説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体材料が高分子量であっても、テンプレートを用いた塗り分けを可能とする半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 基板1にゲート絶縁膜2およびソース電極3c,ドレイン電極3dを製膜した状態で、基板1表面にパーフルオロアルキル基を有する第1の自己組織化単分子膜(第1SAM膜5)を形成した。続いて、第1SAM膜5における高分子有機半導体膜を塗布すべき領域5aをオゾン処理を施すことで削除し、その領域5aに、フェネチル基を有する第2の自己組織化単分子膜(第2SAM膜6)を形成した。続いて、基板1を予め40℃に加熱しておき、40℃に温度制御されたポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)0.5重量パーセントジクロロベンゼン溶液8に基板1を浸漬し、垂直に引き上げることで、薄膜トランジスタを作製した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜トランジスタなどの半導体装置に有機半導体材料を用いる技術が研究されている。有機半導体材料を用いた半導体装置は、半導体膜を低温で形成することが可能であるため、プラスチックなどの耐熱性の低い基板上への形成も可能となり、例えば従来にないフレキシブルなデバイスの作成が可能となる。
【0003】
有機半導体材料として低分子材料を用いる場合、シャドウマスクや逆テーパー形状をした構造物を用いた真空蒸着法によって、所望の領域への有機半導体膜の製膜が可能である。
【0004】
また、接触角の異なる複数の自己組織化単分子膜をテンプレートとして用い、低分子有機半導体材料を塗分けることで、所望の領域に有機半導体膜を製膜する技術も提案されている(非特許文献1参照)。この技術は、製膜部分を規定するバンクなどの構造物を形成しておく必要が無く、またバンクによる微細化の阻害が無いため利便性が高い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Patterned Growth of Large Oriented Organic Semiconductor Single Crystals on Self-Assenmbled Monolayer Templates, Alejandro L. Briseno et. al., J. Am. Chem. Soc., 2005, 127(35), 12164-12165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機半導体材料として高分子材料を用いる場合には、真空蒸着法による製膜は不可能であるため、各種印刷法による製膜が一般的に行われている。
しかしながら、従来の印刷法では微細化が難しく、また現在の通常の印刷技術では位置ずれが生じやすいため、製膜部分を規定するバンクなどの構造物を形成した上で製膜部のみに塗布する必要があり、それによりさらに微細化が阻害されていた。
【0007】
また、上述した非特許文献1の技術では、自己組織化単分子膜を微細化することで微細な塗りわけが可能となるが、半導体材料として高分子材料を用いた場合、分子の長さと分子量が低分子材料に比べ大きいことから、流動性が低くなり、テンプレートに沿った塗分けが出来なかった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体材料が高分子量であっても、テンプレートを用いた塗り分けを可能とする半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、有機半導体膜が所定の領域に製膜された基板を備える半導体装置の製造方法であって、この製造方法は、被覆工程と、除去工程と、を少なくとも有する。
【0010】
被覆工程は、第1の自己組織化単分子膜が形成された第1の領域と、所定の溶媒との接触角が上記第1の自己組織化単分子膜よりも小さい第2の自己組織化単分子膜が形成された第2の領域と、を有する基板を、所定温度以上とした状態で、上記溶媒と有機半導体材料とからなる溶液を上記基板に被覆する工程である。
【0011】
また、除去工程は、上記第1の領域を被覆した前記溶液を除去する工程である。
このような半導体装置の製造方法においては、基板が所定温度以上となっていることに起因して、溶液の第1の領域と第2の領域との塗り分けが促進される。よって、除去工程を経た後、溶液は第2の領域を被覆している状態となる。
【0012】
このように、上記製造方法であれば、有機半導体材料が高分子量であっても、第1の領域と第2の領域とをテンプレートとした塗り分けが可能となる。
その結果、有機半導体材料の分子量にかかわらず、第2の領域に有機半導体膜を製膜した半導体装置を製造することができるようになる。
【0013】
また、有機半導体膜の大きさは第2の領域の大きさによって定まるため、第2の領域の大きさを変化させることで、有機半導体膜の大きさを変化させることができる。よって、第2の領域を微細に形成することにより、従来の印刷法よりも微細に製膜することが可能となる。
【0014】
また、製膜部分を規定するバンク等の構造物が不要となり、それらによる微細化の阻害が無くなるため、製膜の微細化が容易になる。
なお、自己組織化単分子膜とは、有機分子の溶液に固体を浸漬することにより、有機分子が固体表面に吸着して自主的に形成する単分子膜を意味する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、有機半導体材料が、高分子有機半導体材料であることを特徴とする。
このような半導体装置の製造方法であれば、高分子有機半導体材料であっても適切にテンプレートに沿った塗り分けを実行することができる。
【0016】
なお、高分子有機半導体材料は低分子有機半導体材料と比較して、有機溶媒などを用いて溶液化しやすく、塗布工程に向くという利点がある。インクジェットや輪転機などの印刷プロセスが適応できることから,低コスト化とサイズアップ(大画面化など)が容易になる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法であって、被覆工程が、基板を溶液中に浸漬する工程であることを特徴とする。
