説明

半導体装置および金属薄膜の形成方法

【課題】アルミニウム膜の流動性の低下を抑制しつつ、耐熱性を向上させる。
【解決手段】イオンビームデポジションなどの方法にて高純度アルミニウム膜15を絶縁層13上に形成した後、イオンビームデポジション法にて、添加元素17を含む添加元素膜16を高純度アルミニウム膜15上に形成し、添加元素膜16の熱処理を行うことで、添加元素膜16に含まれる添加元素17を高純度アルミニウム膜15に拡散させ、高純度アルミニウム膜15に添加元素17を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置および金属薄膜の形成方法に関し、特に、高純度アルミニウム膜に銅やシリコンなどの元素を添加する方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に用いられる電極や配線層としては、導電性、加工容易性および密着性などの観点からアルミニウム膜が広く用いられている。
一方、半導体装置の高密度化や通電電力の増加などに伴って回路の電流密度が増加する傾向にあり、配線層には導電性とともに耐熱性が要求されるようになっている。ここで、アルミニウム膜は、電流密度が高くなると、エレクトロマイグレーションが生じ易くなるため、アルミニウム膜に銅などの元素を添加することで、アルミニウム原子が移動するのを抑制する対策がとられている。
【0003】
ここで、アルミニウム膜に銅などの元素を添加する方法としては、必要な元素を所定量だけ含有するターゲット材料を用いてスパッタを行う方法がある(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平9−306916号公報
【特許文献2】特開2006−196829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、必要な元素を所定量だけ含有するターゲット材料を用いてスパッタを行う方法では、アルミニウムの純度が低下することから、成膜時にアルミニウム膜の流動性が低下する。このため、アルミニウム膜が付着される付着面に凹凸がある場合には、付着面へのアルミニウム膜の追従性が低下し、凹部や隅部へのアルミニウムの充填が十分になされなくなることから、電流密度が部分的に高くなり、応力が集中する要因となる。この結果、エレクトロマイグレーションを十分に抑えることができなるだけでなく、熱応力などによって表面が損傷し易くなり、アルミニウム膜の劣化が生じ易くなるという問題があった。
そこで、本発明の目的は、アルミニウム膜の流動性の低下を抑制しつつ、耐熱性を向上させることが可能な半導体装置および金属薄膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、請求項1記載の半導体装置によれば、半導体基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に電極または配線層として形成された高純度アルミニウム膜と、前記高純度アルミニウム膜の表面から拡散させることにより前記高純度アルミニウム膜に添加された添加元素とを備えることを特徴とする。
また、請求項2記載の金属薄膜の形成方法によれば、高純度アルミニウム膜を絶縁層上に成膜する工程と、前記高純度アルミニウム膜上に添加元素膜を成膜する工程と、前記添加元素膜の熱処理によって前記添加元素膜に含まれる添加元素を前記高純度アルミニウム膜に拡散させる工程とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、請求項3記載の金属薄膜の形成方法によれば、アルミニウム合金膜を絶縁層上に成膜する工程と、高純度アルミニウム膜を前記アルミニウム合金膜上に成膜する工程と、前記高純度アルミニウム膜上に添加元素膜を成膜する工程と、前記添加元素膜の熱処理によって前記添加元素膜に含まれる添加元素を前記高純度アルミニウム膜に拡散させる工程とを備えることを特徴とする。
また、請求項4記載の金属薄膜の形成方法によれば、前記高純度アルミニウム膜の純度が4N(99.99%)であることを特徴とする。
また、請求項5記載の金属薄膜の形成方法によれば、前記高純度アルミニウム膜の純度が5N(99.999%)以上であることを特徴とする。
また、請求項6記載の金属薄膜の形成方法によれば、前記添加元素が、Cu、V、Si、Fe、Ni、Co、Cr、Mg、Tiのうちの少なくとも1種類から選択されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、高純度アルミニウム膜を形成してから高純度アルミニウム膜に添加元素を注入することにより、高純度化されたアルミニウムのまま下地層に付着させることができ、成膜時に膜の流動性が低下するのを防止することが可能となるとともに、アルミニウムを用いた電極または配線層の耐熱性を向上させることができ、エレクトロマイグレーションを抑えることが可能となるとともに、熱応力などによって電極または配線層の表面が損傷し易くなるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る金属薄膜の形成方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る金属薄膜の形成方法を示す断面図である。
