説明

半導体装置及び電源回路

【課題】基板へのキャリア注入を抑制する半導体装置及び電源回路を提供する。
【解決手段】本発明の半導体装置は、第2導電型の第1の半導体領域23、第2導電型の第2の半導体領域24及び第1導電型の第3の半導体領域25に対して離間して第1導電型の半導体層22の表面に設けられた第2導電型の第4の半導体領域26と、第1の半導体領域23、第2の半導体領域24及び第3の半導体領域25に対して離間して半導体層22の表面に設けられた第1導電型の第5の半導体領域27と、第4の半導体領域26と第5の半導体領域27とを接続するフローティング電極35と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
降圧型のDC−DCコンバータは、入力電圧ラインと基準電位との間に直列接続されたハイサイドスイッチング素子とローサイドスイッチング素子とを有する。ハイサイドスイッチング素子とローサイドスイッチング素子との接続ノードには誘導性負荷が接続され、その誘導性負荷は出力ラインに接続されている。ハイサイドスイッチング素子とローサイドスイッチング素子とを交互にオンオフさせることで、入力電圧を降圧した電圧を出力ラインに出力する。このとき、ハイサイドスイッチング素子とローサイドスイッチング素子が同時にオンすることがないように、ハイサイドスイッチング素子のオン期間とローサイドスイッチング素子のオン期間との間にハイサイドスイッチング素子とローサイドスイッチング素子が両方ともオフとなる期間(デットタイム)を設ける。
【0003】
ハイサイドスイッチング素子がオンからオフになったとき、誘導性負荷に回生電流が流れる。このとき、ローサイドスイッチング素子のドレイン電位は接地電位より低くなる。デットタイム期間中、ローサイドスイッチング素子のドレイン−ソース間に存在するボディダイオードが順方向にバイアスされる。ボディダイオードが順方向にバイアスされると、カソードから基板に電子が注入される。基板に注入された電子は、基板上に形成された他の回路を誤動作させるなどの不具合の原因となり得る。
また、基板に注入された電子は、入力電圧に接続された拡散層や、接地電位より高電位のノードに流れ込み、その流れた電流は損失になる。従って、ハイサイドスイッチング素子のスイッチング周波数が高くなるほど、単位時間あたりのデットタイムの回数が増加し、変換効率の低下を招く。
【0004】
また、基板に電子を注入させないために、基板中にN型埋め込み層を設けた構造が知られている(例えば特許文献1)。しかし、高不純物濃度のN型埋め込み層を形成するためにエピタキシャル成長が必要となり、一般的な埋め込み層を有していないMOSトランジスタ形成プロセスに比べてコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−289215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板へのキャリア注入を抑制する半導体装置及び電源回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基板と、前記基板の表層部に設けられた第1導電型の半導体層と、前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域及び誘導性負荷に接続される第1の主電極と、前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第2の半導体領域と、前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第1導電型の第3の半導体領域と、前記第2の半導体領域、前記第3の半導体領域及び基準電位に接続される第2の主電極と、前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体層の表面上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を備え、前記半導体層、前記第1の半導体領域及び前記第3の半導体領域を含むボディダイオードが順方向にバイアスされた状態で、前記第1の半導体領域から前記半導体層に注入された電子と、前記第3の半導体領域から前記半導体層に注入された正孔とを再結合させることを特徴とする半導体装置が提供される。