このような半導体装置の製造方法であれば、第2の領域への溶液の被覆を容易に実現することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法であって、被覆工程が、ディップコート法、ドロップキャスト法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷の群から選択される1以上の方法を用いて、溶液を基板に被覆する工程であることを特徴とする。
【0019】
このような半導体装置の製造方法であれば、第2の領域への溶液の被覆を容易に実現することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、被覆工程における溶液の温度が上記所定温度以上であることを特徴とする。
【0020】
このような半導体装置の製造方法であれば、基板が溶液に触れた際に基板の温度が低下してしまうことを抑制できるため、テンプレートに沿った塗り分けができなくなることを防止できる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、被覆工程における基板の温度が30℃以上であることを特徴とする。
このような半導体装置の製造方法であれば、高い精度でテンプレートにそった塗り分けを行うことができる。なお、基板の温度を溶液の沸点以下にしておけば、基板に溶液が接触した際の溶液の沸騰が抑制される。
【0022】
ところで、上述した除去工程において、第1の領域を被覆した溶液を除去するための具体的な手法は特に限定されない。例えば、エアブロー、吸引などが考えられる。またそれ以外に、請求項7に記載の方法を用いてもよい。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、除去工程が、基板のうち少なくとも上記第1の領域を水平面に対して傾斜させる工程であることを特徴とする。
【0024】
このような半導体装置の製造方法であれば、第1の領域を被覆した溶液が自重により移動することを利用して、第1の領域から除去することができる。なお、この除去工程は、その他の除去方法と併せて行ってもよい。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、除去工程における第1の領域の水平面に対する傾斜角度が20°以上であることを特徴とする。
このような半導体装置の製造方法であれば、溶液が第1の領域から移動しやすくなるため、溶液の第1の領域からの除去をスムーズに行うことができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、以下の特徴を有する。まず、除去工程において、第1の領域の水平面に対する傾斜角度が30°以上である。また、所定の温度が、40℃以上であって、かつ、溶媒の沸点以下の温度である。そして、所定の温度をX℃、傾斜角度をY°としたとき、X+Y≧120を満たすものである。
【0027】
このような半導体装置の製造方法であれば、基板の温度と傾斜角度が適切な範囲に含まれることとなるため、溶液の第1領域からの除去をスムーズに行うことができる。
請求項10に記載の発明は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、上記半導体装置が薄膜トランジスタであり、上記有機半導体膜が薄膜トランジスタにおけるチャネル部であることを特徴とする。
【0028】
このような半導体装置の製造方法であれば、上述した請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法を利用して薄膜トランジスタのチャネル部を形成することができる。
【0029】
請求項11に記載の発明は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、上記半導体装置が有機エレクトロルミネッセンス素子であり、上記有機半導体膜が有機エレクトロルミネッセンス素子における透明電極と接する層であることを特徴とする。
【0030】
このような半導体装置の製造方法であれば、上述した請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法を利用して有機エレクトロルミネッセンス素子の透明電極と接する層を形成することができる。
【0031】
なお、透明電極と接する層とは、有機エレクトロルミネッセンス素子における正孔注入層や、発光画素規定用の絶縁層などが該当する。
請求項12に記載の発明は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、上記半導体装置が太陽電池であり、上記有機半導体膜が太陽電池における透明電極と接する層であることを特徴とする。
【0032】
このような半導体装置の製造方法であれば、上述した請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法を利用して太陽電池の透明電極と接する層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1における薄膜トランジスタの作製過程を示す断面図および上面図
【図2】実施例1における薄膜トランジスタの作製過程を示す断面図および上面図
【図3】実施例1における薄膜トランジスタの作製過程を示す断面図および上面図
【図4】実施例1における自己組織化単分子膜のパターニングの概略図
【図5】実施例1における薄膜トランジスタの作製過程を示す断面図および上面図
【図6】実施例1におけるディップコーティング法の概略図
【図7】実施例1にて作製された薄膜トランジスタを示す断面図および上面図
【図8】実施例2にて作製された薄膜トランジスタを示す断面図および上面図
【図9】実施例3におけるディップコーティング法の概略図
【図10】実施例6におけるドロップキャスト法の概略図
【図11】変形例の薄膜トランジスタを示す図
【図12】実施例9における有機エレクトロルミネッセンス素子の作製過程を示す断面図
【図13】実施例9における自己組織化単分子膜のパターニングの概略図
