説明

半導体装置の製造方法、基板の製造方法及び基板処理装置

【課題】SiCエピタキシャル膜成膜は高温下で行われる為、十分な断熱構造を構築する課題があった。
【解決する手段】
基板を処理する反応室と、反応室内であって、少なくとも基板が載置された領域を囲うように形成され、一端が閉塞された筒形状の被加熱体と、反応室と被加熱体との間であって、被加熱体を囲うように形成され、被加熱体の閉塞された一端側の一端が閉塞された筒形状の断熱材と、反応室の外であって、少なくとも基板が載置された領域の周囲に設けられる誘導加熱部と、反応室内に少なくとも原料ガスを供給するガス供給系と、ガス供給系が少なくとも原料ガスを反応室内へ供給し、基板を処理するよう制御するコントローラと、を備える基板処理装置を提供することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法、基板の製造方法及び基板処理装置に関して、特に、炭化珪素(以下、SiCとする)エピタキシャル膜を基板上に成膜する工程を有する、半導体装置の製造方法、基板の製造方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCは特に、パワーデバイス用素子材料として注目されている。一方で、SiCはシリコン(以下Siとする)に比べて結晶基板やデバイスの作製が難しいことが知られている。
【0003】
従来のSiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置は、複数枚の基板を板状サセプタに平面的に配置して、1500℃〜1800℃に加熱し、成膜に用いる原料ガスを一箇所から反応室内に供給して、基板上にSiCエピタキシャル膜を成長させた。
【0004】
特許文献1では、サセプタに対向する面への原料ガスに起因する堆積物の付着及び、原料ガス対流が発生することによるSiCエピタキシャル成長の不安定化、これらの課題を解決するためにサセプタの基板を保持する面を下方に向くように配置した真空成膜装置及び薄膜形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−196807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術においては、いくつかの問題点がある。まず、多数枚の基板を処理する場合や、図14に示すように基板の径を大きくする場合にサセプタを大きくする必要があり、反応室の床面積が増大すること、また原料ガスは一箇所から供給される構成となっているため、反応室中のガス濃度分布が均一でなく、ウエハに成膜される膜の厚さが不均一になること、更にSiCエピタキシャル膜を成長する際に1500℃〜1800℃と高温で行われるため、ウエハ面内の温度制御が困難であること等が挙げられる。
【0007】
本発明は上述の問題点を解決し、高温条件下で行われるSiCエピタキシャル膜成長において複数枚の基板を均一に成膜することができる半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、基板を処理する反応室と、前記反応室内であって、少なくとも前記基板が載置された領域を囲うように形成され、一端が閉塞された筒形状の被加熱体と、前記反応室と前記被加熱体との間であって、前記被加熱体を囲うように形成され、前記被加熱体の閉塞された一端側の一端が閉塞された筒形状の断熱材と、前記反応室の外であって、少なくとも前記基板が載置された領域の周囲に設けられる誘導加熱部と、前記反応室内に少なくとも原料ガスを供給するガス供給系と、前記ガス供給系が少なくとも原料ガスを前記反応室内へ供給し、前記基板を処理するよう制御するコントローラと、を備える基板処理装置を提供する。
【0009】
本発明の他の態様によれば、反応室内に設けられた一端が閉塞された筒形状の断熱材の内側に前記断熱材の閉塞された一端側の一端が閉塞された筒形状の被加熱体内へ基板を搬入する工程と、前記反応室の周囲に設けられた誘導加熱部により前記被加熱体を誘導加熱するとともに、前記断熱材により前記被加熱体の外への放熱を抑制し、前記被加熱体内に少なくとも原料ガスを供給して前記基板を処理する工程と、を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【0010】
更に本発明の他の態様によれば、反応室内に設けられ一端が閉塞された筒形状の断熱材の内側に前記断熱材の閉塞された一端側の一端が閉塞された筒形状の被加熱体内へ基板を搬入する工程と、前記反応室の周囲に設けられた誘導加熱部により前記被加熱体を誘導加熱するとともに、前記断熱材により前記被加熱体の外への放熱を抑制し、前記被加熱体内に少なくとも原料ガスを供給して前記基板を処理する工程と、を有する基板製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多数枚の基板に均一な膜厚で成膜することができる半導体製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態が適用される半導体製造装置10の斜視図を示す。
【図2】本発明の一実施形態が適用される半導体製造装置10の側面断面図を示す。
【図3】本発明の一実施形態が適用される半導体製造装置10を構成する各部の制御構成を示す。
【図4】本発明の一実施形態が適用される半導体製造装置10における被加熱体48と反応管42の間に断熱材54を設けない場合の反応炉40内の温度分布を計算した結果を示す。
【図5】本発明の一実施形態が適用される半導体製造装置10における被加熱体48と反応管42の間に断熱材54を設ける場合の反応炉40内の温度分布を計算した結果を示す。
【図6】本発明の一実施形態に適用される半導体製造装置10の処理炉40を示す上面断面図である。
【図7】本発明の一実施形態が適用される半導体製造装置10の処理炉40及びその周辺構造の概略図を示す。
【図8】本発明の第二実施形態が適用される半導体製造装置10における断熱材54の側面図を示す。
【図9】本発明の第二実施形態が適用される半導体製造装置10における断熱材54の上面図を示す。
【図10】本発明の第二実施形態が適用される半導体製造装置10における断熱材54の反応炉40内の温度分布を示す。
【図11】本発明の第二実施形態が適用される半導体製造装置10における断熱材54の変形例の断熱材の形状を示す。
【図12】本発明の第三実施形態が適用される半導体製造装置10における断熱材54の場合の反応炉40内の温度分布を示す。
【図13】本発明の第三実施形態が適用される半導体製造装置10における断熱材54の変形例の場合の反応炉40内の温度分布を示す。
