説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】 表面にキャップメタル膜が形成された銅配線を含む半導体装置において、ビア接続の歩留まりや抵抗の均一性を良好にする。
【解決手段】 本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された絶縁膜に、配線溝を形成する工程(S100)と、絶縁膜上全面に、バリアメタル膜を形成する工程(S102)と、バリアメタル膜上全面に、配線溝内を埋め込むように銅膜を形成する工程(S104)と、絶縁膜表面に、バリアメタル膜が残る条件で、配線溝部外の銅膜を研磨により除去する工程(S106)と、銅膜を研磨により除去する工程の後に、配線溝部内に形成された銅膜上に、選択的にキャップメタル膜を形成する工程(S108)と、キャップメタル膜を研磨により平坦化する工程(S110)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅配線を含む半導体装置において、銅配線上に、銅拡散防止機能を有するキャップ膜が形成された構成が知られている。特許文献1には、銅を含む金属配線上にキャップ膜が形成され、当該キャップ膜の表面がシリサイド化された構成の半導体装置が開示されている。特許文献1には、キャップ膜表面をシリサイド化することにより、酸化およびフッ酸による浸食を効果的に防止することができると記載されている。
【0003】
特許文献2には、半導体基板の全面に凹部パターンを埋め込む導電性膜を形成する工程と、凹部パターン以外の領域の導電性膜を除去する工程と、導電性膜上に選択成長または優先成長によってキャップ導電性膜を形成する工程とを有し、その後に、CMP処理等によって、絶縁膜の表面の付着物を除去する処理が開示されている。特許文献3には、配線材料膜を異方性堆積し、その後表面保護膜を全面に形成した後配線溝以外の拡散防止膜、配線層、表面保護膜をCMP法、エッチバック法等により除去する工程が記載されている。
【特許文献1】特開2003−243392号公報
【特許文献2】特開2003−100746号公報
【特許文献3】特開平9−64034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4は、キャップ膜を有する従来の半導体装置の製造手順を示すフローチャートである。また、図5は、従来の半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。以下、図4および図5を参照して、従来の半導体装置の製造手順を説明する。
【0005】
まず、半導体基板(不図示)上に形成された層間絶縁膜12に配線溝13を形成する(S10(図4)、図5(a))。つづいて、半導体基板上全面にバリアメタル膜14、および銅膜16を形成する(S12およびS14(図4)、図5(b))。バリアメタル膜14は、たとえばTaN、Ta、Ti、TiN、W、WN等により構成することができる。銅膜16は、たとえば以下のようにして形成することができる。まず、CVD法やPVD法により、銅シード膜を形成する。つづいて、電解めっきにより銅膜を形成し、配線溝13内を銅膜により埋め込む。
【0006】
次いで、化学機械研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により、配線溝13外部に露出した銅膜16およびバリアメタル膜14を除去する(S16(図4)、図5(c))。これにより、銅配線が形成される。その後、無電解めっきにより、銅膜16上にキャップメタル膜18を選択的に形成する(S18(図4)、図5(d))。ここで、キャップメタル膜18は、たとえばCoWPにより構成することができる。
【0007】
つづいて、半導体基板上全面に、層間絶縁膜20を形成する(S20(図4)、図5(e))。
【0008】
図6は、以上のような手順で製造した半導体装置10の構成を模式的に示す断面図である。ここで、層間絶縁膜12上には、層間絶縁膜20、層間絶縁膜26、および層間絶縁膜34が形成される。層間絶縁膜20には、バリアメタル膜22およびビア膜24により構成されたビアが形成される。層間絶縁膜26には、バリアメタル膜28および銅膜30aにより構成された配線、ならびにバリアメタル膜28および銅膜30bにより構成された配線が形成される。銅膜30aおよび銅膜30b上には、それぞれ、キャップメタル膜32aおよびキャップメタル膜32bが形成される。
【0009】
