説明

半導体装置製造用接着シート、及びそれを用いた半導体装置の製造方法

【課題】ダイシング時の半導体ウェハの保持力とピックアップ時の剥離性のバランス特性に優れる半導体装置製造用接着シート、及びそれを用いた半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体素子13を被着体11上に接着させる半導体装置製造用接着シート12をダイシングシート33と貼り合わせた一体型のダイシング・ダイボンドフィルムであって、半導体装置製造用接着シート12が少なくとも熱可塑性樹脂及び架橋剤を含み構成され、かつ、100℃の温水に対する溶解度が10重量%以下であり、ゲル分率が50重量%以上であり、熱可塑性樹脂の含有量は、半導体装置製造用接着シート12を構成する有機樹脂成分100重量部に対し、30〜90重量部であり、ダイシングシート33は、支持基材上に粘着剤層が設けられた構成を有しており、粘着剤層は、放射線硬化型粘着剤により形成されており、且つ、放射線硬化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等の半導体素子を基板等の被着体上に接着させる際に用いる半導体装置製造用接着シート、及びそれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の微細化、高機能化の要求に対応すべく、半導体チップ(半導体素子)主面の全域に配置された電源ラインの配線幅や信号ライン間の間隔が狭くなってきている。この為、インピーダンスの増加や、異種ノードの信号ライン間での信号の干渉が生じ、半導体チップの動作速度、動作電圧余裕度、耐静電破壊強度等に於いて、十分な性能の発揮を阻害する要因となっている。これらの問題を解決する為、半導体素子を積層したパッケージ構造が提案されている(下記、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
一方、半導体素子を基板等に固着する際に使用されるものとしては、熱硬化性ペースト樹脂を用いる例(例えば、特許文献3参照)や熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を併用した接着シートを用いる例(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【0004】
しかし、半導体装置の製造方法に於いては、半導体素子と、基板、リードフレーム又は半導体素子との接着に際にペースト樹脂を使用すると、半導体素子と基板等との圧着の後(ダイアタッチ)、ペースト樹脂がはみ出し基板等の接続パッド部分を汚染するという問題がある。その結果、半導体素子と接続パッド部分とのワイヤーボンディングが出来ない点が指摘されている。
【0005】
この為、最近では前記問題点に鑑み、接続パッド部分を汚染することのない接着シートを使用する例が増えている。この場合、図9(a)に示すように、半導体ウェハ52に接着シート51を貼り合わせた後に、ダイシングを行うのが一般的である。また、貼り合わせ時の接着シート51は、半導体ウェハ52と同じサイズに設定される。しかしながら、従来の接着シート51であるとダイシングの際に使用する冷却水や洗浄水に溶解する為、半導体ウェハ52及び半導体チップ53よりも小さくなる場合がある。また、ダイシングブレードとの摩擦熱により接着シート51が熱溶融し、半導体ウェハ52及び半導体チップ53よりも小さくなる場合がある。
【0006】
この半導体チップ53よりもサイズの小さい接着シート51を介して被着体に接着固定し、樹脂封止をすると、モールディングコンパウンドのフイラーが、半導体チップ53の接着シート51により支持されていない部分に潜り込むことになる。その結果、樹脂封止時の圧力に対し、半導体チップ53に於いて接着シート51により支持されていない部分等で割れやヒビが生じ、製造される半導体装置の信頼性低下、及び歩留まりの低下が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭55−111151号公報
【特許文献2】特開2002−261233号公報
【特許文献3】特開2002−179769号公報
【特許文献4】特開2000−104040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ダイシングの際の冷却水による溶解、及びダイシングブレードとの摩擦熱による熱溶融に起因した接着シートの収縮を抑制できる半導体装置製造用接着シート及びそれを用いた半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、半導体装置製造用接着シート及びそれを用いた半導体装置の製造方法について検討した。その結果、下記構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明に係る半導体装置製造用接着シートは、前記の課題を解決する為に、半導体素子を被着体上に接着させる半導体装置製造用接着シートであって、少なくとも熱可塑性樹脂及び架橋剤を含み構成され、かつ、100℃の温水に対する溶解度が10重量%以下であり、ゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする。
【0011】
前記構成の様に、熱可塑性樹脂を含む構成とすることにより、接着シートの100℃の温水に対する溶解度を10重量%以下にするので、例えばダイシング時の冷却水や洗浄水に接着シートが溶解するのを防止する。また、架橋剤を含む構成とすることにより、低分子成分が少なくしてゲル分率を50重量%以上にするので、ダイシングブレードとの摩擦による接着シートの熱溶融を防止する。その結果、接着シートをダイシング後の半導体素子と同じサイズに維持することができ、樹脂封止の際にも該半導体素子に割れやヒビが生じるのを防止することができる。
【0012】
前記構成に於いては、前記熱可塑性樹脂が、数平均分子量40万〜300万のアクリル樹脂であることが好ましい。
【0013】
前記熱可塑性樹脂の含有量は、接着シートを構成する有機樹脂成分100重量部に対し、20〜90重量部であることが好ましい。
【0014】
また、前記架橋剤の含有量は、接着シートを構成する有機樹脂成分100重量部に対し、0.05〜7重量部であることが好ましい。
【0015】
更に、前記構成に於いては、前記接着シートが更に熱硬化性樹脂を含み構成されることが好ましい。
【0016】
