説明

化合物半導体装置の製造方法

【課題】リセスの水平方向寸法の変動を抑え、良好な耐圧安定性を得ることが可能な化合物半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】化合物半導体基板11上に、第1の開口パターンを有するホトレジスト層17、および第1の開口パターンより広い第2の開口パターンを有し化合物半導体基板11に接する密着層18を形成し、ホトレジスト層17をマスクとし、密着層18の端部を水平方向の終点としてウェットエッチングを行い、リセス13を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばGaAsなどの化合物半導体基板を用いた電界効果トランジスタなどの化合物半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロ波半導体素子の高機能化に伴い、電界効果トランジスタ(以下Field Effect Transistor:FETと記す)において、さらなる特性の向上、高周波動作時の耐圧確保などの信頼性の向上が要求されている。
【0003】
そこで、GaAsFETなどの化合物半導体装置において、化合物半導体基板上に形成された動作層上に、ソース電極とドレイン電極間にリセスを形成し、リセス中にゲート電極を形成する構造が適用されている。この構造により、寄生抵抗が低減され、半導体層表面に存在する表面準位の影響を軽減して、ひずみ特性の改善を図ることができるため、半導体層表面からチャネル層を遠ざけ、半導体層内部に電流を制御することが可能となるとともに、電界集中による耐圧の低下を抑えることが可能となる。
【0004】
このようなリセスは、ホトリソグラフィ技術を用いて所望の位置にマスクを形成し、開口部を通してエッチングを行うことにより形成される。エッチングにおいて、RIE(Reactive Ion Etching)などのドライプロセスの方が、パターン制御性においては優位であるが、エッチング後の表面にプラズマ損傷が生じることから、通常リン酸と、過酸化水素水の混合液などをエッチャントとしたウェットプロセスが用いられている(例えば特許文献1など参照)。
【0005】
このとき、化合物半導体基板(動作層)上にはマスクが形成されているものの、密着性が完全でないため、エッチャントが化合物半導体基板(動作層)とマスクとの界面に浸透し、深さ方向(垂直方向)とともに、水平方向にもエッチングが進行する。従って、形成されたリセスのエッジ部には、テーパが形成される。そして、このテーパにより、リセスのエッジ部が鈍角となるため、電界集中が緩和され、良好な耐圧を得ることが可能となる。
【0006】
しかしながら、化合物半導体基板(動作層)とマスクとの密着性、エッチャントの浸透速度の制御は困難であり、リセスの水平方向寸法が変動してしまう。そのため、リセスの水平方向寸法に依存する動作層の抵抗値が変動し、安定した耐圧値が得られないという問題がある。
【特許文献1】特開平11−163316号公報([0033]〜[0044]など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リセスの水平方向寸法の変動を抑え、良好な耐圧安定性を得ることが可能な化合物半導体装置の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、化合物半導体基板上に、第1の開口パターンを有するホトレジスト層、および第1の開口パターンより広い第2の開口パターンを有し化合物半導体基板に接する密着層を形成し、ホトレジスト層をマスクとし、密着層の端部を水平方向の終点としてウェットエッチングを行い、リセスを形成することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施態様によれば、化合物半導体装置を形成する際、リセスの水平方向寸法の変動を抑え、良好な耐圧安定性を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1に本実施形態の化合物半導体装置を構成するFET素子の断面図を示す。図に示すように、GaAsなどの化合物半導体からなる基板11に、GaAsなどからなる動作層12が形成され、この動作層12に、リセス13が形成されている。リセス13の端部(エッジ)には、テーパ13aが形成されており、リセス13には、ゲート電極14が形成されている。そして、動作層12上に、ゲート電極14を挟んで交互にソース電極15、ドレイン電極16が形成されている。
【0012】
このような化合物半導体装置は、以下のようにして形成される。先ず、図2に示すように、GaAsなどの化合物半導体からなる基板11上に、GaAsなどからなる動作層12を形成する。そして、ポジ型のホトレジストを塗布し、第1のマスクパターンを用いて露光・現像して開口部を形成することにより、ホトレジスト層17を形成する。
【0013】
次いで、図3に示すように、ホトレジスト層17に対して、第1のマスクパターンより開口パターンが広い第2のマスクパターンを用いて、2回目の露光を行う。これにより露光された領域のホトレジストがさらに硬化し、基板(動作層)との密着性の高い密着層18が形成される。
【0014】
そして、図4に示すように、ホトレジスト層17をマスクとして、エッチャントとしてリン酸と過酸化水素水混合液を用いてウェットエッチングを行う。エッチングは深さ方向(垂直方向)に進行するとともに、エッチャントが動作層12とホトレジスト層17との界面に浸透し、水平方向にも進行する。そして、密着層18の端部に到達した時点で、界面への浸透が抑えられるため、水平方向のエッチングの終点となる。さらに、必要に応じて、垂直方向にエッチングを進行させ、基板11面との角度が30度程度となるテーパ13aを有するリセスを形成する。
【0015】
さらに、ホトレジスト層17、密着層18を除去し、ゲート電極14と、ゲート電極14を挟むようにソース電極15、ドレイン電極16を形成して、図1に示すFET素子が形成される。
