説明

加熱部材、定着装置、画像形成装置及び加熱部材の製造方法

【課題】高い耐久性、高い熱伝導性を備えつつ、さらにフィラー部分へのトナーの固着をも防止した加熱部材、定着装置、画像形成装置を提供する。
【解決手段】加熱源を備え、記録紙上に担持されるトナー像を加熱してトナー像を記録紙上に定着させるための加熱部材13において、シリコーンゴム17を備え、さらにシリコーンゴム17に、酸化物半導体16を表面に有するフッ素系樹脂粒子を添加し、さらにフッ素系樹脂粒子を加熱源と接触するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の定着装置に用いる加熱部材、定着装置、画像形成装置に関するものであり、特に詳細には、高い耐久性、高い熱伝導性を備え、トナー固着の発生を防止した加熱部材、定着装置、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機、ファクシミリ、プリンター等、トナーを用いた画像形成装置の定着装置としては一般的に熱ローラ定着装置又はベルト定着装置が用いられる。
ローラ又はベルトを使用した定着装置においては、定着用部材と呼称される加熱部材を介して、熱をトナーに伝える必要がある。ここで、熱ローラ又はベルトの対のローラ間に形成されるニップ部に、未定着のトナー像を担持した記録紙を通過させることにより、トナーを加熱により溶融し、記録紙に固定する構成となっている。
特にカラーの画像を向上させるためには、加熱部材は、均一な温度で、十分な接触をとることにより熱の受け渡しを行わなければならない。そのため、柔らかさと熱伝導性を兼ね備え、かつ表面にかかる応力に耐え、耐久性の高くかつ離型性の高いものが要求されている。
一般的に、加熱部材に使用される材質には、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性に優れたゴム系の材料が用いられることが多く、特に、カラー画像に使用される材質には、柔らかいゴム層が画質をさせる向上の点で重要となっている。
しかしながら、これら耐熱性ゴム材料は熱伝導性が低いという欠点があるために、熱源からの熱を被記録材に伝える際には熱抵抗層となってしまうという技術的な問題があった。さらに、これらの耐熱性ゴム材料は、離型性が悪いため、最表面には、フッ素系の樹脂層を備えることが、高い画質を形成する上で必須となっている。
しかしながら、前記フッ素系樹脂層は、表面の硬度が高いために、画質の劣化を招くという技術的な問題があり、加えて、耐摩耗性の向上及び熱伝導率を向上させるためにフィラーを添加した場合には、その部分でのトナー固着が発生しやすいという問題があった。
一方、前記フッ素系樹脂を用いずに加熱部材を構成する従来の技術としては、特許文献1に、ゴム層が側鎖にフルオロアルキル基を有するフロロシリコーンを含有するシリコーンゴムからなる定着用部材が開示させている。また、特許文献2には、表層面としてフッ素ゴムとジメチルシリコーンゴムの混合物を有するゴム離型層が形成され、このゴム離型層がフッ素ゴムの連続層にジメチルシリコーンゴムが島状に分散相を形成した構造を有している定着用部材が開示されている。
【特許文献1】特開2006−18173公報
【特許文献2】特開2006−48028公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に示されるフロロシリコーンを含有した定着用部材では、離型性が低いことが課題として挙げられる。特許文献2に示されるフッ素ゴムとシリコーンゴムの組み合わせのものも、ワックスはいつもトナー樹脂と離型層の間にあるわけではないので、トナーが付き始めるとやはりオフセットすることことが課題として挙げられる。
以上のような問題点に鑑み、本発明の目的は、高い耐久性、高い熱伝導性を備えつつ、さらにフィラー部分へのトナーの固着を防止することに優れた加熱部材、定着装置、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記課題を解決するために種々検討を重ねた。以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、記録材上に担持されているトナー像を、加熱により定着させる加熱部材において、当該加熱部材は加熱源を備え、該加熱源の表面はシリコーンゴムが形成されてなる加熱部材であって、当該加熱部材が、酸化物半導体を表面に有するフッ素系樹脂粒子が、互いに接触した状態で、前記シリコーンゴム内に添加され、且つ、前記フッ素系樹脂粒子が、前記加熱源と接触している加熱部材を特徴とする。
請求項2に記載の発明は、前記加熱部材は、酸化物半導体を含有するシリコーンレジンに覆われたシリコーンゴム粒子を、前記シリコーンゴムに添加した加熱部材を特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記記録紙と当接する部分の面粗さは、十点平均高さRz表記で5μm以下である請求項1又は2に記載の加熱部材を特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3何れか一項に記載の加熱部材において、前記酸化物半導体は、二酸化チタンである加熱部材を特徴とする。