また、前記構成に於いては、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくとも何れか一方であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記の課題を解決する為に、前記に記載の半導体装置製造用接着シートを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明の半導体装置製造用接着シートによれば、100℃の温水に対する溶解度を10重量%以下にし、かつ、ゲル分率を50重量%以上にするので、例えばダイシング時の冷却水や洗浄水により溶解したり、ダイシングブレードとの摩擦により熱溶融するのを防止する。その結果、樹脂封止の際に半導体素子に割れやヒビが生じるのを防止し、高信頼性の半導体装置を歩留まり良く製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【図4】本発明の実施の形態4に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【図5】本発明の実施の形態5に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【図6】本発明の実施の形態6に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【図7】前記実施の形態6に係る半導体装置の製造方法により得られた半導体装置の概略を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態7に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【図9】従来の接着シートを用いた半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態について、以下に説明する。本実施の形態に係る半導体装置製造用接着シート(以下、「接着シート」と言う)は、半導体素子を被着体上に接着させる際に使用されるものであって、少なくとも熱可塑性樹脂及び架橋剤を含み構成される。また、接着シートの100℃の温水に対する溶解度は10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。前記溶解度が10重量%を超えると、接着シートがダイシング時の冷却水に溶解する量が大きくなり、接着シートの大きさが半導体チップより小さくなる。
【0021】
更に、接着シートのゲル分率は50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70%以上である。接着シートは所定量の架橋剤を含むことにより架橋構造を有しており、ゲル分率を50重量%以上にすることで、低分子量成分の構成割合を小さくしている。その結果、ダイシング時のダイシングブレードとの摩擦による熱溶融を防止し、接着シートの大きさが半導体チップより小さくなるのを抑制することができる。
【0022】
本実施の形態に係る接着シートの構成は特に限定されない。具体的には、例えば接着剤層の単層のみからなる接着シートや、コア材料の片面又は両面に接着剤層を形成した多層構造の接着シート等が挙げられる。ここで、前記コア材料としては、フィルム(例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、シリコン基板又はガラス基板等が挙げられる。また、接着シートとダイシングシートとの一体型のものも使用することができる。
【0023】
前記接着剤層は接着機能を有する層であり、その構成材料としては熱可塑性樹脂、又は熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を併用したものが挙げられる。
【0024】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―アクリル酸共重合体、エチレン―アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロン(登録商標)や6,6−ナイロン(登録商標)等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0025】
前記アクリル樹脂としては特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、へキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0026】
また、前記アクリル樹脂としては、数平均分子量40万〜300万であることが好ましく、50万〜200万の範囲内であることがより好ましい。数平均分子量が下限値未満であると、高温使用時に接着力が低下し易いという不都合がある。また、上限値を超えると、ゲル化し易くフィルム化が困難になり易いという不都合がある。
【0027】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0028】
前記熱可塑性樹脂の含有量は、接着シート12を構成する有機樹脂成分100重量部に対し、20〜90重量部の範囲内であることが好ましく、30〜80重量部の範囲内であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量を前記範囲内にすることにより、100℃の温水に対する溶解度を10重量%以下に制御することが可能になる。また、溶解度の制御は、その含有量を前記数値範囲内で増減させることにより可能である。
【0029】
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0030】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0031】
さらに、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0032】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0033】