図示したように、銅膜16は、グレイン毎にたとえば(111)、(200)、または(110)等、面方位が相違する。そのため、銅膜16表面に面方位の異なるグレインが露出する。銅膜16表面の面方位が異なると、その上におけるキャップメタル膜18の形成されやすさが異なり、膜厚も異なってくる。銅膜16の銅拡散防止を図り、銅膜16のEM(Electro-Migration)やSIV(Stress Induced Void)等の信頼性劣化を防ぐためには、銅膜16表面全体をキャップメタル膜18で確実に覆うようにする必要がある。そのためには、キャップメタル膜18が形成されにくい箇所でもキャップメタル膜18が銅膜を覆っているようにしなければならない。そうすると、キャップメタル膜18が形成されやすい箇所の膜厚が厚くなってしまう。キャップメタル膜18の膜厚が厚くなると、その上に形成されるビアのビア抵抗が上昇してしまう。
【0010】
図6では、銅膜30aおよび銅膜30bについて、それぞれ面方位(111)および(200)の断面を示す。このような場合、各配線上に形成されるキャップメタル膜32aおよびキャップメタル膜32bの膜厚も、その下の銅膜の面方位によって異なってしまう。このように、キャップメタル膜32aおよびキャップメタル膜32bの膜厚が均一でないと、ビア抵抗のばらつきが生じる。
【0011】
さらに、キャップメタル膜18表面に凹凸がある状態で、その上に層間絶縁膜を堆積していくと、半導体装置10の平坦性が悪化するという問題も生じる。
【0012】
特許文献1に記載の半導体装置においても、キャップメタル膜に凹凸がある場合、シリサイド化された表面にもその凹凸が反映されるため、上述したのと同様の問題が生じる。また、層間絶縁膜上にキャップメタル膜が形成された場合、信頼性が劣化してしまう。
【0013】
また、キャップメタル膜18を形成する工程において、層間絶縁膜12上にもキャップメタル膜18の金属材料が付着してしまうことがある(図5(d)および図5(e)の黒丸)。層間絶縁膜12上に金属材料が付着していると、配線間ショートが生じたり、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)等の信頼性が劣化してしまう。
【0014】
特許文献2に記載された処理のように、キャップメタル膜形成後に絶縁膜表面の付着物を除去する方法では、工程が増えてしまう。また、絶縁膜表面の付着物を完全に除去するのが難しいということもある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、
半導体基板上に形成された絶縁膜に、凹部を形成する工程と、
前記絶縁膜上全面に、バリアメタル膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜上全面に、前記凹部内を埋め込むように銅膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜を前記絶縁膜上全面に残して前記凹部外の前記銅膜を研磨により除去する工程と、
前記銅膜を研磨により除去する工程の後に、前記凹部内に形成された前記銅膜上に、選択的にキャップメタル膜を形成する工程と、
前記キャップメタル膜を研磨により平坦化する工程と、
を含み、
前記キャップメタル膜を研磨により平坦化する工程において、前記凹部外の前記バリアメタル膜を研磨により除去する半導体装置の製造方法が提供される。
【0016】
このようにすれば、キャップメタル膜の表面を平坦化することができる。そのため、たとえばキャップメタル膜下層の銅膜が複数の面方位を有し、キャップメタル膜を形成する工程において、キャップメタル膜の表面に凹凸が形成されていた場合でも、キャップメタル膜の表面をなめらかにすることができる。また、キャップメタル膜の膜厚を均等にすることができる。これにより、銅膜上にビアを形成した際のビア接続の歩留まりや抵抗の均一性を良好に保つことができる。さらに、半導体装置の平坦性を良好にすることができる。さらに、本発明において、銅膜を研磨により除去する工程において、銅膜表面も平坦化されているため、その上に形成されるキャップメタル膜の膜厚をより均一にすることができる。
【0017】
また、キャップメタル膜形成時には、絶縁膜上にバリアメタル膜が形成されており、このバリアメタル膜は、キャップメタル膜を平坦化する際に、同時に除去される。そのため、絶縁膜表面に金属材料が付着するのを防ぐことができる。また、キャップメタル膜の平坦化とバリアメタル膜の除去を同時に行うため、工程数が増えることなく、このような効果を得ることができる。これにより、半導体装置の製造コストを抑えることもできる。さらに、たとえば絶縁膜としてポーラス材料を用いた場合、キャップメタル膜形成時に、絶縁膜表面に金属材料が付着すると、絶縁膜表面や絶縁膜中に変性層が形成されやすくなる。しかし、本発明の半導体装置の製造方法によれば、キャップメタル膜形成時に、絶縁膜表面がバリアメタル膜により覆われているため、このような変性層の形成も抑えることができる。これにより、リークやTDDB等の信頼性劣化を防ぐことができる。
【0018】