【0005】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4何れか一項に記載の加熱部材を備えた定着装置を特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5の定着装置において、ワックスを含有したトナーを用いて定着を行う定着装置を特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の定着装置において、前記加熱部材が前記記録紙に圧接する部分の加圧力を4.9N/cm以上とした定着装置を特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項5又は6に記載の定着装置において、前記加熱部材が前記記録紙に圧接する部分の加圧力を39.2N/cm以下としたことを特徴とする定着装置。
請求項9に記載の発明は、請求項5乃至8の何れか一項に記載の定着装置を備えた画像形成装置を特徴とする。
請求項10に記載の発明は、フッ素系樹脂粒子に、酸化物半導体粉体を機械的な圧力と剪断力を加え、加熱又は摩擦による加熱により固着させて作製した粒子を用いた加熱部材の製造方法を特徴とする。
請求項11に記載の発明は、シリコーンレジンを架橋するときに酸化物半導体粉体を含有させて作製したシリコーンゴムの粒子を用いた加熱部材の製造方法を特徴とする。
請求項12に記載の発明は、シリコーンレジンに覆われたシリコーンゴム粒子に、酸化物半導体粉体を機械的な圧力と剪断力を加え、加熱又は摩擦による加熱により固着させて作製したシリコーンゴム粒子を用いた加熱部材の製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明における加熱部材、定着装置、画像形成装置は、加熱部材を構成するシリコーンゴムに、酸化物半導体を表面に有するフッ素系樹脂粒子を添加したので、酸化物半導体が熱伝導のパスとなり、かつその部分が接着力を向上する界面となることから熱伝導性と耐久性が向上し、さらに酸化物半導体によるトナーの剥離効果によってクリーニング性を向上させることができる。
また、加熱部材を構成するシリコーンゴムに、酸化物半導体を含むシリコーンレジンに覆われたシリコーンゴム粒子をシリコーンゴムに添加したので、酸化物半導体が熱伝導のパスとなり、かつその部分が接着力を向上する界面となることから熱伝導性と耐久性が向上し、さらに酸化物半導体によるトナーの剥離効果によってクリーニング性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明にかかる加熱部材、定着装置および画像形成装置の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る加熱部材、定着装置を適用した画像形成装置の概略構成図である。
画像形成装置1は、帯電装置2、感光体3、書き込み系4、現像装置5、転写装置6、加圧ローラ8及び加熱ローラ9からなる熱定着方式の定着装置7、クリーニング手段10から構成される画像形成装置である。
画像形成装置1においては、帯電ローラ2によって表面を一様に帯電された感光体3に、書き込み系5による光走査を行い、静電潜像を形成する。現像装置4は、感光体3上に形成された静電潜像にトナーを供給する。トナーの付着によって静電潜像はトナー像として顕像化され、転写ローラ6及び感光体3間に形成されるニップ部を通過する記録紙Pに転写される。
記録紙P上の未定着トナーは、記録紙Pが加熱ローラ9及び加圧ローラ8によって構成されるニップ部を通過する際に、加熱及び加圧されて記録紙P上に定着される。このようにして、画像形成装置1における画像形成が完了する。
そして、感光体3上に残留したトナーがクリーニング手段8によって除去され、次の画像形成動作に備えられる。
【0008】
図2は、図1における定着装置をより詳細に示す図である。
図2に示すように、定着装置7は、加圧ローラ8及び加熱ローラ9から構成されている。
加圧ローラ8は、加熱ローラとのニップ部を通過する記録紙Pに押圧するように加圧機構10である弾性体によって付勢されている。
加熱ローラ9は、金属の円筒体である芯金11と、その外表面に備える加熱ローラ外側部分の加熱部材13からなり、さらに芯金11は、加熱源としてのヒータ12を備えている。
定着装置7は、加圧ローラ8及び加熱ローラ9間に形成されるニップに記録紙Pを通過させ、加圧ローラ8による加圧、加熱ローラ9による加熱によって記録紙P上に未定着トナーTを定着させる。
図3は、本発明の加熱ローラ9における表面部分の加熱部材の構成を示す図である。図3において、11は芯金、13は加熱部材である。
加熱部材13は、シリコーンゴム17をマトリックス相として備えており、酸化物半導体を表面に有するフッ素系樹脂粒子15がシリコーンゴム17に添加された構成となっている。
矢印14は、図示していないヒータからの熱が、いかに効率よく芯金11から表面のフッ素系樹脂粒子15まで、流れているかを示している。
