説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】プロービング時にもクラックが発生しにくいパッド構造を持つ半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基板の上に形成された第1の絶縁膜に凹部が形成されている。凹部内に導電部材が充填されている。第1の絶縁膜及び導電部材の上に第2の絶縁膜が形成されている。凹部の上方の、第2の絶縁膜の表面上にパッドが形成されている。平面視において、凹部の外周線よりも内側に、凹部の底面から突出し、絶縁材料で形成された複数のピラーが配置されている。ピラーの各々の平面形状は、角部に曲率半径0.2μmよりも大きな丸みを付した多角形である第1の形状、90°よりも大きな内角のみからなる多角形である第2の形状、曲率半径0.2μm以上の湾曲部のみからなる曲線で囲まれた第3の形状、及び該第1〜第3の図形の外周線の一部同士を滑らかに接続した連続線で囲まれた第4の形状のいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、パッドの信頼性を高めた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置の微細化と高速化に伴い、チップサイズや配線パターンの縮小化が進んでいる。同時に、チップの多機能化により、半導体集積回路装置に必要なパッド数が増加する傾向にある。さらに、パッドの大きさも縮小する傾向にある。電気的計測や信号入出力のために、パッドに探針を接触させるプロービング時にパッドに加わる力が変わらなくても、パッドの寸法が小さくなることにより、パッドに加わる応力が増加する。このため、パッドを構成している各材料に損傷が発生しやすくなる。
【0003】
従来、パッドには、銅(Cu)のパッド上に、バリアメタル膜を介してアルミニウム(Al)のキャップ膜を配置した積層構造が採用されていた。Alキャップ膜は、プロービング時及びボンディング時に良好な電気的接続を確保する役割に加え、その下のCuのパッドの酸化を防止する役割を持つ。ところが、プロービング時にAlキャップ膜が損傷を受けると、その下のCuのパッドが露出してしまう。埋め込みパッドの露出は、酸化、吸湿、破壊の原因になる。
【0004】
図7Aに、特許文献1に開示されたパッドの断面図を示す。層間絶縁膜100に形成された凹部内に、Cuパッド101が充填されている。その上に、絶縁膜103が配置され、この絶縁膜103に、Cuパッド101の一部を露出させるビアホール105が設けられている。
【0005】
絶縁膜103の上にAlパッド107が形成されており、Alパッド107は、ビアホール105内を経由してCuパッド101に接続されている。保護膜108が絶縁膜103を覆う。保護膜108には、Alパッド107の上面を露出させる開口が形成されている。
【0006】
図7Aに示した構造では、Cuパッド101とAlパッド107との間に絶縁膜103が配置されているため、Alパッド107が損傷を受けたとしても、下のCuパッド101の露出や損傷が防止される。
【0007】
パッドのような大きな領域に、ダマシン法を用いてCuパッド101を形成すると、Cu膜の研磨後に、Cuパッド101の中央部が周辺部よりも薄くなりやすい。この現象は、ディッシングと呼ばれる。ディッシングが生ずると、ビアホール105がCuパッド101の上面まで到達しないことによるAlパッド107とCuパッド101との導通不良が発生しやすくなる。
【0008】
図7Bに、特許文献2に開示されたパッド構造の断面図を示す。図7Cに、図7Bの一点鎖線C7−C7における平断面図を示す。層間絶縁膜110の上に、さらに層間絶縁膜111が配置されている。層間絶縁膜111に凹部が形成され、この凹部内に、Cuの埋め込みパッド113が充填されている。埋め込みパッド113の外周線よりも内側に、層間絶縁膜111と同時に堆積された膜の一部である複数のピラー112が残されている。
【0009】
