説明

半導体ヘテロ電界効果トランジスタ

【課題】ピエゾ電界により発生するシートキャリアの利用とチャネル部におけるピエゾ電界により深いディプレッション形成の抑制とを提供できる半導体ヘテロ電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】第1及び第3の領域23a、23cの主面24a、24cの法線ベクトルNV1、NV3は、該III族窒化物半導体のc軸Cxに直交する面に対して有限な角度で傾斜する。第2の領域23bの主面24bの法線ベクトルNV2は、該III族窒化物半導体のc軸Cxに直交する面に沿って延在する。第2の領域23bにおけるチャネル層25の第2の領域25bのピエゾ分極PZC2は、III族窒化物半導体領域23からバリア層27への方向に向いている。第1及び第3の領域23a、23cにおけるチャネル層25の第1及び第3の領域25a、25cのピエゾ分極PZC1、PZC3は、バリア層27からIII族窒化物半導体領域23への方向に向いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ヘテロ電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トランジスタが記載されている。このトランジスタでは、GaN系単結晶基板上にGaN系半導体層が成長される。GaN系単結晶基板は電子走行層を構成すると共に、GaN系半導体層は電子供給層を構成する。GaN系単結晶基板の主面はm面である。GaN系単結晶基板上のGaN系半導体層の主面もm面である。この層構造では、GaN系単結晶基板の主面が非極性面のm面であるので、GaN系半導体層においてピエゾ電界が発生しない。これ故に、ゲート電極への印加電圧がゼロであるとき、二次元電子ガス層の発生が抑制され、ノーマリオフのトランジスタを提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−311533号公報広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなm面窒化ガリウム上に作製された窒化物系ヘテロ接合電界効果トランジスタ(例えばHEMT)では、ピエゾ電界が発生しないので、ゲート電極に印加されるバイアスがゼロであるとき、このトランジスタは、非道通になり、ノーマリオフ特性を示す。m面窒化ガリウム上のHEMTは、つまりエンハンスメント型のトランジスタである。しかしながら、以下の説明されるc面GaN上のトランジスタと異なりシートキャリア濃度が小さく、オン抵抗が高くなる。
【0005】
一方、c面窒化ガリウム上に作製されたHEMTでは、正のピエゾ電界により発生する二次元電子ガスを利用しているので、シートキャリア濃度が非常に高く、これ故にトランジスタのオン抵抗を小さくできる。しかしながら、c面窒化ガリウムでは比較的大きなピエゾ電界が生成されるので、ゲート電極に印加されるバイアスがゼロであるとき、このトランジスタは非道通にならず、ノーマリオンのトランジスタ、つまり深いディプレッション型のトランジスタである。
【0006】
望ましくはHEMT構造において低いオン抵抗とノーマリオフとの両立であるけれども、チャネル部において低いオン抵抗の寄与を得ながら、この寄与をチャネル部以外において除くことは有用なことである。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、少なくとも2つのヘテロ接合を有する半導体ヘテロ電界効果トランジスタにおいて、ピエゾ電界により発生するシートキャリアを利用することとこの影響をチャネル部において除くこととを可能にする構造の半導体ヘテロ電界効果トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタは、(a)自立の支持基体上において所定の軸の方向に順に配列された第1、第2及び第3の領域を有するIII族窒化物半導体領域と、(b)前記III族窒化物半導体領域の主面上に設けられたチャネル層及びバリア層を含む半導体積層と、(c)前記半導体積層の主面上に設けられた第1の電極と、(d)前記半導体積層の主面及び前記第2の領域上に設けられた第2の電極と、(e)前記半導体積層の主面上に設けられた第3の電極とを備える。前記第1の電極は、ドレイン電極及びソース電極の一方であり、前記第1の領域上の前記チャネル層を介して前記第2の領域上の前記チャネル層に電気的に接続され、前記第3の電極はドレイン電極及びソース電極の他方であり、前記第3の領域上の前記チャネル層を介して前記第2の領域上の前記チャネル層に電気的に接続され、前記第1および第3の領域の主面の法線軸は、該III族窒化物半導体のc軸に沿って延びる基準軸に直交する面及び前記III族窒化物半導体領域の無極性面に沿って延在する面に対して有限な角度で傾斜し、前記第2の領域の主面は、前記第1および第3領域の主面に沿って延在する面に対して傾斜し、前記チャネル層は前記III族窒化物半導体領域と第1のヘテロ接合を成すと共に、前記チャネル層は前記バリア層と第2のヘテロ接合を成し、前記チャネル層は圧縮歪みを内包して、前記第2の領域における前記チャネル層のピエゾ分極の方向は前記第2のヘテロ接合に向いており、前記第1及び第3の領域における前記チャネル層のピエゾ分極は前記バリア層から前記III族窒化物半導体領域への方向に向いている。
【0009】
このトランジスタによれば、チャネル層は圧縮歪みを内包する。第1及び第3の領域の主面の法線軸は、該III族窒化物半導体のc軸に沿って延びる基準軸に直交する面及び無極性面に対して有限な角度で傾斜している。この傾斜により、第1及び第3の領域上のチャネル層のピエゾ分極の方向が第1のヘテロ接合に向くので、第1及び第3の領域上における第1のヘテロ接合に沿ってチャネル層内に二次元キャリアガスが生成される。
【0010】