【図14】パンケーキ型サセプタ構造と基板の位置関係を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るSiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10の一例であり、斜視図にて示す。この基板処理装置としての半導体製造装置10は、バッチ式縦型熱処理装置であり、主要部が配置される筐体12を有する。半導体製造装置10には、例えば、Si又はSiC等で構成された基板としてのウエハ14を収納する基板収納器としてフープ(以下、ポッドという)16が、ウエハキャリアとして使用される。この筐体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されており、このポッドステージ18にポッド16が搬送される。ポッド16には、例えば25枚のウエハ14が収納され、蓋が閉じられた状態でポッドステージ18にセットされる。
【0014】
筐体12内の正面側であって、ポッドステージ18に対向する位置にはポッド搬送装置20が配置されている。また、このポッド搬送装置20の近傍にはポッド棚22、ポッドオープナ24及び基板枚数検知器26が配置されている。ポッド棚22はポッドオープナ24の上方に配置されポッド16を複数個載置した状態で保持するように構成されている。基板枚数検知器26はポッドオープナ24に隣接して配置される。ポッド搬送装置20はポッドステージ18とポッド棚22とポッドオープナ24との間でポッド16を搬送する。ポッドオープナ24はポッド16の蓋を開けるものであり、基板枚数検知器26は蓋を開けられたポッド16内のウエハ14の枚数を検知する。
【0015】
筐体12内には基板移載機28、基板支持具としてのボート30が配置されている。基板移載機28は、アーム(ツィーザ)32を有し、図示しない駆動手段により、上下回転動作が可能な構造になっている。アーム32は例えば5枚のウエハを取り出すことができ、このアーム32を動かすことにより、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16及びボート30間にてウエハ14を搬送する。
【0016】
ボート30は例えばカーボングラファイトやSiC等の耐熱性材料で構成されており、複数枚のウエハ14を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持するように構成されている。なお、ボート30の下部には例えばカーボングラファイトや石英やSiC等の耐熱性材料で構成された円盤形状の断熱部材としてのボート断熱部34が配置されており、後述する被加熱体48からの熱が処理炉40の下方側に伝わりにくくなるように構成されている(図2参照)。
【0017】
筐体12内の背面側上部には処理炉40が配置されている。この処理炉40内に複数枚のウエハ14を装填したボート30が搬入され熱処理が行われる。
【0018】
図2はSiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10の処理炉40の側面断面図を示す。なお図2においては少なくともSi(シリコン)原子含有ガスと塩素(以下Clとする)原子含有ガスと炭素(以下Cとする)原子含有ガスと還元ガスとを供給する第1のガス供給口68、及び第1の排気口90を代表例としてそれぞれが1つずつ図示されている。また反応室を形成する反応管42と断熱材53との間に不活性ガスを供給する第2のガス供給口360、第2の排気口390が図示されている。
【0019】
処理炉40は、円筒形状の反応室44を形成する反応管42を備える。反応管42は、石英またはSiC等の耐熱材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管42の内側の筒中空部には、反応室44が形成されており、Si又はSiC等で構成された基板としてウエハ14をボート30によって水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積み上げて保持した状態で収納可能に構成されている。
【0020】
反応管42の下方には、この反応管42と同心円状にマニホールドが配設されている。マニホールドはたとえばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。このマニホールドは反応管42を支持するように設けられている。なお、このマニホールドと反応管42との間にはシール部材としてOリングが設けられている。このマニホールドが図示しない保持体に支持されることにより、反応管42は垂直に据えつけられた状態になっている。この反応管42とマニホールドにより反応容器が形成されている。
【0021】
処理炉40は、加熱される被加熱体48及び磁場発生部として誘導加熱源である、たとえば誘導コイル50を備える。被加熱体48は処理室44内に配設されており、該被加熱体は少なくとも基板であるウエハ14の配列領域を囲むように設けられている。この被加熱体48は反応管42の外側に設けられた誘導コイル50により発生される磁場によって加熱される構成となっている。被加熱体48が発熱することにより、処理室44内が加熱される。
【0022】
被加熱体48は、一端(即ち図示上側)が閉塞された筒形状となるように形成されている。これより供給されるガスを封止することができる。更に反応室44上部からの放熱を抑制することができる。
【0023】
更に好ましくは、誘導コイル50は被加熱体48の天井部よりも高い位置まで設けると良い。これは、被加熱体48の側壁より天井部のほうが放熱しやすく、特に天井部の中央部が放熱しやすいためである。これにより、上述の問題を解決し、ウエハ14を均一に加熱することができる。
【0024】
被加熱体48の近傍には、反応室44内の温度を検出する温度検出体として図示しない温度センサが設けられている。誘導加熱源としての誘導コイル50及び温度センサには、電気的に温度制御部52が接続されており、温度センサにより検出された温度情報に基づき誘導コイル50への通電具合を調節することにより反応室44内の温度が所定の温度分布となるよう所定のタイミングにて制御するように構成されている(図3参照)。
【0025】
被加熱体48と反応管42の間には、例えば誘導されにくいカーボンフェルト等で構成された断熱材53が設けられ、この断熱材53を設けることにより、被加熱体48の熱が反応管42あるいは反応管42の外側へ伝達するのを抑制することができる。
