説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体装置のパターンの微細化が進展した場合においても、工程数を増加させること無く、容易にハードマスクを形成することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板1上に、少なくとも、層間絶縁膜2と金属配線層3とをこの順で形成する方法であり、金属配線層3は、層間絶縁膜2上に形成された金属膜上にフォトレジスト膜のパターンを形成した後、このフォトレジスト膜の表面に、触媒反応を用いて絶縁体を選択的に堆積させて絶縁ハードマスクを形成するハードマスク形成工程と、次いで、この絶縁ハードマスクを用いて金属膜をエッチング処理するエッチング工程の各工程によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置においては、さらなる小型化や薄型化のために、高集積化が要求されている。
また、近年、微細化した半導体装置の製造工程においては、素子に使用する金属配線層等の加工に際し、フォトレジスト膜で形成したパターンをマスクとしてエッチングする方法に代わり、一般に、シリコン酸化膜(SiO)等の絶縁膜で形成したハードマスクを用いてエッチング処理を行う方法が採用されている。これは、ドライエッチング処理を行なうに際して、フォトレジスト膜のエッチング耐性が不足している場合等に有効な手段である。
【0003】
ここで、半導体装置の製造工程においてハードマスクを形成する場合には、ハードマスク材料の堆積処理や、ドライエッチングを用いたハードマスク材料のパターニング処理等の工程が追加されるため、工程数が増加するという問題がある。
また、フォトレジスト膜で形成したパターンをエッチングによってハードマスク層に転写形成してから、再度エッチングを行なうことで金属配線層のパターンを形成する必要があるため、金属配線層の最終的な寸法にばらつきが生じ易いという問題がある。これは、一般に、ドライエッチングを行う場合、半導体基板内の面内位置や隣接するパターンの影響によってサイドエッチングの量が異なり、この影響が金属配線層の寸法に及ぶためである。
【0004】
上述のような問題を解決するため、シリコンを含有するフォトレジスト膜で形成したパターンの表面層をシリコン酸化膜に改質したううえで、このシリコン酸化膜をハードマスクとして用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、特許文献1では、フォトレジスト膜にシリコンを添加することで解像性能が低下するため、微細なパターンを形成するのが困難であるという問題があった。また、フォトレジスト膜の表面の薄い部分のみがシリコン酸化膜に改質されるため、エッチングを行うエッチャントの材料によっては、ハードマスクとしてのエッチング耐性が不足すると言う問題もあった。
【0005】
また、半導体基板上に絶縁ハードマスクを形成するにあたり、CVD法(化学蒸着法:Chemical Vapor Deposition)を用い、触媒反応を利用してシリコン酸化膜からなる薄膜を形成する技術も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−107957号公報
【特許文献2】特開2004−40110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の方法を、上述のような製造工程におけるハードマスクの形成に適用した場合には、上記同様、工程数が増加するので、製造コストが増大してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、半導体装置の製造工程においてエッチング処理に用いられるハードマスクの形成方法について鋭意研究を行った。この結果、触媒反応を利用して基板上に絶縁膜材料を堆積させる方法を用いることにより、微細なハードマスクを形成できることを知見した。これにより、半導体装置のパターンの微細化が進展した場合においても、工程数を増加させること無く、容易にハードマスクを形成することが可能なことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、少なくとも、層間絶縁膜と金属配線層とをこの順で形成する半導体装置の製造方法であって、前記金属配線層は、前記層間絶縁膜上に形成された金属膜上にフォトレジスト膜のパターンを形成した後、前記フォトレジスト膜の表面に触媒反応によって絶縁体を選択的に堆積させて絶縁ハードマスクを形成し、次いで、前記絶縁ハードマスクを用いて前記金属膜をエッチング処理することで形成されることを特徴とする。