層間絶縁膜111の上に、さらに層間絶縁膜115が配置されている。層間絶縁膜115に複数のビアホールが形成され、その内部にタングステン(W)等の導電プラグ117が充填されている。導電プラグ117は、その下の埋め込みパッド113に接続される。
【0010】
層間絶縁膜115の上に、Alパッド118が形成されている。Alパッド118は、導電プラグ117を介して埋め込みパッド113に電気的に接続される。層間絶縁膜115の表面を保護膜119が覆う。保護膜119に開口が形成されており、その開口内にAlパッド118の上面が露出する。
【0011】
図7B及び図7Cに示したパッド構造では、埋め込みパッド113の内部にピラー112が配置されている。このため、ディッシングの発生を抑制することができる。
【0012】
【特許文献1】特開2003−257969号公報
【特許文献2】特開2003−86589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図7B及び図7Cに示したピラー112は、通常SiOで形成され、埋め込みパッド113はCuで形成される。SiOの熱膨張係数が約0.6ppmであるのに対し、Cuの熱膨張係数は約16ppmであり、両者の差が極めて大きい。このため、基板温度が成膜時の温度から室温まで低下すると、ピラー112に大きな引張応力が加わり、歪が残留する。
【0014】
パッドの寸法が小さくなると、プロービング時に、パッド118、その下の埋め込みパッド113及びピラー112に大きな応力が加わる。歪が残留する部分に大きな応力が加わるため、クラックが発生しやすい。
【0015】
本発明の目的は、プロービング時にもクラックが発生しにくいパッド構造を持つ半導体装置、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一観点によると、
半導体基板の上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜に形成された凹部と、
前記凹部内に充填された導電部材と、
前記第1の絶縁膜及び前記導電部材の上に形成された第2の絶縁膜と、
前記凹部の上方の、前記第2の絶縁膜の表面上に形成されたパッドと、
平面視において、前記凹部の外周線よりも内側に分布し、前記凹部の底面から突出し、上端が前記導電部材の上面と同じ高さに位置する絶縁材料で形成された複数のピラーと
を有し、該ピラーの各々の平面形状は、角部に曲率半径0.2μmよりも大きな丸みを付した多角形である第1の形状、90°よりも大きな内角のみからなる多角形である第2の形状、曲率半径0.2μm以上の湾曲部のみからなる曲線で囲まれた第3の形状、及び該第1〜第3の形状の外周線の一部同士を滑らかに接続した連続線で囲まれた第4の形状のいずれかである半導体装置が提供される。
【0017】
本発明の他の観点によると、
(a)半導体基板の上に形成された第1の絶縁膜に、外周線よりも内側に、底面から突出した複数のピラーが残るように凹部を形成する工程と、
(b)前記凹部内に導電部材を充填する工程と、
(c)前記第1の絶縁膜及び前記導電部材の上に、第2の絶縁膜を形成する工程と、
(d)前記第2の絶縁膜の表面のうち、前記凹部の上方の領域にパッドを形成する工程とを有し、
前記工程aで残される前記ピラーの各々の平面形状は、角部に曲率半径0.2μmよりも大きな丸みを付した多角形である第1の形状、90°よりも大きな内角のみからなる多角形である第2の形状、曲率半径0.2μm以上の湾曲部のみからなる曲線で囲まれた第3の形状、及び該第1〜第3の図形の外周線の一部同士を滑らかに接続した連続線で囲まれた第4の形状のいずれかである半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
ピラーの平面形状を上述の形状とすることにより、ピラーに加わる応力を低減させることができる。これにより、プロービング時にクラックが発生しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1Aに、第1の実施例による半導体装置のパッド部分の断面図を示し、図1B及び図1Cに、それぞれ図1Aの一点鎖線B1−B1、及び一点鎖線C1−C1における平断面図を示す。図1B及び図1Cの一点鎖線A1−A1における平断面図が図1Aに相当する。
