説明

半導体装置の製造方法

【課題】トランジスタのスイッチング速度を高速化した半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体装置は、絶縁層の一部上に形成された半導体層10と、半導体層10の側面10aに形成され、第1のゲート絶縁膜21、第1のゲート電極22、並びにソース及びドレインとなる2つの第1の不純物層23,24を有する第1のトランジスタ20と、半導体層10の側面10bに形成され、第2のゲート絶縁膜31、第2のゲート電極32、並びにソース及びドレインとなる2つの第2の不純物層33,34を有する第2のトランジスタ30とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。特に本発明は、トランジスタのスイッチング速度を高速化した半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の半導体装置の構成を説明する為の断面図である。本図において、p型シリコン層100にはn型ウェル100aが形成されている。n型ウェル100a にはn型不純物層100bが形成されており、このn型不純物層100bを介してn 型ウェル100aに電圧Vddが印加されている。
【0003】
n型ウェル100a内には、p型MOSトランジスタ110とp型MOSバラクタ120が互いに隣接して配置されている。p型MOSトランジスタ110のソース113、並びにp型MOSバラクタ120のソース123及びドレイン124にも、電圧Vddが印加されている。
【0004】
p型MOSトランジスタ110のゲート電極112には信号Sinが印加され、p型MOSバラクタ120のゲート電極122には、信号Sinの差動信号XSinが入力される。このため、p型MOSトランジスタ110がオンからオフ又はオフからオンに切り替わる場合、p型MOSトランジスタ110のチャネル領域に蓄積していた電荷(例えば電子)と、p型MOSバラクタ120のチャネル領域に蓄積していた電荷(例えばホール)とが交換される。このため、p型MOSトランジスタ110は、p型MOSバラクタ120がない場合と比べて高速でスイッチングする(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−124635号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した構造のトランジスタよりスイッチング速度が向上したトランジスタが実現すれば、半導体装置の動作速度は更に高速になる。
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、トランジスタのスイッチング速度を高速化した半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体装置は、絶縁層の一部上に形成された半導体層と、
前記半導体層の側面の第1の領域に形成され、第1のゲート絶縁膜、第1のゲート電極、第1のソース不純物層、及び第1のドレイン不純物層を有する第1のトランジスタと、
前記半導体層の側面の、該半導体層を介して前記第1の領域と対向する第2の領域に形成され、第2のゲート絶縁膜、第2のゲート電極、第2のソース不純物層、及び第2のドレイン不純物層を有する第2のトランジスタと、
前記半導体層に形成され、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタに共通なウェルと、
を具備する。
【0008】
この半導体装置において、前記第1のゲート電極には第1の信号が入力され、前記第2のゲート電極には、前記第1の信号を反転した第2の信号が入力される場合を考える。この場合、前記第1のトランジスタのチャネル領域に蓄積される電荷(例えばホール)と、前記第2のトランジスタのチャネル領域に蓄積される電荷(例えば電子)は、互いに逆極性となる。このため、前記第1のトランジスタがオンの場合には前記第2のトランジスタはバラクタとして機能し、前記第2のトランジスタがオンの場合には前記第1のトランジスタはバラクタとして機能する。
【0009】
そして、前記第1のトランジスタがオンからオフに切り替わる際には、前記第1のトランジスタのチャネル領域に蓄積されていた電荷と、前記第2のトランジスタのチャネル領域に蓄積されていた電荷とが、前記ウェルを介して交換される。前記第1のトランジスタがオフからオンに切り替わる際も同様である。
【0010】
また、前記第1のトランジスタが形成された前記第1の領域と、前記第2のトランジスタが形成された前記第2の領域は、前記半導体層を介して互いに対向している。このため、電荷交換の際に電荷が移動する距離が、上記した従来例と比べて短くなる。
【0011】
