説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】プロセスばらつきの影響が小さい半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上層部分に設けられた第1導電形領域と、前記第1導電形領域の上層部分に相互に離隔して配置された第2導電形のソース領域及びドレイン領域と、前記半導体基板上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を備える。そして、前記第1導電形領域のうち前記ゲート電極の直下域に相当するチャネル領域における実効的な不純物濃度は、前記ゲート絶縁膜との界面において最も高く、下方に向かうにつれて減少している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、電界効果型トランジスタを備えた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置に形成されるMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)として、横方向拡散型MOS(LDMOS:Lateral Diffusion Metal-Oxide-Semiconductor)が知られている。LDMOSは素子長の調整等の容易な手法で様々な用途において要求される耐圧水準を満足することができる。近年、LDMOSに対しても、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)同様の微細プロセス及び微細設計ルールを適用することが増えてきた。LDMOSにCMOSと同程度又はそれ以下の微細プロセス及び微細設計ルールを適用することにより、LDMOSのオン抵抗の低減、動作の高速化、さらには微細なCMOSとの混載等が可能になる。しかしながら、LDMOSはCMOSと比較して構造が複雑なため、LDMOSを微細化すると、特性ばらつきに及ぼすプロセスばらつき要因の影響が大きくなってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−53257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の目的は、プロセスばらつきの影響が小さい半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上層部分に設けられた第1導電形領域と、前記第1導電形領域の上層部分に相互に離隔して配置された第2導電形のソース領域及びドレイン領域と、前記半導体基板上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を備える。そして、前記第1導電形領域のうち前記ゲート電極の直下域に相当するチャネル領域における実効的な不純物濃度は、前記ゲート絶縁膜との界面において最も高く、下方に向かうにつれて減少している。
【0006】
本発明の他の一態様に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板の上層部分に第1導電形領域を形成する工程と、前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜を介して、前記第1導電形領域における前記ゲート電極の直下域に対して不純物を注入してチャネルインプラ領域を形成する工程と、前記第1導電形領域の上層部分における前記ゲート電極の直下域に相当する領域を挟む位置に第2導電形のソース領域及びドレイン領域を形成する工程と、を備える。そして、前記不純物の注入は、前記不純物の濃度の上下方向に沿ったプロファイルが前記ゲート絶縁膜中にピークを持つように実施する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
【図2】横軸に素子深さ方向における位置をとり、縦軸に不純物濃度をとって、第1の実施形態におけるチャネル領域の不純物濃度プロファイルを例示するグラフ図である。
【図3】(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図4】(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図5】(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図6】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図7】横軸に反転層形成領域の不純物濃度をとり、縦軸にLDMOSのしきい値をとって、ゲート絶縁膜の膜厚のばらつきがLDMOSのしきい値に及ぼす影響を例示するグラフ図である。
【図8】横軸に素子深さ方向における位置をとり、縦軸に不純物濃度をとって、比較例におけるチャネル領域の不純物濃度プロファイルを例示するグラフ図である。
【図9】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図10】第3の実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置を例示する断面図であり、