なお、本発明に於いては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を含む接着シートが特に好ましい。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体素子の信頼性を確保できる。この場合の配合比は、アクリル樹脂成分100重量部に対して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合量が10〜200重量部であることが好ましい。
【0034】
本発明の接着シート12は、予めある程度架橋をさせておく為、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図る。
【0035】
前記架橋剤としては、従来公知のものを採用することができる。特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の添加量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、ポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じてエポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。架橋剤の添加量を前記範囲内にすることにより、前記ゲル分率を50重量%以上に制御することが可能になる。また、ゲル分率の制御は、添加量を前記数値範囲内で増減させることにより可能である。
【0036】
また、本発明の接着シート12には、その用途に応じて無機充填剤を適宜配合することができる。無機充填剤の配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田などの金属、又は合金類、その他カーボンなどからなる種々の無機粉末が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、シリカ、特に溶融シリカが好適に用いられる。また、無機充填剤の平均粒径は、0.1〜80μmの範囲内であることが好ましい。
【0037】
前記無機充填剤の配合量は、有機樹脂成分100重量部に対し0〜80重量%に設定することが好ましい。特に好ましくは0〜70重量%である。
【0038】
なお、本発明の接着シート12には、前記無機充填剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。
【0039】
前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0040】
前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0041】
前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0042】
本発明の接着シートをダイシングシートと貼り合わせた一体型のダイシング・ダイボンドフィルムとして使用する場合、ダイシングシートとしては特に限定されず、従来公知のものを採用することができる。即ち、ダイシングシートは、より具体的には、支持基材上に粘着剤層が設けられた構成を有しており、接着シートは粘着剤層上に貼り合わされた構造となる。
【0043】
前記支持基材は、ダイシング・ダイボンドフィルムの強度母体となるものである。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。
【0044】
また支持基材の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後にその支持基材を熱収縮させることにより粘着剤層と接着シートとの接着面積を低下させて、チップ状ワークの回収の容易化を図ることができる。
【0045】
前記支持基材は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、支持基材には、帯電防止能を付与する為、前記の支持基材上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。支持基材は単層あるいは2種以上の複層でもよい。尚、粘着剤層が放射線硬化型の場合にはX線、紫外線、電子線等の放射線を少なくとも一部透過するものを用いる。
【0046】
支持基材の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0047】
粘着剤層の形成に用いる粘着剤としては特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤を用いることができる。前記感圧性粘着剤としては、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0048】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。尚、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0049】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0050】
更に、前記アクリル系ポリマーは、架橋させる為、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0051】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、更に好ましくは40万〜300万程度である。
【0052】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高める為、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、更には0.1〜5重量部配合するのが好ましい。更に、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0053】
粘着剤層は放射線硬化型粘着剤により形成することができる。放射線硬化型粘着剤は、紫外線等の放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができ、例えば、粘着剤層に於ける半導体ウェハの貼り付け部分に対応する部分に放射線を照射することにより他の部分との粘着力の差を設けることができる。
【0054】
前述の通り、ダイシング・ダイボンドフィルムの粘着剤層に於いて、未硬化の放射線硬化型粘着剤により形成されている部分は接着シートと粘着し、ダイシングする際の保持力を確保できる。この様に放射線硬化型粘着剤は、半導体チップを基板等の被着体に固着する為の接着シートを、接着・剥離のバランスよく支持することができる。