【0020】
シリコン等からなる半導体基板1の上に、MOSトランジスタ等の機能素子が形成され、その上に多層配線層2が形成されている。多層配線層2の最上に、層間絶縁膜10が配置されており、層間絶縁膜10に形成された配線溝内に配線11が充填されている。多層配線層2を構成する層間絶縁膜は、SiO、または低誘電率絶縁材料(いわゆるLow−k材料)、例えばポーラスシリカ、SiOC、有機絶縁材料等で形成される。多層配線層2を構成する配線及びプラグには、CuまたはCu合金が用いられる。配線溝及びビアホールの内面は、TaN等のバリアメタル膜で被覆される。
【0021】
層間絶縁膜10の上に、さらにSiO等からなる第1の絶縁膜20が形成されている。第1の絶縁膜20に、厚さ方向の途中まで達する埋め込みパッド用凹部21が形成されている。第1の絶縁膜20の厚さは1500nmであり、埋め込みパッド用凹部21の深さは900nmである。埋め込みパッド用凹部21の底面からその下の配線11の上面まで達するビアホール23が形成されている。埋め込みパッド用凹部21の外周線よりも内側に、底面から突出した複数のピラー22が残されている。ピラー22の上面は、第1の絶縁膜20の上面とほぼ同じ高さに位置する。
【0022】
埋め込みパッド用凹部21の平面形状は、図1Bに示すように、例えば一辺の長さが45μmの正方形である。ピラー22の各々の平面形状は、一辺の長さが3μmの正方形の角部に曲率半径0.2μm程度の丸みをつけた形状である。このピラー22が、ピッチ6μmで7行7列の行列状に配置されている。
【0023】
埋め込みパッド用凹部21及びビアホール23の内面が、TaN等からなる厚さ15nmのバリアメタル膜25で覆われている。埋め込みパッド用凹部21及びビアホール23内が、Cuからなる導電部材26で埋め込まれている。バリアメタル膜25及び導電部材26が、埋め込みパッド27を構成する。
【0024】
第1の絶縁膜20の上に、SiCNからなる厚さ50nmのキャップ膜30が形成されている。キャップ膜30は、導電部材26の構成元素であるCuの拡散を防止する。キャップ膜30は、SiCNに代えてSiNやSiC等で形成してもよい。また、キャップ膜30に代えて、導電部材26の上に選択成長させたCoWP等からなるメタルキャップ膜を用いてもよい。キャップ膜30の上に、SiOからなる厚さ600nmの第2の絶縁膜31が形成されている。第2の絶縁膜31及びキャップ膜30に、複数のビアホール34が形成され、これらのビアホール内に、Wからなる導電プラグ35が充填されている。導電プラグ35は、図1Cに示すように、導電部材26の外周線よりもやや内側に、その外周線に沿って配置され、導電部材26に接続されている。
【0025】
第2の絶縁膜31の一部の領域上に、TiNまたはTiからなる厚さ30nmのバリアメタル膜41が形成され、その上にAlからなる厚さ900nmのパッド42が形成されている。バリアメタル膜41及びパッド42は、埋め込みパッド用凹部21の外周線で囲まれた領域の上方に配置され、導電プラグ35を介して埋め込みパッド27に電気的に接続されている。第2の絶縁膜31の表面のうちパッド42の配置されていない領域は、SiO等からなる保護膜40で覆われている。保護膜40の上面は、パッド42の上面と同じ高さに位置する。
【0026】
保護膜40及びパッド42の上に、SiNからなる保護膜43が形成されている。保護膜43には、パッド42の表面の一部を露出させる開口が設けられている。
【0027】
図1Aでは、ビアホール23が埋め込みパッド27の外周部に配置されている例を示しているが、ビアホール23を他の領域に配置してもよい。例えば、第1の絶縁膜20に、埋め込みパッド用部21に連続する配線溝を形成し、この配線溝内に導電部材26と同一の材料を充填することにより、埋め込みパッド27に連続する配線を形成する。この配線と重なる位置にビアホールを配置してもよい。この構成の場合、埋め込みパッド27は、第1の絶縁膜20に形成された配線を経由して、下層の配線や電気回路に接続される。