また、半導体積層において、第2の領域の主面が第1及び第3の領域の主面に沿って延在する面に対して傾斜している。これ故に、第2の領域上のチャネル層のピエゾ分極の向きを第1及び第3の領域上のチャネル層のピエゾ分極の向きと異なる方向に向けることができる。ゲート電極に印加される電圧がゼロボルトのときに、第2の領域上における第1のヘテロ接合に沿ってチャネル層内に二次元キャリアガスが生成されない。これ故に、第1及び第3の領域上において二次元キャリアガスが生成されるけれども、この二次元キャリアガスはトランジスタのしきい値に影響しない。
【0011】
さらに、第2の領域の主面が第1及び第3の領域の主面に沿って延在する面に対して傾斜している。これ故に、第2の領域上のチャネル層のピエゾ分極の向きを第1及び第3の領域上のチャネル層のピエゾ分極の向きと異なる方向に向けることができる。圧縮歪みを内包するチャネル層のピエゾ分極の方向は、第2の領域において第2のヘテロ接合に向いているので、伝導帯のバンドが、III族窒化物半導体領域へ向けてバリア層から上昇する。このため、第2のヘテロ接合におけるポテンシャルが高くなる。これ故に、当該トランジスタのしきい値を浅いディプレッション型にすることができ、或いはノーマリオフにすることができる。
【0012】
したがって、このトランジスタは、シートキャリアの利用による低オン抵抗と深いディプレッション形成の抑制とを提供できる。
【0013】
例えば、圧縮歪みを内包するチャネル層のピエゾ分極が比較的小さいとき、当該トランジスタのしきい値は浅いディプレッションを示すようになる。また、圧縮歪みを内包するチャネル層のピエゾ分極が比較的大きいとき、当該トランジスタはノーマリオフ特性を示すようになる。ピエゾ分極の大きさは、実用的な見地からは、チャネル層のIII族窒化物の組成や厚さ及び/又はバリア層のIII族窒化物の組成や厚さに応じて調整できる。
【0014】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記バリア層は引っ張り歪みを内包して、前記第2の領域における前記バリア層のピエゾ分極の方向は前記第2のヘテロ接合に向いており、前記第1及び第3の領域における前記バリア層のピエゾ分極は前記III族窒化物半導体領域から前記バリア層への方向に向いていることができる。
【0015】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記チャネル層のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数は前記III族窒化物半導体領域の材料に固有のa軸方向の格子定数より大きい。
【0016】
このトランジスタによれば、チャネル層のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数(つまり、無歪みの格子定数)がIII族窒化物半導体領域の材料に固有のa軸方向の格子定数より大きいので、チャネル層がIII族窒化物半導体領域の主面上にコヒーレントに成長されることによって、チャネル層はIII族窒化物半導体領域から応力を受けて、チャネル層は圧縮歪みを内包することになる。
【0017】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記バリア層のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数は前記チャネル層のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数より小さい。
【0018】
このトランジスタによれば、バリア層のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数がチャネル層のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数より小さいので、バリア層はチャネル層を介してIII族窒化物半導体領域から応力を受けるので、バリア層は引っ張り歪みを内包する。
【0019】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記チャネル層は,III族元素としてインジウムを含むIII族窒化物半導体からなり、前記III族窒化物半導体領域の前記第1及び第3の領域の前記主面は、前記基準軸に直交する面に対して63度以上80度以下の範囲の角度を成すことが好ましい。
【0020】
このトランジスタによれば、第1及び第3の領域のチャネル層は、上記の基準軸に直交する面に対して63度以上80度以下の範囲の角度を成すようにIII族窒化物半導体領域上に設けられる。この角度範囲におけるチャネル層の成長は、インジウムの取り込み性に優れる。これ故に、チャネル層の結晶品質が良好になる。チャネル層を流れるキャリアの移動度が高くなる。
【0021】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記III族窒化物半導体領域の前記第1及び第3の領域の前記主面は、前記基準軸に直交する面に対して70度以上80度以下の範囲の角度を成すことが好適である。
【0022】
このトランジスタによれば、この角度範囲におけるチャネル層の成長では、チIn偏析が小さい。故に、チャネル層を流れるキャリアの移動度を更に高めることができる。
【0023】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記III族窒化物半導体領域は、窒化ガリウムからなるバッファ層を含み、前記チャネル層は前記バリア層と前記バッファ層との間に設けられる。
【0024】
このトランジスタによれば、バッファ層の抵抗を高比抵抗にできるので、バッファリークを低減できる。
【0025】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記バッファ層の窒化ガリウムにはn型ドーパント及びp型ドーパントが添加されていることができる。このトランジスタによれば、バッファ層の高比抵抗の実現は例えばn型ドーパント及びp型ドーパントの添加により実現できる。また、本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記n型ドーパントの濃度は、1×1017cm−3以上であると共に、前記p型ドーパントの濃度は、1×1017cm−3以上であることが良い。