【図14】実施例9にて作製された有機エレクトロルミネッセンス素子を示す断面図および上面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[薄膜トランジスタの作製]
【実施例1】
【0035】
本実施例では、以下の工程1〜工程6により、自己組織化単分子膜によって高分子有機半導体膜の製膜領域が規定されたチャネル部を有する薄膜トランジスタを作製した。
(工程1)
基板1としてN型シリコン(Si)ウェハを用い、熱酸化により250nmの酸化シリコン(SiO2)膜(ゲート絶縁膜2)を表面に形成し、洗浄を施した。
【0036】
続いて、抵抗加熱式真空蒸着法により、ゲート絶縁膜2上に5nm厚のクロム(Cr)3a、および50nm厚の金(Au)3bを連続製膜した。
この状態の基板1の断面図および上面図を図1(a),(b)に示す。この図1(a)は、図1(b)のA−A断面である。なお、この断面図および上面図は基板1を模式的に示すものであり、厚さの比率など正確でない部分がある。以下の図面も同様である。
(工程2)
工程1の製膜面にノボラック樹脂を主成分とするフォトレジストを塗布した。その後、所望のパターンが得られるようにフォトマスクを用いた露光、現像によりフォトレジストのパターンを形成し、金(Au)を金(Au)ヨウ化カリウムとヨウ素を含む専用エッチング液を用いてエッチングし、同様にクロム(Cr)を、硝酸を主成分とする専用エッチング液を用いてエッチングした。その後、専用のレジスト剥離液を用いてレジスト膜を剥離した。
【0037】
このように、クロム(Cr)3aおよび金(Au)3bを積層してなるソース電極3c、およびドレイン電極3dを形成した。この状態の基板1の断面図および上面図を図2(a),(b)に示す。なお、以下の図面においては、便宜上、ソース電極3cおよびドレイン電極3dとしてのみ表示し、クロム(Cr)3aと金(Au)3bとの積層構造は明示しない。
(工程3)
オゾン処理装置を用いて基板1の表面を洗浄した。この時の基板1表面の水に対する接触角は3°以下であった。
【0038】
続いて、パーフルオロクロロシラン化合物CF3(CF2)5CH2SiCl3をトルエン中に分散した溶液に基板1を浸漬し、パーフルオロアルキル基を有する第1の自己組織化単分子膜(第1SAM膜5)を基板1表面に形成した。
【0039】
この状態の基板1の断面図および上面図を図3(a),(b)に示す。図3(b)に示すように、ゲート絶縁膜2上に第1SAM膜5が形成される。具体的には、ゲート絶縁膜2表面の水酸基(-OH)とパーフルオロクロロシラン化合物とが結合し、基板1表面(ゲート絶縁膜2表面)にパーフルオロシラン基(CF3(CF2)5CH2Si-)を持つ膜が形成されて撥液性となる。このときの基板1表面(第1SAM膜5表面)の水に対する接触角は113°、同様にジクロロベンゼンに対する接触角は83.4°であった。
(工程4)
第1SAM膜5における高分子有機半導体膜を塗布すべき領域5aを、図4に示すように、メタルマスク7を基板1と密着させてオゾン処理を施すことで削除した。
(工程5)
フェネチルシラン化合物(β-phen:C6H5(CH2)2SiCl3)をトルエン中に分散した溶液に基板1を浸漬し、フェネチル基を有する第2の自己組織化単分子膜(第2SAM膜6)を領域5aに形成した。この状態の基板1の断面図および上面図を図5(a),(b)に示す。
【0040】
このとき、第2SAM膜6表面の水に対する接触角は84.4°、同様にジクロロベンゼンに対する接触角は6.0°であり、第1SAM膜5を形成した領域と比較して高い親液性を示した。
(工程6)
図6に示すように、分子量Mw=34,000のポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)0.5重量パーセントジクロロベンゼン溶液8を用いてディップコーティング法を実施した。ここでは、基板1を予め40℃に加熱しておき、40℃に温度制御された溶液8に基板1を浸漬して溶液8を基板1に被覆した(本発明における被覆工程)。その後、基板1を垂直に引き上げ、基板1における第1SAM膜5を形成した領域を被覆した溶液8を除去した(本発明における除去工程)。
【0041】
この結果、基板1上の所望の領域(第2SAM膜6を形成した領域)に高分子有機半導体膜4を得ることに成功した。このように作製された薄膜トランジスタの断面図および上面図を図7(a),(b)に示す。
【0042】
上記のようにして作製した薄膜トランジスタに於いて、N型シリコン(Si)ウェハ(基板1)をゲート電極とし、高分子有機半導体膜4を活性層としたP型トランジスタとして動作させたところ、移動度1×10-3cm2/V/secであった。
【0043】
なお、比較例として、工程2の後、高分子有機半導体膜をスピンコート法にて製膜し、不要部分の高分子有機半導体膜を除去して薄膜トランジスタを作製した。この薄膜トランジスタの移動度は、0.89×10-3cm2/V/secであった。
【0044】
スピンコート法などを用いて製膜し、不要部分の高分子半導体膜を除去すると、除去した部分の高分子有機半導体材料が無駄になってしまうが、本実施例では第2SAM膜6にのみ製膜されるため、材料の無駄が無い。
【実施例2】
【0045】
本実施例では、実施例1の製造方法から、ソース電極3cおよびドレイン電極3dを製膜するタイミングを高分子有機半導体膜4の製膜後に変更した。
具体的には、上記工程1において基板1にゲート絶縁膜2(酸化シリコン(SiO2)膜)を形成した後、クロム、金を製膜する工程および工程2を行わずに、工程6まで同様に作製した。次にシャドウマスクを用いた真空蒸着法にて金を所定の領域に製膜し、ソース電極3c・ドレイン電極3dとした。
【0046】
作製した薄膜トランジスタの断面図および上面図を図8(a),(b)に示す。この薄膜トランジスタを実施例1と同様にP型トランジスタとして動作させたところ、移動度4×10-3cm2/V/secであった。
【0047】
なお、比較例として、上記工程1において基板1にゲート絶縁膜2を形成した後、高分子有機半導体膜をスピンコート法にて製膜し、その後シャドウマスクを用いた真空蒸着法にて金を所定の領域に製膜し、ソース電極3c・ドレイン電極3dとした薄膜トランジスタを作製した。この薄膜トランジスタの移動度は1.4×10-3cm2/V/secであった。