従って、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタそれぞれのスイッチング速度が、上記した従来例と比べて速くなる。
【0012】
また、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタそれぞれのチャネル領域に蓄積された電荷は、これらトランジスタがスイッチングする際に交換されるため、前記半導体層の外部に出て行かずに再利用される。従って、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの消費電力が小さくなる。
【0013】
なお、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極は、例えばポリシリコン電極であるが、メタル電極であってもよい。
【0014】
前記第1のゲート絶縁膜と前記第2のゲート絶縁膜の間に挟まれている前記半導体層の厚さは、0.35fμE以下であるのが好ましい。ただし、f=前記半導体装置のクロック周波数(1/s)、μ=前記半導体装置のホールのモビリティ(cm/sV)、E=前記第1のゲート絶縁膜下のチャネル及び前記第2のゲート絶縁膜下のチャネルそれぞれにおける電界強度(V/cm)の最大値である。
【0015】
前記第1のゲート絶縁膜及び前記第2のゲート絶縁膜は、前記半導体層を介して互いに対向する位置に配置されているのが好ましいが、ずれていてもよい。
【0016】
前記第1のソース不純物層及び前記第2のソース不純物層は、互いに繋がって一つの不純物層を形成していてもよい。この場合、前記第1のソース不純物層及び第2のソース不純物層が位置する前記半導体層の厚さは、前記第1のドレイン不純物層及び第2のドレイン不純物層が位置する前記半導体層の厚さより薄くてもよい。
【0017】
前記第1のソース不純物層及び前記第2のソース不純物層は、前記半導体層を介して互いに対向する位置に配置されており、かつ、前記第1のドレイン不純物層及び前記第2のドレイン不純物層は、前記半導体層を介して互いに対向する位置に配置されている場合、前記半導体層は、前記第1ソース不純物層と前記第2のソース不純物層の間に挟まれた第1の酸化物層と、前記第1のドレイン不純物層と前記第2のドレイン不純物層の間に挟まれた第2の酸化物層とを有していてもよい。この場合、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタそれぞれの容量のうち、前記ソース不純物層及び前記ドレイン不純物層に起因している容量が小さくなるため、消費電力が更に小さくなる。
【0018】
前記半導体層は、例えば略直方体である。この場合、前記第1 の領域は前記略直方体の第1の側面であり、前記第2の領域は、前記第1の側面の反対面である。前記第1の側面及び前記反対面は、長手方向の側面であるのが好ましい。
【0019】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、第1の絶縁膜の一部上に、不純物が導入されていてウェルとして機能する略直方体の半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の第1の側面に第1のゲート絶縁膜を形成し、かつ前記半導体層の第2の側面に第2のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のゲート絶縁膜上に位置する第1のゲート電極、及び前記第2のゲート絶縁膜上に位置する第2のゲート電極を形成する工程と、
前記第1の側面に、前記第1のソース不純物層及び第1のドレイン不純物層を形成し、かつ前記第2の側面に、前記第2のソース不純物層及び第2のドレイン不純物層を形成する工程とを具備する。
【0020】
前記半導体層を形成する工程と、前記第1及び第2のソース不純物層並びに前記第1及び第2のドレイン不純物層を形成する工程の間に、前記半導体層上に位置する上部絶縁層を形成する工程を具備し、
前記第1及び第2のソース不純物層並びに前記第1及び第2のドレイン不純物層を形成する工程は、前記第1のゲート電極、前記第2のゲート電極、及び前記上部絶縁層をマスクとして前記半導体層に不純物を導入する工程であってもよい。
【0021】
本発明に係る他の半導体装置の製造方法は、第1の絶縁膜の一部上に、不純物が導入されていてウェルとして機能する略直方体の半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の第1の側面に、第1のトランジスタのゲート絶縁膜を形成し、かつ前記第1の側面の対向面である第2の側面に、第2のトランジスタのゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のトランジスタのゲート絶縁膜上に第1のトランジスタのゲート電極を形成し、かつ前記第2のトランジスタのゲート絶縁膜上に、前記第1のトランジスタのゲート電極と対向する位置にある第2のトランジスタのゲート電極を形成する工程と、