また、本発明の他の一態様によれば、基板と、前記基板の表層部に設けられた第1導電型の半導体層と、前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域及び誘導性負荷に接続される第1の主電極と、前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第2の半導体領域と、前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第1導電型の第3の半導体領域と、前記第2の半導体領域、前記第3の半導体領域及び基準電位に接続される第2の主電極と、前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体層の表面上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、前記第1の半導体領域、前記第2の半導体領域及び前記第3の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第4の半導体領域と、前記第1の半導体領域、前記第2の半導体領域及び前記第3の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第1導電型の第5の半導体領域と、前記第4の半導体領域と前記第5の半導体領域とを接続するフローティング電極と、を備えたことを特徴とする半導体装置が提供される。
また、本発明のさらに他の一態様によれば、入力電圧ラインに接続されるハイサイドスイッチング素子と、前記ハイサイドスイッチング素子と基準電位との間に接続されるローサイドスイッチング素子と、前記ハイサイドスイッチング素子と前記ローサイドスイッチング素子との接続ノードと、出力ラインとの間に接続される誘導性負荷と、前記出力ラインと前記基準電位との間に接続されるコンデンサと、を備え、前記ローサイドスイッチング素子は、基板と、前記基板の表層部に設けられた第1導電型の半導体層と、前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域及び誘導性負荷に接続される第1の主電極と、前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第2の半導体領域と、前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第1導電型の第3の半導体領域と、前記第2の半導体領域、前記第3の半導体領域及び基準電位に接続される第2の主電極と、前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体層の表面上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を有してなり、前記半導体層、前記第1の半導体領域及び前記第3の半導体領域を含むボディダイオードが順方向にバイアスされた状態で、前記第1の半導体領域から前記半導体層に注入された電子と、前記第3の半導体領域から前記半導体層に注入された正孔とを再結合させることを特徴とする電源回路が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板へのキャリア注入を抑制する半導体装置及び電源回路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電源回路の回路図。
【図2】本発明の実施形態に係る半導体装置の断面図。
【図3】図1に示すローサイドスイッチング素子の電流特性図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電源回路の回路図。
【図5】図4に示すローサイドスイッチング素子の電流特性図。
【図6】本発明の実施形態に係る半導体装置の他の構造を示す断面図。
【図7】本発明の実施形態に係る半導体装置のさらに他の構造を示す断面図。
【図8】本発明の実施形態に係る半導体装置のさらに他の構造を示す断面図。
【図9】本発明の実施形態に係る半導体装置のさらに他の構造を示す断面図。
【図10】図6に示す構造の半導体装置における主要要素の平面レイアウトを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電源回路の回路図を示す。本実施形態では、電源回路として降圧型のDC−DCコンバータを例示する。
【0012】
このDC−DCコンバータは、入力電圧ライン11と、基準電位であるグランドとの間に直列接続されるハイサイドスイッチング素子Q1とローサイドスイッチング素子Q2とを有する。ハイサイドスイッチング素子Q1とローサイドスイッチング素子Q2とを交互にオンオフさせることで、入力電圧Vccよりも低い電圧が出力ライン13に出力される。
【0013】
ハイサイドスイッチング素子Q1及びローサイドスイッチング素子Q2は、例えばNチャネル型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0014】
ハイサイドスイッチング素子Q1のドレインは、入力電圧ライン11と接続されている。ハイサイドスイッチング素子Q1のソースは、ローサイドスイッチング素子Q2のドレインと接続されている。ローサイドスイッチング素子Q2のソースは、グランドに接続されている。
【0015】
ハイサイドスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に接続されたダイオードd1は、ハイサイドスイッチング素子Q1のボディダイオード(built-in body diode)を示す。ローサイドスイッチング素子Q2のドレイン−ソース間に接続されたダイオードd2はローサイドスイッチング素子Q2のボディダイオードを示す。
【0016】
ハイサイドスイッチング素子Q1とローサイドスイッチング素子Q2との接続ノード12は、誘導性負荷であるインダクタLの一端と接続されている。インダクタLの他端は出力ライン13に接続されている。出力ライン13とグランドとの間には、出力電圧を短時間に大きく変動させないための平滑コンデンサCが接続されている。
【0017】
ハイサイドスイッチング素子Q1及びローサイドスイッチング素子Q2の各々のゲートは、制御回路10に接続されている。制御回路10からは、ほぼ反転位相のゲート制御信号が、ハイサイドスイッチング素子Q1のゲートとローサイドスイッチング素子Q2のゲートとに供給される。これにより、ハイサイドスイッチング素子Q1及びローサイドスイッチング素子Q2のオンオフが制御される。
【0018】
ハイサイドスイッチング素子Q1及びローサイドスイッチング素子Q2が両方同時にオンになると、貫通電流が入力電圧ライン11から両スイッチング素子Q1及びQ2を介してグランドに流れることになる。これを避けるため、ハイサイドスイッチング素子Q1がターンオフしてからローサイドスイッチング素子Q2がターンオンするまでの間、およびローサイドスイッチング素子Q2がターンオフしてからハイサイドスイッチング素子Q1がターンオンするまでの間に、両スイッチング素子Q1及びQ2が共にオフとなる期間(デッドタイム)が設定されている。
【0019】
ハイサイドスイッチング素子Q1がオンで、ローサイドスイッチング素子Q2がオフのときは、入力電圧ライン11からハイサイドスイッチング素子Q1及びインダクタLを経由して出力ライン13に電流I1が流れる。このとき、インダクタ電流は増加し、インダクタLにエネルギーが蓄積される。
【0020】
そして、ハイサイドスイッチング素子Q1がオフに、ローサイドスイッチング素子Q2がオンになると、インダクタLに蓄積されたエネルギーによる起電力で、グランドからローサイドスイッチング素子Q2及びインダクタLを経由して出力ライン13に回生電流I2が流れる。ハイサイドスイッチング素子Q1がオフになった後、ローサイドスイッチング素子Q2がオンになるまでのデッドタイム期間中は、ローサイドスイッチング素子Q2のボディダイオードd2を介して回生電流I2が流れる。
【0021】
図1に示す要素において、ハイサイドスイッチング素子Q1、ローサイドスイッチング素子Q2および制御回路10は、同じ基板に形成された半導体集積回路である。すなわち、ハイサイドスイッチング素子Q1、ローサイドスイッチング素子Q2および制御回路10は、1チップに集積された電源ICとして構成される。この電源ICに対して、インダクタL及びコンデンサCは外部部品として接続される。
【0022】
あるいは、ハイサイドスイッチング素子Q1とローサイドスイッチング素子Q2のみを1チップ化してもよいし、ハイサイドスイッチング素子Q1と制御回路10のみを1チップ化してもよいし、ローサイドスイッチング素子Q2と制御回路10のみを1チップ化してもよい。また、ここまでハイサイドスイッチング素子Q1は、Nチャネル型MOSFETで説明してきたが、Pチャネル型MOSFETを用いてもよい。
【0023】
次に、図2を参照して、ローサイドスイッチング素子Q2の構造について説明する。以下の具体例では、半導体材料は例えばシリコンとするが、シリコンに限らず他の半導体材料を用いてもよい。また、第1導電型をP型、第2導電型をN型として説明するが、第1導電型がN型、第2導電型がP型であってもよい。
【0024】
ローサイドスイッチング素子Q2は、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)構造もしくはMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造を有する。これら構造は、P型の基板21上に形成されている。基板21の表層部には、P型ウェル層22が形成されている。
【0025】
P型ウェル層22の表面に、第1の半導体領域としてN型のドレイン領域23が選択的に形成されている。P型ウェル層22の表面に、第2の半導体領域としてN型のソース領域24が選択的に形成されている。P型ウェル層22の表面に、第3の半導体領域としてP型のコンタクト領域25が選択的に形成されている。P型ウェル層22の表面に、第4の半導体領域としてN型半導体領域26が選択的に形成されている。P型ウェル層22の表面に、第5の半導体領域としてP型半導体領域27が選択的に形成されている。
【0026】
