説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】半導体装置の外部接続用のパッド電極が損傷を受けることを防止する。
【解決手段】半導体基板1上に電子回路30と、電子回路30と接続された第1のパッド電極3と、第1のパッド電極3と接続された第2のパッド電極4とが形成される。また、第1のパッド電極3を被覆するとともに、第2のパッド電極4上にのみ開口部を有する第1の保護膜5が形成される。そして、半導体基板1を貫通するビアホール8を通して第1のパッド電極3の裏面に接続され、ビアホール8から半導体基板1の裏面に延在する配線層10が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、半導体基板を貫通するビアホールを有する半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新たなパッケージ技術として、CSP(Chip Size Package)が注目されている。CSPとは、半導体チップの外形寸法と略同サイズの外形寸法を有する小型パッケージをいう。CSPの一種として、BGA(Ball Grid Array)型の半導体装置が知られている。
【0003】
この種の半導体装置は、半導体基板を貫通するビアホールを通して、その表面のパッド電極と接続された配線層を有する。この半導体基板の裏面には、半田等の金属部材から成るボール状の導電端子が格子状に複数配列され、これらの導電端子は配線層を介して前記パッド電極に接続されている。そして、この半導体装置を電子機器に組み込む際には、各導電端子を回路基板、例えばプリント基板上の配線パターンに接続している。
【0004】
BGA型の半導体装置は、側部に突出したリードピンを有するSOP(Small Outline Package)やQFP(Quad Flat Package)等の他のCSP型の半導体装置に比べて、多数の導電端子を設けることができ、しかもそのサイズを小型化できるという長所を有する。
【0005】
図8及び図9はBGA型の半導体装置の構造及び製造方法を示す断面図であり、特にパッド電極の周辺を示したものである。図8に示すように、半導体基板50の表面に第1の絶縁膜51を介してパッド電極52が形成され、このパッド電極52上に開口部を有し、第1の絶縁膜51及びパッド電極52の端部を被覆する第1の保護膜53が形成されている。パッド電極52は半導体基板50上に形成された不図示の電子回路に接続されており、このパッド電極52を介して前記電子回路と外部回路との間で信号のやりとりが行われる。
【0006】
半導体のウエハープロセスを経て、半導体基板50上に電子回路が作り込まれた後、その電子回路が正常に動作するか否かがテストされる。このとき、第1の保護膜53に設けられた開口部を通して、パッド電極52の表面に測定針54が接触される。図8では1つのパッド電極52だけを示しているが、実際には半導体基板50上には多数のパッド電極52が同様に形成されている。測定針54はLSIテスター100に接続されている。そして、LSIテスター100から、測定針54、パッド電極52を通して電子回路にテスト信号を送り、電子回路からの応答信号を逆の経路でLSIテスター100が受け取ることにより、電子回路のテスト測定を行うことができる。
【0007】
上記のテスト測定が終了した半導体基板50は後工程に送られ、ビアホール、配線、ボール状の導電端子などが形成される。即ち、図9に示すように、半導体基板50の表面には接着用の樹脂膜55を介して半導体基板50を支持するためのガラス基板56が貼り付けられる。その後、半導体基板50を貫通するビアホール57が形成され、ビアホール57の側壁及び半導体基板50の裏面を被覆する第2の絶縁膜58が形成され、その上にビアホール57を通してパッド電極52の裏面に接続され、半導体基板50の裏面に延在する配線層59が形成される。そして、半導体基板50の裏面を被覆し、配線層59上に開口部を有する第2の保護膜60が形成され、その開口部を通して、配線層59に接続されたボール状の導電端子61が形成される。
【特許文献1】特開2003−309221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したBGA型の半導体装置では電子回路のテストの時に、パッド電極52に測定針54の先端部が押し当てられるために、パッド電極52が傷つけられ、この傷によって水分が浸入しやすくなりパッド電極52が腐食するという問題があった。
【0009】
