説明

半導体装置、半導体装置の製造方法、液晶表示装置及び多結晶ケイ素膜

【課題】電気特性の良好な薄膜トランジスタを有し、同一面積のチャネル領域を有する薄膜トランジスタ間の電気特性のばらつきを抑制する半導体装置、半導体装置の製造方法、液晶表示装置及び多結晶ケイ素膜を提供する。
【解決手段】半導体装置は、チャネル領域に多結晶ケイ素膜が用いられると共に、該チャネル領域に含まれるケイ素の結晶粒数が2〜99個である薄膜トランジスタを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法、液晶表示装置及び多結晶ケイ素膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス等の絶縁基板上に形成された非晶質半導体膜を結晶化させ、その結晶構造を有する半導体膜(以下、結晶性半導体膜という)を形成する技術が広く研究されている。半導体膜の結晶化法としては、ファーネスアニール炉を用いた熱アニール法や、瞬間熱アニール法(RTA法)、又はレーザアニール法などが検討されている。結晶化に際してはこれらの方法の内、いずれか一つまたは複数を組み合わせて行うことが可能である。
【0003】
結晶性半導体膜は、非晶質半導体膜と比較し、非常に高い移動度を有する。このため、この結晶性半導体膜を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、例えば、1枚のガラス基板上に、画素部用、または、画素部用と駆動回路用のTFTを形成したアクティブマトリクス型の液晶表示装置等に利用されている。
【0004】
通常、ファーネスアニール炉で非晶質半導体膜を結晶化させるには、600℃以上で10時間以上の熱処理を必要としていた。この結晶化に適用できる基板材料は石英であるが、石英基板は高価で、特に大面積に加工するのは非常に困難であった。しかし、生産効率を上げるためには基板を大面積化する必要が不可欠であり、近年においては一辺が1mを越えるサイズの基板の使用も考慮されるようになっている。
【0005】
一方、特許文献1に開示されている非晶質ケイ素の結晶化を助長する触媒元素を用いる熱結晶化法は、従来問題とされていた結晶化温度を低温化すること、および処理時間を短くすることを可能としている。その方法は、非晶質半導体膜にニッケルまたは、パラジウム、または鉛等の元素を微量に添加し、その後600℃にて1時間の熱処理で結晶性半導体膜の形成を可能にしている。
【0006】
また、レーザアニール法は、基板の温度をあまり上昇させずに、半導体膜にのみ高いエネルギーを与えることが出来るため、歪点の低いガラス基板には勿論、プラスチック基板等にも用いることが出来る点で注目されている技術である。
【0007】
レーザアニール法の一例は、エキシマレーザに代表されるパルスレーザ光を、照射面において、数cm角の四角いスポットや、長さ100mm以上の線状となるように光学系にて成形し、レーザ光を移動させて(あるいはレーザ光の照射位置を被照射体に対し相対的に移動させて)アニールを行う方法である。なお、ここでいう「線状」は、厳密な意味で「線」を意味しているのではなく、アスペクト比の大きい長方形(もしくは長楕円形)を意味する。例えば、アスペクト比が2以上(好ましくは10〜10000)のもの指すが、照射面における形状が矩形状であるレーザ光(矩形状ビーム)に含まれることに変わりはない。なお、線状とするのは被照射体に対して充分なアニールを行うためのエネルギー密度を確保するためであり、矩形状や面状であっても被照射体に対して充分なアニールを行えるのであれば構わない。
【0008】
これらを組み合わせ、非晶質ケイ素の結晶化を助長する触媒元素を用いて熱結晶化した後、結晶化膜の結晶性を向上させるためにレーザアニールを行う方法も、例えば特許文献2等に開示されている。
【0009】
さらに、特許文献3には、表示部の薄膜トランジスタのチャネル層と駆動用ドライバー回路用の薄膜トランジスタのチャネル層の多結晶ケイ素膜の結晶粒径を変える手法が考案されている。
【特許文献1】特開平7-183540号公報
【特許文献2】特開2000−216089号公報
【特許文献3】特開平5-190853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば、前記特許文献2等に開示されている方法では、前記触媒元素を用いて熱結晶化した固相結晶粒が直径数μmから100μmを超えるものまであり、この大きな結晶粒を更にレーザアニールを行うことで結晶性を向上させる。この方法で製造された結晶性ケイ素膜を活性層に用いた薄膜トランジスタ(TFT)は良好なTFT特性となることが可能となる場合がある。
【0011】
しかしながら、前記非晶質ケイ素の結晶化を助長する触媒元素を用いて熱結晶化した後、結晶化膜の結晶性を向上させるためにレーザアニールを行う方法では、前記触媒元素を用いて熱結晶化した固相結晶粒が直径数μmから100μmを超えるものまで製造することは可能であるが、基板全面がほぼ均一な大きさの結晶粒となる。例えば表示媒体として液晶等を用いたアクティブマトリクス方式の表示装置等の場合、様々な大きさのチャネル領域を有する電界効果薄膜トランジスタを造り込む必要があり、均一な大きさの結晶粒では種々の大きさの電界効果薄膜トランジスタについて、要求される電気特性を満足することはできない。なぜなら、例えば、結晶粒径がチャネル領域よりもやや大きい場合、チャネル領域内に存在する結晶粒数が1個のものと複数個のものがあり、即ちチャネル領域内に結晶粒界を含むものと含まないものが存在するために、同一面積のチャネル領域を有する電界効果薄膜トランジスタであっても移動度などの電気特性のばらつきが大きくなる問題が発生する。このような場合、チャネル領域に比べて結晶粒径をある程度小さくし、全ての電界効果薄膜トランジスタのチャネル領域内複数個の結晶粒が存在するようにすることで、移動度は低下するものの、同一面積のチャネル領域を有する電界効果薄膜トランジスタ間の電気特性のばらつきを抑えることが可能である。