図1(a)において、フォトリソグラフィー技術およびイオン注入技術を用いてB、P、Asなどの不純物を半導体基板11に選択的に注入することにより、半導体基板11の所定の領域に不純物拡散層12を形成する。なお、半導体基板11の材質としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaNまたはZnSeなどを用いることができる。
【0009】
そして、CVDなどの方法にて半導体基板11の表面全体に絶縁層13を形成し、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて絶縁層13をパターニングすることにより、不純物拡散層12の表面の一部を露出させる開口部14を形成する。なお、絶縁層13の材質としては、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などを用いることができる。また、絶縁層13の表面には微細な凹凸があってもよい。また、絶縁層13の膜厚は、例えば、1000Åとすることができる。
【0010】
次に、図1(b)に示すように、イオンビームデポジションなどの方法にて高純度アルミニウム膜15を絶縁層13上に形成する。なお、高純度アルミニウム膜15の純度は4N(99.99%)であることが好ましく、さらに好ましくは5N(99.999%)以上とするのがよい。また、高純度アルミニウム膜15の膜厚は、例えば、1μmとすることができる。また、高純度アルミニウム膜15の成膜時に半導体基板11側に−50kVの負バイアスを印加するようにしてもよい。また、高純度アルミニウム膜15の成膜時にアルミニウムの一部または全てをイオン化するようにしてもよい。また、高純度アルミニウム膜15は、電極または配線層として使用することができる。
【0011】
また、イオンビームデポジション法としては、アルゴンガスを高周波コイル中でイオン化し、アルゴンイオンにてAlターゲットをスパッタするとともに加熱することでAl蒸気を発生させ、アルゴンプラズマ中でAlをイオン化することができる。ここで、Alをイオン化することで、通常のスパッタ蒸着法に比べてコンタミやガス中不純物がAlに混入するのを抑制することができ、成膜時の高純度アルミニウム膜15の流動性を向上させることができる。
【0012】
また、蒸着時には、高純度アルミニウム膜15の成膜時に半導体基板11側に負バイアスを印加することで、Alイオンの運動エネルギーを高め、成膜時の高純度アルミニウム膜15の流動性をより一層向上させることができる。
また、アルミニウムを高純度に保ったまま高純度アルミニウム膜15を絶縁層13上に形成することにより、成膜時に膜の流動性を向上させることができ、絶縁層13の表面に微細な凹凸がある場合においても、付着面への膜の追従性を確保し、凹部や隅部へのアルミニウムの充填を十分に施すことができる。このため、高純度アルミニウム膜15の電流密度が部分的に高くなるのを抑制することができ、応力の集中を緩和することが可能となることから、熱応力などによって表面が損傷するのを抑制することができる。
【0013】
次に、図1(c)に示すように、イオンビームデポジションなどの方法にて、添加元素17を含む添加元素膜16を高純度アルミニウム膜15上に形成する。なお、添加元素膜16に含まれる添加元素17としては、Cu、V、Si、Fe、Ni、Co、Cr、Mg、Tiのうちの少なくとも1種類から選択することができる。また、添加元素膜16の膜厚は、例えば、100Åとすることができる。
【0014】
次に、図1(d)に示すように、添加元素膜16の熱処理を行うことで、添加元素膜16に含まれる添加元素17を高純度アルミニウム膜15の結晶粒内または粒界に拡散させ、添加元素17を固溶または析出させることで、高純度アルミニウム膜15に添加元素17を添加する。なお、添加元素膜16の熱処理の温度は、例えば、350℃とすることができる。
ここで、添加元素膜16としてCuを選択することにより、アルミニウムを用いた電極または配線層の耐熱性を向上させることができ、エレクトロマイグレーションを抑えることが可能となる。また、添加元素膜16としてSiを選択することにより、Si基板からのSiの過度の拡散を抑えることができる。
【0015】
図2は、本発明の第2実施形態に係る金属薄膜の形成方法を示す断面図である。
図2(a)において、フォトリソグラフィー技術およびイオン注入技術を用いてB、P、Asなどの不純物を半導体基板21に選択的に注入することにより、半導体基板21の所定の領域に不純物拡散層22を形成する。
そして、CVDなどの方法にて半導体基板21の表面全体に絶縁層23を形成し、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて絶縁層23をパターニングすることにより、不純物拡散層22の表面の一部を露出させる開口部24を形成する。なお、絶縁層23の材質としては、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などを用いることができる。また、絶縁層23の表面には微細な凹凸があってもよい。また、絶縁層23の膜厚は、例えば、1000Åとすることができる。
【0016】
次に、図2(b)に示すように、スパッタなどの方法にてアルミニウム合金膜25を絶縁層23上に形成する。なお、アルミニウム合金膜25の膜厚は、成膜時のアルミニウム合金膜25の流動性に支障をきたさないように設定することができ、例えば、0.5μmとすることができる。
