説明

半導体デバイスの製造方法

【課題】SiまたはSiGe等の半導体材料が露出している領域直上のみにSiやSiGe等のシリコン含有膜を選択成長させるのではなく、SiOやSiN等が露出している領域上にもSiを横方向にせり出させて成長させる成膜工程を備える半導体デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】処理室108にウエハ130を搬入し、ウエハ130を加熱し、処理室108にシリコン含有ガス、エッチング性ガス、キャリアガスである水素を同時に供給し、ウエハ130上にシリコン膜を選択成長させる際に、水素を、エッチング性ガスの20倍〜5000倍の流量で供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造方法に関し、特に、縦型CVD装置、横型CVD装置、枚葉式CVD装置等によりSiウエハ等の基板にSiまたはSiGe成長膜を選択成長する工程を備える半導体デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)において、ゲート長の微細化に伴う短チャネル効果抑制のため、エレベイテッドソース/ドレイン(またはライズドソース/ドレイン)と呼ばれる技術が注目を集めている。
【0003】
エレベイテッドソース/ドレインが形成されたMOSFET10の概略縦断面図を図1に示す。素子分離領域12に囲まれた素子形成シリコン領域11上にゲート絶縁膜17を介してゲート電極20が形成されている。ゲート電極20の側面にはサイドウォール18が形成され、ゲート電極20の上面にはゲート保護膜19が形成されている。ゲート電極20に対して自己整合的にソース13およびドレイン14が素子形成シリコン領域11に形成されている。ソース13およびドレイン14上にのみエレベイテッドソース15およびエレベイテッドドレイン16がそれぞれ選択的に形成されている。エレベイテッドソース15およびエレベイテッドドレイン16は、Siが露出しているソース13、ドレイン14上にのみSiまたはSiGeをエピタキシャル成長させ、その他のSiOやSiN等が露出している素子分離領域12等の領域には何も成長させない技術で一般的には選択成長とも呼ばれている技術によって形成されている。
【0004】
SiまたはSiGeの選択成長の原料ガスとしては、SiHやSi6、SiHCl等のSi含有ガスが用いられ、SiGeの場合にはさらにGeH4等のGe含有ガスが加えられる。CVD反応において原料ガスが導入されると、Si上ではただちに成長が開始されるのに対して、SiOやSiN上では潜伏期間と呼ばれる成長遅れが生じる。この潜伏期間の間、Si上のみにSiまたはSiGeを成長させるのが選択成長である。
なお選択成長させる膜の膜厚を厚くしたい場合には、SiOやSiN上での潜伏期間を長くする目的でHClやClなどのエッチング性ガスがしばしば添加される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ソース/ドレイン13、14部に選択成長したSiは、その上にさらにCoやNiが成膜され、電極形成時にコンタクト抵抗を下げるためにCoシリサイドやNiシリサイド化される。この電極形成時にコンタクト抵抗を下げるためには接触面積を広くすることが有効であるため、Siが露出しているソース/ドレイン部13、14にのみにSiを成長させるのではなく、図2に示すようにSiOやSiN等が露出している領域215、216(非選択成長領域)にもSiを横方向にせり出させて成長させたい要求が高まっている。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、SiまたはSiGe等の半導体材料が露出している領域直上のみにSiやSiGe等のシリコン含有膜を選択成長させるのではなく、SiOやSiN等が露出している領域上にもSiを横方向にせり出させて成長させる成膜工程を備える半導体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
処理室に基板を搬入する工程と、
前記基板を加熱する工程と、
前記処理室にシリコン含有ガス、エッチング性ガス、キャリアガスである水素を同時に供給する処理ガス供給工程と、
前記基板上にシリコン含有膜を選択成長させる工程と、を含み、
前記処理ガス供給工程では、前記キャリアガスである水素を、前記エッチング性ガスの20倍〜5000倍の流量で前記処理室に供給することを特徴とする半導体デバイスの製造方法が提供される。
基板上に形成されるシリコン含有膜は、好ましくは、SiまたはSiGeである。
【0008】
また、本発明によれば、
処理室に基板を搬入する工程と、
前記基板を加熱する工程と、
前記処理室にシリコン含有ガス、エッチング性ガス、キャリアガスである水素を同時に供給する処理ガス供給工程と、
前記基板上にシリコン含有膜を選択成長させる工程と、を含み、
前記処理ガス供給工程では、前記キャリアガスである水素を、10,000sccm以上の流量で前記処理室に供給することを特徴とする半導体デバイスの製造方法が提供される。
好ましくは、前記処理ガス供給工程では、前記キャリアガスである水素を、10,000sccm〜50,000sccmの流量で前記処理室に供給する。
好ましくは、前記処理ガス供給工程では、前記キャリアガスである水素を、10,000sccm以上の流量であって、前記エッチング性ガスの20倍〜5000倍の流量で前記処理室に供給する。