【0026】
図2に示されるように、断熱材53は筒形状の側壁部54と、断熱材53の一端(即ち図示上側)を閉塞する蓋部55とで構成されている。これにより、側壁部54と蓋部55とで断熱材53の内側に中空部を設けることができ、その内側に被加熱体48を設ける反応炉構成をつくることができる。また、誘導コイル50が被加熱体48を誘導加熱させて、被加熱体48の内部に載置される基板としてのウエハ14に所定の処理を行う際に発生する被加熱体48からのふく射熱の影響を断熱材53により遮断することができる。また、側壁部54と蓋部55とを別の部材で構成する。これにより、断熱材53が蓋部55と側壁部54とで分割することが出来るので、製作が容易になることやそれに伴い、製作コストの低減が可能になる。また、メンテナンス作業(例えば、部品交換作業等)をするときに作業が行いやすくなり、装置を運用する際のランニングコストを低減することができる。
【0027】
本実施形態において、断熱材53の態様は、被加熱体48における閉塞された一端の向きに閉塞された筒形状となることが可能である限りにおいて、特に限定されず各種の態様を有してよい。例えば、断熱材53は、円筒状の側壁部と側壁部の一端に設けられた蓋部とを一体形成し、上部が閉塞した形状であっても良い。
【0028】
また、好ましくは、断熱材53の蓋部55の厚さは、蓋部55の周縁部よりも蓋部55の中央部の方が厚いように形成されてもよい。これにより、被加熱体48の上部に設けられている閉塞部の中央部からの熱逃げを低減することができ、被加熱体48の上部の周縁部より中央部がより加熱されやすくなるので、ウェハ14の載置されている領域における温度の制御性を向上することができる。また、被加熱体48の上端部からのふく射熱の影響を低減することができるので、断熱材53の外に設けられる反応管が、ふく射熱の影響によって劣化することを抑制する。
【0029】
更に好ましくは、誘導コイル50は断熱材53の蓋部55よりも高い位置まで設けると良い。これにより、ウエハ14を均一に加熱することができる。また、断熱材53の内側に設けられる被加熱体48の全体を囲い、被加熱体48の閉塞部を十分に加熱させることができるので、ウェハ14の載置される領域の温度制御性を向上することができる。
【0030】
好ましくは、反応管42の周囲に設けられる誘導コイル50の間隔に粗密を設けることが良い。これにより、誘導電流の密度を制御することができ、ウェハ14の載置領域の温度の制御性を向上することができるので、ウェハ14の載置領域の温度の均一性を向上することができる。
【0031】
更に好ましくは、誘導コイル50の間隔が密に構成された領域において、断熱材53の側壁部54を厚く形成することが良い。これにより、誘導コイル50の間隔が密に構成される領域の被加熱体48から外へのふく射熱の影響を低減することができ、断熱材53の外側に設けられている反応管42が局所的に劣化されることを抑制することができる。
【0032】
また、好ましくは、本実施形態では、ウェハ14が載置される領域にかかる熱エネルギより、断熱材53の蓋部55又は下側の開放部にかかる熱エネルギを大きくするように構成されてもよい。例えば、コイル50の間隔は、ウェハ14の載置される領域における間隔より、断熱材53の蓋部55または下側の開放部における間隔の方が密に配設されるように構成されてもよい。これにより、誘導加熱部である誘導コイル50が断熱材53の内側に設けられる被加熱体48全体を囲い、被加熱体48の閉塞部を十分に加熱させることができ、配置されている誘導コイル50の間隔を制御することで、ウェハ14が載置される領域の上下端における温度分布の不均一を低減させることができ、ウェハ14の載置される領域の温度制御性を向上する。
【0033】
更に好ましくは、本実施形態では、断熱材53の蓋部55にかかる熱エネルギより、断熱材53の下側の開放部にかかる熱エネルギの方が大きくするように構成されてもよい。例えば、断熱材53の蓋部55における間隔より、断熱材53の下側の開放部における間隔の方が密になるように設けてもよい。これにより、誘導加熱部である誘導コイル50が断熱材53の内側に設けられる被加熱体48全体を囲い、被加熱体48の閉塞部を十分に加熱させることができ、配置されている誘導コイル50の間隔を制御することで、ウェハ14が載置される領域の上下端における温度分布の不均一を低減させることができ、ウェハ14の載置される領域の温度制御性を向上する。
【0034】
ここで、図4に被加熱体48と反応管42の間に断熱材53を設けない場合の反応室内の温度分布を計算した結果を、図5に被加熱体48と反応管42の間に断熱材53を設ける場合の反応室内の温度分布を計算した結果を、それぞれ示す。図4及び図5はそれぞれ図の上部は反応室44の断面図の一部を表示し、図中の線は反応室44内の温度分布を示している。また図の下部に各箇所の温度とウエハ14中心からの距離の関係を示し、横軸がウエハ14中心からの距離であり、縦軸は各箇所の温度を示している。
【0035】
図4の場合、つまり断熱材53を設けない場合は、ウエハ14が所定の温度(例えば1600℃)であると、被加熱体48の熱が反応管42、又は反応管42の外側へ熱が伝達し、反応管42における温度は、1320℃になる。この状態では、例えば、反応管42として例えば石英を用いた場合、石英が劣化してしまう。
【0036】
次に図5の場合、つまり反応管42と被加熱体48の間に断熱材53を設ける場合は、ウエハ14が所定の温度(例えば1600℃)であっても、断熱材53が被加熱体48からの熱を吸収することにより、反応管42に達する温度は457℃とすることができる。これにより反応管42、又は、反応管42の外側へ熱が伝達することを抑制し、反応管42として例えば石英を用いても反応管42が劣化することを抑制することができる。
【0037】
また、誘導コイル50の外側には、反応室44内の熱が外側に伝達するのを抑制するための、例えば水冷構造である外側断熱壁が反応室44を囲むように設けられている。更に、外側断熱壁の外側には、誘導コイル50により発生された磁場が外側に漏れるのを防止する磁気シール58が設けられている。(図2参照)
図2及び図6に示すように被加熱体48とウエハ14との間に設置され、少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガスとC(炭素)原子含有ガスと還元ガスを供給する第1のガス供給口68と第1の排気口90、反応管42と断熱材53の間に1つの第2のガス供給口360、第2の排気口390が配置されている。それぞれについて詳細に説明をする。
【0038】