【0012】
一方、チャネル領域に比べて結晶粒径があまりにも小さい場合は、移動度が低下したり、ON電流不足となり望ましくない。
【0013】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電気特性の良好な薄膜トランジスタを有し、同一面積のチャネル領域を有する薄膜トランジスタ間の電気特性のばらつきを抑制する半導体装置、半導体装置の製造方法、及び、液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る半導体装置は、チャネル領域に多結晶ケイ素膜が用いられると共に、チャネル領域に含まれるケイ素の結晶粒数が2〜99個である薄膜トランジスタを備えたことを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、チャネル領域内に2〜99個(約数個から数10個程度)の結晶粒を含むような電界効果薄膜トランジスタを有するため、移動度などの電気特性が良好で、かつ同一面積のチャネル領域を有する電界効果薄膜トランジスタ間での特性ばらつきを抑制することができる。本発明者によると、多結晶ケイ素膜を薄膜トランジスタのチャネル領域として用いる場合において、薄膜トランジスタのチャネル領域の大きさに合わせて結晶粒の大きさを変えて、2〜99個(約数個から数10個程度)の結晶粒を含むようにすることで上記の効果が奏されることが検証された。
【0016】
本発明に係る液晶表示装置は、チャネル領域に多結晶ケイ素膜が用いられると共に、チャネル領域に含まれるケイ素の結晶粒数が2〜99個である薄膜トランジスタを液晶表示素子に備えたことを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、上述した効果を有する半導体装置を備えた液晶表示装置を得ることができる。
【0018】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、絶縁性基板上に非晶質ケイ素膜を形成する膜形成ステップと、絶縁性基板上に形成された非晶質ケイ素膜の所定領域に水素をドープする水素ドープステップと、非晶質ケイ素膜に非晶質ケイ素の結晶化を促進させる触媒元素をドープする触媒元素ドープステップと、触媒元素をドープした非晶質ケイ素膜に加熱処理を施す第1結晶化ステップと、加熱処理を施した非晶質ケイ素膜にレーザ光を照射する第2結晶化ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、薄膜トランジスタの移動度などの電気特性を良好にし、かつ同一面積のチャネル領域を有する電界効果薄膜トランジスタ間での特性ばらつきを抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、膜形成ステップで形成する非晶質ケイ素膜の水素濃度が、1.0×1020〜5.0×1021atoms/cmであってもよい。
【0021】
このような構成によれば、非晶質ケイ素膜の水素濃度が上記範囲のときに、同一濃度の非晶質ケイ素の結晶化を促進させる触媒元素を用いて熱結晶化を行う際の、生成する結晶粒径が最も小さくなる。
【0022】
さらに、本発明に係る半導体装置の製造方法は、膜形成ステップにおける非晶質ケイ素膜の形成を、モノシランガス及びアルゴンガスの混合気体を用いたプラズマCVD法により行ってもよい。
【0023】
このような構成によれば、容易に大面積絶縁基板に均一な膜厚で、且つ、前記水素濃度範囲の非晶質ケイ素膜を成膜できる。
【0024】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、膜形成ステップと水素ドープステップとの間に、水素をドープする所定領域を規定するためのフォトレジストのパターニングを非晶質ケイ素膜上に行うパターニングステップをさらに備えてもよい。
【0025】
このような構成によれば、非晶質ケイ素膜内の所望の領域に効率よく水素をドープすることができる。
【0026】
さらに、本発明に係る半導体装置の製造方法は、水素ドープステップで水素をドープした非晶質ケイ素膜の所定領域における水素濃度が、1.0×1022〜2.5×1022atoms/cmであってもよい。
【0027】
このような構成によれば、同一濃度の非晶質ケイ素膜の結晶化を促進させる触媒元素を用いて熱結晶化を行う際に生成する結晶粒径が、水素濃度が1.0×1020〜5.0×1021atoms/cm以下の非晶質ケイ素膜を熱結晶化した場合の数倍から数十倍に大きくなる。
【0028】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、水素ドープステップにおける水素のドープを、非晶質ケイ素膜への水素イオンの注入により行ってもよい。
【0029】
このような構成によれば、容易に大面積基板の特定領域に水素をドープすることができる。
【0030】