【実施例3】
【0048】
本実施例では、高分子有機半導体膜4の製膜条件を変化させて薄膜トランジスタを作製した。
上記実施例1と工程5まで同様の工程を経た基板1に対し、図9に示すように、工程6において、分子量Mw=34,000のP3HTの0.75重量パーセントジクロロベンゼン溶液8aを用いてディップコーティング法を実施した。このとき、基板1の温度は、30℃、40℃、60℃、80℃、100℃のいずれかに設定した。また、基板1の引き上げ時の角度(水平面に対する傾斜角度)は、10°、20°、30°、40°、60°、80°、90°のいずれかに設定した。溶液8aの温度は、基板1の温度と同じになるように設定した。
【0049】
高分子有機半導体膜4の第2SAM膜6を形成した領域への製膜結果を表1に示す。製膜結果の判定基準は以下の通りとする。
良好:メタルマスク7とほぼ同様のパターンが形成されている
一部不可:第1SAM膜5上に高分子有機半導体膜4が部分的に形成されている
不可:基板1上のある部分において、第1SAM膜5上に高分子有機半導体膜4が形成されており、第2SAM膜6上の高分子有機半導体膜4と連続膜が形成されている
なお、参考例として、基板1の温度が20℃の場合と、傾斜角度が0°、5°の場合の製膜結果も併せて示す。
【0050】
【表1】

傾斜角度が10°の場合、基板温度が100℃以上の場合のみ製膜可能であり、傾斜角度が20°以上となると広い温度範囲で製膜が可能となる。しかしながら、良好に製膜するためには30°以上であることが望まれる。
【0051】
基板温度は、30℃以上となると製膜が可能となるが、良好に製膜するためには40℃以上であることが望まれる。
特に、傾斜角度が30°以上、基板温度が40℃であって、基板温度をX℃、傾斜角度をY°としたとき、X+Y≧120を満たす場合には、高分子有機半導体膜4を良好に製膜することができた。
【実施例4】
【0052】
本実施例では、実施例1とは異なる材料で第2SAM膜6を製膜し、高分子有機半導体膜4の製膜条件を変化させて薄膜トランジスタを作製した。
上記実施例1と工程4まで同様の工程を経た基板1を、工程5において、アミノプロピルシラン化合物NH2(CH2)3Si(OC2H5)3(APTES)をトルエン中に分散した溶液中に浸漬し、アミノ基を有する第2の自己組織化単分子膜(第2SAM膜6)を領域5aに形成した。この時、第2SAM膜6表面の水に対する接触角は33°、同様にジクロロベンゼンに対する接触角は7.1°であった。
【0053】
続いて、実施例1の工程6と同様にディップコーティング法により基板1を上記溶液に浸漬させた。ここでは、基板1の温度を30℃、60℃、80℃、100℃、120℃のいずれかに設定した。また、基板1の傾斜角度を10°、20°、30°、40°、60°、80°、90°のいずれかに設定した。上記溶液の温度は、基板1の温度と同じになるように設定した。
【0054】
高分子有機半導体膜4の製膜結果を表2に示す。なお、参考例として、基板1の温度が20℃の場合と、傾斜角度が0°、5°の場合の製膜結果も併せて示す。
【0055】
【表2】

傾斜角度が10°の場合は、基板温度が80℃以上の場合のみ製膜可能であった。良好に製膜するためには30°以上であることが望まれる。
【0056】
基板温度は、30℃以上となると製膜が可能となるが、良好に製膜するためには60℃以上であることが望まれる。
特に、傾斜角度が40°以上、かつ基板温度が60℃である場合には、高分子有機半導体膜4を良好に製膜することができた。
【実施例5】
【0057】
本実施例では、上記実施例4の製造方法から、APTESトルエン溶液中の高分子半導体材料の濃度を変化させ、また高分子有機半導体膜4の製膜条件を変化させ、高分子有機半導体膜4を製膜した。
【0058】
基板1の温度は、60℃、90℃、120℃のいずれかに設定した。また、基板1の傾斜角度を20°、40°、60°のいずれかに設定した。上記溶液の温度は、基板1の温度と同じになるように設定した。溶液濃度は、0.15、0.75、1.5重量パーセントの3パターンを準備した。各濃度の製膜結果を表3〜表5に示す。なお、参考例として、基板1の温度が30℃の場合の製膜結果も併せて示す。
【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

溶液濃度が高い(1.5重量パーセント)場合は、基板1の傾斜角度が小さくとも、基板温度30℃以下を除く広い範囲で良好に製膜できた。
【0062】
一方、溶液濃度が低い(0.15重量パーセント)場合は、傾斜角度が20°の場合に製膜性能が落ちたが、傾斜角度が40°以上であると基板温度が30℃であっても一部は製膜が可能であった。
【0063】
いずれの濃度においても、少なくとも基板の傾斜角度が40°以上、基板温度が60℃以上においては良好に製膜できた。
【実施例6】
【0064】
本実施例では、高分子有機半導体膜4の製膜にドロップキャスト法を用いて薄膜トランジスタを作製した。
図10に示すように、上記実施例1と工程5まで同様の工程を経た基板1を、工程6において、任意の温度に加熱し、傾斜角度が40°となるように傾け、シリンジ10から分子量Mw=34,000のP3HTの0.75重量パーセントジクロロベンゼン溶液11を滴下した(本発明における被覆工程)。基板1に滴下された溶液11のうち、第1SAM膜5を形成した領域を被覆した溶液11は基板1の傾斜により流れ落ちて除去された(本発明における除去工程)。このようにして基板1上の所望の領域(第2SAM膜6を形成した領域)に高分子有機半導体膜4を製膜した。
【0065】
基板温度は30℃、40℃、60℃、80℃、100℃のいずれかに設定した。上記溶液の温度は25℃とした。
製膜結果を表6に示す。なお、参考例として、基板1の温度が20℃の場合の製膜結果も併せて示す。
【0066】
【表6】

表6から分かるように、ドロップキャスト法を用いても、ディップコーティング法を用いた場合と同様に製膜することができた。特に、30℃、40℃の温度条件ではディップコーティング法よりもよい結果であった。
【実施例7】
【0067】
本実施例では、実施例6の製造方法から、P3HTの分子量を任意に変化させて高分子有機半導体膜4を製膜した。