【0010】
係る構成の半導体装置の製造方法によれば、フォトレジスト膜のパターン上に、触媒反応を用いて選択的に絶縁体を堆積させることで絶縁ハードマスクを形成した後、この絶縁ハードマスクを用いて金属膜をエッチング処理する方法なので、金属配線層のパターンの寸法のばらつきを抑制することができ、また、所望のエッチング耐性を備えるのに必要な膜厚で、高い膜厚制御性で絶縁ハードマスクを容易に形成することが可能となる。また、解像限界値の小さな高性能のフォトレジスト膜を使用した場合には、微細な金属配線層のパターンを容易に形成できるとともに、解像限界以下の配線スペースのパターニングも可能となるので、金属配線層の高密度配置を容易に行うことができる。またさらに、従来の半導体装置の製造方法に比べ、必要な工程数を削減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、上記構成により、フォトレジスト膜にシリコン等を添加する必要が無いので、半導体装置の製造工程において、通常使用されているフォトレジスト膜を制限無く使用することができる。従って、より解像性能の高い高性能フォトレジスト膜を使用することで、より一層微細なパターンの金属配線層を形成することが可能となる。
【0012】
また、フォトレジスト膜の表面に選択的に形成する絶縁ハードマスクの膜厚の制御が容易となるので、形成場所によらずに均一に形成することができる。これにより、エッチング工程における金属配線層のパターンの形成に際して、絶縁ハードマスクに起因する寸法のばらつきが増大するのを抑制することができる。さらに、絶縁ハードマスクを、金属配線層のパターンをエッチングする際の耐性を備えた膜厚として、容易に制御しながら形成することができる。
【0013】
また、絶縁ハードマスクは、フォトレジスト膜のパターンに応じて選択的に形成されるので、従来の製造方法においてハードマスクの形成に必要であった、エッチングによるフォトレジスト膜のパターン転写の工程が不要となる。これにより、半導体装置の製造に必要な工程数を増加させることが無いので、半導体装置の製造効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態である半導体装置を示す断面模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態である半導体装置の製造方法を模式的に示す工程図である。
【図3】本発明の第1実施形態である半導体装置の製造方法を模式的に示す工程図である。
【図4】本発明の第1実施形態である半導体装置の製造方法を模式的に示す工程図である。
【図5】本発明の第1実施形態である半導体装置の製造方法を模式的に示す工程図である。
【図6】本発明の第1実施形態である半導体装置の製造方法を模式的に示す工程図である。
【図7】本発明の第2実施形態である半導体装置の製造方法を模式的に示す工程図である。
【図8】本発明の第2実施形態である半導体装置の製造方法を模式的に示す工程図である。
【図9】本発明の第2実施形態である半導体装置の製造方法を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の半導体装置の製造方法の実施形態について、図面を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、本実施形態の半導体装置の製造方法を説明する図面であって、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の半導体装置等の寸法関係とは異なっている。
【0016】
[第1実施形態]
図1は本発明を適用した第1実施形態である半導体装置の製造方法を模式的に示す断面図である。また、図2〜図5は、本実施形態の半導体装置の製造方法の各工程を模式的に示す工程図である。
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板1上に、少なくとも、層間絶縁膜2と金属配線層3とをこの順で形成する方法であり、金属配線層3は、層間絶縁膜2上に形成された金属膜3A上にフォトレジスト膜4のパターンを形成した後、フォトレジスト膜4の表面4aに触媒反応によって絶縁体を選択的に堆積させて絶縁ハードマスク5を形成し、次いで、絶縁ハードマスク5を用いて金属膜3Aをエッチング処理することで形成される方法である。
【0018】