さらに、本発明に係る半導体装置の製造方法は、水素ドープステップにおける水素のドープを、非晶質ケイ素膜を水素プラズマ雰囲気中に曝すことにより行ってもよい。
【0031】
このような構成によれば、容易に大面積基板の特定領域に水素をドープすることができる。
【0032】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、水素ドープステップで水素をドープする所定領域が、薄膜トランジスタのチャネル領域の少なくとも一部を含んでも良い。
【0033】
さらに、本発明に係る半導体装置の製造方法は、触媒元素ドープステップでドープする触媒が、鉄、コバルト、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、イリジウム、白金、銅及び金のうちの少なくとも1種類の元素を含んでもよい。
【0034】
このような構成によれば、非晶質ケイ素膜の結晶化を良好に促進させることができる。
【0035】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、触媒元素ドープステップで触媒元素をドープした非晶質ケイ素膜表面における触媒元素濃度が、1.0×1010〜1.0×1012atoms/cmであってもよい。
【0036】
前記非晶質ケイ素膜の結晶化を促進させる触媒元素の膜表面での濃度が、1.0×1010atoms/cm未満の場合、触媒元素の効果が小さく、結晶化に要する時間が長くなり、製造効率が悪くなる等、製造上の問題が生じる。また、膜表面での濃度が、1.0×1012atoms/cmより高い場合、結晶化されたケイ素膜中に触媒元素が高濃度に残留し、TFT特性が悪化する。このため、本発明のように非晶質ケイ素膜表面における触媒元素濃度が、1.0×1010〜1.0×1012atoms/cmであれば、これらの問題を抑制することができる。
【0037】
例えば、前記水素濃度が1×1020〜5.0×1021atoms/cmである非晶質ケイ素膜表面に、1.0×1011atoms/cmのニッケルを添加し、600℃・1時間の熱結晶化を行った場合、結晶粒径が約1μmとなる結晶粒が多い。
【0038】
一方、前記水素を含むイオンを注入する、或いは、水素プラズマ雰囲気中に前記基板を曝すことで水素がドープされて、水素濃度が1×1022〜2.5×1022atoms/cmである非晶質ケイ素膜表面に、1.0×1011atoms/cmのニッケルを添加し、600℃・1時間の熱結晶化を行った場合、結晶粒径が約10μmとなる結晶粒が多い。
【0039】
これは、ケイ素が固相結晶成長する際の第一段階としてできる結晶核の発生が、水素によって阻害されることによると考えられる。
【0040】
さらに、本発明に係る半導体装置の製造方法は、第1結晶化ステップにおける非晶質ケイ素膜の加熱処理を、500〜800℃の温度範囲で行ってもよい。
【0041】
非晶質ケイ素膜の加熱処理は、500℃未満で行う場合、固相結晶成長速度が遅く、製造効率が悪くなる等、製造上の問題が生じる。また、加熱処理を800℃より高い温度で行う場合、非晶質ケイ素膜の結晶化を促進させる触媒元素に起因しない、例えば0.2μm以下の小さい粒径の結晶粒が成長し、TFT特性が悪化する。このため、本発明のように500〜800℃の温度範囲で非晶質ケイ素膜の加熱処理を行うことで、これらの問題を抑制することができる。
【0042】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、第2結晶化ステップで照射するレーザ光の波長が126〜370nmであってもよい。
【0043】
さらに、本発明に係る半導体装置の製造方法は、第2結晶化ステップで照射するレーザ光がパルス発振エキシマレーザビームであってもよい。
【0044】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、第2結晶化ステップで照射するレーザ光として非晶質ケイ素膜表面を線状に照射する線状レーザビームを用いると共に、線状レーザビームをその短軸方向にステップ走査することで照射してもよい。
【0045】
このような構成によれば、線状レーザビームをその短軸方向にステップ走査することで照射するため、大面積のケイ素膜を効率良く簡便に処理することができる。
【0046】
さらに、本発明に係る半導体装置の製造方法は、第2結晶化ステップにおけるレーザ光を、触媒元素をドープした非晶質ケイ素膜を加熱処理して得られた結晶構造を部分的に溶融するエネルギー密度で照射してもよい。
【0047】
このような構成によれば、第2結晶化ステップにおけるレーザ光を、触媒元素をドープした非晶質ケイ素膜を加熱処理して得られた結晶構造を部分的に溶融するエネルギー密度で照射するため、ほぼ全面が十分な結晶性を有する結晶化ケイ素膜が得られる。尚、第1結晶化ステップで得られた結晶を完全に溶融するエネルギー密度でレーザ光を照射すると、TFT特性が悪化するおそれがある。
【0048】
また、本発明に係る多結晶ケイ素膜は、含有するケイ素の結晶粒数が1×10〜1×10〔個/mm〕であることを特徴とする。
【0049】