【0055】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。
【0056】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0057】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の放射線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる為好ましい。
【0058】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0059】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0060】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0061】
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0062】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0063】
また放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0064】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止や接着層の固定保持の両立性等の点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。
【0065】
次に、本実施の形態に係る接着シートを用いた半導体装置の製造方法を、図1に基づき説明する。図1は、当該半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。尚、以下では、図1(a)に示すように、接着シート12’とダイシングシート33とが一体型となったダイシング・ダイボンドフィルムを例にして説明する。
【0066】
先ず、接着シート12’の所定の領域上に半導体ウェハ13’を圧着し、これを接着保持させて固定する(図1(b))。圧着は常法により行われる。
【0067】
次いで、半導体ウェハ13’をチップ状にダイシングする(図1(c))。ダイシングはダイシングブレード等による適宜の手段で接着シート12’も含めて行い、半導体ウェハ13’を所定サイズの半導体チップ(半導体素子)13にする。ダイシング条件としては特に限定されず、例えば ダイシング速度としては10〜200mm/sec、ダイシングブレード回転数としては30000〜45000rpmで行われる。また、ダイシングの際には、ダイシングブレードを冷却する目的で、ダイシングブレードに冷却水を吹き付けながら行う。更に、ダイシング時に生じる切削屑を除去する目的で、洗浄水も使用する。冷却水及び洗浄水としては特に限定されず、例えば純水等が例示できる。但し、半導体ウェハ13’に設けられた配線等を腐食させずにダイシングし得るのであれば、純水以外の液体を用いてよい。より具体的には、例えば、逆浸透膜を用いて濾過した浄化水等を用いてもよい。
【0068】
次いで、半導体チップ13を接着シート12と共にダイシングシート33から剥離する(ピックアップ)。ピックアップした半導体チップ13は、図1(d)に示すように、接着シート12を介して被着体11に接着固定する(ダイボンド)。被着体11としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製したチップ状ワーク等が挙げられる。被着体11は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であってもよく、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウェハ等)であってもよい。
【0069】
前記基板としては、従来公知のものを使用することができる。また、前記リードフレームとしては、Cuリードフレーム、42Alloyリードフレーム等の金属リードフレームやガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体素子をマウントし、半導体素子と電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。
【0070】
接着シート12が熱硬化型の場合には、加熱硬化により、半導体チップ13を被着体11に接着固定し、耐熱強度を向上させる。尚、接着シート12を介して半導体チップ13が基板等に接着固定されたものは、リフロー工程に供することができる。
【0071】
また前記のダイボンドは、接着シート12を硬化させず、単に被着体11に仮固着させてもよい。その後、加熱工程を経ることなくワイヤーボンディングを行い、更にチップ状ワークを封止樹脂で封止して、当該封止樹脂をアフターキュアすることもできる。
【0072】
この場合、接着シート12としては、仮固着時の剪断接着力が、被着体11に対して0.2MPa以上のものを使用し、より好ましくは0.2〜10MPaの範囲内のものを使用するのが好ましい。接着シート12の剪断接着力が少なくとも0.2MPa以上であると、加熱工程を経ることなくワイヤーボンディング工程を行っても、当該工程に於ける超音波振動や加熱により、接着シート12と半導体チップ13又は被着体11との接着面でずり変形を生じることがない。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動くことがなく、これによりワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0073】
前記のワイヤーボンディングは、被着体11の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ13上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続する工程である(図1(e)参照)。前記ボンディングワイヤー7としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着工ネルギーの併用により行われる。
【0074】