少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとして例えばモノシラン(以下SiH4とする)ガス、Cl(塩素)原子含有ガスとして例えば塩化水素(以下HClとする)ガスとC(炭素)原子含有ガスとして例えばプロパン(以下C3H8とする)ガス、還元ガスとして例えば水素(以下H2とする)ガスとを供給する第1のガス供給口68は、例えばカーボングラファイトで構成され、被加熱体48内側に設けられており、マニホールドを貫通するようにマニホールドに取り付けられている。
【0039】
ガス供給口68は、第1のガスライン222に接続されている。この第1のガスライン222は、例えばSiH4ガス、HClガス、C3H8ガス、H2ガスそれぞれに対して流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(以下、MFCとする。)211a、211b、211c、211d及びバルブ212a、212b、212c、212dを介して例えばSiH4ガス源210a、HClガス源210b、C3H8ガス源210c、H2ガス源210dに接続されている。
【0040】
この構成により、例えばSiH4ガス、HClガス、C3H8ガス、H2ガスそれぞれの供給流量、濃度、分圧を反応室44内において制御することができる。バルブ212a、212b、212c、212d、MFC211a、211b、211c、211dは、ガス流量制御部78によって電気的に接続されており、それぞれ供給するガスの流量が所定流量となるよう、所定のタイミングにて制御するようにされ(図3参照)、例えばSiH4ガス、HClガス、C3H8ガス、H2ガスそれぞれのガス源210a、210b、210c、210d、バルブ212a、212b、212c、212d、MFC211a、211b、211c、211d、ガスライン222、第1のガス供給口68によりガス供給系として、第1のガス供給系を構成される。
【0041】
なお、上述はガス供給口68より少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガスとC(炭素)原子含有ガスと還元ガスとを供給したが、これに限らず、それぞれに対応したガス供給口を設けても良く、また、これらのガスは組み合わせて供給できるようにガス供給口を設けても良い。
【0042】
なお、Cl(塩素)原子含有ガスとしてHClガスを例示したがCl2ガス(塩素ガス)を用いても良い。
【0043】
なお、上述では、Si(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガスを供給したが、Si(シリコン)原子とCl(塩素)原子を含むガス、例えば、テトラクロロシラン(以下、SiCl4とする)ガス、トリクロロシラン(以下、SiHCl3とする)ガス、ジクロロシラン(以下SiH2Cl2)ガスを供給しても良い。
【0044】
なお、C(炭素)原子含有ガスとしてC3H8ガスを例示したが、エチレン(以下C2H4とする)ガス、アセチレン(以下、C2H2とする)ガスを用いても良い。
【0045】
なお、ガス供給口68から、更にドーパントガスも供給しても良いし、ドーパントガスを供給するためのガス供給口を設けて、ドーパントガスを供給しても良い。
【0046】
また、第1の排気口90は、第1の供給口68の位置に対して対向面に位置するように配置され、マニホールドには、第1の排気口90に接続されたガス排気管230が貫通するように設けられている。ガス排気管230の下流側には図示しない圧力検出器として圧力センサ及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller、以下APCとする)バルブ214を介して真空ポンプ等の真空排気装置220が接続されている。圧力センサ及びAPCバルブ214には、圧力制御部98が電気的に接続されており、この圧力制御部は圧力センサにより検出された圧力に基づいて、APCバルブ214の開度を調整することにより被加熱体48内側の圧力が所定の圧力になるよう、所定のタイミングにて制御するように構成されている(図3参照)。
【0047】
このように、第1のガス供給口68から少なくともSi(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガスとC(炭素)原子含有ガスと還元ガスとを供給し、供給されたガスはSi又はSiCで構成されたウエハ14に対し平行に流れ、第1の排気口90に向かって流れるため、ウエハ14全体が効率的にかつ均一にガスに晒される。
【0048】
なお、好ましくは、図6に示すように、反応室内であって、被加熱体48とウエハ14との間には第1のガス供給口68と第1の排気口90との間には、構造物400を設けると良い。例えば、対向する位置にそれぞれ構造物400を設ける。構造物400として、好ましくは断熱材、又はカーボングラファイト材等で構成され、耐熱やパーティクル発生を抑制することができる。これにより、第1のガス供給口68より供給されるガスはウエハ14全体に効率的にかつ均一に晒され、ウエハ14上に成膜されるSiCエピタキシャル膜の膜厚均一性は向上する。
【0049】
第2のガス供給口360は反応管42と断熱材53との間に配置されており、マニホールドを貫通するように取り付けられている。更に第2の排気口390が、反応管42と断熱材53との間に配置され、第2のガス供給口360に対して対向面に位置するように配置され、マニホールドには第2の排気口390に接続されたガス排気管230が貫通するように設けられている。この第2のガス供給口360は不活性ガスとして例えばアルゴン(以下、Arとする)ガスが供給され、SiCエピタキシャル膜成長に寄与するガスとして、例えばSi(シリコン)原子含有ガス又はC(炭素)原子含有ガス又はCl(塩素)原子含有ガス又はそれらの混合ガスが反応管42と断熱材53との間に侵入するのを防ぎ、反応管42の内壁又は断熱材53の外壁に不要な生成物が付着するのを防止することができる。
【0050】
反応管42と断熱材53との間に供給された不活性ガスは、第2の排気口390よりガス排気管230の下流側には図示しない圧力検出器として圧力センサ及び圧力調整器としてのAPCバルブ214を介して真空ポンプ等の真空排気装置220から排気される。圧力センサ及びAPCバルブ214には、圧力制御部が電気的に接続されており、この圧力制御部は圧力センサにより検出された圧力に基づいて、APCバルブ214の開度を調整することにより反応管42と断熱材53との間の空間の圧力が所定の圧力になるよう、所定のタイミングにて制御するように構成されている(図3参照)。