ここで、研磨により除去する工程、および研磨により平坦化する工程は、化学機械研磨法により実行することができる。また、キャップメタル膜は、バリアメタル膜や銅膜とは異なる材料により構成することができる。このようにすれば、たとえば、研磨により銅膜を除去する工程において、研磨条件を適宜制御することにより、バリアメタル膜を残して銅膜のみを除去することができる。また、たとえば、研磨によりキャップメタル膜を平坦化する工程において、研磨条件を適宜制御することにより、バリアメタル膜を除去するとともに、キャップメタル膜が研磨されすぎないようにすることができる。
【0019】
本発明によれば、
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜中に形成され、複数の面方位を有する銅膜により構成された配線と、
前記銅膜表面に形成されたキャップメタル膜と、
を含み、
前記キャップメタル膜の表面粗さRMS(Root-Mean-Square)が10nm以下である半導体装置が形成される。
【0020】
このような構成の半導体装置により、キャップメタル膜の膜厚を均等にすることができる。これにより、銅膜上にビアを形成した際のビア接続の歩留まりや抵抗の均一性を良好に保つことができる。さらに、半導体装置の平坦性を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、表面にキャップメタル膜が形成された銅配線を含む半導体装置において、ビア接続の歩留まりや抵抗の均一性を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0023】
図1は、本実施の形態における半導体装置の配線の製造手順を示すフローチャートである。
【0024】
本実施の形態において、まず、半導体基板上に形成された層間絶縁膜に、配線溝(凹部)を形成する(S100)。つづいて、層間絶縁膜上全面にバリアメタル膜を形成する(S102)。次いで、バリアメタル膜上全面に、配線溝内を埋め込むように銅膜を形成する(S104)。その後、第1のCMPにより、バリアメタル膜を層間絶縁膜上全面に残して配線溝外の銅膜を研磨により平坦化除去する。このとき、バリアメタル膜が除去されない条件でCMPを行う(S106)。この後、配線溝内に形成された銅膜上に、選択的にキャップメタル膜を形成する(S108)。次いで、第2のCMPにより、キャップメタル膜を研磨により平坦化するとともに、配線溝外のバリアメタル膜も除去する(S110)。これにより、配線が形成される。その後、半導体基板上全面に層間絶縁膜を形成する(S112)。
【0025】
本実施の形態において、キャップメタル膜を形成した後に、バリアメタル膜とともにキャップメタル膜の表面が第2のCMPにより平坦化される。そのため、キャップメタル膜形成時に、その下層の銅膜表面の面方位の違いによりキャップメタル膜に凹凸があった場合でも、表面を平坦化することができ、キャップメタル膜の膜厚を均等にすることができる。これにより、銅膜上にビアを形成した際のビア接続の歩留まりや抵抗の均一性を良好に保つことができる。さらに、半導体装置の平坦性を良好にすることができる。
【0026】
また、第2のCMPにより、キャップメタル膜が平坦化されるため、キャップメタル膜形成時の膜厚を厚めに形成しても、膜厚が形成された部分は除去することができる。そのため、キャップメタル膜が銅膜表面全面を覆うように、厚く形成することができるため、銅膜表面全面に確実にキャップメタル膜を形成することもできる。これにより、キャップメタル膜による銅拡散防止を確実にするとともに、EMやSIV等の信頼性を高くすることができる。
【0027】
さらに、本実施の形態における半導体装置の製造手順によれば、キャップメタル膜を形成する際には、層間絶縁膜上にバリアメタル膜が形成されている。また、バリアメタル膜は、第2のCMPで除去される。そのため、層間絶縁膜上にキャップメタル膜の金属材料が付着するのを防ぐこともできる。これにより、配線間ショートを防ぐことができ、TDDB等の信頼性も高く保つことができる。
【0028】
図2は、本実施の形態における半導体装置の配線の製造手順を示す工程断面図である。
まず、半導体基板(不図示)上に形成された第1の層間絶縁膜102に配線溝103を形成する(図2(a))。半導体基板は、たとえばシリコン基板とすることができる。配線溝103は、既知のリソグラフィ技術およびエッチング技術により、第1の層間絶縁膜102上に所定形状にパターニングされたレジスト膜を形成し、レジスト膜をマスクとして形成することができる。
【0029】
つづいて、半導体基板上全面にバリアメタル膜104、および銅膜106を形成する(図2(b))。バリアメタル膜104は、たとえば、スパッタリング法により形成することができる。バリアメタル膜104は、たとえば、TaN、Ta、Ti、TiN、W、WN、TiSiN、またはTaSiN等により構成することができる。バリアメタル膜104は、これらの材料の積層膜とすることもできる。銅膜106は、たとえば以下のようにして形成することができる。まず、CVD法やPVD法により、銅シード膜を形成する。つづいて、電解めっきにより銅膜を形成し、配線溝103内を銅膜により埋め込む。また、銅膜106は、CVD法、PVD法、またはスパッタリング法により形成することもできる。銅膜106は、たとえば銀等の銅以外の金属を含むこともでき、銅と銀やAl等の金属との合金とすることもできる。