本工程は、接着シート12による固着を行うことなく実行することができる。また、本工程の過程で接着シート12により半導体チップ13と被着体11とが固着することはない。ここで、接着シート12の剪断接着力は、80〜250℃の温度範囲内に於いても、0.2MPa以上であることが好ましい。当該温度範囲内で剪断接着力が0.2MPa未満であると、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動き、ワイヤーボンディングを行うことができず、歩留まりが低下する場合があるからである。
【0075】
前記封止工程は、封止樹脂15により半導体チップ13を封止する工程である(図1(f)参照)。本工程は、被着体11に搭載された半導体チップ13やボンディングワイヤー7を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂15としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165〜185℃で、数分間キュアすることができる。これにより、封止樹脂を硬化させると共に、接着シート12を介して半導体チップ13と被着体11とを固着させる。即ち、本発明に於いては、後述する後硬化工程が行われない場合に於いても、本工程に於いて接着シート12による固着が可能であり、製造工程数の減少及び半導体装置の製造期間の短縮に寄与することができる。
【0076】
前記後硬化工程に於いては、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂15を完全に硬化させる。封止工程に於いて接着シート12により固着がされない場合でも、本工程に於いて封止樹脂15の硬化と共に接着シート12による固着が可能となる。本工程に於ける加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。
【0077】
(実施の形態2)
本発明に形態2に係る半導体装置の製造方法について、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【0078】
本実施の形態に係る半導体装置は、前記実施の形態1に係る半導体装置と比較して、複数の半導体素子を積層して3次元実装とした点が異なる。より詳細には、半導体素子の上に、他の半導体素子を、前記接着シートを介して積層する工程を含む点が異なる。
【0079】
先ず、図2(a)に示すように、所定のサイズに切り出した少なくとも1つ以上の接着シート12を被着体11に固着又は仮固着する。次に、接着シート12上に半導体チップ13を、ワイヤーボンド面が上側となる様にして固着又は仮固着する(図2(b)参照)。さらに、半導体チップ13上に、その電極パッド部分を避けて接着シート14を固着又は仮固着する(図2(c)参照)。さらに、接着シート14上に、ワイヤーボンド面が上側となる様にして半導体チップ13を形成する(図2(d)参照)。
【0080】
次に、図2(e)に示すように、ワイヤーボンディング工程を行う。本工程は、仮固着の場合には、加熱工程を行うことなく実施する。これにより、半導体チップ13に於ける電極パッドと被着体11とをボンディングワイヤー16で電気的に接続する。
【0081】
次に、封止樹脂により半導体チップ13を封止する封止工程を行い、封止樹脂を硬化させる。仮固着の場合には、本工程に於いて、接着シート12・14により被着体11と半導体チップ13との間、及び半導体チップ13同士の間が固着される。また、封止工程の後、後硬化工程を行ってもよい。
【0082】
本実施の形態によれば、半導体素子の3次元実装の場合に於いても、接着シート12・14がダイシング時の冷却水や洗浄水により溶解したり、ダイシングブレードとの摩擦により熱溶融するのを防止するので、樹脂封止の際に半導体チップ13に割れやヒビが生じるのを防止し、高信頼性の半導体装置を歩留まり良く製造することが可能になる。
【0083】
(実施の形態3)
本実施の形態3に係る半導体装置の製造方法について、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【0084】
本実施の形態に係る半導体装置は、前記実施の形態2に係る半導体装置と比較して、積層した半導体チップ間にスペーサを介在させた点が異なる。より詳細には、半導体チップと半導体チップとの間に、接着シートを介してスペーサを積層する工程を含む点が異なる。
【0085】
先ず、図3(a)〜3(c)に示すように、前記実施の形態2と同様にして、被着体11上に接着シート12、半導体チップ13及び接着シート14を順次積層して固着又は仮固着する。さらに、接着シート14上に、スペーサ21、接着シート14及び半導体チップ13を順次積層して固着又は仮固着する(図3(d)〜3(f)参照)。
【0086】
次に、図3(g)に示すように、ワイヤーボンディング工程を行う。本工程は、仮固着の場合には、加熱工程を行うことなく実施する。これにより、半導体チップ13に於ける電極パッドと被着体11とをボンディングワイヤー16で電気的に接続する。
【0087】
次に、封止樹脂により半導体素子を封止する封止工程を行い、封止樹脂を硬化させる。仮固着の場合には、本工程に於いて、接着シート12・14により被着体11と半導体チップ13との間、及び半導体チップ13とスペーサ21との間が固着される。また、封止工程の後、後硬化工程を行ってもよい。以上の製造工程を行うことにより、本実施の形態に係る半導体装置を得ることができる。
【0088】
なお、前記スペーサとしては、特に限定されるものではなく、例えば従来公知のシリコンチップ、ポリイミドフィルム等を用いることができる。
【0089】
(実施の形態4)
本実施の形態4に係る半導体装置の製造方法について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【0090】
先ず、図4(a)に示すように、接着シート12’を半導体ウェハ13’の裏面に貼り付けて接着シート付きの半導体ウェハを作製する。次に、半導体ウェハ13’をダイシングシート33に固着又は仮固着する(図4(b)参照)。さらに、接着シート付きの半導体ウェハを所定の大きさとなる様にダイシングしてチップ状にし(図4(c)参照)、ダイシングシート33から接着剤が付いたチップを剥離する。
【0091】