【0051】
なお、不活性ガスとしてArガスを例示したが、これに限らず、ヘリウム(以下Heとする)ガス、ネオン(以下Neとする)ガス、クリプトン(以下Krとする)、キセノン(以下Xeとする)等の希ガスより少なくとも1つのガス、又は上述の希ガスより少なくとも1つのガスとの組み合わせされたガスを供給しても良い。
【0052】
次に処理炉40周辺の構成について説明する。
【0053】
図7は処理炉40及びその周辺構造の概略図を示す。処理炉40の下方には、この処理炉40の下端開口を機密に閉塞するための炉口蓋体としてシールキャップ102が設けられている。シールキャップ102は例えばステンレス等の金属よりなり、円盤状に形成されている。シールキャップ102の上面には処理炉40の下端と当接するシール材としてのOリングが設けられている。シールキャップ102には回転機構218が設けられている。回転機構218の回転軸106はシールキャップ102を貫通してボート30に接続されており、このボート30を回転させることで、ウエハ14を回転させるように構成されている。シールキャップ102は処理炉40の外側に向けられた昇降機構として後述する昇降モータ122によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これにより、ボート30を処理炉40に対し搬入搬出することが可能となっている。回転機構218及び昇降モータ122には、駆動制御部108が電気的に接続されており、所定の動作をするよう所定のタイミングにて制御するよう構成されている(図3参照)。
【0054】
予備室としてロードロック室110の外面に下基板112が設けられている。下基板112には昇降台114と嵌合するガイドシャフト116及びこの昇降台114と螺合するボール螺子118が設けられている。下基板112に立設したガイドシャフト116及びボール螺子118の上端に上基板120が設けられている。ボール螺子118は上基板120に設けられた昇降モータ122により回転される。ボール螺子118が回転することにより昇降台114が昇降するように構成されている。
【0055】
昇降台114には中空の昇降シャフト124が垂設され、昇降台114と昇降シャフト124の連結部は気密となっている。昇降シャフト124は昇降台114と共に昇降するようになっている。昇降シャフト124はロードロック室110の天板126を遊貫する。昇降シャフト124が貫通する天板126の貫通穴はこの昇降シャフト124に対して接触することがないよう十分な余裕がある。ロードロック室110と昇降台114との間には昇降シャフト124の周囲を覆うように伸縮性を有する中空伸縮体としてベローズ128がロードロック室110を気密に保つために設けられている。ベローズ128は昇降台114の昇降量に対応できる十分な伸縮量を有し、このベローズ128の内径は昇降シャフト124の外形に比べ十分に大きく、ベローズ128の伸縮により接触することがないように構成されている。
【0056】
昇降シャフト124の下端には昇降基板130が水平に固着されている。昇降基板130の下面にはOリング等のシール部材を介して駆動部カバー132が気密に取り付けられる。昇降基板130と駆動部カバー132とで駆動部収納ケース134が構成されている。この構成により駆動部収納ケース134内部はロードロック室110内の雰囲気と隔離される。
【0057】
また、駆動部収納ケース134の内部にはボート30の回転機構218が設けられ、この回転機構218の周辺は冷却機構136により冷却される。
【0058】
電力ケーブル138は昇降シャフト124の上端からこの昇降シャフト124の中空部を通り回転機構218に導かれて接続されている。また、冷却機構136及びシールキャップ102には冷却流路140が形成されている。冷却水配管142は昇降シャフト124の上端からこの昇降シャフト124の中空部を通り冷却流路140に導かれて接続されている。
【0059】
昇降モータ122が駆動されボール螺子118が回転することで、昇降台114及び昇降シャフト124を介して駆動部収納ケース134を昇降させる。
【0060】
駆動部収納ケース134が上昇することにより、昇降基板130に気密に設けられているシールキャップ102が処理炉40の開口部である炉口144を閉塞し、ウエハ処理が可能な状態となる。駆動部収納ケース134が下降することにより、シールキャップ102と共にボート30が降下され、ウエハ14を外部に搬出できる状態となる。
【0061】
図3は炭化珪素エピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10を構成する各部の制御構成を示す。温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、操作部及び入出力部を構成し、半導体製造装置10全体を制御する主制御部150に電気的に接続されている。これら、温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、コントローラ152として構成されている。
【0062】
次に、上述したように構成された半導体製造装置10を用いて、半導体デバイスの製造工程の一工程として、例えばSiC等で構成されたウエハなどの基板上に、SiCエピタキシャル膜を形成する方法について説明する。なお、以下の説明において、半導体製造装置10を構成する各部の動作は、コントローラ152により制御される。
【0063】
まず、ポッドステージ18に複数枚のウエハ14を収容したポッド16がセットされると、ポッド搬送装置20によりポッド16をポッドステージ18からポッド棚20へ搬送し、このポッド棚22にストックする。次に、ポッド搬送装置20により、ポッド棚22にストックされたポッド16をポッドオープナ24に搬送してセットし、このポッドオープナ24によりポッド16の蓋を開き、基板枚数検知器26によりポッド16に収容されているウエハ14の枚数を検知する。
【0064】
次に、基板移載機28により、ポッドオープナ24の位置にあるポッド16からウエハ14を取り出し、ボート30に移載する。
【0065】
複数枚のウエハ14がボート30に装填されると、複数枚のウエハ14を保持したボート30は、昇降モータ122による昇降台114及び昇降シャフト124の昇降動作により反応室44内に搬入(ボートローディング)される。この状態で、シールキャップ102はOリングを介してマニホールドの下端をシールした状態となる。
【0066】