さらに、パッド電極52上には第1の保護膜53の開口部Kが設けられているために、ビアホール57の形成後はパッド電極52の上下方向の固定が不安定になり、ビアホール57の形成後の熱処理の影響で、パッド電極52の中央部に撓みが生じ、ひどい場合には亀裂が入るなどの問題が生じていた。熱処理の影響の具体例を挙げると、第2の絶縁膜58をホトレジストのような有機膜で形成した場合には、これを硬化させるためにベーキング処理が行われる。このときに第2の絶縁膜58の収縮が起こり、パッド電極52に対して下方に引っ張り応力が生じる。この引っ張り応力により、パッド電極52の中央部に撓みが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された電子回路と、前記半導体基板上に形成され、前記電子回路と接続された第1のパッド電極と、前記半導体基板上に形成され前記第1のパッド電極と接続された第2のパッド電極と、前記第1のパッド電極を被覆するとともに、前記第2のパッド電極上にのみ開口部を有する保護膜と、前記半導体基板を貫通するビアホールを通して前記第1のパッド電極の裏面に接続され、前記ビアホールから前記半導体基板の裏面に延在する配線層とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、その表面に電子回路、この電子回路と接続された第1のパッド電極及びこの第1のパッド電極と接続された第2のパッド電極が形成され、前記第1のパッド電極を被覆するとともに、前記第2のパッド電極の表面にのみ開口部を有する保護膜が形成された半導体基板を準備し、前記第1のパッド電極に対応する位置に前記半導体基板を貫通するビアホールを形成する工程と、前記ビアホールを通して前記第1のパッド電極の裏面に接続され、前記ビアホールから前記半導体基板の裏面に延在する配線層を形成する工程とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1のパッド電極と接続された第2のパッド電極を設けたので、第2のパッド電極を電子回路の測定用のパッドとして用いることにより、接続用の第1のパッド電極が傷ついて腐食することを防止できる。また、第2のパッド電極を電子回路の測定用のパッドとして用いることから、第1のパッド電極には第1の保護膜の開口部を設ける必要が無くなるので、第1のパッド電極は第1の保護膜に被覆されて安定に固定される。これにより、ビアホールを形成後の熱処理の影響を無くし、第1のパッド電極の撓みの問題についても解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1はウエハープロセスが終了した段階の半導体装置の全体の平面図、図2は図1の破線で囲まれた部分の拡大図、図3は図2のX−X線に沿った断面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、シリコン等からなる半導体基板1の表面に電子回路30(半導体集積回路)と、第1のパッド電極3と、第1のパッド電極3と隣接して配置され、配線20を介して接続された第2のパッド電極4が形成されている。第1のパッド電極3は外部接続用のパッドであって、電子回路30と配線21を介して接続されている。すなわち、第1のパッド電極3を介して電子回路30と外部回路との間で信号のやりとりが行われる。第2のパッド電極4は電子回路30の測定用のパッドである。電子回路30は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)や、赤外線センサ等の受光素子、もしくは発光素子であるが、それ以外の電子回路であってもよい。
【0015】
また、図3の断面図に示すように、第1のパッド電極3及び第2のパッド電極4は半導体基板1の表面に熱酸化等で形成された第1の絶縁膜2上に形成される。また、第1のパッド電極3及び第2のパッド電極4は、例えばアルミニウム(Al)をスパッタリングして形成され、好ましくは約1μmの膜厚を有する。第1の絶縁膜2は、例えばシリコン酸化膜から成り、好ましくは約0.8μmの膜厚を有する。
【0016】
また、第1の絶縁膜2及び第1のパッド電極3を被覆し、第2のパッド電極4の端部を被覆して、第2のパッド電極4の表面を露出する開口部Kを有した第1の保護膜5がCVD法等により形成される。第1の保護膜5は例えばシリコン窒化膜からなるパッシベーション膜である。
【0017】