【0009】
図4は、酸化物半導体16を表面に有するフッ素系樹脂粒子15と、トナーとの接触箇所を拡大して示す図である。
図4に示すようにフッ素系樹脂粒子15に到達したヒータからの熱により加熱部材表面部分のトナーは分解され、次の通紙時に剥離されることになる。
図3に戻り、高熱伝導率のフィラーが膜の一部分(点線部分)に集中しているため非常に少ない添加量で、高い熱伝導率を得ることができる。また、シリコーンゴム17とフッ素系樹脂粒子15との接着は非常に困難であるが、フッ素系樹脂粒子15の表面に物理的に強く二酸化チタンなどを使用した酸化物半導体16を固着させた粉体を作製しこれを仲立ちにして接着力の向上を図っている。この矢印14は、熱の通り道であるとともに、接着界面でもある。最表面は離型性のよいフッ素系樹脂粒子15、シリコーンゴム17(これは、ワックスの展開性のよいジメチルシリコーン等を用いることもできる。)であり、そして、フィラーとしての二酸化チタン16が、高分子を分解し、かつその分解が、フィラー以外のところにも広がっていくため、固着したトナーの剥離に非常に都合がよい。つまり、二酸化チタン16は強力な酸化力を備えるため、比較的低温であっても、トナーとの離型層界面を破壊でき、クリーニング性を向上出来る。
ワックスなしでシリコーンゴム17にトナーが接触した場合は固着しやすいが、本発明では、シリコーンゴム17中に二酸化チタンなどを使用した酸化物半導体16が、分散されているため、そのような固着にも対応できる。また、本発明では、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素系樹脂を用いているが、これらのものは、分子内の骨格が強く、容易に二酸化チタンによる分解の効果は受けないため非常に都合がよい。
酸化物半導体が、熱伝導のパスとなり、かつその部分が接着力を向上する界面となることで熱伝導性と耐久性が向上し、二酸化チタンを用いることによるトナーの剥離効果によりクリーニング性が向上する。
【0010】
フッ素系樹脂パウダー(フッ素系樹脂粒子)と二酸化チタン(酸化物半導体粉体)を(株)奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムに投入する。例としてMP103(三井デュポンフロロケミカル)と二酸化チタン粉を投入し、機械的な圧力と剪断力を加えて、加熱又は摩擦による加熱により固着させて複合化粉体を作製した。
このようにすることで、強い強度で高分子粒子(フッ素系樹脂粒子)表面に酸化物半導体を固着でき、耐久性を向上することが出来る。
被覆は、樹脂の表面を覆うとほぼ進まなくなるため、投入量が変わっても比較的同様の粉体が作製される。
本発明において用いられるフッ素系樹脂としては、焼成による溶融成膜性のよい、比較的融点の低いもの(好ましくは250〜300℃)が好ましく選択される。具体的には、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフロオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアアルキアルビニルエーテル共重合体(PFA)の微粉末が挙げられる。低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末は、ルブロンL−5、L−2(ダイキン工業)、MP1100、1200、1300、TLP−10F−1(三井デュポンフロロケミカル)が知られている。テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)粉末は、532−8000(デュポン)が知られている。テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)は、MP−10、MP102、(三井デュポンフロロケミカル)が知られている。特にMFR(メルトフローレート)が小さい流動性の低いものとして、MP103、MP300(三井デュポンフロロケミカル)、AC−5600、AC5539(ダイキン工業)等が本発明には向いている。
ところで、酸化物半導体を表面に有するフッ素系樹脂粒子でなく、酸化物半導体を含むシリコーンレジンに覆われたシリコーンゴム粒子をシリコーンゴムに添加するようにしてもよい。
シリコーンゴム粒子としては、シリコーンゴムをシリコーンレジンで覆ったもの(信越化学KMP−602等)があり、この硬い表面レジンに物理的に強くフィラーを固着させた粉体を作製しこれを仲立ちにして接着力の向上を図っている。
【0011】
図5は、フィラーとレジンで覆われたシリコーンゴム粒子(シリコーンゴム粒子と、フィラー、レジンの複合化粉体)の製造方法を示す図である。
シリコーンレジンに覆われたシリコーンゴム粒子(シリコーン複合パウダー)に、熱伝導性微粒子としての酸化物半導体粉体を機械的な圧力と剪断力を加え、加熱又は摩擦による加熱により固着させることで、シリコーン複合パウダーを微粒子で覆った複合化粉体を作製した。