また、本実施形態では、半導体装置Aを製造する方法として、半導体基板1上に層間絶縁膜2を形成する工程と、層間絶縁膜2上に金属配線層3を形成する工程とをこの順で備え、金属配線層3を形成する工程は、少なくとも、層間絶縁膜2上に金属膜3Aを形成した後、該金属膜3A上にフォトレジスト膜4によるパターンを形成するレジスト形成工程と、次いで、金属膜3A及びフォトレジスト膜4の表面4aに触媒ガス51を供給することにより、フォトレジスト膜4の表面4aに選択的に触媒薄膜5Aを吸着させた後、さらに、成膜ガス52を供給することで触媒薄膜5Aに触媒反応を生じさせることにより、フォトレジスト膜4の表面4aに絶縁体を選択的に堆積して絶縁ハードマスク5を形成するハードマスク形成工程と、次いで、絶縁ハードマスク5を用いて、金属膜3Aをドライエッチング処理するエッチング工程と、をこの順で備える方法を例に説明する。
また、本実施形態においては、本発明の半導体装置の製造方法の具体例として、タングステン等の触媒薄膜を用いて金属配線層5を形成する場合について説明する。
【0019】
本実施形態の製造方法によって得られる半導体装置Aは、図1に示すように、半導体基板1上に層間絶縁膜2が形成され、この層間絶縁膜2上に、所定の配線パターンを有する金属配線層3が形成されてなるものである。ここで、図1に示す半導体装置Aの素子構造は、図示略の保護膜やボンディングパッド等、半導体装置を構成する他の層が形成される前の状態を示すものである。
【0020】
半導体基板1は、例えばシリコン等からなる基板である。
また、半導体基板1上には、層間膜として、シリコン酸化膜(SiO)等からなる層間絶縁膜2が積層されている。
金属配線層3は、層間絶縁膜2上に積層して設けられ、上述したタングステンの他、従来の半導体装置に用いられている公知の金属材料(WSi、WN、Ti、TiN、Al等)や、複数の金属材料からなる積層膜等を何ら制限無く採用して構成することができる。
【0021】
以下に、本実施形態の半導体装置Aの製造方法の一例について、図2〜図5を参照しながら説明する。
まず、図2に示すように、シリコンからなる半導体基板1上に(SiO)等の絶縁材料を堆積することで層間絶縁膜2を形成し、次いで、層間絶縁膜2上にタングステン等の触媒薄膜を堆積させることで金属膜3Aを形成する。この際、層間絶縁膜2や金属膜3Aを形成する方法としては、例えば、スパッタリング法やCVD法等、半導体の製造工程で用いられている従来公知の方法を採用することができる。
【0022】
なお、金属膜3A(金属配線層3)の材料としては、本実施形態ではタングステンを用いているが、タングステン以外の材料、例えば窒化チタン(TiN)等を適宜選択して採用することも可能である。
【0023】
次に、レジスト形成工程では、図2に示すように、金属膜3A上に、フォトレジスト膜4を所望の配線パターンで形成する。
具体的には、図2に示すように、従来公知のフォトリソグラフィ法を用いて、フォトレジスト膜4のパターン幅Wが、最終的に形成する金属配線層3(図1参照)の幅よりも所定の値だけ小さくなるように適宜調整しながら、フォトレジスト膜4を形成する。図示例においては、フォトレジスト膜4のパターン幅Wが、図1に示す金属配線層3の横幅よりも2T(T:後述の絶縁ハードマスク5の膜厚)だけ小さくなるように調整しながら、フォトレジスト膜4を形成している。
【0024】
この際、フォトレジスト膜4のパターニングに使用する図示略のフォトマスク上の配線パターンをあらかじめ細くしておくか、あるいは、フォトレジスト膜4の露光工程において露光の条件を調整することにより、フォトレジスト膜4のパターン幅Wが細くなるように調整すれば良い。
また、フォトレジスト膜4の材質は特に限定されず、従来公知のレジスト材料を何ら制限無く用いることができる。
【0025】
次に、ハードマスク形成工程では、図3(a)、(b)に示すように、上記レジスト形成工程で形成したフォトレジスト膜4のパターンのみを選択的に覆うように、CVD法を用いて絶縁ハードマスク5を形成する。
【0026】
具体的には、図3(a)に示すように、まず、金属膜3A及びフォトレジスト膜4の表面4aに触媒ガス51を供給することにより、パターニングされたフォトレジスト膜4の表面4a上に、選択的に触媒薄膜5Aを堆積させる。本実施形態では、触媒ガス51としてトリメチルアルミニウム(Tri Methyl Aluminium;以下、TMAと記載)を用いることにより、メチルアルミニウムからなる触媒薄膜5Aを、フォトレジスト膜4上に選択的に堆積させる。
【0027】