そして、第1の保護膜5の開口部Kを通して、第2のパッド電極4の表面に測定針54を接触させて電子回路30が正常に動作するか否かがテストされる。測定針54はLSIテスター100に接続されている。そして、LSIテスター100から、測定針54、第2のパッド電極4、第1のパッド電極3を通して電子回路30にテスト信号を送り、電子回路30からの応答信号を逆の経路でLSIテスター100が受け取ることにより、電子回路30のテスト測定を行うことができる。このとき、第2のパッド電極4に測定針54の先端部が押し当てられるために、第2のパッド電極4は傷つけられるが、第1のパッド電極3は無傷のままである。したがって、第2のパッド電極4が損傷により腐食したとしても、第1のパッド電極3は腐食せず、外部接続用端子としての機能を問題なく果たすことができる。
【0018】
このテスト測定の後、図4に示すように、半導体基板1の表面には、必要に応じて支持体7が形成されてもよい。この支持体7は、樹脂層6を介して半導体基板1の表面に形成される。ここで、電子回路30が受光素子や発光素子である場合、支持体7は、例えばガラスのような透明もしくは半透明の性状を有した材料により形成されている。電子回路30が受光素子や発光素子ではない場合、支持体7は、透明もしくは半透明の性状を有さない材料により形成されるものであってもよい。また、支持体7はテープ状のものであってもよい。この支持体7は、後の工程において除去されるものであってもよい。もしくは、支持体7は、除去されずにそのまま残されてもよい。
【0019】
次に、図5に示すように、半導体基板1を裏面から選択的にエッチング(好ましくはドライエッチング)して、半導体基板1をエッチングする。半導体基板1がシリコンから成る場合、ドライエッチングのエッチングガスとしてはCHF等を用いることができる。このエッチングにより、第1のパッド電極3に対応する位置の半導体基板1を当該裏面から当該表面に至って貫通するビアホール8が形成される。ビアホール8の底部では、第1の絶縁膜2が露出され、その下方に第1のパッド電極3が接した状態となる。そして、さらに、ドライエッチングもしくはウェットエッチングにより、ビアホール8の底部で露出する第1の絶縁膜2をエッチングして薄膜化するか、もしくは、完全に除去する。あるいは、第1の絶縁膜2のエッチング工程は、この段階では行われずに、後述する他のエッチング工程と同時に行われてもよい。
【0020】
次に、ビアホール8内を含む半導体基板1の裏面の全面に、第2の絶縁膜9を形成する。ここで、第2の絶縁膜9は、例えばホトレジストのような有機膜である。この場合、第2の絶縁膜9の形成後に、これを硬化させるためのベーキング処理が行われる。このとき、第2の絶縁膜9は収縮して、第1のパッド電極3に対して引っ張り応力を及ぼすことになるが、第1のパッド電極3の表面には第1の保護膜5が密着しているため、引っ張り応力は第1の保護膜5によって打ち消され、第1のパッド電極3が撓むことが防止される。その後、第2の絶縁膜9は露光・現像によりパターニングされ、ビアホール8の底部の第2の絶縁膜9が除去され、第1のパッド電極3の裏面が露出される。第1の半導体基板1の裏面及びビアホール8の側壁には第2の絶縁膜9が残存する。
【0021】
また、第2の絶縁膜9はシリコン酸化膜(SiO膜)もしくはシリコン窒化膜(SiN膜)から成り、例えばプラズマCVD法によって形成してもよい。この場合、第2の絶縁膜9上に不図示のレジスト層を形成し、このレジスト層をマスクとして、ビアホール8の底部の第2の絶縁膜9(第1の絶縁膜2が残存している場合はこれも含む)をエッチングして除去する。このエッチングは、例えば反応性イオンエッチングであることが好ましいが、その他のエッチングであってもよい。上記エッチングにより、ビアホール8の側壁に形成された第2の絶縁膜9を残存させつつ、当該底部の第1の絶縁膜2を除去して第1のパッド電極3の裏面を露出することができる。
【0022】
次に、図6に示すように、ビアホール8を通して第1のパッド電極3の裏面に接続され、ビアホール8から半導体基板1の裏面に延在する配線層10を形成する。配線層10はアルミニウム等の金属のスパッタ法とその後の選択的エッチングによって形成することができる。また、配線層10は電解メッキ法によっても形成することができる。この場合、ビアホール8を含む半導体基板1の裏面の第2の絶縁膜9上に、シード層を形成し、このシード層上に、電解メッキ法により、銅(Cu)から成る配線層10を形成する。メッキ膜厚は、配線層10がビアホール8内に完全もしくは不完全に埋め込まれるような厚さに調整される。上記シード層は、例えば、例えばチタンタングステン(TiW)層、チタンナイトライド(TiN)層、もしくはタンタルナイトライド(TaN)層等の金属層と、銅(Cu)等の金属層を積層して成る。シード層は、例えば、スパッタ法、CVD法、無電解メッキ法、もしくはその他の成膜方法によって形成される。なお、ビアホール8の側壁の第2の絶縁膜9がシリコン窒化膜(SiN膜)により形成されている場合には、当該シリコン窒化膜(SiN膜)が銅拡散に対するバリアとなるため、シード層は、銅(Cu)から成る単層構造を有していてもよい。