このようにすることで、硬い表面レジン層に、熱伝導性のパスとしての役割と、シリコーンゴム間の接着層の役割をする酸化物半導体を強く固定することにより、フィラー間の熱接触、接着速度の向上が図られ熱伝導性と膜強度の向上による耐久性向上が得られる。
また、シリコーンレジンを架橋するときに酸化物半導体の粉体を含有させて作製したシリコーンゴム粒子を用いても良い。こうすることで、硬い表面レジン層に、熱伝導性のパスとしての役割と、シリコーンゴム間の接着層の役割をする酸化物半導体を強く固定することにより、酸化物半導体の熱接触、接着強度の向上が図られ、熱伝導性と膜強度の向上による耐久性向上が図られる。
【0012】
以下に、実験結果を用いて本発明をさらに詳細に説明をする。
[実施例1]
シリコーンゴム粒子KMP−602と二酸化チタン(1μm)のハイブリダイザーによる複合粉体をシリコーンゴム(LTV: Low Temp. Vulcanizing Silicone Rubber)からなるマトリクス相の中に分散したものを作製する。アルミニウムの中空芯金11にプライマーを介し、複合粉体を分散した粉体分散シリコーンゴム層13を厚さ0.4mm形成して硬化させ、外径をφ40mmにした加熱ローラ9を5本作製した。これを、(株)リコー製複写機MF4570に適用して、加熱温度を200℃に設定し、10,000枚連続でワックス含有トナーにより作製した黒べたの未定着紙を通紙したが、特に壊れたものはなかった。
[比較例1]
実施例1の場合と同様の構成で、二酸化チタンの代わりに酸化シリコーンを用いたものを作製した。このような構成においては、ワックス含有トナーにより作製した黒べたの未定着紙を50枚通紙することで、表面トナーが多量に付着した。そのため、通紙試験を停止した。
【0013】
[実施例2]
フッ素系樹脂MP103(10μm)と二酸化チタン(1μm)のハイブリダイザーによる複合粉体をシリコーンゴム(LTV:Low Temp. Vulcanizing Silicone Rubber)の中に分散したものを作製する。アルミニウムの中空芯金11にプライマーを介し、粉体分散したシリコーンゴム層を厚さ0.4mm形成し硬化させ、外径をφ40mmにした加熱ローラ9を5本作製した。これを、(株)リコー製複写機 MF4570に加熱温度200℃設定で、10,000枚連続ワックス含有トナーにより作製した黒べたの未定着紙を通紙したが、表面に異変を生じたものはなかった。
[比較例2]
実施例1と同様の構成で、二酸化チタンの代わりに酸化シリコーン粉末のものを作製した。この構成では、100枚通紙で、紙が分離不良を起こしたため、通紙試験を停止した。
【0014】
[実施例3]
実施例1のローラを(株)リコー製複写機MF4570に装着し、10,000枚、黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態を観察した。
また、このローラを(株)リコー製複写機MF4570に装着し、10,000枚、黒ベタ画像を通し、ローラ表面のトナー付着量とローラへの紙の巻き付きを見た(表1)。この結果、表面粗さ(十点平均粗さ:JIS B0601−1994)Rzが5μm以下であれば、ローラへの紙の巻き付き防止効果があることが確認された。Rzが7μmのものは、8,234枚で、ジャムが多発したため実験を取りやめている。
ベタ画像は、加熱部材表面の凹凸にトナーがつきやすい為に、表面が滑らかな、すなわち表面粗さRzの値が小さい加熱部材を用いることで耐久性の向上が得られることが分かる。
(表1)

【0015】
[実施例4]
実施例1のローラで、表面粗さRzが2μm以下としたものを作製した。MF4570の定着ユニットを用いたIH定着試験機を作製し、MF4570の未定着画像に加圧力を変えて、このローラに対して通紙した。
加圧力2.9(N/cm)以下では、定着性が非常に悪く、19.6(N/cm)以上では、定着ローラへのトナー付着が見られた。ローラへの紙の巻き付きは、トナー付着状態がさらに悪化し巻き付きが発生したものである。39.2(N/cm)以下では見られない。39.2N/cm以上の加圧力になると、トナーの持つワックス、又はシリコーンオイルなどの離型剤が、トナー樹脂と加熱部材との間から出て行ってしまい、離型剤による離型性を維持できなくなる。定着性は、定着後のべた画像に面の布を擦りつけ顕著に綿布にトナーが付いてものを定着不良とし、簡易判定した(表2)よって定着特性で好ましいのは、定着性では、4.9(N/cm)以上、ローラへの紙の巻き付きの点では、39.2(N/cm)以下である。
トナーの定着性は、かける圧力に依存し、特に、4.9N/cm以上の加圧力とすることにより、トナー画像の定着性が向上することがわかる。
(表2)

以上の実験から、実施例1における複合粉体を用いたときに、最も好適な加熱部材を得られることが分かる。
【0016】
本発明では、フィラーによる熱伝導、耐摩耗性向上等の効果と相反する離型性の低下を、二酸化チタンの正孔酸化性によるトナー樹脂に対する分解効果で、解決する手段を見いだした。この酸化物としては、比較的低い温度である180℃〜200℃の温度帯でも分解性があることを見いだし、特に本構成から離型層表面と付着トナーの接触部分で分解が起こり、これによる加熱部材のクリーニング性を見いだしたことにより、達成された。