【0028】
次に、図2A〜図2Jを参照して、第1の実施例による半導体装置の製造方法について説明する。
【0029】
図2Aに示すように、表面にMOSトランジスタ等が形成された半導体基板1の上に、多層配線層2を形成する。多層配線層2は、シングルダマシン法、デュアルダマシン法等により形成される。多層配線層2の最上層に、層間絶縁膜10が形成されている。層間絶縁膜10に配線溝が形成され、この配線溝内に配線11が充填されている。
【0030】
層間絶縁膜10の上に、SiOからなる厚さ1500nmの第1の絶縁膜20を、プラズマ励起型化学気相成長(PECVD)により形成する。
【0031】
図2Bに示すように、第1の絶縁膜20に、埋め込みパッド用凹部21及びビアホール23を形成する。埋め込みパッド用凹部21は、第1の絶縁膜20の深さ方向の途中まで達する。ビアホール23は、その下の配線11の上面まで達する。埋め込みパッド用凹部21及びビアホール23は、先にビアホール23を形成し、その後に埋め込みパッド用凹部21を形成するいわゆる「先ビア法」で形成してもよいし、先に埋め込みパッド用凹部21を形成し、その後ビアホール23を形成するいわゆる「後ビア法」で形成してもよい。
【0032】
図2Cに示すように、TaN等からなる厚さ15nmのバリアメタル膜25aを、スパッタリングにより形成する。バリアメタル膜25aの上に、Cuからなるシード層をスパッタリングにより形成し、さらに、CuまたはCu合金をめっきすることにより、導電膜26aを形成する。埋め込みパッド用凹部21及びビアホール23が、導電膜26aで埋め尽くされる。
【0033】
図2Dに示すように、第1の絶縁膜20の上面が露出するまで化学機械研磨(CMP)を行う。埋め込みパッド用凹部21及びビアホール23内に、バリアメタル膜25及び導電膜26が残る。残された導電膜26及びバリアメタル膜25が、埋め込みパッド27を構成する。
【0034】
図2Eに示すように、第1の絶縁膜20及び埋め込みパッド27の上に、SiCNからなる厚さ50nmのキャップ膜30を、PECVDにより形成する。SiCNに代えて、SiNやSiC等を用いてもよい。または、埋め込みパッド27の上に、CoWP等からなるメタルキャップ膜を選択成長させてもよい。キャップ膜30の上に、SiO等からなる厚さ600nmの第2の絶縁膜31を、PECVDにより形成する。
【0035】
図2Fに示すように、第2の絶縁膜31及びキャップ膜30に、埋め込みパッド27の上面まで達するビアホール34を形成する。ビアホール34の平面形状は、例えば直径0.4μmの円形である。ビアホール34を形成するためのマスクパターンは一般的に正方形であるが、その寸法が小さいため、実際に形成されるビアホール34の平面形状はほぼ円形になる。
【0036】
図2Gに示すように、ビアホール34内に、W等からなる導電プラグ35を充填する。図2Hに示すように、第2の絶縁膜31の上に、TiNやTi等からなる厚さ30nmのバリアメタル膜41aをスパッタリングにより形成する。さらにその上に、Alからなる厚さ900nmの導電膜42aをスパッタリングにより形成する。なお、導電膜42aの材料として、AlにCuを0.5重量%程度含有させたAlCu合金を用いてもよい。
【0037】
図2Iに示すように、導電膜42a及びバリアメタル膜41aをパターニングすることにより、埋め込みパッド27の上方に、バリアメタル膜41及びAlパッド42を残す。バリアメタル膜41及びAlパッド42は、導電プラグ35を介して埋め込みパッド27に電気的に接続される。図2Jに示すように、SiOからなる保護膜40を形成し、CMPを行うことによってAlパッド42の上面を露出させる。図1Aに示すように、SiNからなる保護膜43を形成する。この保護膜43に開口を形成し、この開口内にAlパッド42の上面を露出させる。
【0038】