【0026】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記n型ドーパントは酸素を含むことができる。また、本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記p型ドーパントは、炭素、マグネシウム及び亜鉛の少なくともいずれかを含むことができる。これらの元素をキャリア補償のためのドーパントとして使用できる。
【0027】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記チャネル層はInGaN層を含み、前記バリア層はAlGaN層又はGaN層を含み、前記III族窒化物半導体領域はGaNからなり、前記支持基体は、前記半導体積層を搭載する基板を更に含むことができる。このトランジスタによれば、実用的な構造の一つが提供される。
【0028】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、前記基板は半絶縁性を有することができる。このトランジスタによれば、低バッファリークを提供できる。
【0029】
本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタは、前記バリア層と前記ゲート電極との間に設けられた絶縁膜を更に備えることができる。このトランジスタによればゲート電極が絶縁膜上に設けられるので、トランジスタはMIS型構造を有する。或いは、本発明に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタは、前記ゲート電極は前記バリア層に接合を成すことができる。
【0030】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも2つのヘテロ接合を有する半導体ヘテロ電界効果トランジスタにおいて、ピエゾ電界により発生するシートキャリアを利用することとこの影響をチャネル部において除くこととを可能にする構造の半導体ヘテロ電界効果トランジスタを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本実施の形態に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタの構造を概略的に示す図面である。
【図2】図2は、図1に示された半導体ヘテロ電界効果トランジスタのチャネル部を概略的に示す図面である。
【図3】図3は、平坦部及び斜面部におけるバンドダイアグラムを示す図面である。
【図4】図4は、本実施の形態に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタを作製する方法における主要な工程を示す工程フロー図である。
【図5】図5は、本実施の形態に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的示す図面である。
【図6】図6は、本実施の形態に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の半導体ヘテロ電界効果トランジスタ、及び半導体ヘテロ電界効果トランジスタを製造する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0034】
図1は、本実施の形態に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタの構造を概略的に示す図面である。図2は、図1に示された半導体ヘテロ電界効果トランジスタのチャネル部を概略的に示す図面である。半導体ヘテロ電界効果トランジスタ11は、支持基体13と、半導体積層15と、第1の電極17と、第2の電極19と、第3の電極21とを備える。自立の支持基体13は、III族窒化物半導体領域23を含む。III族窒化物半導体領域23は、所定の軸の方向に順に配列された第1、第2及び第3の領域23a、23b、23cを有する。半導体積層15はチャネル層25及びバリア層27を含んでおり、チャネル層25及びバリア層27はIII族窒化物半導体領域23の主面23d上に設けられている。第2の電極19は、半導体積層15の主面及び第2の領域23b上に設けられている。第1の電極17は、半導体積層15の主面上に設けられ、さらに、本実施例では第1の領域23a上に設けられている。また、第3の電極21は、半導体積層15の主面上に設けられ、さらに、本実施例では第3の領域23c上に設けられている。第1の電極17はドレイン電極及びソース電極の一方であり、第3の電極21はドレイン電極及びソース電極の他方である。第2の電極19は、バリア層27を介してチャネル層25に電界を及ぼすゲート電極である。第1の電極17は、第1の領域23a上のチャネル層25を介して第2の領域23b上のチャネル層25に電気的に接続され、キャリアが流れる。第3の電極21は、第3の領域23c上のチャネル層25を介して第2の領域23bのチャネル層25に電気的に接続され、キャリアが流れる。
【0035】
図2を参照すると、半導体領域15においては、第1及び第3の領域23a、23cの主面24a、24cの法線軸(法線ベクトルNV1、NV3として表される)は、該III族窒化物半導体のc軸に沿って延びる基準軸(c軸ベクトルCVとして表される)Cxに直交する面及び無極性面(例えば、III族窒化物半導体のa面及びm面)に沿って延在する面に対して有限な角度で傾斜する。第2の領域23bの主面24bに沿って延在する面は、第1の領域23aの主面24aの法線軸(法線ベクトルNV1として表される)に対して傾斜する。第2の領域23bの主面24bに沿って延在する面は、第3の領域23cの主面24cの法線軸(法線ベクトルNV3として表される)に対して傾斜する。第2の領域23bの主面24bに沿って延在する面は無極性面(例えば、III族窒化物半導体のa面及びm面)に沿って延在する面に対して傾斜することができる。