ドレイン領域23とソース領域24とは離間している。ドレイン領域23とソース領域24との間のP型ウェル層22の表面上にはゲート絶縁膜28が設けられている。ゲート絶縁膜28上にはゲート電極29が設けられている。ゲート電極29は、図1に示す制御回路10と接続されている。
【0027】
ドレイン領域23の表面上には、第1の主電極としてドレイン電極31が設けられている。ドレイン領域23はドレイン電極31と電気的に接続されている。ドレイン電極31は、図1に示す接続ノード12及びインダクタLに接続されている。
【0028】
ソース領域24とコンタクト領域25とは接している。これらソース領域24とコンタクト領域25の表面上には、第2の主電極としてソース電極32が設けられている。ソース領域24及びコンタクト領域25はソース電極32と電気的に接続されている。ソース電極32はグランドに接続されている。また、ソース電極32の電位は、コンタクト領域25を介してP型ウェル層22に与えられる。
【0029】
型半導体領域26及びP型半導体領域27は、ドレイン領域23に対して、ソース領域24とは反対側に離間して設けられている。N型半導体領域26は、ドレイン領域23とP型半導体領域27との間に設けられ、ドレイン領域23に近接している。図2では、N型半導体領域26とP型半導体領域27とは接しているが、それら両者は接していなくてもよい。
【0030】
型半導体領域26及びP型半導体領域27の表面上には、ゲート電極29、ソース電極32およびドレイン電極31のいずれも接続されていないフローティング電極35が設けられている。N型半導体領域26及びP型半導体領域27は、フローティング電極35と電気的に接続されている。すなわち、N型半導体領域26とP型半導体領域27とは、フローティング電極35を介して電気的に接続されている。N型半導体領域26、P型半導体領域27およびフローティング電極35は、フローティング構造部FLを構成する。フローティング電極35は、P型半導体領域27、P型ウェル層22、コンタクト領域25の拡散層を通じてソース電極32に接続されており、フローティング電極35の電位は、フローティング電極35とソース電極32との間に電流が流れていなければソース電極32の電位と略同電位となっている。
したがって、ソース領域24とドレイン領域23との間の距離をL1、N型半導体領域26とドレイン領域23との間の距離をL2とすると、L2≧L1の関係が成り立つ。これは、ドレイン電極31−ソース電極32間のパンチスルー耐圧は、ソース領域24−ドレイン領域23間の距離で決定され、ゲート電極29がない場合、ソース領域24−ドレイン領域23間のP型ウェル層22がより空乏化しやすいためである。
【0031】
ドレイン領域23、ソース領域24及びN型半導体領域26は、N型不純物の選択的注入により同時に形成される。コンタクト領域25及びP型半導体領域27は、P型不純物の選択的注入により同時に形成される。
【0032】
ドレイン領域23、ソース領域24、コンタクト領域25、ゲート絶縁膜28およびゲート電極29は、MOSトランジスタM1を構成する。
【0033】
コンタクト領域25、P型ウェル層22およびドレイン領域23は、ボディダイオードd2を構成する。ボディダイオードd2において、ソース電極32はアノード電極として機能し、ドレイン電極31はカソード電極として機能する。
【0034】
ローサイドスイッチング素子Q2のMOSトランジスタM1のゲート電極29に閾値電圧以上の電圧が与えられると、ゲート電極29下のP型ウェル層22表層にN型の反転層(チャネル)が形成され、MOSトランジスタM1はオンする。ハイサイドスイッチング素子Q1がオフで、ローサイドスイッチング素子Q2のMOSトランジスタM1がオンのとき、ソース電極32、ソース領域24、チャネル、ドレイン領域23およびドレイン電極31を介して、回生電流I2が流れる。このとき、ローサイドスイッチング素子Q2のドレイン電位は、ソース電位(0V)より低い負電位である。
【0035】
ハイサイドスイッチング素子Q1及びローサイドスイッチング素子Q2のMOSトランジスタM1が共にオフのとき、回生電流I2はローサイドスイッチング素子Q2のボディダイオードd2を介して流れる。すなわち、負電位のドレイン領域23からP型ウェル層22に電子が注入され、ソース電位(0V)のコンタクト領域25からはP型ウェル層22に正孔が注入される。P型ウェル層22に注入された電子の一部は、コンタクト領域25を介してソース電極32に流れる。P型ウェル層22に注入された正孔は、ドレイン領域23を介して負電位のドレイン電極31に流れる。
【0036】
型半導体領域26にはバイアスは印加されていないが、N型半導体領域26とP型ウェル層22とのPN接合には、ビルトインポテンシャルが生じている。このため、P型ウェル層22に注入された電子は、N型半導体領域26に流れる。N型半導体領域26はソース電極32及びドレイン電極31のいずれにも接続されていないため、電子が注入されることでN型半導体領域26は負電位にバイアスされる。そこでフローティング電極35を介してP型半導体領域27が負電位にバイアスされ、P型半導体領域27周辺のP型ウェル層22が負にバイアスされる。するとドレイン領域23から注入される電子にとって負にバイアスされたP型ウェル層22は障壁となり、基板21への電子の注入を抑制できる。