【0030】
次いで、第1のCMPにより、配線溝103外部に露出した銅膜106を除去する(図2(c))。ここで、第1のCMPは、銅膜106とバリアメタル膜104との選択比が高く、バリアメタル膜104が研磨されにくい条件で行うことが好ましい。また、配線溝103内の銅膜106も所定厚さ研磨され、配線溝103内にリセス107が形成されるようにすることが好ましい。このとき、銅膜106の表面の高さが、第1の層間絶縁膜102の表面の高さよりも低い位置となるようにすることができる。
【0031】
つづいて、無電解めっきにより、銅膜106上にキャップメタル膜108を選択的に形成する(図2(d))。キャップメタル膜108は、一般的にキャップメタル膜の材料として用いられる種々の材料を用いることができる。キャップメタル膜108は、たとえばCo、Ni、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Cd、In、Pt、Au、Pb、またはBiを含む材料により構成することができる。また、キャップメタル膜108は、B、N、P、V、Cr、Mn、Fe、W、Re、またはMoと他の金属との合金により構成することもできる。
【0032】
本実施の形態において、キャップメタル膜108は、バリアメタル膜104とは異なる材料により構成することが好ましい。これにより、後の工程で、キャップメタル膜108とバリアメタル膜104とをCMPにより除去する際に、研磨条件を適宜設定することにより、キャップメタル膜108の中央がオーバー研磨されるのを防ぐことができる。
【0033】
また、キャップメタル膜108は、銅膜106とも異なる材料により構成することができる。キャップメタル膜108は、層間絶縁膜やバリアメタル膜との密着性が銅膜106よりも良好な材料により構成することができる。さらに、キャップメタル膜108は、アモルファス材料により構成することができる。キャップメタル膜108をアモルファス材料により構成することにより、銅への拡散バリア性が増し、銅の拡散防止のためにさらにバリア絶縁膜等を設ける必要がなくなる。これにより、一般に誘電率の高いバリア絶縁膜を用いない構成とすることができ、配線容量を低減することができる。また、銅膜106に含まれる銅の拡散を抑制することができる。このような観点から、キャップメタル膜108は、P、B、Wを含む構成とすることができる。キャップメタル膜108をCoWPにより構成し、たとえばPやWの濃度を増加させることにより、主成分のCoの結晶粒成長を抑制させ、キャップメタル膜108をアモルファスまたは微結晶とすることができる。
【0034】
また、キャップメタル膜108は、最終製品における所望の膜厚(たとえば5〜25nm)よりも厚く形成しておき、その後に平坦化により所望の膜厚に形成することができる。本実施の形態において、キャップメタル膜108の膜厚は、たとえば20〜60nmとすることができる。これにより、後の平坦化処理において、キャップメタル膜108の表面を平坦化しつつ、膜厚を所望の値とすることができる。
【0035】
本実施の形態において、キャップメタル膜108は、たとえば、CoB、CoWP、またはNiWP等の多元系合金により構成することができる。このようなキャップメタル膜108を設けることにより、銅膜106がキャップメタル膜108と金属―金属接合を形成し、EMやSIVを良好にすることができる。
【0036】
たとえば、キャップメタル膜108をCoWPにより構成する場合、以下のようにして形成することができる。まず、パラジウム触媒を銅膜106表面に形成し、無電解めっきにより銅膜106表面にCoWP膜を形成する。これにより、キャップメタル膜108が形成される。また、パラジウム触媒を用いない方法によりCoWPを堆積することもできる。
【0037】
次いで、第2のCMPにより、配線溝103外部に露出したバリアメタル膜104を除去する。このとき、キャップメタル膜108の表面も同時に平坦化される(図2(e))。これにより、キャップメタル膜108の表面と第1の層間絶縁膜102の表面との高さが等しくなるように形成される。さらに、銅膜106の表面以外にバリアメタル膜104の金属材料(図2(d)の黒丸)が付着していた場合でも、第2のCMPにより、金属材料を除去することができる。
【0038】