【0023】
次に、図7に示すように、半導体基板1の裏面上に、例えばソルダーレジストのようなレジスト材料等から成る第2の保護膜11を形成する。第2の保護層11のうち配線層10の一部上に開口部が設けられる。そして、この開口部から露出する配線層10上に、例えばハンダ等の金属から成るボール状の導電端子12がスクリーン印刷法を用いて形成され、BGA型の半導体装置が構成される。
【0024】
なお、本発明の半導体装置がLGA(Land Grid Array)型である場合、第2の保護層11から局所的に露出する配線層10の一部上に導電端子12を形成する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の全体の平面図である。
【図2】図1の破線で囲まれた部分の拡大図である。
【図3】図2のX−X線に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】従来例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】従来例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 半導体基板 2 第1の絶縁膜 3 第1のパッド電極
4 第2のパッド電極 5 第1の保護膜 6 樹脂層 7 支持体
8 ビアホール 9 第2の絶縁膜 10 配線層 11 第2の保護膜
12 導電端子 20,21 配線 30 電子回路
50 半導体基板 51 第1の絶縁膜 52 パッド電極
53 第1の保護膜 54 測定針 55 樹脂膜 56 ガラス基板
57 ビアホール 58 第2の絶縁膜 59 配線層 60 第2の保護膜
61 導電端子 100 LSIテスター K 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板上に形成された電子回路と、前記半導体基板上に形成され、前記電子回路と接続された第1のパッド電極と、
前記半導体基板上に形成され、前記第1のパッド電極と接続された第2のパッド電極と、
前記第1のパッド電極を被覆するとともに、前記第2のパッド電極上にのみ開口部を有する保護膜と、
前記半導体基板を貫通するビアホールを通して前記第1のパッド電極の裏面に接続され、前記ビアホールから前記半導体基板の裏面に延在する配線層とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板上に支持体が貼り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記支持体と前記半導体基板の間に接着層が介在していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記配線層上に導電端子が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
その表面に電子回路、この電子回路と接続された第1のパッド電極及びこの第1のパッド電極と接続された第2のパッド電極が形成され、前記第1のパッド電極を被覆するとともに、前記第2のパッド電極の表面にのみ開口部を有する保護膜が形成された半導体基板を準備し、
前記第1のパッド電極に対応する位置に前記半導体基板を貫通するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールを通して前記第1のパッド電極の裏面に接続され、前記ビアホールから前記半導体基板の裏面に延在する配線層を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記開口部を通して前記第2のパッド電極に測定針を接触させて前記電子回路の測定を行う工程を備えることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板上に支持体を貼り付ける工程を備えることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記配線層上に導電端子を形成する工程を備えることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−96030(P2007−96030A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284022(P2005−284022)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】