P3HTの分子量は、21100,34000,94052の3パターンを準備した。基板温度は40℃、基板の傾斜角度は40°とした。製膜結果を表7に示す。なお、参考例として、分子量128800の場合の製膜結果も併せて示す。
【0068】
【表7】

表7から分かるように、分子量は100000以下であれば高分子有機半導体膜を製膜することができる。特に、分子量が40000以下であると良好に製膜することができる。
【実施例8】
【0069】
本実施例では、実施例1の製造方法から、第1SAM膜5および第2SAM膜6の自己組織化単分子膜材料を変更して、高分子有機半導体膜4を製膜した。
製膜可否結果を表8に示す。表中、Aは第1SAM膜5の材料、Bは第2SAM膜6の材料である。また、括弧内はジクロロベンゼンに対する接触角である。表中の略語を以下に記す。
・βーPhen フェネチルトリクロロシラン
・APTES 3-アミノプロピルトリエトキシシラン
・PTES プロピルトリエトキシシラン
・FPTS (3,3,3-トリフロオロプロピル)トリメトキシシラン
・FOTS (1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル)トリクロロシラン
【0070】
【表8】

表8から分かるように、A、Bの接触角の差が大きいほどよい結果となった。接触角の差が38°を超えると製膜が可能となり、特に差が70°を超えると良好に製膜できる。
[薄膜トランジスタの作製に関する発明の効果]
実施例1〜8にて説明したように、薄膜トランジスタの作製に本発明の半導体装置の製造方法を用いることにより、基板1が30℃以上となっていることに起因して、高分子量の有機半導体材料を含有する溶液の第1SAM膜5と第2SAM膜6とをテンプレートとした塗り分けが可能となる。
【0071】
その結果、半導体材料が高分子有機半導体材料であっても、第2SAM膜6上に高分子有機半導体膜4を製膜した薄膜トランジスタを製造することができるようになる。
また、高分子有機半導体膜4の大きさは第2SAM膜6の大きさによって定まるため、第2SAM膜6の大きさを変化させることで、高分子有機半導体膜4の大きさを変化させることができるため、第2SAM膜6を微細に形成することにより、従来の印刷法よりも微細に製膜することが可能となる。
【0072】
また、製膜部分を規定するバンク等の構造物が不要となり、それらによる微細化の阻害が無くなるため、製膜の微細化が容易になる。
また、半導体材料を含有する溶液を予め加熱しておくことにより、基板1がその溶液に触れた際に基板1の温度が低下してしまうことを抑制できるため、テンプレートに沿った塗り分けができなくなることを防止できる。
【0073】
また、ディップコーティング法,ドロップキャスト法を用いて、溶液の第2SAM膜6への被覆と第1SAM膜5からの除去とを同時に実現することができ、製膜の操作を簡便にすることができる。
[薄膜トランジスタの作製に関する変形例]
以上、本発明の薄膜トランジスタ作製に関する実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0074】
例えば、基板1としてはN型シリコン(Si)ウェハを用いる構成を例示したが、基板1の材質は特に限定されるものではなく、積層する各層の材質等により適宜決めることができる。例えば、ホウ素(B)リン(P)などが高ドープされたSiウェハなどの半導体材料、Al等の金属箔、ガラス、石英又は樹脂等の各種の材料からなるものを用いることができる。
【0075】
なお、基板に樹脂などの柔軟性の高い素材を用いた場合、第1SAM膜部分の傾斜角度が、上記各実施例の基板の傾斜角度に対応することとなる。
また、ゲート電極(基板1が相当)、ソース電極3c及びドレイン電極3dの電極材料としては、上記各実施例の構成以外に、高ドープシリコン、Ti、Al、Cr、Mo、W、Ta、Cu、Ni、Ag、Au、Pt、Pdなどの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。あるいは、ポリアニリンやPEDOT:PSSなどの導電性高分子を用いることができる。あるいは、酸化物透明導電薄膜、例えばインジウム錫-酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)のいずれかを主組成としたものを用いることができる。また、各電極の厚さは10〜500nm程度が好ましい。
【0076】
また、ゲート絶縁膜2として酸化シリコン(SiO2)膜を例示したが、ゲート絶縁膜材料はこれに限定されず、SiO2,Al2O3に代表される種々の絶縁材料の無機酸化物薄膜、Si3N4等の無機窒化膜、または有機薄膜を用いることができるが、特に比誘電率の高い無機酸化物薄膜が好ましい。
【0077】
無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化イットリウムなどが挙げられるがこれに限定されない。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。
【0078】
同様に無機窒化膜として、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどが挙げられる。また、無機窒化物薄膜と無機酸化物薄膜の積層膜なども好適に用いることができる。
有機薄膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、及びアノエチルプルラン、ポリマー体、エラストマー体を含むホスファゼン化合物などを用いることもできる。同様に前記有機薄膜と無機酸化物薄膜の積層膜なども用いる事が出来る。
【0079】
ゲート絶縁薄膜の厚さは10〜500nm程度が好ましいが、自然酸化膜と製膜領域規定用の自己組織化単分子膜をゲート絶縁膜としても良く、その場合は3nm以下のゲート絶縁膜厚となりうる。
【0080】
また、高分子有機半導体材料としてP3HTを例示したが、高分子有機半導体材料はこれに限定されない。例えば、高分子有機半導体材料として、π電子共役系の高分子であるポリチオフェンやポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、の材料を用いることができる。
【0081】