被加熱体48内側が所定の圧力(真空度)となるように真空排気装置220によって真空排気される。この際、被加熱体48内側の圧力は、圧力センサで測定され、この測定された圧力に基づき第1の排気口90及第2の排気口390に連通するAPCバルブ214がフィードバック制御される。また、ウエハ14及び被加熱体48内側が所定の温度となるように誘導加熱源としての誘導コイル50により加熱され、被加熱体48、基板であるウエハ14が加熱される。この際、被加熱体48内側が所定の温度分布となるように温度センサが検出した温度情報に基づき誘導コイル50への通電具合がフィードバック制御される。続いて、回転機構218により、ボート30が回転されることでウエハ14が周方向に回転される。
【0067】
続いて、SiCエピタキシャル成長反応に寄与するSi(シリコン)原子含有ガス及びCl(塩素)原子含有ガス、C(炭素)原子含有ガス及び還元ガスであるH2ガスはそれぞれ、ガス源210a、210b、210c、210dから供給され、被加熱体48内側に少なくとも1つ設けられる第1のガス供給口68より被加熱体48内側に噴出され、SiCエピタキシャル成長反応が行われる。
【0068】
このとき、Si(シリコン)原子含有ガス及びCl(塩素)原子含有ガス及び、C(炭素)原子含有ガス及び還元ガスであるH2ガスは、所定の流量となるように対応するMFC211a、211b、211c、211dの開度が調整された後、バルブ212a、212b、212c、212dが開かれ、それぞれのガスがガス供給管222を流通して、第1のガス供給口68から被加熱体48内側に供給される。
【0069】
第1のガス供給口より供給されたガスは、反応室44内の被加熱体48内側を通り、第1の排気口90からガス排気管230を通り排気される。供給されたガスは、被加熱体48内側を通過する際にウエハ14と接触しウエハ14の表面上にSiCエピタキシャル膜成長がなされる。
【0070】
またガス供給源210eより不活性ガスである例えばArガスは所定の流量となるように、対応するMFC211eの開度が調整された後、バルブ212eが開かれ、ガス供給管240を流通して、第2のガス供給口360から反応管42と断熱材53との間に形成される空間に供給される。第2のガス供給口360から供給された不活性ガスであるArガスは、処理室44内の断熱材53と反応管42との間に形成される空間を通過し、第2の排気口390から排気される。
【0071】
SiCエピタキシャル膜成長は、予め設定された時間が経過すると、上述のガスの供給を停止し、図示しない不活性ガス供給源から不活性ガスが供給され、被加熱体48内側が不活性ガスで置換されると共に、処理室44内の圧力が常圧に復帰される。
【0072】
その後、昇降モータ122によりシールキャップ102が下降されて、マニホールドの下端が開口されると共に、処理済ウエハ14がボート30に保持された状態でマニホールドの下端から反応管42の外部に搬出(ボートアンローディング)し、ボート30に支持された全てのウエハ14が冷えるまで、ボート30を所定位置で待機させる。次に、待機させたボート30のウエハ14が所定温度まで冷却されると、基板移載機28により、ボート30からウエハ14を取り出し、ポッドオープナ24にセットされている空のポッド16に搬送して収容する。その後、ポッド搬送装置20により、ウエハ14が収容されたポッド16をポッド棚22、またはポッドステージ18に搬送する。このようにして半導体製造装置10の一連の作用が完了する。
【0073】
本実施形態によれば、以下に示す効果のうち少なくとも1つ以上の効果を奏する。
【0074】
(1)断熱材53を設けることにより、被加熱体48の熱が反応管42、又は反応管42の外側へ伝達するのを抑制することができる。
【0075】
(2)また被加熱体48からの放熱量が断熱材53により抑制することができるので、誘導コイル50の出力を大きく低減することができる。
【0076】
(3)更に、反応室44内の温度が安定しやすくできる。
【0077】
(4)上記の効果により、反応室44内での一度の処理にて多数枚の基板に対してSiCエピタキシャル膜成長を行うことができる。
【0078】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
【0079】
第1実施形態では、反応管42と被加熱体48との間に断熱材53を設けて、被加熱体42から反応管42、又は反応管42より外側への熱の伝達を抑制したが、第2実施例では、図8及び図9に示すように複数の円筒形の断熱材53(説明の便宜上、図8において、複数の断熱材53の側壁部54a-dのみを図示している)を複数層に設け、それぞれの断熱材間に所定の空間を設けた。
【0080】
断熱材に用いられる材質として一般的に考えられるのは、熱伝導率の低い材質であり、本発明ではカーボンフェルトを選択し使用した。断熱性能を向上するために断熱材53の厚さを厚く設けることで、断熱材53での熱伝導による熱の移動を抑制し、被加熱体48から反応管42に対しての熱伝達する量を小さくすることができる。
【0081】
しかし、一方で誘導コイル50により被加熱体48を加熱する誘導加熱をする場合、断熱材53が厚いことで反応室44内の温度の制御が困難になる。例えば、SiCエピタキシャル膜の成膜が終了後に反応室44内の温度を降温する際に、誘導コイルの出力を切っても炉内の温度をなかなか下げることができないことが考えられる。これによりウエハ14を所定の温度まで冷却できずウエハ14を搬出するまでに、時間を要することになる。又は、断熱材53自体が電磁誘導され発熱してしまうことも考えられる。
【0082】
これらを解決するためには、電気抵抗の高い材料を選択し断熱材53の厚さを薄く設けることが望ましいが、これは上述の断熱性能に関する内容と相反する。
【0083】
そこで、第二実施形態として、図8及び図9に示すように、高温に耐えうる材料で構成された断熱材の厚さを薄くし円筒形の断熱材53を複数層に設けた。
【0084】
図10に示すように、複数層に側壁部54a-dを設けることで、高温状態の反応室44内の熱を反応管42、又は、反応管42の外側へ熱の伝達を効果的に抑制することができる。
【0085】
例えば、熱源である被加熱体48における温度をT1、側壁部54dにおける温度をT2とすると、ふく射による熱源の被加熱体48から側壁部54dに移動する熱量Q1は
【0086】
【数1】

となる(Aは表面積、εは放射率、σはステファン=ボルツマン定数とする)。
【0087】
同様に、側壁部54cにおける温度をT3、側壁部54bにおける温度をT4、・・・、内側からn番目の側壁部54nにおける温度をTnとするとき、それぞれの断熱材の間を移動する熱量は、