前記半導体層の一部を加工することにより、前記半導体層に、前記第1のトランジスタのゲート電極及び前記第2のトランジスタのゲート電極に挟まれた領域に隣接し、厚さが他の部分より薄い薄肉部を形成する工程と、
前記第1のトランジスタのゲート電極及び前記第2のトランジスタのゲート電極をマスクとして前記半導体層に不純物を導入することにより、前記薄肉部の全体に不純物が分散していて第1のトランジスタのソース及び第2のトランジスタの共通ソースとして機能するソース不純物層を形成するとともに、前記第1の側面に第1のトランジスタのドレイン不純物層を形成し、かつ、前記第2の側面に、前記第1のトランジスタのドレイン不純物層と分離された前記第2のトランジスタのドレイン不純物層を形成する工程とを具備する。
【0022】
本発明に係る他の半導体装置の製造方法は、第1の絶縁膜の一部上に、不純物が導入されていてウェルとして機能する略直方体の半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の第1の側面に、第1のトランジスタのゲート絶縁膜を形成し、かつ前記第1の側面の対向面である第2の側面に、第2のトランジスタのゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のトランジスタのゲート絶縁膜上、前記第2のトランジスタのゲート絶縁膜上、前記半導体層上、及び前記上部絶縁層上に、導電膜を形成する工程と、
前記導電膜をパターニングすることにより、前記第1のトランジスタのゲート絶縁膜上に、第1のトランジスタのゲート電極を形成し、かつ前記第2のトランジスタのゲート絶縁膜上に、前記第1のトランジスタのゲート電極と対向する位置にある第2のトランジスタのゲート電極を形成する工程と、
前記第1の側面のうち前記第1のトランジスタのドレイン不純物層が形成される領域上、及び、前記第2の側面のうち前記第2のトランジスタのドレイン不純物層が形成される領域上それぞれに、被覆膜を形成する工程と、
前記第1のトランジスタのゲート電極、前記第2のトランジスタのゲート電極、及び前記上部絶縁層をマスクとして、不純物が前記被覆膜を透過する条件で前記半導体層に不純物を導入することにより、前記第1の側面から前記第2の側面まで不純物が拡散していて第1及び第2のトランジスタそれぞれのソースとして機能するソース不純物層を形成するとともに、前記第1の側面に前記第1のトランジスタのドレイン不純物層を形成し、かつ、かつ、前記第2の側面に、前記第1のトランジスタのドレイン不純物層と分離された前記第2のトランジスタのドレイン不純物層を形成する工程とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の斜視図、(B)は(A)を直線A−Aを含む水平面で切断した断面図、(C)は(A)の半導体装置の回路図。
【図2】p型MOSトランジスタにおけるゲート・ソース間の電圧Vgsと、チャネル領域に蓄積される電荷の量との関係を説明するグラフ。
【図3】(A)はp型MOSトランジスタ20のゲート電極22に入力される信号S、及びp型MOSトランジスタ30のゲート電極32に入力される反転信号XSの一例を示す図。(B),(C)の各図は、それぞれ図3のt=t1,t2の場合におけるp型MOSトランジスタ20,30のチャネル領域の電荷を説明する図。
【図4】(A)は図1に示した半導体装置の製造方法を説明する為の斜視図、(B)は(A)の次の工程を説明する為の斜視図、(C)は(B)の次の工程を説明する為の斜視図、(D)は(C)の次の工程を説明する為の斜視図、(E)は(D)の次の工程を説明する為の斜視図。
【図5】第2の実施形態に係る半導体装置の構成を説明する断面図。
【図6】第3の実施形態に係る半導体装置の構成を説明する断面図。
【図7】第4の実施形態に係る半導体装置の構成を説明する断面図。
【図8】従来の半導体装置の構成を説明する為の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1(A)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の斜視図であり、図1(B)は、図1(A)を、直線A−Aを含む水平面で切断した断面図である。図1(C)は図1(A)に示した半導体装置の回路図である。この半導体装置は、略直方体のn型シリコン層10の長手方向の側面10a,10bに、それぞれp型MOSトランジスタ20,30を形成したものである。p型MOSトランジスタ20のゲート電極22には信号Sが入力され、p型MOSトランジスタ30のゲート電極32には、信号Sを反転させた反転信号XSが入力される。すなわち、p型MOSトランジスタ20,30には差動信号が入力される。