図3A及び図3Bを参照して、ピラー22に加わる応力の大きさの計算結果について説明する。図3Aは、ピラー22の平面形状を一辺の長さが1μmの正方形とした場合、図3Bは、その正方形の角部に曲率半径0.2μmの丸みをつけた場合の応力の計算結果を示す。計算の前提として、図1Aに示したAlパッド42の厚さを1200nm、第2の絶縁膜31の厚さを600nm、埋め込みパッド用凹部21の深さを900nmとした。ピラー22は、面内に、間隔0.5μmで周期的に分布していると仮定した。さらに、パッド42の材料であるAlの弾性定数を52.5GPa、ポアッソン比を0.345、熱膨張係数を23ppmとした。第1及び第2の絶縁膜20及び31の材料であるSiOの弾性定数を70GPa、ポアッソン比を0.17、熱膨張係数を0.6ppmとした。導電部材26の材料であるCuの弾性定数を127.5GPa、ポアッソン比を0.32、熱膨張係数を16.5ppmとした。Siの弾性定数を130GPa、ポアッソン比を0.28、熱膨張係数を2.6ppmとした。これらのパターンはすべてSi基板の上に形成されているため、各パターンに加わる応力は、Siの材料定数の影響を受ける。
【0039】
温度250℃で無応力状態であると仮定し、温度が25℃まで下降したときの状態で、直径20μmの円形の領域に、5.88×10−2N(6g重)の力が加えられた場合の応力を求めた。直径20μmの円形の領域は、探針の先端の大きさに相当し、5.88×10−2Nの力は、探針により印加される力に対応する。
【0040】
図3A及び図3Bは、クラック発生の原因となるせん断応力の大きさを、色の濃さで表している。色の濃い部分が、せん断応力の大きな部分に対応する。図3Aに示したピラーの角部に加わる最大応力は、213MPaであった。応力の向きは、平面視において、正方形の頂角を広げる向きである。図3Bに示したピラーの丸みを帯びた角部に加わる最大応力は112MPaであった。このように、角部に丸みを付けることにより、印加される応力が軽減されることがわかる。
【0041】
図4に、ピラーの角部の曲率半径と、角部に印加される最大応力との関係を示す。横軸は角部の曲率半径を単位「μm」で表し、縦軸は、角部に加わる最大応力を単位「MPa」で表す。曲率半径が大きくなるに従って、応力が低下することがわかる。曲率半径0から0.2μmまでの範囲では、角部に丸みをつけることによる応力低減の効果が顕著である。曲率半径が0.2μm以上になると、応力低減の傾向が緩やかになる。応力低減の十分な効果を得るためには、角部の曲率半径を0.2μm以上にすることが好ましい。
【0042】
実際には、角部の曲率半径が0のマスクパターンを用いてピラーを形成したとしても、エッチング時に、角部に丸みが形成される。ただし、この場合には、角部の曲率半径がばらばらになり、その曲率半径も0.05〜0.1μm程度になる。角部の曲率半径を0.2μm以上にするためには、マスクパターンの角部に丸みを付けるか、角部を斜めに切り落とすか、または角部を、曲率半径0.2μm以上の円周に沿った折れ線からなる擬似曲線にする必要がある
第1の実施例による半導体装置の数百個のパッドについて、実際にプロービングによるクラックの発生状況を調査した。なお、プロービングに際し、通常用いる荷重よりも大きな荷重を印加した。第1の実施例のように、ピラー22の角部の曲率半径を0.2μmにした場合には、0.3%のパッドにおいてクラックが発生した。これに対し、角部に丸みを付けなかった参考例の試料においては、1〜5%のパッドでクラックが発生した。このように、ピラー22の角部に曲率半径0.2μm以上の丸みをつけることにより、クラックの発生を抑制できることが確認された。
【0043】
次に、図5A及び図5Bを参照して、第2の実施例による半導体装置について説明する。
【0044】
図5Aに、第2の実施例による半導体装置のパッド部分の平断面図を示す。第1の実施例では、図1Aに示したように、ピラー22の平面形状が、角部に丸みを帯びた正方形であった。第2の実施例では、ピラー22の平面形状が正八角形にされている。なお、正八角形の角部は、実際のエッチング時に発生する程度の丸み、例えば曲率半径0.05〜0.1μm程度の丸みを帯びている。
