、製品機種固有の製造条件まで情報を登録するのは困難であり、そのためには数多くのバーコードラベルを製品に貼付しなければならないので、実現性に乏しいが、本発明によれば、無線ICタグを用いているので、バーコードラベルとは比較にならない程、多量の情報が保持でき、従って、多品種にも容易に、しかも決め細かく対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明による加工条件設定装置について、図示の実施の形態により詳細に説明すると、ここで、図1と図2は、本発明を、例えばプリント回路基板の回路部品搭載設備などの自動加工設備に適用した場合の一実施形態で、この場合、自動加工設備は、図1に示すはんだペースト印刷ラインと、図2に示す自動部品組立ラインで構成されており、加工対象部品はプリント回路基板となる。
【0023】
そして、まず、図1に示したはんだペースト印刷加工ラインは、図示のように、はんだペースト印刷機用ローダ1と、はんだペースト印刷機2、はんだペースト印刷機用アンローダ3で構成されている。そして、このはんだペースト印刷機用アンローダ3には、はんだペースト印刷機用無線ICタグリーダ4が設けてある。なお、プリント回路基板はPCB(:Printed Circuit Boad)と略称される場合もある。
【0024】
次に、図2に示した自動部品組立ラインは、図示のように、自動部品組立ライン用ローダ5、チップ部品搭載機6、SOP部品搭載機7、QFP部品搭載機8、リフロー装置9、自動部品組立ライン用アンローダ10で構成されている。ここでSOP(Small Outline Package)とQFP(Quad Flat Package)は、夫々プリント回路基板搭載用としてパッケージ化された半導体回路素子のことである。
【0025】
このとき、まずチップ部品搭載機6にはチップ部品搭載機用無線ICタグリーダ11が、次にSOP部品搭載機7にはSOP部品搭載機用無線ICタグリーダ12が、そしてQFP部品搭載機8にはQFP部品搭載機用無線ICタグリーダ13が、それにリフロー装置9にはリフロー装置用無線ICタグリーダ14が夫々設けてある。
【0026】
従って、この実施形態のように、プリント回路基板に部品を搭載する設備の場合は、はんだペースト印刷ライン(図1)と、この後、プリント回路基板に部品を搭載するための自動部品組立ライン(図2)で構成されていることになり、このとき、はんだペースト印刷機用ローダ1に未処理のプリント回路基板Aが供給された後、ここから順次、はんだペースト印刷機2にロード(装填)されるのを待つことになる。
【0027】
そこで、いま、未処理のプリント回路基板Aがはんだペースト印刷機2に装着されたとすると、はんだペースト印刷機用アンローダ3により、はんだペースト印刷処理された基板、つまりペースト印刷済プリント回路基板Bが取り出され、自動部品組立ライン用ローダ5に供給される。
【0028】
そこで、このペースト印刷済プリント回路基板Bは、まず、自動部品組立ライン用ローダ5によりチップ部品搭載機6に装着され、チップ部品の搭載処理が施されてチップ部品搭載済プリント回路基板Cに加工された後、次に、SOP部品搭載機7に搬送されてSOP部品搭載済プリント回路基板Dに加工され、更にQFP部品搭載機8に搬送されてQFP部品搭載済プリント回路基板Eに逐次加工処理される。
【0029】
そして、最終的にリフロー装置9に搬送され、リフロー処理された後、自動部品組立ライン用アンローダ10から全部品搭載済プリント回路基板Fとして取り出されることになるが、このときプリント回路基板Aには無線ICタグTが添付されていて、これには予め所定のフォーマットに従って、当該無線ICタグTの添付先となるプリント回路基板Aの製品機種固有の製造条件がデータとして格納されていて、これが各加工位置に設けてある無線ICタグリーダの夫々により読み込まれるようになっている。
【0030】
ここで、図3は、このとき無線ICタグTに格納されるデータのフォーマットを示したもので、まずメモリ領域R1には、この無線ICタグTが添付される製品機種を特定する製造番号Xが格納され、次のメモリ領域R2には、当該製品を製作する単位である分割番号Yが格納される。そして3番目のメモリ領域は予備として残し、後のメモリ領域R4からメモリ領域R8には、各加工部分での加工条件を表わすデータが記憶項目W、X、Y、Zとして格納されている。
【0031】