【0025】
n型シリコン層10は、シリコン基板1上の酸化シリコン膜2上に形成されており、全体が、プレーナー型のp型MOSトランジスタにおけるn型ウェルとして機能する。すなわち、p型MOSトランジスタ20,30は、同一のn型ウェルに形成されている。n型シリコン層10の上面には酸化シリコン層11が形成されている。n型シリコン層10の側面10aには、p型MOSトランジスタ20のゲート絶縁膜21、並びにソース及びドレインとなるp型不純物層23,24が形成されている。ゲート絶縁膜21上にはゲート電極22が形成されており、p型不純物層23,24には、それぞれAl合金配線25,26が接続されている。
【0026】
また、n型シリコン層10の側面10bには、p型MOSトランジスタ30のゲート絶縁膜31、並びにソース及びドレインとなるp 型不純物層33,34が形成されている。ゲート絶縁膜31上にはゲート電極32が形成されており、p型不純物層33,34には、それぞれAl合金配線35,36が形成されている。
【0027】
なお、ゲート電極22,32は、例えばポリシリコン電極である。この場合、ゲート電極22,32は、n型不純物及びp型不純物の双方が導入されたデュアル・ドーップド・ポリシリコンで形成されるのが好ましい。このようにすると、p型MOSトランジスタ20,30の動作に必要な閾値電圧を低くすることができるため、p型MOSトランジスタ20,30を微細化することができる。
【0028】
また、ゲート電極22,32は、メタル電極であってもよい。ゲート絶縁膜21,31の極薄化が進んだ場合、ゲート電極22,32がポリシリコンで形成されていると、ゲート電極22,32に生じる空乏層容量が問題になる。これに対し、ゲート電極22,32をメタル電極にすると、このような問題が生じない。なお、この場合のゲート電極22,32の材質は、例えばシリサイド金属など、シリコンにミッドギャップ付近の仕事関数を有しているものが好ましい。また、動作時に熱が発生するため、耐熱性を有するのが好ましい。
【0029】
また、p型MOSトランジスタ20,30は互いに対向する位置に配置されている。詳細には、ゲート絶縁膜21,31、p型不純物層23,33、及びp型不純物層24,34が、それぞれ互いに対向している。
【0030】
図2は、p型MOSトランジスタ20,30におけるゲート・ソース間の電圧Vgsと、p型MOSトランジスタ20,30のチャネル領域に蓄積される電荷の量との関係を説明するグラフである。以下、p型MOSトランジスタ20を例に挙げて説明する。電圧Vgsは、ゲート電極22に入力される信号Sによって変化する。
【0031】
電圧Vgsがマイナスである場合、ゲート絶縁膜21の下に位置するチャネル領域には、容量Coxを有する反転層が形成される。この反転層に蓄積される電荷はホールである。また、反転層の下には空乏層が形成されるが、この空乏層も容量Ciを有している。また、反転層が形成されることによりn型シリコン層10内に電位分布が生じるが、この電位分布によってn型シリコン層10は容量Cbを有する。このように、p型MOSトランジスタ20の容量Cは、容量Cox,Ci,Cbの和となる。ただし、容量Coxが支配的である。
【0032】
電圧Vgsのマイナス値が十分に大きい場合、p型MOSトランジスタ20には強反転層が形成され、容量Cは一定値Cmaxとなる。この状態において、p型MOSトランジスタ20はオン状態になる。
【0033】
その後、電圧Vgsをマイナス電位から0電位に向けて上昇させる。すると、ホールが離散していき、反転層が中間反転状態から弱反転状態になる。これにより、容量Cが減少し、最小値Cminとなる。この状態において、p型MOSトランジスタ20はオフ状態になる
【0034】
さらに電圧Vgsが上昇してプラス電位になっていくと、今度は電子が蓄積されていき、容量Cが増大する。電圧Vgsのプラス電位が十分に大きくなると、p型MOSトランジスタ20の容量Cは一定値Cmaxとなる。この状態において、p型MOSトランジスタ20はオフ状態にあり、かつバラクタとして機能する。
【0035】
このように、電圧Vgsがマイナス電位からプラス電位に変化し、p型MOSトランジスタ20がオンからオフに切り替わる場合、Q=2Vs(Cmax−Cmin)の電荷量がチャネル領域を移動する必要がある。ただし、Vs=電圧Vgsの振幅である。電圧Vgsがプラス電位からマイナス電位に変化し、p型MOSトランジスタ20がオフ状態からオン状態になる場合も同様である。なお、この関係式は一般的なMOSトランジスタにも適用される。
【0036】
一般的な構造のMOSトランジスタにおいて、入力される信号の周波数が高くなると、ホールの移動が信号の電位変化に追従できなくなる場合がある。この場合、MOSトランジスタのオン/オフが切り替わらない。