図2は、横軸に素子深さ方向における位置をとり、縦軸に不純物濃度をとって、本実施形態におけるチャネル領域の不純物濃度プロファイルを例示するグラフ図である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1においては、例えばシリコンからなる半導体基板10が設けられている。半導体基板10の上層部分の一部には、導電形がp形のp形ウェル11が形成されており、p形ウェル11の上層部分の一部には、p形のチャネルインプラ領域12が形成されている。チャネルインプラ領域12の実効的な不純物濃度は、p形ウェル11の実効的な不純物濃度よりも高い。なお、本明細書において「実効的な不純物濃度」とは、半導体材料の導電に寄与する不純物の濃度をいい、例えば、半導体材料にドナーとなる不純物とアクセプタとなる不純物の双方が含有されている場合には、活性化した不純物のうち、ドナーとアクセプタの相殺分を除いた分の濃度をいう。
【0010】
チャネルインプラ領域12の上層部分の一部には、n形のソース領域15が形成されている。また、p形ウェル11の上層部分であってチャネルインプラ領域12の外部には、n形のドレイン領域16が形成されている。すなわち、ソース領域15及びドレイン領域16は、半導体基板10の上層部分に相互に離隔して形成されている。
【0011】
また、チャネルインプラ領域12の上層部分の一部には、n形のLDD(Lightly Doped Drain)領域17が形成されている。LDD領域17は、ソース領域15とドレイン領域16の間に配置され、ソース領域15に接している。LDD領域17の実効的な不純物濃度はソース領域15の実効的な不純物濃度よりも低い。一方、p形ウェル11の上層部分であってチャネルインプラ領域12の外部には、n形のドリフト領域18が形成されている。ドリフト領域18は、ドレイン領域16とソース領域15との間に配置され、ドレイン領域16に接している。LDD領域17とドリフト領域18とは相互に離隔しており、両領域間にはp形ウェル11の一部及びチャネルインプラ領域12の一部が配置されている。更に、チャネルインプラ領域12の上層部分であって、ソース領域15から見てドレイン領域16の反対側には、p形のバックゲート領域19が形成されている。バックゲート領域19はソース領域15に接している。バックゲート領域19の実効的な不純物濃度は、チャネルインプラ領域12の実効的な不純物濃度よりも高い。そして、p形ウェル11及びp形のチャネルインプラ領域12のうち、ソース領域15、ドレイン領域16、LDD領域17、ドリフト領域18及びバックゲート領域19を除いた部分により、p形領域13(第1導電形領域)が構成されている。
【0012】
半導体基板10上には、例えばシリコン酸化物からなるゲート絶縁膜21が設けられている。ゲート絶縁膜21は、LDD領域17、ドリフト領域18及びLDD領域17とドリフト領域18との間の領域の直上域に設けられている。ゲート絶縁膜21上には、例えば不純物が導入されたポリシリコンからなるゲート電極22が設けられている。ゲート電極22は、LDD領域17とドリフト領域18との間の領域の直上域に配置されている。ゲート電極22の側面上には、例えばシリコン窒化物からなる側壁23が設けられている。LDD領域17及びドリフト領域18は、それぞれ側壁23の直下域に配置されている。従って、ゲート電極22の直下域には、p形ウェル11におけるLDD領域17とドリフト領域18との間の領域が配置されている。以下、p形領域13におけるゲート電極22の直下域に相当する領域を、チャネル領域14という。そして、チャネル領域14におけるソース領域15側の部分には、チャネルインプラ領域12が配置されている。チャネルインプラ領域12における実効的な不純物濃度は、p形ウェル11における実効的な不純物濃度よりも高いため、チャネル領域14においては、ソース領域15側の部分の実効的な不純物濃度は、ドレイン領域16側の部分の実効的な不純物濃度よりも高い。
【0013】
また、ソース領域15及びバックゲート領域19の直上域の一部にはゲート絶縁膜21が設けられておらず、金属からなるソース電極25が設けられている。ソース電極25は、ソース領域15及びバックゲート領域19に接触し、これらにオーミック接続されている。更に、ドレイン領域16の直上域の一部にはゲート絶縁膜21が設けられておらず、金属からなるドレイン電極26が設けられている。ドレイン電極26はドレイン領域16に接触し、オーミック接続されている。
【0014】
チャネル領域14、ソース領域15、ドレイン領域16、LDD領域17、ドリフト領域18、バックゲート領域19、ゲート絶縁膜21、ゲート電極22、側壁23、ソース電極25及びドレイン電極26により、n形のLDMOS29が構成されている。LDMOS29がオン状態となるときには、チャネル領域14の最上層部分にn形の反転層が形成される。以後、この反転層が形成される領域を、反転層形成領域28という。
【0015】