【0037】
型半導体領域26に流れる電子は、N型半導体領域26の電位を負電位にし、フローティング電極35を介してN型半導体領域26と電気的に接続されたP型半導体領域27の電位も負電位にする。これにより、P型ウェル層22中の正孔がP型半導体領域27に流れる。したがって、N型半導体領域26に流れた電子と、P型半導体領域27に流れた正孔とはフローティング電極35で再結合し、ボディダイオードd2の順方向電流にはならない。したがって、ボディダイオードd2の電流駆動能力が低下する。
【0038】
この結果、P型ウェル層22中の電子が減少する。P型ウェル層22中の電子の減少は、基板21に注入される電子を減少させる。このため、同じ基板21上に形成されている制御回路10の高電位部に電子が流れるのを抑制でき、制御回路10の誤動作を防げる。
【0039】
また、基板21中の電子の蓄積量を減らすことができるので、ハイサイドスイッチング素子Q1がオンになったときに、ハイサイドスイッチング素子Q1を介して、入力電圧ライン11に流れる電子、すなわち出力ライン13には供給されない無効電流を少なくできる。この結果、変換効率(出力電力/入力電力)の低下を防げる。
【0040】
ゲート電極29に閾値電圧以上の電圧が印加されてMOSトランジスタM1がオンすると、回生電流I2は、MOSトランジスタM1の低抵抗なチャネルをほとんど流れる。すなわち、電子はP型ウェル層22の表面側を流れるため、基板21にはほとんど注入されない。
【0041】
図3に、MOSトランジスタM1の電流特性I(M1)、フローティング構造部FLを設けた本実施形態の半導体装置におけるボディダイオードd2の電流特性I(d2)、および比較例におけるボディダイオードの電流特性I(d)を示す。比較例は、フローティング構造部FLを設けなかった構造である。
【0042】
図3において、横軸は、MOSトランジスタM1のソース−ドレイン間電圧、ボディダイオードd2のアノード−カソード間電圧、比較例のボディダイオードのアノード−カソード間電圧を示す。縦軸は、MOSトランジスタM1のチャネルを流れる電流、ボディダイオードd2の順方向電流、比較例のボディダイオードの順方向電流を示す。
【0043】
本実施形態では、ボディダイオードd2が順方向にバイアスされた状態で、P型ウェル層22中の電子と正孔との再結合を促進させるフローティング構造部FLを設けている。このため、同じアノード−カソード間電圧のとき、ボディダイオードd2の電流I(d2)は、フローティング構造部FLを設けなかった比較例のボディダイオードの電流I(d)より低い。すなわち、フローティング構造部FLを設けることで、ボディダイオードd2の電流駆動能力を低下させている。
【0044】
MOSトランジスタM1をオンさせるハイレベル信号が制御回路10からゲート電極29に供給されていないとき、MOSトランジスタM1のゲート電位は0Vである。このとき、接続ノード12の電位が負になると、ゲート電位(0V)は接続ノード12の負電位よりも高電位となる。MOSトランジスタM1のドレイン電位は接続ノード12の電位と同じである。この電位を−Vとすると、MOSトランジスタM1におけるソース電位及びゲート電位は、ドレイン電位に対してV高い。したがって、VがMOSトランジスタM1の閾値電圧より高くなると、MOSトランジスタM1はオンする。
【0045】
そして本実施形態ではボディダイオードd2の電流駆動能力が低下しているため、MOSトランジスタM1が動作する電流領域が増える。MOSトランジスタM1のチャネルを通って電流が流れる場合、基板21にはほとんど電流が流れない。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、回生電流モード時、P型ウェル層22の表面側に設けたフローティング構造部FLで電子と正孔との再結合を促進させることで、基板21に流れる電流を抑制することができる。この結果、基板21上に形成された制御回路10などの他の回路に流れる電流を抑制し、その回路の誤動作を防止する。また、この機能を実現するにあたって、本実施形態では、基板21に高不純物濃度のN型埋め込み層をエピタキシャル成長させる必要がない。このため、一般的なMOSトランジスタを形成するプロセスを適用できコスト増大をまねかない。
【0047】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係るDC−DCコンバータを示す。図1と同じ要素には同じ符号を付している。
【0048】