【0037】
これに対し、図3の各図を用いて説明するように、本実施形態では、p型MOSトランジスタ20,30には差動信号が入力されるため、p型MOSトランジスタ20のチャネル領域に蓄積された電荷と、p型MOSトランジスタ30に蓄積された電荷とがスイッチングの際に交換される。従って、信号の周波数が高くても、オン/オフが切り替わる。
【0038】
図3(A)は、p型MOSトランジスタ20のゲート電極22に入力される信号S、及びp型MOSトランジスタ30のゲート電極32に入力される反転信号XSの一例を示す図である。図3(B),(C)の各図は、それぞれ図3(A)のt=t1,t2の場合におけるp型MOSトランジスタ20,30のチャネル領域の電荷を説明する図である。
【0039】
図3(A)に示すように、t=0において、信号Sがマイナスのハイレベル電位にある状態において、p型MOSトランジスタ20はオン状態にあり、チャネル領域にはキャリアとなるホールが蓄積されている。この場合、反転信号XSはプラスのハイレベル電位にあるため、p型MOSトランジスタ30はオフ状態かつバラクタとして機能しており、そのチャネル領域には電子が蓄積されている。
【0040】
そして、t=t1では、信号Sはマイナスのハイレベル電位から0電位までの立ち下り過程にあり、反転信号XSはプラスのハイレベル電位から0電位までの立ち下がり過程にある。
【0041】
図3(B)に示すように、t=t1では、p型MOSトランジスタ20では、チャネル領域に位置するホールが徐々に拡散していき、p型MOSトランジスタ30では、チャネル領域に位置する電子が徐々に拡散していく。
【0042】
その後、図3(A)に示すように、t=t2になると、信号Sは0電位からプラスのハイレベル電位への立ち上がり過程にあり、反転信号XSは0電位からマイナスのハイレベル電位への立ち上がり過程にある。
【0043】
図3(C)に示すように、t=t2において、ホールはp型MOSトランジスタ30のチャネル領域に移動し、電子はp型MOSトランジスタ20のチャネル領域に移動する。そして、p型MOSトランジスタ20はオンからオフに切り替わり、バラクタとして機能する。また、p型MOSトランジスタ30はオフからオンに切り替わる。
【0044】
このように、p型MOSトランジスタ20,30がスイッチングする場合、互いが保持している電荷は交換されるが、その際に電荷が移動する距離は、従来例と比較して短い(n型シリコン層10の厚さd未満)。従って、p型MOSトランジスタ20,30は、高速でスイッチングする。
【0045】
例えばホールのμ=4×10(cm/sV:温度が300k、キャリア濃度が1014〜1015/cm)、ソース電圧が1.8Vである場合、ホールのドリフト拡散速度=7.2×10(cm/s)となる。この条件で距離d=200nmである場合、ホールが距離dを移動するために必要な時間tは、d=(D×t)0.5から計算すると、0.55psとなる。従って、p型MOSトランジスタ20は、例えば350GHz(t=1psが必要)という高速でオン状態からオフ状態に切り替わることが可能である。
【0046】
また、電荷の交換がn型シリコン層10の内部で行われるため、半導体装置の外部に電荷が移動しない。従って、スイッチングする際のp型MOSトランジスタ20,30の消費電力が、従来と比べて少なくなる。
【0047】
上記した各効果は、ゲート絶縁膜21,31の相互間の距離d が小さいほど大きくなる。距離dは、tμE以下、すなわち0.35fμE以下であるのが好ましい。ただし、t= 信号S,XSの立ち上がり時間であり、f=前記半導体装置のクロック周波数(1/s)であり、μ=前記半導体装置のホールのモビリティ(cm/sV)であり、E=前記第1のゲート絶縁膜下のチャネル及び前記第2のゲート絶縁膜下のチャネルそれぞれにおける電界強度(V/cm)の最大値である。
【0048】
図4の各図は、図1に示した半導体装置の製造方法を説明する為の斜視図である。まず、図4(A)に示すように、シリコン基板1上に、酸化シリコン膜2をCVD法により形成し、さらに酸化シリコン膜2上に、シリコン膜12及び酸化シリコン膜13を、CVD法を用いてこの順に積層する。シリコン膜12はn型シリコン層10となる膜であり、酸化シリコン膜13は酸化シリコン層11となる膜である。
【0049】
次いで、図4(B)に示すように、酸化シリコン膜13上にフォトレジスト膜( 図示せず)を塗布し、このフォトレジスト膜を露光及び現像する。これにより、酸化シリコン膜13上にはレジストパターンが形成される。次いで、このレジストパターンをマスクとして、酸化シリコン膜13及びシリコン膜12をエッチングする。これにより、酸化シリコン膜13及びシリコン膜12はパターニングされる。次いで、パターニングされたシリコン膜12にn型不純物を導入する。これにより、n型シリコン層10及び酸化シリコン層11が形成される。その後、レジストパターンを除去する。