そして、本実施形態においては、図2に示すように、チャネルインプラ領域12及びその直上に設けられたゲート絶縁膜21において、上下方向(素子深さ方向)に沿った実効的な不純物濃度のプロファイルは1つのピーク(極大値)を持ち、そのピークはゲート絶縁膜21中に位置している。このため、チャネルインプラ領域12における実効的な不純物濃度は、ゲート絶縁膜21との界面において最も高く、下方に向かうにつれて単調減少している。チャネルインプラ領域12の実効的な不純物濃度はp形ウェル11の実効的な不純物濃度よりも高いため、チャネル領域14における実効的な不純物濃度について水平面内の平均値をとると、この平均値はゲート絶縁膜21との界面において最も高く、下方に向かうにつれて単調減少する。また、ゲート絶縁膜21のうちチャネル領域14の直上域に相当する部分及びチャネル領域14において、実効的な不純物濃度の水平面内の平均値を求め、この平均値の上下方向に沿ったプロファイルを作成すると、このプロファイルのピークはゲート絶縁膜21中に位置する。
【0016】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図3(a)及び(b)、図4(a)及び(b)、図5(a)及び(b)、並びに図6は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
先ず、図3(a)に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板10を用意する。次に、半導体基板10に対してアクセプタとなる不純物を局所的に注入することにより、半導体基板10の上層部分の一部にp形ウェル11を形成する。
【0017】
次に、図3(b)に示すように、半導体基板10上に、例えばシリコン酸化物からなるゲート絶縁膜21を形成する。このとき、ゲート絶縁膜21の膜厚は、酸化時間等のプロセス要因により、一定の範囲内で不可避的にばらついてしまう。次に、ゲート絶縁膜21上にポリシリコンを堆積させて、導電膜を形成する。次に、この導電膜を加工して、ゲート絶縁膜21上の一部にゲート電極22を形成する。
【0018】
次に、図4(a)に示すように、ゲート絶縁膜21上にレジストパターン31を形成する。レジストパターン31は、ゲート電極22を中心としたLDMOS29の片側、すなわち、ドレイン領域16(図1参照)等が形成される予定の領域側(以下、「ドレイン側領域」という)を覆い、LDMOS29の反対側、すなわち、ソース領域15(図1参照)等が形成される予定の領域側(以下、「ソース側領域」という)を露出させるように形成する。また、レジストパターン31は、ゲート電極22におけるドレイン領域16側の部分を覆い、ソース領域15側の部分を露出させる。
【0019】
次に、ゲート電極22及びレジストパターン31をマスクとして、アクセプタとなる不純物をイオン注入する。このイオン注入は、半導体基板10の上面に垂直な方向(以下、「直上方向」という)に対して、ソース領域15(図1参照)側に傾斜した方向から行う。すなわち、ソース側上方からドレイン側下方に向けて、斜め方向に不純物を注入する。これにより、不純物がゲート絶縁膜21を介して半導体基板10内に注入され、p形ウェル11の上層部分の一部にチャネルインプラ領域12が形成される。このとき、斜め方向に不純物を注入するため、チャネルインプラ領域12はゲート電極22の直下域の一部にも形成される。また、このとき、不純物の注入エネルギーを低めに設定して、上下方向における不純物の濃度プロファイルがゲート絶縁膜21中にピークを持つように調整する。これにより、チャネルインプラ領域12における不純物濃度は、その上面、すなわち、ゲート絶縁膜21との界面において最も高く、下方にいくほど低くなる。p形ウェル11及びチャネルインプラ領域12により、p形領域13が形成される。また、p形領域13におけるゲート電極22の直下域に相当する部分が、チャネル領域14となる。その後、レジストパターン31を除去する。
【0020】
次に、図4(b)に示すように、ゲート絶縁膜21上にレジストパターン32を形成する。レジストパターン32は、ゲート電極22のソース領域15側の部分、及びゲート電極22から見てソース領域15側に隣接した領域を開口するように形成する。次に、ゲート電極22及びレジストパターン32をマスクとして、ドナーとなる不純物をイオン注入する。このイオン注入は、ほぼ直上方向から行う。これにより、チャネルインプラ領域12の上層部分の一部であって、ゲート電極22の直下域に隣接した領域に、導電形がn形のLDD領域17が自己整合的に形成される。その後、レジストパターン32を除去する。
【0021】
次に、図5(a)に示すように、ゲート絶縁膜21上にレジストパターン33を形成する。レジストパターン33は、LDMOS29のソース側領域を覆い、ドレイン側領域を露出させるように形成する。また、レジストパターン33は、ゲート電極22におけるソース領域15側の部分を覆い、ドレイン領域16側の部分を露出させる。次に、ゲート電極22及びレジストパターン33をマスクとして、ドナーとなる不純物をほぼ直上方向から注入する。これにより、チャネル領域14から見てドレイン領域16(図1参照)側の領域であって、ゲート電極22の直下域に隣接した領域に、導電形がn形のドリフト領域18が自己整合的に形成される。その後、レジストパターン33を除去する。