本実施形態では、MOSトランジスタM2が、MOSトランジスタM1と並列に、接続ノード12とグランド間に接続されている。MOSトランジスタM2のドレインは接続ノード12に接続されている。MOSトランジスタM2のゲートとソースは接続され、それらはグランドに接続されている。すなわち、MOSトランジスタM2は、接続ノード12とグランド間にダイオード接続されている。MOSトランジスタM2は、MOSトランジスタM1が形成された基板21上に形成されている。
【0049】
図5は、MOSトランジスタM1の電流特性I(M1)、MOSトランジスタM2の電流特性I(M2)、およびボディダイオードd2の電流特性I(d2)を示す。
【0050】
図5において、横軸は、MOSトランジスタM1のソース−ドレイン間電圧、MOSトランジスタM2のソース−ドレイン間電圧、ボディダイオードd2のアノード−カソード間電圧を示す。縦軸は、MOSトランジスタM1のチャネルを流れる電流、MOSトランジスタM2のチャネルを流れる電流、ボディダイオードd2の順方向電流を示す。
【0051】
MOSトランジスタM2の閾値電圧は、MOSトランジスタM1の閾値電圧より低く設定されている。また、MOSトランジスタM1及びM2は、ボディダイオードd2の順方向電圧よりも低い電圧領域で動作する。
【0052】
MOSトランジスタM2の閾値電圧をMOSトランジスタM1の閾値電圧より低く設定することで、MOSトランジスタM2は、MOSトランジスタM1よりも低い電圧領域で動作する。このため、MOSのチャネルを通って電流が流れる領域を広げることができ、広い電流範囲にわたって基板21への電子注入を抑制できる。
【0053】
また、ハイサイドスイッチング素子Q1とローサイドスイッチング素子Q2との接続ノード12の低電位から高電位への電圧変化が大きい場合、MOSトランジスタM2のゲート−ドレイン間容量による変位電流がゲート電極に流れる。この場合、ゲート電極に存在する寄生のゲート抵抗やMOSトランジスタM2のゲートを駆動するドライバー抵抗に変位電流が流れる。すなわち、変位電流がゲート−ソース間に流れ、ソース電圧に対して正の電位がゲート電極に発生する。この正の電圧が閾値電圧をこえる場合、MOSトランジスタM2のドレイン−ソース間に電流が流れる。このドレイン−ソース間に流れる電流は無効電流となり、変換効率(出力電力/入力電力)の低下をまねく。したがって、MOSトランジスタM2のゲートとソースを接続することで、ゲートを駆動するドライバー抵抗をなくし、変位電流により発生する正の電圧を制御することができる。
【0054】
しかし、ゲート抵抗とドライバー抵抗が十分小さい場合は、変位電流により発生する正の電位が低いため、MOSトランジスタM2のゲートをソースに接続することはしなくてもよい。その場合、MOSトランジスタM2のゲートは、MOSトランジスタM1のゲートに接続してもよい。こうすることで、MOSトランジスタM2もスイッチング素子として使用することができ、MOSトランジスタM2のゲートをソースに接続する場合に比べ、面積一定の条件において、ローサイドMOSのオン抵抗を下げることができる。
【0055】
図6は、図2に対応する構造の他の具体例を示す。図2と同じ要素には同じ符号を付している。
【0056】
図6の構造では、ドレイン領域23とN型半導体領域26との間のP型ウェル層22の表面上にも、ゲート絶縁膜28及びゲート電極29が設けられ、すなわちMOSトランジスタM3が設けられている。ゲート電極29に閾値電圧以上の電圧を印加したとき、ドレイン領域23とN型半導体領域26との間のP型ウェル層22の表層にもN型チャネルが形成される。電子は、ドレイン領域23、ゲート電極29直下に形成されるチャネル、N型半導体領域26、P型半導体領域27、P型ウェル層22およびコンタクト領域25を通って、ドレイン電極23とソース電極32間を流れることができる。ゲートオン時にチャネルが形成される領域が増えることは、図2の構造に比べてオン抵抗の低減に寄与する。
【0057】
図10は、図6に示す構造の半導体装置における主要要素の平面レイアウトを示す。図6と同じ要素には同じ符号を付している。N型拡散層36は、ローサイドMOSの周りに配置された入力電圧、もしくは接地電位より高電位に接続され、基板21に注入された電子を引き付ける役目をする。したがって、ローサイドMOSにおいて、N型拡散層36より離れた位置に比べ、N型拡散層36に隣接したローサイドMOSのドレインからより電子が注入される。
【0058】
また、N型拡散層36から離れた位置のローサイドMOSのドレインから注入された電子の多くはソース電極32に流れる。このため、N型拡散層36に隣接したローサイドMOSにフローティング構造部FLを設け、N型拡散層36から離れた位置のローサイドMOSにはフローティング構造部FLを設けない。フローティング構造部FLを設けるローサイドMOSの領域は、N型拡散層36から200μmまでの範囲が望ましい。こうすることで、フローティング構造部FLを設けることによるオン抵抗の増大を防ぐことができる。
【0059】