【0050】
次いで、図4(C)に示すように、n型シリコン層10を熱酸化する。これにより、n型シリコン層10にはゲート絶縁膜21,31が形成される。
【0051】
次いで、図4(D)に示すように、ゲート絶縁膜21,31を含む全面上にポリシリコン膜を形成する。次いで、このポリシリコン膜上にフォトレジスト膜を塗布し、このフォトレジスト膜を露光及び現像する。これにより、ポリシリコン膜上にはレジストパターンが形成される。次いで、このレジストパターンをマスクとしてポリシリコン膜をエッチングする。これにより、ポリシリコン膜はパターニングされ、ゲート電極22,32が形成される。その後、レジストパターンを除去する。
【0052】
その後、ゲート電極22,32をマスクとしたエッチングにより、ゲート電極22,32から食み出しているゲート絶縁膜21,31を除去する。次いで、ゲート電極22,32をマスクとして、n型シリコン層10にP型不純物を導入する。これにより、n型シリコン層10には、図1(B)に示したp型不純物層23,24,33,34が形成される。ここで、p型不純物層23,33相互間の距離、及びp型不純物層24,34相互間の距離は、p型不純物層23,24,33,34の深さのばらつきの平均値の2倍以上とするのが好ましい。
【0053】
次いで、図4(E)に示すように、n型シリコン層10上を含む全面上にAl合金膜をスパッタリング法により形成する。次いで、Al合金膜上にフォトレジスト膜を塗布し、このフォトレジスト膜を露光及び現像する。これにより、Al合金膜上にはレジストパターンが形成される。次いで、このレジストパターンをマスクとしてAl合金膜をエッチングする。これにより、Al合金配線25,26,35,36が形成される。その後、レジストパターンを除去する。
このようにして、図1の半導体装置が形成される。
【0054】
以上、本発明の第1の実施形態によれば、直方体状のn型シリコン層10を形成し、n型シリコン層10の側面10a,10bに、それぞれp型MOSトランジスタ20,30を形成している。n型シリコン層10は、p型MOSトランジスタ20,30の共通のウェルとして機能する。そして、p型MOSトランジスタ20のゲート電極22には信号Sが入力され、p型MOSトランジスタ30のゲート電極32には信号Sの反転信号XSが入力される。
【0055】
このため、p型MOSトランジスタ20,30それぞれのチャネル領域に蓄積する電荷(ホール又は電子)は、互いに逆極性となる。従って、p型MOSトランジスタ20,30がスイッチングする際に、互いのチャネル領域に蓄積された電荷が交換される。また、側面10a,10bは、n型シリコン層10の長手方向の側面であり、互いに対向している。従って、電荷が交換される際に電荷が移動する距離は、従来例と比較して短くなる。
【0056】
このため、p型MOSトランジスタ20,30のスイッチング速度が速くなる。従って、リンギング防止回路(抵抗挿入など)、プルアップ・プルダウン回路、プッシュプロ回路、スリューレート制御回路、及びPLL回路等の付属回路を用いなくても、高速(例えば350GHz)で動作する半導体装置(例えばALU:Arithmetic and Logical Unitのレジスタやキャッシュメモリ)を提供することができる。
【0057】
また、n型シリコン層10内部でチャネル領域に蓄積された電荷が再利用されることになる。従って、p型MOSトランジスタ20,30の消費電力が小さくなる。
【0058】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成を説明する断面図である。本図は、第1の実施形態における図1(B)に相当する断面図である。本実施形態では、略直方体のn型シリコン層10のうち、p型MOSトランジスタ20,30のソースとなる不純物層が形成される部分は、他の領域より薄くなっていて薄肉部10cを形成している。
【0059】
薄肉部10cにおいて、p型MOSトランジスタ20,30のソースとなる不純物層は、互いに繋がっており、一つのp型不純物層23を形成している。このため、第1の実施形態と異なり、Al合金配線35を形成する必要はない。以下、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、ゲート電極22,32を形成する工程と、p型不純物層23,24,34を形成する工程の間に、n型シリコン層10に薄肉部10cを形成する工程が入る点を除いて、第1の実施形態と同一である。
【0061】