さらに好ましくは、前記処理ガス供給工程では、前記キャリアガスである水素を、10,000sccm〜50,000sccmの流量であって、前記エッチング性ガスの20倍〜5000倍の流量で前記処理室に供給する。
【0009】
また、基板上に形成されるシリコン含有膜は、好ましくは、SiまたはSiGeである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、SiまたはSiGe等の半導体材料が露出している領域直上のみにSiやSiGe等のシリコン含有膜を選択成長させるのではなく、SiOやSiN等が露出している領域上にもSiを横方向にせり出させて成長させる成膜工程を備える備える半導体デバイスの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の好ましい実施例を説明する。
本発明の好ましい実施例は、SiまたはSiGeの選択成長においてキャリアガスであるHを大流量流すことで非選択成長領域へせり出した横方向への成長を可能とするものである。
【0012】
ここで、本発明の好ましい実施例において使用した一般的なホットウオール式縦型減圧CVD装置を説明するための概略縦断面図を図3に、ホットウォール式縦型減圧CVD装置の反応炉を説明するための概略縦断面図を図4にそれぞれ示す。
【0013】
本実施例のホットウォール式縦型減圧CVD装置200は、反応炉100と、制御装置141と、ガス供給装置142と、真空排気装置143とを備えている。図4を参照すれば、反応炉100は、ベース112と、その上に設けられたマニホールド111と、アウターチューブ103と、その内部に設けられたインナーチューブ104と、アウターチューブ103の外部に設けられたヒータ101と、ヒータ101とアウターチューブ103を覆って設けられた断熱材102とを備えている。ヒータ101と断熱材102とによりアウターチューブ103内部全体を加熱する。アウターチューブ103はマニホールド111の上部フランジ118上に設けられ、インナーチューブ104はマニホールド111の中程で内側に向かって突きだしたフランジ119上に設けられている。
【0014】
シールキャップ113上にはボート105が搭載されている。ボート105を搭載したシールキャップ113がベース112の開口120から挿入され、シールキャップ113が上昇してシールキャップ113によって開口120が閉じられるとボート105がインナーチューブ104内に位置する。ボート105は回転機構114によって回転される。ボート105には複数のウエハ130が垂直方向に積層されて搭載されている。インナーチューブ104内がウエハ130を処理する処理室108となる。ボート下部のマニホールド111に相当する高さの部分には、断熱板107が搭載されている。
【0015】
マニホールド111の側壁には、排気管116が取り付けられており、排気管116は真空排気装置143に接続されている。シールキャップ113を貫通して供給管115が設けられている。供給管115は、ガス供給装置142に接続されている。SiまたはSiGeの選択成長の原料ガスである、SiH、Si6、SiHCl、GeH4等が、供給管115よりインナーチューブ104の下部から導入される。その後、インナチューブ104内を上昇し、その後、アウタチューブ103とインナチューブ104との間の隙間を通って、排気管116に接続された真空排気装置143により排気される。
【0016】
シールキャップ113を下降して、ボート105をインナーチューブ104から搬出した後は、ゲートバルブ117(図3参照)によって、ベース112の開口120を閉じる。図3を参照すれば、このようにして処理炉100の下部に搬出されたボート105とウエハカセット152との間でウエハ130を移載する移載機151が設けられている。
【0017】
ヒータ101、ガス供給装置142、真空排気装置143、回転機構114、ゲートバルブ117、移載機151は制御装置141によって制御される。
【0018】
ウエハカセット152により投入されたウエハ(Si基板)130は移載機151によりウエハカセット152からボート105に移載される。全てのウエハ105の移載が完了するとボート105はインナーチューブ104内へ挿入され、アウターチューブ103内は真空排気装置143により減圧される。そしてヒータ101により所望の温度に加熱し温度が安定したところでガス供給装置142により供給管115を介して原料ガスを供給し、ウエハ(Si基板)130上にCVD反応によりSiまたはSiGeを選択成長させる。
【0019】
Siの選択成長はSiH、Si、SiHCl等のSi含有ガスとHClやCl等のエッチングガスとを同時に流すか交互に流すことで成膜を行うが、その際キャリアガスとしてHがしばしば用いられる。本実施例はSi含有ガスとエッチングガスとキャリアガスを同時に流す場合に、キャリアガスであるHを大流量流すもので、具体的には数万sccm流すものである。
【0020】
通常キャリアガスは成膜圧力が高くならないようにするために、数百sccm程度しか流さず、多くとも数千sccm程度であった。また、選択的にSiを成長させるのではなく、全面にSiを成長させる場合では、キャリアガスであるHの流量が多いほど成長速度が遅くなることが知られており、やはり成膜時にはHは数百sccm程度しか流さず、多くとも数千sccm程度であった。
【0021】