【0036】
チャネル層25は第1の面26aと第2の面26bとを有し、第2の面26bは第1の面26aの反対側にある。チャネル層25の第1の面26aはIII族窒化物半導体領域と第1のヘテロ接合33を成すと共に、チャネル層25の第2の面26bはバリア層27と第2のヘテロ接合35を成す。
【0037】
歪みを内包するチャネル層25の第2の領域25bのピエゾ分極PZC2はチャネル層25の第1の面26aから第2の面26bへの方向に向き、チャネル層25の第1及び3の領域25a、25cのピエゾ分極PZC1、PZC3は、チャネル層25の第2の面26bから第1の面26aへの方向に向く。歪みを内包するバリア層27の第2の領域27bのピエゾ分極PZB2はチャネル層25の第2の面26bから第1の面26aへの方向に向き、バリア層27の第1及び3の領域27a、27cのピエゾ分極PZB1、PZB3は、チャネル層25の第1の面26aから第2の面26bへの方向に向く。
【0038】
また、チャネル層25は圧縮歪みを内包して、図2に示されるように、チャネル層25の第2の領域25bにおけるピエゾ分極PZC2の方向及びバリア層27の第2の領域27bのピエゾ分極PZB2の方向は第2のヘテロ接合35に向いている。第1及び第3の領域23a、23cにおけるチャネル層25の第1及び第3の領域25a、25cのピエゾ分極PZC1、PZC3はバリア層27からIII族窒化物半導体領域23への方向に向いている。第1及び第3の領域23a、23c上におけるバリア層27の第1及び第3の領域27a、27cのピエゾ分極PZB1、PZB3はチャネル層25からIII族窒化物半導体領域23への方向に向いている。
【0039】
このトランジスタ11によれば、チャネル層25は圧縮歪みを内包する。第1及び第3の領域23a、23cの主面の法線軸は、該III族窒化物半導体23のc軸に沿って延びる基準軸に直交する面及び無極性面に対して有限な角度で傾斜している。この傾斜により、第1及び第3の領域23a、23c上のチャネル層25のピエゾ分極PZC1、PZC3の方向が第1のヘテロ接合33に向くので、第1及び第3の領域23a、23c上における第1のヘテロ接合33に沿ってチャネル層25内に二次元キャリアガスが生成される。
【0040】
また、半導体積層15において、第2の領域23bの主面が第1及び第3の領域23a、23cの主面に沿って延在する面に対して傾斜している。これ故に、第2の領域23b上のチャネル層25のピエゾ分極PZC2の向きを第1及び第3の領域23a、23c上のチャネル層25のピエゾ分極PZC1、PZC3の向きと異なる方向に向けることができる。ゲート電極19に印加される電圧がゼロボルトのときに、第2の領域23b上における第1のヘテロ接合33に沿ってチャネル層25内に二次元キャリアガスが生成されない。これ故に、第1及び第3の領域23a、23c上において二次元キャリアガスが生成されるけれども、この二次元キャリアガスはトランジスタ11のしきい値に影響しない。
【0041】
さらに、第2の領域23bの主面が第1及び第3の領域23a、23cの主面に沿って延在する面及び無極性面に対して傾斜している。これ故に、第2の領域23b上のチャネル層25のピエゾ分極PZC2の向きを第1及び第3の領域23a、23c上のチャネル層25のピエゾ分極PZC1、PZC3の向きと異なる方向に向けることができる。圧縮歪みを内包するチャネル層25のピエゾ分極PZC2の方向は、第2の領域23bにおいて第2のヘテロ接合35に向いているので、伝導帯のバンドが、III族窒化物半導体領域23へ向けてバリア層27から上昇する。この傾斜により、第2のヘテロ接合35におけるポテンシャルが高くなる。これ故に、当該トランジスタ11のしきい値を浅いディプレッション型にすることができ、或いはノーマリオフにすることができる。また、必要な場合には、第2の領域23bの主面は無極性面に対して傾斜している。
【0042】
したがって、このトランジスタ11は、シートキャリアの利用による低オン抵抗と深いディプレッション形成の抑制とを提供できる。
【0043】
例えば、圧縮歪みを内包するチャネル層25のピエゾ分極が比較的大きいとき、当該トランジスタ11はノーマリオフ特性を示すようになる。また、圧縮歪みを内包するチャネル層25のピエゾ分極が比較的小さいとき、当該トランジスタ11のしきい値は、深いディプレッションではなく浅いディプレッションを示すようになる。ピエゾ分極の大きさは、実用的な見地からは、チャネル層25のIII族窒化物の組成や厚さ及び/又はバリア層27のIII族窒化物の組成や厚さに応じて調整できる。しかしながら、ピエゾ電界の大きさは結晶の面方位や組成等に複雑に関連している。
【0044】
半導体ヘテロ電界効果トランジスタ11では、バリア層27は引っ張り歪みを内包して、第2の領域23bにおけるバリア層27のピエゾ分極の方向は第2のヘテロ接合35に向いており、第1及び第3の領域23a、23bにおけるバリア層27のピエゾ分極はIII族窒化物半導体領域23からバリア層27への方向に向いていることができる。バリア層はチャネル層よりもバンドギャップエネルギーが大きいため、図3のように、チャネル層内に2次元電子ガスを有効に閉じ込めることができる。
【0045】
トランジスタ11は、バリア層27とゲート電極19との間に設けられた絶縁膜39を更に備えることができる。このトランジスタ11によれば、ゲート電極19が絶縁膜39上に設けられるので、トランジスタ11はMIS型構造を有する。絶縁膜39は、例えばアルミニウム酸化膜及びシリコン酸化膜の少なくともいずれかを含む。MIS型構造の場合はゲート電極に大きな正の電圧(例えば+2ボルトより大きい電圧)を印加することにより、ゲート電圧0Vでノーマリオフ状態であった領域のチャネルに、高濃度の電子を誘起できる。その結果、大きな電流を得ることができる。しかしながら、トランジスタ11がMIS型構造に限定されるものではない。トランジスタ11では、ゲート電極19はバリア層27にショットキ接合を成すことができる。引き続く説明では、トランジスタ11はMIS型構造を有する。