n型シリコン層10に薄肉部10cが形成される工程の詳細は、以下の通りである。まず、n型シリコン層10を含む全面上にフォトレジスト膜を塗布し、このフォトレジスト膜を露光及び現像する。これにより、n型シリコン層10を含む全面上にはレジストパターンが形成される。次いで、このレジストパターンをマスクとしてn型シリコン層10をエッチングする。これにより、n型シリコン層10に薄肉部10cが形成される。その後、レジストパターンを除去する。
【0062】
第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同一の効果を得ることができる。なお、薄肉部10cの形成方法は上記した例に限られるものではない。例えば、図4に示したシリコン膜12及び酸化シリコン膜13をパターニングしてn型シリコン層10を形成する際に、薄肉部10cを形成してもよい。
【0063】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構成を説明する断面図である。本図は、第1の実施形態における図1(B)に相当する断面図である。本実施形態に係る半導体装置は、n型シリコン層10のうちp型不純物層23が形成されている部分が、他の部分と同じ厚さである点を除いて、第2の実施形態に係る半導体装置と同一の構成である。以下、第2の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0064】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、薄肉部10cを形成する工程がない点、及び、p型不純物層23,24,34を形成する工程の詳細を除いて、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法と同一である。
【0065】
本実施形態において、p型不純物層23,24,34を形成する工程の詳細は、以下の通りである。まず、n型シリコン層10を含む全面上に酸化シリコン膜(図示せず)を例えばCVD法で薄く形成し、この酸化シリコン膜をパターニングする。これにより、n型シリコン層10のうちp型不純物層24,34が形成される領域は、薄い酸化シリコン膜で覆われる。次いで、n型シリコン層10に不純物を熱拡散により導入する。このとき、不純物が薄いシリコン膜を透過するように、熱拡散条件を設定する。これにより、酸化シリコン膜で覆われた領域は、p型不純物層23が形成される領域と比べて不純物層が浅くなる。これにより、p型不純物層23,24,34が形成される。その後、前記した酸化シリコン膜を除去する。
【0066】
この第3の実施形態によっても、第1の実施形態と同一の効果を得ることができる。
【0067】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の構成を説明する断面図である。本図は、第1の実施形態における図1(B)に相当する断面図である。本実施形態は、n型シリコン層10のうち、p型不純物層23,33で挟まれた部分、及びp型不純物層24,34で挟まれた部分それぞれが、酸化シリコン層14となっている点を除いて、第1の実施形態に係る半導体装置と同一の構成である。以下、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0068】
第1の実施形態において図2を用いて説明したように、p型MOSトランジスタ20,30の容量Cは、反転層による容量Coxと、空乏層による容量Ciと、n型シリコン層10内の電位分布による容量Cbとの和になる。本実施形態では、n型シリコン層10には酸化シリコン層14が形成されているため、容量Cbが第1の実施形態と比べて小さくなる。
【0069】
従って、本実施形態では、第1の実施形態と同一の効果に加えて、p型MOSトランジスタ20,30の容量Cに起因した消費電力を小さくできる、という効果を得ることができる。
【0070】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えばp型MOSトランジスタ20,30それぞれをn型MOSトランジスタにしてもよい。この場合も上記した効果を得ることができる。
【0071】
また、p型MOSトランジスタ20,30のゲート絶縁膜21,31を互いに対向する位置に配置しているが、これらの位置がずれていた場合でも、上記した効果を得ることができる。ただし、互いに対抗する位置に配置した場合が、最も大きな効果を得ることができる。
【0072】
また、上記した各実施形態では、n型シリコン層10は略直方体であるが、他の形状(円柱、円筒、錯体)であってもよい。これらの場合、p型MOSトランジスタ20と、p型MOSトランジスタ30とは、n型シリコン層10の本体を介して互いに対向する位置に配置される。
【符号の説明】
【0073】