次いで、図3(b)に示すように、フォトレジスト膜4に形成された触媒薄膜5Aに、さらに、成膜ガス52を供給することによって触媒薄膜5Aに触媒反応を生じさせることにより、絶縁ハードマスク5を形成する。本実施形態では、成膜ガス52としてトリス(tert−ペントキシ)シラノール(Tris tertiary−pentoxy Silanol;以下、TPOSと記載)を用いることで、メチルアルミニウムからなる触媒薄膜5AにTPOS分子による触媒反応を生じさせ、絶縁体からなる絶縁ハードマスク5を形成する。
【0028】
以下に、本実施形態のハードマスク形成工程において、触媒反応を用いて絶縁ハードマスク5を形成するメカニズムについて、図4(a)〜(b)を参照しながら説明する。図4(a)〜(b)は、フォトレジスト膜4の表面4a上に絶縁ハードマスク5が選択的に形成される原理を模式的に説明する図である。
【0029】
まず、図2に示すような、半導体基板1上に層間絶縁膜2及び金属膜3Aが順次積層され、金属膜3A上にフォトレジスト膜4が形成された半導体ウェーハを、図示略の成膜装置に備えられるチャンバ内に導入する。
【0030】
次いで、図4(a)に示すように、第1ステップとして、触媒ガス51として用いるTMAをチャンバ内に供給する。本発明者等は、このような第1ステップにおいて、触媒ガス51をなすTMA分子の付着率は付着対象物の材質に依存し、大きく異なることを見出した。即ち、図4(a)に示すように、TMA分子(触媒ガス51)は、フォトレジスト膜4の表面4aに付着し易いため、この表面4aがメチルアルミニウム(触媒薄膜5A)によって覆われる一方、金属膜3Aの表面にはTMA分子は付着し難い。これは、フォトレジスト膜4又は金属膜3Aをなす各材料において固有である表面の終端状態に応じて、TMA分子の化学吸着のし易さが決定されるためである。
【0031】
次いで、図4(b)に示すように、TMAからなる触媒ガス51をチャンバ外に排出した後、第2ステップとして、成膜ガス52として用いるTPOSをチャンバ内に供給する。これにより、TPOS分子(成膜ガス52)は、フォトレジスト膜4の表面4aを覆うTMA分子(触媒薄膜5A)と反応し、TPOS分子とTMA分子の酸素が互いに結合する。この際、TMA分子とTPOS分子が一対で反応した後、メチルアルミニウムの触媒作用により、他のTPOS分子がメチルアルミニウムへ拡散する現象が生じる。これにより、TPOS分子とメチルアルミニウムとの酸素を介した結合が連鎖的に進行し、メチルアルミニウムと結合した多数のTPOS分子からなるシロキサン高分子層が形成される。また、シロキサン高分子の各々は、相互反応により、隣接する分子間で架橋結合を形成する。これにより、図4(c)に示すように、フォトレジスト膜4上に、シロキサン高分子を主成分とした薄膜(絶縁ハードマスク5)が形成される。
この後、成膜ガス52(TPOS)をチャンバ外に排出する。
【0032】
次いで、図4(d)に示すように、再度、触媒ガス51(TMA)をチャンバ内に供給すると、フォトレジスト膜4の表面4aの場合と同様に、TMA分子は、フォトレジスト膜4上に形成された薄膜(絶縁ハードマスク5)の表面に選択的に吸着される。従って、上述した第1ステップ及び第2ステップを複数回、即ち、ハードマスク形成工程を複数回繰り返しながら、TMA分子を所定の膜厚となるように堆積させることにより、図示例のような、所望の膜厚Tを有する絶縁ハードマスク5を、フォトレジスト膜4の表面4a上に選択的に堆積することができる。
【0033】
上述したようなハードマスク形成工程を行なうことにより、図3(b)に示すように、フォトレジスト膜4の表面4aを覆うように、絶縁体からなる絶縁ハードマスク5が形成される。また、ハードマスク形成工程を複数回繰り返して行なう際は、上述した第1及び第2のステップの繰り返し回数を適宜調整することにより、絶縁ハードマスク5の膜厚Tを容易に制御することができる。ここで、絶縁ハードマスク5は、フォトレジスト膜4の表面4a及び側面側において、ほぼ均一な膜厚で堆積される。従って、図3(b)に示すように、エッチング処理の際のマスクの幅は、フォトレジスト膜4のパターン幅Wに、絶縁ハードマスク5の膜厚Tの2倍(2T)を加えた幅となる。絶縁ハードマスク5に必要な膜厚Tは、ハードマスク形成工程に引き続いて行われるエッチング工程でのドライエッチング処理に際して、耐性を有する程度の膜厚となるように決定すれば良い。従って、予め、絶縁ハードマスク5に必要とされる膜厚Tを決定しておき、その膜厚Tに基づいて、フォトレジスト膜4のパターン幅Wに絶縁ハードマスク5の膜厚Tの2倍(2T)を加えた寸法値が所望の配線幅となるように、フォトレジスト膜4のパターン幅Wを設定すればよい。