【0088】
【数2】

と表すことができる(nは整数、T∞は雰囲気温度とする)。
【0089】
ここで、Q1〜Qnまでをすべて足し合わせると、
【0090】
【数3】

ところで、Q1=Q2=Q3=・・・=Qnであるから、これをQとおくと、
【0091】
【数4】

となる。
【0092】
すなわち、断熱材n枚で熱源を覆うと、熱源からふく射により外部へ放出される熱量Qは、断熱材を1枚設けた場合と比較すると1/N倍に小さくなる。これは断熱材の熱伝導率や厚さに依らない。また断熱材の放射率は低い方が望ましいが、そうでなくても枚数を多くすれば断熱性能はコントロールできる。また、断熱材が誘導されるのを防止するために可能な限り薄くすることもできる。すなわち、この方法を用いるメリットは、断熱材の材料を選択する際に、耐熱性以外の物性値を考慮する必要性が軽減され、選択の幅が広がることになる。また、複数の断熱材の間の空間に外部から炉内温度より低いガスを供給するように構成すれば、炉内を所定の温度まで下げる時間を短くすることが可能となる。
【0093】
なお、上述の第二実施形態では、図9及び図10に示すように4つの円筒形の断熱材を用いて複数層構造を設けたが、これに限らず、3以上にしても良い。
【0094】
また断熱材53の形状は円筒状でなくてもよく、例えば、円筒は2以上に分割させた形状を組み合わせて断熱材の複数層構造を設けても良い。
【0095】
好ましくは、組み合わす際にできる隙間からの光を遮る為に、図11に示すように隙間ができる位置を周方向にずらしても良く、90°ずつ角度をずらして設けることが望ましい。
【0096】
これにより、断熱材に誘導電流が通電することを抑制し断熱材自体が発熱されにくくなるので断熱効果を向上することができる。また、炉内温度を下げる時間を短くするために炉内温度より低い温度のガスを供給する場合、組み合わせ時にできた隙間から冷却用のガスが断熱材の間の空間に流入するので、温度を下げるために供給するガスの供給口を少なくすることができる。また、図2における第2のガス供給口から供給される不活性ガスを冷却用のガスとして使用できる。
【0097】
本実施形態によれば、第1実施形態で説明した効果に加えて、以下に示す効果のうち少なくとも1つ以上の効果を奏する。
【0098】
(1)断熱材53を所定の空間を設けて設置することにより、被加熱体48から反応管42、又は反応管42の外側への熱伝達の形態をふく射とし、複数層構造によってこれを抑制することができる。
【0099】
(2)断熱材の厚さを薄く設けることができ、必要な断熱領域を低減することができるとともに、誘導加熱によって断熱材自体が加熱されることを抑制できる。
【0100】
(3)断熱材の間の空間に冷却用のガスを供給することにより、炉内の温度を速く下げることが可能となる。
【0101】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。
【0102】
第1実施形態では、反応管42と被加熱体48との間に断熱材53を設けて、被加熱体48から反応管42又は反応管42より外側への熱の伝達を抑制したが、図12aに示すように、反応室44の下端が開口し、上端が閉口している場合、第1実施形態で用いた断熱材では、加熱される被加熱体48に対して温度分布を生じ、そのため、図12bに示すように、加熱されるウエハ14に対しても垂直上下方向に温度分布が生じてしまう。
【0103】
第3実施例では、側壁部54の一部分の厚さが他の部分の厚さと異ならせた断熱材53を用いている。例えば側壁部54の垂直上下方向に対して、厚さに傾斜をかけた側壁部54を設け、図12cに示す。図12cに示すように側壁部54の厚さをそれぞれ上段がd1(mm、ミリメートル、以下mmとする)、中段をd(mm)、下段をd2(mm)とした時に、その厚さをd1<d<d2として、全体として傾斜を設けた。
【0104】
これにより、加熱されるウエハ14の垂直上下方向の温度分布を解消することができ、誘導加熱源である誘導コイル50の出力分布を低減できる。更に誘導コイル50の寿命を長期化することができる。
【0105】
なお、上述の第3実施形態の形態に限らず、例えば側壁部54の上部の厚さを厚くし、下部を薄くした傾斜を設けても良い。
【0106】
また、側壁部54の厚さが中段の厚さに対して上段は薄く、下段が厚い断熱材について例示したが、これに限らず、例えば図13aのような反応室44の場合、図13bに示すようにウエハ14の温度分布になる。このとき、図13cに示すように上段及び下段の厚さを厚くした断熱材を用いることで、加熱されるウエハ14の垂直上下方向の温度分布を解消することができる。
【0107】
更に好ましくは、本実施形態において、側壁部54の態様は、全体として傾斜を設けているが、加熱されるウエハ14の垂直上下方向の温度分布を解消することが可能である限りにおいて、特に限定されず各種の態様を有してよい。例えば、側壁部54の一部には、外壁よりも外側又は内壁よりも内側に突出させて段差部を形成してもよい。これにより、処理されるウェハ14の載置される領域の温度制御性を向上させ、断熱材53の下側の開放側からの熱逃げを小さくすることができる断熱材53の形態を、部材の成型しやすく、製作するコストを小さくして提供することができる。
【0108】
本実施形態によれば、第1及び第2実施形態で説明した効果に加えて、以下に示す効果のうち少なくとも1つ以上の効果を奏する。
【0109】
(1)側壁部54に厚さの傾斜を設けることで、ウエハ14の垂直上下方向の温度分布を解消することができる。
【0110】
(2)また、側壁部54により、ウエハ14の温度分布を解消することにより、誘導加熱による温度制御を、容易にすることができる。
【0111】
(3)また、誘導コイル50の出力分布を解消でき、誘導コイル50の寿命を長期化することができる。
【0112】
なお、本発明はSiCエピタキシャル膜成長に関して説明したが、その他のエピタキシャル膜及びCVD膜に関しても適用することができる。
【0113】
[付記]
以下に、本実施形態に係る好ましい態様を付記する。
【0114】
[付記1]
基板を処理する反応室と、反応室内であって、少なくとも基板が載置された領域を囲うように形成され、一端が閉塞された筒形状の被加熱体と、反応室と被加熱体との間であって、被加熱体を囲うように形成され、被加熱体の閉塞された一端側の一端が閉塞された筒形状の断熱材と、反応室の外であって、少なくとも基板が載置された領域の周囲に設けられる誘導加熱部と、反応室内に少なくとも原料ガスを供給する第1ガス供給系と、ガス供給系が少なくとも原料ガスを反応室内へ供給し、基板を処理するよう制御するコントローラと、を備える基板処理装置。