【0046】
トランジスタ11では、III族窒化物半導体領域23は、窒化ガリウムからなるバッファ層41を含む。チャネル層25はバリア層27とバッファ層41との間に設けられる。このトランジスタ11によれば、バッファ層41の抵抗を高比抵抗にできるので、バッファリークを低減できる。III族窒化物半導体領域23は、例えばバッファ層41及びアンドープ半導体層43を含むことができる。例えば、バッファ層41は窒化ガリウムからなることができる。アンドープ半導体層43は窒化ガリウムからなることができる。
【0047】
トランジスタ11では、バッファ層41の窒化ガリウムにはn型ドーパント及びp型ドーパントが添加されていることができる。これらのドーパントをキャリア補償のために使用できる。バッファ層41の高比抵抗の実現は例えばn型ドーパント及びp型ドーパントの添加により実現できる。また、n型ドーパントの濃度は、1×1017cm−3以上であることが良い。n型ドーパントは酸素を含むことができる。p型ドーパントの濃度は、1×1017cm−3以上であることが良い。p型ドーパントは、炭素、マグネシウム及び亜鉛の少なくともいずれかを含むことができる。
【0048】
トランジスタ11では、チャネル層25は例えばInGaN層を含むことができる。バリア層27は例えばAlGaN層を含むことができる。III族窒化物半導体領域23は例えばGaNからなることができる。支持基体13は、半導体積層15を搭載する基板45を更に含むことができる。このトランジスタ11によれば、実用的な構造の一つが実現される。基板45は半絶縁性を有することができる。このトランジスタ11によれば、低バッファリークを提供できる。トランジスタ11では、上記の例に限定されることなく、チャネル層25は、二元、三元や四元のIII族窒化物、例えばAlGaInN(格子定数d1、バンドギャップEg1、d1>d3)、InGaN又はInNを含むことができる。バリア層27は、二元、三元や四元のIII族窒化物、例えばAlGaInN(格子定数d2、バンドギャップEg2、Eg2>Eg1)、GaN又はAlGaNを含むことができる。III族窒化物半導体領域23は、二元、三元や四元のIII族窒化物、例えばAlGaInN (格子定数d3、バンドギャップEg3)又はGaNからなることができる。
【0049】
トランジスタ11では、チャネル層25のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数(つまり、無歪みの格子定数)はIII族窒化物半導体領域23の材料に固有のa軸方向の格子定数より大きいとき、チャネル層25がIII族窒化物半導体領域23の主面上にコヒーレントに成長されることによって、III族窒化物半導体領域23から応力をチャネル層25が受けて、チャネル層25は圧縮歪みを内包することになる。また、バリア層27のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数はチャネル層25のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数より小さいとき、バリア層27がチャネル層25を介してIII族窒化物半導体領域23から応力を受けて、チャネル層25は圧縮応力を内包する一方、バリア層27は引っ張り歪みを内包する。
【0050】
図1及び図2に示されたトランジスタ11の一例は、ピエゾ電界により発生するシートキャリアの利用とチャネル部におけるピエゾ電界により深いディプレッション形成の抑制との両立できる。この半導体ヘテロ電界効果トランジスタは以下の構造を有する。幾何学的な構造の一例として、III族窒化物半導体領域23の第2の領域23bの主面の法線軸NV2と第1の領域23aの主面の法線軸NV1との成す角度は180度より大きく270度未満の角度範囲にあることができる。また、III族窒化物半導体領域23の第2の領域23bの主面の法線軸NV2と第3の領域23cの主面の法線軸NV3との成す角度は90度より大きく180度未満の角度範囲にあることができる。
【0051】
また、図1及び図2に示されたトランジスタ11の一例は、ピエゾ電界により発生するシートキャリアの利用とチャネル部におけるピエゾ電界により深いディプレッション形成の抑制との両立でき、さらに、好ましいピエゾ電界の大きさを提供できる形態は、ノーマリオフ特性を実現できる。この半導体ヘテロ電界効果トランジスタは以下の構造を有する。例えば、III族窒化物半導体領域23の第1の領域23aの主面は、基準軸Cxに直交する面に対して40度以上90度以下または140度以上180度以下の範囲の角度を成すことができる。また、III族窒化物半導体領域23の第2の領域23bの主面は、基準軸Cxに直交する面に対して0度以上40度未満または90度より大きく140度未満の範囲の角度を成すことができる。さらに、III族窒化物半導体領域23の第3の領域23cの主面は、基準軸Cxに直交する面に対して40度以上90度以下または140度以上180度以下の範囲の角度を成すことができる。III族窒化物半導体領域23の主面が例えばc面と成す角度に応じて、チャネル層25におけるピエゾ分極の大きさ及び向きが調整される。傾斜の方向は、例えばIII族窒化物半導体領域23のm軸方向又はa軸方向であることができる。傾斜角により提供される好適な面方位は、例えば{20−21}面(m軸方向75度の角度で傾斜した面)である。
【0052】
トランジスタ11における上記の一例は、以下の構造を有することができる。第1の領域23a上においては、第1のヘテロ接合33は、基準軸Cxに直交する面に対して40度以上90度以下または140度以上180度以下の範囲の角度を成す。また、第2の領域23b上においては、第1のヘテロ接合33は、基準軸Cxに直交する面に対して0度以上40度未満または90度より大きく140度未満の範囲の角度を成す。さらに、第3の領域23c上においては、第1のヘテロ接合33は、基準軸Cxに直交する面に対して40度以上90度以下または140度以上180度以下の範囲の角度を成す。第1のヘテロ接合33が例えばc面と成す角度に応じて、チャネル層25におけるピエゾ分極の大きさ及び向きが調整される。