【0034】
さらに、図3(b)に示すように、隣接するフォトレジスト膜4のパターン間隔(スペース部)は、絶縁ハードマスク5の膜厚Tの2倍(2T)だけ、狭く形成することが可能となる。つまり、これを利用して、フォトレジスト膜4の解像限界以下のスペース部を備えた配線のパターニングを行うことが可能となる。即ち、従来の方法のようなフォトレジスト膜のパターンのみをマスクとする場合には、解像限界以下の寸法とされたスペース部は、正常に分離したフォトレジスト膜のパターンとして形成することができないことから、配線パターンの短絡等の原因となっていた。また、上記特許文献1(特開2002−107957号公報)に記載の方法を用いる場合にも、ハードマスクのパターン幅は、あらかじめ形成されたフォトレジスト膜のパターン幅と同じ寸法となるだけなので、上記同様、解像限界以下の寸法とされたスペース部をパターニングすることは不可能であった。
【0035】
これに対し、本発明の製造方法では、レジスト形成工程において解像限界と同等の間隔を有するようにフォトレジスト膜4を形成した後、ハードマスク形成工程において絶縁ハードマスク5を形成することにより、パターン間のスペース部間隔をさらに小さくしたハードマスクパターンを形成することが可能となる。このため、例えば、少なくとも2本以上の独立した配線パターンを備える金属配線層3を形成する場合、隣接する配線パターンの間隔には、フォトレジスト膜4のパターンを形成する際の解像限界値以下の寸法が含まれる。これにより、従来の方法に比べて、大幅に微細化した配線パターンを容易に形成することが可能となる。
【0036】
本実施形態のハードマスク形成工程で用いる触媒ガス51としては、特に限定されないが、上述のようなトリメチルアルミニウム(TMA)を用いることが好ましい。
また、成膜ガス52としては、トリス(tert−ペントキシ)シラノールを用いることが好ましいが、他の気体状態のトリス(tert−アルコキシ)シラノール、具体的にはトリス(tert−ブトキシ)シラノール等を使用することも可能である。その場合にも、TMAとの触媒反応によって、選択的に絶縁体を形成することができる。
【0037】
次に、エッチング工程では、図5に示すように、フォトレジスト膜4上に形成された絶縁ハードマスク5を用いて、金属膜3Aをドライエッチング処理する。
具体的には、図5に示すように、まず、絶縁ハードマスク5によって覆われたフォトレジスト膜4のパターンをマスクとして、金属膜3Aの異方性ドライエッチングを行うことにより、パターン間のスペース部で露出した部分の金属膜3を除去する。
【0038】
次いで、図1に示すように、希フッ酸等の薬液を用いて絶縁ハードマスク5を除去した後、酸素プラズマ等のアッシング処理でフォトレジスト膜4を除去することにより、所望の配線層としてパターニングされた金属配線層3を形成することができる。
【0039】
以上のような各工程により、半導体装置Aを製造することができるが、本実施形態の半導体装置を製造する方法は上記方法には限定されず、例えば、各層に用いる材料や形状、加工方法等は、適宜採用することが可能である。
【0040】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、フォトレジスト膜4の表面4aに選択的に触媒薄膜5Aを吸着させた後、さらに、成膜ガス52を供給することで触媒薄膜5Aに触媒反応を生じさせることにより、フォトレジスト膜4の表面4aに絶縁体を選択的に堆積して絶縁ハードマスク5を形成するハードマスク形成工程を備えた方法なので、絶縁ハードマスク5を用いて形成される金属配線層3のパターンの寸法のばらつきを抑制することができる。また、所望のエッチング耐性を備えるのに必要な膜厚で、高い膜厚制御性で絶縁ハードマスク5を容易に形成することが可能となる。解像限界値の小さな高性能のフォトレジスト膜4を使用した場合には、微細な金属配線層3のパターンを容易に形成できるとともに、解像限界以下の配線スペースのパターニングも可能となるので、金属配線層3の高密度配置を容易に行うことができる。またさらに、従来の半導体装置の製造方法に比べ、必要な工程数を削減することができる。
【0041】
[第2実施形態]
以下に、本発明の半導体装置の製造方法の第2実施形態について、図7〜図9を適宜参照しながら説明する。ここで、図7〜図9は、本実施形態の半導体装置の製造方法の各工程を模式的に示す工程図である。
なお、本実施形態の製造方法によって得られる半導体装置は、図1に示す第1実施形態の半導体装置Aと同様の構成を有するものであり、本実施形態の製造方法の説明においても、共通する構成については同じ符号を付し、また、その詳しい説明を省略する。