次に、図4(d)に示すように、接着シート12が付いた半導体チップ13を、ワイヤーボンド面が上側となる様にして被着体11上に固着又は仮固着する。さらに、接着シート31が付いた大きさの異なる半導体チップ32を、ワイヤーボンド面が上側となる様にして半導体チップ13上に固着又は仮固着する。
【0092】
次に、図4(e)に示すように、ワイヤーボンディング工程を行う。本工程は、仮固着の場合には、加熱工程を行うことなく実施する。これにより、半導体チップ13・32に於ける電極パッドと被着体11とをボンディングワイヤー16で電気的に接続する。
【0093】
次に、封止樹脂により半導体素子を封止する封止工程を行い、封止樹脂を硬化させる。仮固着の場合には、本工程に於いて、接着シート12・31により被着体11と半導体チップ13との間、及び半導体チップ13と半導体チップ32との間が固着される。また、封止工程の後、後硬化工程を行ってもよい。以上の製造工程を行うことにより、本実施の形態に係る半導体装置を得ることができる。
【0094】
(実施の形態5)
本実施の形態5に係る半導体装置の製造方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【0095】
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、前記実施の形態4に係る半導体装置の製造方法と比較して、ダイシングシート33上に接着シート12’を積層した後、更に接着シート12’上に半導体ウェハ13’を積層した点が異なる。
【0096】
先ず、図5(a)に示すように、ダイシングシート33上に接着シート12’を積層する。さらに、接着シート12’上に半導体ウェハ13’を積層する(図5(b)参照)。さらに、接着シート付きの半導体ウェハを所定の大きさとなる様にダイシングしてチップ状にし(図5(c)参照)、ダイシングシート33から接着剤が付いた半導体チップ13を剥離する。
【0097】
次に、図5(d)に示すように、接着シート12が付いた半導体チップ13を、ワイヤーボンド面が上側となる様にして被着体11上に固着又は仮固着する。さらに、接着シート31が付いた大きさの異なる半導体チップ32を、ワイヤーボンド面が上側となる様にして半導体チップ13上に固着又は仮固着する。この際、半導体チップ32の固着は、下段の半導体チップ13の電極パッド部分を避けて行われる。
【0098】
次に、図5(e)に示すように、ワイヤーボンディング工程を行う。本工程は、仮固着の場合には、加熱工程を行うことなく実施する。これにより、半導体チップ13・32に於ける電極パッドと被着体11に於ける内部接続用ランドとをボンディングワイヤー16で電気的に接続する。
【0099】
次に、封止樹脂により半導体素子を封止する封止工程を行い、封止樹脂を硬化させる。仮固着の場合には、本工程に於いて、接着シート12・31により被着体11と半導体チップ13との間、及び半導体チップ13と半導体チップ32との間が固着される。また、封止工程の後、後硬化工程を行ってもよい。以上の製造工程を行うことにより、本実施の形態に係る半導体装置を得ることができる。
【0100】
(実施の形態6)
本実施の形態6に係る半導体装置の製造方法について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。図7は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法により得られた半導体装置の概略を示す断面図である。
【0101】
本実施の形態に係る半導体装置は、前記実施の形態3に係る半導体装置と比較して、スペーサとしてコア材料を採用した点が異なる。
【0102】
先ず、前記実施の形態5と同様にして、ダイシングシート33上に接着シート12’を積層する。さらに、接着シート12’上に半導体ウェハ13’を積層する。さらに、接着シート付きの半導体ウェハを所定の大きさとなる様にダイシングしてチップ状にし、ダイシングシート33から接着剤が付いたチップを剥離する。これにより、接着シート12を備えた半導体チップ13を得る。
【0103】
他方、ダイシングシート33の上に接着シート41形成し、該接着シート41上にコア材料42を貼り付ける。さらに、所定のサイズとなる様にダイシングしてチップ状にし、ダイシングシート33から接着剤が付いたチップを剥離する。これにより、接着シート41’を備えたチップ状のコア材料42’を得る。
【0104】
次に、前記半導体チップ13を、ワイヤーボンド面が上側となる様に、被着体11上に接着シート12を介して固着又は仮固着する。さらに、半導体チップ13上に接着シート41’を介してコア材料42’を固着又は仮固着する。さらに、コア材料42’上に接着シート12を介して半導体チップ13を、ワイヤーボンド面が上側となる様に固着又は仮固着する。以上の製造工程を行うことにより、本実施の形態に係る半導体装置を得ることができる。
【0105】
次に、ワイヤーボンディング工程を行う。本工程は、仮固着の場合には、加熱工程を行うことなく実施する。これにより、半導体チップ13に於ける電極パッドと被着体11に於ける内部接続用ランドとをボンディングワイヤー16で電気的に接続する(図7参照)。
【0106】
次に、封止樹脂により半導体素子を封止する封止工程を行い、封止樹脂を硬化させる。仮固着の場合には、本工程に於いて、接着シート12・41’により被着体11と半導体チップ13との間、及び半導体チップ13とコア材料42’との間が固着される。また、封止工程の後、後硬化工程を行ってもよい。以上の製造工程を行うことにより、本実施の形態に係る半導体装置を得ることができる。
【0107】
なお、前記コア材料としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。具体的には、フィルム(例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、ミラーシリコンウェハ、シリコン基板又はガラス基板等を使用できる。
【0108】
(実施の形態7)
本実施の形態7に係る半導体装置の製造方法について、図8を参照しながら説明する。図8は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の工程図である。
【0109】
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、前記実施の形態6に係る半導体装置の製造方法と比較して、コア材料のダイシングに替えて、打ち抜き等によりチップ化した点が異なる。
【0110】