【0053】
トランジスタ11における上記の一例は、以下の構造を有することができる。第1の領域23a上においては、第2のヘテロ接合35は、基準軸Cxに直交する面に対して40度以上90度以下または140度以上180度以下の範囲の角度を成す。また、第2の領域23b上において、第2のヘテロ接合は35は、基準軸Cxに直交する面に対して0度以上40度未満または90度より大きく140度未満の範囲の角度を成す。第3の領域23c上においては、第2のヘテロ接合35は、基準軸Cxに直交する面に対して40度以上90度以下または140度以上180度以下の範囲の角度を成す。第2のヘテロ接合35が例えばc面と成す角度に応じて、チャネル層25におけるピエゾ分極の大きさ及び向きが調整される。
【0054】
好適な一例では、第1及び第3の領域23a、23c上の第1のヘテロ接合35は、基準軸Cxに直交する面に対して傾斜する面に沿って延在することが好ましい。圧縮歪みのチャネル層に起因する二次元電子ガスにより、オン抵抗を低減できる。また、第2の領域23b上の第1のヘテロ接合35は、基準軸Cxに直交する面(c面)に沿って延在することが好ましい。圧縮歪みのチャネル層を利用してチャネルの形成を避けることができる。
【0055】
第2の領域23b上の第2のヘテロ接合35は、例えば基準軸Cxに直交する面に沿って延在することができる。第1及び第3の領域23a、23c上の第2のヘテロ接合35は、基準軸Cxに直交する面に対して傾斜した面に沿って延在することができる。III族窒化物半導体領域23の第1の領域23aの主面は半極性面からなり、第3の領域23cの主面は半極性面からなることができる。ピエゾ電界に起因する二次元電子ガスにより、オン抵抗を低減できる。
【0056】
好適な実施例のための半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、チャネル層25は、III族元素としてインジウムを含むIII族窒化物半導体からなる。III族窒化物半導体領域23の第1及び第3の領域23a、23cの主面は、基準軸Cxに直交する面に対して63度以上80度以下の範囲の角度を成す。このトランジスタ11によれば、チャネル層25の第1及び第3の領域25a、25cは、上記の基準軸Cxに直交する面に対して63度以上80度以下の範囲の角度を成すようにIII族窒化物半導体領域23上に設けられる。この角度範囲におけるチャネル層25の成長は、インジウムの取り込み性に優れる。これ故に、チャネル層25の結晶品質が良好になる。チャネル層を流れるキャリアの移動度が高くなる。
【0057】
好適な実施例のための半導体ヘテロ電界効果トランジスタでは、III族窒化物半導体領域23の第1及び第3の領域23a、23cの主面は、基準軸Cxに直交する面に対して70度以上80度以下の範囲の角度を成すことが好適である。この角度範囲におけるチャネル層25の成長では、In偏析が小さい。故に、チャネル層25を流れるキャリアの移動度を更に高めることができる。
【0058】
図3は、平坦部及び斜面部におけるバンドダイアグラムを示す図面である。平坦部は、第1の領域23a、25a、27a又は第3の領域23c、25c、27cからなる。斜面部は、第2の領域23b、25b、27bからなる。
【0059】
図3(a)を参照すると、チャネル部におけるバンドダイアグラムが示されている。ゲート電極19の直下のチャネル層25の第2の部分25bでは、ゲート電圧19に印加される電圧Vgがゼロであるとき、チャネル層25には第1のヘテロ接合に二次元電子ガスが誘起されることがない。また、第2のヘテロ接合にも二次元電子ガスが誘起されない構造を形成可能になる。一方、この構造では、ゲート電圧19に印加される電圧Vgがゼロより大きいある電圧になるとき、チャネル層25の第1のヘテロ接合に二次元電子ガスが誘起される。したがって、トランジスタ11はノーマリオフ特性を示す。
【0060】
図3(b)を参照すると、チャネル部とソース電極及びドレイン電極との間の延長部におけるバンドダイアグラムが示されている。III族窒化物半導体領域23の第1の領域23a上においては、チャネル層25の第1の領域25aには二次元電子ガスが誘起される。また、III族窒化物半導体領域23の第3の領域23c上においては、チャネル層25の第3の領域25cには二次元電子ガスが誘起される。したがって、トランジスタ11は、二次元電子ガスによりシートキャリアの助けにより、低オン抵抗を示す。
【0061】
図4は、本実施の形態に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタを作製する方法における主要な工程を示す工程フロー図である。図5及び図6は、本実施の形態に係る半導体ヘテロ電界効果トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的示す図面である。工程S101では、所定の面方位のIII族窒化物基板を準備する。III族窒化物基板しては。例えばGaN等を用いられる。本実施例では、III族窒化物基板の主面は、上記の平坦部を提供できる面方位を有することができる。本実施例では、{20−21}面GaN基板を用いる。なお、必要な場合には、III族窒化物基板の主面は、上記の斜面部を提供できる面方位を有することができる。
【0062】
工程S102では、図5(a)に示されるように、III族窒化物基板を加工して、デバイス基板51を形成する。デバイス基板51は、ソース領域51a、ドレイン領域51c、及びチャネル部51bを有する。本実施例では、チャネル部51bの主面がソース領域51aの主面に対して傾斜しており、ドレイン領域51cの主面がソース領域51aの主面に対して傾斜している。チャネル部51bの傾斜は例えばエッチングにより形成され、またドレイン領域51cのための凹部は例えばエッチングにより形成される。これらのエッチングの具体例は、例えばICP−RIEによる選択エッチングである。チャネル部51bの傾斜角には、既に例示的に説明した様々な値を適用できる。本実施例では、ソース領域51a及びドレイン領域51cは、図3に示された平坦部を構成し、チャネル部51bは、図3に示された斜面部を構成する。