具体的には、p型高分子有機半導体としてポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3,3'''ジドデシルクオーターチオフェン)、ポリチエノチオフェンーチオフェン共重合体、などのポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレン−ビニレン)、ポリ(2−メトキシ−5−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)、ポリ(2−メトキシ−5−(3’,7'−ジメチル−オクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)、ポリ(2−ブチル,5−(2'−エチルヘキシル)−1,4−フェニレンビニレン)などのポリフェニレンビニレン誘導体、などが望ましい。他にもポリビニルカルバゾール、ポリトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレンーチオフェン共重合体、ポリフルオレンーベンゾチアゾール共重合体などが挙げられるがこれに限定されない。
【0082】
n型高分子有機半導体としてポリピリジン、ポリキノリン、それらの誘導体、ポリ(ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン)、ポリベンゾフェナントロリン誘導体などが挙げられるがこれに限定されない。
【0083】
なお、有機半導体材料としては、分子量の小さい材料を用いてもよい。例えば、可溶性ペンタセン前駆体、可溶性テトラベンゾポルフィリン前駆体、6,13−トリイソプルシリルエチニルペンタセンやその類縁体、ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン誘導体、クオーターチオフェン誘導体、フラーレン(C60)やその誘導体、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0084】
また、上記各実施例においては、先に高分子有機半導体膜4を製膜したくない領域の自己組織化単分子膜(第1SAM膜5)を形成し、後ほど高分子有機半導体膜4を製膜したい領域の自己組織化単分子膜(第2SAM膜6)を形成する構成を例示したが、この自己組織化単分子膜の形成順序は逆であってもよい。
【0085】
また、上記各実施例においては、ゲート絶縁膜2上に形成された自己組織化単分子膜(第1SAM膜5、第2SAM膜6)を用いて高分子有機半導体膜4の製膜領域を規定しているが、図11に示すように、基板1上に自己組織化単分子膜(第1SAM膜5、第2SAM膜6)を形成し高分子有機半導体膜4を形成した後、ソース電極3c,ドレイン電極3d,およびゲート絶縁膜2を製膜し、ゲート電極12を形成してもよい。
【0086】
また、上記各実施例においては、有機半導体材料溶液を、ディップコート法またはドロップキャスト法を用いて基板1表面(第2SAM膜6表面)に被覆させる構成を例示したが、スプレーコーティング法、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの手法を用いて上記溶液を基板1に被覆させることとしてもよい。
[有機エレクトロルミネッセンス素子の作製]
【実施例9】
【0087】
本実施例では、以下の工程1〜工程6により、陽極上に形成された自己組織化単分子膜によって高分子有機正孔注入層の製膜領域が規定された有機エレクトロルミネッセンス素子(以降、有機EL素子という)を作製した。
(工程1)
基板21として、インジウム-錫 酸化膜(ITO膜22)が設けられたガラス基板を用い、オゾン処理装置を用いて基板21表面(ITO膜22表面)を洗浄した。この時ITO膜22表面の水に対する接触角は8°以下であった。
(工程2)
パーフルオロクロロシラン化合物CF3(CF2)5CH2SiCl3をトルエン中に分散した溶液に基板21を浸漬し、パーフルオロアルキル基を有する第1の自己組織化単分子膜(第1SAM膜28)をITO膜22表面に形成した。この状態の基板21の断面図を図12(a)に示す。このとき、表面の水に対する接触角は113°であった。
(工程3)
ITO膜22表面における高分子正孔注入層材料を塗布すべき領域22a上の第1SAM膜28を、図13に示すように、上記領域22aが遮光されないようにパターンされたフォトマスク30を用い基板21と密着させて172nmもしくは254nmの波長を持つ紫外光を露光し、基板21とフォトマスク30間の酸素分子をラジカル化させることによって除去した。この状態の基板21の断面図を図12(b)に示す。
(工程4)
アミノプロピルシラン化合物NH2(CH2)3Si(OC2H5)3(APTES)をトルエン中に分散した溶液に基板21を浸漬し、アミノ基を有する第2の自己組織化単分子膜(第2SAM膜29)を領域22aに形成した。この状態の基板21の断面図を図12(c)に示す。
【0088】
このとき、第2SAM膜29表面の水に対する接触角は28°であった。
(工程5)
図10に示す実施例6のドロップキャスト法と同様に、基板21を30℃に加熱し、傾斜角度が40°となるように傾け、シリンジ10から、高分子正孔注入層材料としてポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)水溶液11a(H.C.starck社製Clevios P Al 4083。水溶液として市販)を滴下し、第2SAM膜29上にPEDOT/PSS膜からなる正孔注入層23を製膜した。
【0089】
この状態の基板21の断面図を図12(d)に示す。
(工程6)
シャドウマスクを用いた真空抵抗加熱蒸着法により、正孔注入層23上に正孔輸送層24を製膜した。また、同様の製膜法により、正孔輸送層24上に有機発光層25を製膜した。正孔輸送層材料にはジフェニルナフチルジアミン(α-NPD)を用い、発光層材料としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を用いた。このときα-NPDとAlq3の膜厚はそれぞれ40nm、60nmであった。
【0090】