次に、第2のCMPの条件を説明する。第2のCMPにおいては、配線溝103外部に露出したバリアメタル膜104を除去するとともに、キャップメタル膜108の表面も同時に平坦化し、キャップメタル膜108の表面粗さが所望の値となるように制御する。ここで、キャップメタル膜108の表面粗さRMSは、10nm以下、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは2nm以下とすることができる。これにより、配線/ビア抵抗ばらつきを抑えることができる。
【0039】
ここで、キャップメタル膜108に起因するビア抵抗Rは、以下の式から導かれる。
R=ρ・t/S・・・(1)
(ここで、ρ:CoWPの抵抗率、t:CoWPの膜厚、S:ビアの底面積)
【0040】
たとえば、上記ビア抵抗Rが5Ωの場合、ビア抵抗ばらつきの要求値10%以内にしようとすると、許容される抵抗変動ΔRは0.5Ωとなる。以下、ビアの直径を100nm(半径50nm)とする。
【0041】
(1)から、t=R・S/ρ、Δt=ΔR・S/ρとなる。ここで、ΔR=0.5Ω、S=π(50nm)、ρ=50μΩcmとなり、Δt=7.9nmとなる。つまり、この条件下では、キャップメタル膜の膜厚変動が7.9nm以下となるようにする必要がある。
【0042】
キャップメタル膜108の表面粗さRMSは、用いる材料、ビア抵抗、ばらつきの要求値等に応じて適宜設定することができるが、本発明者等は、キャップメタル膜108の表面粗さRMSが、10nm以下、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは2nm以下となるような第2のCMPの条件を検討した。
【0043】
たとえば、第2のCMPでは、本実施の形態において、キャップメタル膜108表面とバリアメタル膜104とを同時に研磨するため、キャップメタル膜108表面とバリアメタル膜104との表面に腐食層を形成する薬品を含むスラリーを用いる。また、スラリーとしては、たとえば、アルミナなどを研磨砥粒とする酸化剤を使用した酸性のスラリーを用いることができる。これにより、化学的に被研磨表面に形成される金属酸化層(腐食層)を研磨砥粒で物理的に除去して研磨することができる。
【0044】
たとえば、特許文献2には、キャップメタル膜を形成した後に、絶縁膜の表面の付着物を除去するためにCMPを行うことが記載されている。しかし、絶縁膜表面の付着物を除去するためのCMPは、CMP対象が絶縁膜であり、本実施の形態の第2のCMPのように、キャップメタル膜108表面平坦化する目的で行う場合とはCMP条件が異なると考えられる。単に絶縁膜表面をCMP処理しただけでは、キャップメタル膜108の表面粗さを上記のような所望の値となるようにすることはできない。
【0045】
また、本実施の形態において、キャップメタル膜108は、第2のCMP後にも、銅膜106表面全体を覆った構成とすることができる。
【0046】
その後、第1の層間絶縁膜102上に第2の層間絶縁膜120を形成する(図2(f))。
【0047】
図3は、以上のようにして形成した配線上に、ビアおよび上層配線を形成した半導体装置100の構成を模式的に示す断面図である。
【0048】
第1の層間絶縁膜102上に形成された第2の層間絶縁膜120には、バリアメタル膜122およびビア膜124が形成される。また、第2の層間絶縁膜120上には、第3の層間絶縁膜126が形成される。第3の層間絶縁膜126には、バリアメタル膜128および銅膜130aにより構成された配線、ならびにバリアメタル膜128および銅膜130bにより構成された配線が形成される。銅膜130aおよび銅膜130b上には、それぞれ、キャップメタル膜132aおよびキャップメタル膜132bが形成される。
【0049】
ここで、第3の層間絶縁膜126に形成された配線も、第1の層間絶縁膜102に形成された配線と同様の手順で形成することができる。すなわち、まず、銅膜130aおよび銅膜130b形成後に第1のCMPを行う。次いで、銅膜130aおよび銅膜130b上にキャップメタル膜132aおよびキャップメタル膜132bを形成した後に、第3の層間絶縁膜126の配線溝外部に形成されたバリアメタル膜128が第2のCMPにより除去される。このとき、キャップメタル膜132aおよびキャップメタル膜132bの表面も平坦化される。これにより、銅膜の面方位が異なる配線上に形成されたキャップメタル膜132aおよびキャップメタル膜132bの膜厚を均一にすることができる。また、第3の層間絶縁膜126上には第4の層間絶縁膜134が形成される。以上の手順を繰り返すことにより、多層配線構造が得られる。このようにして形成した半導体装置100は、平坦性を良好にすることができる。
【0050】
本実施の形態において、第1の層間絶縁膜102および第3の層間絶縁膜126は、たとえば比誘電率が3.3以下、より好ましくは2.9以下の低誘電率膜により構成することができる。第1の層間絶縁膜102および第3の層間絶縁膜126は、たとえば、たとえば、SiOC(SiOCH)、メチルシルセスキオキサン(MSQ)、水素化メチルシルセスキオキサン(MHSQ)、有機ポリシロキサンまたはこれらの膜をポーラス化したもの等により構成することができる。また、その他の絶縁膜、たとえば第2の層間絶縁膜120および第4の層間絶縁膜134等も、低誘電率膜により構成してもよいが、これらはたとえばシリコン酸化膜等により構成することもできる。