このような構成によれば、当該多結晶ケイ素膜を電界効果薄膜トランジスタのチャネル領域に用いることによって、移動度などの電気特性が良好で、かつ同一面積のチャネル領域を有する電界効果薄膜トランジスタ間での特性ばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、電気特性の良好な薄膜トランジスタを有し、同一面積のチャネル領域を有する薄膜トランジスタ間の電気特性のばらつきを抑制する半導体装置、半導体装置の製造方法、及び、液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置及びそれを備えた液晶表示装置を図面に基づいて詳細に説明する。また、半導体装置として、液晶表示装置に用いられる薄膜トランジスタ(TFT)を備えたアレイ基板を例に挙げて説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
(実施形態)
(薄膜トランジスタの製造方法)
以下に、本発明による結晶質半導体膜を備えた薄膜トランジスタ(TFT)の製造方法を、図を用いて説明する。
【0053】
また、本実施形態では、チャネル領域の大きさが2μm×2μmの薄膜トランジスタ50と、30μm×30μmの薄膜トランジスタ60とを同一基板上に作製する場合について説明する。
【0054】
(膜形成工程)
まず、図1に示すように、ガラス基板(絶縁性基板)10上に、例えばテトラエチルオルソシリケート(Tetraethylorthosilicate:TEOS)等で構成される厚さ約100nmの酸化ケイ素膜11を形成する。
【0055】
次いで、SiH(モノシラン)ガス及びAr(アルゴン)ガスの混合ガスを用いたRFプラズマ化学気相成長(プラズマCVD)法により、酸化ケイ素膜11上に厚さが例えば50nmで、膜中の水素濃度が例えば1.0×1020〜5.0×1021atoms/cmの非晶質ケイ素膜12を形成する。
【0056】
(パターニング工程)
次に、ガラス基板10上に堆積された非晶質ケイ素膜12の表面全面にフォトレジストを塗布したあと、図2及び図3に示すように、30μm×30μmのチャネル領域を有する薄膜トランジスタ60のチャネル領域13を含む領域のみ開口部14を設けるように現像し、パターニングする。開口部14は、後述する水素ドープの対象領域となる位置に形成する。フォトレジスト層15の厚さは、例えば、2.0μmである。
【0057】
(水素ドープ工程)
次に、フォトレジスト層15の表面から水素イオンを加速電圧10keVで注入する。使用したイオンドープ装置は、タングステンフィラメントによりイオン源で発生させた水素プラズマから、イオンを引き出し、加速したあと、質量分離することなくガラス基板10に注入されるため、単原子水素イオンだけではなく、水素原子が複数個結合したクラスタイオンも注入される。従って、短時間で効率よく、フォトレジスト層の開口部14から非晶質ケイ素膜12に水素をドープすることが可能である。水素ドープは、例えば、非晶質ケイ素膜12の所定領域における水素濃度が、1.0×1022〜2.5×1022atoms/cmとなるように行うのがよい。
【0058】
(触媒元素ドープ工程)
次に、フォトレジスト層15を通常のフォトレジスト剥離工程で剥離したあと、図4に示すように、一部水素濃度が異なる非晶質ケイ素膜16の表面全面に触媒元素17を添加する。触媒元素17は、後述する加熱処理において非晶質ケイ素膜の結晶化を助長する元素であり、例えば、Niである。Niは例えば抵抗加熱法によって非晶質ケイ素膜16上に蒸着された後、拡散される。なお、図4では触媒元素17を膜状に示しているが、実際には、触媒元素17は非晶質ケイ素膜16の表面付近に分散されている。
【0059】
(第1結晶化工程)
次に、非晶質ケイ素膜16を加熱処理することにより、非晶質ケイ素膜16を結晶化して、図5に示した結晶質ケイ素膜(多結晶ケイ素膜18)を得る。加熱処理により、固相結晶成長(Solid phase crystallization:SPC)することによって、非晶質ケイ素膜16が結晶化される。以下、このように加熱処理によって結晶化を行うことを第1結晶化と称する。
【0060】
上述したように、非晶質ケイ素膜16には触媒元素17が添加されているので、窒素雰囲気の電気炉において非晶質ケイ素膜16を600℃で1時間加熱すると、容易に結晶化される。
【0061】
次に、結晶化時に多結晶ケイ素膜18の表面に形成された自然酸化膜を除去する。酸化膜の除去は、例えば、多結晶ケイ素膜18の表面に1%のフッ酸溶液を90秒間浸漬させ、スピン乾燥させるウェットエッチングよって行われる。このようなウェットエッチングは、簡便で量産性にも優れている。酸化膜を除去した基板を乾燥させて直ちにチャンバに導入する。チャンバにはレーザビーム照射機構が設けられており、チャンバは、例えば、酸素濃度が20%、窒素濃度が80%で満たされており、気圧は1気圧である。
【0062】
(第2結晶化工程)
次に、多結晶ケイ素膜18にレーザビーム19(パルス発振エキシマレーザビーム)を照射する。以下、このようにレーザビームによって結晶化を行うことを第2結晶化と称する。図6は、多結晶ケイ素膜18に対してレーザビーム19を相対的に走査している様子を示す図である。レーザビーム19は、多結晶ケイ素膜18を部分的に溶融するエネルギー密度で照射される。レーザビーム19が多結晶ケイ素膜18を部分的に溶融することにより、結晶は溶融されなかった結晶粒を種結晶として成長し、結果として、粒径の大きな結晶粒を得ることができる。レーザビーム19として、例えば、エネルギー密度340mJ/cm、パルス幅30nsおよび波長308nmのXeClレーザビームが用いられる。
【0063】