続いて、有機発光層25上に電子注入層26としてフッ化リチウム(LiF)を1nm成膜し、有機発光層25上にこれまでと異なるシャドウマスクを用いて陰極層27となるアルミニウム(Al)を100nm成膜した。このように作製された有機EL素子の断面図および上面図を図14(a),(b)に示す。この図14(a)は、図14(b)B−B断面である。
【0091】
上記のようにして作製した有機EL素子において、ITO膜22(陽極)と陰極層27との間に4Vの電圧を印加したところ、0.52mAの電流が流れ、基板21上の高分子正孔注入層23が形成された領域の発光が確認された。
【0092】
なお比較例として、インクジェット印刷用のバンクを先に形成し、PEDOT/PSS水溶液をインクジェット印刷により印刷した以外は本実施例と同様の工程にて有機EL素子を作製した。80℃中での駆動保存寿命を測定したところ、本実施例の有機EL素子の方が非発光領域の拡大が少なく長期間発光を維持した。
【実施例10】
【0093】
本実施例では、自己組織化単分子膜によって発光画素規定用の絶縁層が規定された有機EL素子を作製した。
ここでは、実施例9の製造方法から、工程2、工程4を変更し、工程4の後に工程を追加した。
【0094】
工程2では、第1の自己組織化単分子膜に、パーフルオロクロロシラン化合物に代えて、フェネチルシラン化合物C6H5(CH2)2SiCl3(β-phen)を用いた。
工程4では、第2の自己組織化単分子膜に、アミノプロピルシラン化合物に代えて、パーフルオロクロロシラン化合物CF3(CF2)5CH2SiCl3を用いた。
【0095】
次に、発光画素規定用の絶縁層としてポリビニルフェノール(PVP)10重量パーセント濃度トルエン溶液を用い、ディップコーティング法により所望の領域(第1SAM膜28上)にPVP膜を製膜した。ここでは、基板21を予め50℃になるように加熱しておき、50℃に温度制御された溶液に基板21を浸漬し、垂直に引き上げを行った。
【0096】
以降、実施例9の工程5,6と同様に作製した。高分子正孔注入層23は第2SAM膜29およびPVP膜上に形成された。
上記のように作製した有機EL素子において、ITO膜22(陽極)と陰極層27との間に5Vの電圧を印加したところ、PVP膜が製膜されていない領域において発光が確認された。この時の電流値は0.13mAであった。
[有機エレクトロルミネッセンス素子の作製に関する発明の効果]
実施例9,10にて説明したように、有機エレクトロルミネッセンス素子の作製に本発明の半導体装置の製造方法を用いることにより、上述した薄膜トランジスタの作製と同様の作用、効果を得ることができる。
[有機エレクトロルミネッセンス素子の作製に関する変形例]
以上、本発明の有機EL素子作製に関する実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0097】
例えば、基板21としてはインジウム-錫 酸化膜(ITO膜22)が設けられたガラス基板を用いる構成を例示したが、基板21の材質は上記構成に限定されるものではなく、積層する各層の材質等により適宜決めることができる。
【0098】
例えば、Siウェハなどの半導体材料、Al等の金属、ガラス、石英又は樹脂等の各種の材料から、用途に応じてフレキシブルな材質や硬質な材質等から選択することができる。具体的には、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等の材質からなる基板を挙げることができる。基板21の形状としては、枚葉状でも連続状でもよく、具体的な形状としては、例えばカード状、フィルム状、ディスク状、チップ状等を挙げることができる。
【0099】
また、陽極(ITO膜22)材料、陰極層27材料としては、上記各実施例の構成以外に、高ドープシリコン、Ti、Al、Cr、Mo、W、Ta、Cu、Ni、Ag、Au、Pt、Pdなどの金属あるいはこれらの合金が挙げられるがこれに限定されない。特に陽極材料としてインジウム錫-酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)等の透明導電膜、金、白金のような仕事関数の大きな金属等が好まれる。同様に陰極材料としては、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)など仕事関数の小さい金属材料が好んで用いられる。
【0100】
また、高分子正孔注入層23の材料として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を例示したが、その他の材料としてポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子材料などがあげられるがこれに限定されない。
【0101】
また、正孔輸送層24の材料として、ジフェニルナフチルジアミン(α-NPD)を例示したが、正孔輸送層材料はこれに限定されない。例えば、トリフェニルジアミン(TPD)、スターバースト様アミン(例えばm−MTDATA、o-、m-PTDATA、p-PMTDATA)などトリフェニルアミン系材料が挙げられる。他にもフタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィリン、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、ピラゾリン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、スチルベン、ペンタセン、ポリチオフェン若しくはブタジエン、又はこれらの誘導体等を用いることができる。また、正孔輸送層24は単層でも良いし、必要に応じて上記材料の混合物または複数の層からなってもよい。
【0102】
有機発光層25には、発光機能を有する化合物である蛍光物質もしくは燐光物質を含有させるとよい。特に燐光物質を有機発光層に含有したものは発光効率に優れる。
蛍光物質ではクマリン誘導体(クマリン6)をトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)に含有させた例などがあげられる。このような蛍光性物質としては、例えばキナクリドン、ルブレン、スチリル系色素などの化合物から選択される少なくとも1種が挙げられる。燐光性物質としては有機イリジウム錯体、有機プラチナ錯体などが挙げられる。また高分子系発光材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。