【0045】
図5Bに、ピラー22に印加される応力の計算結果を示す。計算の前提条件は、図3A及び図3Bに示した計算結果の前提条件と同一である。正八角形の角部に印加される最大応力は、約80MPaであった。この値は、図4に示した曲率半径を0.2μmとした場合よりも小さい。このように、ピラー22の平面形状を正八角形にすることにより、ピラー22に印加される応力を低減させることができる。
【0046】
ピラー22の平面形状は、正八角形に限らず、五角形以上の正多角形にしても応力低減効果が得られるであろう。また、90°以下の内角を持たない不規則な多角形としてもよいし、曲率半径0.2μmよりも小さな湾曲部を含まない円または楕円形状としてもよい。まとめると、ピラーの各々の平面形状は、角部に曲率半径0.2μmよりも大きな丸みを付した多角形である第1の形状としてもよいし、90°よりも大きな内角のみからなる多角形である第2の形状としてもよいし、曲率半径0.2μm以上の湾曲部のみからなる曲線で囲まれた第3の形状としてもよいし、該第1〜第3の図形の外周線の一部同士を滑らかに接続した連続線で囲まれた第4の形状としてもよい。ピラー22の外周線を曲線にする場合には、それに対応するマスクパターンの外周は、直線部分を組み合わせた擬似曲線とすればよい。
【0047】
図6に、第3の実施例による半導体装置のパッド部分の平断面図を示す。第1及び第2の実施例では、ピラー22が埋め込みパッド27の外周線の内側に行列状にほぼ一様に分布していた。第3の実施例では、埋め込みパッド27の外周線で囲まれた領域と、図1Aに示したAlパッド42とが重なる領域内に、ピラー22が配置されていない楕円形の領域50が画定されている。領域50の短軸及び長軸の長さは、例えばそれぞれ20μm及び25μmである。
【0048】
Alパッド42の上面のうち、ピラー22の配置されていない領域50に対応する領域に探針を接触させれば、ピラー22へ印加される応力を低減させることができる。通常、探針は、Alパッド42の中心近傍に接触する。このため、ピラーの配置されない領域50を、Alパッド42の中心を含むように配置することが好ましい。また、探針の先端とAlパッド42とが接触する領域は、通常、円形または楕円形である。従って、ピラーの配置されない領域50を、円形または楕円形とすることが好ましい。また、直径20μmの円を内包する大きさとすることが好ましい。
【0049】
第2及び第3の実施例による半導体装置のパッド数百個について、過荷重を印加してプロービング試験を行ったところ、いずれの場合もクラックは全く発生しなかった。
【0050】
第3の実施例では、プロービングにより主として応力が印加される領域にピラー22が配置されていないため、クラックの発生を防止することができる。また、領域50以外にはピラー22が配置されているため、ピラー22を全く配置しない場合に比べて、CMP時におけるディッシングの発生を抑制することができる。
【0051】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1−1】(1A)は、第1の実施例による半導体装置の断面図であり、(1B)は、(1A)の一点鎖線B1−B1における平断面図である。
【図1−2】(1C)は、(1A)の一点鎖線C1−C1における平断面図である。
【図2−1】第1の実施例による半導体装置の製造方法を説明するための製造途中段階における装置の断面図(その1)である。
【図2−2】第1の実施例による半導体装置の製造方法を説明するための製造途中段階における装置の断面図(その2)である。
【図2−3】第1の実施例による半導体装置の製造方法を説明するための製造途中段階における装置の断面図(その3)である。
【図2−4】第1の実施例による半導体装置の製造方法を説明するための製造途中段階における装置の断面図(その4)である。
【図3】(3A)は、ピラーを正方形にした半導体装置のパッドのピラーに印加される応力の大きさを示す図であり、(3B)は、ピラーの角部に丸みをつけた半導体装置のパッドのピラーに印加される応力の大きさを示す図である。