【0042】
図7及び図8に示すように、本実施形態の製造方法は、第1実施形態の製造方法で備えられる各工程に加え、さらに、ハードマスク形成工程とエッチング工程との間において、フォトレジスト膜4のパターンの間から露出する金属膜3A上に付着した触媒薄膜5Aを除去する除去工程が備えられている点で、上記第1実施形態の製造方法とは異なる。
【0043】
本発明の製造方法に備えられるハードマスク形成工程を適用した場合、パターニングを行なう金属膜3Aの表面状態や、絶縁ハードマスク5をなす絶縁体の成膜条件等によっては、付着位置の選択性が低下することがある。このような場合、上記各工程を、1回又は複数回のサイクル(図6に示す工程S1〜S4を参照)で実施した際に、フォトレジスト膜4上のみならず、金属膜3A上にも絶縁ハードマスク5の材料である絶縁体の薄膜が形成されることがある。このような状態で、成膜工程のサイクルを繰り返した場合、金属膜3A上に堆積した絶縁体薄膜上に、さらに新たな薄膜が堆積されてゆき、フォトレジスト膜4のパターンに応じた絶縁ハードマスクのパターン形成が困難になる虞がある。
【0044】
例えば、図7に示す例のように、半導体基板1上に層間絶縁膜2を介して金属膜3Aを形成した基板を準備し、第1実施形態と同様に、フォトレジスト膜4のパターンを形成する。そして、図6に示す工程S1〜S4のようなハードマスク形成工程の成膜サイクルを、1回又は複数回で実施することにより、フォトレジスト膜4の表面4aには絶縁ハードマスク5が形成されるとともに、金属膜3の表面にも絶縁体が堆積されることで絶縁体薄膜105が形成される。なお、このような場合でも、金属膜3A表面への触媒ガス51の吸着率は、フォトレジスト膜4に比べて低いので、絶縁体薄膜105の膜厚は、絶縁ハードマスク5に比べて大幅に薄いものとなる。
【0045】
本実施形態の製造方法では、図8に示すように、異方性ドライエッチング等の方法で金属膜3A上の絶縁体薄膜105を除去する除去工程により、金属膜3Aの表面3aを露出させる。この際、フォトレジスト膜4の表面4a上に形成された絶縁ハードマスク5は残存するように、ドライエッチング処理の時間を調整する。そして、金属膜3Aの表面3aが完全に露出した状態となることで、絶縁ハードマスク5の形成にあたっての選択性が回復する。
【0046】
次いで、引き続き、図6に示す工程S1〜S4の成膜サイクルを繰り返すことにより、図9に示すように、フォトレジスト膜4の表面4aを覆う絶縁ハードマスク5が所望の膜厚で形成される。また、この際、上記工程のサイクルの途中で、必要に応じて再度の除去工程を行い、金属膜3Aの表面3aを露出させることにより、絶縁ハードマスク5の形成にあたっての選択性を回復させても良い。
【0047】
本実施形態の製造方法によれば、上述のような除去工程が備えられていることにより、パターニングしたい金属膜3Aの表面3aに対し、絶縁ハードマスク5の形成位置の選択性が低下しているような場合であっても、この選択性を容易に回復することができる。これにより、絶縁ハードマスク5をなす絶縁体の、堆積位置の選択性が低下していような場合であっても、この選択性を適宜回復させながら絶縁ハードマスク5を形成することが可能となる。
【0048】
本実施形態の製造方法によれば、上記した除去工程が追加されることにより、第1実施形態の製造方法に比べて全体の工程数は増加してしまうものの、パターンの微細化が進んだ場合においても、寸法のばらつきが抑制されたパターンを有する絶縁ハードマスク5を容易に形成することができる。また、第1実施形態の製造方法と同様に、フォトレジスト膜4の解像限界以下のスペース部を備えた配線のパターニングを行うことも可能となる。
【0049】
以上説明したように、本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、上記構成により、フォトレジスト膜4にシリコン等を添加する必要が無いので、半導体装置の製造工程において、通常使用されているフォトレジスト膜を制限無く使用することができる。従って、より解像性能の高い高性能フォトレジスト膜を使用することで、より一層微細なパターンの金属配線層3を形成することが可能となる。
【0050】
また、フォトレジスト膜4の表面に選択的に形成する絶縁ハードマスク5の膜厚の制御が容易となるので、形成場所によらずに均一に形成することができる。これにより、エッチング工程における金属配線層3のパターンの形成に際して、絶縁ハードマスク5に起因する寸法のばらつきが増大するのを抑制することができる。さらに、絶縁ハードマスク5を、金属配線層3のパターンをエッチングする際の耐性を備えた膜厚として、容易に制御しながら形成することができる。