【0103】
また、電子注入層26としてフッ化リチウム(LiF)を例示したが、電子注入層26にはこれに限定されず、酸化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、カルシウム、リチウム、セシウム、フッ化セシウム等のようにアルカリ金属類、及びアルカリ金属類のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体等を用いることができる。
【0104】
また図示しないが、電子輸送層を有機発光層25と陰極層27の間に1層以上設けてもよい。例えば電子輸送層の形成材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、トリニトロフルオレノン、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニトロアントラキノン、オキソジアゾール、トリアゾール、シロール、ヒドロキシフラボン-ベリリウム錯体、又はこれらの誘導体等を用いることができる。なお、これらの電子輸送層材料は、上記の有機発光層25に混ぜてもよいし、上記の電子注入層26に混ぜてもよい。
【0105】
また、上記実施例10においては、発光画素規定用の絶縁層材料としてポリビニルフェノール(PVP)を用いたが、それ以外に、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリビニルクロライド、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体などを用いることもできる。
[太陽電池の作製]
【実施例11】
【0106】
本実施例では、透明電極に形成された自己組織化単分子膜によって有機半導体膜の製膜領域が規定された太陽電池を作製した。
【符号の説明】
【0107】
1…基板、2…ゲート絶縁膜、3c…ソース電極、3d…ドレイン電極、4…高分子有機半導体膜、5…第1SAM膜、5a…領域、6…第2SAM膜、7…メタルマスク、8,8a…溶液、10…シリンジ、11,11a…溶液、12…ゲート電極、21…基板、22…ITO膜、22a…領域、23…正孔注入層、24…正孔輸送層、25…有機発光層、26…電子注入層、27…陰極層、28…第1SAM膜、29…第2SAM膜、30…フォトマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体膜が所定の領域に製膜された基板を備える半導体装置の製造方法であって、
第1の自己組織化単分子膜が形成された第1の領域と、所定の溶媒との接触角が前記第1の自己組織化単分子膜よりも小さい第2の自己組織化単分子膜が形成された第2の領域と、を有する基板を、所定温度以上とした状態で、前記溶媒と有機半導体材料とからなる溶液を前記基板に被覆する被覆工程と、
前記第1の領域を被覆した前記溶液を除去する除去工程と、を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記有機半導体材料は、高分子有機半導体材料である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記被覆工程は、前記基板を前記溶液中に浸漬する工程である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記被覆工程は、ディップコート法、ドロップキャスト法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷の群から選択される1以上の方法を用いて、前記溶液を前記基板に被覆する工程である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記被覆工程において、前記溶液の温度は、前記所定温度以上である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記被覆工程において、前記基板の温度は、30℃以上かつ前記溶媒の沸点以下の温度である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記除去工程は、前記基板のうち少なくとも前記第1の領域を水平面に対して傾斜させる工程である
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記除去工程において、前記第1の領域の水平面に対する傾斜角度は、20°以上である
ことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記除去工程において、前記第1の領域の水平面に対する傾斜角度は30°以上であり、
前記所定の温度は、40℃以上であって、かつ、前記溶媒の沸点以下の温度であり、
前記所定の温度をX℃、前記傾斜角度をY°としたとき、X+Y≧120を満たす
ことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記半導体装置は、薄膜トランジスタであり、
前記有機半導体膜は、前記薄膜トランジスタにおけるチャネル部である
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記半導体装置は、有機エレクトロルミネッセンス素子であり、
前記有機半導体膜は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子における透明電極と接する層である
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記半導体装置は、太陽電池であり、
前記有機半導体膜は、前記太陽電池における透明電極と接する層である
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−54774(P2011−54774A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202572(P2009−202572)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】