先ず、前記実施の形態6と同様にして、接着シート12を備えた半導体チップ13を得る。他方、接着シート41上にコア材料42を貼り付ける。さらに、所定のサイズとなる様に打ち抜き等によりチップ状にし、接着シート41’を備えたチップ状のコア材料42’を得る。
【0111】
次に、前記実施の形態6と同様にして、接着シート12・41’を介してコア材料42’及び半導体チップ13を順次積層して固着又は仮固着する。
【0112】
さらに、ワイヤーボンディング工程、封止工程、必要に応じて後硬化工程を行い、本実施の形態に係る半導体装置を得ることができる。
【0113】
(その他の事項)
前記被着体上に半導体チップ(半導体素子)を3次元実装する場合、半導体チップの回路が形成される面側には、バッファーコート膜が形成されている。当該バッファーコート膜としては、例えば窒化珪素膜やポリイミド樹脂等の耐熱樹脂からなるものが挙げられる。
【0114】
また、半導体チップの3次元実装の際に、各段で使用される接着シートは同一組成からなるものに限定されるものではなく、製造条件や用途等に応じて適宜変更可能である。
【0115】
また、前記実施の形態に於いて述べた積層方法は例示的に述べたものであって、必要に応じて適宜変更が可能である。例えば、前記実施の形態2に係る半導体装置の製造方法に於いては、2段目以降の半導体チップを前記実施の形態3に於いて述べた積層方法で積層することも可能である。
【0116】
また、前記実施の形態に於いては、被着体に複数の半導体チップを積層させた後に、一括してワイヤーボンディング工程を行う態様について述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、半導体チップを被着体の上に積層する度にワイヤーボンディン
グ工程を行うことも可能である。
【実施例】
【0117】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。尚、以下に於いて、部とあるのは重量部を意味する。
【0118】
(実施例1)
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンW−197CM、数平均分子量80万)100部に対して、多官能イソシアネート系架橋剤3部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名;エピコート1004)23部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−LL)6部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度20重量%の接着剤組成物の溶液を調製した。
【0119】
この接着剤組成物の溶液を、剥離ライナとしてシリコーン離型処理したポリエチレンラレフタレートフィルム(厚さ50μm)からなる離型処理フィルム上に塗布した。更に、120℃で3分間乾燥させたことにより、厚さ25μmの本実施例1に係る接着シートを作製した。
【0120】
(実施例2)
本実施例2に於いては、実施例1にて使用したアクリル酸エステル系ポリマーに替えて、ブチルアクリレートを主成分としたポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンSN−710、数平均分子量110万)を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例2に係る接着シート(厚さ25μm)を作製した。
【0121】
(比較例1)
アクリル酸エチルーメチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンW−197CM)100部に対して、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名;エピコート1004)23部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXIC−11)6部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度20重量%の接着剤組成物の溶液を調整した。
【0122】
この接着剤組成物の溶液を、剥離ライナとしてシリコーン離型処理したポリエ、チレンラレフタレートフィルム(厚さ50μm)からなる離型処理フィルム上に塗布した。更に、120℃で3分間乾燥させたことにより、比較例1に係る接着シート(厚さ25μm)を作製した。
【0123】
(比較例2)
本比較例2に於いては、前記比較例1にて使用したアクリル酸エステル系ポリマーに替えて、ブチルアクリレートを主成分としたポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンSN−710)を用いた以外は、比較例1と同様にして、比較例2に係る接着シート(厚さ25μm)作製した。
【0124】
(100℃の温水に対する溶解度)
前記実施例及び比較例に於いて作製した接着シートについて、温水(100℃)に対する溶解度を次の通りに測定した。即ち、各々の接着シートを100mm×125mmの試験片にした。
【0125】
次に、50mlのイオン交換水を満たしたオートクレープ容器(テフロン性)にそれらの試験片を加え、オートクレーブ容器の蓋を閉じて密閉し、更にこのオートクレーブ容器を100℃の乾燥機内に20時間入れた。その後、乾燥機からオートクレープ容器を取り出し、自然冷却によりその温度を室温まで低下させた。続いて、各試験片を取り出し、初期重量を測定した。
【0126】
次に、取り出した各試験片を、更に100℃、20時間の乾燥条件で、乾燥機により乾燥させた。これにより、各試験片に含まれている水分を取り除き、それぞれの乾燥重量を測定した。
【0127】
続いて、下記式を用いて、各試験片の溶解度を算出した。
A=(C−B)÷C×100
A:溶解度(wt%)
B:試験片の乾燥重量(g)
C:試験片の初期重量(g)
【0128】
(ゲル分率)
前記実施例及び比較例に於いて作製した接着シートについて、ゲル分率を次の通りに測定した。即ち、各々の接着シートを100mm×125mmの試験片にした。次に、これらの試験片を23℃、65%RH雰囲気下に2時間放置し、各初期重量を測定した。
【0129】
次いで、それぞれの試験片を24時間メチルエチルケトンに浸潰した後、ゲルを取り出し、更に乾燥機にて130℃×2時間乾燥させて乾燥重量を測定した。
【0130】