【0115】
[付記2]
反応室内に設けられた一端が閉塞された筒形状の断熱材の内側に断熱材の閉塞された一端の向きに閉塞された筒形状の被加熱体内へ基板を搬入する工程と、反応室の周囲に設けられた誘導加熱部により被加熱体を誘導加熱するとともに、断熱材により被加熱体の外への放熱を抑制し、被加熱体内に少なくとも原料ガスを供給して基板を処理する工程と、を有する半導体装置の製造方法。
【0116】
[付記3]
反応室内に設けられ一端が閉塞された筒形状の断熱材の内側に断熱材の閉塞された一端の向きに閉塞された筒形状の被加熱体内へ基板を搬入する工程と、反応室の周囲に設けられた誘導加熱部により被加熱体を誘導加熱するとともに、断熱材により被加熱体の外への放熱を抑制し、被加熱体内に少なくとも原料ガスを供給して基板を処理する工程と、を有する基板製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明に係る半導体装置の製造方法、基板の製造方法及び基板処理装置は、基板を処理する工程、特にSiCエピタキシャル膜を基板上に成膜する工程を有する半導体装置の製造方法、基板の製造方法及び基板処理装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0118】
10 半導体製造装置
12 筐体
14 ウエハ
16 ポッド
30 ボート
40 処理炉
42 反応管
44 処理室
48 被加熱体
50 磁気コイル
53 断熱部
54 側壁部
55 蓋部
68 第1のガス供給口
90 第1の排気口
150 主制御部
152 コントローラ
360 第2のガス供給口
390 第2の排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する反応室と、
前記反応室内であって、少なくとも前記基板が載置された領域を囲うように形成され、一端が閉塞された筒形状の被加熱体と、
前記反応室と前記被加熱体との間であって、前記被加熱体を囲うように形成され、前記被加熱体の閉塞された一端側の一端が閉塞された筒形状の断熱材と、
前記反応室の外であって、少なくとも前記基板が載置された領域の周囲に設けられる誘導加熱部と、
前記反応室内に少なくとも原料ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記ガス供給系が少なくとも原料ガスを前記反応室内へ供給し、前記基板を処理するよう制御するコントローラと、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記断熱材は、筒形状の側壁部と前記側壁部の一端側を閉塞する蓋部とで構成され、
前記側壁部と前記蓋部とは、異なる部材で構成される基板処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記断熱材は、筒形状の側壁部と前記側壁部の一端側を閉塞する蓋部とで構成され、
前記側壁部の厚さは、前記基板が載置された領域より、前記蓋部が設けられる前記側壁部の下端側、または、前記側壁部の上端側のほうが厚い基板処理装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記断熱材は、筒形状の側壁部と前記側壁部の一端側を閉塞する蓋部とで構成され、
前記蓋部の厚さは、前記蓋部の周縁部よりも前記蓋部の中央部の方が厚い基板処理装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記断熱材は、筒形状の側壁部と前記側壁部の一端側を閉塞する蓋部とで構成され、
前記誘導加熱部は、前記基板が載置された領域から少なくとも前記蓋部まで延在する基板処理装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記断熱材は、筒形状の側壁部と前記側壁部の一端側を閉塞する蓋部とで構成され、
前記誘導加熱部は、前記基板が載置された領域より、前記蓋部が設けられた前記側壁部の一端側、または、前記側壁部の他端側のほうが誘導電流密度の大きい基板処理装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記断熱材は、筒形状の側壁部と前記側壁部の一端側を閉塞する蓋部とで構成され、
前記誘導加熱部は、前記蓋部が設けられる前記側壁部の一端側より、前記側壁部の他端側のほうが誘導電流密度の大きい基板処理装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記断熱材は、複数の断熱部材で構成され、
前記複数の断熱部材の夫々の間には、空間が設けられる基板処理装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記複数の断熱部材の夫々の間の空間にガスを供給する第2ガス供給系を更に備える基板処理装置。
【請求項10】
請求項8において、
前記複数の断熱部材の夫々は、複数の部材により前記被加熱体を囲うように構成され、
前記複数の部材の夫々の間には、隙間がある基板処理装置。
【請求項11】
反応室内に設けられた一端が閉塞された筒形状の断熱材の内側に前記断熱材の閉塞された一端側の一端が閉塞された筒形状の被加熱体内へ基板を搬入する工程と、
前記反応室の周囲に設けられた誘導加熱部により前記被加熱体を誘導加熱するとともに、前記断熱材により前記被加熱体の外への放熱を抑制し、前記被加熱体内に少なくとも原料ガスを供給して前記基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
反応室内に設けられ一端が閉塞された筒形状の断熱材の内側に前記断熱材の閉塞された一端側の一端が閉塞された筒形状の被加熱体内へ基板を搬入する工程と、
前記反応室の周囲に設けられた誘導加熱部により前記被加熱体を誘導加熱するとともに、前記断熱材により前記被加熱体の外への放熱を抑制し、前記被加熱体内に少なくとも原料ガスを供給して前記基板を処理する工程と、
を有する基板製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−29597(P2011−29597A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101955(P2010−101955)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】