図6に示すように、レーザビーム19は、多結晶ケイ素膜18の表面においてエネルギー分布が一様となるように長さ100mm以上の線状に成形されており、ガラス基板10上を短軸方向に20μm/パルスのステップで紙面下方から上方に走査するレーザビーム19を走査することにより、ほぼ全面で十分な結晶性を有する多結晶ケイ素膜20が得られる。なお、ここでいう「線状」とは、厳密な意味で「線」を意味しているのではなく、アスペクト比の大きい長方形または長楕円形を意味する。線状のレーザビームは、例えば、アスペクト比は、2以上、より好ましくは10〜10000であり、照射面における形状が矩形状であるレーザビーム(矩形状ビーム)を含んでいる。例えば、レーザビーム19は125mm×0.4mmの線状に成形されている。なお、レーザビーム19を線状に成形するのは被照射体に対して充分なアニールを行うためのエネルギー密度を確保するためであり、被照射体に対して充分なアニールを行うことができるのであれば、レーザビーム19の照射面は、線状以外の矩形状であっても、あるいは、数cm角の四角であってもよい。
【0064】
このようにして製造した多結晶ケイ素膜20は、含有するケイ素の結晶粒数が1×10〜1×10〔個/mm〕となっている。
【0065】
尚、本実施形態では、イオン注入することで、前記フォトレジスト層15の開口部14領域の前記非晶質ケイ素膜12に水素をドープしたが、水素をドープする方法はこれに限定されない。例えば、水素ガスをチャンバに導き、RFにより水素プラズマを発生させ、この水素プラズマ雰囲気中に図2と同様の基板を曝すことでも、前記フォトレジスト層15の開口部14の前記非晶質ケイ素膜12に水素をドープすることは可能である。
【0066】
また、本実施形態では、触媒元素はNiを用い、非晶質ケイ素膜における触媒元素の表面濃度は1×1011atoms/cmであったが、本発明はこれに限定されない。触媒元素は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、イリジウム、白金、銅および金からなる群から選択された少なくとも1種類の元素を含んでいればよい。また、非晶質ケイ素膜における触媒元素の表面濃度は、1×1010〜1×1012atoms/cmであることが好ましい。表面濃度が1×1010atoms/cm未満である場合、触媒元素の効果が小さく、結晶化に要する時間が長くなり、製造工程上好ましくない。一方、表面濃度が1×1012atoms/cmよりも高い場合、結晶化されたケイ素膜中に前記触媒元素が高濃度に残留し、TFT特性が悪化するためである。
【0067】
さらに、本実施形態では、加熱処理の温度は600℃であったが、本発明はこれに限定ない。例えば、加熱処理の温度は500〜800℃であることが好ましい。加熱処理の温度が500℃未満の場合、固相結晶成長速度が遅く、製造工程上好ましくない。一方、加熱処理の温度が800℃よりも高い場合、触媒元素に起因する、例えば直径数μm以上の結晶粒が形成されるのに加えて、触媒元素に起因することなく粒径の小さな(例えば、0.2μm以下)結晶粒が形成される。このため、高いキャリア移動度を得ることができない。
【0068】
また、本実施形態では、加熱時間は1時間であったが、本発明はこれに限定されない。加熱時間は、ガラス基板の変形量やガラス基板からの不純物拡散量、加熱温度等に応じて異なるが、例えば15分〜24時間であってもよい。
【0069】
さらに、本実施形態では、レーザビーム19の波長は308nmであったが、本発明はこれに限定されず、例えば、126〜370nmの範囲であってもよい。
【0070】
また、本実施形態では、レーザビーム19(パルス発振エキシマレーザビーム)の一例としてXeClレーザビームを用いたが、本発明はこれに限定されず、他のパルス発振エキシマレーザビーム、例えば、KrF、XeF、ArClまたはKrClレーザビーム等を用いてもよい。
【0071】
さらに、本実施形態では、多結晶ケイ素膜18を部分的に溶融させるレーザビーム19のエネルギー密度として340mJ/cmを例示したが、本発明はこれに限定されない。ただし、本発明者の研究結果によれば、レーザビームのエネルギー密度が370mJ/cm以上であると、エネルギー密度が高過ぎて多結晶ケイ素膜18が完全に溶融し、微結晶となる領域が発生する。また、レーザビームのエネルギー密度が320mJ/cm未満であると、X線回折分析の結果から、レーザビームのエネルギー密度が320mJ/cm以上である場合と比べて結晶性が低下していることがわかる。したがって、本実施形態で示すように、エネルギー密度が340mJ/cmであると、多結晶ケイ素膜18を部分的に溶融させることができ、ほぼ全面が充分な結晶性を有する多結晶ケイ素膜18を得ることができる。
【0072】
また、第2結晶化においてレーザアニール法を用いる場合、ケイ素膜の表面で線状に成形されたパルス発振エキシマレーザビームを短軸方向にステップ走査することにより、大面積のケイ素膜を効率よく簡便に処理することができる。
【0073】
上述の製造方法に従って製造された多結晶ケイ素膜を活性層に用いた電界効果薄膜トランジスタは、高いキャリア移動度を有し、それぞれのチャネル領域の大きさ毎に電気特性のばらつきが抑制される。
【0074】
尚、上記特許文献3に開示されている製造方法は、結晶粒径を変えた多結晶ケイ素膜が同一平面上になく、さらに表示部の薄膜トランジスタのチャネル層の多結晶ケイ素膜が非晶質ケイ素を成膜した後結晶化するのではなく、成膜時点で結晶化したケイ素膜である点で本発明とは明らかに異なっている。
【0075】
(薄膜トランジスタ50,60の製造工程)