1…シリコン基板、2…酸化シリコン膜、10… p型シリコン層、10a,10b…側面、10c…薄肉部、11,14…酸化シリコン層、12…シリコン膜、13…酸化シリコン膜、20,30…p型MOSトランジスタ、21,31…ゲート絶縁膜、22,32…ゲート電極、23,24,33,34…p型不純物層、25,26,35,36…Al合金配線、100…p型シリコン層、100a…n型ウェル、100b…n型不純物層、110…p型MOSトランジスタ、112,122…ゲート電極、113,123…ソース、120…p型MOSバラクタ、124…ドレイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁膜の一部上に、不純物が導入されていてウェルとして機能する直方体の半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の第1の側面に、第1のトランジスタのゲート絶縁膜を形成し、かつ前記第1の側面の対向面である第2の側面に、第2のトランジスタのゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のトランジスタのゲート絶縁膜上に第1のトランジスタのゲート電極を形成し、かつ前記第2のトランジスタのゲート絶縁膜上に、前記第1のトランジスタのゲート電極と対向する位置にある第2のトランジスタのゲート電極を形成する工程と、
前記半導体層の一部を加工することにより、前記半導体層に、前記第1のトランジスタのゲート電極及び前記第2のトランジスタのゲート電極に挟まれた領域に隣接し、厚さが他の部分より薄い薄肉部を形成する工程と、
前記第1のトランジスタのゲート電極及び前記第2のトランジスタのゲート電極をマスクとして前記半導体層に不純物を導入することにより、前記薄肉部の全体に不純物が分散していて第1のトランジスタのソース及び第2のトランジスタの共通ソースとして機能するソース不純物層を形成するとともに、前記第1の側面に第1のトランジスタのドレイン不純物層を形成し、かつ、前記第2の側面に、前記第1のトランジスタのドレイン不純物層と分離された前記第2のトランジスタのドレイン不純物層を形成する工程と、
を具備する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
第1の絶縁膜の一部上に、不純物が導入されていてウェルとして機能する直方体の半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の第1の側面に、第1のトランジスタのゲート絶縁膜を形成し、かつ前記第1の側面の対向面である第2の側面に、第2のトランジスタのゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のトランジスタのゲート絶縁膜上、前記第2のトランジスタのゲート絶縁膜上、前記半導体層上、及び前記上部絶縁層上に、導電膜を形成する工程と、
前記導電膜をパターニングすることにより、前記第1のトランジスタのゲート絶縁膜上に、第1のトランジスタのゲート電極を形成し、かつ前記第2のトランジスタのゲート絶縁膜上に、前記第1のトランジスタのゲート電極と対向する位置にある第2のトランジスタのゲート電極を形成する工程と、
前記第1の側面のうち前記第1のトランジスタのドレイン不純物層が形成される領域上、及び、前記第2の側面のうち前記第2のトランジスタのドレイン不純物層が形成される領域上それぞれに、被覆膜を形成する工程と、
前記第1のトランジスタのゲート電極、前記第2のトランジスタのゲート電極、及び前記上部絶縁層をマスクとして、不純物が前記被覆膜を透過する条件で前記半導体層に不純物を導入することにより、前記第1の側面から前記第2の側面まで不純物が拡散していて第1及び第2のトランジスタそれぞれのソースとして機能するソース不純物層を形成するとともに、前記第1の側面に前記第1のトランジスタのドレイン不純物層を形成し、かつ、かつ、前記第2の側面に、前記第1のトランジスタのドレイン不純物層と分離された前記第2のトランジスタのドレイン不純物層を形成する工程と、
を具備する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−151496(P2012−151496A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−69559(P2012−69559)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【分割の表示】特願2005−237253(P2005−237253)の分割
【原出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(500132214)学校法人明星学苑 (23)
【Fターム(参考)】