MOSトランジスタM3では、ドレイン領域23とN型半導体領域26との間のP型ウェル層22の表層にN型チャネルが形成されるが、ドレイン領域23、チャネル、N型半導体領域26、P型半導体領域27、P型ウェル層22およびコンタクト領域25を通ってドレイン電極31とソース電極32間を電流が流れる。すなわち、P型ウェル層22を介して電流が流れるため、MOSトランジスタM3は、P型ウェル層22の抵抗により、素子表面側をドレイン電極31からソース電極32へ直接電流が流れるMOSトランジスタM1に比べてオン抵抗は高くなる。
【0060】
そこで、MOSトランジスタM3のオン抵抗を低減するため、図7に示す構造では、P型ウェル層22中における表面側の拡散層よりも深い位置にP型層41を設けている。このP型層41は、P型不純物イオンの高加速度インプラにより形成することができる。P型層41を設けることで、P型ウェル層22の拡散抵抗を低減でき、MOSトランジスタM3のオン抵抗を低減することが可能となる。図7において破線で囲まれたMOS構造部分の電流駆動能力を向上できる。
【0061】
本発明の実施形態に係る半導体装置における他の具体例を図8に示す。
図2に示す構造との違いは、ドレイン領域23とゲート電極29との間のP型ウェル層22表層にN型のドリフト領域51が設けられている点である。さらに、N型半導体領域26とドレイン領域23との間のP型ウェル層22表層にN型のドリフト領域52が設けられている。図8の構造は、図2の構造に比べてドレイン−ソース間の耐圧を高くすることができる。
【0062】
また、図8の構造において、ドリフト領域52とN型半導体領域26との間のP型ウェル層22の表面上に、図6の構造と同様にゲート絶縁膜28及びゲート電極29を設けてもよい。この構造を図9に示す。
【0063】
ゲート電極29に閾値電圧以上の電圧を印加したとき、ドリフト領域52とN型半導体領域26との間のP型ウェル層22の表層にもN型チャネルが形成される。電子は、ドレイン領域23、チャネル、N型半導体領域26、P型半導体領域27、P型ウェル層22およびコンタクト領域25を通って、ドレイン電極31とソース電極32間を流れることができる。ゲートオン時にチャネルが形成される領域が増えることは、図8の構造に比べてオン抵抗の低減に寄与する。
【0064】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10…制御回路、11…入力電圧ライン、13…出力ライン、21…基板、22…P型ウェル層、23…ドレイン領域、24…ソース領域、25…コンタクト領域、26…N型半導体領域、27…P型半導体領域、28…ゲート絶縁膜、29…ゲート電極、31…ドレイン電極、32…ソース電極、35…フローティング電極、Q1…ハイサイドスイッチング素子、Q2…ローサイドスイッチング素子、M1,M2…MOSトランジスタ、d1,d2…ボディダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表層部に設けられた第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域及び誘導性負荷に接続される第1の主電極と、
前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第1導電型の第3の半導体領域と、
前記第2の半導体領域、前記第3の半導体領域及び基準電位に接続される第2の主電極と、
前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体層の表面上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
を備え、
前記半導体層、前記第1の半導体領域及び前記第3の半導体領域を含むボディダイオードが順方向にバイアスされた状態で、前記第1の半導体領域から前記半導体層に注入された電子と、前記第3の半導体領域から前記半導体層に注入された正孔とを再結合させることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板の表層部に設けられた第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域及び誘導性負荷に接続される第1の主電極と、
前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第1導電型の第3の半導体領域と、
前記第2の半導体領域、前記第3の半導体領域及び基準電位に接続される第2の主電極と、
前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体層の表面上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記第1の半導体領域、前記第2の半導体領域及び前記第3の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第4の半導体領域と、