【0051】
また、絶縁ハードマスク5は、フォトレジスト膜4のパターンに応じて選択的に形成されるので、従来の製造方法においてハードマスクの形成に必要であった、エッチングによるフォトレジスト膜のパターン転写の工程が不要となる。これにより、半導体装置の製造に必要な工程数を増加させることが無いので、半導体装置の製造効率が向上する。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明の半導体装置をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものでは無い。
本実施例においては、上記した第1実施形態の製造方法に基づき、図1に示すような半導体装置Aを作製した。以下に、本実施例について、図1〜図6を適宜参照しながら説明する。
【0053】
まず、図2に示すように、シリコンからなる半導体基板1上に、CVD法を用いてシリコン酸化膜(SiO)を堆積させることで層間絶縁膜2を形成した。次いで、その上に、同様の方法で窒化タングステン(WN)膜10nmと、タングステン(W)膜40nmを順次堆積した積層膜を形成することにより、金属膜3Aを設けた。
【0054】
次に、レジスト形成工程において、金属膜3A上に、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対して感光性を備えた化学増幅型フォトレジストを用いて、フォトレジスト膜4のパターンを形成した。
【0055】
次に、ハードマスク形成工程において、図6に示すS1〜S4の工程を順次繰り返すことにより、フォトレジスト膜4の表面4aに選択的に絶縁体の堆積を行った。
具体的には、まず、図6に示す工程S1として、半導体基板1上に層間絶縁膜2及び金属膜3Aが形成されたウェーハを成膜用のチャンバ内に設置し、半導体基板1の温度を100℃、チャンバ内の圧力を5Torrに保持した状態で、触媒ガス51としてTMA(トリメチルアルミニウム)ガスを1mol供給した。これにより、フォトレジスト膜4の表面4aに、メチルアルミニウムからなる触媒薄膜5Aを堆積させた。
次に、工程S2として、チャンバ内からTMAガス(触媒ガス51)を真空ポンプによって排出した後、窒素ガスを供給してチャンバ内の雰囲気を置換した。
【0056】
次に、工程S3として、半導体基板1の温度を100℃、チャンバ内の圧力を2Torrに保持した状態で、成膜ガス52としてTPOS(トリス(tert−ペントキシ)シラノール)ガスを100μmol供給した。これにより、フォトレジスト膜4の表面4aに堆積させたメチルアルミニウムからなる触媒薄膜5Aに、TPOS分子による触媒反応を生じさせ、ハードマスクとした。
次に、工程S4として、チャンバ内からTPOSガス(成膜ガス52)を真空ポンプによって排出した後、窒素ガスを供給してチャンバ内の雰囲気を置換した。
上記工程S1〜S4からなるハードマスク形成工程を行うことにより、フォトレジスト膜4上に膜厚10nm程度の絶縁体からなる絶縁ハードマスク5を選択的に形成することができた。
【0057】
またさらに、図6に示す工程S1〜S4を1サイクルとして、このサイクルを繰り返して行うことにより、フォトレジスト膜4の表面4a上に形成する絶縁ハードマスク5の膜厚を、50nm程度まで増加させることができた。この際、1回の成膜サイクル(工程S1〜S4)で形成される絶縁ハードマスクの膜厚は一定ではなく、上記サイクルの実施回数に応じて変動することが観察された。これは、絶縁体材料が堆積される下地の表面状態に応じて、成膜反応の進行状態が変化したためと推測される。
【0058】
次に、エッチング工程において、図5に示すように、上記ハードマスク形成工程で形成した絶縁ハードマスク5を用い、六フッ化硫黄(SF6)ガスを含有するエッチングガスによって異方性ドライエッチングを行うことにより、金属膜3Aをパターニングした。その後、絶縁ハードマスク5を、希フッ酸を用いたウェットエッチング処理によって除去した。そして、引き続き、酸素ガスを用いたプラズマアッシング処理によってフォトレジスト膜4を除去することにより、図1に示すような、所望の配線パターンを有する金属配線層3を形成した。
【0059】