【0022】
次に、図5(b)に示すように、ゲート絶縁膜21上の全面に例えばシリコン窒化物等の絶縁材料を堆積させて、その後、エッチバックすることにより、この絶縁材料をゲート電極22の側面上にのみ残留させる。これにより、ゲート電極22の両側面上に側壁23を形成する。次に、ゲート絶縁膜21上にレジストパターン34を形成する。レジストパターン34は、LDMOS29におけるバックゲート領域19(図1参照)が形成される予定の領域を覆い、ソース領域15及びドレイン領域16が形成される予定の領域、並びにゲート電極22及び側壁23を露出させるように形成する。
【0023】
次に、ゲート電極22、側壁23及びレジストパターン34をマスクとして、ドナーとなる不純物をほぼ直上方向からイオン注入する。これにより、LDD領域17における側壁23の直下域から外れた部分、すなわち、LDD領域17のうちゲート電極22から遠い側の部分に、ドナーとなる不純物が重ねて注入されて、導電形がn形のソース領域15が形成される。一方、LDD領域17における側壁23の直下域に相当する領域には不純物が注入されず、LDD領域17として残留する。また、ドリフト領域18における側壁23の直下域から外れた部分、すなわち、ドリフト領域18におけるゲート電極22から遠い側の部分に、ドナーとなる不純物が重ねて注入されて、導電形がn形のドレイン領域16が形成される。一方、ドリフト領域18における側壁23の直下域に相当する領域には不純物が注入されず、ドリフト領域18として残留する。このようにして、側壁23に対して自己整合的に、ソース領域15、ドレイン領域16、LDD領域17及びドリフト領域18が形成される。その後、レジストパターン34を除去する。
【0024】
次に、図6に示すように、バックゲート領域19が形成される予定の領域を露出させ、それ以外の領域を覆うレジストパターン35を形成する。そして、レジストパターン35をマスクとしてアクセプタとなる不純物を直上方向からイオン注入する。これにより、チャネルインプラ領域12の上層部分の一部であって、ソース領域15に接する領域に、バックゲート領域19が形成される。その後、レジストパターン35を除去する。
【0025】
次に、図1に示すように、ゲート絶縁膜21のうち、ソース領域15及びバックゲート領域19の直上域に相当する部分の一部、及び、ドレイン領域16の直上域に相当する部分の一部を除去する。次に、ゲート絶縁膜21を除去した領域に金属膜を堆積させて、ソース領域15及びバックゲート領域19の直上域の一部にソース電極25を形成すると共に、ドレイン領域16の直上域の一部にドレイン電極26を形成する。このようにして、半導体装置1が製造される。
【0026】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
図7は、横軸に反転層形成領域の不純物濃度をとり、縦軸にLDMOSのしきい値をとって、ゲート絶縁膜の膜厚のばらつきがLDMOSのしきい値に及ぼす影響を例示するグラフ図である。
なお、上述の如く、反転層形成領域28(図1参照)とは、チャネル領域14の最上層部分である。
【0027】
図7のC−C’線に示すように、反転層形成領域28における実効的な不純物濃度が同じでも、ゲート絶縁膜21の膜厚がばらつくと、LDMOS29のしきい値(Vth)がばらついてしまう。具体的には、ゲート絶縁膜21の膜厚が厚くなると、LDMOS29のしきい値は高くなる。一方、ゲート絶縁膜21の膜厚が同じであっても、反転層形成領域28の不純物濃度がばらつくと、LDMOS29のしきい値はばらつく。具体的には、反転層形成領域28の不純物濃度が高くなると、しきい値も高くなる。そして、反転層形成領域28を含むチャネルインプラ領域12は、図4(a)に示すように、ゲート絶縁膜21を介して不純物を注入することにより形成されているため、反転層形成領域28の不純物濃度はゲート絶縁膜21の膜厚に依存する。
【0028】
そこで、本実施形態においては、ゲート絶縁膜の膜厚及び反転層形成領域の不純物濃度が共にLDMOSのしきい値の影響を及ぼし、また、ゲート絶縁膜の膜厚が反転層形成領域の不純物濃度に影響を及ぼすことを積極的に利用して、ゲート絶縁膜の膜厚が変動しても、LDMOSのしきい値の変動を抑制できるように工夫した。
【0029】
すなわち、図4(a)に示す工程において、アクセプタとなる不純物をゲート絶縁膜21を介してp形ウェル11の上層部分に注入する際に、図2に示すように、イオン注入の加速電圧を調節して、上下方向(素子深さ方向)の不純物濃度プロファイルのピークが、ゲート絶縁膜21中に位置するようにする。これにより、不純物をイオン注入する際の加速電圧が一定であれば、ピークの位置は、ゲート絶縁膜21の上面から一定の距離dだけ離隔しているため、半導体基板10とゲート絶縁膜21との界面を基準として、ゲート絶縁膜21が厚い場合の不純物濃度プロファイルのピークP1の位置は、ゲート絶縁膜21が薄い場合の不純物濃度プロファイルのピークP2の位置よりも上方となる。この場合、反転層形成領域28から見て、ピークP1はピークP2よりも遠くに位置するため、反転層形成領域28における不純物濃度は、ゲート絶縁膜21が厚い場合の方が、ゲート絶縁膜21が薄い場合よりも低くなる。この結果、図7のA−A’線に示すように、ゲート絶縁膜21が厚くなることによりしきい値が高くなる効果と、ゲート絶縁膜21が厚くなることにより反転層形成領域の不純物濃度が減少し、不純物濃度が減少することによりしきい値が低くなる効果とが相殺されて、LDMOS29のしきい値の変動量(ΔVth)が小さく抑えられる。