【図4】ピラーの角部の曲率半径と、ピラーに印加される最大応力との関係を示すグラフである。
【図5】(5A)は、第2の実施例による半導体装置のパッド部分の平断面図であり、(5B)は、ピラーに印加される応力の大きさを示す図である。
【図6】第3の実施例による半導体装置のパッド部分の平断面図である。
【図7】(7A)は、従来のパッド部分の断面図であり、(7B)は、従来の他の構成例によるパッド部分の断面図であり、(7C)は、(7B)の一点鎖線C7−C7における平断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 半導体基板
2 多層配線層
10 層間絶縁膜
11 下層配線
20 第1の絶縁膜
21 埋め込みパッド用凹部
22 ピラー
23 ビアホール
25 バリアメタル膜
26 導電部材
27 埋め込みパッド
30 キャップ膜
31 第2の絶縁膜
34 ビアホール
35 導電プラグ
40 保護膜
41 バリアメタル膜
42 パッド
43 保護膜
50 ピラーの分布しない領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜に形成された凹部と、
前記凹部内に充填された導電部材と、
前記第1の絶縁膜及び前記導電部材の上に形成された第2の絶縁膜と、
前記凹部の上方の、前記第2の絶縁膜の表面上に形成されたパッドと、
平面視において、前記凹部の外周線よりも内側に分布し、前記凹部の底面から突出し、上端が前記導電部材の上面と同じ高さに位置する絶縁材料で形成された複数のピラーと
を有し、該ピラーの各々の平面形状は、角部に曲率半径0.2μmよりも大きな丸みを付した多角形である第1の形状、90°よりも大きな内角のみからなる多角形である第2の形状、曲率半径0.2μm以上の湾曲部のみからなる曲線で囲まれた第3の形状、及び該第1〜第3の形状の外周線の一部同士を滑らかに接続した連続線で囲まれた第4の形状のいずれかである半導体装置。
【請求項2】
平面視において、前記凹部の外周線に囲まれた領域と前記パッドとが重なる領域内に、前記ピラーが配置されていない円形または楕円形の領域が画定されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
さらに、前記第2の絶縁膜中に、前記パッドと前記導電部材とを電気的に接続する導電プラグが配置されている請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記導電プラグは、前記導電部材の外周線よりも内側に、該外周線に沿って複数配置されている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
(a)半導体基板の上に形成された第1の絶縁膜に、外周線よりも内側に、底面から突出した複数のピラーが残るように凹部を形成する工程と、
(b)前記凹部内に導電部材を充填する工程と、
(c)前記第1の絶縁膜及び前記導電部材の上に、第2の絶縁膜を形成する工程と、
(d)前記第2の絶縁膜の表面のうち、前記凹部の上方の領域にパッドを形成する工程と
を有し、前記工程aで残される前記ピラーの各々の平面形状は、角部に曲率半径0.2μmよりも大きな丸みを付した多角形である第1の形状、90°よりも大きな内角のみからなる多角形である第2の形状、曲率半径0.2μm以上の湾曲部のみからなる曲線で囲まれた第3の形状、及び該第1〜第3の図形の外周線の一部同士を滑らかに接続した連続線で囲まれた第4の形状のいずれかである半導体装置の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−242644(P2007−242644A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55924(P2006−55924)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】