そこで、これらメモリ領域R4からメモリ領域R8について、具体的に説明すると、まず、メモリ領域R4は、はんだペースト印刷機2の加工条件を書き込む領域であり、このため記憶項目Wには、これがはんだペースト印刷機2の加工条件であることを示すデータが書き込まれる。そして、この後、記憶項目Xにはコンベア速度を表わすデータが書込まれ、記憶項目Yにははんだペースト印刷圧力を表わすデータが書込まれ、記憶項目Zにははんだペースト印刷速度を表わすデータが書き込まれる。
【0032】
次に、メモリ領域R5は、チップ部品搭載機6の加工条件を書き込む領域で、このとき記憶項目Wにはコンベア速度が書込まれ、記憶項目Xにはチップ部品搭載圧力が書込まれ、記憶項目Yにはチップ部品搭載速度が書込まれるが、このときも記憶項目Zは予備となっている。
【0033】
また、メモリ領域R6は、SOP部品搭載機7の加工条件を書き込む領域で、このとき記憶項目Wには、コンベア速度が書込まれ、記憶項目XにはSOP部品搭載圧力が書込まれ、記憶項目YにはSOP部品搭載速度が書込まれるが、このときも記憶項目Zは予備となっている。
【0034】
次に、メモリ領域R7は、QFP部品搭載8の加工条件を書き込む領域で、このとき記憶項目Wにはコンベア速度が書込まれ、記憶項目XにはQFP部品搭載圧力が書込まれ、記憶項目YにはQFP部品搭載速度が書込まれるが、このときも記憶項目Zは予備となっている。
【0035】
そして、メモリ領域R8は、リフロー装置9の加工条件を書き込む領域で、このとき記憶項目Wにはコンベア速度が書込まれ、記憶項目Xにはリプローはんだ付け温度が書込まれるが、この場合、記憶項目Yと記憶項目Zは予備となっている。
【0036】
このとき、上記したチップ部品搭載圧力とSOP部品搭載圧力、それにQFP部品搭載圧力については、何れも部品をプリント回路基板に押し込む量で規定され、一般には押し込み圧の基準値に対する%値で表わされている。
【0037】
一方、はんだペースト印刷機2とチップ部品搭載機6、SOP部品搭載機7、QFP部品搭載機8、それにリフロー装置9には、図示されていないが、各々独自に制御部を備えられている。そして、まず、はんだペースト印刷機2では、そこでの加工に必要な加工条件として、コンベア速度とはんだペースト印刷圧力、それにはんだペースト印刷速度が、そこに独自に備えられている制御部により制御されるようになっている。
【0038】
同様に、チップ部品搭載機6では、そこでの加工に必要な加工条件として、コンベア速度とチップ部品搭載圧力、それにチップ部品搭載速度が、そこに備えられている制御部により制御され、次にSOP部品搭載機7では、そこでの加工に必要な加工条件として、コンベア速度とSOP部品搭載圧力、それにSOP部品搭載速度が、そこに備えられている制御部により制御され、更にQFP部品搭載機8では、そこでの加工に必要な加工条件として、コンベア速度とQFP部品搭載圧力、それにQFP部品搭載速度が、そこに備えられている制御部により制御される。
【0039】
そして、更にリフロー装置9では、そこでの加工に必要な加工条件として、コンベア速度とリフローはんだ付け温度が、そこに備えられている制御部により制御されるが、このとき、各制御部、つまり、はんだペースト印刷機2とチップ部品搭載機6、SOP部品搭載機7、QFP部品搭載機8、それにリフロー装置9の各制御部では、各々での加工に必要な加工条件を、各々の無線ICタグリーダにより無線ICタグTから読み込んだデータに依存して制御を実行するように構成されている。
【0040】
従って、まず、はんだペースト印刷機2の制御部は、はんだペースト印刷機用無線ICタグリーダ4により、無線ICタグTのメモリ領域R4からデータを読み込み、それを、ここでのはんだペースト印刷に必要な加工条件として設定し、次に、チップ部品搭載機6の制御部は、チップ部品搭載機用無線ICタグリーダ11により、無線ICタグTのメモリ領域R5からデータを読み込み、それを、ここでのチップ部品搭載に必要な加工条件として設定する。
【0041】
同様に、SOP部品搭載機7の制御部は、SOP部品搭載機用無線ICタグリーダ12により、無線ICタグTのメモリ領域R6からデータを読み込み、それを、ここでのSOP部品搭載に必要な加工条件として設定し、同じくQFP部品搭載機8の制御部は、QFP部品搭載機用無線ICタグリーダ13により、無線ICタグTのメモリ領域R7からデータを読み込み、それを、ここでのQFP部品搭載に必要な加工条件として設定する。
【0042】
そして、リフロー装置9の制御部は、リフロー装置用無線ICタグリーダ14により、無線ICタグTのメモリ領域R8からデータを読み込み、それを、ここでのはんだリフロー処理に必要な加工条件として設定することになる。
【0043】