【0063】
工程S103では、図5(b)に示されるように、デバイス基板51の主面上にバッファ層53を成長する。バッファ層53は例えばGaNからなることができる。必要な場合には、バッファ層53を成長することができる。
【0064】
このバッファ層53は、例えば以下のようなものである。バッファ層53の抵抗を高比抵抗にできるので、バッファリークを低減できる。例えば、バッファ層53は窒化ガリウムからなることができる。
【0065】
また、バッファ層53の窒化ガリウムにはn型ドーパント及びp型ドーパントが添加されていることができる。これらのドーパントをキャリア補償のために使用できる。バッファ層53の高比抵抗の実現は例えばn型ドーパント及びp型ドーパントの添加により実現できる。また、n型ドーパントの濃度は、1×1017cm−3以上であることが良い。n型ドーパントは酸素を含むことができる。p型ドーパントの濃度は、1×1017cm−3以上であることが良い。p型ドーパントは、炭素、マグネシウム及び亜鉛の少なくともいずれかを含むことができる。
【0066】
工程S104では、図5(c)に示されるように、デバイス基板51の主面上にチャネル層55を成長する。チャネル層55は例えばInGaNからなることができる。
【0067】
工程S105では、図5(c)に示されるように、デバイス基板51の主面上にバリア層57を成長する。バリア層57は例えばAlGaNからなることができる。これらの工程により、エピタキシャル基板Eが形成される。エピタキシャル基板Eは、2つのヘテロ接合59a、59bを含む。
【0068】
工程S106では、図6(a)の平面図及び図6(b)の断面図に示されるように、ソース電極61a及びドレイン電極63a並びにゲート絶縁膜65及びゲート電極67aを形成する。ソース電極61a及びドレイン電極63aは半導体領域にオーミック接触69を成す。本実施例では、ゲート電極67aを傾斜面上の絶縁膜65上に形成すると共に、ゲート電極67aとソース電極61aとの間のキャリア走行延長部及びゲート電極67aとドレイン電極63aとのキャリア走行延長部を平坦部に形成している。斜面部におけるヘテロ接合は、c面に平行な面又はc面と同様に極性を示す面方位に沿って延在している。また、平坦部におけるヘテロ接合は、c面に対して傾斜してシートキャリアを提供できる面に沿って延在している。
【0069】
図6(c)の平面図及び図6(d)の断面図に示されるように、基板52を用いて、エピタキシャル基板を作製した後に、このエピタキシャル基板上にソース電極61a及びドレイン電極63a並びにゲート絶縁膜65及びゲート電極67aを形成してもよい。ソース電極61a及びドレイン電極63aは半導体領域にオーミック接触69を成す。本実施例では、ゲート電極67aを平坦部上の絶縁膜65上に形成すると共に、ゲート電極67aとソース電極61aとの間のキャリア走行延長部及びゲート電極67aとドレイン電極63aとのキャリア走行延長部を傾斜部に形成している。チャネル部におけるヘテロ接合は、c面に平行な基準面に沿って延在することが好ましい。このヘテロ接合は、c面に平行な面又はc面と同様に極性を示す面方位に沿って延在している。また、平坦部におけるヘテロ接合は、c面に対して傾斜してシートキャリアを提供できる面に沿って延在している。
【0070】
上記の実施の形態において、必要な場合には、ソース電極61a及びドレイン電極63a直下の半導体領域に高濃度のドーパントを添加することができる。また、必要な場合には、ソース電極61a及びドレイン電極63a直下のバリア層を選択的に除去して、ソース電極61a及びドレイン電極63aがチャネル層にオーミック接触69を成すようにしても良い。
【0071】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、少なくとも2つのヘテロ接合を有する半導体ヘテロ電界効果トランジスタにおいて、ピエゾ電界により発生するシートキャリアを利用することとこの影響をチャネル部において除くこととを可能にする構造の半導体ヘテロ電界効果トランジスタを提供する。また、少なくとも2つのヘテロ接合を有する半導体ヘテロ電界効果トランジスタにおいて、ピエゾ電界により発生するシートキャリアの利用とチャネル部におけるピエゾ電界により深いディプレッション形成の抑制とを提供できる半導体ヘテロ電界効果トランジスタを提供できる。さらに、本発明の好適な実施の形態によれば、少なくとも2つのヘテロ接合を有する半導体ヘテロ電界効果トランジスタにおいて、ピエゾ電界により発生するシートキャリアの利用とチャネル部におけるピエゾ電界によりノーマリオフ特性とを提供できる半導体ヘテロ電界効果トランジスタを提供できる。
【0072】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0073】
11…半導体ヘテロ電界効果トランジスタ、13…支持基体、15…半導体積層、17…第1の電極、19…第2の電極、21…第3の電極、23…III族窒化物半導体領域、25…チャネル層、27…バリア層、PZC1、PZC2、PZC3…チャネル層のピエゾ分極、PZB1、PZB2、PZB3…バリア層のピエゾ分極、39…絶縁膜、41…バッファ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ヘテロ電界効果トランジスタであって、
自立の支持基体上に設けられた第1、第2及び第3の領域を有するIII族窒化物半導体領域と、
前記III族窒化物半導体領域の主面上に設けられたチャネル層及びバリア層を含む半導体積層と、
前記半導体積層の主面上に設けられた第1の電極と、
前記半導体積層の主面及び前記第2の領域上に設けられた第2の電極と、