次に、図2を参照して、上述の多結晶ケイ素膜20を活性層として用いたnチャネル型電界効果薄膜トランジスタ(以下、「nチャネル型TFT」という。)30の製造工程を説明する。ここで、チャネル領域の大きさは異なるが、前記開口部14から水素をドープした薄膜トランジスタ60のチャネル領域13を含む領域の結晶粒径が大きいこと以外は、これ以降の工程は薄膜トランジスタ50,60とも同様である。
【0076】
まず、図7に示すように、ガラス基板10及び酸化ケイ素膜11の上に作製された多結晶ケイ素膜20を、それぞれチャネル領域13,31、ソース領域32,33、ドレイン領域34,35に対応する形状にパタ−ニングする。図8に示すように、前記パターニングされた多結晶ケイ素膜20を覆うように、常圧化学気相成長Atmospheric Pressure Chemical Vapor Deposition:APCVD)法により、厚さ100nm程度の酸化膜からなるゲート絶縁膜40を形成する。
【0077】
次に、図9に示すように、ゲート絶縁膜40上に、導電膜として厚さ300nm程度のアルミニウム膜41を形成し、図10に示すように、アルミニウム膜41を所定形状にパターニングしてゲート電極43を形成する。このゲート電極43をマスクとして、ソース領域32および33、ドレイン領域34及び35となる領域にリンイオンを注入し、ゲート電極43直下のチャネル領域31および13の両側にソ−ス領域32および33、ドレイン領域34および35を形成する。
【0078】
その後、図11に示すように、APCVD法によって、ガラス基板10上の全面にゲート電極43を覆うように厚さ500nmの酸化膜を堆積して層間絶縁膜46を形成する。次いで、図12に示すように、ソ−ス領域32および33、ドレイン領域34および35上のゲート絶縁膜40および層間絶縁膜46にコンタクトホ−ル部を形成し、スパッタリング法によって電極材料をコンタクトホ−ル部に堆積させ、コンタクトホール部を介して電極材料とソース領域32および33、ドレイン領域34及び35との間にオ−ミック接触を実現させる。この電極材料を所定形状にパターニングすることにより、引き出し電極47を形成する。
【0079】
以上のようにして、チャネル領域内に2〜99個(約数個から数10個程度)の結晶粒を含むnチャネル型の薄膜トランジスタ50,60が完成する。また、このnチャネル型の薄膜トランジスタ50,60をアクティブマトリクス基板のスイッチング素子(液晶表示素子)に用いて液晶表示装置を作製する。
【0080】
尚、本実施形態では、TFTの例示としてnチャネル型TFT30を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、多結晶ケイ素膜を用いてpチャネル型TFTを作製してもよい。また、nまたはpチャネル型TFTをスイッチング素子として用いた半導体装置をさらに作製してもよい。
【0081】
(薄膜トランジスタ50,60を備えた液晶表示装置90の構成)
次に、上述の製造方法で製造された薄膜トランジスタ50,60を備えた液晶表示装置90の構成について説明する。
【0082】
液晶表示装置は、画素電極の駆動用のスイッチング素子として本実施形態の製造方法により作製された薄膜トランジスタ50又は60を用いるようにしたアクティブマトリクス型のものである。
【0083】
液晶表示装置90は、マトリクス状に配置された複数の薄膜トランジスタ50又は60(スイッチング素子)を有するアレイ基板91と、色層を有していて、アレイ基板91に貼り合わされた対向基板としてのカラーフィルタ基板(不図示)とを備えており、これらアレイ基板91とカラーフィルタ基板との間には、液晶層及びスペーサ(いずれも不図示)が配置されている。また、アレイ基板91の裏面にはバックライト(不図示)が配置されている。
【0084】
本実施形態に係る液晶表示装置90の薄膜トランジスタ50,60は、図12に示すように、多結晶ケイ素膜20を活性層として用いたnチャネル型電界効果薄膜トランジスタ(nチャネル型TFT)を構成しており、それぞれチャネル領域内に2〜99個(約数個から数10個程度)の結晶粒を含んでいる。
【0085】
図13に示すように、アレイ基板91は、縦方向(図13の上下方向)に延びる複数本のソース線92(信号線)と、横方向(図13の左右方向)に延びる複数本のゲート線93(走査線)とが互いに交差するように配置されており、各交差部の近傍に、ソース電極94、ドレイン電極95及びゲート電極96を有する薄膜トランジスタ50又は60と、この薄膜トランジスタ50又は60のドレイン電極95に電気的に接続された画素電極97とが配置されている。ドレイン電極95は、薄膜トランジスタ50又は60の位置から画素領域の略中央位置まで延設されており、その端部は、略矩形状の補助容量用電極とされている。
【0086】
(実施例)
上述の実施形態に係る製造方法によって製造されたnチャネル型TFTのキャリア移動度を測定した。このとき、前記膜形成工程で作製した非晶質ケイ素膜内の水素濃度は3×1021atoms/cm3であった。また、前記水素ドープ工程で作製した非晶質ケイ素膜内の水素濃度は2×1022atoms/cm3であった。さらに、触媒元素ドープ工程で作製した非晶質ケイ素膜の表面における触媒元素の濃度(表面濃度)は1×1011atoms/cmであった。
【0087】
このようにして製造したnチャネル型TFTのキャリアは、チャネル領域の大きさが大きく異なる薄膜トランジスタ50及び薄膜トランジスタ60ともに高いキャリア移動度(300cm/V・s)を示した。
【0088】