ここで、いま、無線ICタグを用意し、これに、この図3に示したデータを書き込んで無線ICタグTとし、これをプリント回路基板に添付させ、プリント回路基板Aとしてはんだペースト印刷機用ローダ1にセットして処理を開始させたとする。そうすると、当該プリント回路基板Aがはんだペースト印刷機2のコンベアで搬送され、無線ICタグリーダ4が備え付けられた箇所を通過して行くようになるが、このとき、無線ICタグリーダ4により無線ICタグTからデータが受信され、はんだペースト印刷機2の制御部にデータが読み込まれる。
【0044】
そこで、このとき制御部は、図4のフローチャートに示す処理を実行するように構成されている。そして、この図4のフローチャートによる処理は、はんだペースト印刷ラインと自動部品組立ラインの稼働立ち上げにより開始される。なお、この制御部としてはCPUを用いるのが一般的であり、この場合、CPUに格納したプログラムにより処理が実行されることになる。
【0045】
そこで、制御部は、図4のフローチャートに示す処理を開始したら、まず、CPUの初期化を実行する(ステップS1)。次いで、無線ICタグリーダにより、無線ICタグからデータが受信されのを待つ(ステップS2)。そして、データが受信されたら、まず、メモリ領域R1、R2のデータを調べ、それを制御部の中にある製品機種メモリに記録されているデータと比較する(ステップS3)。
【0046】
ここで、ステップS3での結果がYES(肯定)、つまりデータが一致したら、既に同じ製品機種の加工対象部品、このときはプリント回路基板が、このはんだペースト印刷機2により処理されていたことを意味するので、このときはステップS6にジャンプする。一方、結果がNO(否定)、つまりデータが不一致の場合は、初期化された後の場合と、製品機種が変更されたことを意味するので、このときは、次のステップS4に進む。
【0047】
ステップS4では、制御部の製品機種メモリに記録されている製品機種データを、いま、受信したデータのメモリ領域R1、R2に記録されている製品機種データに書き替える。なお、ステップS1の処理により初期化されていた場合は新たなデータが書き込まれることになるが、この場合も書き替えには変わりない。
【0048】
次のステップS5では、受信したデータの中で対応した処理用データのメモリ領域W、X、Y、Zからデータを取り出し、それらを加工条件として設定する。このとき受信したデータの中で対応した処理用データの選択は、メモリ領域の認識による。すなわち、受信したデータのメモリ領域R3〜R8は、夫々の処理に割り当てられているからであり、このときは、はんだペースト印刷機2の場合なので、これに割り当てられているメモリ領域R4を選択することになる。
【0049】
なお、このステップS5においても、既に加工条件が設定されていた場合はデータの書き替え設定になり、初期化されていたとすれば、新たなデータの書き込みによる設定になる。そして、この後、ステップS6により、当該処理部による加工処理(このときははんだペースト印刷機2による加工処理)を実行して処理を終了する。
【0050】
一方、ステップS3で結果がYESのときは、前述したように、既に同じ加工条件が設定されていたことを意味するので、そのままステップS6にジャンプし、既に設定されている加工条件のもとで当該処理部、すなわち、はんだペースト印刷機2による加工処理を実行し、処理された加工対象部品、すなわち、ペースト印刷済プリント回路基板Bがはんだペースト印刷機用アンローダ3から取り出され、自動部品組立ライン用ローダ5に供給されるようにして処理を終了する。
【0051】
そして、以後、図2の自動部品組立ラインによる処理に移行し、前述したように、チップ部品搭載機6によりペースト印刷済プリント回路基板Bにチップ部品が搭載されてチップ部品搭載済プリント回路基板Cに加工され、SOP部品搭載機7によりSOP部品搭載済プリント回路基板Dに加工され、更にQFP部品搭載機8によりQFP部品搭載済プリント回路基板Eに逐次加工処理され、最終的にリフロー装置9から全部品搭載済プリント回路基板Fとして取り出されることになるが、このとき、各々の制御部で図4の処理が実行され、この結果、夫々における加工条件が自動的に設定されることになる。
【0052】
従って、この実施形態によれば、プリント配線基板など加工対象部品の製品機種が突然変更されたとしても、当該加工対象部品の加工に必要な加工条件が新たに自動的に設定されるので、多品種少量生産にも柔軟に、且つ容易に対応することができる。
【0053】