【0016】
このようにして、リセス13を形成するための開口パターンを有するホトレジスト層17を形成するとともに、リセス13の端部13aとなる位置に、密着層18を形成することにより、水平方向のエッチングの終点を固定することができる。そして、設計寸法通りのリセスを形成することができ、FET素子において、良好な耐圧安定性を得ることが可能となる。
【0017】
(実施形態2)
本実施形態においては、実施形態1と同様のリセスを有する化合物半導体装置が形成されるが、密着層とその形成方法が異なっている。
【0018】
先ず、図5に示すように、GaAsなどの化合物半導体からなる基板21上に、GaAsなどからなる動作層22を形成する。そして、動作層22上にSiO層を堆積し、通常のリソグラフィ法によりリセス形成予定域上に開口部を設け、SiO層を、フッ酸フッ化アンモニウム緩衝液などを用いて選択的に除去することにより、リセスの端部となる位置に開口部を有し、ホトレジスト層より基板(動作層)との密着性の高い密着層28を形成する。
【0019】
次いで、図6に示すように、ホトレジストを塗布し、密着層28の開口部より狭いマスクパターンを用いて露光・現像して開口部を形成することにより、ホトレジスト層27を形成する。
【0020】
そして、図7に示すように、実施形態1と同様に、ホトレジスト層27をマスクとして、エッチャントとしてリン酸、過酸化水素水混合液を用いてウェットエッチングを行う。エッチングは実施形態1と同様に、深さ方向(垂直方向)に進行するとともに、エッチャントが動作層22とホトレジスト層27との界面に浸透し、水平方向にも進行する。そして、実施形態1と同様に、密着層28の端部に到達した時点で、界面への浸透が進まなくなるため、水平方向のエッチングの終点となる。さらに、必要に応じて、垂直方向にエッチングを進行させ、基板21面との角度が30度程度となるテーパ23aを有するリセスを形成する。
【0021】
さらに、実施形態1と同様に、ホトレジスト層27、密着層28を除去し、ゲート電極24と、ゲート電極24を挟むようにソース電極25、ドレイン電極26を形成して、図8に示すFET素子が形成される。
【0022】
このようにして、リセス23を形成するための開口パターンを有するホトレジスト層27を形成するとともに、リセス23の端部23aとなる位置に、密着性の高いSiO層からなる密着層28を形成することにより、水平方向のエッチングの終点を固定することができる。そして、設計寸法通りのリセスを形成することができ、FET素子において、良好な耐圧安定性を得ることが可能となる。
【0023】
尚、本実施形態において、密着層としてSiO層を用いたが、これに限定されるものではなく、例えばSiN膜など他の絶縁膜などを用いることが可能である。
【0024】
このような化合物半導体装置の製造方法は、HEMT(High Electron Mobility Transistor)の他、MESFET(Metal Semiconductor Field Effect Transistor)などのFETなどにおいて適用することが可能である。
【0025】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一態様におけるFET素子の断面図。
【図2】本発明の一態様におけるFET素子の製造工程を示す図。
【図3】本発明の一態様におけるFET素子の製造工程を示す図。
【図4】本発明の一態様におけるFET素子の製造工程を示す図。
【図5】本発明の一態様におけるFET素子の製造工程を示す図。
【図6】本発明の一態様におけるFET素子の製造工程を示す図。
【図7】本発明の一態様におけるFET素子の製造工程を示す図。
【図8】本発明の一態様におけるFET素子の断面図。
【符号の説明】
【0027】
11、21…基板、12、22…動作領域、13、23…リセス、13a、23a…テーパ、14、24…ゲート電極、15、25…ソース電極、16、26…ドレイン電極、17、17’、17”、27…ホトレジスト層、18、28…密着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体基板上に、第1の開口パターンを有するホトレジスト層、および前記第1の開口パターンより広い第2の開口パターンを有し前記化合物半導体基板に接する密着層を形成し、
前記ホトレジスト層をマスクとし、前記密着層の端部を水平方向の終点としてウェットエッチングを行い、リセスを形成することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ホトレジスト層および前記密着層は、ポジ型ホトレジストからなることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置の製造方法
【請求項3】
前記ホトレジスト層を、前記第2の開口パターンでマスク露光し、前記ホトレジスト層を硬化させることにより前記密着層を形成することを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記化合物半導体基板上に、前記密着層を形成し、
前記密着層上に、前記ホトレジスト層を形成することを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記密着層は、SiO層を有することを特徴とする請求項4に記載の化合物半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−300415(P2008−300415A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141982(P2007−141982)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】