前記半導体積層の主面上に設けられた第3の電極と
を備え、
前記第1の電極は、ドレイン電極及びソース電極の一方であり、前記第1の領域上の前記チャネル層を介して前記第2の領域上の前記チャネル層に電気的に接続され、
前記第3の電極はドレイン電極及びソース電極の他方であり、前記第3の領域上の前記チャネル層を介して前記第2の領域上の前記チャネル層に電気的に接続され、
前記第1および第3の領域の主面の法線軸は、該III族窒化物半導体のc軸に沿って延びる基準軸に直交する面及び前記III族窒化物半導体領域の無極性面に沿って延在する面に対して有限な角度で傾斜し、
前記第2の領域の主面は、前記第1及び第3の領域の主面に対して傾斜し、
前記チャネル層は前記III族窒化物半導体領域と第1のヘテロ接合を成すと共に、前記チャネル層は前記バリア層と第2のヘテロ接合を成し、前記チャネル層は圧縮歪みを内包して、前記第2の領域における前記チャネル層のピエゾ分極の方向は前記第2のヘテロ接合に向いており、前記第1及び第3の領域における前記チャネル層のピエゾ分極は前記バリア層から前記III族窒化物半導体領域への方向に向いている、ことを特徴とする半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記バリア層は引っ張り歪みを内包して、前記第2の領域における前記バリア層のピエゾ分極の方向は前記第2のヘテロ接合に向いており、前記第1及び第3の領域における前記バリア層のピエゾ分極は前記III族窒化物半導体領域から前記バリア層への方向に向いている、ことを特徴とする請求項1に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記チャネル層のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数は前記III族窒化物半導体領域の材料に固有のa軸方向の格子定数より大きい、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記バリア層のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数は前記チャネル層のIII族窒化物に固有のa軸方向の格子定数より小さい、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記チャネル層は、III族元素としてインジウムを含むIII族窒化物半導体からなり、
前記III族窒化物半導体領域の前記第1及び第3の領域の前記主面は、前記基準軸に直交する面に対して63度以上80度以下の範囲の角度を成す、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記III族窒化物半導体領域の前記第1及び第3の領域の前記主面は、前記基準軸に直交する面に対して70度以上80度以下の範囲の角度を成す、ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記III族窒化物半導体領域は、窒化ガリウムからなるバッファ層を含み、
前記チャネル層は前記バリア層と前記バッファ層との間に設けられる、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記バッファ層の窒化ガリウムにはn型ドーパント及びp型ドーパントが添加されており、
前記n型ドーパントの濃度は、1×1017cm−3以上であると共に、前記p型ドーパントの濃度は、1×1017cm−3以上である、ことを特徴とする請求項7に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項9】
前記n型ドーパントは酸素を含む、ことを特徴とする請求項8に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項10】
前記p型ドーパントは、マグネシウム、亜鉛及び炭素の少なくともいずれかを含む、ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載されたヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項11】
前記チャネル層はInGaN層を含み、
前記バリア層はAlGaN層又はGaN層を含み、
前記III族窒化物半導体領域はGaNからなり、
前記支持基体は、前記半導体積層を搭載する基板を更に含む、ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項12】
前記バリア層はGaN層を含む、ことを特徴とする請求項11に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項13】
前記基板は半絶縁性を有する、ことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項14】
前記基板はGaNからなる、ことを特徴とする請求項11〜請求項13のいずれか一項に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項15】
前記バリア層と前記ゲート電極との間に設けられた絶縁膜を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。
【請求項16】
前記ゲート電極は前記バリア層に接合を成す、ことを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載された半導体ヘテロ電界効果トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−82218(P2011−82218A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230881(P2009−230881)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】