【0051】
さらに、図示していないが、各層間絶縁膜間には、エッチングストッパ膜等が設けられた構成とすることもできる。
【実施例】
【0052】
(例1)
図2を参照して説明した手順で、図2(f)に示した構成の半導体装置を製造した。ここで、第1の層間絶縁膜102はSiOC、バリアメタル膜104はTa/TaN、キャップメタル膜108はCoWPにより構成した。まず、図2(a)に示すように、SiOCからなる層間絶縁膜102に配線溝103をドライエッチで形成した。図2(b)に示すように、TaN、Taを順次膜厚20nm、10nmで堆積し、バリアメタル膜104を形成した。さらにシードCu層をスパッタで100nm堆積し、電解めっきでCuを800nm堆積した。つづいて、図2(c)に示すように、CMPで配線溝以外のCuを除去した。このとき、Cuの上面に、バリアメタル膜104の上面からの幅が50nm程度のリセスが生じるようにCMP時間を調整した。次いで、図2(d)に示すように、CoWPを無電解めっきにより平均膜厚50nm程度だけ堆積した。その後、図2(e)に示すように、CoWPとTa/TaNを同時研磨して、バリアメタル膜104を除去し、Cu表面にCoWPが残るようにした。このとき、CoWP表面とTa/TaN表面に腐食層を形成する薬品を含むスラリーを用いた。その結果、CoWPの膜厚は20nm程度となった。次に図2(f)に示すように、層間絶縁膜としてSiOC膜を400nm堆積した。
【0053】
(例2)
図5を参照して説明した手順で、図5(e)に示した構成の半導体装置を製造した。ここで、層間絶縁膜12はSiOC、バリアメタル膜14はTa/TaN、キャップメタル膜18はCoWPにより構成した。キャップメタル膜18は、例1のキャップメタル膜108と同様に形成した。
【0054】
例1および例2で製造した半導体装置のキャップメタル膜表面の表面粗さを、原子間力顕微鏡(AFM)により、以下の条件で測定した。
測定範囲:10μm
測定分解能:0.05μm;
段差測定範囲:20nm;
段差測定精度:0.5nm
【0055】
例1でキャップメタル膜108を形成した後、第2のCMPを行った後のキャップメタル膜108表面の表面粗さRMSは、約2−5nmだった。また、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果、キャップメタル膜の表面とそのキャップメタル膜が形成された層間絶縁膜の表面が同一平面にあることが確認された。
【0056】
例2で銅膜16を形成した後、CMPを行った後の銅膜16の表面の表面粗さRMSは、約5−10nmだった。また、その後に銅膜16上にキャップメタル膜18を形成した後のキャップメタル膜18の表面粗さRMSは、約30nmだった。
【0057】
以上のように、本実施の形態における半導体装置100の製造方法によれば、キャップメタル膜の表面が平坦化される。これにより、キャップメタル膜の膜厚を均等にすることができる。そのため、銅膜上にビアを形成した際のビア接続の歩留まりや抵抗の均一性を良好に保つことができる。さらに、半導体装置の平坦性を良好にすることができる。さらに、銅膜表面全面に確実にキャップメタル膜を形成することもできる。これにより、キャップメタル膜による銅拡散防止を確実にするとともに、EMやSIV等の信頼性を高くすることができる。
【0058】
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明した。この実施の形態および実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
なお、以上の実施の形態において、銅膜106をCMP除去する際(第1のCMP)、配線溝103内にリセス107が形成される条件を用いる例を説明した。しかし、リセス107を形成しない構成とすることもできる。この場合、第2のCMPにおいてキャップメタル膜108よりもバリアメタル膜104が優先的にCMP除去される条件を用いることができる。また、バリアメタル膜104として、CMP除去されやすいたとえばWN等を用いることができる。これにより、リセス107を形成しない構成においても、キャップメタル膜108の表面粗さが所望の値となるように制御することができる。
【0060】