【0030】
以下、この効果を、比較例と比較して説明する。
図8は、横軸に素子深さ方向における位置をとり、縦軸に不純物濃度をとって、比較例におけるチャネル領域の不純物濃度プロファイルを例示するグラフ図である。
【0031】
図8に示すように、本比較例においては、チャネルインプラ領域12及びその直上域に配置されたゲート絶縁膜21における上下方向の不純物濃度プロファイルのピークがチャネルインプラ領域12内に位置している。この場合にも、ピークの位置はゲート絶縁膜21の上面からほぼ一定の距離dだけ離隔しているため、半導体基板10とゲート絶縁膜21との界面を基準として、ゲート絶縁膜21が厚い場合の不純物濃度プロファイルのピークP1の位置は、ゲート絶縁膜21が薄い場合の不純物濃度プロファイルのピークP2の位置よりも上方となる。但し、ピークP1及びP2は半導体基板10側に位置しているため、ピークP1の方が反転層形成領域28に近くなる。このため、反転層形成領域28における不純物濃度は、ゲート絶縁膜21が厚い場合の方が、ゲート絶縁膜21が薄い場合よりも高くなる。この結果、図7のB−B’線に示すように、ゲート絶縁膜21が厚くなることによりしきい値が高くなる効果と、ゲート絶縁膜21が厚くなることにより反転層形成領域28の不純物濃度が増加し、これによりしきい値が高くなる効果とが重畳されて、しきい値の変動量(ΔVth)が大きくなってしまう。
【0032】
これに対して、本実施形態においては、不純物濃度プロファイルのピークがゲート絶縁膜内に位置しているため、ゲート絶縁膜が厚いほど、反転層形成領域とピークとの距離が大きくなり、反転層形成領域における不純物濃度が低くなる。上述の如く、ゲート絶縁膜の膜厚の増加と反転層形成領域の不純物濃度の減少は、しきい値に対しては逆方向に作用するため、本実施形態によれば、ゲート絶縁膜の膜厚が変動しても、LDMOSのしきい値の変動を抑えることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る半導体装置1においては、ドレイン領域16から見てソース領域15側に、ドレイン領域16に接するように、実効的な不純物濃度がドレイン領域16よりも低いドリフト領域18が設けられている。これにより、ソース領域15とドレイン領域16との間に逆バイアス電圧が印加された場合に、ドリフト領域18が空乏化されて電界が緩和される。この結果、LDMOS29の耐圧を高めることができる。また、ドリフト領域18の実効的な不純物濃度及び横方向の長さを調整することにより、LDMOS29に要求される所望の耐圧を実現することができる。なお、LDMOS29に要求される耐圧によっては、ドリフト領域18の実効的な不純物濃度及び横方向の長さは、半導体装置1にLDMOS29と共に混載するCMOSのLDD領域の実効的な不純物濃度及び横方向の長さと同一であってもよい。更に、ドリフト領域18の不純物濃度を低く設定することにより、LDMOS29のホットキャリア耐量を向上させることができる。
【0034】
次に、第2の実施形態について説明する。
図9は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
図9に示すように、本実施形態においては、ゲート絶縁膜21を形成し、ゲート電極22を形成した後、ウェットエッチング等によってゲート絶縁膜21を一様に減厚する。これにより、ゲート電極22の直下域以外の領域では、ゲート絶縁膜21はより薄い残膜21aとなる。次に、レジストパターン31を形成する。そして、レジストパターン31及びゲート電極22をマスクとし、チャネルインプラ領域12を形成するための不純物をイオン注入する。この不純物は、残膜21aを介してp形ウェル11内に注入される。
【0035】
この場合、成膜当初のゲート絶縁膜21の膜厚をaとし、ウェットエッチングによって除去された減厚量をbとし、残膜21aの膜厚をcとすると、等式c=a−bが成立する。そして、ウェットエッチングによる減厚量bはほぼ一定に制御できるため、成膜当初のゲート絶縁膜21の膜厚aと残膜21aの膜厚cとの間には正の相関関係がある。すなわち、膜厚aが厚くなれば、膜厚cも厚くなる。このため、前述の第1の実施形態と同様な作用により、ゲート絶縁膜21の膜厚が変動しても、LDMOS29のしきい値の変動を抑制することができる。本実施形態における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0036】
次に、第3の実施形態について説明する。
図10は、本実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