なお、本実施例においては、成膜サイクルの実施回数を増やすことにより、堆積する絶縁体(絶縁ハードマスク)の膜厚を、必要に応じて厚くすることが可能であることを確認した。また、この際、1回の成膜サイクルで堆積される絶縁ハードマスクの膜厚は、成膜条件の調整により、1〜100nm程度の範囲でコントロールすることが可能であることを確認した。これにより、最終的に堆積したい絶縁ハードマスクの膜厚に応じて、1回の成膜サイクルで堆積される絶縁体(絶縁ハードマスク)の膜厚、及び、成膜サイクルの実施回数を、適宜選択することで、所望の膜厚の絶縁ハードマスクが得られることが確認された。
【符号の説明】
【0060】
A…半導体装置、1…シリコン基板、2…層間絶縁膜、3…金属配線層、3A…金属膜、3a…表面(フォトレジスト膜のパターンの間から露出する金属膜)、4…フォトレジスト膜、4a…表面(フォトレジスト膜)、5…絶縁ハードマスク、5A…触媒薄膜、51…触媒ガス、52…成膜ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、少なくとも、層間絶縁膜と金属配線層とをこの順で形成する半導体装置の製造方法であって、
前記金属配線層は、前記層間絶縁膜上に形成された金属膜上にフォトレジスト膜のパターンを形成した後、該フォトレジスト膜の表面に触媒反応によって絶縁体を選択的に堆積させて絶縁ハードマスクを形成し、次いで、前記絶縁ハードマスクを用いて前記金属膜をエッチング処理することで形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
少なくとも、半導体基板上に層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜上に金属配線層を形成する工程とをこの順で備える半導体装置の製造方法であって、
前記金属配線層を形成する工程は、少なくとも、前記層間絶縁膜上に金属膜を形成した後、該金属膜上にフォトレジスト膜のパターンを形成するレジスト形成工程と、
次いで、前記金属膜及び前記フォトレジスト膜の表面に触媒ガスを供給することにより、前記フォトレジスト膜の表面に選択的に触媒薄膜を吸着させた後、さらに、成膜ガスを供給することで前記触媒薄膜に触媒反応を生じさせることにより、前記フォトレジスト膜の表面に絶縁体を選択的に堆積して絶縁ハードマスクを形成するハードマスク形成工程と、
次いで、前記絶縁ハードマスクを用いて前記金属膜をドライエッチング処理するエッチング工程と、をこの順で備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ハードマスク形成工程を複数回繰り返しながら、前記絶縁体を所定の膜厚となるように堆積して前記絶縁ハードマスクを形成することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
さらに、前記ハードマスク形成工程と前記エッチング工程との間において、前記フォトレジスト膜のパターンの間から露出する前記金属膜上に付着した前記触媒薄膜を除去する除去工程が備えられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ハードマスク形成工程は、前記触媒ガスとして、トリメチルアルミニウムを用いることを特徴とする請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ハードマスク形成工程は、前記成膜ガスとして、トリス(tert−ペントキシ)シラノールを用いることを特徴とする請求項2〜請求項5の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記触媒反応は、トリス(tert−アルコキシ)シラノールとトリメチルアルミニウムの反応であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁体は、シロキサン高分子を主成分とした絶縁材料からなる薄膜であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記金属配線層は、少なくとも2本以上の独立した配線パターンを備え、隣接する該配線パターンの間隔には、前記フォトレジスト膜のパターンを形成する際の解像限界値以下の寸法が含まれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−225899(P2010−225899A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72265(P2009−72265)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】