また、同一基板上に薄膜トランジスタ50及び薄膜トランジスタ60と全く同じ大きさの薄膜トランジスタを本実施形態とそれぞれ同様の方法で100個ずつ作製したところ、キャリア移動度のばらつきは、それぞれ±3%以内と小さかった。
【0089】
さらに、前記フォトレジスト層で覆われていた領域と、フォトレジスト層の開口部から水素がドープされた領域とでは結晶粒径が異なっていた。具体的には、前記フォトレジスト層で覆われていた領域の多結晶ケイ素膜の平均結晶粒径は約1μm程度であったのに対して、フォトレジスト層の開口部から水素がドープされた領域の多結晶ケイ素膜の平均結晶粒径は約10μm程度であった。即ち、チャネル領域の大きさが2μm×2μmの薄膜トランジスタ50、30μm×30μmの薄膜トランジスタ60ともに必ずチャネル領域が数個の結晶粒で形成されたことになる。
【0090】
比較例として、水素ドープを行わずに薄膜トランジスタを作製して同様の測定を行うと、チャネル領域の大きさが2μm×2μmの薄膜トランジスタのキャリア移動度及びキャリア移動度のばらつきは同様であったが、チャネル領域の大きさが30μm×30μmの薄膜トランジスタのキャリア移動度は150cm/V・s と低い値となった。これは、30μm×30μmのチャネル領域が数100個もの結晶粒で形成されたためである。
【0091】
(作用効果)
次に、作用効果について説明する。
【0092】
本実施形態に係る半導体装置(アレイ基板91)は、チャネル領域13,31に多結晶ケイ素膜が用いられると共に、チャネル領域に含まれるケイ素の結晶粒数が数個〜数十個(2〜99個程度)である薄膜トランジスタ50,60を備えたことを特徴とする。また、本実施形態に係る薄膜トランジスタ50,60を備えた半導体装置(アレイ基板91)の製造方法は、ガラス基板10上に非晶質ケイ素膜12を形成する膜形成ステップと、ガラス基板10上に形成された非晶質ケイ素膜12の所定領域に水素をドープする水素ドープステップと、非晶質ケイ素膜12に非晶質ケイ素の結晶化を促進させる触媒元素17をドープする触媒元素ドープステップと、触媒元素17をドープした非晶質ケイ素膜12に加熱処理を施す第1結晶化ステップと、加熱処理を施した非晶質ケイ素膜12にレーザ光を照射する第2結晶化ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0093】
このような構成によれば、薄膜トランジスタの移動度などの電気特性を良好にし、かつ同一面積のチャネル領域を有する電界効果薄膜トランジスタ間での特性ばらつきを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法、液晶表示装置及び多結晶ケイ素膜について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施形態に係る膜形成工程における非晶質ケイ素膜12の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るパターニング工程における非晶質ケイ素膜12の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るパターニング工程における非晶質ケイ素膜12の平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る触媒元素ドープ工程における非晶質ケイ素膜16の断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る第1結晶化工程における多結晶ケイ素膜18の断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る第2結晶化工程における多結晶ケイ素膜18へのレーザビーム照射の様子を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るチャネル領域13,31、ソース領域32,33、ドレイン領域34,35に対応する形状にパタ−ニングされた多結晶ケイ素膜20の平面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るゲート絶縁膜40が形成された多結晶ケイ素膜20の断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るアルミニウム膜41が形成された多結晶ケイ素膜20の断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係るゲート電極43が形成された多結晶ケイ素膜20の断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る層間絶縁膜46が形成された多結晶ケイ素膜20の断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る引き出し電極47が形成された多結晶ケイ素膜20の断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタ50,60を備えたアレイ基板91を用いた液晶表示装置90の平面図である。
【符号の説明】
【0096】
10 ガラス基板
11 酸化ケイ素膜
12 非晶質ケイ素膜
13,31 チャネル領域
14 開口部
15 フォトレジスト層
16 非晶質ケイ素膜
17 触媒元素
18 多結晶ケイ素膜
19 レーザビーム
20 多結晶ケイ素膜
30 nチャネル型TFT
32,33 ソース領域
34,35 ドレイン領域
40 ゲート絶縁膜
41 アルミニウム膜
43 ゲート電極