図10に示すように、本実施形態に係る半導体装置3においては、半導体基板10の上層部分にn形のディープnウェル(DNW)41が形成されており、DNW41上に、n形ウェル42及び上述のp形ウェル11が相互に接触して形成されている。また、n形ウェル42とp形ウェル11との境界領域の上部には、例えばシリコン酸化物からなるSTI(shallow trench isolation)43が形成されている。そして、p形ウェル11には、上述のLDMOS29が形成されている。本実施形態における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0037】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【0038】
例えば、前述の各実施形態においては、半導体基板がシリコンからなる例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の半導体材料を用いてもよい。また、単元素の半導体材料には限定されず、化合物半導体を用いてもよい。また、前述の各実施形態においては、チャネル領域の導電形がp形でソース領域及びドレイン領域の導電形がn形である例を示したが、これらの導電形は逆でもよい。更に、前述の各実施形態においては、LDMOSが形成されている例を示したが、本発明はこれに限定されず、ドリフト領域を持たない通常のMOSFETが形成されていてもよい。
【0039】
以上説明した実施形態によれば、プロセスばらつきの影響が小さい半導体装置及びその製造方法を実現することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、3:半導体装置、10:半導体基板、11:p形ウェル、12:チャネルインプラ領域、13:p形領域、14:チャネル領域、15:ソース領域、16:ドレイン領域、17:LDD領域、18:ドリフト領域、19:バックゲート領域、21:ゲート絶縁膜、21a:残膜、22:ゲート電極、23:側壁、25:ソース電極、26:ドレイン電極、28:反転層形成領域、29:LDMOS、31、32、33、34、35:レジストパターン、41:ディープnウェル、42:n形ウェル、43:STI、a、b、c:膜厚、d:距離、P1、P2:ピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上層部分に設けられた第1導電形領域と、
前記第1導電形領域の上層部分に相互に離隔して配置された第2導電形のソース領域及びドレイン領域と、
前記半導体基板上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
を備え、
前記第1導電形領域のうち前記ゲート電極の直下域に相当するチャネル領域における実効的な不純物濃度は、前記ゲート絶縁膜との界面において最も高く、下方に向かうにつれて減少していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜のうち前記チャネル領域の直上域に相当する部分及び前記チャネル領域における前記実効的な不純物濃度の上下方向に沿ったプロファイルは、前記ゲート絶縁膜中にピークを持つことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1導電形領域の上層部分であって前記チャネル領域と前記ドレイン領域との間に設けられ、前記ドレイン領域に接し、実効的な不純物濃度が前記ドレイン領域の実効的な不純物濃度よりも低いドリフト領域をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板の上層部分に第1導電形領域を形成する工程と、
前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜を介して、前記第1導電形領域における前記ゲート電極の直下域に対して不純物を注入してチャネルインプラ領域を形成する工程と、
前記第1導電形領域の上層部分における前記ゲート電極の直下域に相当する領域を挟む位置に第2導電形のソース領域及びドレイン領域を形成する工程と、
を備え、
前記不純物の注入は、前記不純物の濃度の上下方向に沿ったプロファイルが前記ゲート絶縁膜中にピークを持つように実施することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記不純物の注入は、前記ゲート電極をマスクとして、前記半導体基板の上面に垂直な方向に対して傾斜した方向から行うことを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記不純物の注入は、前記半導体基板の上面に垂直な方向に対して前記ソース領域が形成される予定の領域側に傾斜した方向から行うことを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−4471(P2012−4471A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140237(P2010−140237)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】