図6は、二酸化チタンの熱平衡キャリア数の室温(定着装置の温度)との関係を示す図であり、二酸化チタンの熱平衡キャリア数の室温との比を、バンドギャップが3.2eV程度からフェルミ・ディラック統計分布と状態密度から計算したものである。図6において、室温に対しては、150℃で8乗から、220℃では10乗倍になっている。高温の500℃によりは、6乗ほど少ないが、本発明の目的に対しては、固着界面での分解が起こればよく、定常の通紙定着の過程で、十分クリーニングされることがわかった。フィラーとしての二酸化チタンは、熱伝導性、耐摩耗性向上の役割も果たすことができる。また、通常のトナー樹脂の高分子は、本発明で十分分解可能である。
以上説明したような熱伝導性がよく、ゴム硬度の低いローラにより熱伝達が均一に行われ、かつ膜強度の高い加熱部材を適用することにより、効率が良く、耐久性の高い定着装置を得ることが出来る。また、このような定着装置を適用して、信頼性の高く、エネルギー効率のよい画像形成装置を提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る加熱部材、定着装置を適用した画像形成装置の概略構成図。
【図2】図1における定着装置をより詳細に示す図。
【図3】本発明における高熱伝導性の加熱部材の構成を示す図。
【図4】フッ素系樹脂粒子とトナーとの接触箇所を拡大して示す図
【図5】フィラーとレジンで覆われたシリコーンゴムの製造方法を示す図
【図6】二酸化チタンの熱平衡キャリア数の室温との関係を示す図。
【符号の説明】
【0018】
1 画像形成装置、2 帯電装置、3 感光体、4 書き込み系、5 現像装置、6 転写装置、7 定着装置、8 加圧ローラ、9 加熱ローラ、10 クリーニング手段、11 芯金、12 ヒータ、13 加熱部材、15 フッ素系樹脂粒子、16 酸化物半導体、17 シリコーンゴム、P 記録紙、T 未定着トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材上に担持されているトナー像を、加熱により定着させる加熱部材において、
当該加熱部材は加熱源を備え、該加熱源の表面にシリコーンゴムが形成されてなる加熱部材であって、
酸化物半導体を表面に有するフッ素系樹脂粒子が、互いに接触した状態で、前記シリコーンゴム内に添加され、且つ、前記フッ素系樹脂粒子が、前記加熱源と接触していることを特徴とする加熱部材。
【請求項2】
前記加熱部材は、酸化物半導体を含有するシリコーンレジンに覆われたシリコーンゴム粒子を、前記シリコーンゴムに添加したことを特徴とする請求項1に記載の加熱部材。
【請求項3】
前記記録紙と当接する部分の面粗さは、十点平均高さRz表記で5μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱部材。
【請求項4】
請求項1乃至3何れか一項に記載の加熱部材において、前記酸化物半導体は、二酸化チタンであることを特徴とする加熱部材。
【請求項5】
請求項1乃至4何れか一項に記載の加熱部材を備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項5の定着装置において、ワックスを含有したトナーを用いて定着を行うことを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の定着装置において、前記加熱部材が前記記録紙に圧接する部分の加圧力を4.9N/cm以上としたことを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の定着装置において、前記加熱部材が前記記録紙に圧接する部分の加圧力を39.2N/cm以下としたことを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項5乃至8の何れか一項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
フッ素系樹脂粒子に、酸化物半導体の粉体を機械的な圧力と剪断力を加え、加熱又は摩擦による加熱により固着させて作製した粒子を用いたことを特徴とする加熱部材の製造方法。
【請求項11】
シリコーンレジンを架橋するときに酸化物半導体の粉体を含有させて作製したシリコーンゴム粒子を用いたことを特徴とする加熱部材の製造方法。
【請求項12】
シリコーンレジンに覆われたシリコーンゴム粒子に、酸化物半導体粉体を機械的な圧力及び剪断力を加え、加熱又は摩擦による加熱により固着させて作製したシリコーンゴム粒子を用いたことを特徴とする加熱部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−197581(P2008−197581A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35478(P2007−35478)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】