前記第1の半導体領域、前記第2の半導体領域及び前記第3の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第1導電型の第5の半導体領域と、
前記第4の半導体領域と前記第5の半導体領域とを接続するフローティング電極と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記第4の半導体領域は、前記第1の半導体領域と前記第5の半導体領域との間に設けられたことを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の半導体領域、前記第2の半導体領域、前記第3の半導体領域、前記ゲート絶縁膜及び前記ゲート電極を含むローサイドスイッチング素子と並列に、前記誘導性負荷と前記基準電位との間に接続されたトランジスタをさらに備え、
前記トランジスタの閾値電圧は、前記ローサイドスイッチング素子の閾値電圧よりも低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記トランジスタのゲート電極はソース電極と接続されていることを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート絶縁膜は前記第4の半導体領域と前記第1の半導体領域との間の前記半導体層の表面上にも設けられ、このゲート絶縁膜上にも前記ゲート電極が設けられたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ゲート電極を制御する制御回路がさらに前記基板上に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
入力電圧ラインと、前記第1の主電極と前記誘導性負荷との接続ノードと、の間に接続されるハイサイドスイッチング素子がさらに前記基板上に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
入力電圧ラインに接続されるハイサイドスイッチング素子と、
前記ハイサイドスイッチング素子と基準電位との間に接続されるローサイドスイッチング素子と、
前記ハイサイドスイッチング素子と前記ローサイドスイッチング素子との接続ノードと、出力ラインとの間に接続される誘導性負荷と、
前記出力ラインと前記基準電位との間に接続されるコンデンサと、
を備え、
前記ローサイドスイッチング素子は、
基板と、
前記基板の表層部に設けられた第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域及び誘導性負荷に接続される第1の主電極と、
前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第1導電型の第3の半導体領域と、
前記第2の半導体領域、前記第3の半導体領域及び基準電位に接続される第2の主電極と、
前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体層の表面上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
を有してなり、
前記半導体層、前記第1の半導体領域及び前記第3の半導体領域を含むボディダイオードが順方向にバイアスされた状態で、前記第1の半導体領域から前記半導体層に注入された電子と、前記第3の半導体領域から前記半導体層に注入された正孔とを再結合させることを特徴とする電源回路。
【請求項10】
前記第1の半導体領域、前記第2の半導体領域及び前記第3の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第2導電型の第4の半導体領域と、
前記第1の半導体領域、前記第2の半導体領域及び前記第3の半導体領域に対して離間して前記半導体層の表面に設けられた第1導電型の第5の半導体領域と、
前記第4の半導体領域と前記第5の半導体領域とを接続するフローティング電極と、
を有し、
前記フローティング電極で前記電子と前記正孔とを再結合させることを特徴とする請求項9記載の電源回路。
【請求項11】
前記ローサイドスイッチング素子と並列に、前記接続ノードと前記基準電位との間に接続されたトランジスタをさらに備え、
前記トランジスタの閾値電圧は、前記ローサイドスイッチング素子の閾値電圧よりも低いことを特徴とする請求項9または10に記載の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−35292(P2011−35292A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182286(P2009−182286)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】