しかも、このとき、この実施形態によれば、無線ICタグTが加工対象部品に添付されていさえすればよいので、プリント配線基板Aに対する取り付け位置についての管理はほとんど必要無く、また、無線ICタグリーダ4などの位置についても同様であり、従って、この点でも多品種少量生産に柔軟に容易に対応することができる。
【0054】
また、この実施形態では、プリント配線基板など加工対象部品の製品機種固有の加工条件が無線ICタグTに書き込まれているので、はんだペースト印刷機2などの加工設備側には、予め扱う必要がある複数の製品機種を想定し、それら製品機種固有の加工条件を多数保持させておく必要がなく、このため、いかなる製品機種の変更にも直ちに対応することができる。
【0055】
しかも、この無線ICタグTは、バーコードラベルの場合と異なり、プリント配線基板に保持されてさえいれば、その位置に関係なくアクセスしてデータを読み込むことができるので、バーコードラベルのように製品に貼り付けた座標を製品機種毎に管理する必要がなく、従って、工数を大幅に削減することができ、しかもバーコードラベルの場合は、データ読み取り時、製品をライン上で停止させる必要があったが、無線ICタグではラインを通過するだけで読み取りができるため、製品製作時間が短縮され、タクトタイムの向上につながる。
【0056】
また、バーコードラベルの場合はデータ量に制限があるので、製品機種固有の製造条件まで情報を登録するのは困難であり、そのためには数多くのバーコードラベルを製品に貼付しなければならないので、実現性に乏しいが、この実施形態では無線ICタグTを用いているので、バーコードラベルとは比較にならない程、多量の情報が保持でき、従って、多品種にも容易に、しかも決め細かく対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による加工条件設定装置をはんだペースト印刷ラインに適用した場合の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明による加工条件設定装置を自動部品組立ラインに適用した場合の一実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態において無線ICタグに書き込まれているデータフォーマットの説明図である。
【図4】本発明の一実施形態における制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1:はんだペースト印刷機用ローダ
2:はんだペースト印刷機
3:はんだペースト印刷機用アンローダ
4:はんだペースト印刷機用無線ICタグリーダ
5:自動部品組立ライン用ローダ
6:チップ部品搭載機
7:SOP部品搭載機
8:QFP部品搭載機
9:リフロー装置
10:自動部品組立ライン用アンローダ
11:チップ部品搭載機用無線ICタグリーダ
12:SOP部品搭載機用無線ICタグリーダ
13:QFP部品搭載機用無線ICタグリーダ
14:リフロー装置用無線ICタグリーダ
A:未処理のプリント回路基板
B:ペースト印刷済プリント回路基板
C:チップ部品搭載済プリント回路基板
D:SOP部品搭載済プリント回路基板
E:QFP部品搭載済プリント回路基板
F:全部品搭載済プリント回路基板
T:無線ICタグ(RFIDタグ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動加工設備による加工対象部品の加工に必要な加工条件を、当該自動加工設備に設定するための加工条件設定装置において、
前記加工対象部品に添付されている無線ICタグからデータを読み込むための無線ICタグリーダを前記自動加工設備に設け、
前記自動加工設備は、前記加工対象部品が前記自動加工設備に搬入されたとき、前記無線ICタグから、前記無線ICタグリーダにより読み込んだデータを前記加工条件として設定することを特徴とする加工条件設定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加工条件設定装置において、
前記無線ICタグから読み込まれるデータに、前記加工条件を表わすデータと前記加工対象部品の製品機種を表わすデータの少なくとも2種が含んでいることを特徴とする加工条件設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−279827(P2007−279827A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102044(P2006−102044)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】