続いて、下記式を用いて、各試験片のゲル分率を算出した。
【0131】
【数1】

【0132】
(ダイシング・ダイボンドフィルムの作製)
前記実施例及び比較例で得られた接着シートを用いて、次の方法でダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0133】
[放射線硬化型アクリル系粘着剤の調製]
アクリル酸ブチル70部、アクリル酸エチル30部及びアクリル酸5部を酢酸エチル中で常法により共重合して重量平均分子量80万、濃度30重量%のアクリル系ポリマーの溶液を得た。当該アクリル系ポリマーの溶液に、光重合性化合物としてジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート20部及び光重合開始剤としてα−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1部を配合した。これらをトルエンに均一に溶解して、濃度25重量%の放射線硬化型アクリル系粘着剤の溶液を作製した。
【0134】
[ダイシング・ダイボンドフィルムの作製]
厚さが60μmのポリエチレンフィルムからなる支持基材上に、前記放射線硬化型アクリル系粘着剤の溶液を塗布、乾燥して、厚さが20μmの粘着剤層を形成した。
【0135】
次いで、粘着剤層のウェハ貼り付け対応部分にのみ紫外線を500mJ/cm2(紫外線照射積算光量)照射し、ウェハ貼り付け対応部分が放射線硬化された粘着剤層を有する粘着フィルムAを得た。次いで、粘着フィルムAの粘着層側に、前記の各接着シートを転写して、それぞれダイシング・ダイボンドフィルムを得た。
【0136】
(半導体チップに対する接着シートの縮小率)
前記に於いて作製した各ダイシング・ダイボンドフィルムのダイシングは、ディスコ社製ダイサーDFD651を用いて行った。このとき、ダイシングは10mm×10mmの大きさの半導体チップが得られる様に、冷却水を用いて行った。得られた接着シート付き半導体チップに於いて、半導体チップの面積と接着シートの面積の大きさを比較した。尚、ダイシング条件は、下記の通りとした。
【0137】
[ダイシング条件]
ダイシング装置:ディスコ社製ダイサーDFD651
ダイシング速度:50mm/sec
ダイシングブレード:ディスコ社製205O−SE27HECC
ダイシングブレード回転数:40000rpm
接着シート切り込み深さ:85μm
半導体チップのサイズ:10mm×10mm
【0138】
測定した各面積の値から、下記式を用いて、チップに対する接着フィルムの縮小率を計算した。尚、全てのチップの面積は100mm2であった。
【0139】
【数2】

【0140】
これらの結果を下記表1に示す。表1に示す様に、実施例1及び2に係る接着シートは、何れも水への溶解度が10wt%以下、ゲル分率が50wt%以上であり、縮小率は100%であった。即ち、実施例1及び2に係る接着シートは、ダイシングを行っても縮小しないことが分かった。その一方、比較例1及び2に係る接着シートの場合、縮小率は各々90%、91%であった。
【0141】
【表1】

【符号の説明】
【0142】
11 被着体
12 接着シート(半導体装置製造用接着シート)
13 半導体チップ(半導体素子)
14 接着シート
16 ボンディングワイヤー
21 スペーサ
31 接着シート(半導体装置製造用接着シート)
32 半導体チップ(半導体素子)
33 ダイシングシート
41 接着シート(半導体装置製造用接着シート)
42 コア材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を被着体上に接着させる半導体装置製造用接着シートをダイシングシートと貼り合わせた一体型のダイシング・ダイボンドフィルムであって、
前記半導体装置製造用接着シートが少なくとも熱可塑性樹脂及び架橋剤を含み構成され、かつ、100℃の温水に対する溶解度が10重量%以下であり、ゲル分率が50重量%以上であり、前記熱可塑性樹脂の含有量は、前記半導体装置製造用接着シートを構成する有機樹脂成分100重量部に対し、30〜90重量部であり、
前記ダイシングシートは、支持基材上に粘着剤層が設けられた構成を有しており、
前記粘着剤層は、放射線硬化型粘着剤により形成されており、且つ、放射線硬化されていることを特徴とするダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項2】
前記請求項1に記載のダイシング・ダイボンドフィルムであって、
前記半導体装置製造用接着シートに含まれる前記熱可塑性樹脂が、数平均分子量40万〜300万のアクリル樹脂であることを特徴とするダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイシング・ダイボンドフィルムであって、
前記半導体装置製造用接着シートに含まれる前記架橋剤の含有量は、前記半導体装置製造用接着シートを構成する有機樹脂成分100重量部に対し、0.05〜7重量部であることを特徴とするダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルムであって、
前記半導体装置製造用接着シートが更に熱硬化性樹脂を含み構成されることを特徴とするダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項5】
請求項4に記載のダイシング・ダイボンドフィルムであって、
前記半導体装置製造用接着シートに含まれる前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくとも何れか一方であることを特徴とするダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルムを用いたことを特徴とする半導体装置の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−69953(P2012−69953A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214990(P2011−214990)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2006−39659(P2006−39659)の分割
【原出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】