しかしながら、本発明らは、Si含有ガスとエッチングガスとキャリアガスを同時に流す場合、キャリアガスであるHの流量が多いほど成長速度が速くなり、SiOやSiN等が露出している領域へSiが横方向にせり出して成長することを見出した。
【0022】
これは、Hを大流量流すことで、HClやCl等のエッチングガスのSi(選択成長領域)上でのエッチング作用が弱まり、Si上でのSiの成長速度が速くなるからである。通常成長速度が速くなったり、エッチングガスの作用が弱まってしまうと、SiOやSiN等が露出している領域(非成長領域)にまでSi核が成長してしまい、いわゆる選択破れが生じやすくなる。しかし本発明ではHを大流量流すことで、SiOやSiN等が露出している領域(非成長領域)がHにより高密度で覆われるためSi核が成長しにくくなり、選択破れを起こすことはなく、つまり選択性を確保したまま、Si上でのみ成長速度が速くなるものと思われる。
【0023】
本発明を実施しなかった場合の成膜例を図5、本発明を実施した場合の成膜例を図6にそれぞれ示す。この時のプロセス条件を表1に示す。
【表1】

【0024】
流量が1000sccmの図5と比較して、H流量が20000sccmの図6ではSiNが露出している非選択成長領域にもSiが大きくせり出して成長していることが分かる。
【0025】
本実施例では、H流量が20000sccmの場合を示したが、流量が多ければ多いほど非選択成長領域への横方向の成長は大きくなる。しかし、H流量が多いと排ガスを爆発下限まで希釈するN流量も増やさなくてはならなくなるため、実際には10000から50000sccm程度が実用的な流量範囲である。
【0026】
また、エッチングガスの作用を抑制するためには、エッチングガスの流量の20倍〜5000倍の流量でHを流すことが好ましい。
【0027】
以上説明したように、本発明により、Siが露出しているソース/ドレイン部にのみにSiを成長させるのではなく、SiOやSiN等が露出している領域にもSiを横方向にせり出させて成長させることが可能となる。
【0028】
なお、上記実施例では、ホットウオール式縦型減圧CVD装置でSiを選択成長する場合について説明したが、本発明はPやBがドーピングされる場合やSiGeの選択成長にも適用可能である。また、MOSFETでのエレベーテッドソース/ドレインへの選択成長のみならず、自己整合型SiGe−HBT(Hetero-bipolar transistor)でのベース層の選択成長等、その他の選択成長へも適用可能である。また、ホットウオール式縦型減圧CVD装置だけでなく、コールドウオール式や横型減圧CVD装置や枚葉式CVD装置等の各CVD装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】エレベーテッドソース/ドレインが形成されたMOSFETの構造を説明するための概略縦断面図である。
【図2】ソース/ドレインからせり出して選択成長させた場合のMOSFETの構造を説明するための概略縦断面図である。
【図3】ホットウォール式縦型減圧CVD装置を説明するための概略縦断面図である。
【図4】ホットウォール式縦型減圧CVD装置の反応炉を説明するための概略縦断面図である。
【図5】本発明を実施しない比較例の成膜を示す図である。
【図6】本発明の実施例の場合の成膜を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10…MOSFET
11…素子形成シリコン領域
12…素子分離領域
13…ソース
14…ドレイン
15…エレベイテッドソース
16…エレベイテッドドレイン
17…ゲート絶縁膜
18…サイドウォール
19…ゲート保護膜
20…ゲート電極
100…反応炉
101…ヒータ
102…断熱材
103…アウターチューブ
104…インナーチューブ
105…ボート
107…断熱板
108…処理室
111…マニホールド
112…ベース
113…シールキャップ
114…回転機構
115…供給管
116…排気管
117…ゲートバルブ
118…フランジ
119…フランジ
120…開口
130…ウエハ
131…プロダクトウエハ
132…ダミーウエハ
133…シリコン層
141…制御装置
142…ガス供給装置
143…真空排気装置
151…移載機
152…ウエハカセット
200…ホットウォール式縦型減圧CVD装置
215…せり出して選択成長したエレベイテッドソース
216…せり出して選択成長したエレベイテッドドレイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室に基板を搬入する工程と、
前記基板を加熱する工程と、
前記処理室にシリコン含有ガス、エッチング性ガス、キャリアガスである水素を同時に供給する処理ガス供給工程と、
前記基板上にシリコン含有膜を選択成長させる工程と、を含み、
前記処理ガス供給工程では、前記キャリアガスである水素を、前記エッチング性ガスの20倍〜5000倍の流量で前記処理室に供給することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−13106(P2006−13106A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187555(P2004−187555)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】