46 層間絶縁膜
47 引き出し電極
50,60 薄膜トランジスタ
90 液晶表示装置
91 アレイ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル領域に多結晶ケイ素膜が用いられると共に、該チャネル領域に含まれるケイ素の結晶粒数が2〜99個である薄膜トランジスタを備えた半導体装置。
【請求項2】
チャネル領域に多結晶ケイ素膜が用いられると共に、該チャネル領域に含まれるケイ素の結晶粒数が2〜99個である薄膜トランジスタを液晶表示素子に備えた液晶表示装置。
【請求項3】
絶縁性基板上に非晶質ケイ素膜を形成する膜形成ステップと、
上記絶縁性基板上に形成された非晶質ケイ素膜の所定領域に水素をドープする水素ドープステップと、
上記非晶質ケイ素膜に非晶質ケイ素の結晶化を促進させる触媒元素をドープする触媒元素ドープステップと、
上記触媒元素をドープした非晶質ケイ素膜に加熱処理を施す第1結晶化ステップと、
上記加熱処理を施した非晶質ケイ素膜にレーザ光を照射する第2結晶化ステップと、
を備えた薄膜トランジスタを有する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記膜形成ステップで形成する非晶質ケイ素膜の水素濃度が、1.0×1020〜5.0×1021atoms/cmである半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記膜形成ステップにおける非晶質ケイ素膜の形成を、モノシランガス及びアルゴンガスの混合気体を用いたプラズマCVD法により行う半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記膜形成ステップと上記水素ドープステップとの間に、上記水素をドープする所定領域を規定するためのフォトレジストのパターニングを上記非晶質ケイ素膜上に行うパターニングステップをさらに備えた半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記水素ドープステップで水素をドープした非晶質ケイ素膜の上記所定領域における水素濃度が、1.0×1022〜2.5×1022atoms/cmである半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記水素ドープステップにおける水素のドープを、上記非晶質ケイ素膜への水素イオンの注入により行う半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記水素ドープステップにおける水素のドープを、上記非晶質ケイ素膜を水素プラズマ雰囲気中に曝すことにより行う半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記水素ドープステップで水素をドープする所定領域は、薄膜トランジスタのチャネル領域の少なくとも一部を含む半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記触媒元素ドープステップでドープする触媒は、鉄、コバルト、ニッケル、ゲルマニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、イリジウム、白金、銅及び金のうちの少なくとも1種類の元素を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記触媒元素ドープステップで触媒元素をドープした非晶質ケイ素膜表面における触媒元素濃度が、1.0×1010〜1.0×1012atoms/cmである半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記第1結晶化ステップにおける非晶質ケイ素膜の加熱処理を、500〜800℃の温度範囲で行う半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記第2結晶化ステップで照射するレーザ光の波長が126〜370nmである半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記第2結晶化ステップで照射するレーザ光がパルス発振エキシマレーザビームである半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記第2結晶化ステップで照射するレーザ光として上記非晶質ケイ素膜表面を線状に照射する線状レーザビームを用いると共に、該線状レーザビームをその短軸方向にステップ走査することで照射する半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項3に記載された半導体装置の製造方法において、
上記第2結晶化ステップにおけるレーザ光を、上記触媒元素をドープした非晶質ケイ素膜を加熱処理して得られた結晶構造を部分的に溶融するエネルギー密度で照射する半導体装置の製造方法。
【請求項18】
含有するケイ素の結晶粒数が1×10〜1×10〔個/mm〕である多結晶ケイ素膜。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−172150(P2008−172150A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5949(P2007−5949)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】