次に、図2(c)に示すように、イオンビームデポジションなどの方法にて高純度アルミニウム膜26をアルミニウム合金膜25上に形成する。なお、高純度アルミニウム膜26の純度は4N(99.99%)であることが好ましく、さらに好ましくは5N(99.999%)以上とするのがよい。また、高純度アルミニウム膜26の膜厚は、例えば、1μmとすることができる。また、高純度アルミニウム膜26の成膜時に半導体基板21側に−50kVの負バイアスを印加するようにしてもよい。また、高純度アルミニウム膜26の成膜時にアルミニウムの一部または全てをイオン化するようにしてもよい。また、高純度アルミニウム膜26は、電極または配線層として使用することができる。
【0017】
ここで、Alをイオン化することで、通常のスパッタ蒸着法に比べてコンタミやガス中不純物の混入などを抑制することができ、成膜時の高純度アルミニウム膜26の流動性を向上させることができる。
また、蒸着時にはAlイオンの運動エネルギーが高いため、高純度アルミニウム膜26の成膜時に半導体基板21側に負バイアスを印加することで、成膜時の高純度アルミニウム膜26の流動性をより一層向上させることができる。
【0018】
また、アルミニウムを高純度に保ったまま高純度アルミニウム膜26をアルミニウム合金膜25上に形成することにより、成膜時に膜の流動性を向上させることができ、アルミニウム合金膜25の表面に微細な凹凸がある場合においても、付着面への膜の追従性を確保し、凹部や隅部へのアルミニウムの充填を十分に施すことができる。このため、高純度アルミニウム膜26の電流密度が部分的に高くなるのを抑制することができ、応力の集中を緩和することが可能となることから、熱応力などによって表面が損傷するのを抑制することができる。
【0019】
次に、図2(d)に示すように、イオンビームデポジションなどの方法にて、添加元素28を含む添加元素膜27を高純度アルミニウム膜15上に形成する。なお、添加元素膜27に含まれる添加元素27としては、Cu、V、Si、Fe、Ni、Co、Cr、Mg、Tiのうちの少なくとも1種類から選択することができる。また、添加元素膜27の膜厚は、例えば、100Åとすることができる。
【0020】
次に、図2(e)に示すように、添加元素膜27の熱処理を行うことで、添加元素膜27に含まれる添加元素28を高純度アルミニウム膜26に拡散させ、高純度アルミニウム膜26に添加元素28を添加する。なお、添加元素膜27の熱処理の温度は、例えば、400℃とすることができる。
これにより、アルミニウムを用いた電極または配線層の厚膜化を図りつつ、アルミニウムを用いた電極または配線層の耐熱性を向上させることができ、電極または配線層としてそれ相当量の膜厚を要する場合においても、エレクトロマイグレーションを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る金属薄膜の形成方法を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る金属薄膜の形成方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
11、21 半導体基板
12、22 不純物拡散層
13、23 絶縁層
14、24 開口部
15、26 高純度アルミニウム膜
16、27 添加元素膜
17、28 添加元素
25 アルミニウム合金膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に電極または配線層として形成された高純度アルミニウム膜と、
前記高純度アルミニウム膜の表面から拡散させることにより前記高純度アルミニウム膜に添加された添加元素とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
高純度アルミニウム膜を絶縁層上に成膜する工程と、
前記高純度アルミニウム膜上に添加元素膜を成膜する工程と、
前記添加元素膜の熱処理によって前記添加元素膜に含まれる添加元素を前記高純度アルミニウム膜に拡散させる工程とを備えることを特徴とする金属薄膜の形成方法。
【請求項3】
アルミニウム合金膜を絶縁層上に成膜する工程と、
高純度アルミニウム膜を前記アルミニウム合金膜上に成膜する工程と、
前記高純度アルミニウム膜上に添加元素膜を成膜する工程と、
前記添加元素膜の熱処理によって前記添加元素膜に含まれる添加元素を前記高純度アルミニウム膜に拡散させる工程とを備えることを特徴とする金属薄膜の形成方法。
【請求項4】
前記高純度アルミニウム膜の純度が4N(99.99%)であることを特徴とする請求項2または3記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項5】
前記高純度アルミニウム膜の純度が5N(99.999%)以上であることを特徴とする請求項2または3記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項6】
前記添加元素が、Cu、V、Si、Fe、Ni、Co、Cr、Mg、Tiのうちの少なくとも1種類から選択されることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項記載の金属薄膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−4556(P2009−4556A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163915(P2007−163915)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】