なお、以上の実施の形態では、第1のCMPにおいて、バリアメタル膜104を第1の層間絶縁膜102表面に残しておき、第2のCMPにおいてキャップメタル膜108とバリアメタル膜104とを同時に研磨して、キャップメタル膜108の表面を平坦化して、キャップメタル膜108の表面粗さが所望の値である本発明の半導体装置を得る例を示した。ただし、本発明の半導体装置は、この製造工程により製造されたものに限られない。たとえば、第1のCMPにおいて、配線溝103外部のバリアメタル膜104を除去するとともに、第2のCMPにおいてキャップメタル膜108を研磨して、キャップメタル膜108の表面を平坦化する処理を行うことにより、キャップメタル膜108の表面粗さが所望の値である半導体装置を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の配線の製造手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態における半導体装置の配線の製造手順を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】キャップ膜を有する従来の半導体装置の製造手順を示すフローチャートである。
【図5】従来の半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図6】従来の半導体装置の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
100 半導体装置
102 第1の層間絶縁膜
103 配線溝
104 バリアメタル膜
106 銅膜
107 リセス
108 キャップメタル膜
120 第2の層間絶縁膜
122 バリアメタル膜
124 ビア膜
126 第3の層間絶縁膜
128 バリアメタル膜
130a 銅膜
130b 銅膜
132a キャップメタル膜
132b キャップメタル膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された絶縁膜に、凹部を形成する工程と、
前記絶縁膜上全面に、バリアメタル膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜上全面に、前記凹部内を埋め込むように銅膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜を前記絶縁膜上全面に残して前記凹部外の前記銅膜を研磨により除去する工程と、
前記銅膜を研磨により除去する工程の後に、前記凹部内に形成された前記銅膜上に、選択的にキャップメタル膜を形成する工程と、
前記キャップメタル膜を研磨により平坦化する工程と、
を含み、
前記キャップメタル膜を研磨により平坦化する工程において、前記凹部外の前記バリアメタル膜を研磨により除去する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記銅膜を研磨により除去する工程において、前記凹部に充填された前記銅膜の上部を除去して前記凹部上部にリセスを形成する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記キャップメタル膜を形成する工程において、前記キャップメタル膜を、前記バリアメタル膜とは異なる材料により形成する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記キャップメタル膜を研磨により平坦化する工程において、前記キャップメタル膜の上面が、前記絶縁膜の上面と実質的に同一平面となるように、前記キャップメタル膜を平坦化する半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜中に形成され、複数の面方位を有する銅膜により構成された配線と、
前記銅膜表面に形成されたキャップメタル膜と、
を含み、
前記キャップメタル膜の表面粗さRMSが10nm以下である半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記キャップメタル膜は、平坦化処理が施された面を有する半導体装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の半導体装置において、
前記配線は、バリアメタル膜をさらに含み、
前記キャップメタル膜は、前記バリアメタル膜とは異なる材料により構成された半導体装置。
【請求項8】
請求項5乃至7いずれかに記載の半導体装置において、
前記キャップメタル膜は、アモルファス材料により構成された半導体装置。
【請求項9】
請求項5乃至8いずれかに記載の半導体装置において、
前記キャップメタル膜の上面が、前記絶縁膜の上面と実質的に同一平面に形成された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−35734(P2007−35734A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213593(P2005−213593)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】